(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】チタン含有複合材料
(51)【国際特許分類】
C08G 79/00 20060101AFI20241217BHJP
C08G 77/58 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C08G79/00
C08G77/58
(21)【出願番号】P 2020202961
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】芝本 明弘
(72)【発明者】
【氏名】西田 一博
(72)【発明者】
【氏名】金子 芳郎
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/032868(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/106860(WO,A1)
【文献】特開2018-150530(JP,A)
【文献】特表2013-534459(JP,A)
【文献】特表2009-513788(JP,A)
【文献】特開2018-192704(JP,A)
【文献】特開2010-209288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00- 75/32;79/00-79/14
C08G 77/00- 77/62
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位
[RSiO
3/2] (1)
[式(1)中、Rは、
下記式(1-1)で表される基である。
-R
1
-(OR
2
)
n
-OR
3
(1-1)
[式(1-1)中、R
1
は単結合または連結基を示し、R
2
は炭素数2~8のアルキレン基を示し、R
3
は炭素数1~4の炭化水素基を示し、nは2~30の整数を示し、式の左から伸びる結合手は式(1)中のケイ素原子に結合する。前記連結基は、二価の炭化水素基、ウレタン結合、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、およびこれら一種以上が複数個連結した基からなる群より選択される少なくとも一種である。]]
とTiO
2骨格とを有し、Ti-O-Si結合を有
し、
前記式(1)で表される構成単位を含むポリシルセスキオキサン骨格を有し、
前記TiO
2
骨格からなるコア部と、前記式(1)で表される構成単位を含むポリシルセスキオキサンからなるシェル部とを有するコアシェル構造を含む、チタン含有複合材料。
【請求項2】
ジメチルスルホキシドに分散させた際のジメチルスルホキシド中の前記複合材料の分散粒子の平均粒径が100nm以下である請求項
1に記載のチタン含有複合材料。
【請求項3】
ケイ素原子とチタン原子の原子数比(後者/前者)が0.05~1.0である、請求項1
または2に記載のチタン含有複合材料。
【請求項4】
下記式(A)で表される化合物と下記式(B)で表される化合物とを、水および酸触媒の存在下で反応させ、加水分解および縮合させる加水分解・縮合工程を備える、請求項1~
3のいずれか1項に記載のチタン含有複合材料の製造方法。
RSi(OR
a)
3 (A)
[式(A)中、Rはポリオキシアルキレン鎖を含む基を示し、R
aは炭素数1~4の炭化水素基を示す。]
Ti(OR
b)
4 (B)
[式(B)中、R
bは、炭素数1~6の炭化水素基を示す。]
【請求項5】
前記加水分解・縮合工程は、前記式(A)で表される化合物と前記式(B)で表される化合物とを、水を添加しない系において前記酸触媒下で反応させ縮合させる縮合段階と、前記縮合段階後、水を添加して水の存在下で加水分解および縮合させる加水分解・縮合段階とを備える、請求項
4に記載のチタン含有複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記酸触媒は酸性アルコールを含む請求項
5に記載のチタン含有複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記加水分解・縮合工程をゾル-ゲル法で行う請求項
4~
6のいずれか1項に記載のチタン含有複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チタン含有複合材料に関する。より詳細には、チタンおよびケイ素を含む複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックなどの有機系樹脂は、屋外の環境に長時間さらされることで徐々に劣化する。これは主に、太陽光からの紫外線がそのエネルギーでポリマー中の結合を切断する直接的な効果と、それによって生じた反応性の高いラジカルが連鎖的にポリマーを破壊していく副次的な効果によるものである。そこで、屋外用途での有機系樹脂材料は、紫外線吸収剤を有機系樹脂材料表面にコーティングして、あるいは材料中に混ぜて使用されている。
【0003】
紫外線吸収剤として、主に紫外線吸収能を有する芳香族有機化合物や酸化チタンなどの金属酸化物が知られている。芳香族有機化合物は、有機系樹脂との相溶性に優れるため透明性を必要とする用途においてよく用いられる。しかし、芳香族有機化合物は紫外線にさらされることで不可逆的な異性化等により機能が低下するといった問題がある。一方、酸化チタンは、芳香族有機化合物と比較して安定性に優れるが、有機系樹脂との相溶性が悪いという問題がある。
【0004】
酸化チタンと有機系樹脂との相溶性を向上させることを目的として、シランカップリング剤や界面活性剤などの分散剤を用いる方法が知られている。しかし、このような方法を採用した場合であっても、芳香族有機化合物と比較して有機系樹脂との相溶性が劣る、分散組成物やその成形品の透明性が劣る、結晶性(アナターゼ型)酸化チタンを用いるためその光触媒作用により紫外線起因の劣化以上に樹脂を劣化させやすいという問題があった。
【0005】
有機系樹脂との相溶性にさらに優れる酸化チタンとして、酸化チタン表面に、アミノプロピルトリメトキシシランに由来するシルセスキオキサン骨格を導入した複合材料や、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを導入した複合材料が知られている(特許文献1、非特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Journal of Nanoscience and Nanotechnology, (米), 2011, Vol. 11, No. 3, p. 2458-2464
【文献】Journal of Nanoscience and Nanotechnology, (米), 2020, Vol. 20, No. 5, p. 2755-2762
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記複合材料であっても、有機溶媒中の分散性が劣る場合や、有機系樹脂に配合した際の透明性が劣る場合があった。
【0009】
従って、本開示の目的は、有機溶媒中の分散性および有機系樹脂に配合した際の透明性に優れ、紫外線吸収能を有し、その機能が低下しにくい複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定のチタン含有複合材料が、有機溶媒中の分散性および有機系樹脂に配合した際の透明性に優れ、紫外線吸収能を有し、その機能が低下しにくいことを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものに関する。
【0011】
本開示は、下記式(1)で表される構成単位
[RSiO3/2] (1)
[式(1)中、Rは、ポリオキシアルキレン鎖を含む基を示す]
とTiO2骨格とを有し、Ti-O-Si結合を有する、チタン含有複合材料を提供する。
【0012】
上記Rは下記式(1-1)
-R1-(OR2)n-OR3 (1-1)
[式(1-1)中、R1は単結合または連結基を示し、R2は炭素数2~8のアルキレン基を示し、R3は炭素数1~4の炭化水素基を示し、nは2~30の整数を示し、式の左から伸びる結合手は式(1)中のケイ素原子に結合する。]
で表される基であることが好ましい。
【0013】
上記チタン含有複合材料は、ジメチルスルホキシドに分散させた際のジメチルスルホキシド中の上記複合材料の分散粒子の平均粒径が100nm以下であることが好ましい。
【0014】
上記チタン含有複合材料は、ケイ素原子とチタン原子の原子数比(後者/前者)が0.05~1.0であることが好ましい。
【0015】
また、本開示は、下記式(A)で表される化合物と下記式(B)で表される化合物とを、水および酸触媒の存在下で反応させ、加水分解および縮合させる加水分解・縮合工程を備える、上記チタン含有複合材料の製造方法を提供する。
RSi(ORa)3 (A)
[式(A)中、Rはポリオキシアルキレン鎖を含む基を示し、Raは炭素数1~4の炭化水素基を示す。]
Ti(ORb)4 (B)
[式(B)中、Rbは、炭素数1~6の炭化水素基を示す。]
【0016】
上記加水分解・縮合工程は、上記式(A)で表される化合物と上記式(B)で表される化合物とを、水を添加しない系において上記酸触媒下で反応させ縮合させる縮合段階と、上記縮合段階後、水を添加して水の存在下で加水分解および縮合させる加水分解・縮合段階とを備えることが好ましい。上記酸触媒は酸性アルコールを含むことが好ましい。
【0017】
上記加水分解・縮合工程をゾル-ゲル法で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本開示のチタン含有複合材料は、有機溶媒中の分散性および有機系樹脂に配合した際の透明性に優れ、紫外線吸収能を有し、その機能が低下しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の複合材料の一実施形態の推定模式図である。
【
図2】実施例で得られた複合材料の
1H-NMRスペクトルである。
【
図3】実施例で得られた複合材料のXRDパターンである。
【
図4】実施例で得られた複合材料のEDXパターンである。
【
図5】実施例で得られた複合材料の各種分散液のUV-Vis吸収スペクトルである。
【
図6】実施例で得られた複合材料のDMSO分散液のDLSヒストグラムである。
【
図7】実施例で作製した五種のキャスト膜の写真である。
【
図8】実施例で作製したキャスト膜のUV-Vis吸収スペクトルである。
【
図9】紫外線による劣化試験において実施したPMMAのGPC測定により得られたGPC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[チタン含有複合材料]
本開示の一実施形態に係るチタン含有複合材料は、下記式(1)で表される構成単位ととTiO2骨格とを少なくとも有する。また、上記チタン含有複合材料は、上記式(1)におけるケイ素原子と上記TiO2骨格におけるTiとで、Ti-O-Si結合を有する。
[RSiO3/2] (1)
【0021】
上記複合材料は、上記式(1)で表される構成単位を含むポリシルセスキオキサン骨格を有することが好ましい。また、上記複合材料は、TiO2骨格を有する。
【0022】
上記複合材料としては、上記TiO2骨格からなるコア部と、上記式(1)で表される構成単位を含むポリシルセスキオキサンからなるシェル部とを有するコアシェル構造を含むものが挙げられる。
【0023】
図1は上記複合材料の推定される一例を示す模式図であり、複合材料1は、上記TiO
2骨格を含む酸化チタンであるコア部2と、コア部2を覆うように形成された、上記式(1)で表される構成単位を含むポリシルセスキオキサンからなるシェル部3とを備える。シェル部3は、ポリシルセスキオキサン骨格31と、複合材料1表面に存在するポリオキシアルキレン鎖含有基32とを含む。
【0024】
式(1)中、Rは、ポリオキシアルキレン鎖を含む基を示す。上記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリテトラメチレングリコール鎖、ポリブチレングリコール鎖などが挙げられる。また、上記複合材料において、上記ポリオキシアルキレン鎖は、一種のみのオキシアルキレンからなるものであってもよいし、二種以上のオキシアルキレンからなるものであってもよい。二種以上のオキシアルキレンからなるポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール鎖などが挙げられる。上記ポリオキシアルキレン鎖が二種以上のオキシアルキレンからなるものである場合、上記二種以上のオキシアルキレンの結合形態は、ランダム、交互、ブロックのいずれであってもよい。
【0025】
上記ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシアルキレンの重合度は、2~30の整数が好ましく、より好ましくは3~20の整数、さらに好ましくは3~10の整数、特に好ましくは3~5の整数である。上記重合度が2以上であると、両親媒性に優れるポリオキシアルキレン鎖が長く、水中、有機溶媒中、および有機系樹脂中の分散性がより優れ、有機系樹脂中に配合した際の透明性がより優れる。上記重合度が30以下であると、複合材料中の酸化チタン構造が占める割合が相対的に高くなり、紫外線吸収能がより優れる。また、複合材料の合成が容易である。
【0026】
上記Rとしては、中でも、下記式(1-1)で表される基であることが好ましい。下記式(1-1)の左から伸びる結合手は式(1)中のケイ素原子に結合する。
-R1-(OR2)n-OR3 (1-1)
【0027】
式(1-1)中、R1は単結合または連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、ウレタン結合、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、これら一種以上が複数個連結した基などが挙げられる。
【0028】
上記連結基としては、中でも、下記式(1-2)で表される基であることが好ましい。
-R4-X- (1-2)
【0029】
上記式(1-2)中、R4は二価の炭化水素基を示し、Xは、カルボニル基またはアミド結合(好ましくはアミド結合)を示す。上記式(1-2)の左から伸びる結合手は式(1)中のケイ素原子に結合し、右から伸びる結合手は式(1-1)中の[OR2]に結合する。
【0030】
上記連結基およびR4における二価の炭化水素基としては、炭素数1~18の直鎖または分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基などが挙げられる。炭素数1~18の直鎖または分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基などが挙げられる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)などが挙げられる。上記二価の炭化水素基における炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは2~6である。
【0031】
上記式(1-1)中、R2は、炭素数2~8のアルキレン基を示す。炭素数2~8のアルキレン基としては、例えば、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等の直鎖または分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。上記二価の炭化水素基における炭素数は、好ましくは2~6、より好ましくは2~3である。
【0032】
上記式(1-1)中、nは、オキシアルキレン基である[OR2]の重合度を示し、2~30の整数が好ましく、より好ましくは3~20の整数、さらに好ましくは3~10の整数、特に好ましくは3~5の整数である。上記重合度が2以上であると、両親媒性に優れるポリオキシアルキレン鎖が長く、水中、有機溶媒中、および有機系樹脂中の分散性がより優れ、有機系樹脂中に配合した際の透明性がより優れる。上記重合度が30以下であると、複合材料中の酸化チタン構造が占める割合が相対的に高くなり、紫外線吸収能がより優れる。また、複合材料の合成が容易である。
【0033】
上記式(1-1)中、R3は、炭素数1~4の炭化水素基を示す。炭素数1~4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。式(1-1)のように、ポリオキシアルキレン鎖の末端がR3で封止されていることにより、有機溶媒中および有機系樹脂中の分散性がより優れ、有機系樹脂中に配合した際の透明性がより優れる。
【0034】
上記複合材料は、上記式(1)で表される構成単位を一種のみ有していてもよく、二種以上有していてもよい。
【0035】
上記複合材料は、上記式(1)で表される構成単位以外の他のシロキサン構成単位(他のシルセスキオキサン構成単位など)を含んでいてもよい。なお、上記シロキサン構成単位とは、ポリシルセスキオキサン等のポリシロキサンを構成する構成単位を示す。上記他のシロキサン構成単位を含む場合、上記複合材料中の全シロキサン構成単位の総量100質量%に対する上記式(1)で表される構成単位の割合は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0036】
上記複合材料は、TiO2骨格を有する。すなわち、上記複合材料は、チタン原子に酸素原子が2以上結合した構造を有する。上記TiO2骨格における、1つのチタン原子に対する酸素原子の配位数は、2、3、4、6、8などが挙げられ、安定性に優れる観点から、6が好ましい。
【0037】
上記複合材料におけるケイ素原子とチタン原子の原子数比(後者/前者)は、0.05~1.0が好ましく、より好ましくは0.1~0.8、さらに好ましくは0.3~0.6である。上記原子数比が0.05以上であると、酸化チタンの割合が充分であり、紫外線吸収能がより優れる。上記原子数比が1.0以下であると、有機分散媒中の分散性がより優れ、有機系樹脂に配合した際の透明性がより優れる。上記原子数比は、エネルギー分散型X線(EDX)分析により算出することができる。
【0038】
上記複合材料中の、上記式(1)で表される構成単位を含むポリシルセスキオキサンとTiO2構造との合計割合は、上記複合材料の総量100質量%に対して、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0039】
上記複合材料をジメチルスルホキシド(DMSO)中に分散させた際の上記複合材料のDMSO中の分散粒子の平均粒径は、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。上記平均粒径が100nm以下(特に、50nm以下)であると、有機系樹脂に配合した場合の分散性が優れる傾向があり、樹脂組成物の透明性がより優れる。上記平均粒径は、DMSOに複合材料濃度1w/v%(DMSO100体積部に対する複合材料の質量部)で混合した際の上清液について、25℃で動的光散乱(DLS)測定を行い、キュムラント法によって算出される数平均粒径である。
【0040】
上記複合材料は、非晶質であることが好ましい。非晶質であると、上記複合材料を有機系樹脂に配合して紫外線吸収剤として使用した際、樹脂の劣化をより抑制することができる。上記複合材料が非晶質であることは、X線回折(XRD)分析により確認することができる。
【0041】
上記複合材料は、水中および有機溶媒中の分散性に優れ、有機系樹脂に配合した際の透明性に優れる。これは、上記複合材料が、両親媒性を有するポリオキシアルキレン鎖を含む基がケイ素原子に結合した構造単位を有することで、水中の分散性に加え、有機溶媒や有機系樹脂といった有機物中の分散性に優れることによるものと推測される。また、上記複合材料は、酸化チタン骨格を含むことにより、芳香族有機化合物と比較して異性化が起こりにくく紫外線吸収能が低下しにくい。また、上記複合材料はポリオキシアルキレン鎖を含むことで非晶質となりやすいものと推測され、これにより、上記複合材料を有機系樹脂に配合した際、樹脂を劣化させにくい。
【0042】
上記複合材料は、紫外線吸収剤として用いられることが好ましい。上記複合材料は、水中および有機溶媒中の分散性および有機系樹脂に配合した際の透明性が優れるため、分散媒中に分散させた分散組成物や、有機系樹脂中に分散させた樹脂組成物に好ましく使用することができる。
【0043】
上記複合材料は、紫外線吸収能に優れるため、公知乃至慣用の紫外線吸収剤が使用されている用途において使用することができる。また、上記複合材料は、例えば、化粧品、日焼け止め、屋外に使用されるインク、コーティング用途、自動車関係材料、半導体素子等の封止材、接着剤などに使用することができる。
【0044】
[チタン含有複合材料の製造方法]
上記複合材料は、例えば、下記式(A)で表される化合物と下記式(B)で表される化合物とを、水および酸触媒の存在下で反応させ、加水分解および縮合させる工程(加水分解・縮合工程)を経て製造することができる。上記式(A)で表される化合物および上記式(B)で表される化合物は、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
RSi(ORa)3 (A)
Ti(ORb)4 (B)
【0045】
上記加水分解・縮合工程における加水分解では、上記式(A)で表される化合物の加水分解と上記式(B)で表される化合物の加水分解とが進行する。上記式(A)で表される化合物は加水分解性化合物であり、加水分解して、RSi(OH)3を生成する。同様に、上記式(B)で表される化合物は加水分解性化合物であり、加水分解して、Ti(OH)4を生成する。次いで、RSi(OH)3同士の縮合重合、Ti(OH)4同士の縮合重合、およびRSi(OH)3とTi(OH)4との縮合が競争的に進行する。
【0046】
上記式(A)で表される化合物は上記式(1)で表される構成単位を形成する。式(A)中、Rはポリオキシアルキレン鎖を含む基を示し、上記式(1)におけるRと同様である。従って、Rは、上記式(1-1)で表される基であることが好ましい。また、上記式(1-1)[-R1-(OR2)n-OR3]中、R1における連結基としては、上記式(1-2)[-R4-X-]で表される基であることが好ましい。
【0047】
ここで、上記式(A)で表される化合物は、例えば、一端に加水分解性アルコキシ基であるORaを3つ有し他端に反応性官能基を有するシランカップリング剤と、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルとを反応させ、上記反応性官能基とポリオキシアルキレン末端のヒドロキシ基とで結合を形成して得ることができる。このため、上記R4およびXは、上記シランカップリング剤の構造に由来する場合がある。
【0048】
式(A)中、Raは炭素数1~4の炭化水素基を示す。炭素数1~4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。上記式(A)中のRaは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0049】
式(B)中、Rbは炭素数1~6の炭化水素基を示す。炭素数1~6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。Rbとしては、中でも、炭素数3~6の炭化水素基が好ましい。上記炭素数が3以上であると、上記式(B)で表される化合物の加水分解速度が緩やかとなり、Ti(OH)4同士の縮合を遅らせ、RSi(OH)3とTi(OH)4との縮合をより促進させることができる。これにより上記複合材料の不溶化をより起こりにくくし、また上記複合材料中に充分にケイ素原子を含ませることができる。上記式(B)中のRbは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0050】
上記酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;リン酸エステル;酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸;活性白土等の固体酸;塩化鉄等のルイス酸などが挙げられる。また、上記酸触媒として、メタノール性塩酸等の酸性アルコールを使用してもよい。上記酸触媒は、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。また、上記酸触媒は、水や溶媒等に溶解または分散させた状態で使用することもできる。
【0051】
上記加水分解・縮合工程における、上記式(A)で表される化合物および上記式(B)で表される化合物の比は、上記複合材料のケイ素原子とチタン原子の原子数比が上述の範囲内となるように適宜調整される。
【0052】
上記酸触媒の使用量は、特に限定されず、上記式(A)で表される化合物および上記式(B)で表される化合物の総量1モルに対して、0.01~10モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0053】
上記加水分解・縮合工程における水の使用量は、特に限定されず、上記式(A)で表される化合物および上記式(B)で表される化合物の総量1モルに対して、1.5~1000モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0054】
上記水の添加方法は、特に限定されず、使用する水の全量(全使用量)を一括で添加してもよいし、逐次的に添加してもよい。逐次的に添加する際には、連続的に添加してもよいし、間欠的に添加してもよい。
【0055】
上記加水分解・縮合工程は、溶媒の存在下で行うこともできるし、非存在下で行うこともできる。中でも溶媒の存在下で行うことが好ましい。上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコールなどが挙げられる。上記溶媒は一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0056】
溶媒の使用量は、特に限定されず、上記式(A)で表される化合物および上記式(B)で表される化合物の総量100重量部に対して、0~2000重量部の範囲内で、所望の反応時間等に応じて、適宜調整することができる。
【0057】
上記加水分解・縮合工程は、ゾル-ゲル法で行うことが好ましい。ゾル-ゲル法を採用することで、上記式(A)で表される化合物および上記式(B)で表される化合物の反応を液相反応として均一相中で反応させることができ、低温で効率よく反応を進行させることができる。上記ゾル-ゲル法では、例えば、溶媒の存在下で反応を開始し、溶媒を留去させつつ反応を進行させる。
【0058】
上記加水分解・縮合工程における反応温度は、特に限定されないが、40~80℃が好ましく、より好ましくは50~60℃である。反応時間は、特に限定されないが、1.5~4時間が好ましく、より好ましくは2~3時間である。また、上記加水分解・縮合工程における反応は、常圧下で行うこともできるし、加圧下または減圧下で行うこともできる。なお、反応雰囲気は、特に限定されず、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、空気下等の酸素存在下等のいずれであってもよい。ゾル-ゲル法において溶媒を蒸発させる段階では開放系で行うことが好ましい。また、上記加水分解・縮合工程における反応において、反応温度は一定でもよいし、途中で変更してもよい。例えば、ゾル-ゲル法において溶媒を留去させる段階では加温してもよい。
【0059】
上記加水分解・縮合工程は、上記式(A)で表される化合物と上記式(B)で表される化合物とを、水を添加しない系において上記酸触媒下で反応させ縮合させる縮合段階と、上記縮合段階後、水を添加して水の存在下で加水分解および縮合させる加水分解・縮合段階とを備えることが好ましい。このような2段階の反応により上記加水分解・縮合工程を行うことで、第一段階である上記縮合段階では上記式(A)で表される化合物および上記式(B)で表される化合物の加水分解を抑えつつこれらの化合物の縮合反応を進行させ、第二段階である上記加水分解・縮合段階において上記加水分解を進行させ上記縮合反応を促進することができる。これにより、上記式(B)で表される化合物の加水分解速度が緩やかとなり、Ti(OH)4同士の縮合を遅らせることができるものと推測され、生成した酸化チタン骨格が凝集する前にシルセスキオキサン骨格で酸化チタン骨格を表面修飾することができ、酸化チタン骨格を多く含みながら有機溶媒中の分散性に優れる複合材料を得ることができる。
【0060】
上記縮合段階では、水を添加しない系で反応を行う。ここで、水を添加しないとは、意図的に水を添加しないことをいい、例えば、反応中において系中に発生する水を含んでいてもよい。
【0061】
上記縮合段階における上記酸触媒は、酸性アルコールを含むことが好ましい。酸性アルコールを用いた場合、非水系で酸触媒を用いることができ、上記RSi(OH)3同士の縮合重合、Ti(OH)4同士の縮合重合、およびRSi(OH)3とTi(OH)4との縮合がバランス良く進行し、有機溶媒中の分散性により優れるチタン含有複合体を得ることができる。
【0062】
上記加水分解・縮合段階における水の使用量は、特に限定されず、上記式(A)で表される化合物および上記式(B)で表される化合物の総量1モルに対して、1~1000モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0063】
上記水の添加方法は、特に限定されず、使用する水の全量(全使用量)を一括で添加してもよいし、逐次的に添加してもよい。逐次的に添加する際には、連続的に添加してもよいし、間欠的に添加してもよい。
【0064】
上記縮合段階および加水分解・縮合段階は、ゾル-ゲル法で行うことが好ましい。ゾル-ゲル法を採用することで、上記式(A)で表される化合物および上記式(B)で表される化合物の反応を液相反応として均一相中で反応させることができ、低温で効率よく反応を進行させることができる。
【0065】
上記縮合段階および加水分解・縮合段階における反応温度は、特に限定されないが、40~80℃が好ましく、より好ましくは50~60℃である。それぞれの反応時間は、特に限定されないが、0.1~10時間が好ましく、より好ましくは0.5~5時間である。また、上記縮合段階および加水分解・縮合段階における反応は、常圧下で行うこともできるし、加圧下または減圧下で行うこともできる。なお、反応雰囲気は、特に限定されず、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、空気下等の酸素存在下等のいずれであってもよい。ゾル-ゲル法において溶媒を留去させる段階では開放系で行うことが好ましい。また、上記縮合段階および加水分解・縮合段階における反応において、反応温度は一定でもよいし、途中で変更してもよい。例えば、ゾル-ゲル法において水を留去させる段階では加温してもよい。
【0066】
上記加水分解・縮合工程の終了後には、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段等により分離精製してもよい。
【0067】
[分散組成物]
上記複合材料は、水中および有機溶媒中の分散性に優れる。このため、上記複合材料を用いて、分散媒と、上記分散媒中に分散した上記複合材料とを含む分散組成物を得ることができる。上記分散組成物中、上記複合材料は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0068】
上記分散媒としては、水、水溶液、有機溶媒が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等のアルコール;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;ジメチルスルホキシド等のスルホキシドなどが挙げられる。上記分散媒は一種のみであってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。
【0069】
上記分散媒としては、上記複合材料の分散性に優れる観点から、中でも、水、芳香族炭化水素、エーテル、ケトン、アミド、ニトリル、アルコール、ハロゲン化炭化水素が好ましい。
【0070】
上記分散組成物中に分散した上記複合材料の割合は、上記分散媒の総量100体積部に対して、0.1~10質量部(w/v%)が好ましく、より好ましくは0.5~1質量部(w/v%)である。上記分散組成物は上記複合材料の分散性に優れるため、上記範囲内の量を分散させることができる。
【0071】
上記分散組成物は、上記複合材料および上記分散媒のみからなるものであってもよく、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、分散剤、界面活性剤、増粘剤、カップリング剤、防錆剤、腐食防止剤、凝固点降下剤、消泡剤、耐摩耗添加剤、防腐剤、着色剤などが挙げられる。なお、上記複合材料は分散剤を使用しなくても分散媒中の分散性に優れるため、上記分散組成物中の分散剤、界面活性剤、およびカップリング剤の含有割合は、上記分散組成物の総量100質量%に対して、5質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは1質量%未満である。
【0072】
上記分散組成物中の上記複合材料の分散粒子の平均粒径は、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。上記平均粒径が100nm以下(特に、50nm以下)であると、有機系樹脂に配合した場合の分散性が優れる傾向があり、樹脂組成物の透明性がより優れる。上記平均粒径は、複合材料濃度1w/v%において、25℃で動的光散乱(DLS)測定を行い、キュムラント法によって算出される数平均粒径である。
【0073】
上記分散組成物は、ヘイズ値が5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下、さらに好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.1以下、特に好ましくは0.05以下である。上記分散組成物は上記複合材料の分散性に優れるため、上記ヘイズ値の分散組成物を得ることができる。上記ヘイズ値は、JIS K7136に基づいて測定することができる。
【0074】
[樹脂組成物]
上記複合材料は、有機系樹脂中の分散性に優れる。このため、上記複合材料を用いて、樹脂マトリックスと、上記樹脂マトリックス中に分散した上記複合材料とを含む樹脂組成物を得ることができる。上記分散組成物中、上記複合材料は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0075】
上記樹脂マトリックスを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0076】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂組成物等)、ポリイミド系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、 ポリグリセリン、ポリアセタールなどが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0077】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂などが挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0078】
上記樹脂組成物は、上述の各成分以外に、各種添加剤を含有していてもよい。上記添加剤としては、例えば、分散剤、界面活性剤、増粘剤、カップリング剤、防錆剤、腐食防止剤、凝固点降下剤、消泡剤、耐摩耗添加剤、防腐剤、着色剤、難燃剤、レベリング剤、イオン吸着体、上記複合材料以外の紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光増白剤、充填剤などが挙げられる。上記添加剤の含有量は特に限定されず、適宜選択可能である。なお、上記複合材料は分散剤を使用しなくても有機系樹脂中の分散性に優れるため、上記樹脂組成物中の分散剤、界面活性剤、およびカップリング剤の含有割合は、上記樹脂組成物の総量100質量%に対して、5質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは1質量%未満である。
【0079】
上記複合材料は、それのみで成形された成形物であっても透明性に優れる。このため、上記樹脂組成物中の上記複合材料の含有量は、透明性の観点からは特に限定されず、樹脂組成物が所望の特性となるように適宜調整される。上記樹脂組成物中の上記複合材料の含有量は、上記樹脂マトリックスを構成する樹脂の総量100質量部に対して、例えば30~300質量部、好ましくは50~200質量部である。
【0080】
上記樹脂組成物は、上記複合材料を有機系樹脂中に混合・分散して作製してもよいし、重合により硬化して樹脂を構成する硬化性化合物(重合性化合物)中に上記複合材料が分散した硬化性組成物を硬化させて作製してもよい。
【0081】
[硬化性組成物]
上記硬化性化合物としては、例えば、カチオン硬化性化合物、ラジカル硬化性化合物、アニオン硬化性化合物などが挙げられる。上記カチオン硬化性化合物としては、例えば、エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)、オキセタニル基を有する化合物(オキセタン化合物)、ビニルエーテル基を有する化合物(ビニルエーテル化合物)が挙げられる。中でも、上記複合材料はエポキシ基との反応性に乏しく硬化性組成物の安定性が優れる観点から、エポキシ化合物が好ましい。上記硬化性化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0082】
上記エポキシ化合物としては、分子内に1以上のエポキシ基(オキシラン環)を有する公知乃至慣用の化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、脂環式エポキシ化合物(脂環式エポキシ樹脂)、芳香族エポキシ化合物(芳香族エポキシ樹脂)、脂肪族エポキシ化合物(脂肪族エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0083】
上記脂環式エポキシ化合物としては、分子内に1個以上の脂環と1個以上のエポキシ基とを有する公知乃至慣用の化合物が挙げられ、特に限定されないが、例えば、(1)分子内に脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(「脂環エポキシ基」と称する)を有する化合物;(2)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物;(3)分子内に脂環およびグリシジルエーテル基を有する化合物(グリシジルエーテル型エポキシ化合物)などが挙げられる。
【0084】
上記(1)分子内に脂環エポキシ基を有する化合物としては、下記式(i)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
【0085】
上記式(i)中、Yは単結合または連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部または全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基などが挙げられる。なお、式(i)におけるシクロヘキサン環(シクロヘキセンオキシド基)を構成する炭素原子の1以上には、アルキル基等の置換基が結合していてもよい。
【0086】
上記二価の炭化水素基としては、炭素数が1~18の直鎖または分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基などが挙げられる。炭素数が1~18の直鎖または分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基などが挙げられる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の二価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)などが挙げられる。
【0087】
上記炭素-炭素二重結合の一部または全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2~8の直鎖または分岐鎖状のアルケニレン基などが挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2~4のアルケニレン基である。
【0088】
上記式(i)で表される脂環式エポキシ化合物の代表的な例としては、(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、下記式(i-1)~(i-10)で表される化合物などが挙げられる。なお、下記式(i-5)、(i-7)中のl、mは、それぞれ1~30の整数を表す。下記式(i-5)中のR’は炭素数1~8のアルキレン基であり、中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1~3の直鎖または分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(i-9)、(i-10)中のn1~n6は、それぞれ1~30の整数を示す。また、上記式(i)で表される脂環式エポキシ化合物としては、その他、例えば、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテルなどが挙げられる。
【化2】
【化3】
【0089】
上述の(2)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物としては、例えば、下記式(ii)で表される化合物などが挙げられる。
【化4】
【0090】
式(ii)中、R"は、p価のアルコールの構造式からp個の水酸基(-OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R"(OH)p]としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノール等の多価アルコール(炭素数1~15のアルコール等)などが挙げられる。pは1~6が好ましく、nは1~30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(外側の括弧内)の基におけるnは同一でもよく異なっていてもよい。上記式(ii)で表される化合物としては、具体的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」(株式会社ダイセル製)等]などが挙げられる。
【0091】
上述の(3)分子内に脂環およびグリシジルエーテル基を有する化合物としては、例えば、脂環式アルコール(特に、脂環式多価アルコール)のグリシジルエーテルが挙げられる。より詳しくは、例えば、2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン等のビスフェノールA型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールA型エポキシ化合物);ビス[o,o-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[o,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[p,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン等のビスフェノールF型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールF型エポキシ化合物);水素化ビフェノール型エポキシ化合物;水素化フェノールノボラック型エポキシ化合物;水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;ビスフェノールAの水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;水素化ナフタレン型エポキシ化合物;トリスフェノールメタンから得られるエポキシ化合物の水素化エポキシ化合物;下記芳香族エポキシ化合物の水素化エポキシ化合物などが挙げられる。
【0092】
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール類[例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等]と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;これらのエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を上記ビスフェノール類とさらに付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール類[例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等]とアルデヒド[例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等]とを縮合反応させて得られる多価アルコール類を、さらにエピハロヒドリンと縮合反応させることにより得られるノボラック・アルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フルオレン環の9位に2つのフェノール骨格が結合し、かつこれらフェノール骨格のヒドロキシ基から水素原子を除いた酸素原子に、それぞれ、直接またはアルキレンオキシ基を介してグリシジル基が結合しているエポキシ化合物などが挙げられる。
【0093】
上記脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、q価の環状構造を有しないアルコール(qは自然数である)のグリシジルエーテル;一価または多価カルボン酸[例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸等]のグリシジルエステル;エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ひまし油等の二重結合を有する油脂のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン等のポリオレフィン(ポリアルカジエンを含む)のエポキシ化物等が挙げられる。なお、上記q価の環状構造を有しないアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール等の一価のアルコール;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の二価のアルコール;グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等の三価以上の多価アルコール等が挙げられる。また、q価のアルコールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなどであってもよい。
【0094】
上記オキセタン化合物としては、分子内に1以上のオキセタン環を有する公知乃至慣用の化合物が挙げられ、特に限定されないが、例えば、3,3-ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1-エチル(3-オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4'-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4-ビス{〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3-エチル-3-{〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕メチル)}オキセタン、キシリレンビスオキセタン、3-エチル-3-{[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。
【0095】
上記ビニルエーテル化合物としては、分子内に1以上のビニルエーテル基を有する公知乃至慣用の化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル(エチレングリコールモノビニルエーテル)、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1-メチル-3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1-メチル-2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1-ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,8-オクタンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,3-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,2-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、p-キシレングリコールモノビニルエーテル、p-キシレングリコールジビニルエーテル、m-キシレングリコールモノビニルエーテル、m-キシレングリコールジビニルエーテル、o-キシレングリコールモノビニルエーテル、o-キシレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールジビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールジビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールジビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、イソソルバイドジビニルエーテル、オキサノルボルネンジビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、ヒドロキシオキサノルボルナンメタノールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどが挙げられる。
【0096】
上記硬化性組成物は、上記硬化性化合物と共に、上記硬化性化合物の重合形態に応じた、硬化剤、硬化促進剤、硬化触媒などを含有していてもよい。これらは、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0097】
上記硬化性化合物がエポキシ化合物である場合、上記硬化剤としては、例えば、酸無水物類、アミン類、ポリアミド樹脂、イミダゾール類、ポリメルカプタン類、フェノール類、ポリカルボン酸類、ジシアンジアミド類、有機酸ヒドラジドなどが挙げられる。
【0098】
上記硬化促進剤は、上記硬化剤とともに用いられ、エポキシ化合物が上記硬化剤と反応する際に、その反応速度を促進する機能を有する化合物である。上記硬化促進剤としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)またはその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩等);1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)またはその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩等);ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等の第3級アミン;2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール;リン酸エステル、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p-トリル)ボレート等のホスホニウム化合物;オクチル酸亜鉛やオクチル酸スズ等の有機金属塩;金属キレートなどが挙げられる。
【0099】
上記硬化性化合物がエポキシ化合物である場合、上記硬化触媒としては、特に限定されないが、例えば、光照射や加熱処理等を施すことによりカチオン種を発生して、重合を開始させるカチオン重合開始剤(光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤等)や、ルイス酸・アミン錯体、ブレンステッド酸塩類、イミダゾール類などが挙げられる。
【0100】
上記硬化性組成物は、上述の各成分以外に添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のヒドロキシ基を有する化合物(特に、脂肪族多価アルコール)を含有させると、反応を緩やかに進行させることができる。その他、溶媒や、上述の樹脂組成物が含み得る添加剤として例示および説明されたものが挙げられる。上記添加剤の含有量は特に限定されず、適宜選択可能である。なお、上記複合材料は分散剤を使用しなくても硬化性組成物中の分散性に優れるため、上記硬化性組成物中の分散剤、界面活性剤、およびカップリング剤の含有割合は、上記硬化性組成物の総量100質量%に対して、5質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは1質量%未満である。
【0101】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本開示に係る各発明は、実施形態や以下の実施例によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0102】
以下に、実施例に基づいて本開示の一実施形態をより詳細に説明する。
【0103】
合成例1
3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(純度:95%)0.5208g(2.0mmol)に、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(純度:98%)0.5027g(3.0mmol)を加えて、トリエチレンジアミン(純度:95%)0.0472g(0.04mmol)を触媒として用い、1,4-ジオキサン中で約80℃のオイルバスで2時間撹拌することで、下記式(A-1)で表される化合物を合成した。なお、上記式(A-1)で表される化合物とトリエチレングリコールモノメチルエーテルの溶解性に差がなく分離が困難であり、また、溶媒を留去することでゾル-ゲル反応が進行するおそれがあったため、精製を行わず、上記式(A-1)で表される化合物およびトリエチレングリコールモノメチルエーテルを含む1,4-ジオキサン溶液としてその後の反応に用いた。
【化5】
【0104】
実施例1
チタン含有複合材料の合成を2段階のゾル-ゲル反応によって行った。まず、1段階目の反応として、合成例1で得られた1,4-ジオキサン溶液に、チタニウムテトライソプロポキシド(純度:95%)0.2992g(1.0mmol)、および3.0mLのメタノール性塩酸(0.5mol/L)を加え、室温で2時間撹拌し、その後開放系で約50℃に加熱し、約2時間かけて溶媒を留去して反応を行い、粘性のある生成物を得た。続いて、2段階目の反応として、縮合反応をさらに促進させるため、上記生成物に約20mLの水を加え、再び開放系で約50℃に加熱し、約2時間かけて水を留去しつつ撹拌して反応を行った。得られた粗生成物に約20mLのアセトンを加え、吸引ろ過により可溶部を回収し、アセトン可溶部をロータリーエバポレーターで約3mLに濃縮後、約100mLのヘキサンに投入することで再沈殿して得られた粘性のある生成物をデカンテーションにより単離した。最後に、上記生成物を約20mLのアセトンに溶解し、この溶液をサンプルビン(容量50mL)に移してロータリーエバポレーターで溶媒を留去した後、常圧下100℃で約1時間加熱乾燥することにより、チタン含有複合材料(収量:0.4604g)を得た。
上記反応によるチタン含有複合材料の理論収量が0.6807gであり(=TiO2(F.W.=79.87):1.0mmol(0.0799g)+SiO3/2(CH2)3NH(C=O)OCH2CH2(OCH2CH2)2OCH3(F.W.=300.39):2.0mmol(0.6008g))、実際に得られた収量を理論収量で割った値68%(=0.4604/0.6807×100)を収率とした。
【0105】
実施例1で得られたチタン含有複合材料のFT-IRデータを以下に示す。
IR(KBr、cm-1),1704cm-1(C=O of urethane group),1538cm-1(N-H of urethane group)
実施例1で得られた1H-NMRスペクトル(400MHz,D2O)のピークデータを以下に示す。
δ 4.26-4.13(br,2H,-NH(C=O)OCH2CH2(OCH2CH2)2OCH3)
δ 3.78-3.54(br,10H,-NH(C=O)OCH2CH2(OCH2CH2)2OCH3)
δ 3.40-3.33(br,3H,-NH(C=O)OCH2CH2(OCH2CH2)2OCH3)
δ 3.20-3.03(br,2H,-SiCH2CH2CH2NH(C=O)O-)
δ 1.59-1.49(br,2H,-SiCH2CH2CH2NH(C=O)O-)
δ 0.60-0.53(br,2H,-SiCH2CH2CH2NH(C=O)O-)
【0106】
上記1H-NMRスペクトルから、トリエチレングリコールモノメチルエーテル鎖由来のシグナルが観測され、実施例1の複合材料中にポリシルセスキオキサン成分が含まれていることを確認した。
【0107】
実施例2
チタン含有複合材料の合成を1段階のゾル-ゲル反応によって行った。合成例1で得られた1,4-ジオキサン溶液に、チタニウムテトライソプロポキシド(純度:95%)0.2992g(1.0mmol)、および3.0mLの塩酸水溶液(1.0mol/L)を加え、室温で2時間撹拌し、その後開放系で約50℃に加熱し、約2時間かけて溶媒を留去して反応を行った。その後、100℃のオーブンで2時間乾燥させ、粗生成物を得た。得られた粗生成物に約20mLのアセトンを加え、吸引ろ過により可溶部を回収し、アセトン可溶部をロータリーエバポレーターで約3mLに濃縮後、約100mLのヘキサンに投入することで再沈殿して得られた粘性のある生成物をデカンテーションにより単離した。最後に、上記生成物を約20mLのアセトンに溶解し、この溶液をサンプルビン(容量50mL)に移してロータリーエバポレーターで溶媒を留去した後、常圧下100℃で約1時間加熱乾燥することにより、チタン含有複合材料(収量:0.4267g)を得た。
上記反応によるチタン含有複合材料の理論収量が0.6807gであり、実際に得られた収量を理論収量で割った値63%(=0.4267/0.6807×100)を収率とした。
【0108】
実施例2で得られたチタン含有複合材料のFT-IRデータを以下に示す。
IR(KBr、cm-1),1704cm-1(C=O of urethane group),1538cm-1(N-H of urethane group)
実施例1で得られた1H-NMRスペクトル(400MHz,D2O)のピークデータを以下に示す。
δ 4.26-4.12(br,2H,-NH(C=O)OCH2CH2(OCH2CH2)2OCH3)
δ 3.79-3.53(br,10H,-NH(C=O)OCH2CH2(OCH2CH2)2OCH3)
δ 3.40-3.29(br,3H,-NH(C=O)OCH2CH2(OCH2CH2)2OCH3)
δ 3.20-3.02(br,2H,-SiCH2CH2CH2NH(C=O)O-)
δ 1.69-1.51(br,2H,-SiCH2CH2CH2NH(C=O)O-)
δ 0.78-0.56(br,2H,-SiCH2CH2CH2NH(C=O)O-)
【0109】
上記1H-NMRスペクトルから、トリエチレングリコールモノメチルエーテル鎖由来のシグナルが観測され、実施例2の複合材料中にポリシルセスキオキサン成分が含まれていることを確認した。
【0110】
実施例1および2で得られた各複合材料について行ったFT-IR測定および1H-NMR測定の条件は、以下の通りである。また、実施例1および2で得られた各複合材料について、以下の評価を行った。
【0111】
<FT-IR測定>
フーリエ変換赤外分光光度計「FT/IR-4200 type A」(日本分光株式会製)を用いて行った。
【0112】
<
1H-NMR測定>
複合材料(スパチュラ0.5杯程度)と少量の3-トリメチルシリル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムを0.6mLのD
2Oに溶解させることで測定サンプルを調製した。核種は1proton、シークエンスはsingle_pulse.ex2に設定して、積算回数は8回で測定を行った。実施例1および2の複合材料の
1H-NMRスペクトルを
図2(a)および(b)にそれぞれ示した。
【0113】
<XRD測定>
実施例1および2で得られた各複合材料についてXRD測定を行った。上記複合材料0.0134gを約1mLのメタノールに混合して溶解させ、ガラス基板上に塗布し、室温で乾燥してキャストフィルムを作製した。そして、得られたキャスト膜についてXRD測定を行った。X線源にはNiでフィルタリングしたCu Kα線(0.15418nm)を用いた。測定装置には、マルバーン・パナリティカル社製の「X’Pert Pro diffractometer」を用いた。実施例1および2の複合材料のXRDパターンを
図3(a)および(b)にそれぞれ示した。XRDパターンにおいて結晶性由来のピークは確認されず、実施例1および2の複合材料は非晶質であることを確認した。
【0114】
<EDX測定>
実施例で得られた各複合材料についてEDX測定を行った。測定サンプルは、カーボンテープに上記複合材料を付着させることで調製した。充分にカーボンテープに付着していない複合材料はブロワーを用いて除去した。蒸着処理は行わなかった。測定は低真空モードで行った。測定装置には、日本FEI株式会社製の「XL30CP」を用いた。実施例1および2の複合材料のEDXパターンを
図4(a)および(b)にそれぞれ示した。複合材料中のチタン原子とケイ素原子の原子数比(前者/後者)は、実施例1では0.45であり、仕込み比とほぼ同じであった。実施例2では0.18であった。
【0115】
<有機溶媒分散性>
実施例1および2で得られた各複合材料について、表に示す各溶媒に対する分散性評価を行った。室温にて溶媒100体積部に対して複合材料を1質量部となるように混合し(1w/v%)、撹拌して混合液を作製した。そして、各混合液について目視で観察し、以下の判定基準に従って分散性を評価した。結果を表1に示した。
+:目視で粒子が確認されず、分散性が良好であると判断
±:目視で一部の粒子が確認され、部分的に分散していると判断
-:目視で確認できる粒子の量が投入量と同程度であり、分散していないと判断
【表1】
【0116】
<UV-Vis吸収スペクトル測定>
実施例1および2で得られた各複合材料0.0200gを、水、DMSO、ジメチルホルムアミド(DMF)、およびメタノール2mLにぞれぞれ添加し、各種分散液(1w/v%)を作製した。そして、各種分散液2mLをプラスチックセルに投入し、UV-Vis吸収スペクトル測定を行った。測定は、温度25℃で、透過率モードで行った。ベースラインはそれぞれの溶媒(約2mL)をプラスチックセルに入れて測定して作成した。実施例1および2の複合材料を用いた各種分散液のUV-Vis吸収スペクトルを
図5(a)および(b)にそれぞれ示した。
図5から分かるように、各種分散液は、可視光領域では高い透過率を示した一方で、UVB領域では透過率が0%であった。このことから、実施例の各複合材料は紫外線吸収能を有することが確認された。
【0117】
<分散粒径>
実施例1および2で得られた各複合材料0.0200gをDMSO2mLに添加して分散させ、分散液(1w/v%)を作製した。そして、上記DMSO分散液について、25℃で動的光散乱(DLS)測定を行った。測定は粒径ガラスセル(2mL)、温度25℃、積算回数25回で同じ溶媒・同じ濃度で3回行った。測定装置には、大塚電子株式会社製の「ELSZ-2000ZS」を用いた。実施例1および2の複合材料のDMSO分散液のDLSヒストグラムを
図6(a)および(b)にそれぞれ示した。その結果、実施例1の複合材料の平均分散粒径は約10nm、実施例2の複合材料の平均分散粒径は約11nmであった。
【0118】
<再分散性>
上記有機溶媒分散性評価にて作製したクロロホルム分散液およびメタノール分散液について、複合材料の析出と再分散を繰り返し行った。その結果、少なくとも3回の操作を行った後でも良好な分散性を示したことを目視で確認した。
【0119】
実施例3
実施例1で得られた複合材料を用いてキャスト膜を形成した。具体的には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂と上記複合材料とを特定の質量比で混合し(総量:0.2016g)、約1.5mLのクロロホルムを加えて室温で1時間撹拌し、PMMA樹脂および複合材料を溶解または分散させて液体を得た。次に、上記液体をガラス基板上に塗布し、約40℃のオーブンで加熱して溶媒を留去し、キャスト膜を作製した。なお、PMMAと複合材料の質量比が75:25、50:50、および25:75であるキャスト膜をそれぞれ作製した。また、PMMAのみを用いたキャスト膜、および複合材料のみを用いたキャスト膜を同様にしてそれぞれ作製した。得られた五種のキャスト膜の透明性を目視で観察したところ、いずれも透明であることを確認した。上記五種のキャスト膜の写真を
図7に示した。
【0120】
<UV-Vis吸収スペクトル測定>
実施例3で作製した五種のキャスト膜についてUV-Vis吸収スペクトル測定を行った。測定は、温度25℃で、透過率モードで行った。ベースラインは何も塗布していないガラス基板で測定して作成した。UV-Vis吸収スペクトルを
図8に示した。
図8から分かるように、各キャスト膜は、可視光領域では高い透過率を示した一方で、複合材料の割合が50質量%以上であるキャスト膜についてはUVB領域では透過率が0%であった。このことから、上記複合材料は有機系樹脂のための紫外線吸収剤として有用であることが確認された。
【0121】
<PMMA劣化試験>
実施例3で作製したPMMAのみからなるキャスト膜と、PMMAと複合材料の質量比が50:50であるキャスト膜の二種のキャスト膜について評価を行った。高圧水銀ランプ「HLR100T-2」(主波長365nm、照度170mW/cm
2)を用いてキャスト膜に1時間紫外線を照射した(照射距離10cm)。紫外線照射後、クロロホルム3mLにキャスト膜を溶解し、メタノールを添加して再沈殿させ、メタノールで洗浄しつつ沈殿物(PMMA)を吸引ろ過により回収した。紫外線照射前のPMMAおよびそれぞれのキャスト膜から回収した二種の沈殿物(PMMA)についてゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)測定を行った。具体的には、PMMA(0.0010g)を脱気したクロロホルム(溶離液:1.0mL)に溶解させてサンプル液を調製した(0.1w/v%)。測定条件は下記のとおりである。GPC測定により得られたGPC曲線を
図9に示した。
図9中、(a)は紫外線照射前のPMMA、(b)はPMMAのみからなるキャスト膜から紫外線照射後に採取したPMMA、(c)は複合材料を含むキャスト膜から紫外線照射後に採取したPMMAのGPC曲線を示す。
HITACHI L-2490(RI detector),HITACHI L-2130(Pump),Shodex KF-803L,KF805L(Column),Eluent:chloroform,Flow rate:1.0 mL/min,Temperature 40℃,Standard:Polystyrene
【0122】
GPC測定の結果より、紫外線照射前のPMMAの重量平均分子量(Mw)は2.45×10
5、分子量分布(Mw/Mn)は3.82であったのに対し(
図9(a))、紫外線照射後のPMMAのMwは6.11×10
4であり(
図9(b))、分子量は大幅に低下したことから、紫外線によりポリマー主鎖の切断がかなり起こったと考えられる。一方、複合材料を含む場合の紫外線照射後のPMMAではMwが2.13×10
5であったことから(
図9(c))、多少の分子量の低下は見られたが、PMMAの分解をかなり抑えることができることが分かった。
【0123】
以下、本開示に係る発明のバリエーションを記載する。
[付記1]下記式(1)で表される構成単位
[RSiO3/2] (1)
[式(1)中、Rは、ポリオキシアルキレン鎖を含む基を示す]
とTiO2骨格とを有し、Ti-O-Si結合を有する、チタン含有複合材料。
[付記2]前記Rは下記式(1-1)
-R1-(OR2)n-OR3 (1-1)
[式(1-1)中、R1は単結合または連結基を示し、R2は炭素数2~8のアルキレン基を示し、R3は炭素数1~4(好ましくは2~6、より好ましくは2~3)の炭化水素基を示し、nは2~30(好ましくは3~20、より好ましくは3~10、さらに好ましくは3~5)の整数を示し、式の左から伸びる結合手は式(1)中のケイ素原子に結合する。]
で表される基である、付記1に記載のチタン含有複合材料。
[付記3]
前記R1は下記式(1-2)
-R4-X- (1-2)
[式(1-2)中、R4は二価の炭化水素基(好ましくは炭素数1~18(より好ましくは1~10、さらに好ましくは2~6)の直鎖または分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基)を示し、Xは、カルボニル基またはアミド結合(好ましくはアミド結合)を示す。前記式(1-2)の左から伸びる結合手は式(1)中のケイ素原子に結合し、右から伸びる結合手は式(1-1)中の[OR2]に結合する。]
で表される連結基である、付記2に記載のチタン含有複合材料。
[付記4]前記TiO2骨格を含む酸化チタンであるコア部と、前記コア部を覆うように形成された、前記式(1)で表される構成単位を含むポリシルセスキオキサンからなるシェル部とを備える、付記1~3のいずれか1つに記載のチタン含有複合材料。
[付記5]前記TiO2骨格における、1つのチタン原子に対する酸素原子の配位数は、2、3、4、6、および8からなる群より選択される1以上である(好ましくは6を含む)、付記1~4のいずれか1つに記載のチタン含有複合材料。
[付記6]ジメチルスルホキシドに分散させた際のジメチルスルホキシド中の前記複合材料の分散粒子の平均粒径が100nm以下(好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下)である付記1~5のいずれか1つに記載のチタン含有複合材料。
[付記7]ケイ素原子とチタン原子の原子数比(後者/前者)が0.05~1.0(好ましくは0.1~0.8、より好ましくは0.3~0.6)である、付記1~6のいずれか1つに記載のチタン含有複合材料。
[付記8]前記複合材料中の全シロキサン構成単位の総量100質量%に対する前記式(1)で表される構成単位の割合は50質量%以上(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)である、付記1~7のいずれか1つに記載のチタン含有複合材料。
[付記9]前記複合材料中の、前記式(1)で表される構成単位を含むポリシルセスキオキサンとTiO2構造との合計割合は、前記複合材料の総量100質量%に対して、50質量%以上(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)である、付記1~8のいずれか1つに記載のチタン含有複合材料。
[付記10]非晶質である付記1~9のいずれか1つに記載のチタン含有複合材料。
[付記11]付記1~10のいずれか1つに記載のチタン含有複合材料を用いた紫外線吸収剤。
【0124】
[付記12]下記式(A)で表される化合物と下記式(B)で表される化合物とを、水および酸触媒の存在下で反応させ、加水分解および縮合させる加水分解・縮合工程を備える、付記1~10のいずれか1つに記載のチタン含有複合材料の製造方法。
RSi(ORa)3 (A)
[式(A)中、Rはポリオキシアルキレン鎖を含む基を示し、Raは炭素数1~4の炭化水素基を示す。]
Ti(ORb)4 (B)
[式(B)中、Rbは、炭素数1~6の炭化水素基を示す。]
[付記13]前記加水分解・縮合工程は、前記式(A)で表される化合物と前記式(B)で表される化合物とを、水を添加しない系において前記酸触媒下で反応させ縮合させる縮合段階と、前記縮合段階後、水を添加して水の存在下で加水分解および縮合させる加水分解・縮合段階とを備える、付記12に記載のチタン含有複合材料の製造方法。
[付記14]前記酸触媒は酸性アルコールを含む付記13に記載のチタン含有複合材料の製造方法。
[付記15]前記加水分解・縮合工程をゾル-ゲル法で行う付記12~14のいずれか1つに記載のチタン含有複合材料の製造方法。
[付記16]前記Rは下記式(1-1)
-R1-(OR2)n-OR3 (1-1)
[式(1-1)中、R1は単結合または連結基を示し、R2は炭素数2~8のアルキレン基を示し、R3は炭素数1~4(好ましくは2~6、より好ましくは2~3)の炭化水素基を示し、nは2~30(好ましくは3~20、より好ましくは3~10、さらに好ましくは3~5)の整数を示し、式の左から伸びる結合手は式(1)中のケイ素原子に結合する。]
で表される基である、付記12~15のいずれか1つに記載のチタン含有複合材料の製造方法。
[付記17]
前記R1は下記式(1-2)
-R4-X- (1-2)
[式(1-2)中、R4は二価の炭化水素基(好ましくは炭素数1~18(より好ましくは1~10、さらに好ましくは2~6)の直鎖または分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基)を示し、Xは、カルボニル基またはアミド結合(好ましくはアミド結合)を示す。前記式(1-2)の左から伸びる結合手は式(1)中のケイ素原子に結合し、右から伸びる結合手は式(1-1)中の[OR2]に結合する。]
で表される連結基である、付記16に記載のチタン含有複合材料の製造方法。
【符号の説明】
【0125】
1 複合材料
2 コア部
3 シェル部
31 ポリシルセスキオキサン骨格
32 ポリオキシアルキレン鎖含有基