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特許7605443補正装置、補正方法、及び、補正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】補正装置、補正方法、及び、補正プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/113 20060101AFI20241217BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241217BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20241217BHJP
【FI】
A61B3/113
G06T7/00 660A
G06T7/70 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023217104
(22)【出願日】2023-12-22
【審査請求日】2023-12-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医工連携・人工知能実装研究事業」「AI技術を活用した統合失調症の早期診断医療機器プログラムの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】399059049
【氏名又は名称】フューチャー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510147776
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】加藤 善大
(72)【発明者】
【氏名】山本 力也
(72)【発明者】
【氏名】本多 宏充
(72)【発明者】
【氏名】小橋 昌明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 竜我
(72)【発明者】
【氏名】富永 樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健一郎
【審査官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-037329(JP,A)
【文献】特開2014-068933(JP,A)
【文献】特表2016-537067(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0029883(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0277553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラで撮影されたユーザが画面内に順次表示された複数のターゲット点をそれぞれ注視したときにコンピュータで検出された前記ユーザの各視線位置を取得し、前記カメラが前記ユーザを特定の方角から撮影したことに基づく前記ユーザの視線位置の歪を補正する補正部を備え、
前記補正部は、
所定基準に基づいて前記補正の成功と失敗を判定し、補正が失敗した視線位置がある場合、補正が成功した複数の視線位置の補正前の各視線位置を用いて、前記失敗した視線位置に係る補正前の視線位置の推定値を計算し、前記推定値を前記失敗した視線位置の新たな補正前の視線位置とし、前記新たな補正前の視線位置を用いて前記ユーザの視線位置の歪を補正する補正装置。
【請求項2】
前記補正部は、
前記複数のターゲット点と補正後の各視線位置との間の距離が最小となるように補正前の視線位置の歪を変換する変換式を生成し、前記変換式を用いて前記ユーザの視線位置の歪を補正する請求項1に記載の補正装置。
【請求項3】
前記補正部は、
前記ユーザの視線位置が所定時間継続して前記画面の閾値領域内に収まるか否かを判定し、前記閾値領域内に収まるユーザの視線位置を用いて、前記ユーザの視線位置の歪を補正する請求項1に記載の補正装置。
【請求項4】
前記補正部は、
5つ以上のターゲット点に対応する前記ユーザの視線位置の歪を補正する請求項1に記載の補正装置。
【請求項5】
前記複数のターゲット点は、
前記画面内の中央及び周縁に格子状に表示された5つ以上のターゲット点であり、中央の点が表示され、次に周縁の点が表示される請求項1に記載の補正装置。
【請求項6】
前記ユーザの視線位置の歪を補正する前に、又は、前記ユーザの視線位置の歪の補正が失敗した後に、前記コンピュータが前記ユーザの視線位置を正常に検出していたか否かを判定する判定部を備え、
前記判定部は、
前記コンピュータが検出した前記ユーザの視線位置について鏡像化が発生していたか否かを判定する請求項1に記載の補正装置。
【請求項7】
前記補正部は、
前記コンピュータが検出した前記ユーザの視線位置について鏡像化が発生している場合、前記コンピュータに前記ユーザの視線位置を検出させるのみのダミー補正を行う請求項6に記載の補正装置。
【請求項8】
前記ユーザの顔の傾きに関する教示情報、又は、前記ユーザの瞬きに関する教示情報を、前記ユーザへ通知する通知部、
を更に備える請求項1に記載の補正装置。
【請求項9】
補正装置で行う補正方法において、
カメラで撮影されたユーザが画面内に順次表示された複数のターゲット点をそれぞれ注視したときにコンピュータで検出された前記ユーザの各視線位置を取得し、前記カメラが前記ユーザを特定の方角から撮影したことに基づく前記ユーザの視線位置の歪を補正し、
所定基準に基づいて前記補正の成功と失敗を判定し、補正が失敗した視線位置がある場合、補正が成功した複数の視線位置の補正前の各視線位置を用いて、前記失敗した視線位置に係る補正前の視線位置の推定値を計算し、前記推定値を前記失敗した視線位置の新たな補正前の視線位置とし、前記新たな補正前の視線位置を用いて前記ユーザの視線位置の歪を補正する、
補正方法。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の補正装置としてコンピュータを機能させる補正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正装置、補正方法、及び、補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、カメラで撮影された目の動きを基にコンピュータで被験者の認知機能を検査する技術を開示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「わずか3分、目の動きの解析で認知機能を評価、認知症の早期診断に向けた新技術」、大阪大学、[online]、[2023年9月27日検索]、<URL: https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2019/20190910_1>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1の図1に示されているように、カメラはモニタ画面の端に配置されているため、コンピュータで検出された被験者の視線位置に歪が生じる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、視線位置の検出精度を改善可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の補正装置は、カメラで撮影されたユーザが画面内に順次表示された複数のターゲット点をそれぞれ注視したときにコンピュータで検出された前記ユーザの各視線位置を取得し、前記カメラが前記ユーザを特定の方角から撮影したことに基づく前記ユーザの視線位置の歪を補正する補正部を備え、前記補正部は、所定基準に基づいて前記補正の成功と失敗を判定し、補正が失敗した視線位置がある場合、補正が成功した複数の視線位置の補正前の各視線位置を用いて、前記失敗した視線位置に係る補正前の視線位置の推定値を計算し、前記推定値を前記失敗した視線位置の新たな補正前の視線位置とする。
【0007】
本発明の一態様の補正方法は、補正装置で行う補正方法において、カメラで撮影されたユーザが画面内に順次表示された複数のターゲット点をそれぞれ注視したときにコンピュータで検出された前記ユーザの各視線位置を取得し、前記カメラが前記ユーザを特定の方角から撮影したことに基づく前記ユーザの視線位置の歪を補正し、所定基準に基づいて前記補正の成功と失敗を判定し、補正が失敗した視線位置がある場合、補正が成功した複数の視線位置の補正前の各視線位置を用いて、前記失敗した視線位置に係る補正前の視線位置の推定値を計算し、前記推定値を前記失敗した視線位置の新たな補正前の視線位置とする。
【0008】
本発明の一態様の補正プログラムは、上記補正装置としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、視線位置の検出精度を向上可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、補正装置及びタブレット端末の構成例を示す図である。
図2図2は、補正装置及びタブレット端末の全体処理フローを示す図である。
図3図3は、視線位置の歪の補正処理フローを示す図である。
図4図4は、キャリブレーションの処理フローを示す図である。
図5図5は、ターゲット点の表示例を示す図である。
図6図6は、視線位置の座標の取得方法を示す図である。
図7図7は、注視判定方法のイメージを示す図である。
図8図8は、変換式の導出フローを示す図である。
図9図9は、バリデーションの処理フローを示す図である。
図10図10は、バリデーション状態遷移を示す図である。
図11図11は、視線位置の歪の補正例を示す図である。
図12図12は、一点補正のイメージを示す図である。
図13図13は、鏡像化のイメージを示す図である。
図14図14は、鏡像化の有無の判定処理フローを示す図である。
図15図15は、補正装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0012】
[概要]
上記課題を解決するため、本開示は、コンピュータで検出されたユーザの視線位置について、そのユーザの視線位置の歪(視線位置のずれ)を補正する。このように、ユーザの視線位置の歪を補正するので、ユーザの視線位置の検出精度を向上できる。
【0013】
[装置構成]
図1は、本実施形態に係る補正装置1及びタブレット端末2の構成例を示す図である。
【0014】
補正装置1は、タブレット端末2の内部で機能し、タブレット端末2で検出されたユーザUの視線位置を取得し、その視線位置の歪を補正する装置である。つまり、補正装置1は、ユーザUがターゲット点TGを注視したときにタブレット端末2で検出されたユーザUの視線位置ATを、ターゲット点TGに近い視線位置AT’に補正する。
【0015】
補正装置1は、ユーザUの視線位置の歪を補正する補正部11と、タブレット端末2がユーザUの視線位置を正常に検出していたか否かを判定する判定部12と、各種情報をユーザUへ文字又は音声で通知する通知部13と、を備える。
【0016】
タブレット端末2は、モニタ画面の端に配置されたカメラ21と、画像を表示するモニタ画面22と、各種情報を音声で出力するスピーカ23と、ユーザUの画像からユーザUの視線位置を検出する検出部24と、各種情報及び各種データを記憶する記憶部25と、を備える。
【0017】
なお、タブレット端末2は、ユーザUをカメラで撮影可能であり、ユーザUの画像からユーザUの視線位置を検出可能なコンピュータ(汎用計算機)の例である。そのようなコンピュータであれば、スマートフォン端末、パーソナルコンピュータ装置等でもよい。
【0018】
また、補正装置1は、タブレット端末2の検出部24と同じ機能部を自装置で備えてもよい。この場合、補正装置1は、自装置でユーザUの画像からユーザUの視線位置を検出可能である。
【0019】
[補正装置1の機能]
補正部11は、カメラ21で撮影されたユーザUがモニタ画面22内に順次表示された複数のターゲット点TGをそれぞれ注視したときにタブレット端末2で検出されたユーザUの各視線位置ATを取得し、カメラ21がユーザUをモニタ画面22の端の方角(特定の方角)から撮影したことに基づくユーザUの視線位置ATの歪を補正する機能を備える。
【0020】
補正部11は、ターゲット点TGがモニタ画面22に表示され所定時間(例えば500ms)経過後に検出されたユーザUの視線位置ATを用いて、ユーザUの視線位置ATの歪を補正する機能を備える。
【0021】
補正部11は、ユーザUの視線位置が所定時間(例えば500ms)継続してモニタ画面22の閾値領域内に収まるか否かを判定し、閾値領域内に収まるユーザUの視線位置ATを用いて、ユーザUの視線位置ATの歪を補正する機能を備える。
【0022】
補正部11は、複数のターゲット点TGと補正後の各視線位置AT’との間の距離が最小となるように補正前の視線位置ATの歪を変換する変換式を生成し、その変換式を用いてユーザUの視線位置ATの歪を補正する機能を備える。
【0023】
補正部11は、所定基準に基づいて複数のターゲット点TGに対する複数のユーザUの視線位置の歪の補正が全て成功したか否かを判定し、全て成功してない場合、複数のユーザUの視線位置ATの歪の再補正を全て自動で繰り返す機能を備える。
【0024】
補正部11は、複数のユーザUの視線位置ATの歪の再補正を所定回数(例えば最高9回)繰り返す機能を備える。
【0025】
補正部11は、所定基準に基づいて補正の成功と失敗を判定した結果、補正が失敗した視線位置がある場合、補正が成功した複数の視線位置の補正前の各視線位置を用いて、失敗した視線位置に係る補正前の視線位置の推定値を計算し、その推定値を失敗した視線位置の新たな補正前の視線位置とする機能を備える。
【0026】
例えば、補正部11は、再補正を所定回数繰り返した後、複数のターゲット点TGに対する複数のユーザUの視線位置ATの歪の補正のうち1つの補正のみ失敗した場合、補正が成功した他の複数の視線位置の補正前の各視線位置を用いて、その1つの補正に係る補正前の視線位置の推定値を計算して新たな補正前の視線位置とする。
【0027】
判定部12は、補正部11がユーザUの視線位置ATの歪を補正する前に、又は、補正部11でユーザUの視線位置ATの歪の補正が失敗した後に、タブレット端末2がユーザUの視線位置ATを正常に検出していたか否かを判定する機能を備える。例えば、判定部12は、タブレット端末2が検出したユーザUの視線位置ATについて鏡像化が発生しているか否かを判定する機能を備える。
【0028】
判定部12は、タブレット端末2が検出したユーザUの視線位置ATについて鏡像化が発生している場合、補正部11にダミー補正を実行させる機能を備える。補正部11は、鏡像化が発生している場合、タブレット端末2の検出部24にユーザUの視線位置を検出させるのみのダミー補正を行う機能を備える。
【0029】
通知部13は、ユーザUの顔の傾きに関する教示情報、又は、ユーザUの瞬きに関する教示情報を、ユーザUへ音声又は文字で通知する機能を備える。
【0030】
なお、ターゲット点は、例えば、モニタ画面22内の中央及び周縁に格子状に表示される複数のターゲット点である。複数のターゲット点は、5つ以上が好ましい。例えば、モニタ画面22内の中央を含む周縁四隅の計5つ、中央を含む周囲四辺の各辺の中点の計5つ、中央を含む周縁四隅及び周囲四辺の各辺の中点の計9つ、その計9つに中央を再度含む10つがより好ましい。補正部11は、例えば、5つ以上のターゲット点に係る5つ以上の視線位置の歪を補正する。ターゲット点の点数や補正する視線位置の点数を5つ以上にすることで、ユーザの視線位置の検出精度をより向上できる。
【0031】
なお、上述した補正部11と判定部12と通知部13は、1つの機能部(例えば、1つの処理部)が備えてもよい。
【0032】
[補正装置1の実装例]
補正装置1は、タブレット端末2の外部に実装されてもよい。例えば、タブレット端末2に通信可能に接続されたインターネット内又はクラウド内のサーバ装置に実装可能である。また、補正装置1は、補正装置1としてタブレット端末2を機能させるソフトウェアプログラム(アプリケーション型のソフトウェアプログラムを含む)として提供可能である。
【0033】
[全体動作]
ユーザUである被験者Uの眼球運動機能等を検査する際の動作を説明する。被験者Uは、タブレット端末2の手前に設置されたアゴ置き台に自身のアゴを乗せ、タブレット端末2のカメラ21及びモニタ画面22に対して自身の顔を向けている。
【0034】
図2は、補正装置1及びタブレット端末2の全体処理フローを示す図である。
【0035】
ステップS101;
被験者U又は検査者はタブレット端末2のカメラ21を起動する。
【0036】
ステップS102;
タブレット端末2の検出部24は、カメラ21で撮像された被験者Uの顔画像から被験者Uの視線位置を検出する。視線位置とは、モニタ画面22に対する被験者Uの注視点の位置である。
【0037】
ステップS103;
補正装置1の判定部12は、タブレット端末2の検出部24から被験者Uの目の位置と視線位置を取得し、検出部24が被験者Uの視線位置を正常に検出していたか否かを判定する。例えば、判定部12は、鏡像化の発生の有無等を判定する。検出部24が被験者Uの視線位置を正常に検出していなかった場合、ステップS101へ戻り、ステップS102を自動で繰り返す。
【0038】
ステップS104;
補正装置1の補正部11は、検出部24が被験者Uの視線位置を正常に検出していた場合、被験者Uの視線位置の歪を補正する。視線位置の歪とは、カメラ21が被験者Uをモニタ画面22の端の方角から撮影したことに基づく視線位置のずれである。
【0039】
ステップS105;
補正装置1の補正部11は、所定基準に基づき、被験者Uの視線位置の歪の補正が成功した否かを判定する。補正部11は、被験者Uの視線位置の歪の補正が成功した場合、補正後の視線位置を眼球運動機能等の検査装置又はタブレット端末2内の検査部へ出力し、処理を終了する。被験者Uの視線位置の歪の補正が失敗した場合、ステップS103へ戻り、自動で繰り返す。
【0040】
このように、補正装置1は、タブレット端末2で検出された被験者Uの視線位置の歪を補正するので、被験者Uの視線位置の検出精度を向上できる。補正後の視線位置は、目的である被験者Uの眼球運動機能等の検査に利用される。
【0041】
このような補正装置1は、眼球運動機能や認知機能等の各種検査結果に基づき精神疾患等の統合失調症の可能性を示す診断医療機器に適用可能である。その他、補正装置1は、医療分野以外の分野にも適用可能である。
【0042】
なお、ステップS104及びステップS105は、ステップS103の前に実行してもよい。この場合、ステップS104で視線位置の歪の補正が1回で成功するとステップS103を行う必要がなくなるので、補正処理時間を短縮化できる。
【0043】
[視線位置の歪の補正処理]
次に、図2のステップS104で行われる視線位置の歪の補正処理を説明する。
【0044】
図3は、視線位置の歪の補正処理フローを示す図である。
【0045】
ステップS201、S202;
補正装置1の補正部11は、キャリブレーション(Calibration)を実行する。補正部11は、1回目のキャリブレーションが失敗した場合、2回目のキャリブレーションを実行する。
【0046】
具体的には、補正部11は、タブレット端末2のモニタ画面22に複数のターゲット点(例えば10点)を表示し、同一位置のターゲット点を除く複数のターゲット点(例えば9点)について、タブレット端末2の検出部24で検出された被験者Uの各視線位置の歪を正しい視線位置に補正するための変換式を導出し、その変換式を評価する。
【0047】
ステップS203、S204;
補正装置1の補正部11は、ステップS201又はステップS202でキャリブレーションに成功した場合、バリデーション(Validation)を実行する。補正部11は、1回目のバリデーションが失敗した場合、2回目のバリデーションを実行する。
【0048】
具体的には、補正部11は、キャリブレーションと同様にタブレット端末2のモニタ画面22に複数のターゲット点を表示し、キャリブレーション時に導出された変換式を用いて被験者Uの各視線位置の歪を補正し、各ターゲット点との間の距離が全て閾値以下であれば補正成功と判定する。
【0049】
ステップS205;
補正装置1の補正部11は、ステップS203又はステップS204でバリデーションに成功した場合、つまり、9点のターゲット点に対する各視線位置の歪の補正が全て成功した場合、1回目のキャリブレーションを開始してから現在までの経過時間が閾値(例えば70秒)を超えているか否かを判定する。現在までの経過時間が閾値を超えていない場合、補正部11は、処理を正常終了する。
【0050】
ステップS206;
補正装置1の補正部11は、ステップS202でキャリブレーションに失敗した場合、ステップS204でバリデーションに失敗した場合(1点でも補正が成功しなかった場合)、ステップS205で現在までの経過時間が閾値を超えている場合、検査全体のリトライ回数を判定する。
【0051】
ステップS207;
補正装置1の通知部13は、検査全体のリトライ回数が1回~8回である場合、補正に失敗したことを示すエラーメッセージをタブレット端末2のモニタ画面22に出力し、又は当該エラーメッセージをスピーカ23から音声で出力する。その後、ステップS201へ戻る。正確には、図2のステップS103へ戻り、検出部24が被験者Uの視線位置を正常に検出していたか否かを判定する処理から再開する。
【0052】
ステップS208;
補正装置1の補正部11は、検査全体のリトライ回数が9回である場合、9点のうち8点の補正が成功した回が1回以上あるか否かを判定する。8点の補正が成功した回が1回もない場合、補正部11は、検査を異常終了する。
【0053】
ステップS209;
補正装置1の補正部11は、8点の補正が成功した回が1回以上ある場合、補正に失敗していた1点について補正前の視線位置を推定(1点補正)し、当該補正前の視線位置を基に視線位置の歪を補正するための変換式を生成し、その変換式を用いて視線位置の歪を補正する。その後、補正部11は、処理を正常終了する。
【0054】
[キャリブレーション]
次に、図3のステップS201、S202で行われるキャリブレーションを説明する。
【0055】
図4は、キャリブレーションの処理フローを示す図である。
【0056】
ステップS301;
補正装置1は、タブレット端末2に対して、タブレット端末2のモニタ画面22に10点のターゲット点を1つずつ表示させる。
【0057】
例えば、補正装置1は、図5に示すように、モニタ画面22内の中央及び周縁に10点のターゲット点を格子状に1つずつ表示する。1番目のターゲット点TG1を中央に表示し、1番目のターゲット点TG1を削除した後に2番目のターゲット点TG2を左上に表示する。
【0058】
同様に、3番目~9番目の各ターゲット点TG3~TG9を右上→右下→左下→上部中央→右側中央→下部中央→左側中央にその順で表示する。最後に、10番目のターゲット点TG10を中央に表示する。
【0059】
つまり、補正装置1は、最初に中央の点を表示し、次に周縁の点を表示し、最後に中央の点を再表示する。
【0060】
なお、ターゲット点の表示順は、ランダムでもよい。例えば、1番目のターゲット点を中央に表示し、2番目~9番目の各ターゲット点をランダムな順番で表示し、10番目のターゲット点を中央に再表示してもよい。その他、1番目のターゲット点を左上に表示し、10番目のターゲット点を右上に表示してもよい。
【0061】
ステップS302;
このとき、被験者Uは、各ターゲット点TG1~TG10をそれぞれ順番に注視している。タブレット端末2の検出部24は、被験者Uの視線位置を検出する。その後、補正装置1の補正部11は、検出部24から被験者Uの視線位置の座標(注視点の座標)を取得する。
【0062】
ここで、視線位置の座標の取得方法を説明する。
【0063】
タブレット端末2の検出部24は、図6に示すように、n番目(nは自然数)のターゲット点が表示されてから一定期間(例えば500ms)が経過した後、視線位置の検出を開始する。
【0064】
そして、補正装置1の補正部11は、被験者Uがn番目のターゲット点を注視開始してから一定期間(例えば500ms)の注視期間内に検出された被験者Uの視線位置のxy座標群(注視点のxy座標群)を取得する。
【0065】
その後、補正部11は、取得した視線位置のxy座標群が予め設定された閾値に収まるか否かの注視判定を行う。例えば、図7に示すように、n番目のターゲット点を表示してから500ms経過後、500msの注視期間内に検出された視線位置のxy座標群について、その視線位置のxy座標群に外接する長方形を計算し、その長方形の対角線dが閾値以下であるか否かを判定する。
【0066】
ターゲット点を表示してから500ms経過後、100ms毎に、500ms毎の注視期間内の視線位置のxy座標群について注視判定をそれぞれ行い、注視判定が成功するまで繰り返し継続する。長方形の対角線dが閾値以下であれば、注視判定は成功となる。
【0067】
最後に、補正装置1の補正部11は、注視判定が成功した注視期間内の視線位置のxy座標群の中央値を計算し、その中央値を被験者Uの視線位置のxy座標とする。
【0068】
その結果、10点のターゲット点に対し、10点の視線位置のxy座標(中央値)が取得される。但し、1番目と10番目の各ターゲット点の位置は同じなので、2番目~10番目の9点のターゲット点に係る9点の視線位置のxy座標(中央値)を用いる。
【0069】
ステップS303;
ステップS302で取得した視線位置は、注視期間内における視線位置のxy座標群の中央点ではあるが、タブレット端末2が検出した視線位置であり、カメラ21が被験者Uをモニタ画面22の端の方角から撮影したことに基づく視線位置の歪がある。
【0070】
具体的には、カメラ21の向き(撮影方向)と被験者Uの向き(視線方向)は同一軸上ではなく、カメラ21のレンズサイズは被験者Uの顔サイズよりも非常に小さいので、タブレット端末2で検出された被験者Uの視線位置には歪が生じている。また、カメラ21に近い位置の視線位置よりもカメラ21から遠い位置の視線位置の方が、歪度が大きい。
【0071】
そこで、キャリブレーション及びバリデーションでは、この被験者Uの視線位置の歪を多項式フィッティングにより補正する。キャリブレーションでは、その多項式としての変換式を導出する。
【0072】
補正装置1の補正部11は、ステップS301で表示された9点のターゲット点のxy座標と、変換後(補正後)の被験者Uの視線位置のxy座標と、の間の距離が最小となるように、ステップS302で取得した9点の被験者Uの視線位置のxy座標(中央値)を変換する変換式を導出する。
【0073】
図8は、変換式の導出フローを示す図である。
【0074】
ステップS303(1);
補正部11は、9点のターゲット点のそれぞれについて、注視判定が成功した注視期間内の視線位置のxy座標群の中央値(x,y)を計算する。中央値の計算は既に説明したが、改めて記述した。このとき、補正部11は、タブレット端末2のモニタ画面22の中央点(x_center,y_center)も計算しておく。なお、中央点は、10番目のターゲット点の座標値を用いてもよい。
【0075】
ステップS303(2);
補正部11は、9点の視線位置の各中央値(x,y)(raw座標)を、タブレット端末2のモニタ画面22の中央を原点とする座標系にそれぞれ変換する。具体的には、9点の各raw座標(x,y)から中央点(x_center,y_center)を引く。
【0076】
ステップS303(3);
補正部11は、変換前の被験者Uの視線位置のxy座標(座標系変換後のraw座標)をx、yとし、変換後の被験者Uの視線位置のxy座標をX、Yとして、例えば下記の変換式(1)、(2)を定義し、最小二乗法により計算する。
【0077】
X=a00×x+a01×y+a02×x×y+a03×x2+a04×y2+a05×(x×y)2+a06 …(1)
Y=a10×x+a11×y+a12×x×y+a13×x2+a14×y2+a15×(x×y)2+a16 …(2)
変換式(1)(2)の係数a00~a06、a10~a16を、視線位置の変換が最適になるように(つまり、変換後のxy座標がターゲット点のxy座標に最も近くなるように)、最小二乗法により定める。x、yそれぞれ2次元の多項式でフィッティングしている。
【0078】
ステップS304;
補正部11は、ステップS303で導出した変換式を評価する。
【0079】
具体的には、補正部11は、ステップS302で取得した変換前の9点の視線位置の座標(x,y)をステップS303で導出した変換式に代入して変換後の9点の視線位置の座標(X,Y)を計算し、9点のターゲット点の座標からの距離(視線位置の座標からの誤差)をそれぞれ計算する。
【0080】
補正部11は、その距離がFair判定用の閾値の1/2以下の場合はGoodと判定し、その距離がFair判定用の閾値以下の場合はFairと判定し、その距離がFair判定用の閾値を超える場合はPoorと判定する。
【0081】
そして、補正部11は、9点全ての誤差の判定結果がFair以内(Good又はFair)であれば変換式OKと判定してキャリブレーション成功と判定し、1点でもPoorがあれば変換式NGと判定して9点全ての再検出、再補正が必要と判定する。
【0082】
[バリデーション]
次に、図3のステップS203、S204で行われるバリデーションを説明する。
【0083】
図9は、バリデーションの処理フローを示す図である。
【0084】
ステップS401;
図4のステップS301と同じである。
【0085】
ステップS402;
図4のステップS302と同じである。
【0086】
ステップS403;
補正装置1の補正部11は、図4のステップS304でキャリブレーション成功と判定された変換式を用いて、ステップS402で取得した被験者Uの視線位置の座標を変換する。
【0087】
ステップS404;
補正装置1の補正部11は、ステップS304と同様に、9点のターゲット点の座標から変換後の被験者Uの視線位置の座標までの距離(視線位置の座標からの誤差)を計算し、その距離の長さの度合い(誤差の精度)を基にバリデーションの成否を判定する。
【0088】
図10は、バリデーション状態遷移例を示す図である。
【0089】
バリデーション状態V0では、視線位置毎にターゲット点の座標と変換後の視線位置の座標との間の距離を計算し、9点全てのターゲット点についてFair以内(Good又はFair)であればバリデーション成功と判定してOKへ遷移し、Poorのターゲット点が1つでも残っていればリトライ対象としてバリデーション状態V1へ遷移する。
【0090】
バリデーション状態V1では、リトライ対象のターゲット点のみを再表示して変換後の視線位置の座標を再計算し、ターゲット点の座標と変換後の視線位置の座標との間の距離を計算し、Fair以内(Good又はFair)であればバリデーション成功と判定してOKへ遷移する。
【0091】
一方、リトライ後にバリデーション成功でないターゲット点が1つでも残っていれば、バリデーション失敗と判定してNGへ遷移する。このとき、9点全ての再検出、再補正が必要と判定する。
【0092】
なお、リトライ時にも各ターゲット点をランダムな順番及び位置で表示してもよい。残り1点のみ複数回リトライする場合には、次回表示前に消灯させた後に点灯させる。
【0093】
[一点補正の方法]
次に、図3のステップS209で行われる一点補正を説明する。
【0094】
図3のステップS204において、バリデーションに失敗した視線位置が1つでも残っている場合、ステップS206へ遷移する。そして、検査全体のリトライ回数が少ない場合には、ステップS207でエラーメッセージを通知した後にステップS201へ戻り(正確には、図2に示すステップS103へ戻り)、9点全ての視線位置の歪の補正を再実行する。
【0095】
一方、検査全体のリトライ回数が多くなると、視線位置の歪の補正を繰り返しても、9点全ての視線位置の歪の補正は困難と考えられる。このとき、視線位置の歪の補正を直ちに終了してもよいが、9点のうち多くの点について補正が成功していれば、その時のデータを活用することが好ましい。
【0096】
そこで、検査全体のリトライ回数が9回の場合、キャリブレーション及びバリデーションに失敗していた場合でも、1点のみが基準に満たなかった回があれば、その基準に満たない1点の視線位置を他点から推定し、変換式を生成し、その変換式を用いて視線位置の歪を補正する。
【0097】
例えば、図11に示すように、9点のターゲット点TG2~TG10に対する補正後の視線位置がAT2’~AT10’であり、AT3’のみPoorと判定されたとする。
【0098】
この場合、補正装置1の補正部11は、図12の上段に示すように、Poorと判定された補正前の視線位置AT3を削除する。
【0099】
そして、補正装置1の補正部11は、図12の下段に示すように、同じ行の変換前(補正前)の2つの視線位置AT2、AT6を通る直線L1を引き、同じ列の変換前の2つの視線位置AT7、AT4を通る直線L2を引き、その2つの直線L1、L2の交点を新たな変換前の視線位置AT3とする。
【0100】
その後、補正装置1の補正部11は、図4のステップS303と同様に変換式を導出し、図9のステップS403と同様に当該変換式で補正前の視線位置AT2~AT10の歪を補正する。
【0101】
なお、補正装置1の補正部11は、直線L1又は直線L2に代えて、他の2つの視線位置AT5、AT10を通る直線(L3)を用いて、新たな変換前の視線位置AT3を計算してもよい。その他、補正部11は、直線L1と直線L2との交点と、直線L1と直線L3との交点と、直線L2と直線L3との交点と、のうちから1つを選択してもよい。
【0102】
なお、9回のリトライ回数のうち1点のみが基準に満たなかった回が複数ある場合には、最新の回のデータを利用する。
【0103】
ここまで、1点補正が失敗した場合を例に説明したが、1点補正が失敗した場合に限らず、2点補正や3点補正が失敗した場合にも応用可能である。つまり、補正が失敗した視線位置がある場合には、補正が成功した複数の視線位置の補正前の各視線位置を用いて、失敗した視線位置に係る補正前の視線位置の推定値を計算し、その推定値を失敗した視線位置の新たな補正前の視線位置とする。
【0104】
[キャリブレーション時又はバリデーション時の通知]
補正装置1の通知部13は、キャリブレーション又はバリデーションの開始前、開始中、開始後、検査の進捗状況に応じて、タブレット端末2で検出された被験者Uの顔画像の検出結果を基に、次の教示情報を文字でタブレット端末2のモニタ画面22に表示し、その教示情報をタブレット端末2のスピーカ23から音声で出力する。
【0105】
例えば、通知部13は、「それでは、機械の調整を始めます。画面に出てくる点を見てもらいます。頭を動かさず、次々と出てくる点を見て下さい。点を見る時には、少しの間、まばたきを止めて、点が消えるまで見続けるようにして下さい。では、始めます。真ん中の点を見て下さい。」という教示情報を出力する。
【0106】
例えば、通知部13は、「もう一度行います。真ん中の点を見て下さい。その後、画面の端に点が出てきますので、目をつぶらず、点が消えるまで、じっと見続けるようにして下さい。では、始めます。真ん中の点を見て下さい。」という教示情報を出力する。
【0107】
例えば、通知部13は、「もう一度行います。画面に出てくる点を見てもらいます。頭を動かさず、次々と出てくる点を見て下さい。点を見る時には、少しの間、まばたきを止めて、目をつぶらず、点が消えるまで、じっと見続けるようにして下さい。では、始めます。真ん中の点を見て下さい。」という教示情報を出力する。
【0108】
例えば、通知部13は、「点の真ん中を、しっかりと見れていないようです。点が出ている間は、その点が消えるまで、しっかりと目を開けて、じっと見て下さい。一度リラックスして、もう一度手を机の上に置き、画面をのぞき込むようにアゴ置き台に顎をのせ、楽な姿勢をとって下さい。画面との角度は、右の図を参考にしてください。」という教示情報を出力する。
【0109】
[視線位置の正常検出の判定処理]
次に、図2のステップS103で行われる視線位置の正常検出の判定処理を説明する。
【0110】
何らかの原因によりタブレット端末2で被験者Uの視線位置を正常に検出できない場合がある。この場合、図2のステップS104、S105を適切に実行できず、その後の眼球運動機能検査等を正常に進行できない状態になる。そこで、何らかの異常が発生した場合、補正装置1は、一定の基準を用いて検査を一度中断し、再検査を行う。
【0111】
本実施形態では、何らかの異常の例として、タブレット端末2で鏡像化が発生している場合を説明する。図2のステップS104、S105の開始前又は開始後に鏡像化を検出した場合、その回の検査はなかったこととして検査を中断する。一度休憩を挟んだ後に、同じ回のステップS104、S105を再度行う。
【0112】
そして、鏡像化が連続発生回数閾値(例えば3回)連続で発生した場合、検査を異常終了する。閾値回連続で鏡像化が発生していない場合でも、鏡像化が検査全体で累計発生回数閾値(例えば累計3回)発生した場合は検査を異常終了する。
【0113】
ここで、鏡像化について説明する。
【0114】
タブレット端末2は、図13に示すように、本来であれば被験者Uをタブレット端末2の表側の位置で検出する。具体的には、モニタ画面22の奥行方向であるz軸上の「-」側の位置で検出する。しかし、被験者Uをz軸上の「+」側の位置の被験者U’として検出する場合がある。この現象を鏡像化という。
【0115】
このような鏡像化が発生した場合、被験者Uの位置を誤認することになるので、被験者Uの視線位置を適切に取り扱うことが難しい。そこで、頭部等の位置を変更させ、タブレット端末2のカメラ21を再起動させることで、鏡像化を解消させる。
【0116】
図14は、鏡像化の有無の判定処理フローを示す図である。
【0117】
ステップS501;
被験者U又は検査者はタブレット端末2のカメラ21を起動する。カメラ21を既に起動している場合、ステップS501は省略する。
【0118】
ステップS502;
補正装置1の判定部12は、タブレット端末2で鏡像化が発生しているか否かを判定する。例えば、判定部12は、カメラ21の起動後、タブレット端末2の検出部24で検出されたz軸の目や頭の位置の値が‘0’よりも大きいか否かを判定する。
【0119】
ステップS503;
補正装置1の判定部12は、z軸の目や頭の位置の値が‘0’よりも大きい場合、鏡像化が発生していると判定し、鏡像化の連続発生回数を判定する。
【0120】
ステップS504;
補正装置1の判定部12は、鏡像化の連続発生回数が1回である場合、検査全体の鏡像化の累計発生回数を判定する。
【0121】
ステップS505;
補正装置1の判定部12は、鏡像化の連続発生回数が2回である場合、検査全体の鏡像化の累計発生回数が1回である場合、補正部11に対して、被験者Uの視線位置の取得を指示し、被験者Uの視線位置の歪の補正(ダミー補正)を指示する。このとき、補正部11は、被験者Uの視線位置の歪を補正(ダミー補正)する。ダミー補正については、後述する。
【0122】
このとき、補正装置1の通知部13は、例えば、「画面に出てくる点を見てもらいます頭を動かさず次々と出てくる点を見てください。点を見るときには、少しの間まばたきをとめて点が消えるまで見続けるようにしてください。では始めます。真ん中の点を見てください。」という教示情報を文字又は音声で通知する。
【0123】
ステップS506;
ステップS505の後、補正装置1の通知部13は、鏡像化を解消させるため、被験者Uに対して頭部の位置の変更を文字又は音声で指示する。
【0124】
例えば、通知部13は、「顔が動いてしまったかもしれません。一度リラックスしてもう一度手を机の上に置き、画面をのぞき込むようにアゴ置き台にアゴを乗せ、楽な姿勢を取ってください。画面との角度は右の図を参考にしてください。」という教示情報を文字又は音声で通知する。
【0125】
その後、ステップS501へ戻る。正確には、図2のステップS101へ戻る。そして、ステップS501でカメラを再起動し、ステップS502で鏡像化が発生しているか否かを再判定する。
【0126】
ステップS507;
補正装置1の判定部12は、鏡像化の連続発生回数が3回である場合、検査全体の鏡像化の累計発生回数が2回である場合、ステップS505と同様に被験者Uの視線位置の歪を補正(ダミー補正)させる。
【0127】
ステップS508;
ステップS507の後、補正装置1の判定部12は、タブレット端末2での鏡像化を解消することは困難と確定し、検査を異常終了する。
【0128】
なお、ステップS505又はステップS507で行うダミー補正とは、実際には、所望のデータを取得しない見かけだけの視線位置の計測、つまり、タブレット端末2の検出部24に被験者Uの視線位置を検出させるのみの処理である。
【0129】
鏡像化判定はすぐに終了するので、被験者Uに対して眼球運動機能等の検査が急に終了した印象を与えてしまうが、ステップS505やステップS507でダミー補正を行うことで、検査に対する被験者Uの精神的負荷を軽減できる。但し、ダミー補正において、検出した被験者Uの視線位置を用いて、被験者Uの視線位置の歪補正を積極的に実施することも可能である。
【0130】
ステップS509;
補正装置1の判定部12は、ステップS502においてz軸の目や頭の位置の値が‘0’以下の場合、鏡像化が発生していないと判定し、処理を正常終了する。
【0131】
なお、上述した鏡像化の連続発生回数及び累計発生回数は、例である。例えば、連続発生回数を5回にしてもよいし、累計発生回数を7回にしてもよい。また、鏡像化の有無の判定は、例えば0.5秒の時間内に行う。
【0132】
[効果]
本実施形態によれば、補正部11が、カメラ21で撮影されたユーザUがモニタ画面22内に順次表示された複数のターゲット点TGをそれぞれ注視したときにタブレット端末2で検出されたユーザUの各視線位置ATを取得し、カメラ21がユーザUをモニタ画面22の端の方角から撮影したことに基づくユーザUの視線位置ATの歪を補正するので、視線位置の検出精度を向上可能な技術を提供できる。
【0133】
本実施形態によれば、補正部11は、所定基準に基づいて補正の成功と失敗を判定し、補正が失敗した視線位置がある場合、補正が成功した複数の視線位置の補正前の各視線位置ATを用いて、失敗した視線位置に係る補正前の視線位置ATの推定値を計算し、推定値を失敗した視線位置の新たな補正前の視線位置ATとするので、視線位置の検出精度をより向上可能な技術を提供できる。
【0134】
本実施形態によれば、補正部11が、ターゲット点TGがモニタ画面22に表示され500ms経過後に検出されたユーザUの視線位置ATを用いて、ユーザUの視線位置ATの歪を補正するので、視線位置の検出精度をより向上可能な技術を提供できる。
【0135】
本実施形態によれば、補正部11が、ユーザUの視線位置が500msの間継続してモニタ画面22の閾値領域内に収まるか否かを判定し、閾値領域内に収まるユーザUの視線位置ATを用いて、ユーザUの視線位置ATの歪を補正するので、視線位置の検出精度をより向上可能な技術を提供できる。
【0136】
本実施形態によれば、補正部11が、複数のターゲット点TGと補正後の各視線位置AT’との間の距離が最小となるように補正前の視線位置ATの歪を変換する変換式を生成し、当該変換式を用いてユーザUの視線位置ATの歪を補正するので、視線位置の検出精度をより向上可能な技術を提供できる。
【0137】
本実施形態によれば、補正部11は、ユーザの視線位置の歪を5つ以上補正するので、視線位置の検出精度をより向上可能な技術を提供できる。
【0138】
本実施形態によれば、複数のターゲット点は、画面内の中央及び周縁に格子状に表示された5つ以上のターゲット点であり、中央の点が表示され、次に周縁の点が表示されるので、視線位置の検出精度をより向上可能な技術を提供できる。
【0139】
本実施形態によれば、判定部12が、補正部11がユーザUの視線位置ATの歪を補正する前に、又は、補正部11でユーザUの視線位置ATの歪の補正が失敗した後に、タブレット端末2がユーザUの視線位置ATを正常に検出していたか否かを判定するので、視線位置の検出精度をより向上可能な技術を提供できる。
【0140】
本実施形態によれば、補正部11が、タブレット端末2が検出したユーザUの視線位置について鏡像化が発生している場合、タブレット端末2にユーザUの視線位置を検出させるのみのダミー補正を行うので、検査に対する被験者Uの精神的負荷を軽減できる。
【0141】
本実施形態によれば、通知部13が、ユーザUの顔の傾きに関する教示情報、又は、ユーザUの瞬きに関する教示情報を、ユーザUへ通知するので、視線位置の検出精度をより向上可能な技術を提供できる。
【0142】
[その他]
本発明は、上記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0143】
上記説明した本実施形態の補正装置1は、例えば、図15に示すように、CPU901と、メモリ902と、ストレージ903と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906と、を備えた汎用的なコンピュータシステムを用いて実現できる。メモリ902及びストレージ903は、記憶装置である。当該コンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、補正装置1の各機能が実現される。
【0144】
補正装置1は、1つのコンピュータで実装されてもよい。補正装置1は、複数のコンピュータで実装されてもよい。補正装置1は、コンピュータに実装される仮想マシンであってもよい。補正装置1用のプログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD、DVD等のコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。コンピュータ読取り可能な記録媒体とは、例えば、非一時的な記録媒体である。補正装置1用のプログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【符号の説明】
【0145】
1 補正装置
11 補正部
12 判定部
13 通知部
2 タブレット端末
21 カメラ
22 モニタ画面
23 スピーカ
24 検出部
25 記憶部
901…CPU
902…メモリ
903…ストレージ
904…通信装置
905…入力装置
906…出力装置
【要約】
【課題】視線位置の検出精度を改善可能な技術を提供する。
【解決手段】補正装置1の補正部11は、タブレット端末2のカメラ21で撮影されたユーザUがモニタ画面22内に順次表示された複数のターゲット点TGをそれぞれ注視したときにタブレット端末2で検出されたユーザUの各視線位置ATを取得し、カメラ21がユーザUをモニタ画面22の端の方角から撮影したことに基づくユーザUの視線位置ATの歪(視線位置のずれ)を補正する。補正部11は、所定基準に基づいて補正の成功と失敗を判定し、補正が失敗した視線位置がある場合、補正が成功した複数の視線位置の補正前の各視線位置ATを用いて、失敗した視線位置に係る補正前の視線位置ATの推定値を計算し、その推定値を失敗した視線位置の新たな補正前の視線位置ATとする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15