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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】化粧品
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20241217BHJP
   A01N 25/08 20060101ALI20241217BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20241217BHJP
   A01N 65/00 20090101ALI20241217BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241217BHJP
   A45D 40/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A45D33/00 650Z
A01N25/08
A01N31/02
A01N65/00 A
A01P3/00
A45D40/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020132892
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2021027988
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-05-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2019147283
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000112266
【氏名又は名称】ピアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】石塚 一広
(72)【発明者】
【氏名】有田 祥
(72)【発明者】
【氏名】松本 亘平
(72)【発明者】
【氏名】久恒 幸也
(72)【発明者】
【氏名】濱田 和彦
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】柿崎 拓
【審判官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-206026(JP,A)
【文献】特開2005-40207(JP,A)
【文献】特開2019-94325(JP,A)
【文献】国際公開第2004/028519(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D33/00-34/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を収容する化粧料容器と、該化粧料容器に収容された化粧料と、抗菌性揮発成分を含む保持体とを備える化粧品であって、
保管状態において、前記保持体は、前記化粧料容器の内部で前記化粧料と空間をあけて配置され、
前記化粧料が固形状のファンデーション又は口紅であり、
前記抗菌性揮発成分は、アリルイソチオシアネート、ゲラニオール、及び、シトラールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記保持体は、前記抗菌性揮発成分の徐放体であり、前記抗菌性揮発成分を担持する基材を有し、該基材が、合成樹脂と、合成樹脂中に分散したカプセル粒子とを含み、前記カプセル粒子が、前記抗菌性揮発成分を収めている中空部と、該中空部を取り囲む外膜部とを含有している、化粧品。
【請求項2】
前記保持体は、前記抗菌性揮発成分を含む精油として、わさび精油、コリアンダー精油、ゼラニウム精油、ネロリ精油、メリッサ精油、ユーカリ精油、ローズウッド精油、ローズオットー精油、レモングラス精油、及び、ティーツリー精油からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば皮膚や粘膜などに塗布されて使用される化粧料を収容する化粧料容器、及び、該化粧料容器と化粧料とを備える化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料を収容する容器本体と、非使用時に化粧料を保管すべく容器本体に装着されるキャップとを備える化粧料容器が知られている。
【0003】
この種の化粧料容器としては、例えば、容器本体を回動操作することによって口紅(化粧料)を繰り出す口紅容器であって、容器本体は、口紅を収納し、螺合ピンが設けられた中皿体と、中皿体を回転不能かつ上下動可能に案内する内筒体と、中皿体の螺合ピンと係合する螺旋溝が形成され、内筒体の外周で回動することにより中皿体を上下動する螺筒体と、螺筒体の外周に嵌挿される外筒体とを備える口紅容器が知られている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載された化粧料容器では、螺筒体は、下部螺筒体と上部螺筒体とに分割され、螺旋溝が整合しない状態と整合する状態とを切り替え可能であるため、使用開始時に使用者が誤って口紅を出し過ぎることがなく、口紅が折れたりすることを防止できる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された化粧料容器は、内部に収容された化粧料に対して抗菌作用を及ぼすことができないという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-097817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点等に鑑み、内部に収容された化粧料に対して抗菌作用を及ぼすことができる化粧料容器、及び、化粧品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る化粧料容器は、化粧料を収容する化粧料容器であって、
抗菌性揮発成分を含む保持体を備え、
保管状態において、前記保持体は、内部で前記化粧料と空間をあけるように配置されていることを特徴とする。
上記の化粧料容器によれば、内部に収容された化粧料に対して抗菌作用を及ぼすことができる。
【0009】
本発明に係る化粧料容器では、前記保持体は、前記抗菌性揮発成分を含む精油として、わさび精油、コリアンダー精油、スイートマジョラム精油、ゼラニウム精油、ネロリ精油、バジル精油、ペパーミント精油、メリッサ精油、ユーカリ精油、ラベンダー精油、ローズウッド精油、ローズオットー精油、ローズマリー精油、レモングラス精油、ティーツリー精油、レモン精油、イランイラン精油、クラリセージ精油、プチグレン精油、ベルガモット精油、スペアミント精油、及び、ピメント精油からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0010】
本発明に係る化粧料容器では、前記抗菌性揮発成分は、アリルイソチオシアネート、テルピネン、ゲラニオール、シトロネロール、テルピネン-4-オール、メントール、リナロール、シトラール、テルピネオール、シトロネラール、及び、1,8-シネオールからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0011】
本発明に係る化粧品は、上記の化粧料容器と、該化粧料容器に収容された化粧料とを備え、
保管状態において、前記保持体は、内部で前記化粧料と空間をあけて配置されていることを特徴とする。
上記の化粧品によれば、内部に収容された化粧料に対して抗菌作用を及ぼすことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の化粧料容器及び化粧品は、内部に収容された化粧料に対して抗菌作用を及ぼすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の化粧料容器の一例を表す模式図。
図2】本実施形態の化粧料容器の他の例において容器本体に蓋体を装着していない状態を表す斜視図。
図3】本実施形態の化粧料容器の他の例において容器本体に蓋体を装着していない状態を表す斜視図。
図4】本実施形態の化粧料容器の他の例において容器本体に蓋体を装着していない状態を表す斜視図。
図5】本実施形態の化粧料容器の他の例において容器本体に蓋体を装着していない状態を表す斜視図。
図6】本実施形態の化粧料容器の他の例において容器本体に蓋体を装着していない状態を表す斜視図。
図7】本実施形態の化粧料容器の他の例において容器本体に蓋体を装着した状態を表す断面図。
図8】本実施形態の化粧料容器の他の例において容器本体に蓋体を装着した状態を表す断面図。
図9】酵母に対する各種成分の抗菌作用を確認するための試験方法の概略図。
図10】酵母に対する抗菌作用評価試験の結果(抗菌性揮発成分など)を表す写真。
図11】酵母に対する抗菌作用評価試験の結果(精油)を表す写真。
図12】酵母に対する抗菌作用評価試験の結果(精油)を表す写真。
図13】酵母に対する抗菌作用評価試験の結果(精油)を表す写真。
図14】酵母に対する抗菌作用評価試験の結果(精油)を表す写真。
図15】酵母に対する抗菌作用評価試験の結果(精油)を表す写真。
図16】酵母に対する各種成分の抗菌作用評価試験の結果を表す写真。
図17】保持体に含まれるわさび精油が真菌に対して抗菌作用を発揮することを示す写真。
図18】各種成分の抗菌作用を確認するための評価試験の様子を表す模式図。
図19】抗菌性揮発成分のうち特定成分の抗菌作用を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る化粧料容器10の一実施形態について、図面を参照しつつ以下に説明する。
【0015】
本実施形態の化粧料容器10は、化粧料20を収容する化粧料容器10であって、抗菌性揮発成分を含む保持体13を備え、
保管状態において、保持体13は、内部で化粧料20と空間をあけるように配置されている。
【0016】
本実施形態の化粧料容器10は、内部に収容された化粧料20に対して抗菌作用を及ぼすことができる。詳しくは、抗菌性揮発成分は、保管状態において化粧料20の表面に対して抗菌作用を及ぼす。そのため、化粧料20がいったん皮膚等に接触し、この接触によって微生物(雑菌等)が化粧料20の表面に付着した場合に特に有効である。
特に化粧料が口紅や油性ファンデーションといった油性製剤である場合、化粧料は、微生物が十分に増殖できるほどの水を含まないため、使用前においては微生物に汚染されにくい。しかしながら、化粧料を使用した後において、口紅では異臭が発生したり、ファンデーションではカビが発生したりする。この原因は、使用に伴って皮膚常在菌等の微生物、ヒトの唾液や汗などの水分、又は、剥がれた角質や皮脂等の体表由来成分が化粧料の表面に付着することによって、また、それらが付着した状態で容器が保管されることによって、付着した水分の存在下で、体表由来成分を栄養源として微生物が増殖してしまうためである。これにより、異臭やカビが発生してしまう。
このような現象を抑制するためには、油性製剤である化粧料に含まれる防腐剤が、付着した水分へ拡散し、防腐作用を発揮する必要がある。ところが、油性製剤中の防腐剤は疎水性であるため、付着した水分へあまり拡散できない。
これに対して、本実施形態の化粧料容器では、抗菌性揮発成分が揮発して化粧料の表面へ移動できるため、化粧料に付着した水分の存在下で微生物が増殖することを抑えることができる。
【0017】
なお、本実施形態の化粧料容器10は、皮膚、粘膜、毛髪などに対して塗布されて使用される化粧料20、又は、希釈されてからこれらに接触させて使用される化粧料20を収容する容器であれば、特に限定されない。具体的には、本実施形態の化粧料容器10は、メークアップ化粧料容器や基礎化粧料容器に限定されない。本実施形態の化粧料容器10は、例えば、歯みがきペースト容器、毛髪化粧料容器、入浴剤容器なども包含する。使用される対象は、ヒトであってもヒト以外の動物であってもよい。本実施形態の化粧料容器10に収容される化粧料20は、薬機法における化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれに分類されるものであってもよい。
【0018】
化粧料容器10は、通常、容器本体11と、蓋体12(キャップ)とを備える。化粧料容器10は、保管状態において、例えば容器本体11の内表面又は蓋体12の内表面に付着した保持体13を備える。
なお、保管状態とは、非使用時に外気と遮断すべく化粧料20を化粧料容器10の内部に収容した状態である。通常、保管状態は、容器本体11に蓋体12(キャップ)が装着された状態である。
【0019】
容器本体11は、使用時に化粧料20を外気に露出できる構成を有する。一方、容器本体11は、非使用時に蓋体12(キャップ)を装着できる構成を有する。
【0020】
例えば容器本体11は、圧縮粉体状のファンデーションを収容する構成を有する。また、例えば容器本体11は、棒状の口紅を使用時に繰り出せる構成を有する。また、例えば容器本体11は、チューブ状であり、手で押圧されることで練り歯磨き剤を使用時に押し出す構成を有する。
【0021】
容器本体11は、使用によって量が減った化粧料20を新たな化粧料20に交換できる構成を有してもよい。換言すると、容器本体11は、いわゆる詰め替え可能であってもよい。
【0022】
蓋体12(キャップ)は、使用時に容器本体11と分離するように構成されてもよい。一方、蓋体12(キャップ)は、使用時に容器本体11と分離せずに容器本体11の一部と結合された状態となるように構成されてもよい。
【0023】
蓋体12(キャップ)は、容器本体11に装着されたときに、化粧料20の表面の少なくとも一部と接触しない構成であることが好ましい。換言すると、好ましくは、蓋体12(キャップ)は、容器本体11に装着された状態で化粧料20の表面の少なくとも一部と離間する構成を有する。化粧料20の表面と離間した蓋体12の一部に、保持体13が貼り付けられてもよい。
【0024】
保持体13は、基材を有する。基材は、抗菌性揮発成分や該成分を含む精油を担持する。
基材の材質としては、特に限定されないが、例えば多糖類や合成樹脂などの高分子化合物が挙げられる。基材としては、例えば、樹脂シート、又は、不織布などが採用される。不織布としては、セルロース繊維で形成された紙、又は、合成繊維で形成された繊維シートなどが挙げられる。
【0025】
保持体13は、抗菌性揮発成分や該成分を含む精油を徐々に放出する構成を有する。換言すると、保持体13は、抗菌性揮発成分や該成分の徐放性体である。
詳しくは、斯かる保持体13の基材は、合成樹脂と、該合成樹脂中に分散したカプセル粒子とを含む。カプセル粒子は、抗菌性揮発成分を収める中空部と、中空部を取り囲む外膜部とを有する。
【0026】
カプセル粒子の中空部は、抗菌性揮発成分を収めている。中空部には、抗菌性揮発成分を含有する精油(後に詳述)が存在してもよい。
中空部には、油分と、該油分に溶解した抗菌性揮発成分とが存在してもよい。油分は、食用油脂であってもよい。食用油脂は、グリセリンと脂肪酸とのエステル化物(トリグリセライド)を含む。
【0027】
カプセル粒子の外膜部は、吸湿性であり、例えばアラビアガム、ゼラチン、ヘミセルロース、微生物産生多糖類、及び、改質デンプンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。具体的には、上記の外膜部は、例えばアラビアガム、ゼラチン、ヘミセルロース、微生物産生多糖類、及び、改質デンプンからなる群より選択される少なくとも1種を含む膜で構成されている。
斯かる構成の外膜部であることによって、比較的低い湿度の環境下では、中空部にある抗菌性揮発成分が外膜部の外へあまり放出されない。一方、微生物が活発に増殖し得る比較的高い湿度の環境下では、抗菌性揮発成分が外膜部の外へ放出されやすくなる。これにより、微生物が増殖しやすい多湿環境下において中空部にある抗菌性揮発成分が比較的多く放出され、微生物があまり増殖しない低湿環境下において中空部にある抗菌性揮発成分があまり放出されないこととなる。換言すると、カプセル粒子が湿度応答性を有することができる。
外膜部は、アラビアガム及び改質デンプンのうち少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0028】
上記基材に含まれる合成樹脂は、特に限定されないが、例えばアクリル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0029】
上記のカプセル粒子の平均粒径は、2μm以上150μm以下であってもよい。
【0030】
保持体13に含まれるカプセル粒子は、例えば以下のようにして作製できる。
カプセル粒子の作製では、少なくとも抗菌性揮発成分と水と上記外膜部を構成することなるアラビアガム等とを含む混合液を調製する。必要に応じて、抗菌性揮発成分を溶解する油分、又は、賦形剤も配合して混合液を調製する。この混合液では、アラビアガム等が乳化剤として機能し、水中に抗菌性揮発成分などが分散した乳化状態となっている。乳化状態の混合液を噴霧乾燥することによって、外膜部の内部に抗菌性揮発成分が配置されたカプセル粒子を作製する。
なお、賦形剤の具体例としては、デンプン、デンプン分解物、デキストリン、ブドウ糖などの単糖類、乳糖などの二糖類が挙げられる。
【0031】
上記のごとく作製されたカプセル粒子は、抗菌性揮発成分の放出に対して、湿度応答性である。
例えば、カプセル粒子は、所定温度において湿度50%で抗菌性揮発成分を放出しない(検出限界以下)一方で、湿度70%で抗菌性揮発成分を放出する。
湿度70%の環境は、真菌(カビ、酵母)が増殖しやすい環境である。上記のカプセル粒子は、真菌が増殖しやすい多湿環境で抗菌性揮発成分を放出する一方で、真菌が必ずしも活発に増殖しない環境下では抗菌性揮発成分をあまり放出しないため、上記のカプセル粒子を含む保持体13は、より良好な抗菌性揮発成分の徐放性を有する。
なお、真菌(カビ、酵母)が増殖しやすい温度は、室温付近(例えば25℃程度)であるが、より高い温度でも真菌(カビ、酵母)は増殖し得る。上記のカプセル粒子と粒子内の抗菌性揮発成分とを含む保持体13は、室温付近で上記の徐放性を有し、より高温でもカプセル粒子が崩壊しにくく上記の徐放性を有する。従って、室温付近であっても、より高い温度であっても、抗菌性揮発成分がカプセル粒子から放出されて、抗菌作用が発揮される。
【0032】
保持体13の基材は、例えば、上記のカプセル粒子を含んだ状態の合成樹脂をシート状に成形することによって作製される。
【0033】
保持体13は、基材の他に抗菌性揮発成分を含む。保持体13は、抗菌性揮発成分を含有する精油を含んでもよい。
【0034】
保持体13は、化粧料20を使用せずに化粧料容器10内部で保管する状態において、化粧料20と空間をあけるように配置されている。換言すると、保持体13は、化粧料20の保管状態において、化粧料20と接触せずに、化粧料20との間に空気を介するように配置されている。
【0035】
図1に示される化粧料容器10は、蓋体12として内蓋12a及び外蓋12bを有する。
図1に示されるように、例えば保持体13は、ファンデーション容器において内蓋12aの内表面に貼り付けられていてもよい。
詳しくは、図1に示す容器は、ファンデーションと、該ファンデーションを皮膚に塗布するためのスポンジS(パフ)とを収容する構成を有する。斯かる容器は、ファンデーションの表面を覆うための内蓋12aと、ファンデーションを覆った内蓋12aとスポンジS(パフ)とを覆うための外蓋12bとを備える。外蓋12bの内表面には、鏡が取り付けられている。
斯かる容器の内蓋12a及び外蓋12bを閉じた保管状態では、内蓋12aの内表面に貼り付けられた保持体13は、ファンデーションの表面とわずかに離間している。この保管状態において、保持体13から徐々に放出される抗菌性揮発成分又は精油によって、ファンデーション(化粧料20)に対して抗菌作用を及ぼすことができる。
なお、斯かる容器は、ファンデーションを収容する部分にパッキンPを有し、内蓋12aを閉じることによって、ファンデーションの表面に接する空間を密封できる構成を有する。
【0036】
図2に示されるように、例えば保持体13は、ファンデーション容器においてスポンジSを収容する窪みの周縁の一部に配置されてもよい。
詳しくは、図2に示す容器は、ファンデーションと該ファンデーションを皮膚に塗布するためのスポンジS(パフ)とを収容する構成を有する。斯かる容器には、ファンデーションを収容するための窪みと、スポンジSを収容するための窪みとが形成されている。また、ファンデーション及びスポンジSを覆うための蓋体12を備える。蓋体12の内表面には、鏡が取り付けられている。
斯かる容器の蓋体12を閉じた保管状態では、スポンジSを収容する窪みの周縁の一部に配置された保持体13は、ファンデーションの表面と離間している。この保管状態において、保持体13から徐々に放出される抗菌性揮発成分又は精油によって、ファンデーション(化粧料20)に対して抗菌作用を及ぼすことができる。
なお、斯かる容器は、蓋体12を閉じた状態であっても、内部空間(ファンデーション表面と接した空間)を密封しない。即ち、非密封型容器である。
【0037】
図3に示されるように、例えば保持体13は、蓋体12の内表面に貼り付けられてもよい。
図3に示す容器は、ファンデーションを収容する構成を有する。斯かる容器には、ファンデーションを収容するための窪みが形成されている。また、ファンデーションを覆うための蓋体12を備える。蓋体12の内表面には、保持体13が貼り付けられている。
斯かる容器の蓋体12を閉じた保管状態では、蓋体12の内表面に貼り付けられた保持体13は、ファンデーションの表面とわずかに離間している。この保管状態において、保持体13から徐々に放出される抗菌性揮発成分又は精油によって、ファンデーション(化粧料20)に対して抗菌作用を及ぼすことができる。
なお、図3に示される化粧料容器10は、収容していたファンデーションを新たなファンデーションに交換可能に構成されている。換言すると、図3に示される化粧料容器10は、ファンデーションを詰め替え可能に構成されている。
また、斯かる容器は、蓋体12の内表面に取り付けられたリング状のパッキンPを有し、蓋体12を閉じることによって、ファンデーションの表面に接する空間を密封できる構成を有する。
【0038】
図4に示される化粧料容器10は、図3に示される化粧料容器10と同様の構成を有するが、詰め替え可能ではない。
なお、斯かる容器は、蓋体12の内表面に取り付けられたパッキンPを有し、蓋体12を閉じることによって、ファンデーションの表面に接する空間を密封できる構成を有する。
【0039】
図5に示されるように、例えば保持体13は、蓋体12の内表面に貼り付けられてもよい。
図5に示す容器は、ファンデーションを収容する構成を有する。斯かる容器は、容器本体11の内部にファンデーションを収容する。容器本体11を外側から押圧することによって、少量のファンデーションを押し出す構成を有する。また、露出して外気に接触する一部のファンデーションを覆うための蓋体12を備える。蓋体12の内表面には、保持体13が貼り付けられている。
斯かる容器の蓋体12を閉じた保管状態では、蓋体12の内表面に貼り付けられた保持体13は、ファンデーションの表面とわずかに離間している。この保管状態において、保持体13から徐々に放出される抗菌性揮発成分又は精油によって、ファンデーション(化粧料20)に対して抗菌作用を及ぼすことができる。
【0040】
図6に示されるように、例えば保持体13は、蓋体12の内表面に貼り付けられてもよい。
図6に示す容器は、乳液(乳液状化粧料)を収容する構成を有する。斯かる容器は、容器本体11の内部に乳液を収容する。容器本体11を上下逆方向に反転させることによって、少量の乳液を吐出する構成を有する。また、容器本体11に装着するための蓋体12を備える。蓋体12の内表面には、保持体13が貼り付けられている。
斯かる容器の蓋体12を閉じた保管状態では、蓋体12の内表面に貼り付けられた保持体13は、乳液の表面とわずかに離間している。この保管状態において、保持体13から徐々に放出される抗菌性揮発成分又は精油によって、乳液(化粧料)に対して抗菌作用を及ぼすことができる。
【0041】
図7に示されるように、例えば保持体13は、ペーストを収容するチューブ容器において、蓋体12の内表面に貼り付けられてもよい。ペーストは、練り歯みがき用ペーストであってもよい。
断面図によって図7に示される容器は、ペーストを収容する構成を有する。斯かる容器は、容器本体11の内部にペーストを収容する。容器本体11を外側から押圧することによって、少量のペーストを押し出す構成を有する。また、露出して外気に接触する一部のペーストを覆うための蓋体12を備える。蓋体12の内表面には、保持体13が貼り付けられている。
斯かる容器の蓋体12を閉じた保管状態では、蓋体12の内表面に貼り付けられた保持体13は、ペーストの表面とわずかに離間している。この保管状態において、保持体13から徐々に放出される抗菌性揮発成分又は精油によって、ペースト(化粧料20)に対して抗菌作用を及ぼすことができる。
【0042】
図8に示されるように、例えば保持体13は、口紅などの棒状の固形物を収容する容器において、蓋体12の内表面に貼り付けられてもよい。
断面図によって図8に示される容器は、口紅を収容する構成を有する。斯かる容器は、容器本体11の内部に口紅を収容する。容器本体11の一部を回転させることに伴って、口紅を外方に向けて一方向へ繰り出せる構成を有する。また、露出して外気に接触する一部の口紅を覆うための蓋体12を備える。蓋体12の内表面には、保持体13が貼り付けられている。
斯かる容器の蓋体12を閉じた保管状態では、蓋体12の内表面に貼り付けられた保持体13は、口紅の表面と離間している。この保管状態において、保持体13から徐々に放出される抗菌性揮発成分又は精油によって、口紅(化粧料20)に対して抗菌作用を及ぼすことができる。
なお、図3図8に示す化粧料容器10に収容される化粧料20は、コンシーラー、美容液、クリーム、クレンジング剤、洗顔剤、アイシャドウ、チーク、リップクリーム、ゲル剤、ローション、日焼け止め剤、化粧下地、ハンドクリーム、ボディクリーム、ハイライト等であってもよい。
【0043】
以上のように、保持体13は、容器本体11に蓋体12を装着していない状態において、外観上目立たないように配置されることが好ましい。
【0044】
保持体13は、抗菌性揮発成分として、アリルイソチオシアネート、テルピネン(特にα-テルピネン、γ-テルピネン)、ゲラニオール、シトロネロール(特にβ-シトロネロール)、テルピネン-4-オール(d体及びl体)、メントール(特にlメントール)、リナロール、シトラール(ゲラニアール及びネラール)、テルピネオール(特にα-テルピネオール)、シトロネラール(d体及びl体)、及び、1,8-シネオールからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
これらの抗菌性揮発成分としては、市販品を用いることができる。
【0045】
保持体13は、抗菌性揮発成分を含有する精油として、わさび精油、コリアンダー精油、スイートマジョラム精油、ゼラニウム精油、ネロリ精油、バジル精油、ペパーミント精油、メリッサ精油、ユーカリ精油、ラベンダー精油、ローズウッド精油、ローズオットー精油、ローズマリー精油、レモングラス精油、ティーツリー精油、レモン精油、イランイラン精油、クラリセージ精油、プチグレン精油、ベルガモット精油、スペアミント精油、及び、ピメント精油からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
これらの精油としては、市販品を用いることができる。これら精油は、通常、水蒸気蒸留法、圧搾法などによって得られる。
【0046】
保持体13が上記の精油成分を含むことにより、抗菌性揮発成分によって化粧料20に対して抗菌作用を及ぼすことができる他、上記の抗菌性揮発成分が不快な香りを有しないため、化粧料20の商品価値を下げてしまうことを抑制できる。
特に、化粧料20が口紅やファンデーションといった油性製剤である場合に、化粧料20の表面で増殖し得る問題となる微生物は、真菌(酵母、カビ)である。真菌の細胞構造は、細菌の細胞構造よりも進化したものであり、高等生物の細胞構造に近い。そのため、細胞構造が単純な細菌に対して十分に抗菌作用を及ぼす殺菌剤であっても、細胞構造が複雑に進化した真菌に対しては殺菌作用が十分に及ばない場合が多い。換言すると、真菌に殺菌作用を及ぼす殺菌剤は少ない。例えばエタノールやフェノキシエタノールといった化粧料用の一般的な防腐性成分の蒸気は、真菌に抗菌作用を及ぼしにくい。一方で、真菌に対して殺菌作用を及ぼす殺菌剤等は、ヒトに対して毒性を有することもあるため、安全性が良好な抗真菌剤(薬剤)は多くない。
これに対して、上述した精油やこれに含まれる抗菌性揮発成分は、特に枯草菌や真菌に対して特異的に抗菌作用を発揮する。後の実施例からも把握されるように、上記の抗菌性揮発成分の蒸気や、該抗菌性揮発成分を含む精油の蒸気は、真菌に対して抗菌作用を発揮する。
化粧料20の表面などで繁殖し得る微生物の例としては、Staphylococcus(スタフィロコッカス)属の細菌、Kocuria(コクリア)属の細菌、Micrococcus(マイクロコッカス)属の細菌、Bacillus(バシルス)属の細菌、Candida(カンジダ)属の真菌、Cryptococcus(クリプトコッカス)属の真菌、Rhodotorula(ロドトルラ)属の真菌などが挙げられる。具体的には、Staphylococcus aureus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus capitis、Staphylococcus lentus、Kocuria varians、Micrococcus spp.、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Candida boidinll、Candida parapsilosis、Candida guilliermondii、Candida zeylanoides、Candida guilliermondii、Candida albicans、Candida tropicalis、Candida dubliniensis、Candida guilliermondii、Candida tropicalis、Candida parapsilosis、Cryptococcus albidus、Cryptococcus humicola、Rhodotorula glutinis などが挙げられる。
【0047】
なお、アリルイソチオシアネートは、わさび精油に含まれている。テルピネンは、コリアンダー、スイートマジョラム、ネロリ、レモン、ティーツリーの各精油に含まれている。ゲラニオールは、イランイラン、コリアンダー、ゼラニウム、ネロリ、ユーカリ、ローズウッド、ローズオットー、ティーツリー、レモングラスの各精油に含まれている。シトロネロールは、ゼラニウム、メリッサ、ローズオットー、ティーツリー、レモングラスの各精油に含まれている。テルピネン-4-オールは、スイートマジョラム、バジル、ラベンダー、ティーツリーの各精油に含まれている。メントールは、ペパーミント精油に含まれている。リナロールは、イランイラン、クラリセージ、コリアンダー、ゼラニウム、ネロリ、バジル、プチグレン、ベルガモット、ユーカリ、ラベンダー、ローズウッド、ローズオットーの各精油に含まれている。テルピネオールは、ユーカリ、ローズウッドの各精油に含まれている。シトロネラールは、ゼラニウム、メリッサ、ローズオットーの各精油に含まれている。ネラールやゲラニアールといったシトラールは、メリッサ、レモン、レモングラスの各精油に含まれている。1,8-シネオールは、バジル、ペパーミント、ユーカリ、ラベンダー、ローズマリー、ティーツリー、スペアミント、ピメントの各精油に含まれている。
【0048】
抗菌性揮発成分としては、テルピネン、テルピネン-4-オール、シトロネラール、1,8-シネオール、アリルイソチオシアネート、ゲラニオール、シトロネロール、リナロール、シトラール、及び、テルピネオールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、少なくとも2種がより好ましい。
抗菌性揮発成分としては、アリルイソチオシアネート、ゲラニオール、シトロネロール、リナロール、シトラール、及び、テルピネオールからなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましく、少なくとも2種がよりさらに好ましい。
抗菌性揮発成分としては、アリルイソチオシアネート、リナロール、及び、シトラールからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましく、アリルイソチオシアネートが最も好ましい。
【0049】
抗菌性揮発成分としては、アルコール系抗菌性揮発成分(フェノール系抗菌性揮発成分を含む)、アルデヒド系抗菌性揮発成分などが挙げられる。
アルコール系抗菌性揮発成分としては、ゲラニオール、シトロネロール、テルピネン-4-オール、メントール、リナロール、テルピネオールなどが挙げられる。
アルデヒド系抗菌性揮発成分としては、ネラール(シス型)、ゲラニアール(トランス型)などのシトラール、又は、シトロネラールなどが挙げられる。
アルコール系抗菌性揮発成分、並びに、これら成分を含む精油は、細胞膜撹乱作用を有する。また、アルデヒド系抗菌性揮発成分、並びに、該成分を含む精油は、細胞内の求核官能基へ反応する作用を有する。そのため、アルコール系抗菌性揮発成分と、アルデヒド系抗菌性揮発成分とを組み合わせて保持体13に含有させることによって、微生物に対して異なる作用機序で抗菌作用を発揮させることができる。詳しくは、アルコール系抗菌性揮発成分によって細胞膜を撹乱させることで、アルデヒド系抗菌性揮発成分が細胞内に入りやすくなる。これにより、アルデヒド系抗菌性揮発成分によって細胞内の求核官能基への反応がより起こりやすくなる。従って、アルコール系抗菌性揮発成分と、アルデヒド系抗菌性揮発成分とを組み合わせることによって、相乗的に抗菌効果を発揮させることができる。
【0050】
アルコール系抗菌性揮発成分と、アルデヒド系抗菌性揮発成分とを組み合わせて相乗的に抗菌効果を発揮させるという点で、抗菌性揮発成分は、ゲラニオール、シトロネロール、テルピネン-4-オール、メントール、リナロール、及び、テルピネオールからなる群より選択された少なくとも1種と、シトラール及びシトロネラールのうち少なくとも一方とを含むことが好ましく、さらにアリルイソチオシアネートを含むことがより好ましい。
さらに好ましくは、抗菌性揮発成分は、アルコール系抗菌性揮発成分としてのリナロールと、アルデヒド系抗菌性揮発成分としてのシトラールとを含み、特に好ましくは、さらにアリルイソチオシアネートを含む。これにより、さらに相乗的に抗菌効果を発揮させることができる。
【0051】
抗菌性揮発成分において、アルデヒド系抗菌性揮発成分に対する、アルコール系抗菌性揮発成分の容量比(体積比)は、5倍以上10倍以下であることが好ましく、6倍以上8倍以下であることがより好ましい。特に、シトラールに対するリナロールの容量比(体積比)が上記の数値範囲であることが好ましい。
【0052】
精油としては、わさび精油、コリアンダー精油、スイートマジョラム精油、ゼラニウム精油、ネロリ精油、バジル精油、ペパーミント精油、メリッサ精油、ユーカリ精油、ラベンダー精油、ローズウッド精油、ローズオットー精油、ローズマリー精油、レモングラス精油、ティーツリー精油、レモン精油、イランイラン精油、クラリセージ精油、プチグレン精油、及び、ベルガモット精油からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、少なくとも2種がより好ましい。
また、精油としては、わさび精油、コリアンダー精油、スイートマジョラム精油、ゼラニウム精油、ネロリ精油、バジル精油、ペパーミント精油、メリッサ精油、ユーカリ精油、ラベンダー精油、ローズウッド精油、ローズオットー精油、ローズマリー精油、レモングラス精油、及び、ティーツリー精油からなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましく、わさび精油、ゼラニウム精油、及び、ラベンダー精油からなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0053】
精油としては、食用植物のわさびから得られる、アリルイソチオシアネートを含むわさび精油が特に好ましい。
抗菌性揮発成分がアリルイソチオシアネートであること、又は、精油がわさび精油であることによって、化粧料容器10が人体に対してより良好な安全性を有するといえる。
【0054】
また、上述したように、リナロールとシトラールとを組み合わせた抗菌性揮発成分が好ましいことから、リナロールを含む精油と、シトラールを含む精油とを組み合わせることが好ましい。
例えば、イランイラン精油、クラリセージ精油、コリアンダー精油、ゼラニウム精油、ネロリ精油、バジル精油、プチグレン精油、ベルガモット精油、ユーカリ精油、ラベンダー精油、ローズウッド精油、及び、ローズオットー精油からなる群より選択された少なくとも1種の精油(リナロールを含有)と、レモングラス精油、レモン精油、及び、メリッサ精油からなる群より選択された少なくとも1種の精油(シトラールを含有)とを保持体13が含んでもよく、これら精油に加えて、さらにわさび精油を保持体13が含んでもよい。
さらに好ましくは、保持体13は、ゼラニウム精油及びラベンダー精油のうち少なくとも一方の精油と、レモングラス精油、レモン精油、及び、メリッサ精油からなる群より選択された少なくとも1種の精油とを含み、特に好ましくは、保持体13は、これら精油の他に、さらにわさび精油を含む。
【0055】
本実施形態の化粧料容器10において、保持体13は、蓋体12の内表面に貼り付けられ、且つ、わさび精油を含むことが好ましい。これにより、保持体13が目立ちにくい状態で、化粧料20に対して十分な抗菌作用を及ぼすことができる。
【0056】
本実施形態の化粧料容器10が化粧料20を収容し、化粧料20を保管する状態において、保持体13と化粧料20とを隔てる空間容積(V)に対する、保持体13中の精油の容量(L)の比(L/V)は、0.5[μL/cm]以上1.5[μL/cm]以下であることが好ましい。上記の内部空間容積は、保持体13から揮発した抗菌性揮発成分が充満できる空間の容積である。これにより、比較的少量の精油によって、抗菌作用を十分に発揮させることができる。なお、バジル精油、コリアンダー精油、ペパーミント精油、メリッサ精油、ネロリ精油、ユーカリ精油、ローズオットー精油、スイートマジョラム精油、ローズウッド精油、ゼラニウム精油を使用する場合は、精油がより少量であっても抗菌性が発揮され、上記の比(L/V)が、0.05[μL/cm]以上であれば、十分な抗菌性が発揮される。
同様に、保持体13と化粧料20とを隔てる空間容積(V)に対する、保持体13中の抗菌性揮発成分の容量(L)の比(L/V)は、0.1[μL/cm]以上0.3[μL/cm]以下であることが好ましい。これにより、比較的少量の抗菌性揮発成分によって、抗菌作用を十分に発揮させることができる。なお、シトロネロール(特にβ-シトロネロール)、シトラール、ゲラニオールを使用する場合は、抗菌性揮発成分がより少量であっても抗菌性が発揮され、上記の比(L/V)が、0.05[μL/cm]以上であれば、十分な抗菌性が発揮される。
【0057】
なお、本実施形態の化粧料容器10は、複数の保持体13を備え、複数の保持体13が互いに離間していてもよい。また、複数の保持体13は、いずれも同じ抗菌性揮発成分又は同じ精油を含んでいてもよく、一方、複数の保持体13は、それぞれ互いに異なる抗菌性揮発成分又は精油を含んでいてもよい。
【0058】
次に、本発明に係る化粧品の一実施形態について説明する。
【0059】
本実施形態の化粧品1は、上記の化粧料容器10と、該化粧料容器10に収容された化粧料20とを備える。
【0060】
化粧料20としては、特に限定されず、例えば口紅、皮膚外用化粧料(目の周囲などの顔面皮膚用化粧料)、毛髪化粧料、口腔化粧料(歯磨き剤など)等が挙げられる。
【0061】
上記の化粧料20は、化粧用組成物で構成される。化粧用組成物は、水や油分などを含む。
化粧用組成物は、これら以外にも、一般的な化粧料や皮膚外用剤等に配合される成分を含んでもよい。本実施形態の組成物が含み得る成分としては、例えば、ジプロピレングリコール、グリセリン、ペンチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジグリセリン等の多価アルコール類が挙げられる。また、例えば、界面活性剤、防腐剤、抗酸化剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、酵素等の成分が挙げられる。
化粧用組成物は、医薬部外品原料規格、化粧品種別配合成分規格、化粧品原料基準、日本薬局方、食品添加物公定書規格等に記載の成分で構成される。
【0062】
上記の化粧料の性状は、特に限定されず、例えば、固形状(圧縮固形粉体やワックス等)、液状、粉体状、ペースト状などである。
【0063】
続いて、本発明に係る化粧料容器10及び化粧品1の製造方法について説明する。
【0064】
本実施形態の化粧料容器10は、例えば容器メーカーから供給される市販容器の特定の部位に、保持体13を貼り付けることによって製造できる。
本実施形態の化粧品1は、例えば上記のごとく製造した化粧料容器10に、上述した化粧料20を一般的な方法で収容することによって製造できる。
【0065】
上記の化粧料20は、例えば、顔の皮膚、首の皮膚、四肢の皮膚、頭皮、毛髪、粘膜(鼻孔、唇、耳、生殖器、肛門などの粘膜)に塗布されることが可能な人体への外用剤である。上記の組成物は、薬機法上の化粧品、医薬部外品、医薬品等の分類には特に拘束されず、いくつかの分野に適用される。
【0066】
本発明の化粧料容器、及び、化粧品は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の実施形態に限定されるものではない。また、本発明では、一般の化粧品等において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【0067】
なお、上記実施形態の化粧料容器は、抗菌性揮発成分を含む保持体を備えたものであったが、本発明の化粧料容器は、これに限定されない。
例えば、本発明の化粧料容器では、抗菌性揮発成分を含む部材で容器本体又は蓋体が構成されていてもよい。具体的には、本発明の化粧料容器は、上述したカプセル粒子を含む容器本体又は蓋体を備えてもよい。
【実施例
【0068】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
<精油、単純アルコール類などを含む保持体を用いた、真菌(酵母)に対する抗菌作用評価試験>
試験方法は、以下の通りである。
内部空間容積が約73cmのシャーレを用意した。基材(ろ紙)に各種の精油や抗菌性揮発成分を含浸させた。シャーレ蓋の内表面に保持体をそれぞれ貼り付けた。いずれの試験においても、精油の含浸量は、50μL、抗菌性揮発成分等の含浸量は、10μLとした。また、何も含浸させなかった基材(ろ紙)を蓋の内表面に貼り付けたシャーレ(ブランクサンプル)も別途準備した。
なお、試験に用いた真菌は、以下の通りである(カンジダ属真菌(酵母)の混合物)。
Candida albicans
Candida parapsilosis
Candida tropicalis
Candida zeylanoides
Candida guilliermondii
Candida dubliniensis
Candida zeylanoides
図9に試験方法の概略を示す。真菌用培地(c-GPLP)に酵母菌液を塗抹した(図9における(a))。下記の各精油や各物質を含む保持体(ろ紙)を貼り付けた蓋でシャーレ本体を覆い、倒置状態で25℃において5日間培養した(図9における(b)、(c))。
結果を図10図15に示す。コロニー数が少ないほど、抗菌作用が発揮されたことを示す。実施例に相当する特定の精油や抗菌性揮発成分を含む保持体を備えることによって、抗菌作用が十分に発揮された。
なお、バジル精油、コリアンダー精油、ペパーミント精油、メリッサ精油、ネロリ精油、ユーカリ精油、ローズオットー精油、スイートマジョラム精油、ローズウッド精油、ゼラニウム精油を使用した場合は、5μLという少ない含浸量であっても、十分な抗菌性が発揮された。また、シトロネロール、シトラール、ゲラニオールを使用した場合は、5μLという少ない含浸量であっても、十分な抗菌性が発揮された。
【0070】
上記と同様にして、抗菌作用評価試験を行った。それぞれの保持体が含む精油や単純アルコール類は、以下の通りである。
・わさび精油(アリルイソチオシアネートを含有)
・ゼラニウム精油
(ゲラニオール、シトロネロール、シトロネラール、リナロールなどを含有)
・ラベンダー精油
(リナロール、テルピネン-4-オール、1,8-シネオールなどを含有)
・フェノキシエタノール
・エタノール
菌試験後の各シャーレの外観を表す写真を図16に示す。フェノキシエタノールやエタノールを含む保持体を使用したシャーレ、また、ブランクサンプルでは、微生物(酵母)が多く生存した。一方、アリルイソチオシアネートを含有するわさび精油、ゼラニウム精油、ラベンダー精油をそれぞれ含む保持体を使用した各シャーレでは、微生物(酵母)の生存が少なく、酵母に対して抗菌作用が発揮された。
各精油に含まれる抗菌性揮発成分によって、抗菌作用が発揮されたといえる。
【0071】
<わさび精油(アリルイソチオシアネートを含有)の真菌(酵母)に対する抗菌作用>
図8に示す化粧料容器が、保持体(わさび精油を含むシート)を有する場合と、有しない場合とで、真菌(酵母)に対する抗菌作用の有無を確認した。
試験方法の詳細は以下の通りである。微生物(上述した真菌(酵母)の混合物)によって汚染された口紅(市販品)を、25℃、湿度80%の条件で3週間培養した後、表面を滅菌綿棒で拭い、真菌用培地(c-GPLP)に塗抹した。その後25℃で5日間培養処理を行い、培養処理後の培地を観察した(菌試験結果)。
また、微生物(上記と同様)によって汚染された口紅を、25℃、湿度80%の条件で3週間培養した後、培養後の菌をリン酸バッファーに回収した。回収した菌液を用いて25℃で5日間培養処理を行いコロニーカウントによって生菌数を算出した(生菌数試験結果)。
結果を図17に示す。保持体を有しない容器では、口紅が防腐剤を含んでいるにも関わらず真菌(酵母)が多く生存した。一方、わさび精油を含む保持体を有する容器では、口紅表面における真菌(酵母)の生存がほとんど認められず、真菌に対して抗菌作用が発揮された。
【0072】
<わさび精油を用いた異臭試験>
わさび精油を含む保持体(フィルム状シート わさび精油を内包したカプセル粒子と合成樹脂とを含む)を口紅容器の蓋における天面裏側に貼り付けたうえで、真菌(酵母)によって表面が汚染された口紅を25℃、湿度80%の条件で3週間培養した。官能評価によって異臭の有無を判定した。
その結果、わさび精油を含む保持体を備えた口紅容器では、異臭が発生しなかった。上記の菌試験の結果を考慮すると、フェノキシエタノールやエタノールを含んだ保持体を備えた口紅容器で同様に異臭試験を実施した場合には、異臭が発生すると考えられる。
【0073】
以上の試験結果から、特にわさび精油を含むシート(保持体)を容器の内側に貼り付けることによって、異臭を発生させ得る原因菌の増殖を抑制でき、また、異臭の発生を抑制できることがわかった。
【0074】
<抗菌性揮発成分を含む保持体を用いた、真菌(酵母)に対する抗菌作用評価試験>
試験に用いた真菌は、上述した真菌(酵母)の混合物である。
(1)2.0×10cfu/mLの濃度となるように、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で試験菌液を調製した。
(2)30mLのガラスバイアル瓶の内部に、真菌用培地(c-PDB培地)を0.45mL、試験菌液0.05mL(10cfu)、及び、リン酸バッファー(PBS1.5mL)をそれぞれ直接添加して、内部で混合した。
(3)25mm×25mmのろ紙(基材)に各試料(シトラール又はリナロールの少なくとも一方)を含浸させた保持体を糸で吊り下げて、上記のガラスバイアル瓶の内部空間に配置した(図18参照)。
(4)ガラスバイアル瓶を湿度80%のデシケーター内で静置した。
(5)2時間後にサンプリングを行い、Letheenにて希釈、真菌用培地(c-GPLP寒天培地)で混釈し、残存菌数を確認した。
結果を表1及び図19に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
上記の結果から把握されるように、シトラール(ネラール及びゲラニアールを含有)、及び、リナロールは、それぞれ、真菌に対して抗菌作用を有することが確認された。
特に、シトラールとリナロールとを組み合わせて用いることによって相乗的に抗菌作用が発揮されることを確認できた。
【0077】
なお、シトラールを含む精油、リナロールを含む精油を用いて上記の抗菌作用評価試験を実施すると、上記の結果と同様の結果が得られることは、十分推定できる。
また、保持体として、上述したカプセル粒子(抗菌性揮発成分を収容)を含む保持体を用いた場合にも、上記の結果と同様の結果が得られることは、十分推定できる。
参考のために、図18に示すガラスバイアル瓶の底に、口紅用組成物を配置させたうえで、上記と同様に抗菌作用の評価試験を実施したところ、上記の結果と同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の化粧料容器及び化粧品は、例えば、容器に収容した化粧料を皮膚や粘膜などに塗布するために使用される。具体的には、本発明の化粧料容器及び化粧品は、例えば口紅やファンデーションを顔に塗布するために、好適に使用される。
【符号の説明】
【0079】
1:化粧品、
10:化粧料容器、
11:容器本体、 12:蓋体、 13:保持体、
S:スポンジ、 P:パッキン、
20:化粧料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19