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特許7605416バッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】バッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/367 20190101AFI20241217BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20241217BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241217BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/396
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Y
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023538070
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 KR2022016209
(87)【国際公開番号】W WO2023068899
(87)【国際公開日】2023-04-27
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0142202
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、キュ-チュル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、テ-ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョル-テク
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ジー-スーン
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/175707(WO,A1)
【文献】特開2019-168451(JP,A)
【文献】特開2019-23853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0280108(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0164763(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーパックが充電される間に、前記バッテリーパックに含まれた第1から第Nのセルに対する電圧、電流及び温度を測定する電圧測定部、電流測定部及び温度測定部、並びに、
前記電圧測定部、前記電流測定部及び前記温度測定部と動作可能に結合された制御部を含み、
前記制御部は、前記バッテリーパックが複数の充電区間を有する充電プロファイルにしたがって充電される間に、各充電区間で第1から第Nのセルのそれぞれに対して、充電区間の前半部で前記電圧測定部により第1セル電圧時系列データを取得し、前記第1セル電圧時系列データにディープラーニングモデルを適用して、充電区間の後半部で予測セル電圧時系列データを決定し、前記後半部で前記電圧測定部により第2セル電圧時系列データを取得し、前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの誤差を決定し、
前記制御部は、少なくとも1つの充電区間で他のセルよりも誤差が相対的に大きいセルを異常兆候セルとして検出する、バッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
第1から第Nのセルのそれぞれに対して、充電区間別に前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの間の最大差を誤差として決定し、充電区間別に第1から第Nのセルの誤差の第1平均及び第1標準偏差を決定し、充電区間別に第1から第Nのセルのそれぞれの誤差の第1標準化値に該当する「(誤差-第1平均)/第1標準偏差」を決定し、
少なくとも1つの充電区間で前記第1標準化値が第1しきい値よりも大きいセルを異常兆候セルとして検出する、請求項1に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置。
【請求項3】
前記ディープラーニングモデルは、
第1から第mの学習セルに対して各充電区間の前半部及び後半部でそれぞれ測定された第1セル電圧時系列データ及び第2セル電圧時系列データを用いて予め学習されたものであり、
第1セル電圧時系列データの入力を受け、第2セル電圧時系列データとの誤差が最小化された予測セル電圧時系列データを出力するように予め学習されたものである、請求項1に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、
第1から第Nのセルのそれぞれに対して、充電区間別に前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの間の最大差を誤差として決定し、充電区間別に第1から第Nのセルのそれぞれの誤差の第1標準化値に該当する「(誤差-第1平均)/第1標準偏差」を決定し、
少なくとも1つの充電区間で前記第1標準化値が第1しきい値よりも大きいセルを異常兆候セルとして検出するように構成されており、
前記第1平均及び前記第1標準偏差は、前記ディープラーニングモデルの学習過程で予め決定された値である、請求項3に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置。
【請求項5】
前記バッテリーパックは、直列接続及び/または並列接続された第1から第pのモジュールを含み、
前記制御部は、
前記第1から第pのモジュールそれぞれに対して、モジュール内に含まれた複数セルのそれぞれの誤差の第2平均及び第2標準偏差を決定し、
前記充電区間別に第1から第Nセルのそれぞれの誤差の第2標準化値に該当する「(誤差-第2平均)/第2標準偏差」を決定し、
少なくとも1つの充電区間で前記第1標準化値が第1しきい値よりも大きく前記第2標準化値が第2しきい値よりも大きいバッテリーセルを異常兆候セルとして検出する、請求項2または4に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1から第Nのセルのそれぞれに対して、充電区間のシフトに伴って、前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの相対的な変化挙動が、異常兆候の類型別に予め定義された変化挙動パターンに対応するか否かをモニターし、
予め定義された変化挙動パターンが基準回数以上確認されたセルの異常兆候の類型を最終決定する、請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置。
【請求項7】
前記予め定義された変化挙動パターンは、前半充電区間で前記第2セル電圧時系列データが前記予測セル電圧時系列データよりも速く増加し、後半充電区間では前記予測セル電圧時系列データが前記第2セル電圧時系列データよりも速く増加するものであり、
前記異常兆候の類型は、負極でのリチウム析出である、請求項6に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置。
【請求項8】
データ、事前定義パラメータ、プログラムまたはこれらの組み合わせが記憶される記録媒体と、ディスプレイとをさらに含み、
前記制御部は、前記検出された異常兆候セルに関する識別情報を前記記録媒体に記録したり、またはバッテリーパック内で異常兆候セルが検出されたことを示すメッセージを、前記ディスプレイを介して出力したり、または異常兆候セルの識別情報を通信により外部装置に送信したりする、請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置を含むバッテリー管理システム。
【請求項10】
バッテリーパックが複数の充電区間を有する充電プロファイルにしたがって充電される間に、各充電区間で第1から第Nのセルのそれぞれに対して、
(a)充電区間の前半部で第1セル電圧時系列データを取得するステップと、
(b)前記第1セル電圧時系列データにディープラーニングモデルを適用して、充電区間の後半部で予測セル電圧時系列データを決定するステップと、
(c)前記後半部で第2セル電圧時系列データを取得するステップと、
(d)前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの誤差を決定するステップと、
(e)少なくとも1つの充電区間で他のセルよりも誤差が相対的に大きいセルを異常兆候セルとして検出するステップと、
を含む、バッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法。
【請求項11】
前記(d)ステップは、前記第1から第Nのセルのそれぞれに対して、充電区間別に前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの間の最大差を誤差として決定するステップであり、
前記(e)ステップは、
(e1)充電区間別に第1から第Nのセルの誤差の第1平均及び第1標準偏差を決定するステップと、
(e2)充電区間別に第1から第Nのセルのそれぞれの誤差の第1標準化値に該当する「(誤差-第1平均)/第1標準偏差」を決定するステップと、
(e3)少なくとも1つの充電区間で前記第1標準化値が第1しきい値よりも大きいセルを異常兆候セルとして検出するステップと、を含む、請求項10に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法。
【請求項12】
前記ディープラーニングモデルは、第1から第mの学習セルに対して、各充電区間の前半部及び後半部でそれぞれ測定された第1セル電圧時系列データ及び第2セル電圧時系列データを用いて予め学習されたものであり、第1セル電圧時系列データの入力を受け、第2セル電圧時系列データとの誤差が最小化された予測セル電圧時系列データを出力するように予め学習されたものである、請求項10に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法。
【請求項13】
前記(d)ステップは、第1から第Nのセルのそれぞれに対して、充電区間別に前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの間の最大差を誤差として決定するステップであり、
前記(e)ステップは、
(e1)充電区間別に第1から第Nのセルのそれぞれの誤差の第1標準化値に該当する「(誤差-第1平均)/第1標準偏差」を決定するステップと、
(e2)少なくとも1つの充電区間で前記第1標準化値が第1しきい値よりも大きいセルを異常兆候セルとして検出するステップと、を含み、
前記第1平均及び前記第1標準偏差は、前記ディープラーニングモデルの学習過程で予め決定された値である、請求項12に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法。
【請求項14】
前記バッテリーパックは、直列接続及び/または並列接続された第1から第pのモジュールを含み、
第1から第pのモジュールのそれぞれに対し、モジュール内に含まれた複数セルのそれぞれの誤差の第2平均及び第2標準偏差を決定するステップと、
充電区間別に第1から第Nのセルのそれぞれの誤差の第2標準化値に該当する「(誤差-第2平均)/第2標準偏差」を決定するステップと、
前記第1標準化値が第1しきい値よりも大きく、前記第2標準化値が第2しきい値よりも大きいセルを異常兆候セルとして検出するステップと、をさらに含む、請求項11または13に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法。
【請求項15】
前記第1から第Nのセルのそれぞれに対して、充電区間のシフトに伴って、前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの相対的な変化挙動が、異常兆候の類型別に予め定義された変化挙動パターンに対応するか否かをモニターするステップと、
予め定義された変化挙動パターンが基準回数以上確認されたセルの異常兆候の類型を最終決定するステップと、
をさらに含む、請求項10から13のいずれか一項に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法。
【請求項16】
前記予め定義された変化挙動パターンは、前半充電区間で前記第2セル電圧時系列データが前記予測セル電圧時系列データよりも速く増加し、後半充電区間では前記予測セル電圧時系列データが前記第2セル電圧時系列データよりも速く増加するものであり、
前記異常兆候の類型は、負極でのリチウム析出である、請求項15に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法。
【請求項17】
前記検出された異常兆候セルに関する識別情報を記録媒体に記録するステップ、
バッテリーパック内で異常兆候のセルが検出されたことを示すメッセージを、ディスプレイを介して出力するステップ、または
通信を介して外部デバイス側に異常兆候セルの識別情報を送信するステップをさらに含む、請求項10から13のいずれか一項に記載のバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置及び方法に関し、より詳しくは、バッテリーパックの充電中におけるセルの電圧挙動に対する測定値と予測値との差を統計的に分析することにより、異常兆候のあるセルを予め検出できる装置及び方法に関する。
【0002】
本出願は、2021年10月22日付け出願の大韓特許出願第10-2021-0142202号に基づく優先権を主張し、優先権の基礎となる出願の内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
充電可能な二次バッテリーは、充電できない一次バッテリーとは異なり、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットPCなどの小型先端電子機器分野だけではなく、電気自動車、エネルギー貯蔵システム(ESS)に至るまで様々な分野で広く用いられている。
【0004】
二次電池は、このように多様な分野で使用できるという効率性と便利性を有するにもかかわらず、エネルギー密度が高いという特性があって、何らかの原因で過熱状態が発生すると、爆発や火災を起こす危険性を有している。
【0005】
特に、近年のバッテリー爆発による火炎事故の発生は、二次バッテリー用市場自体の不安が高まっており、二次バッテリーの安全性の確保が最大のテーマとして言及されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の如き従来の技術の背景下で案出されたものであり、バッテリーパックの充電中に、バッテリーパック内のセルのうち異常な兆候を示すセルを予め検出することにより、バッテリーパックの安全性を向上させることができる装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を達成するための本発明の一側面によるバッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置は、バッテリーパックが充電される間に、バッテリーパックに含まれた第1~第Nのセルに対する電圧、電流及び温度を測定する電圧測定部、電流測定部及び温度測定部、並びに、前記電圧測定部、前記電流測定部及び前記温度測定部と動作可能に結合された制御部を含む。
【0008】
好ましくは、前記制御部は、バッテリーパックが複数の充電区間を有する充電プロファイルにしたがって充電される間に、各充電区間で第1~第Nのセルのそれぞれに対して、充電区間の前半部で前記電圧測定部により第1セル電圧時系列データを取得するように構成されてもよい。また、前記制御部は、前記第1セル電圧時系列データにディープラーニングモデル(深層学習モデル)を適用して、充電区間の後半部で予測セル電圧時系列データを決定するように構成されてもよい。また、前記制御部は、前記後半部で前記電圧測定部により第2セル電圧時系列データを取得し、前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの誤差を決定するように構成されてもよい。また、前記制御部は、少なくとも1つの充電区間で他のセルよりも誤差が相対的に大きいセルを異常兆候セルとして検出するように構成されてもよい。
【0009】
一側面によれば、前記制御部は、第1~第Nのセルのそれぞれに対して、充電区間別に前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの間の最大差を誤差として決定するように構成されてもよい。
【0010】
また、前記制御部は、充電区間別に第1~第Nのセルの誤差の第1平均及び第1標準偏差を決定し、充電区間別に第1~第Nのセルのそれぞれの誤差の第1標準化値に該当する「(誤差-第1平均)/第1標準偏差」を決定し、少なくとも1つの充電区間で前記第1標準化値が第1しきい値よりも大きいセルを異常兆候セルとして検出するように構成されてもよい。
【0011】
好ましくは、前記ディープラーニングモデルは、第1~第mの学習セルに対して各充電区間の前半部及び後半部でそれぞれ測定された第1セル電圧時系列データ及び第2セル電圧時系列データを用いて予め学習されたものであり、第1セル電圧時系列データの入力を受け、第2セル電圧時系列データとの誤差が最小化された予測セル電圧時系列データを出力するように予め学習されたものであってもよい。
【0012】
他の側面によれば、前記制御部は、第1~第Nのセルのそれぞれに対して、充電区間別に前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの間の最大差を誤差として決定し、充電区間別に第1~第Nのセルのそれぞれの誤差の第1標準化値に該当する「(誤差-第1平均)/第1標準偏差」を決定し、少なくとも1つの充電区間で前記第1標準化値が第1しきい値よりも大きいセルを異常兆候セルとして検出するように構成されてよい。ここで、前記第1平均及び前記第1標準偏差は、前記ディープラーニングモデルの学習過程で予め決定された値であってよい。
【0013】
選択的に、前記制御部は、バッテリーパックを構成する第1~第pのモジュールそれぞれに対して、モジュール内に含まれた複数セルのそれぞれの誤差の第2平均及び第2標準偏差を決定し、充電区間別に第1~第nセルのそれぞれの誤差の第2標準化値に該当する「(誤差-第2平均)/第2標準偏差」を決定し、少なくとも1つの充電区間で前記第1標準化値が第1しきい値よりも大きく前記第2標準化値が第2しきい値よりも大きいバッテリーセルを異常兆候セルとして検出するように構成されてもよい。
【0014】
選択的に、前記制御部は、前記第1~第Nのセルのそれぞれに対して、充電区間のシフトに伴って、前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの相対的な変化挙動が、異常兆候の類型別に予め定義された変化挙動パターンに対応するか否かをモニターし、予め定義された変化挙動パターンが基準回数以上確認されたセルの異常兆候の類型を最終決定するように構成されてもよい。
【0015】
好ましくは、前記予め定義された変化挙動パターンは、前半充電区間で前記第2セル電圧時系列データが前記予測セル電圧時系列データよりも速く増加し、後半充電区間では前記予測セル電圧時系列データが前記第2セル電圧時系列データよりも速く増加するものであり、前記異常兆候の類型は、負極でのリチウム析出であり得る。
【0016】
本発明による装置は、データ、事前定義パラメータ、プログラムまたはこれらの組み合わせが記憶される記録記憶媒体と、ディスプレイとをさらに含んでいてもよい。また、前記制御部は、前記検出された異常兆候セルに関する識別情報を前記記録媒体に記録したり、またはバッテリーパック内で異常兆候セルが検出されたことを示すメッセージを、前記ディスプレイを介して出力したり、または異常兆候セルの識別情報を通信により外部装置に送信したりするように構成されてもよい。
【0017】
本発明による技術的課題は、上述したバッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置を含むバッテリー管理システムによって達成可能である。
【0018】
前記技術的課題を達成するための本発明のさらに他の側面によるバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法は、
バッテリーパックが複数の充電区間を有する充電プロファイルにしたがって充電される間に、各充電区間において第1~第Nのセルのそれぞれに対して、(a)充電区間の前半部で第1セル電圧時系列データを取得するステップと、(b)前記第1セル電圧時系列データにディープラーニングモデルを適用して、充電区間の後半部で予測セル電圧時系列データを決定するステップと、(c)前記後半部で第2セル電圧時系列データを取得するステップと、(d)前記第2セル電圧時系列データと前記予測セル電圧時系列データとの誤差を決定するステップと、(e)少なくとも1つの充電区間で他のセルよりも誤差が相対的に大きいセルを異常兆候セルとして検出するステップと、を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バッテリーパックの充電プロファイルを複数の充電区間に分割し、充電区間別に実測電圧と予測電圧の挙動を統計的に比較分析することで、異常兆候のあるセルを容易に検出することができる。したがって、火災や爆発事故と直結する異常兆候、特に負極でのリチウム析出などの深刻な兆候を早期に捕捉して使用者に警告することによって人身事故を未然に防止することができる。また、本発明は、負極でのリチウム析出だけでなく、スウェリング(膨潤)や微小短絡現象などによって生じる電圧変化挙動をも捕捉することにより、他の異常兆候に対しても有効に対処できる。
【0020】
本明細書に添付される以下の図面は、本発明の一実施形態を例示するものであり、後述する発明の詳細な説明と共に本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項のみに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態によるバッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置の概略的な構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態による充電プロファイルの一例を示すグラフである。
図3図2に例示された充電プロファイルにしたがってバッテリーパックが充電される間のセルの電圧変化挙動を示すグラフである。
図4】本発明の実施形態による充電プロファイルに充電区間の前半部と後半部が具体的に設定された例を示すグラフである。
図5】本発明の実施形態により、第1~第mの学習セルが充電プロファイルにしたがって充電される間に各充電区間で測定された第1及び第2のセル電圧時系列データの一例を示すグラフである。
図6】異常兆候が検出された特定セルに対して、充電プロファイルの充電区間(2)の後半部で測定された第2セル電圧時系列データVk,i(j)、ディープラーニングモデルによって予測された予測セル電圧時系列データV k,i(j)、及びこれらの差に該当する「Vk,i(j)-V k,i(j)」の変化態様を示すグラフである。
図7】負極にリチウムが析出した特定セルに対して、充電プロファイルの充電区間(1)~(5)の後半部で測定された第2セル電圧時系列データVk,i(j)、ディープラーニングモデルによって予測された予測セル電圧時系列データV k,i(j)及びこれらの差に該当する「Vk,i(j)-V k,i(j)」の変化態様を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態によるバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法の流れを示すフローチャートである。
図9】本発明の実施形態によるバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法の流れを示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態によるバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態によるバッテリーパック内の異常兆候セルの検出装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【0024】
図1を参照すると、本発明の実施形態による装置10は、バッテリーパック20が充電装置30によって複数の充電区間を有する充電プロファイルにしたがって充電される間に、バッテリーパック20内の異常兆候セルを検出する装置である。
【0025】
異常兆候セルは、正常セルと異なる異常な電圧変化挙動を示すセルを意味する。例えば、リチウムポリマーセルの場合、負極でリチウムが析出したり、セルの内部でマイクロ短絡が生じたり、スウェリング現象などが生じたりすると、セル充電時に現れる電圧変化挙動が正常セルとは異なる。
【0026】
バッテリーパック20は、第1~第pのモジュール21を含む。第1~第pのモジュール21は、互いに直列接続及び/または並列接続されていてもよい。a番目のモジュールは、第1~第nのセル22を含む。nはa番目のモジュールに含まれたセルの総数である。第1~第nのセル22は互いに直列接続及び/または並列接続されていてもよい。各モジュールに含まれたセルの数は、同じでも異なっていてもよい。バッテリーパック20に含まれたセルの総数は
である。
以下、バッテリーパック20に含まれたセルの総数をNと定義し、バッテリーパック20の全セルを第1~第Nのセルと称することができる。
【0027】
一実施形態において、第1~第Nのセルは、パウチ型のリチウムポリマーセルであってもよい。しかし、本発明がセルの種類や包装材の種類等に限定されないことは自明である。したがって、本発明は、リチウム-硫黄電池、ナットチウム電池など他のタイプの二次電池セルにも適用できる。また、本発明は、円筒型セル、角型セルなどの構造を有するセルにも適用可能である。
【0028】
充電装置30は、複数の充電区間を有する充電プロファイルにしたがってバッテリーパック20に充電電流を印加する装置である。バッテリーパック20が電気自動車に搭載された場合、充電装置30は、充電ステーションであってもよい。他の例において、バッテリーパック20が電力貯蔵装置に搭載された場合、充電装置30は、電力貯蔵装置と電力グリッドとの間に設けられた電力変換システム(PCS:Power Converting System)であってもよい。PCSは、電力貯蔵装置の充放電を制御するシステムである。
【0029】
本発明において、充電プロファイルは、バッテリーパック20に供給される充電電流の大きさを時間の経過と共に変化させる方法を定義するプロトコルである。
【0030】
図2は、本発明の実施形態による充電プロファイル40の一例を示すグラフである。
【0031】
図2を参照すると、充電プロファイル40は、複数の充電区間((1)~(7))を有する。各充電区間は、充電電流の大きさ(magnitude)とデュレーション(duration)が異なる。デュレーションは、各充電区間が維持される時間区間である。
【0032】
一実施形態において、充電プロファイル40は、ステップ充電プロファイルである。ステップ充電プロファイルにおいて、充電電流の大きさは、バッテリーパック20に含まれたセルの電圧がカットオフ電圧に到達するまで段階的に減少し、その後には定電圧充電モードに応じて充電電流の大きさが調整される。
【0033】
図2において、充電区間(1)~(5)は、充電電流の大きさがカットオフ電圧まで段階的に減少する区間であり、充電区間(6)は、定電圧充電モードが適用される区間であり、充電区間(7)は、バッテリーセルが満充電になるまで実質的に0に近い小さい大きさの充電電流を印加する区間である。充電プロファイル40において、実質的な充電区間は、充電区間(1)~(6)である。
【0034】
図3は、図2に例示された充電プロファイル40にしたがってバッテリーパック20が充電される間のセルの電圧変化挙動を示すグラフである。
【0035】
セルは、3.2V~4.2Vで動作するリチウムポリマーセルである。セルの総数は100個であり、セルは退化程度が同一でないので、セルの電圧変化挙動も差を示す。
【0036】
一方、本発明は、充電プロファイル40の具体的な変化パターンによって限定されるものではない。したがって、図2の充電プロファイル40は単なる一例に過ぎない。仮に、ある充電プロファイルが複数の充電区間を有していれば、当該プロファイルは本発明による充電プロファイルに該当するということを理解しなければならない。
【0037】
再び図1を参照すると、本発明による装置10は、電圧測定部11、電流測定部12、温度測定部13及び制御部14を含む。
【0038】
電圧測定部11は、バッテリーパック20が複数の充電区間を有する充電プロファイル40にしたがって充電される間に、一定の時間間隔を置いて、バッテリーパック20に含まれた第1~第Nのセルの電圧を測定し、セル電圧測定値を制御部14に出力する。
【0039】
電圧測定部11は、当該技術分野で公知の電圧測定回路を含むことができ、電圧測定回路は広く知られているので、詳しい説明は省略する。
【0040】
電流測定部12は、バッテリーパック20が複数の充電区間を有する充電プロファイル40にしたがって充電される間に、一定の時間間隔を置いて充電電流の大きさを測定し、電流測定値を制御部14に出力する。
【0041】
電流測定部12は、電流の大きさに対応する電圧値を出力するホールセンサまたはセンス抵抗であってもよい。電圧値は、オームの法則により電流値に変化することができる。第1~第pのモジュール21のセルが直列接続され、第1~第pのモジュールも直列接続された場合、電流測定部12は、充電電流が流れる線路に設置されてもよい。このような例において、電流測定部12によって測定された電流測定値は、バッテリーパック20内に含まれた全てのセルのセル電流値に対応する。もちろん、並列接続されるセルまたは並列接続されたモジュールが存在するとき、セル電流値を測定するために、充電電流が流れる線路の適切な箇所に電流測定部12がさらに設置できることは、当業者にとって自明である。
【0042】
温度測定部13は、バッテリーパック20が複数の充電区間を有する充電プロファイル40にしたがって充電される間に、一定の時間間隔を置いて第1~第Nのセルの温度を測定し、セル温度測定値を制御部14に出力する。
【0043】
温度測定部13は、温度に対応する電圧値を出力する熱電対または温度測定素子であってもよい。電圧値は、電圧-温度変換ルックアップテーブル(関数)を用いて温度値に変化することができる。
【0044】
温度測定部13は、第1~第pのモジュール21のそれぞれに取り付けられていてもよい。この場合、各モジュールの温度を、モジュール内に含まれたセルの温度と見なすことができる。いうまでもなく、セル単位で温度測定部13が設けられるとは限らない。
【0045】
制御部14は、充電プロファイル40にしたがってバッテリーパック20が充電される間に、各充電区間において電圧測定部から周期的に第1~第Nのセルのセル電圧値の入力を受け、セルごとに第1及び第2のセル電圧時系列データを取得する。ここで、セル電圧時系列データは、複数の時点で連続して測定されたセル電圧データのセットである。
【0046】
一実施形態において、第1セル電圧時系列データは、各充電区間の前半部で測定されたセル電圧データのセットである。また、第2セル電圧時系列データは、各充電区間の後半部で測定されたセル電圧データのセットである。
【0047】
充電区間の前半部と後半部の境界は任意に設定できる。例えば、i番目の充電区間のデュレーションをTiとするとき、充電区間の前半部は充電区間の開始時点から0.3T時点までであり、充電区間の後半部は0.3T時点からT時点までであってもよい。この例では、前半部のデュレーションは0.3Tであり、後半部のデュレーションは0.7Tである。
【0048】
図4は、本発明の実施形態による充電プロファイル40に充電区間の前半部と後半部が具体的に設定された例を示すグラフである。
【0049】
同図において、縦の実線は充電区間の間の境界であり、点線は充電区間の前半部と後半部との境界である。充電区間(1)の前半部及び後半部のデュレーションは、それぞれ0.3T(1)及び0.7T(1)である。また、充電区間(2)の前半部及び後半部のデュレーションは、それぞれ0.3T(2)及び0.7T(2)である。また、充電区間(3)の前半部及び後半部のデュレーションは、それぞれ0.3T(3)及び0.7T(3)である。また、充電区間(4)の前半部及び後半部のデュレーションは、それぞれ0.3T(4)及び0.7T(4)である。また、充電区間(5)の前半部及び後半部のデュレーションは、それぞれ0.3T(5)及び0.7T(5)である。また、充電区間(6)の前半部及び後半部のデュレーションは、それぞれ0.3T(6)及び0.7T(6)である。また、充電区間(7)の前半部及び後半部のデュレーションは、それぞれ0.3T(7)及び0.7T(7)である。
【0050】
充電区間のデュレーションは充電区間ごとに異なっていてもよい。また、充電区間の前半部と後半部のデュレーションは、充電区間全体が同一であっても、充電区間ごとに異なっていてもよい。すなわち、充電区間の前半部と後半部との境界は、充電区間のデュレーション内で任意の時点に設定できる。
【0051】
制御部14は、各充電区間において電圧測定部11により第1~第Nのセルに対する第1及び第2のセル電圧時系列データを取得することとは別に、各充電区間において第1セル電圧時系列データにディープラーニングモデルを適用して、充電区間の後半部で予測セル電圧時系列データを決定することができる。
【0052】
ディープラーニングモデルは、バッテリーパック20内のセルと仕様が同一である第1~第mの学習セルが上述の充電プロファイル40にしたがって充電される間に、各学習セルに対して、各充電区間の前半部で測定された第1セル電圧時系列データの入力を受け、当該充電区間の後半部で測定された第2セル電圧時系列データとの誤差が最小化された予測セル電圧時系列データを出力できるように予め学習されたモデルである。
【0053】
図5は、本発明の実施形態により、第1~第mの学習セルが充電プロファイル40にしたがって充電される間に各充電区間で測定された第1及び第2のセル電圧時系列データの一例を示すグラフである。
【0054】
図5の上段のグラフは、m個の学習セルのうち100個に対する電圧曲線を重ね合わせることにより例示したものであり、図5の下段のグラフは、充電区間(1)~(7)で測定された第1セル電圧時系列データ及び第2セル電圧時系列データを例示したものである。
【0055】
好ましくは、ディープラーニングモデルの学習時には、モデルの正確度と信頼度を向上させるために、それぞれ異なる退化度を有する数千~数万の学習セルが用いられてもよい。
【0056】
図5を参照すると、ディープラーニングモデルは、充電区間(1)の前半部で学習セルに対して測定した第1セル電圧時系列データXの入力を受け、充電区間(1)の後半部で学習セルに対して測定した第2セル電圧時系列データYとの誤差が最小化された予測セル電圧時系列データを出力できるように予め学習されてもよい。また、充電区間(2)の前半部で学習セルに対して測定した第1セル電圧時系列データXの入力を受け、充電区間(2)の後半部で学習セルに対して測定した第2セル電圧時系列データYとの誤差が最小化された予測セル電圧時系列データを出力できるように予め学習されてもよい。また、充電区間(3)の前半部で学習セルに対して測定した第1セル電圧時系列データXの入力を受け、充電区間(3)の後半部で学習セルに対して測定した第2セル電圧時系列データYとの誤差が最小化された予測セル電圧時系列データを出力できるように予め学習されてもよい。また、充電区間(4)の前半部で学習セルに対して測定した第1セル電圧時系列データXの入力を受け、充電区間(4)の後半部で学習セルに対して測定した第2セル電圧時系列データYとの誤差が最小化された予測セル電圧時系列データを出力できるように予め学習されてもよい。また、充電区間(5)の前半部で学習セルに対して測定した第1セル電圧時系列データXの入力を受け、充電区間(5)の後半部で学習セルに対して測定した第2セル電圧時系列データYとの誤差が最小化された予測セル電圧時系列データを出力できるように予め学習されてもよい。また、充電区間(6)の前半部で学習セルに対して測定した第1セル電圧時系列データXの入力を受け、充電区間(6)の後半部で学習セルに対して測定した第2セル電圧時系列データYとの誤差が最小化された予測セル電圧時系列データを出力できるように予め学習されてもよい。また、充電区間7の前半部で学習セルに対して測定した第1セル電圧時系列データXの入力を受け、充電区間7の後半部で学習セルに対して測定した第2セル電圧時系列データYとの誤差が最小化された予測セル電圧時系列データを出力できるように予め学習されてもよい。
【0057】
より好ましくは、ディープラーニングモデルの学習に使用されるデータは、充電区間の前半部で測定された第1セル電圧時系列データだけでなく、充電区間の前半部で測定されたセル電流及びセル温度に関する時系列データをさらに含んでいてもよい。この場合、ディープラーニングモデルは、充電区間の前半部で測定された第1セル電圧時系列データ、セル電流時系列データ及びセル温度時系列データの入力を受け、充電区間の後半部で測定された第2セル電圧時系列データとの誤差が最小化された予測セル電圧時系列データを出力できるように学習されてもよい。
【0058】
好ましくは、ディープラーニングモデルは、セル電圧の時系列挙動を予測するのに適した人工ニューラルネットワーク(人工神経網)に基づくモデルであれば、制限なく使用できる。例えば、人工ニューラルネットワークは、リカレントニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolution Neural Network)などであってもよい。しかし、人工ニューラルネットワークの種類によって本発明が限定されるものではない。
【0059】
制御部14は、バッテリーパック20内の第1~第Nのセルのそれぞれに対して、各充電区間の後半部で第2セル電圧時系列データ及び予測セル電圧時系列データを取得した後、第2セル電圧時系列データ(測定値)と予測セル電圧時系列データ(予測値)との誤差を決定することができる。
【0060】
また、制御部14は、第1~第Nのセルのそれぞれに対して、各充電区間で決定した第2セル電圧時系列データと予測セル電圧時系列データとの誤差をモニターし、少なくとも1つの充電区間で相対的に誤差の大きいセルを異常兆候セルとして検出することができる。
【0061】
具体的に、制御部14は、第1セルに対して、下記の数式1を用いて、各充電区間別に、第2セル電圧時系列データVk、1(j)と予測セル電圧時系列データVk、1 (j)との間の誤差Ek、1を算出することができる。
【0062】
<数式1>
k,i=max(|Vk,i(j)-V k,i(j)|)、1≦j≦Nummeasure
k:充電区間のインデックス
k,i:i番目のバッテリーセルに対するk番目の充電区間の誤差
k,i(j):i番目のバッテリーセルに対するk番目の充電区間の後半部でj番目測定された第2セル電圧
k,i(j):i番目のバッテリーセルに対するk番目の充電区間の後半部でディープラーニングモデルによってj番目に予測された予測セル電圧
Nummeasure:k番目の充電区間の後半部でセル電圧を測定した総回数、またはk番目の充電区間の後半部でディープラーニングモデルを用いてセル電圧を予測した総回数
max( ):複数の入力値の中から最大値を返す関数
【0063】
また、制御部14は、第2~第Nのセルに対しても、各充電区間別に、第2セル電圧時系列データと予測セル電圧時系列データとの間の誤差Ek,2、Ek,3、...、Ek,nを算出することができる。
【0064】
図6は、異常兆候が検出された特定セルに対して、充電プロファイル40の充電区間(2)の後半部で測定された第2セル電圧時系列データVk,i(j)、ディープラーニングモデルによって予測された予測セル電圧時系列データV k,i(j)及びこれらの差に該当する「Vk,i(j)-V k,i(j)」の変化態様を示すグラフである。
【0065】
黒い実線はVk,i(j)であり、黒い点線はV k,i(j)である。図6に示すように、異常兆候があるセルは、特定の充電区間で「Vk,i(j)-V k,i(j)」が有意なレベルに増加することが分かる。したがって、誤差Ek,iは、異常兆候セルの検出のためのパラメータとして使用可能である。参考までに、異常兆候がないセルの第2セル電圧時系列データと予測セル電圧時系列データとが灰色の線で示されており、互いに一致して明確に区別できない。
【0066】
また、制御部14は、下記の数式2を用いて、各充電区間別に、第1~第Nのセルの誤差Ek,iに対する第1平均Avrと第1標準偏差σを決定してもよい。
【0067】
<数式2>
Avr=mean(Ek,i),1≦i≦N
σ=std(Ek,i),1≦i≦N
i:セルのインデックス
N:バッテリーパック内のセル数
k:充電区間のインデックス
k,i:i番目のバッテリーセルに対するk番目の充電区間の誤差
mean( ):複数の入力値の平均値を返す関数
std( ):複数の入力値の標準偏差を返す関数
【0068】
また、制御部14は、下記の数式3を用いて、各充電区間別に、第1~第Nのセルのそれぞれの誤差Ek,iに対する第1標準化値Std_Valuek,iを決定してもよい。充電区間の数をNumchargeとするとき、各セルに対する第1標準化値Std_Valuek,iの数は、Numcharge個である。
【0069】
<数式3>
Std_Valuek,i=(Ek,i-AVr)/σ,1≦k≦Numcharge
i:セルのインデックス
k:充電区間のインデックス
Numcharge:充電区間の数
AVr:k番目の充電区間の第1平均
σ:k番目の充電区間の第1標準偏差
【0070】
また、制御部14は、バッテリーパック20の第1~第Nのセルのうち少なくとも1つの充電区間において、第1標準化値Std_Valuek,iが予め設定された第1しきい値よりも大きいセルを異常兆候セルとして検出することができる。
【0071】
第1標準化値Std_Valuek,ik番目の充電区間で決定されたi番目のセルの誤差Ek,iが、誤差の標準偏差σを基準とするとき、誤差の平均値AVrからどの程度離れているかを示すファクターである。
【0072】
例えば、Std_Valuek,iが2であれば、Ek,iと誤差平均との間の差は誤差標準偏差の2倍である。したがって、k番目の充電区間において第1標準化値Std_Valuek,iが他のセルよりも相対的に大きいセルは、測定されたセル電圧と予測されたセル電圧との間の誤差が相対的に大きいため、異常兆候が発現する可能性があるセルと見なすことができる。というのは、異常兆候セルの電圧変化挙動(第2セル電圧の変化挙動)と、正常セルの電圧変化挙動(予測セル電圧の変化挙動)との偏差が大きいからである。
【0073】
好ましくは、第1しきい値は、3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは4.5以上に設定されてもよい。
【0074】
一方、数式3において、各充電区間の第1平均AVr及び第1標準偏差σは、ディープラーニングモデルの学習過程において予め決定されてもよい。すなわち、ディープラーニングモデルの学習が完了した後、第1~第mの学習セルを複数の充電区間を有する充電プロファイル40にしたがって充電を行いながら、第1セル電圧時系列データ、第2セル電圧時系列データ及び予測セル電圧時系列データを収集した後、各学習セルに対して各充電区間の誤差Ek,iを決定してもよい。また、各充電区間別に、数式2を用いて算出される誤差Ek,iの平均及び標準偏差を、それぞれ第1平均AVr及び第1標準偏差σとして予め設定してもよい。
【0075】
選択的に、制御部14は、下記の数式4を用いて、モジュール単位で誤差Ek,iの第2平均AVrk、a及び第2標準偏差σk、aを決定することができる。好ましくは、第2平均AVrk,a及び第2標準偏差σk,aは、各充電区間別に決定される。
【0076】
<数式4>
vrk,a=mean(Ek,i@a),1≦i≦n,1≦k≦Numcharge
σk,a=std(Ek,i),1≦i≦n,1≦k≦Numcharge
a:モジュールのインデックス
i:セルのインデックス
:a番目のモジュールに含まれているセルの総数
k:充電区間のインデックス
Numcharge:充電区間の総数
k,i@a:a番目のモジュール内のi番目のセルに対するk番目の充電区間の誤差
mean( ):複数の入力値の平均値を返す関数
std( ):複数の入力値の標準偏差を返す関数
【0077】
また、制御部14は、各充電区間別に、下記の数式5を用いて、第1~第Nのセルのそれぞれの誤差Ek,iに対するモジュール内での第2標準化値Std_Value k,iを決定することができる。各セルに対するモジュール内の第2標準化値Std_Value k,iの数はNumcharge個である。
【0078】
<数式5>
Std_Value k,i=(Ek,i-AVrk,a)/σk,a,1≦i≦N,1≦a≦p,1≦k≦Numcharge
i:バッテリーセルのインデックス
N:セルの総数
a:モジュールのインデックス
p:モジュールの総数
k:充電区間のインデックス
Numcharge:充電区間の総数
AVrk,a:セルを含むモジュールによって定義される第2平均
σk,a:セルを含むモジュールによって定義される第2標準偏差
【0079】
また、制御部14は、少なくとも1つの充電区間において第1標準化値Std_Valuek,iが第1しきい値よりも大きく、モジュール内での第2標準化値Std_Value k,iが第2しきい値よりも大きいセルを異常兆候セルとして検出するように構成されてもよい。
【0080】
第2標準化値Std_Value k,ik番目の充電区間で決定されたセルの誤差Ek,iが、誤差のモジュール内の標準偏差σk,aを基準とするとき、誤差のモジュール内の平均値AVrk,aからどの程度離れているかを示すファクターである。
【0081】
例えば、Std_Value k,iが2であれば、Ek,iとモジュール内の誤差平均との間の差はモジュール内の誤差標準偏差の2倍である。したがって、1つのモジュール内での第2標準化値Std_Value k,iが他のセルよりも大きいセルは、測定されたセル電圧と予測されたセル電圧との間の誤差がモジュール内の他のセルよりも相対的に大きいので、異常兆候が発現する可能性があるセルと見なすことができる。
【0082】
好ましくは、第2しきい値は第1しきい値よりも小さくてもよい。例えば、第2しきい値は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下に設定されてもよい。
【0083】
選択的に、制御部14は、バッテリーセルの異常兆候の類型を検出するロジックをさらに行うことができる。
【0084】
具体的に、制御部14は、各充電区間の後半部で測定した第1~第Nのセルの第2セル電圧時系列データと、各充電区間の後半部で予測した予測セル電圧時系列データとの相対的な変化挙動が、充電区間のシフトに伴って異常兆候類型別に予め定義された変化挙動パターンを示すか否かをモニターすることができる。また、制御部14は、複数の充電サイクルが行われる間、同一のセルにおいて予め定義された変化挙動が基準回数以上感知されると、当該セルを異常兆候セルと識別し、異常兆候の類型を決定することができる。
【0085】
一例において、リチウムポリマーセルは、負極でリチウム析出が生じると、充電前半の充電区間で第2セル電圧時系列データが予測セル電圧時系列データよりも速く増加する。これは、負極でリチウム析出が生じると、充電前半部に負極の電位が増加するからである。セル電圧は正極電位と負極電位との差に該当するので、負極電位が増加すると、セル電圧の変化の傾きが増加する。その結果、前半の充電区間で第2セル電圧が予測セル電圧よりも速く増加する。というのは、予測セル電圧は、ディープラーニングモデルによって予測された電圧であるため、充電前半部では正常セルに近い電圧変化挙動を示すので、セル電圧の増加が急激ではないからである。
【0086】
また、これに対して、充電後半部の充電区間では、予測セル電圧時系列データが第2セル電圧時系列データよりも速く増加する。これは、充電が進むにつれて、負極の電位が徐々に低下し、負極からリチウムが析出すると、電気化学的反応に関与するリチウムの量が減少するため、負極の電位低下が減殺されるためである。負極の電位低下が減殺されれば、それだけセル電圧の増加も減殺されるからである。その結果、後半の充電区間では、予測セル電圧がかえって第2セル電圧よりも速く増加する。これは、予測セル電圧がディープラーニングモデルによって予測された電圧であるため、充電後半部においても正常セルに近い電圧変化挙動を示すので、負極の電位低下が減殺されないからである。
【0087】
図7は、負極にリチウムが実際に析出した特定のセルに対して、充電プロファイル40の充電区間(1)~(5)の後半部で測定された第2セル電圧時系列データVk,i(j)、ディープラーニングモデルによって予測された予測セル電圧時系列データV k,i(j)、及びこれらの差に該当する「Vk,i(j)-V k,i(j)」の変化態様を示すグラフである。各グラフにおいて、横軸は時間(秒)であり、縦軸は電圧(milli-volt)である。
【0088】
黒い実線はVk,i(j)であり、黒い点線はV k,i(j)である。図7に示すように、リチウム析出が生じたセルは、充電前半区間(1)において第2セル電圧時系列データが予測セル電圧時系列データよりも速く増加する。また、これに対し、充電区間(3)、(4)及び(5)では、予測セル電圧時系列データが第2セル電圧時系列データよりも速く増加する。異常兆候のないセルの第2セル電圧時系列データと予測セル電圧時系列データは、灰色の線で示し、互いに一致して明確に区別できない。
【0089】
一実施形態において、制御部14は、第1~第Nのセルのうち、前半の充電区間で第2セル電圧時系列データが予測セル電圧時系列データよりも速く増加し、後半の充電区間で予測セル電圧時系列データが第2セル電圧時系列データよりも速く増加する挙動を示すセルが確認されると、当該セルの負極にリチウムが析出した異常兆候があると識別してもよい。
【0090】
選択的に、制御部14は、複数の充電区間を含む充電プロファイル40にしたがってバッテリーパック20を充電する間、第1~第Nのセルのうち、前半の充電区間で第2セル電圧時系列データが予測セル電圧時系列データよりも速く増加し、後半の充電区間で予測セル電圧時系列データが第2セル電圧時系列データよりも速く増加する挙動を示すセルが確認されると、その度に当該セルに対して異常兆候カウントを1つずつ増加させてもよい。
【0091】
また、制御部14は、異常兆候カウントが基準回数以上である場合、当該セルの負極にリチウムが析出した異常兆候があると最終決定してもよい。
【0092】
再び図1を参照すると、本発明による装置10は、データ、事前定義パラメータ、プログラムまたはこれらの組み合わせが記憶される記録媒体15及びディスプレイ16をさらに含んでいてもよい。
【0093】
制御部14は、前述した実施形態により異常兆候セルを検出すると、異常兆候セルの識別情報及び/または異常兆候類型に関する情報を、タイムスタンプと共に記録媒体15に記録してもよい。
【0094】
異常兆候セルの識別情報は、バッテリーパック20のモデルコード、異常兆候セルを含むモジュールコード、異常兆候セルの生産ロット番号またはこれらの組み合わせを含む。異常兆候の類型に関する情報は、負極でのリチウム析出を示す診断コードを含んでいてもよい。
【0095】
また、制御部14は、前述した実施形態により異常兆候セルを検出すると、バッテリーパック20内で異常兆候セルが検出されたことを示すメッセージを、ディスプレイ16を介して出力するように構成されてもよい。
【0096】
ディスプレイ16は、バッテリーパック20が電気自動車に搭載された場合、電気自動車の計器盤または車両統合制御ディスプレイであってもよい。他の例では、バッテリーパック20が電力貯蔵装置に搭載された場合、ディスプレイ16は電力貯蔵装置の統合制御コンピュータに含まれたディスプレイであってもよい。しかし、ディスプレイの種類によって本発明が限定されるものではない。
【0097】
一方、本発明による装置10は、通信インタフェース17をさらに含んでいてもよい。この場合、制御部14は、通信インタフェース17を介して異常兆候セルに関する識別情報及び/または異常兆候の類型に関する情報を外部デバイスへ送信することができる。
【0098】
通信インタフェース17は、有線通信または無線通信をサポートする。通信インタフェース17は、コントローラエリアネットワーク(CAN:Controller Area Network)、デイジーチェーン(Daisy Chain)、RS-232などによるデータ送受信をサポートすることができる。また、通信インタフェース17は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、またはZigbee(登録商標)などの近距離無線通信を介してデータ送受信をサポートすることができる。また、通信インタフェース17は、有無線インターネット、基地局通信、衛星通信を介した広域データ送受信をサポートすることができる。
【0099】
外部デバイスは、充電装置であってもよい。他の例において、外部デバイスは、バッテリーパック20の状態情報を収集するクラウドサーバであってもよい。さらに他の例において、外部デバイスは、バッテリーパック20の性能を点検する診断装置であってもよい。
【0100】
本発明において、制御部14は、種々の制御ロジッグを実行するために、当該技術分野で公知のプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC:application-specific integrated circuit)、他のチップセット、論理回路、レジスタ、通信モデム、データ処理装置などを選択的に含んでいてもよい。
【0101】
記録媒体15は、情報の記録及び消去が可能な媒体であれば、その種類に特に制限はない。例えば、記録媒体15は、ハードディスク、RAM、ROM、EEPROM、レジスタ、またはフラッシュメモリであってもよい。記録媒体15は、制御部14が実行する制御ロジックを含むプログラム、及び/または制御ロジックが実行されるときに発生するデータと事前に定義されるルックアップテーブル、関数、パラメータ、化学的/物理的/電気的定数などを記憶及び/または更新及び/または消去及び/または送信することができる。
【0102】
制御部14の少なくとも1つの制御ロジッグを組み合わせることができ、組み合わせられた制御ロジッグをコンピュータ可読コードセットで作成し、記録媒体15に記録することができる。前記コードセットは、ネットワークを介して接続されたコンピュータに分散されて格納され、実行されてもよい。また、前記組み合わせられた制御ロジックを実現するための機能的なプログラム、コード及びコードセグメントは、本発明が属する技術分野のプログラマによって容易に推論できる。
【0103】
本発明による装置10は、バッテリー管理システムやバッテリー診断システムに含まれていてもよい。バッテリー管理システムは、バッテリーパック20の全般的な動作を制御するシステムである。このようなバッテリー管理システムは、バッテリーパック20が搭載される負荷装置、例えば、電気自動車、電力貯蔵装置などに含まれた統合制御システムであってもよい。本発明による装置10は、バッテリー管理システムやバッテリー診断システムの他にも、必要に応じて他の装置またはシステムの一部として含まれていてもよい。
【0104】
以下では、図8図10を参照して、本発明の実施形態によるバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法について説明する。
【0105】
図8を参照すると、まず、ステップS10において、充電装置30は、複数の充電区間を含む充電プロファイル40にしたがって充電電流をバッテリーパック20に印加する。充電装置30は、電気自動車の充電ステーションまたは電力貯蔵装置のPCSであってもよい。
【0106】
充電電流の印加は、制御部14の要求によって開始されてもよい。すなわち、制御部14は、充電ケーブルがバッテリーパック20の高電位ラインと低電位ラインに接続されていることを認識し、充電開始を充電装置側に要求することができる。代替的に、充電電流の印加は、充電装置30がバッテリーパック20に接続されれば、自動的に開始されてもよい。
【0107】
次いで、ステップS20において、制御部14は、充電プロファイル40にしたがってバッテリーパック20が充電される間に、各充電区間でバッテリーパック20内の第1~第Nのセルに対して電圧測定部から周期的にセル電圧値の入力を受けて第1及び第2のセル電圧時系列データを取得する。
【0108】
続いて、ステップS30において、制御部140は、各充電区間で電圧測定部11により第1及び第2のセル電圧時系列データを取得することとは別に、第1~第Nのセルに対して、各充電区間で第1セル電圧時系列データに予め学習されたディープラーニングモデルを適用して、当該充電区間の後半部で予測セル電圧時系列データを決定する。
【0109】
次いで、ステップS40において、制御部14は、第1~第Nのセルに対して、数式1を用いて、各充電区間での第2セル電圧時系列データと予測セル電圧時系列データとの間の誤差Ek,iを算出する。ステップS40において、充電区間の数をNumchargeとするとき、誤差Ek,iの総数はNumcharge*N個である。
【0110】
続いて、ステップS50において、制御部14は、数式2を用いて、各充電区間別に第1~第Nのセルの誤差Ek,iに対する第1平均Avrと第1標準偏差σを決定する。
【0111】
次いで、ステップS60において、制御部14は、数式3を用いて、各充電区間別に第1~第Nのセルのそれぞれの誤差Ek,iに対する第1標準化値Std_Valuek,iを決定する。充電区間の数をNumchargeとするとき、第1標準化値Std_Valuek,iの総数はNumcharge*N個である。
【0112】
続いて、ステップS70において、制御部14は、少なくとも1つの充電区間で、第1標準化値Std_Valuek,iが予め設定された第1しきい値よりも大きいセルを異常兆候セルとして検出することができる。
【0113】
ステップS70の後、ステップS80またはステップS90を選択的に行ってもよい。
【0114】
ステップS80において、制御部14は、異常兆候セルを検出すると、異常兆候セルの識別情報及び/または異常兆候類型に関する情報を、タイムスタンプと共に記録媒体15に記録してもよい。異常兆候セルの識別情報は、バッテリーパック20のモデルコード、異常兆候セルが属するモジュールコード、異常兆候セルの生産ロット番号またはこれらの組み合わせを含む。異常兆候の類型に関する情報は、負極でのリチウム析出を示す診断コードを含んでいてもよい。
【0115】
また、ステップS90において、制御部14は、異常兆候セルを検出すると、バッテリーパック20内で異常兆候セルが検出されたことを示すメッセージを、ディスプレイ16を介して出力してもよい。メッセージが出力されれば、ユーザは、バッテリーパック20の使用を停止してバッテリーパック20を交換することができ、または修理点やASセンターなどでバッテリーパック20の精密検査を要求することができる。
【0116】
なお、ステップS50は省略してもよい。この場合、第1平均AVr及び第1標準偏差σは、ディープラーニングモデルの学習過程で予め決定されてもよい。すなわち、ディープラーニングモデルの学習が完了した後、第1~第mの学習セルを充電プロファイル40にしたがって充電を行いながら、各学習セルに対して各充電区間の誤差Ek,iを決定してもよい。また、数式2を用いて、各充電区間別に誤差Ek,iの平均と標準偏差を算出し、算出された値をそれぞれ第1平均AVr及び第1標準偏差σとして予め設定してもよい。ディープラーニングモデルの学習過程で設定された第1平均AVr及び第2標準偏差σは、記録媒体15に予め記憶されてもよく、ステップS60が行われる際に制御部14によって参照されてもよい。
【0117】
好ましい実施形態において、ステップS60後のステップは、図9に示すように変形可能である。
【0118】
すなわち、ステップS100において、制御部14は、数式4を用いて、モジュール単位で各充電区間における誤差Ek,iの第2平均AVrk、aと第2標準偏差σk、aを決定してもよい。
【0119】
次いで、ステップS110において、制御部14は、数式5を用いて、各充電区間別に第1~第Nのセルのそれぞれの誤差Ek,iに対するモジュール内での第2標準化値Std_Value k,iを決定する。充電区間の数をNumchargeとするとき、各セルに対するモジュール内の第2標準化値Std_Value k,iの数は、Numcharge個である。
【0120】
続いて、ステップS120において、制御部14は、少なくとも1つの充電区間で、第1標準化値Std_Valuek,iが第1しきい値よりも大きく、同時にモジュール内での第2標準化値Std_Value k,iが第2しきい値よりも大きいセルを異常兆候セルとして検出することができる。
【0121】
好ましくは、第2しきい値は第1しきい値よりも小さくてもよい。例えば、第1しきい値は3.0以上、好ましくは4.0以上、より好ましくは4.5以上であってもよい。また、第2しきい値は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下に設定されてもよい。
【0122】
ステップS120の後には、ステップS80またはステップS90を、前述した実施形態と実質的に同様にして実施してもよい。
【0123】
すなわち、制御部14は、バッテリーパック20内の異常兆候セルを検出すると、異常兆候セルの識別情報及び/または異常兆候類型に関する情報を、タイムスタンプと共に記録媒体15に記録してもよい。異常兆候セルの識別情報は、バッテリーパック20のモデルコード、異常兆候セルが属するモジュールコード、異常兆候セルの生産ロット番号またはこれらの組み合わせを含む。異常兆候の類型に関する情報は、負極でのリチウム析出を示す診断コードを含んでいてもよい。
【0124】
また、制御部14は、バッテリーパック20内の異常兆候セルを検出すると、バッテリーパック20内で異常兆候セルが検出されたことを示すメッセージを、ディスプレイ16を介して出力してもよい。
【0125】
本発明によるバッテリーパック内の異常兆候セルの検出方法は、バッテリーセルの異常兆候の類型を識別するステップをさらに含み得る。
【0126】
図10に示すように、ステップS130において、制御部14は、各充電区間の後半部で測定した第1~第Nのセルの第2セル電圧時系列データと、各充電区間の後半部で予測した予測セル電圧時系列データとの相対的な変化挙動が、充電区間のシフトに伴って、異常兆候の類型別に予め定義された変化挙動パターンを示すか否かをモニターしてもよい。
【0127】
一実施形態において、制御部14は、第1~第Nのセルのうち、前半の充電区間で第2セル電圧時系列データが予測セル電圧時系列データよりも速く増加し、後半の充電区間で予測セル電圧時系列データが第2セル電圧時系列データよりも速く増加する挙動パターンを示すバッテリーセルが存在する否かをモニターしてもよい。
【0128】
続いて、ステップS140において、制御部14は、第2セル電圧時系列データと予測セル電圧時系列データとの相対的な変化挙動が、異常兆候の類型によって予め定義された変化挙動パターンに対応するか否かを判断する。
【0129】
ステップS140の結果がYESであれば、ステップS150に進む。逆に、ステップS140の結果がNOであれば、プロセスはステップS130に戻る。
【0130】
ステップS140の結果がYESであれば、制御部140は、ステップS150において予め定義された変化挙動パターンに対応する異常兆候の類型を識別する。一実施形態において、制御部14は、第1~第Nのセルのうち、前半の充電区間で第2セル電圧時系列データが予測セル電圧時系列データよりも速く増加し、後半の充電区間で予測セル電圧時系列データが第2セル電圧時系列データよりも速く増加する挙動パターンを示すバッテリーセルが確認されれば、当該セルの負極にリチウムが析出した異常兆候があると識別することができる。
【0131】
次いで、ステップS160において、制御部14は、異常兆候の類型(例えば、負極でのリチウム析出)が識別された当該セルに対して異常兆候カウントを1増加させる。
【0132】
次いで、ステップS170において、制御部14は、異常兆候カウントが基準回数を超えているか否かを判断する。
【0133】
ステップS170の判断がYESであれば、ステップS180に進む。逆に、S170の判断がNOであれば、プロセスはステップS130に戻る。
【0134】
ステップS170の判断がYESであれば、制御部14は、ステップS180において異常兆候カウントが基準回数を超えているセルに対して異常兆候の類型(例えば、負極でのリチウム析出)を最終決定する。
【0135】
ステップS180が行われた後に、前述した実施形態と同様にしてステップS80またはステップS90が行われてもよい。
【0136】
すなわち、制御部14は、バッテリーパック20内での特定セルに対する異常な兆候を識別し、異常兆候の類型を最終決定すると、異常兆候セルの識別情報及び異常兆候の類型に関する情報を、タイムスタンプと共に記録媒体15に記録することができる。異常兆候セルの識別情報は、バッテリーパック20のモデルコード、異常兆候セルが属するモジュールコード、異常兆候セルの生産ロット番号、またはこれらの組み合わせを含む。異常兆候の類型に関する情報は、負極でのリチウム析出を示す診断コードを含んでいてもよい。
【0137】
また、制御部14は、バッテリーパック20内で異常兆候セルが識別され、異常兆候の類型が最終決定されると、バッテリーパック20内で異常兆候セルが検出されたことを示すメッセージを、異常兆候の類型に関する情報と共にディスプレイ16を介して出力してもよい。
【0138】
一方、制御部14は、通信インタフェース17を介して、異常兆候セルに関する識別情報及び/または異常兆候の類型に関する情報を、外部デバイスに送信することができる。通信インタフェース17は、有線通信または無線通信をサポートすることができる。
【0139】
外部デバイスは、充電装置であってもよい。他の例において、外部デバイスは、バッテリーパック20の状態情報を収集するクラウドサーバであってもよい。さらに他の例において、外部デバイスは、バッテリーパック20の性能を点検する診断装置であってもよい。
【0140】
本発明において、異常兆候類型は、負極でのリチウム析出の外にも、セルスウェリング、内部微小短絡などの他の異常兆候の類型を含んでいてもよい。各異常兆候の類型において、充電区間のシフトに伴って第2セル電圧時系列データ及び予測セル電圧時系列データがどのような相対的な変化挙動パターンを示すかが実験によって容易に確認できることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0141】
本発明によれば、バッテリーパック20の充電プロファイルを複数の充電区間に分割し、充電区間別に実測電圧と予測電圧の挙動を統計的に比較分析することで、異常兆候のあるセルを容易に検出することができる。したがって、火災や爆発事故と直結する異常兆候、特に負極でのリチウム析出などの深刻な兆候を早期に捕捉して使用者に警告することによって人身事故を未然に防止することができる。また、本発明は、負極でのリチウム析出だけでなく、スウェリングや微小短絡現象等によって生じる電圧変化挙動も捕捉することにより、他の異常兆候にも有効に対処できる。
【0142】
以上、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10