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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】容器詰麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/113 20160101AFI20241217BHJP
【FI】
A23L7/113
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024017711
(22)【出願日】2024-02-08
【審査請求日】2024-05-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506138568
【氏名又は名称】株式会社 信玄食品
(73)【特許権者】
【識別番号】522091601
【氏名又は名称】テーブルストック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】白澤 聡
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特公昭59-012264(JP,B2)
【文献】特開2019-071838(JP,A)
【文献】特開2022-142876(JP,A)
【文献】特開2011-000024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化麺類を準備する工程と、
前記α化麺類を、DE値4~25のデンプン分解物を30質量%~50質量%含有する浸漬液に浸漬処理に供した後、固液分離処理に供することにより、浸漬液吸水麺類を得る工程と、
前記浸漬液吸水麺類を充填した容器を加熱殺菌処理に供することにより、容器詰麺類を得る工程と
を含み、
前記容器詰麺類における麺類の水分値が、45質量%~58.6質量%である、容器詰麺類の製造方法。
【請求項2】
前記浸漬液のBrix値が、30~50である、請求項1に記載の容器詰麺類の製造方法。
【請求項3】
前記麺類が、中華麺、パスタ、うどん及びそうめんからなる群から選ばれる少なくとも1種のものである、請求項1に記載の容器詰麺類の製造方法。
【請求項4】
前記加熱殺菌処理が、レトルト殺菌処理である、請求項1に記載の容器詰麺類の製造方法。
【請求項5】
前記浸漬液は、さらに、塩及び酸味料からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含有する、請求項1に記載の容器詰麺類の製造方法。
【請求項6】
前記容器詰麺類は、実質的に調味されていない、請求項1に記載の容器詰麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間保存しても、適度な硬さを維持すると共に、汎用性の高い容器詰麺類及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パスタやうどん、そば、ラーメン等の麺類の加熱調理済みの加工食品においては、煮崩れがなく、適度なコシ(硬さ)を維持することが求められている。特に、長期間の保存を目的とした製品においては、煮崩れを防止し、適度なコシ(硬さ)を維持することは難しい。
【0003】
例えばパスタは、一般的に、小麦を原料に用い、緻密な内部構造を有していて、滑らかな口当たりと適度な歯ごたえ(硬さ)があるという独特の食感を有している。そのため、パスタを使用した加熱調理済みの加工食品において、パスタらしい独特の食感を維持することは、商品価値を高める要素として重要である。
【0004】
これまでに、本発明者により、長期間保存しても、適度な硬さを維持することのできる容器詰麺類の製造方法として、予め加熱処理及び凍結処理した麺類と、特定のDE値を有するデンプン分解物を特定量含有する調味液とを充填した容器を加熱殺菌処理する方法が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、常温保存可能な加熱処理麺類として、低温殺菌処理及びpH処理を施した麺類が知られている(例えば、非特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6923986号
【非特許文献】
【0007】
【文献】マ・マー ゆでスパゲッティ ナポリタン,日清製粉ウエルナ[online],[2024年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.nisshin-seifun-welna.com/index/products/4902110344981.html>
【文献】スープ付うどん,五木食品株式会社[online],[2024年1月31日検索],インターネット<URL:https://www.itsukifoods.jp/product_02_udon.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法においては、長期間保存しても、麺類の適度な硬さを維持することができるものの、麺類と調味液とを一緒に容器詰めとするため、味のバリエーションに欠け、多様化する消費者の嗜好に応えられないという問題がある。
【0009】
非特許文献1及び2に記載の麺類は、低温殺菌処理のため保管可能期間が比較的短いという問題があり、さらに、麺類のコシ(硬さ)が十分とはいえない。
【0010】
そこで、本発明は、長期間保存しても、適度な硬さを維持すると共に、汎用性の高い容器詰麺類を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、汎用性の高い容器詰麺類を得るため、特許文献1に記載の方法において、調味液中の水及びデンプン分解物以外の調味成分を可能な限り排除することを試みたところ、デンプン分解物の濃度によっては、麺類の適度な硬さが得られないという問題に直面した。これは、特許文献1に記載の方法において、デンプン分解物の濃度は同じでも、調味成分を排除しているため、必然的に水の量が多くなり、この水分が麺類に移行するため、硬さを維持することができないためと推測された。一般に、水分移行は、水分値の高い方から低い方へと移行するため、麺類の水分値が低く、調味液の水分値が高い場合、調味液の水分は麺類に移行するため、適度な硬さを維持することが難しい。そこで、特許文献1に記載の方法において、調味成分を排除すると共に水分量を低減することを試みたところ、デンプン分解物の濃度が過度に高くなることに伴って、調味液の粘度も高くなり、調味液と麺類とがなじまず、結局、麺類の適度な硬さが得られないという問題に直面した。本発明者は、この問題を解決するために、調味液の成分や配合比、製造工程等を見直し、鋭意研究を行った。
そして、遂に、一定程度α化された麺類を、水と特定のデンプン分解物とを特定量含有する浸漬液に浸漬処理に供することにより、長期間保存しても、適度な硬さを維持することができる容器詰麺類を得ることに成功した。また、このような容器詰麺類によれば、水とデンプン分解物以外の成分をほとんど含有しないので、当該麺類に対し、調味液(ソース、スープ、つゆ、たれ等を含む)や具材を自由に選択することができ、消費者のニーズを満たす汎用性の高いものとなる。本発明はこのような成功例や知見に基づいて完成するに至った発明である。
【0012】
したがって、本発明の一態様によれば、以下のものが提供される:
[1]α化麺類を準備する工程と、
前記α化麺類を、DE値4~25のデンプン分解物を20質量%~50質量%含有する浸漬液に浸漬処理に供した後、固液分離処理に供することにより、浸漬液吸水麺類を得る工程と、
前記浸漬液吸水麺類を充填した容器を加熱殺菌処理に供することにより、容器詰麺類を得る工程と
を含む、容器詰麺類の製造方法。
[2]前記容器詰麺類においては、麺類の水分値が、45質量%~63質量%である、[1]に記載の容器詰麺類の製造方法。
[3]前記浸漬液のBrix値が、20~50である、[1]又は[2]に記載の容器詰麺類の製造方法。
[4]前記麺類が、中華麺、パスタ、うどん及びそうめんからなる群から選ばれる少なくとも1種のものである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の容器詰麺類の製造方法。
[5]前記加熱殺菌処理が、レトルト殺菌処理である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の容器詰麺類の製造方法。
[6]前記浸漬液は、さらに、塩及び酸味料からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含有する、[1]~[5]のいずれか1項に記載の容器詰麺類の製造方法。
[7]前記容器詰麺類は、実質的に調味されていない、[1]~[6]のいずれか1項に記載の容器詰麺類の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長期間保存しても、適度な硬さを維持することができると共に、汎用性が高い容器詰麺類が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一態様である容器詰麺類及びその製造方法の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0015】
「容器詰」は、容器の中に充填又は収容されることを意味する。
「含有量」との用語は、本明細書において、濃度と同義であり、全体量(例えば、体積)に対する成分の量(例えば、質量)の割合(例えば、質量%)を意味する。
「含む」は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である)が、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。要素としては、成分、工程、条件、パラメーター等の制限事項等が挙げられる。
数値範囲の「~」は、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0%~100%」は、0%以上であり、かつ、100%以下である範囲を意味する。「超過」及び「未満」は、その前の数値を含まずに、それぞれ下限及び上限を意味し、例えば、「1超過」は1より大きい数値であり、「100未満」は100より小さい数値を意味する。
整数値の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
【0016】
本発明の一態様である容器詰麺類の製造方法は、α化麺類を準備する工程(以下、「α化麺類準備工程」ともいう。)と、α化麺類を、DE値4~25のデンプン分解物を20質量%~50質量%含有する浸漬液に浸漬処理に供した後、固液分離処理に供することにより、浸漬液吸水麺類を得る工程(以下、「浸漬処理工程」ともいう。)と、浸漬液吸水麺類を充填した容器を加熱殺菌処理に供することにより、容器詰麺類を得る工程(以下、「加熱殺菌処理工程」ともいう。)とを含む。
【0017】
本発明の一態様の容器詰麺類は、実質的に調味されていないものである。ここで、「実質的に調味されていない」とは、デンプン分解物並びに、任意に塩及び酸味料以外の調味成分(調味料、具材等)により調味されていないことを意味し、従って、調味成分を全く含まないか、仮に含まれていても極微量であることをいう。すなわち、本発明の一態様の容器詰麺類は、それ自体で喫食できるように調味又は調理されたものではなく、調味液(ソース、スープ、つゆ、たれ等を含む)や具材と合せて調味の用又は調理の用に供されるものである。
【0018】
[α化麺類準備工程]
α化麺類準備工程では、α化麺類を準備する。
本発明において、α化麺類とは、未α化麺類(乾麺、半乾麺又は生麺)をボイル加熱処理やスチーム加熱処理等の公知の方法により加熱処理することにより、麺類に含まれる澱粉がα化されたものをいう。なお、本発明においては、α化麺類は、麺類に含まれる澱粉の一部がα化されたものも含むものとする。
【0019】
α化麺類において、α化の程度は、α化麺類の水分値で評価することができる。
本発明において、麺類の水分値は、後述の実施例に記載の通り、加熱乾燥式水分計(「ML50」、A&D社製、設定:スタンダード MID、設定温度:200℃)を用いて測定することができる。具体的には、麺類を10mm以内にカットし、試料5gとして測定する。
【0020】
α化麺類の水分値は、麺類の種類、形状、太さ等によって適宜設定することができるが、例えば、46質量%~63質量%であることが好ましく、より好ましくは48質量%~60質量%であり、さらに好ましくは55質量%~58質量%である。α化麺類の水分値が過小である場合においては、後の加熱殺菌処理工程中に、麺同士がくっつき、ダマ化するおそれがある。一方、α化麺類の水分値が過大である場合においては、適度な硬さを維持することができないおそれがある。
また、α化麺類の水分値は、当該容器詰麺類(加熱殺菌処理工程後の麺類)の水分値(質量%)に対して80%~130%であることが好ましく、より好ましくは85%~120%であり、さらに好ましくは88%~117%である。
α化麺類の水分値は、例えば加熱処理の時間、温度等によって調整することができる。
【0021】
α化麺類準備工程では、未α化麺類(乾麺、半乾麺又は生麺)を加熱処理に供して、α化麺類を得てもよいし、市販のチルド麺や冷凍麺を使用してもよい。
【0022】
未α化麺類の加熱処理の条件としては、麺類の種類、形状、太さ等によって適宜設定することができるが、例えば、ボイル加熱温度は、80℃~100℃が好ましく、ボイル加熱時間は、1分間~10分間が好ましく、より好ましくは1分間~5分間である。また例えば、スチーム加熱温度は、80℃~100℃が好ましく、スチーム加熱時間は、15分間~100分間が好ましく、より好ましくは30分間~60分間である。
未α化麺類の加熱処理方法は、食品製造において通常使用される方法を採用することができる。
【0023】
未α化麺類とは、加熱処理に供していなく、麺類に含まれる澱粉がα化されていないものをいい、未α化麺類としては、穀類の粉を原料として使用した生地を成形したものであればよく、例えば、中華麺、うどん、パスタ、素麺等が挙げられる。麺類原料としては、小麦を使用していることが好ましく、小麦を50質量%以上使用していることがより好ましい。また、未α化麺類としては、乾麺、半乾麺又は生麺のいずれも使用することができる。
未α化麺類の太さは、麺類の種類により異なるが、例えば、中華麺であれば1.5mm~3mm程度、うどんであれば1.8mm~4.5mm程度、パスタ(スパゲッティ)であれば1.4mm~2.3mm程度、素麺であれば0.5mm~1.3mm程度である。
【0024】
未α化麺類の水分値は、一般的に、生麺の場合、30質量%~40質量%程度であり、乾麺の場合、10質量%~15質量%程度である。
【0025】
α化麺類準備工程において、未α化麺類を加熱処理してα化麺類を得る場合、加熱処理した後、水洗いし、水切りすることが好ましい。水洗い、水切りの方法としては、食品製造において通常使用される方法を採用することができ、例えば、流水で5秒間~60秒間洗い流し、パンチングボウル等で水を切る方法が挙げられる。
また、α化麺類準備工程において、α化麺類として、冷凍麺を使用する場合においては、解凍(好ましくは自然解凍)した後、使用することが好ましい。
【0026】
α化麺類準備工程によれば、一定程度α化された麺類を使用することにより、後の加熱殺菌処理工程中に、麺同士がくっつき、ダマ化することが抑制される。
【0027】
[浸漬処理工程]
浸漬処理工程では、前工程で準備したα化麺類を、DE値4~25のデンプン分解物を20質量%~50質量%含有する浸漬液に浸漬処理に供した後、固液分離処理に供することにより、浸漬液吸水麺類を得る。
【0028】
浸漬液は、DE値4~25のデンプン分解物を20質量%~50質量%含有する。具体的には、浸漬液は、DE値が4~25であるデンプン分解物を20質量%~50質量%と、他の成分50質量%~80質量%とが配合されてなるものである。他の成分としては、水が挙げられ、任意に、塩や酢、クエン酸等の酸味料が挙げられる。塩及び酸味料からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分は、喫食時に調味液(ソース、スープ、つゆ、たれ等を含む)や具材等の調味成分の食味を妨げない程度に、浸漬液に対して0.1質量%~15質量%の割合で含有されることが好ましい。
ここで、浸漬液に含有され得る塩については、使用するデンプン分解物のDE値や含有量によっては、甘味が強い場合があり、甘味を低減するために使用される。また、浸漬液に含有され得る酸味料については、使用する麺類がかん水入りの中華麺である場合に、pHを調整し、変色を防止するために使用される。
【0029】
上述したように、浸漬液には、デンプン分解物、並びに、任意成分として塩及び酸味料以外の調味料(しょうゆ、みそ、砂糖等)、酵母エキス、肉エキス(チキンエキス、ポークエキス、ビーフエキス、魚肉エキス等)、果汁(りんご果汁等)、野菜汁(トマトピューレ等)、香辛料(生姜、唐辛子、こしょう、バジル、オレガノ等)、着色料、旨味調味料、フレーバー等の調味成分が含まれないことが好ましく、含まれるとしてもごく微量(例えば、0.1質量%~1質量%)である。
【0030】
デンプン分解物は、DE値4~25のデンプン分解物であって、食品一般に使用することができるものであれば特に限定されず用いることができる。
なお、デンプン分解物とは、デンプンを酵素及び/又は酸を用いて適当な分子量にまで分解したものを総称する。具体的には、DE値4~25のデンプン分解物としては、例えば、DE値4~10程度のデキストリン、DE値10~20程度のマルトデキストリン、DE値20~25程度の粉飴等が挙げられる。また、DE値4~25のデンプン分解物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
デンプン分解物は、DE値4~25であり、好ましくはDE値8~18である。DE値は、小さい値である程、甘味度は低く粘度は高い。また、DE値が大きい値である程、甘味度は高く粘度は低い。そのため、DE値が4未満のデンプン分解物を用いた場合においては、デンプン分解物の粘度が高いことに伴って、浸漬液全体の粘度も高くなり、α化麺類が浸漬液となじみにくくなる。一方、DE値が25を超過するデンプン分解物を用いた場合においては、デンプン分解物の甘味度が高いことに伴って、浸漬液全体の甘味度も高くなり、結果として、得られる容器詰麺類の食味が損なわれるおそれがある。
【0032】
DE値4~25のデンプン分解物は、浸漬液中、20質量%~50質量%含有し、好ましくは25質量%~40質量%含有する。デンプン分解物の含有量が20質量%未満である場合においては、浸漬処理中に、適度な量のデンプン分解物がα化麺類に吸収されず、結果として、麺類の適度な硬さを維持することができないおそれがある。一方、デンプン分解物の含有量が50質量%を超過する場合においては、浸漬液全体の粘度が高くなり、α化麺類が浸漬液となじみにくくなる。
【0033】
浸漬液のBrix値は、20~50であることが好ましく、より好ましくは27~43である。Brix値が過小である場合においては、適度な量のデンプン分解物がα化麺類に吸収されず、結果として、麺類の適度な硬さを維持することができないおそれがある。一方、Brix値が過大である場合においては、漬液全体の粘度が高くなり、α化麺類が浸漬液となじみにくくなる。
なお、浸漬処理後の浸漬液においては、浸漬液中のデキストリンの一部が浸漬処理により麺類の内部へ浸透するため、Brix値は、20~50より低くなることが考えられる。後述の実施例を鑑みれば、浸漬処理後の浸漬液においては、Brix値は18~43程度となる。
【0034】
本発明において、Brix値とは、試料の温度20℃における糖用屈折計の示度をいう。
Brix値の調整は、浸漬液中のデンプン分解物の含有量により行うことができる。
例えば、100gの水に10gのデキストリンを溶かした場合に、Brix値は9.5~10程度となる。従って、浸漬液中には、水にデンプン分解物以外の成分が含有されるとしても、ごく微量であるといえる。
【0035】
浸漬液の調製方法は、特に限定されないが、DE値4~25のデンプン分解物、水及び任意に塩、酸味料等を計量し、混合し、必要に応じて加熱することにより調製することができる。
【0036】
浸漬処理方法としては、特に限定されないが、例えば、浸漬液を注いだ容器にα化麺類を入れ、静置する方法等が挙げられる。
【0037】
α化麺類と浸漬液との配合比は、α化麺類が浸漬液に十分浸漬される比率であれば特に限定されないが、例えば、質量比(α化麺類:浸漬液)で、1:0.5~1:10であることが好ましく、1:0.5~1:1.5であることがより好ましい。
【0038】
浸漬処理条件としては、麺類の種類、形状、太さ等によって適宜設定することができるが、浸漬時間は、例えば、10分間~24時間が好ましく、より好ましくは30分間~15時間、さらに好ましくは30分間~3時間であり、浸漬液温度は、例えば、1℃~30℃が好ましく、より好ましくは5℃~10℃である。
【0039】
固液分離処理方法としては、食品製造において通常使用される方法を採用することができ、例えば、遠心脱水機やパンチングボウルを用いて浸漬液吸水麺類の液切りをする方法等が挙げられる。
【0040】
固液分離処理条件としては、麺類の種類、形状、太さ等によって適宜設定することができるが、固液分離時間は、例えば、5分間~60分間が好ましく、より好ましくは8分間~20分間である。
【0041】
固液分離処理後のα化麺類、すなわち浸漬液吸水麺類の水分値は、例えば、46質量%~63質量%であることが好ましく、より好ましくは48質量%~60質量%であり、さらに好ましくは55質量%~58質量%である。浸漬液吸水麺類の水分値が過小である場合においては、後の加熱殺菌処理工程中に、麺同士がくっつき、ダマ化するおそれがある。一方、浸漬液吸水麺類の水分値が過大である場合においては、麺自体がふやけてしまい、食感が損なわれるおそれがある。
なお、浸漬液吸水麺類の水分値は、当該容器詰麺類(加熱殺菌処理工程後の麺類)の水分値(質量%)と同等であることが好ましい。
浸漬液吸水麺類の水分値は、例えば浸漬処理の時間、浸漬液の温度、浸漬液の水分比率等によって調整することができる。
【0042】
この浸漬処理工程において、浸漬処理は、α化麺類を浸漬液に浸漬することにより、α化麺類の表面から、浸漬液が吸水され、浸漬液中のデンプン分解物が麺内部に浸透し、後の加熱殺菌処理工程において、麺内部の保水能を維持することができ、固液分離処理は、浸漬液が吸水された浸漬液吸水麺類の液切りをすることにより、麺表面の余分な水分を取り除き、後の加熱殺菌処理工程において、麺類に移行し得る水分を可能な限り排除することができる。
【0043】
[加熱殺菌処理工程]
加熱殺菌処理工程は、浸漬液吸水麺類を充填した容器を加熱殺菌処理に供することにより、容器詰麺類を得る。
【0044】
加熱殺菌処理工程では、容器に浸漬液吸水麺類を充填するが、他の成分(食材、調味料等)は充填しないか、充填するとしてもごく微量であることが好ましい。他の成分としては、麺類や喫食時に合わせる調味液(ソース、スープ、つゆ、たれ等を含む)や具材の食味を妨げないものであり、例えば、油、乳化剤等が挙げられる。他の成分の配合量は、例えば、浸漬液吸水麺類に対して0.1質量%~1.0質量%である。
【0045】
加熱殺菌処理方法は、食品製造において通常使用される加熱殺菌処理方法を採用することができる。具体的には、浸漬液吸水麺類を、所定の容器に充填し、密封して、加熱殺菌処理する。
【0046】
加熱殺菌処理条件としては、麺類の種類、充填量、容器の種類等に応じて適宜設定することができるが、例えば、加熱殺菌処理がレトルト殺菌処理である場合においては、加圧下で、100℃~130℃、好ましくは約125℃で、6分間~15分間、好ましくは6分間~9分間で行い、殺菌強度の指標であるF値としては4以上、好ましくは5~10である。レトルト殺菌処理のための装置や方法は公知のものを使用できる。
【0047】
加熱殺菌処理において使用される容器は、加熱殺菌処理に耐えると共に密封できる素材及び形状のものであれば特に限定されないが、例えば、アルミ等の金属、PETやPTP等のプラスチック、1層又は積層(ラミネート)のフィルム、ガラス等を素材とするパウチ、小袋、ボトル、トレー、缶、瓶等の包装容器が挙げられる。特に、レトルト容器を用いる場合においては、具体的には、内側にポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂からなる熱溶着可能な樹脂層を設け、外側にポリエステル、ポリアミド等のガスバリア性の高い樹脂及び/又はアルミ箔等からなる層を設けて、積層加工(ラミネート加工)したフィルムでできた容器等が挙げられる。
【0048】
容器詰麺類の麺類の水分値は、例えば、45質量%~63質量%であることが好ましく、より好ましくは48質量%~60質量%であり、さらに好ましくは55質量%~58質量%である。
【0049】
本発明の容器詰麺類の製造方法は、本発明の目的を達成し得る範囲において、α化麺類準備工程、浸漬処理工程及び加熱殺菌処理工程のそれぞれの工程の前後に他の工程を組み入れることを排除しない。
【0050】
以上のように、本発明の一態様の容器詰麺類の製造方法によれば、長期間保存しても、適度な硬さを維持すると共に、汎用性の高い容器詰麺類が得られる。この効果が得られる理由は、必ずしも明確ではないが、以下の原理に基づくものと考えられる。なお、このような原理は、本発明の技術的範囲を不当に限定するものではない。すなわち、特定のDE値及び特定量のデンプン分解物が含有される浸漬液による浸漬処理工程が行われることにより、麺内部に浸漬液が吸水、浸透されるため、麺内部に保水能を有するデンプン分解物が均一に分散されることとなり、加熱殺菌処理工程においても、余分な水分移行が阻害され、結果として、麺に適度な硬さを維持することができると考えられる。また、本発明の一態様の容器詰麺類の製造方法によれば、デンプン分解物以外の調味成分がほとんど含有されず、実質的に調味されていないことから、当該麺類に対し、調味液(ソース、スープ、つゆ、たれ等を含む)や具材を自由に選択することができ、消費者のニーズを満たす汎用性の高いものとなる。
【0051】
本発明の一態様の容器詰麺類は、常温で長期間保管が可能となる。特に、本発明の一態様の容器詰麺類は、加熱殺菌処理としてレトルト殺菌処理を採用した場合であっても、麺に適度な硬さを維持することができるため、低温殺菌処理に供された容器詰麺類に比べ、より長期的に保管が可能となる。また、本発明の一態様の容器詰麺類は、デンプン分解物以外の調味成分や具材を可能な限り排除しているため、例えば、特許文献1に記載の容器詰麺類よりも長期的に保管することが可能となる。保管期間は、例えば、8ヶ月間~6年間である。
本発明の一態様の容器詰麺類を利用して調味又は調理する方法は特に限定されない。例えば、容器詰麺類を湯煎や電子レンジを用いて加熱し、予め用意した調味液(ソース、スープ、つゆ、たれ等を含む)と合せることにより、調味又は調理することができる。
【0052】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例
【0053】
[1.容器詰麺類(パスタ)の作製]
1-1.α化麺類の準備
未α化麺類として乾燥パスタ(「スパゲッティゴールデン1.6ミリ」、はごろもフーズ社製、水分値11.8質量%(測定値)、麺の太さ1.6mm)100gを、沸騰した水の中に投入し、ほぐしながら5分間ボイル加熱した後、軽く水洗いし、水切りして、α化麺類198gを得た。
【0054】
1-2.浸漬液の調製
水に、DE値4、8、25及び40のデキストリンを、それぞれ、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、40質量%、50質量%及び60質量%の濃度となるように添加して浸漬液を調製した。
以下、使用したデキストリンを示す。
DE値4のデキストリン:「パインデックス#100」、松谷化学工業社製
DE値8のデキストリン:「パインデックス#1」、松谷化学工業社製
DE値25のデキストリン:「パインデックス#3」、松谷化学工業社製
DE値40のデキストリン:「パインデックス#6」、松谷化学工業社製
【0055】
1-3.浸漬処理・固液分離処理
ボイル加熱後の水切りしたα化麺類を、各浸漬液(0℃~20℃)に4時間浸漬処理し、その後、パンチングボウルを用いて10分間静置して液切り(固液分離処理)し、浸漬液吸水麺類を得た。
【0056】
1-4.加熱殺菌処理
浸漬液吸水麺類100gをレトルト容器(「レトルト対応袋」、130mm×170mm、凸版印刷社製)に充填し、真空包装機(「柏木式真空包装機」、(エヌ・ピー・シー社製)を用いてレトルト容器の開口部を密封し、スプレー式レトルト殺菌装置(日阪製作所社製)を用いて、加熱殺菌処理し、容器詰麺類Aを作製した。加圧加熱殺菌処理条件は、125℃設定、最大圧力0.25MPa、装置内の温度が125℃に到達した後6分間加熱、F値6.5であった。
【0057】
[2.測定・評価]
2-1.破断強度の測定
試料の破断強度(単位はN(ニュートン))は、サン科学社製「レオメータ CR-500DX」(使用プランジャー;No.10(せん断力用))を用いて測定した。測定は、5回行い、平均値を算出した。
具体的には、上記1で作製した容器詰麺類Aを、常温で2週間間保管した後、沸騰した水に10分間投入し、容器を開封した直後の麺類を30mm程にカットしたものを試料として測定した。結果を表1に示す。
比較試料として、上記1で使用した乾燥パスタと同様の乾燥パスタを、沸騰した水の中に投入し、ほぐしながら7分間ボイル加熱処理したもの(通常加熱処理麺a)を湯切りし30mm程にカットしたものを測定した。その結果、0.335であった。
なお、表1においては、破断強度が、「通常加熱処理麺の破断強度-0.05」より小さいものは「0点」、「通常加熱処理麺の破断強度+0.15」を上回るものは「1点」、「通常加熱処理麺の破断強度-0.05」~「通常加熱処理麺の破断強度+0.15」の間であれば「2点」として評価した。
【0058】
2-2.水分値の測定
試料の水分値(質量%)は、加熱乾燥式水分計(「ML50」、A&D社製、設定:スタンダード MID、設定温度:200℃)を用いて測定した。測定は、3回行い、平均値を算出した。
具体的には、上記1で作製した容器詰麺類Aを、常温で2週間間保管した後、容器を開封した直後の麺を10mm以内にカットしたもの5gを試料として測定した。結果を表1に示す。
【0059】
2-3.Brix値の測定
Brix計として、手持屈折計「MASTER-TH50」(AS ONE社製)(測定範囲0~50)を用いて、試料の温度20℃におけるBrix値を測定した。測定は、3回行い、平均値を算出した。
なお、本発明において、試料の状態によって上記手持屈折計の目盛りを目視で確認できない場合は、デジタル表示のポケット糖度計「MASTER-80H」(アタゴ社製)(測定範囲30~80)を用いて測定した。
具体的には、上記1-3.浸漬処理工程における、浸漬前後の浸漬液のBrix値を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
2-4.官能評価
容器詰麺類Aを常温で2週間保管した後、沸騰した水に10分間投入し、容器を開封した直後の麺類について、識別能力を有するパネル3名により、下記評価基準に従って、評価した。各項目の平均点を表1に示す。
<褐変>
2点:褐変なし
1点:一部褐変あり
0点:褐変あり
<ほぐれ>
2点:ほぐれる
1点:ややほぐれにくい
0点:ほぐれない
<甘味>
2点:感じない
1点:やや甘い
0点:甘く、違和感がある
なお、上記2-1で測定した破断強度の得点と合算して総合得点を算出した。8点満点中6点以上を合格とした。
【0061】
また、未α化麺類(「ボイル前」と表示)、α化麺類(「浸漬前」と表示)、及び浸漬液吸水麺類(「浸漬後」と表示)の重量(g)を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1の結果の通り、DE値4~25のデキストリンを20質量%~50質量%含有する浸漬液に浸漬処理した例(容器詰麺類A-1b~A-1f,A-2b~A-2f,A-3b~A-3f)においては、通常加熱処理麺aと同等の破断強度が得られ、褐変がなく、ほぐれも良好で甘味もないことが分かった。
一方、DE値4~8のデキストリンを60質量%含有する浸漬液に浸漬処理した例(容器詰麺類A-1a,A-2a)においては、浸漬液の粘度が高くなりすぎ、容器詰麺類を作製することができなかった。
また、DE値8~25のデキストリンを15質量%含有する浸漬液に浸漬処理した例(容器詰麺類A-2g,A-3g)においては、十分な破断強度が得られなかった。
さらに、DE値40のデキストリンを40質量%以上含有する浸漬液に浸漬処理した例(容器詰麺類A-4a~A-4c)においては、甘味が強く、デキストリンのメイラード反応による褐変も発生した。DE値40のデキストリンを15質量%~20質量%含有する浸漬液に浸漬処理した例(容器詰麺類A-4f~A-4g)においては、十分な破断強度が得られなかった。DE値40のデキストリンを15質量%~30質量%含有する浸漬液に浸漬処理した例(容器詰麺類A-4d~A-4g)においては、ほぐれが良好とならなかった。これは、デキストリンのDE値が過大であるため、デキストリンの分子量が小さく、粘度も小さくなり、デキストリンが麺類に過度に浸透されることにより、麺表面にコーティングがされていない状態でα化(加熱殺菌処理)されることとなり、接触している麺同士がくっつきほぐれにくい状態となっていると考えられる。
【0064】
[3.容器詰麺類(中華麺)の作製・測定・評価]
3-1.α化麺類の準備
未α化麺類として、生中華麺(「No.1584」、西山製麺社製、水分値32.9質量%(測定値)、麺の太さ1.4~2.5mm)605gを、沸騰した水の中に投入し、ほぐしながら1分間ボイル加熱した後、軽く水洗いし、水切りして、α化麺類856gを得た。
【0065】
3-2.浸漬液の調製
水40質量%、塩2質量%、醸造酢10質量%、DE値8のデキストリン(「パインデックス#1」、松谷化学工業社製)40質量%で浸漬液を調製した。
【0066】
3-3.浸漬処理・固液分離処理
ボイル加熱後の水切りしたα化麺類を、浸漬液(0℃~20℃)に3時間浸漬処理し、その後、パンチングボウルを用いて10分間静置して液切り(固液分離処理)し、浸漬液吸水麺類993gを得た。
【0067】
3-4.加熱殺菌処理
浸漬液吸水麺類200gをレトルト容器(「レトルト対応袋」、150mm×200mm、凸版印刷社製)に充填し、真空包装機(「柏木式真空包装機」、(エヌ・ピー・シー社製)を用いてレトルト容器の開口部を密封し、スプレー式レトルト殺菌装置(日阪製作所社製)を用いて、加熱殺菌処理し、容器詰麺類Bを作製した。加圧加熱殺菌処理条件は、125℃設定、最大圧力0.25MPa、装置内の温度が125℃に到達した後6分間加熱、F値6.8であった。
【0068】
3-5.破断強度の測定
上記2-1に記載の測定方法と同様に、容器詰麺類Bの破断強度を測定した。結果を表2に示す。
比較試料として、上記3-1で使用した生中華麺と同様の生中華麺を、沸騰した水の中に投入し、ほぐしながら2分間ボイル加熱処理したもの(通常加熱処理麺b)を湯切りし30mm程にカットしたものを測定した。その結果、0.459であった。
【0069】
3-6.水分値の測定
上記2-2に記載の測定方法と同様に、容器詰麺類Bの麺類の水分値を測定した。結果を表2に示す。
【0070】
3-7.Brix値の測定
上記2-3に記載の測定方法と同様に、3-3.浸漬処理工程における、浸漬前後の浸漬液のBrix値を測定した。結果を表2に示す。
【0071】
3-8.官能評価
上記2-4に記載の評価方法と同様に、容器詰麺類Bの官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0072】
また、未α化麺類(「ボイル前」と表示)、α化麺類(「浸漬前」と表示)、及び浸漬液吸水麺類(「浸漬後」と表示)の重量(g)を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
[4.容器詰麺類(素麺)の作製・測定・評価]
4-1.α化麺類の準備
未α化麺類として、乾燥素麺(「手延べそうめん 揖保乃糸(上級)」、兵庫県手延素麺協同組合、水分値13.2質量%(測定値)、麺の太さ0.7~0.9mm)254gを、沸騰した水の中に投入し、ほぐしながら1分間ボイル加熱した後、軽く水洗いし、水切りして、α化麺類600gを得た。
【0075】
4-2.浸漬液の調製
水48質量%、醸造酢2質量%、DE値8のデキストリン(「パインデックス#1」、松谷化学工業社製)50質量%で浸漬液を調製した。
【0076】
4-3.浸漬処理・固液分離処理
ボイル加熱後の湯切りしたα化麺類を、浸漬液(0℃~20℃)に30分間浸漬処理し、その後、パンチングボウルを用いて10分間静置して液切り(固液分離処理)し、浸漬液吸水麺類618gを得た。
【0077】
4-4.加熱殺菌処理
浸漬液吸水麺類100gをレトルト容器(「レトルト対応袋」、130mm×170mm、凸版印刷社製)に充填し、真空包装機(「柏木式真空包装機」、(エヌ・ピー・シー社製)を用いてレトルト容器の開口部を密封し、スプレー式レトルト殺菌装置(日阪製作所社製)を用いて、加熱殺菌処理し、容器詰麺類Cを作製した。加圧加熱殺菌処理条件は、125℃設定、最大圧力0.25MPa、装置内の温度が125℃に到達した後6分間加熱、F値6.8であった。
【0078】
4-5.破断強度の測定
上記2-1に記載の測定方法において、容器詰麺類Cを、常温で2週間保管した後、沸騰した水に10分間投入し、開封後、麺類を流水で30秒間洗い、水切りしたことの他は同様にして、容器詰麺類Cの破断強度を測定した。結果を表3に示す。
比較試料として、上記4-1で使用した乾燥素麺と同様の乾燥素麺を、沸騰した水の中に投入し、ほぐしながら1分30秒間ボイル加熱処理し、流水で30秒間洗い、水切りしたもの(通常加熱処理麺c)を湯切りし30mm程にカットしたものを測定した。その結果、0.12であった。
【0079】
4-6.水分値の測定
上記2-2に記載の測定方法と同様に、容器詰麺類Cの麺類の水分値を測定した。結果を表3に示す。
【0080】
4-7.Brix値の測定
上記2-3に記載の測定方法と同様に、4-3.浸漬処理工程における、浸漬前後の浸漬液のBrix値を測定した。結果を表3に示す。
【0081】
4-8.官能評価
上記2-4に記載の評価方法と同様に、容器詰麺類Cの官能評価を行った。結果を表3に示す。
【0082】
また、未α化麺類(「ボイル前」と表示)、α化麺類(「浸漬前」と表示)、及び浸漬液吸水麺類(「浸漬後」と表示)の重量(g)を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
[5.容器詰麺類(うどん)の作製・測定・評価]
5-1.α化麺類の準備
冷凍うどん(「麺一本うどん」、タカラ食品社製、水分値67.4質量%(測定値)、麺の太さ3.0mm(規格書より)、切刃番手8番)1312gを自然解凍して、α化麺類1312gを得た。
【0085】
5-2.浸漬液の調製
水58質量%、塩2質量%、DE値8のデキストリン(「パインデックス#1」、松谷化学工業社製)40質量%で浸漬液を調製した。
【0086】
5-3.浸漬処理・固液分離処理
α化麺類を、浸漬液(0℃~20℃)に2時間30分間浸漬処理し、その後、パンチングボウルを用いて10分間静置して液切り(固液分離処理)し、浸漬液吸水麺類1283gを得た。
【0087】
5-4.加熱殺菌処理
浸漬液吸水麺類100gをレトルト容器(「レトルト対応袋」、130mm×170mm、凸版印刷社製)に充填し、真空包装機(「柏木式真空包装機」、(エヌ・ピー・シー社製)を用いてレトルト容器の開口部を密封し、スプレー式レトルト殺菌装置(日阪製作所社製)を用いて、加熱殺菌処理し、容器詰麺類Dを作製した。加圧加熱殺菌処理条件は、125℃設定、最大圧力0.25MPa、装置内の温度が125℃に到達した後6分間加熱、F値7であった。
【0088】
5-5.破断強度の測定
上記2-1に記載の測定方法と同様に、容器詰麺類Dの破断強度を測定した。結果を表4に示す。
比較試料として、上記5-1で使用した冷凍うどんと同様の冷凍うどんを、冷凍状態のまま沸騰した水の中に投入し、ほぐしながら1分間ボイル加熱処理したもの(通常加熱処理麺d)を湯切りし30mm程にカットしたものを測定した。その結果、0.662であった。
【0089】
5-6.水分値の測定
上記2-2に記載の測定方法と同様に、容器詰麺類Dの麺類の水分値を測定した。結果を表4に示す。
【0090】
5-7.Brix値の測定
上記2-3に記載の測定方法と同様に、5-3.浸漬処理工程における、浸漬前後の浸漬液のBrix値を測定した。結果を表4に示す。
【0091】
5-8.官能評価
上記2-4に記載の評価方法と同様に、容器詰麺類Dの官能評価を行った。結果を表4に示す。
【0092】
また、自然解凍したα化麺類(「解凍後」及び「浸漬前」と表示)及び浸漬液吸水麺類(「浸漬後」と表示)の重量(g)を表4に示す。
【0093】
【表4】
【0094】
[6.容器詰麺類(パスタ)の作製・測定・評価]
6-1.α化麺類の準備
乾燥パスタ(「ペンネ」、ディベラ社製、水分値12.3質量%(測定値))174gを、沸騰した水の中に投入し、5分間ボイル加熱した後、軽く水洗いし、水切りして、α化麺類288gを得た。
【0095】
6-2.浸漬液の調製
水58質量%、塩2質量%、DE値8のデキストリン(「パインデックス#1」、松谷化学工業社製)40質量%で浸漬液を調製した。
【0096】
6-3.浸漬処理・固液分離処理
α化麺類を、浸漬液(0℃~20℃)に17時間浸漬処理し、その後、パンチングボウルを用いて10分間静置して液切り(固液分離処理)し、浸漬液吸水麺類330gを得た。
【0097】
6-4.加熱殺菌処理
浸漬液吸水麺類180gをレトルト容器(「レトルト対応袋」、150mm×200mm、凸版印刷社製)に充填し、真空包装機(「柏木式真空包装機」、(エヌ・ピー・シー社製)を用いてレトルト容器の開口部を密封し、スプレー式レトルト殺菌装置(日阪製作所社製)を用いて、加熱殺菌処理し、容器詰麺類Eを作製した。加圧加熱殺菌処理条件は、125℃設定、最大圧力0.25MPa、装置内の温度が125℃に到達した後6分間加熱、F値6.5であった。
【0098】
6-5.破断強度の測定
試料として、麺類を湯切り後4等分にカットしたことの他は上記2-1に記載の測定方法と同様に、容器詰麺類Eの破断強度を測定した。結果を表5に示す。
比較試料として、上記6-1で使用した乾燥パスタと同様の乾燥パスタを、沸騰した水の中に投入し、12分間ボイル加熱処理したもの(通常加熱処理麺e)を湯切りし4等分にカットしたものを測定した。その結果、1.62であった。
【0099】
6-6.水分値の測定
上記2-2に記載の測定方法と同様に、容器詰麺類Eの麺類の水分値を測定した。結果を表5に示す。
【0100】
6-7.Brix値の測定
上記2-3に記載の測定方法と同様に、5-3.浸漬処理工程における、浸漬前後の浸漬液のBrix値を測定した。結果を表5に示す。
【0101】
6-8.官能評価
上記2-4に記載の評価方法と同様に、容器詰麺類Eの官能評価を行った。結果を表5に示す。
【0102】
また、未α化麺類(「ボイル前」と表示)、α化麺類(「浸漬前」と表示)、及び浸漬液吸水麺類(「浸漬後」と表示)の重量(g)を表5に示す。
【0103】
【表5】
【0104】
表2~5の結果の通り、DE値4~25のデキストリンを20質量%~50質量%含有する浸漬液に浸漬処理した例(容器詰麺類B~E)によれば、麺類の種類にかかわらず、それぞれ、通常加熱処理麺b~eと同等の破断強度が得られ、褐変がなく、ほぐれも良好で甘味もないことが分かった。
【0105】
[7.比較用容器詰麺類(パスタ)の作製・測定・評価]
7-1.α化麺類の準備
未α化麺類として乾燥パスタ(「スパゲッティゴールデン1.6ミリ」、はごろもフーズ社製、水分値11.8質量%(測定値)、麺の太さ1.6mm)100gを、沸騰した水の中に投入し、ほぐしながら7分間ボイル加熱した後、軽く水洗いし、水切りして、α化麺類225gを得た。
【0106】
7-2.加熱殺菌処理
α化麺類100gをレトルト容器(「レトルト対応袋」、130mm×170mm、凸版印刷社製)に充填し、真空包装機(「柏木式真空包装機」、(エヌ・ピー・シー社製)を用いてレトルト容器の開口部を密封し、スプレー式レトルト殺菌装置(日阪製作所社製)を用いて、加熱殺菌処理し、比較用容器詰麺類Fを作製した。加圧加熱殺菌処理条件は、125℃設定、最大圧力0.25MPa、装置内の温度が125℃に到達した後6分間加熱、F値6.5であった。
【0107】
7-3.破断強度の測定
上記2-1に記載の測定方法と同様に、比較用容器詰麺類Fの破断強度を測定した。結果を表6に示す。
【0108】
7-4.水分値の測定
上記2-2に記載の測定方法と同様に、比較用容器詰麺類Fの麺類の水分値を測定した。結果を表6に示す。
【0109】
7-5.官能評価
上記2-4に記載の評価方法と同様に、比較用容器詰麺類Fの官能評価を行った。結果を表6に示す。
【0110】
また、未α化麺類(「ボイル前」と表示)及びα化麺類(「ボイル後」と表示)の重量(g)を表6に示す。
【0111】
【表6】
【0112】
表6の結果の通り、浸漬処理工程を経ない比較用容器詰麺類Fについては、DE値4~25のデキストリンを20質量%~50質量%含有する浸漬液に浸漬処理した容器詰麺類A(容器詰麺類A-1b~A-1f,A-2b~A-2f,A-3b~A-3f)に比べ、破断強度が低い結果となった。また、比較用容器詰麺類Fについては、麺同士が結着し、ほぐれが良好ではない結果となった。
【0113】
[8.比較用容器詰麺類(うどん)の作製・測定・評価]
8-1.α化麺類の準備
冷凍うどん(「麺一本うどん」、タカラ食品社製、水分値67.4質量%(測定値)、麺の太さ3.0mm(規格書より)、切刃番手8番)522gを冷凍状態のまま熱湯で1分間ボイル加熱処理し後、軽く水洗いし、水切りして、α化麺類577gを得た。
【0114】
8-2.加熱殺菌処理
α化麺類100gをレトルト容器(「レトルト対応袋」、130mm×170mm、凸版印刷社製)に充填し、真空包装機(「柏木式真空包装機」、(エヌ・ピー・シー社製)を用いてレトルト容器の開口部を密封し、スプレー式レトルト殺菌装置(日阪製作所社製)を用いて、加熱殺菌処理し、比較用容器詰麺類Gを作製した。加圧加熱殺菌処理条件は、125℃設定、最大圧力0.25MPa、装置内の温度が125℃に到達した後6分間加熱、F値7であった。
【0115】
8-3.破断強度の測定
上記2-1に記載の測定方法と同様に、比較用容器詰麺類Gの破断強度を測定した。結果を表7に示す。
【0116】
8-4.水分値の測定
上記2-2に記載の測定方法と同様に、比較用容器詰麺類Gの麺類の水分値を測定した。結果を表7に示す。
【0117】
8-5.官能評価
上記2-4に記載の評価方法と同様に、比較用容器詰麺類Gの官能評価を行った。結果を表7に示す。
【0118】
また、未α化麺類(「ボイル前」と表示)及びα化麺類(「ボイル後」と表示)の重量(g)を表7に示す。
【0119】
【表7】
【0120】
表7の結果の通り、浸漬処理工程を経ない比較用容器詰麺類Gについては、DE値4~25のデキストリンを20質量%~50質量%含有する浸漬液に浸漬処理した容器詰麺類Dに比べ、破断強度が低い結果となった。また、比較用容器詰麺類Gについては、麺同士が結着し、ほぐれが良好ではない結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の一態様の容器詰麺類は、長期間保存しても、適度な硬さを維持すると共に、汎用性の高いものとなるため、新たな加工食品としての付加価値が付与される。

【要約】
【課題】
本発明の目的は、長期間保存しても、適度な硬さを維持すると共に、汎用性の高い容器詰麺類の製造方法を提供することにある。
【解決手段】
上記目的は、α化麺類を準備する工程と、前記α化麺類を、DE値4~25のデンプン分解物を20質量%~50質量%含有する浸漬液に浸漬処理に供した後、固液分離処理に供することにより、浸漬液吸水麺類を得る工程と、前記浸漬液吸水麺類を充填した容器を加熱殺菌処理に供することにより、容器詰麺類を得る工程とを含む、容器詰麺類の製造方法により解決される。
【選択図】なし