(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】トイレシステム及びトイレ管理方法
(51)【国際特許分類】
G08B 21/24 20060101AFI20241217BHJP
E03D 11/00 20060101ALI20241217BHJP
A47K 17/00 20060101ALI20241217BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G08B21/24
E03D11/00 A
A47K17/00
H04N7/18 D
(21)【出願番号】P 2020130928
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000155333
【氏名又は名称】株式会社木村技研
(73)【特許権者】
【識別番号】391007460
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 朝映
(72)【発明者】
【氏名】東 正勝
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 賢一
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 隆行
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113958(JP,A)
【文献】特開2003-154740(JP,A)
【文献】特開2018-173756(JP,A)
【文献】特開2019-120539(JP,A)
【文献】登録実用新案第3220223(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0202149(US,A1)
【文献】特表2022-508379(JP,A)
【文献】特開2014-037933(JP,A)
【文献】特開2013-146048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/24
E03D 11/00
A47K 17/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレブースから利用者が退室することを検出する退出検出部と、
前記利用者の退出を検知した際、前記トイレブース内にある前記トイレブースの備品以外の物体を忘れ物として検出する忘れ物検出部と、
前記トイレブースの外側に設けられ、前記忘れ物が検出された場合に、前記忘れ物が生じたことを前記利用者に対して通知する
複数の通知部と、
前記利用者の位置情報に応じて
、前記
複数の通知部
のうち前記利用者に最も近い通知部から前記忘れ物が生じたことを通知させる通知制御部と、
を備えるトイレシステム。
【請求項2】
前記通知部が、音によって前記通知を行うものであって、
前記通知制御部が、前記
利用者が退室することを検出してからの経過時間に応じ、前記経過時間が長くなるほど前記通知の音が大きくなるように、前記通知の形態を変化させる請求項1に記載のトイレシステム。
【請求項3】
検出された前記忘れ物の種別を求める識別部を更に備え、
前記通知制御部が、前記忘れ物の種別に応じて前記通知部による前記通知の形態を変化させる請求項1又は2に記載のトイレシステム。
【請求項4】
前記トイレブースが備えられた施設内の複数の位置に前記通知部が設置され、
前記通知制御部が、前記利用者の位置情報に応じ、前記利用者が存在する位置と対応する位置に設置されている前記通知部から前記通知を行わせ、前記利用者の移動に合わせて、前記通知の形態を変化させる請求項1に記載のトイレシステム。
【請求項5】
前記利用者に最も近い通知部に加え、前記利用者の両耳に同じ音で通知を行う通知部を有する請求項1~4の何れか1項に記載のトイレシステム。
【請求項6】
前記通知制御部が、前記利用者の左右の耳に通知する音に位相差を与え、利用者に対して特定の位置に、音像を形成するように通知を行う請求項1~4の何れか1項に記載のトイレシステム。
【請求項7】
トイレブースから利用者が退室することを検出することと、
前記利用者の退出を検出した際、前記トイレブース内にある前記トイレブースの備品以外の物体を忘れ物として検出することと、
前記忘れ物が検出された場合に、前記トイレブースの外側に設けられた複数の通知部を制御し、前記忘れ物が生じたことを前記利用者に対して通知することと、
前記利用者の位置情報に応じて、
複数の通知部のうち前記利用者に最も近い通知部から前記忘れ物が生じたことを通知させることと、
を制御部が実行するトイレ管理方法。
【請求項8】
前記利用者に最も近い通知部と他の通知部とから、前記利用者の両耳に同じ音で通知を行う請求項7に記載のトイレシステム。
【請求項9】
前記利用者の左右の耳に通知する音に位相差を与え、利用者に対して特定の位置に、音像を形成するように通知を行う請求項7に記載のトイレシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレシステム及びトイレ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路のパーキングエリアにおいて、個室トイレの天井に設けたセンサで、人や物のシルエットを検知し、ドアの開閉信号と連動して、忘れ物が発生したことを判定するシステムが提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】中日本高速道路株式会社および中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社、"トイレ内の忘れ物や急病のお客さまを早期に発見するセンサーを本格導入~AIによる識別の精度を向上~"、[online]、2020年2月27日、ニュースリリース、[2020年6月1日検索]、インターネット〈URL:https://www.c-nexco.co.jp/corporate/pressroom/news_release/4746.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシステムでは、トイレの個室(トイレブースとも称す)で忘れ物を検出した場合、当該トイレブース内に設けられたスピーカから忘れ物がある旨のメッセージを出力していた。この場合、忘れ物をした利用者は、既にトイレブースのドアを開けて外へ出ようとしている段階のため、注意がトイレブースの外に向いており、トイレブース内のメッセージに気づかずに退出してしまうことがあった。特に、利用者が退出するときは、便器が洗浄中であることが多く、忘れ物がある旨のメッセージに、洗浄水の流れる音が重なって、メッセージが聞き取りにくいことがある。
【0006】
そこで、本発明は、トイレブース内で忘れ物が発生したことを検出した場合に、このトイレブースから退出した利用者に、忘れ物がある旨の通知を行う技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るトイレシステムは、
トイレブースから利用者が退室することを検出する退出検出部と、
前記利用者の退出を検知した際、前記トイレブース内にある前記トイレブースの備品以外の物体を忘れ物として検出する忘れ物検出部と、
前記トイレブースの外側に設けられ、前記忘れ物が検出された場合に、前記忘れ物が生じたことを前記利用者に対して通知する通知部と、
前記利用者が退室することを検出してからの経過時間及び/又は前記利用者の位置情報に応じて前記通知部による前記通知の形態を変化させる通知制御部と、
を備えるトイレシステム。
【0008】
前記トイレシステムは、
前記通知部が、音によって前記通知を行うものであって、
前記通知制御部が、前記経過時間に応じ、前記経過時間が長くなるほど前記通知の音が
大きくなるように、前記通知の形態を変化させてもよい。
【0009】
前記トイレシステムは、
検出された前記忘れ物の種別を求める識別部を更に備え、
前記通知制御部が、前記忘れ物の種別に応じて前記通知部による前記通知の形態を変化させてもよい。
【0010】
前記トイレシステムは、
前記トイレブースが備えられた施設内の複数の位置に前記通知部が設置され、
前記通知制御部が、前記利用者の位置情報に応じ、前記利用者が存在する位置と対応する位置に設置されている前記通知部から前記通知を行わせ、前記利用者の移動に合わせて前記通知の形態を変化させてもよい。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係るトイレ管理方法は、
トイレブースから利用者が退室することを検出することと、
前記利用者の退出を検出した際、前記トイレブース内にある前記トイレブースの備品以外の物体を忘れ物として検出することと、
前記忘れ物が検出された場合に、前記トイレブースの外側に設けられた通知部を制御し、前記忘れ物が生じたことを前記利用者に対して通知することと、
前記利用者が前記トイレブースを退出してからの経過時間及び/又は前記利用者の位置情報に応じて前記通知部による前記通知の形態を変化させることと、
を制御部が実行してもよい。
【0012】
また、本発明は、上記トイレ管理方法をコンピュータに実行させるためのトイレ管理プログラムであっても良い。更に、このトイレ管理プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録されていても良い。
【0013】
ここで、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって非一時的に蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記憶媒体をいう。このような記憶媒体の内コンピュータから取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD(登録商標)、DAT、8mmテープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記憶媒体としてハードディスクやROM(リードオンリーメモリ)等がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トイレブース内で忘れ物が発生したことを検出した場合に、このトイレブースから退出した利用者に、忘れ物がある旨の通知を行う技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第一実施形態に係るトイレシステムの構成を示す図である。
【
図3】大便器を備えたトイレブースの一例を示す斜視図である。
【
図4】トイレブースの扉を閉じた状態を示す正面図である。
【
図5】トイレブースの扉を開いた状態を示す正面図である。
【
図8】男性用の小便器等のトイレ設備を備えたトイレブースを示す図である。
【
図9】制御装置が実行するトイレ管理方法の処理を示す図である。
【
図10】第二実施形態に係る制御装置の構成を示す図である。
【
図11】第二実施形態に係るトイレ管理方法の処理を示す図である。
【
図12】第三実施形態におけるトイレブースおよび吊支式スライド扉装置の上面図である。
【
図13】第三実施形態におけるトイレブースおよび吊支式スライド扉装置の斜視図である。
【
図14】第三実施形態における駆動部及び通知ユニットを示す図である。
【
図15】第四実施形態に係る制御装置の構成を示す図である。
【
図16】第四実施形態に係るトイレ施設の一例を示す図である。
【
図17】位置検出部による検出手法の説明図である。
【
図18】第四実施形態に係るトイレ管理方法の処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〈第一実施形態〉
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態は本発明の一例であり、本発明の構成は以下の例には限られない。
【0017】
図1は、本実施形態に係るトイレシステムの構成を示す図である。本実施形態に係るトイレシステム100は、通知ユニット12,20や、入退出センサ30、物体検知部40、制御装置50を有し、これらがネットワークNを介して通信可能に接続されている。トイレシステム100は、トイレブース内で忘れ物が発生した場合に、このトイレブースから退出した利用者に対して、音や光で忘れ物の発生を通知する。このとき、利用者は、トイレブースを退出し、トイレブースから離れていくことになるため、トイレシステム100は、徐々に通知の音を大きくするなど、退出後の利用者の行動に合わせて通知の形態を変化させる。これにより本実施形態のトイレシステム100は、トイレブースを退出した利用者に対して確実に忘れ物の発生を通知できるようにしている。なお、通知の形態とは、通知の音や光の状態であり、具体的には、音量、音質、音の高さ、音声メッセージの内容、光量、光の色、点滅パターン、表示内容などが挙げられる。
【0018】
トイレ施設10は、例えば、高速道路のサービスエリアや、駅、空港等における、不特定多数の利用者(公衆)が利用する公衆トイレである。本実施形態のトイレ施設10は、複数のトイレブース14を有している。
【0019】
図2はトイレ施設10の一例を示す図である。
図2に示すように、トイレ施設10は、出入り口104を除いて周囲が壁105で囲まれている。即ち、トイレ施設10を利用する利用者は、出入り口104を介してトイレ施設10に出入りする構成となっている。なお、出入り口104は、一カ所に限らず、複数箇所に設けられても良い。トイレ施設10は、
図2において、出入り口104から見て右側のエリアが男性用エリア、左側のエリアが女性用エリアである。男性用エリアには大便器41が設けられたトイレブース141と、小便器49が設けられたトイレブース142がそれぞれ複数設けられている。女性用エリアには大便器41が設けられたトイレブース141が複数設けられている。また、トイレ施設10は、大便器41の他、オストメイト用設備や乳児用ベッドが備えられたトイレブース(多目的トイレ)143を備えてもよい。多目的トイレ143は、複数設けられても良く、男性用エリアと女性用エリアに夫々設けられてもよい。
【0020】
このように本実施形態のトイレ施設10は、トイレブース14として、大便器41が設けられたトイレブース141と、小便器49が設けられたトイレブース142と、多目的トイレ143とを有している。ここで、トイレブース14とは、ドアや壁等で囲まれた通常同時に一人が用を足すための便器41,49等のトイレ設備が設けられた空間(室)である。なお、トイレブースは、一人で利用することに厳密に限定されるものではなく、介助者や乳幼児が利用者と同時に入室可能なものでも良い。また、トイレブースは、幼児用
トイレや小便器49が備えられた空間のように完全に囲われていない空間であっても良い。
【0021】
図3は、大便器41を備えたトイレブース141の一例を示す斜視図、
図4はトイレブース141の扉9を閉じた状態を示す正面図、
図5はトイレブース141の扉9を開いた状態を示す正面図である。トイレブース141は、左右一対の側壁14L,14R及び後壁14Bにより三方が囲まれ、正面に扉9を含む前壁14Mを有する。これら側壁14L、14R、後壁14B、前壁14Mによって囲繞されたトイレブース141の中に大便器41が設置されている。トイレブース14を囲繞する壁14L,14R,14B及び前壁14Mは、床14Fから天井14Cに達する高さとしても良いが、本実施形態では、
図4に示すように左右の側壁14L,14R、及び前壁14Mと天井14Cとの間に空間を設けて空気の流通を可能にしている。前壁14Mのうち一部が、側壁14L,14Rの何れか(
図3の例では側壁14R)と固定された壁M1であり、壁M1と側壁14L,14Rとの間の開口が出入り口4となっている。出入り口4には、扉9がヒンジ(不図示)によって開閉可能に取り付けられ、壁M1と扉9が前壁14Mを構成している。隣接して配置されるトイレブース141同士の側壁14L,14Rは、兼用されても良く、例えば、あるトイレブース141における左側壁14Lは、左側に隣接したトイレブース141の右側壁であってもよい。
【0022】
ここで、左右とは、トイレブース141の外から出入り口4に正対した場合の左側及び右側をいい、前後は便器41の位置から出入り口のある方向(前方)、及び便器41の位置から出入り口と反対の方向(後方)をいう。また、天井14C側を上方、便器41の設置面(床)14F側を下方という。これらの方向、特に前後・左右は、本実施形態を説明する便宜上のものであり、適宜変更され得る。
【0023】
壁M1の内壁面において扉側の上下方向中央付近には、錠91が設けられ、トイレブース内の利用者によって施錠及び開錠の操作が可能となっている。錠91は、施錠時に扉9の受け具(不図示)と係合して開扉を抑止する。錠91は、壁M1側に設けられる構成に限らず、扉9に設けられて、壁M1の受け具と係合して開扉を抑止するものであってもよい。錠91は、トイレブース141の使用中に扉9を閉止するものであれば、任意の構成をとり得、例えば、床14F、天井14Cに設けられる構成であってもよい。なお、利用者による開閉スイッチの操作に応じて扉9を開閉駆動する機構を備え、利用者が開扉の操作を行うまで扉9が閉じた状態を維持する構成であれば錠91を省略しても良い。また、扉9には、錠91が施錠されているか否か、或は扉9が閉じられているか否かを検出する開閉センサ92が備えられている。
【0024】
図3、
図4に示すように、トイレブース141には、便器41、便座装置42、表示ユニット43、物体検知部40等のトイレ設備1が備えられている。
【0025】
便座装置42は、洋式の便器41上に設けられ、利用者が着座する座面を加温する機能や温水を吐出して利用者の肛門や局部を洗浄する洗浄機能を有している。また、便座装置42は、利用者が着座しているか否かを検出する着座センサ42Aを備え、この着座センサ42Aの検出結果に基づき、利用者が着座しているときに温水の吐出ボタン(不図示)が押されると温水を吐出し、利用者が着座していないときに温水の吐出ボタン(不図示)が押されても温水を吐出しないように、吐出の可否を制御する。また、便座装置42は、フラッシュ弁の開閉を制御する機能を有し、着座センサ42Aの検出結果に基づき、利用者の着座を検出した後、この利用者の着座が検出されなくなった場合、利用者が用を足して座面を離れたと判定し、フラッシュ弁を所定時間開いて洗浄水を放出させる。なお、便器41は、洋式に限らず和式であっても良く、和式の便器41が設けられた場合、便座装置42は、省略されてもよい。また、和式の便器41が設けられた場合、便座装置42に
代え、利用者の存否に基づいてフラッシュ弁の開閉を制御する機能を有した装置を備えてもよい。例えば、和式の便器41に対して中腰で座り(単に着座とも称す)、排便する位置、即ち便器41を利用する位置(以下、利用位置とも称す)に利用者が存在するか否かを人感センサで検出し、利用者の着座を検出した後、この利用者の着座が検出されなくなった場合、利用者が用を足して利用位置から離れたと判定し、フラッシュ弁を所定時間開いて洗浄水を放出させる。
【0026】
表示ユニット43は、便器41周囲の壁面、本例では左側壁14Lに設けられ、
図6に示すように、便座装置42の温度設定や洗浄位置の設定などの操作を行う操作パネル431を有している。また、表示ユニット43は、表示部432や、スピーカ433、洗浄ボタン434を有している。
【0027】
表示部432は、便座の設定温度や洗浄用の温水の温度、洗浄位置の他、制御装置50から受信した情報等を表示する。
【0028】
スピーカ433は、操作パネル431を操作した際の操作音や、後述の音声メッセージ等の音、便器を洗浄する洗浄水が流れる音を模擬する擬音等を出力する。
【0029】
洗浄ボタン434は、便器41に洗浄水を放出する際に利用者によって操作される操作ボタンである。表示ユニット43は、洗浄ボタン434が押されたことを検知すると、便器41のフラッシュ弁(不図示)を開放させて洗浄水を放出させる。
【0030】
物体検知部40は、トイレブース内の物体の存否を検出するためのセンサである。物体検知部40は、例えば赤外線や電波、超音波等の送信波を測定位置に送信し、この送信波が物体によって遮られたり反射されたりした変化を受信器で捉えることで測定位置に物体が存在するか否かを検出するアクティブ型のセンサ(例えばTOFセンサ)である。物体検知部40は、太陽光や照明光等の周囲の光によって照らされた物体からの光を受信することによって物体の存在を検出するパッシブ型のセンサ(例えば撮像素子)であってもよい。また、物体検知部40は、測定対象とするトイレブース内の領域へレーザ光を照射して光走査し、この光走査した各位置からの反射光を受光するまでの時間に基づいて各位置までの距離を求め、当該距離とレーザ光の照射位置から各位置の三次元座標を求める三次元スキャナであっても良い。
【0031】
制御装置50は、表示ユニット43、便座装置42、物体検知部40、開閉センサ92等、他のトイレ設備1と電気的に接続し、物体検知部40や開閉センサ92で取得した情報に基づき、通知ユニット20から忘れ物の通知を行う。制御装置50は、例えば
図7に示すように、CPU(Central Processing Unit)51や、主記憶装置52、補助記憶装
置53、通信IF(Interface)54、入出力IF(Interface)55、通信バス56を備えている。
【0032】
CPU51は、制御装置50及び、制御装置50と電気的に接続した装置を制御する手段である。CPU51は、コントローラや、Micro-processing unit(MPU)等と呼ば
れる制御手段であってもよい。
【0033】
主記憶装置52及び補助記憶装置53は、情報を記憶する手段である。主記憶装置52は、CPU51が読み出したプログラムの命令やデータをキャッシュするなど、CPUの作業領域として用いられる。主記憶装置52は、具体的には、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等である。
【0034】
補助記憶装置53は、CPU51により実行されるプログラムや、本実施の形態で用い
る設定情報などを記憶する。補助記憶装置53は、具体的には、HDDや、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等である。
【0035】
通信IF54は、他のコンピュータ装置との間でデータを送受信する。通信IF54は、具体的には、有線又は無線のネットワークカード等である。入出力IF55は、入出力装置と接続され、コンピュータのユーザから入力を受け付けたり、ユーザへ情報を出力したりする。本実施形態の入出力IF55は、入出力装置として表示ユニット43が接続され、操作パネル431による入力を受けたり、表示部432への表示出力、スピーカへの音出力を行ったりする。以上のような構成要素が、通信バス56で接続されている。なお、これらの構成要素は複数設けられていても良いし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0036】
CPU51は、プログラムを実行することにより、本実施形態で説明する処理を行う。例えばCPU51は、入退出検出部501と、忘れ物検出部502と、通知制御部503の機能を提供する。
【0037】
入退出検出部501は、入退出センサ30による検知結果を所定のタイミングで取得し、トイレブース14への利用者の入室及びトイレブース14からの利用者の退室を検出する。本実施形態では、物体検知部40や、開閉センサ92、着座センサ42A等を入退出センサ30として用いている。例えば、錠91の施錠や、扉9の開閉操作はトイレブース内で行う構成としているため、錠91が施錠された状態、或は扉9が閉じられた状態を開閉センサ92が検知した場合、入退出検出部501は、トイレブース内に利用者が入室した状態であることを検出する。そして、錠91が施錠された状態から解錠状態に切り替えられた時、或は扉9が閉じられた状態から開いた状態に変えられた時に、利用者が退出することを検出する。これに限らず、入退出検出部501は、便座装置42等の着座センサにより、利用者が着座した場合に入室したことを検出し、着座を検出しなくなった時に退室することを検出してもよい。
【0038】
また、トイレブース内に人感センサを備えている場合、入退出検出部501は、人感センサが利用者を検知した時に、入室したと検出し、人感センサが利用者を検知しなくなった時に、退室したと検出しても良い。同様に入退出検出部501は、物体検知部40が利用者を検知した時に、入室したと検出し、物体検知部40が利用者を検知しなくなった時に、退室したと検出しても良い。
【0039】
更に、入退出検出部501は、複数のセンサの検知結果に基づいて入退室を検出してもよい。例えば、人感センサ及び着座センサが利用者を検知した時に入室したことを検出し、人感センサ及び着座センサが利用者を検知しなくなった時に退室したことを検出してもよい。また、人感センサが利用者を検知した時に入室したことを検出し、着座センサが利用者の着座を検知した状態から検知しなくなった状態に切り替わった時に退室したことを検出するなど、別種のセンサに基づいて入室と退室を検出してもよい。
【0040】
また、入退出検出部501は、利用者が退出することを、利用者が出入り口4から退出する直前と、利用者が出入り口4から退出した時点との二段階のタイミングで検出してもよい。例えば、入退出検出部501は、利用者が出入り口4側へ移動を開始したことや、利用者が扉9に手をかけたこと、利用者の操作によって開閉センサ92の検知結果が閉から開に変化したこと等、利用者が退出直前に行う動作を検出した場合に、利用者が出入り口4から退出する直前であることを検出する。更に、入退出検出部501は、利用者が出入り口4を通り、少なくとも身体の一部がトイレブース外に出たこと、利用者の身体が完全にトイレブース外に出たこと等、利用者が出入り口4を通過した瞬間の動作を検出した場合に、利用者が出入り口4から退出した時点であることを検出する、
忘れ物検出部502は、入退出検出部501で、利用者の退出を検知した際、トイレブース内にあるトイレブース14の備品以外の物体を忘れ物として検出する。例えば、忘れ物検出部502は、物体検知部40が利用者の入室前に、トイレブース14内で検知した物体をトイレブース14の備品と検出し、利用者の退出を検知した際、物体検知部40がトイレブース14内で検知した備品以外の物体を忘れ物として検出する。
【0041】
通知制御部503は、利用者が退室することを検出してからの経過時間に応じて通知ユニット(通知部)20による通知の形態を変化させる。本実施形態の通知ユニット20は、LEDや電球等によって任意の色で発光する発光部21と、音を出力するスピーカ22とを備えている。なお、各トイレブース14の外壁に設けられた通知ユニット20の他に、トイレ施設10内の壁や天井等に通知ユニット12が設けられてもよい。通知ユニット12は、
図5,
図6の通知ユニット20と同様に発光部21とスピーカ22とを備え、ネットワークNを介して制御装置50に制御されて通知を行う。通知制御部503は、利用者がトイレブースから退出した瞬間に、発光部21による光、及びスピーカ22による音の出力を開始し、経過時間に応じて発光パターンや音を変化させる。例えば、経過時間が長くなるほど、通知の音を大きくさせると共に、発光部21の点滅速度を早くさせる。
【0042】
また、
図3,
図4では、大便器41等のトイレ設備1を備えたトイレブース141について示したが、多目的トイレ143についても同様に大便器41等のトイレ設備1を備え、物体検知部40及び開閉センサ92の検出結果に基づいて忘れ物の発生及び利用者の退出を検出し、同様に忘れ物の通知を行う。
また、通知制御部503は、通知ユニット20からの通知に加え、トイレ施設10を管理するセンターの管理サーバ2や、トイレ施設10を管理する担当者の端末など、外部の装置へメール等によって忘れ物の通知を行ってもよい。この場合、通知のタイミングは、通知ユニット20と外部装置とで異ならせてもよく、例えば、通知ユニット20へ通知した後、利用者が取りに戻らず、忘れ物が検出されている場合に外部装置へ通知してもよい。外部装置への通知には、例えば、忘れ物が発生したトイレ施設10やトイレブース14の識別情報、忘れ物を検出した時刻、忘れ物の形状を示す情報、忘れ物の種別等を含んでもよい。
【0043】
図8は、男性用の小便器49等のトイレ設備1を備えたトイレブース142を示す図である。トイレブース142は、上下方向が天井14C及び床14Fによって仕切られ、水平方向の三方が、左右一対の仕切板24L,24R及び小便器49の設置面(壁)105により囲まれている。即ち、トイレブース142は、小便器49の正面に壁が無く、完全に囲繞された空間ではない。しかし利用時には、利用者が小便器49の正面に立ち、当該利用者の背面や仕切板24L,24Rによって他者からの視界が遮られた空間となるため、本実施形態では、この左右一対の仕切板24L,24R及び壁105に囲まれた空間をトイレブース142としている。
図8において、左右とは、小便器49の正面に立ち、小便器49に向かって左側及び右側をいい、前後とは便器41を基準とし、利用者が排尿時に立つ側を前方、壁105への取付面側を後方といい、上下とは、天井14C側及び便器41の設置面(床)14F側をいう。なお、隣接するトイレブース142がある場合、仕切板(左側壁)24Lは、左隣に位置する別のトイレブース142の仕切板(右側壁)24Rを兼ね、仕切板24Rは右隣に位置する別のトイレブース142の仕切板24Lを兼ねる。なお、仕切板24L,24Rは、省略してもよく、仕切板24L,24Rを省略した場合には小便器49を含む所定の範囲、例えば隣接する小便器49との中間を境とした小便器49の周囲や、小便時に利用する棚145や傘掛け151等のトイレ設備を含む範囲をトイレブース142として定める。
【0044】
トイレブース142には、小便器49、制御装置50、表示ユニット43、物体検知部40、通知ユニット20等のトイレ設備1が備えられている。なお、トイレブース141
とほぼ同じ機能を有する要素は、同じ符号を付す等して説明を省略する。トイレブース142に面した壁105は、少なくとも下方が内部に空間を有した二重壁となっており、この空間内に給水管や排水管(不図示)が配設されている。
【0045】
小便器49は、壁105に取り付けられ、壁105内部の給水管や排水管と接続されている。トイレブース142では、便座装置42を備えないため、
図8の表示ユニット43は、操作パネル431を省略している。また、表示ユニット43は、人感センサ44を備えている。
【0046】
人感センサ(物体検知部)44は、小便器49の前に立つ利用者から赤外線を受信したか否かによって、利用者がトイレブース142内に存在するか否かを検知する。
【0047】
トイレブース142の物体検知部40は、トイレブース142内の備品や、利用者、忘れ物等の物体を検知する。
図8の物体検知部40は、例えば、小便器49前方の天井14C面に設置され、小便器49の前方に立って小便する利用者よりも後方の位置からトイレブース142内を対称範囲としてする。これにより物体検知部40は、例えば棚145上に置かれた物や、傘掛け151に掛けられた傘等を検知する。
【0048】
制御装置50は、壁105内に設けられ、表示ユニット43や物体検知部40、通知ユニット等、他のトイレ設備1と電気的に接続されている。制御装置50は、人感センサ44の検出結果に基づき、利用者から赤外線を受信していない状態から赤外線を受信した場合に変わった場合に利用中がトイレブース142に入室したと判定し、その後、利用者から赤外線を受信しなくなった場合に排便が完了して利用者が退出したことを検出する。また、制御装置50は、利用者が退出したことを検出した場合に、小便器49と接続されたフラッシュバルブ(不図示)を開放し、給水管から洗浄水を供給して小便器49内を洗浄する制御を行ってもよい。
【0049】
〈トイレ管理方法〉
図9は、各トイレブース14の制御装置50が、プログラムに従って実行するトイレ管理方法の処理を示す図である。制御装置50は、周期的に或は所定のタイミングで
図9の処理を開始する。
【0050】
ステップS10にて、制御装置50は、入退出センサ30の検知結果に基づき、利用者が入室したか否かを判定する。制御装置50は、ステップS10で、否定判定であれば、ステップS20へ移行し、物体検知部40によってトイレブース14内の物体を検知し、利用者がいないときの備品の状態(入室前状態とも称す)を取得して記憶する。
【0051】
一方、ステップS10で、肯定判定であれば、制御装置50は、ステップS30へ移行し、利用者が退出する直前か否か、即ち、退出前動作を行ったか否かを判定する。例えば、利用位置に居た利用者が利用位置から離れたことや、開閉センサ92の検知結果が閉から開に変わったことなどを退出前動作として検出する。
【0052】
ステップS30で、否定判定であれば、利用者が利用を継続している状態のため、制御装置50は、所定時間毎にステップS30の判定を繰り返す。なお、利用者が利用位置に着く前に退出した場合や、錠91を閉じる前に退出した場合には、ステップS30を繰り返すのではなく、例外処理(不図示)として
図9の処理を終了させてもよい。
【0053】
ステップS30で、肯定判定であれば、制御装置50は、ステップS40へ移行し、物体検知部40によってトイレブース14内の物体を検知し、忘れ物の検出処理を行う。例えば、制御装置50は、ステップS20で記憶した入室前状態と比較して、増加した物体
を忘れ物として検出する。この場合、利用者を識別し、利用者以外で増加した物体を忘れ物として検出してもよい。
【0054】
ステップS50にて、制御装置50は、忘れ物を検出したか否か、即ち忘れ物が発生したか否かを判定する。制御装置50は、ステップS50で否定判定であれば、ステップS20へ移行して
図9の処理を終了し、ステップS50で肯定判定であれば、ステップS60へ移行する。
【0055】
ステップS60にて、制御装置50は、利用者がトイレブース外に達したタイミング(退出時点)か否かを判定する。例えば、制御装置50は、物体検知部40により、利用者の身体の一部がトイレブース外に出たタイミングを検出する。制御装置50は、ステップS50で否定判定であれば、肯定判定となるまで所定周期でステップS50の判定を繰り返し、肯定判定となった場合に、ステップS70へ移行する。
【0056】
ステップS70にて、制御装置50は、通知ユニット20を制御し、通知を開始させる。例えば、制御装置50は、忘れ物が検出されていないとき(通常時)には、通知ユニット20の発光部21を消灯させた状態とし、忘れ物が検出されたとき(忘れ物発生時)には発光部21を所定の色(例えば赤色)で点灯又は点滅させるように制御する。また、制御装置50は、忘れ物発生時に警告音と共に「忘れ物があります。」のように音声メッセージをスピーカ22から出力させる。更に各トイレブースの位置を示す情報(位置情報)を予め設定しておき、「奥から二番目のトイレブース内に、忘れ物があります。」のように、位置情報を含めた音声メッセージを出力させてもよい。また、発光部21から発せられる光の色や点滅パターン等、発光状態を示す情報を音声メッセージに含め、「赤く点灯しているトイレブースに忘れ物があります」「緑に点滅しているトイレブースに忘れ物があります」等のように発光状態によって、忘れ物が発生したトイレブースを示してもよい。
【0057】
ステップS80にて、制御装置50は、利用者が退室することを検出してから所定の時間が経過したか否かを判定する。例えば、制御装置50は、利用者が退室したタイミングを起点とし、5秒後、10秒後、15秒後のように所定時間が経過する毎に、所定時間が経過したと判定する。ステップS80で否定判定であれば、制御装置50は、ステップSへ移行し、通知形態を変更させるように通知ユニット20を制御する。例えば、制御装置50は、経過時間が長くなるほど、スピーカ22から出力させる警告音や音声メッセージ等の音が大きくなるように、通知形態を変化させる。また、制御装置50は、経過時間が長くなるほど、発光部21の点滅のスピードが速くなる、或いは発光する光が強くなるように、通知形態を変化させる。また、制御装置50は、経過時間に応じて、音を出力する通知ユニット20をトイレ施設10内の別の通知ユニット12や別のトイレブース14の通知ユニット20に切り換えてもよい。例えば、トイレブース14から退出した利用者が、出入り口104に向かって歩いた場合、所定時間後に達すると推定される位置に近い通知ユニット12,20から通知を行うようにしてもよい。
【0058】
ステップS100にて、制御装置50は、通知を終了するか否かを判定する。例えば、利用者が忘れ物を取りに戻って、トイレブース14内で利用者が検出された、忘れ物が検出されなくなった、利用者がトイレ施設10から出たと推定される時間が経過した等、所定の終了条件を満たした場合に、制御装置50は、通知を終了すると判定する。ステップS100にて、制御装置50は、肯定判定であれば
図9の処理を終了し、否定判定であればステップS80に戻る。
【0059】
〈実施形態の効果〉
以上のように、本実施形態のトイレシステム100は、忘れ物が発生した場合、利用者
がトイレブース14を出た時に、忘れ物の通知を行い、利用者が気付き易い適切なタイミングで通知できる。例えば、利用者がトイレブースの外側に達した瞬間に、通知を行うことで、このトイレブースを出たことで問題が生じた(忘れ物が生じた)ことや、トイレブース14を出る利用者に対して近い位置となるように配置した通知ユニット20から通知を行うことで、通知の対象が当該利用者であることが直感的に分かるようにしている。
【0060】
また、トイレブース14を出た利用者は、時間の経過に伴って当該トイレブース14から離れることになるため、本実施形態のトイレシステムは、経過時間に応じて通知の音を大きくする、通知する光の点滅を速くする等、通知の形態を変化させることで、的確に利用者へ通知できるようにしている。
【0061】
また、爆弾等の危険物や、隠しカメラなどをトイレブース内に設置しようとした場合もこれらを忘れ物として検出して通知を行うことで、危険物や隠しカメラなどの設置を抑制することができる。なお、危険物や隠しカメラなどの設置者(利用者)が、通知を無視して逃げたとしても、これらの設置を周囲の人に知らせることができる。また、トイレシステム100は、利用者が忘れ物を取りに戻らなかった場合、トイレ施設10を管理するセンター等に通知するため、トイレブース14に残された忘れ物の対応を迅速に行うことができる。このため、爆弾等の危険物や、隠しカメラなどが設置された場合にも迅速に対応でき、安全性を確保することができる。
【0062】
〈第二実施形態〉
本実施形態は、忘れ物を検出した場合に、この忘れ物の種別を特定し、忘れ物の種別に応じた形態で通知を行う構成としている。なお、その他の構成は、前述の第一実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。
【0063】
図10は、第二実施形態に係る制御装置50の構成を示す図である。
図10に示すように、本実施形態の制御装置50は、第一実施形態で示した構成に加えて、識別部504を備えている。
【0064】
識別部504は、検出された忘れ物について、物体検知部40で検知した輪郭や外形等の情報に基づき、その忘れ物の種別を決定する。ここで、忘れ物の種別とは、例えば、携帯電話、スマートフォン、眼鏡、帽子、財布、小銭入れ、鞄(ポーチ、バック、リュック、スーツケース)、傘、ハンカチ、杖、手袋、マフラー等が挙げられる。
【0065】
忘れ物の種別を求める手法としては、例えば、忘れ物の種別毎に、忘れ物の輪郭や外形等のパターンを予め記憶しておき、検出された忘れ物の輪郭や外形と、記憶しているパターンとを比較し、検出された忘れ物の輪郭や外形が、どのパターンに適合するかによって、種別を特定する、いわゆるパターンマッチングが挙げられる。また、忘れ物の輪郭や外形等の情報と、その忘れ物の種別との関係を機械学習して、数理モデルを作成し、検出された忘れ物の輪郭や外形に対応する種別を当該数理モデルによって特定する、いわゆるAIによって識別する構成であってもよい。
【0066】
図11は、本実施形態に係るトイレ管理方法の処理を示す図である。なお、処理の開始からステップS50までは、前述した
図9の処理と同じである。
【0067】
ステップS50で肯定判定の場合、制御装置50は、ステップS52へ移行し、物体検知部40で検知した輪郭や外形等の情報に基づき、その忘れ物の種別を決定する。
【0068】
ステップS54にて、制御装置50は、ステップS52で求めた種別が、財布やスマートフォン等、通知を行うものとして定めた種別か否かを判定する。ステップS54で、否
定判定であれば、制御装置50は、ステップS20へ移行して
図11の処理を終了する。例えば、忘れ物として検出した物体が、トイレットペーパの芯や紙くず等、通知する必要のないもの(ノイズ)であった場合には、
図11の処理を終了して無駄な通知を行わないようにする。
【0069】
一方、ステップ54で肯定判定の場合、ステップS56へ移行し、種別に応じた通知を決定する。例えば、「傘の忘れ物があります。」「スマートフォンを置き忘れています」等のように、忘れ物の種別を示す情報を含めた音声メッセージを定めても良い。即ち、忘れ物の種別毎に音声メッセージ(通知形態)を変化させてもよい。また、音声メッセージに限らず、忘れ物の種別毎に発光部21の発光パターンを異ならせてもよい。なお、ステップS56以降の処理は、前述した
図9の処理と同じである。
【0070】
本実施形態によれば、忘れ物の種別に応じて適切に忘れ物の通知を行うことができる。
【0071】
〈第三実施形態〉
本実施形態は、トイレブースの扉を円弧状の吊支式スライド扉装置としている。なお、その他の構成は、前述の第一実施形態又は第二実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。
【0072】
図12は、本実施形態におけるトイレブース141および吊支式スライド扉装置190の上面図である。
図13は、本実施形態におけるトイレブース141および吊支式スライド扉装置190の斜視図である。
【0073】
吊支式スライド扉装置190は、出入り口4を開閉するための扉体93と、この扉体93をスライド自在に吊支する案内レール90と、扉体93を駆動する駆動部94とを含んでいる。案内レール90は、トイレブース141の前方外側に向かって凸状に湾曲した円弧形状を有しており、出入り口4の上部に架け渡されている。
【0074】
駆動部94は、
図14に示すように、案内レール90の正面壁90aに設けられた孔90dや、前壁M1に設けられた孔M11を介して、トイレブース141の外側へ張り出して設けられている。トイレブース141の外側に位置する駆動部94の端部には、通知ユニット420が取り付けられている。通知ユニット420は、駆動部94の壁から外側へ突出した部分を覆う椀状のカバー体421と、カバー体421を固定するネジ422と、発光部423と、スピーカ424とを有している。
【0075】
カバー体421は、半透明の樹脂材料から形成され、ネジ422によって駆動部94の後端に固定される。カバー体421の内壁面には、発光部423及びスピーカ424が設けられている。
【0076】
利用者によって操作部6が操作され、開操作又は閉操作が行われると、制御装置50がこの操作に応じて駆動部94を動作させ、扉体93を案内レール90に沿って開閉させる。
【0077】
制御装置50は、前述の第一実施形態又は第二実施形態と同様に、忘れ物を検出し、通知ユニット420の発光部423及びスピーカ424を用いて通知を行う。
【0078】
このように本実施形態によれば、前述の第一実施形態又は第二実施形態と同様に、忘れ物を適切に通知できると共に、吊支式スライド扉装置190において、トイレブース141の外側に張り出した駆動部94を覆う外装部分を通知ユニットとして有効に利用できる。
【0079】
〈第四実施形態〉
前述の実施形態では、経過時間に応じて通知形態変化させたが、本実施形態では、利用者の移動を追跡し、利用者の現在位置に応じて通知する通知ユニット12,20を切り換える構成とする。なお、この他の構成は、前述の第一~第三実施形態と同じであるので、同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。
【0080】
図15は、本実施形態に係る制御装置50の構成を示す図である。本変形例の制御装置50は、前述した構成に加えて、位置検出部505を備えている。
【0081】
位置検出部505は、トイレブースから退室した前記利用者の現在位置を検出する。
図16は、本実施形態に係るトイレ施設10の一例を示す図である。トイレ施設10は複数の光電センサ(位置センサ)510を備えている。
図17は、位置検出部505による検出手法の説明図である。光電センサ510は、レーザ光など、直線状に信号光を照射する投光部511と信号光を受光する受光部512とを有している。本変形例では、
図17,
図18に示すように信号光を水平に照射し、この信号光が網目状となるように複数の光電センサ510を所定の間隔で配置している。この光電センサを配置する間隔は、利用者の移動を検知できれば、任意に設定してよいが、例えば、10mm~1000mm、好ましくは20mm~500mm、更に好ましくは30mm~150mmや100mm~200mmである。なお、
図16,
図17は、模式的に示しているため、光電センサ510の間隔や位置は、実際に配置する間隔と異なっている。
【0082】
図17の例では、信号光sx0~sx4と信号光sy0~sy6とが直交する網目状となるように光電センサ510が配置されており、実線で示した利用者UEが、信号光sx1,sx2,sy2~sy4を遮っている。この場合、信号光sx1,sx2と信号光sy2~sy4の交点に利用者がいることが検出される。そして、利用者UEが二点鎖線の位置に移動すると、信号光sx2,sx3,sy1~sy3が遮られ、信号光sx1,sy4が遮られなくなる。このため位置検出部505は、光電センサ510の検知結果に基づいて、利用者UEが信号光sx2,sx3,sy1~sy3の交点に移動したことが検知でき、これを繰り返すことで利用者を追跡できる。このように利用者UEによって遮られる信号光に基づいて利用者の移動を検出する。なお、利用者UEの位置を検知するセンサは、信号光が遮られたことで利用者UEを検出するセンサに限らず、信号光が物体に反射された反射光を受信部で受信し、利用者UEがいない場合の距離を基準とし、この基準の距離よりも短い距離で反射された場合に利用者UEがいることを検出しても良い。また、利用者UEを検出する位置センサは、トイレ施設10の天井にマトリクス状にセンサを配置し、各センサの直下に利用者UEが存在するか否かを検知し、利用者の存在を検知したセンサの位置に応じて利用者UEの位置を検出するようにしても良い。更に、利用者UEを検出する位置センサは、光電センサ510に限らず、レーザ光でトイレ施設10内を光走査して利用者の位置を検出し、光走査毎の利用者の位置の変化によって利用者の移動を検出する三次元スキャナでも良い。
【0083】
また、トイレ施設内にカメラ(位置センサ)を設け、利用者が各トイレブース14から退出して出入り口104へ移動する経路を撮影し、この撮影画像を位置検出部505が画像解析することで、利用者の現在位置を検出してもよい。この場合、位置検出部505は、例えば、撮影画像を利用者がいない状態で撮影した背景画像と比較し、これらの差分をとることで利用者の画像を抽出し、これを周期的に繰り返して利用者の位置の変化を連続して記録することで利用者を追跡する。
【0084】
図18は、本実施形態に係るトイレ管理方法の処理を示す図である。なお、処理の開始からステップS80までは、前述した
図11の処理と同じである。
【0085】
ステップS80で肯定判定であれば、制御装置50は、ステップS85に移行し、位置センサの検知結果に基づいて利用者の現在位置を求める。
【0086】
ステップS84にて、制御装置50は、利用者の現在位置に応じた通知ユニット12,20から通知を行う。例えば、利用者から最も近い位置に設置されている通知ユニット12,20から通知を行い、利用者が移動した際、利用者を追いかけるように通知ユニット12,20を切り換えて通知を行う。即ち、通知を行う通知ユニット12,20の位置を変化させる。このとき、通知を行う通知ユニットは、12,20は、一つに限らず、利用者から最も近いものと、進行方向に設置されているものなどの複数であってもよい。また、複数の通知ユニット12,20から、利用者の両耳に対して、同じ音で通知を行うと、利用者は頭の中で通知が響くように感じるため、利用者の注意を引くことができ、確実に忘れ物の通知を行うことができる。更に、利用者の左右の耳に通知する音に位相差を与える等して、利用者に対して特定の位置に、音像を形成するように通知を行ってもよい。例えば、利用者から近い位置(例えばパーソナルスペース内)であって、忘れ物を検出したトイレブース14がある方向に音像を形成する。具体的には、利用者が忘れ物をしたトイレブース14を背にして歩いている場合に、利用者の直後に音像を形成するように通知を行う。これによりパーソナルスペース内で音がしたと感じた利用者が警戒して振り向くと、自身が利用したトイレブース14の通知ユニット20が赤く点滅している等の状況を視認することになり、異常が生じていること、即ち忘れ物をしたことに気づき易くなる。
【0087】
このように、本実施形態によれば、利用者の位置に応じて通知する位置を変化させることができ、移動する利用者に対して的確に忘れ物の発生を通知することができる。
【0088】
〈その他〉
本発明は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0089】
1 :トイレ設備
2 :管理サーバ
4 :出入り口
6 :操作部
9 :扉
10 :トイレ施設
12 :通知ユニット
14 :トイレブース
14B :壁
14C :天井
14F :床
14L :左側壁
14M :前壁
14R :右側壁
20 :通知ユニット
21 :発光部
22 :スピーカ
24L :仕切板
24R :仕切板
30 :入退出センサ
40 :物体検知部
41 :大便器
42 :便座装置
42A :着座センサ
43 :表示ユニット
44 :人感センサ
49 :小便器
50 :制御装置
51 :CPU
52 :主記憶装置
53 :補助記憶装置
56 :通信バス