IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シスナヴの特許一覧

特許7605460物体のジャイロメータを較正する方法、物体、コンピュータプログラム製品及び記憶手段
<>
  • 特許-物体のジャイロメータを較正する方法、物体、コンピュータプログラム製品及び記憶手段 図1
  • 特許-物体のジャイロメータを較正する方法、物体、コンピュータプログラム製品及び記憶手段 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】物体のジャイロメータを較正する方法、物体、コンピュータプログラム製品及び記憶手段
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G01C21/28
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020569006
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 FR2019051415
(87)【国際公開番号】W WO2019239063
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】1855169
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518120924
【氏名又は名称】シスナヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシエール,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】イリオン,マテュー
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ヘンドリック
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-034379(JP,A)
【文献】特開2013-064695(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0259572(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0336970(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲磁場中を移動する物体のジャイロメータを較正する方法であって、前記方法は:
(a)取得のステップであって、
- 前記ジャイロメータによる、前記物体の測定角速度の、及び
- 前記物体に固定された磁気測定手段による、前記磁場の成分である少なくとも2つの測定磁気成分及び/又は前記磁気測定手段の周りの前記磁場のi次の空間微分であって、iは、i≧1である、前記磁場の前記空間微分の次数を示す、i次の空間微分の
取得のステップと;
(b)データ処理手段による、前記物体の推定角速度と、前記磁場の成分及び/又は前記磁気測定手段の周りの前記磁場のn次の空間微分を表す代表磁気成分とに関する少なくとも1つの第1の磁気方程式によって定義される第1の式の値を最小化する前記ジャイロメータの少なくとも1つの較正パラメータに対する少なくとも1つの候補値を決定するステップであって、nはn+1≧i且つn≧1である、前記磁場の空間微分の次数を示し、
- 前記物体の前記推定角速度は、前記測定角速度及び前記ジャイロメータの較正パラメータの関数であり、
- 前記代表磁気成分は前記測定磁気成分の関数であり、
- 前記少なくとも1つの第1の磁気方程式は、前記磁場が前記磁気測定手段の周囲で均一かつ定常と仮定する、
決定するステップと
(c)前記少なくとも1つの候補値上の誤差を表す第1の誤差パラメータを推定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記物体の前記推定角速度ω(estimation) gyroは、モデル
【数1】
によって前記測定角速度ω(measurement) gyroにリンクされ、D及びbgyroは、前記ジャイロメータの前記較正パラメータである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の誤差パラメータが所定の閾値よりも大きい場合、前記データ処理手段による、前記物体の前記推定角速度及び前記代表磁気成分に関する少なくとも1つの第2の磁気方程式によって定義される第2の式の値を最小化する前記ジャイロメータの前記少なくとも1つの較正パラメータに対する少なくとも1つの更新された候補値を決定するステップ(d)をさらに含み、前記少なくとも1つの第2の磁気方程式は、前記磁場が前記磁気測定手段の周りで定常であると仮定する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(d)は、追加の取得手段による、前記物体の測定線速度の取得を含み、前記少なくとも1つの第2の磁気方程式は、前記物体の前記推定角速度、前記代表磁気成分及び前記測定線速度に関する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の式は、
【数2】
の関数であり、∇Mは前記代表磁気成分のベクトルであり、ωは前記推定角速度であり、∇n+1Mは前記代表磁気成分の前記ベクトルの一次空間微分であり、Vは前記測定線速度であり、f及びgは所定の関数である、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの更新された候補値上の誤差を表す第2の誤差パラメータを推定するステップ(e)を含む、
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の誤差パラメータは、前記ジャイロメータの前記少なくとも1つの較正パラメータに対する前記少なくとも1つの更新された候補値を用いて計算される、前記推定角速度の関数である、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の誤差パラメータは、所与の時間間隔にわたる
【数3】
の平均であり、∇Mは前記代表磁気成分のベクトルであり、ωは前記推定角速度であり、∇n+1Mは前記代表磁気成分の前記ベクトルの一次空間微分であり、Vは前記測定線速度であり、f及びgは所定の関数である、
請求項4を直接又は間接的に引用する請求項6を引用する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ジャイロメータの前記少なくとも1つの較正パラメータは、前記ジャイロメータの以前の較正で決定された少なくとも1つの現在の値を有し、前記ステップ(c)は、前記現在の値上の誤差を表す以前の誤差パラメータ及び前記ジャイロメータの最後の較正からの継続時間の関数である累積誤差間隔を決定するステップを含み、前記所定の閾値は、前記累積誤差間隔に依存する、
請求項3乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記代表磁気成分は、前記測定磁気成分及び前記磁気測定手段の較正パラメータの関数である推定成分であり、前記ステップ(b)はまた、前記磁気測定手段の少なくとも1つの較正パラメータについての少なくとも1つの追加の候補値を決定するステップを含み、前記ステップ(d)はまた、前記磁気測定手段の前記少なくとも1つの較正パラメータについての少なくとも1つの更新された追加の候補値を決定するステップを含む、
請求項3乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の誤差パラメータは:
・ 前記ジャイロメータの前記少なくとも1つの較正パラメータに対する前記少なくとも1つの候補値を用いて計算される、前記推定角速度、又は
・ 前記測定磁気成分の空間勾配のすべて若しくは一部、
の関数である、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記代表磁気成分は、前記測定磁気成分及び前記磁気測定手段の較正パラメータの関数である推定磁気成分であり、前記ステップ(b)はまた、前記磁気測定手段の少なくとも1つの較正パラメータに対する少なくとも1つの追加の候補値を決定するステップを含む、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記磁気測定手段は、三軸磁力計であり、前記推定磁気成分は、モデル
【数4】
によって前記測定磁気成分にリンクされ、M(estimation)は前記推定磁気成分に対応し、M(measurement)は前記測定磁気成分に対応し、A及びbmagnetoは前記磁気測定手段の前記較正パラメータである、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の磁気方程式は
【数5】
の形態であり、∇Mは前記代表磁気成分のベクトルであり、ωは前記推定角速度、fは所定の関数である、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の誤差パラメータは、所与の時間間隔にわたる
【数6】
の平均である、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記データ処理手段によって、前記物体の前記測定角速度、前記測定磁気成分、及び前記較正パラメータに従って、前記物体の運動を推定するステップ(f)を含み、前記物体の向きは、前記ステップ(f)において、前記物体の前記測定角速度及び前記較正パラメータの関数としてのみ推定される、
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
周囲磁場中を移動する物体であって、前記物体の測定角速度を取得するように構成されるジャイロメータと、前記磁場の成分である少なくとも2つの測定磁気成分及び/又は前記磁場のi次の空間微分であって、iは、i≧1である、前記磁場の前記空間微分の次数を示す、i次の空間微分を取得するように構成される磁気測定手段とを有し、前記物体は、データ処理手段であって:
- 前記物体の推定角速度と、前記磁場の前記成分及び/又は前記磁気測定手段の周りの前記磁場のn次の微分を表す代表磁気成分とに関する少なくとも1つの第1の磁気方程式によって定義される第1の式の値を最小化する前記ジャイロメータの少なくとも1つの較正パラメータに対する少なくとも1つの候補値を決定するように構成され、nはn+1≧i且つn≧1である、前記磁場の空間微分の次数を示し、
〇 前記物体の前記推定角速度は、前記測定角速度と前記ジャイロメータの前記較正パラメータの関数であり、
〇 前記代表磁気成分は前記測定磁気成分の関数であり、
〇 前記少なくとも1つの第1の磁気方程式は、前記磁場が前記磁気測定手段の周囲で均一かつ定常であると仮定し、
- 前記少なくとも1つの候補値上の誤差を表す第1の誤差パラメータを推定するように構成される、
データ処理手段をさらに有する、
物体。
【請求項18】
前記物体は、前記物体の測定線速度を取得するように構成される追加の取得手段をさらに有し、前記データ処理手段はさらに、前記第1の誤差パラメータが所定の閾値よりも大きい場合、前記物体の前記推定角速度、前記測定線速度及び前記代表磁気成分に関する少なくとも1つの第2の磁気方程式によって定義される第2の式の値を最小化する前記ジャイロメータの前記少なくとも1つの較正パラメータに対する少なくとも1つの更新された候補値を決定するように構成され、前記少なくとも1つの第2の磁気方程式は、前記磁場が前記磁気測定手段の周りで定常であると仮定している、
請求項17に記載の物体。
【請求項19】
前記物体は、車輪を有する車両であり、前記追加の取得手段は、前記車両の前記車輪に取り付けられた少なくとも2つの走行距離計である、
請求項18に記載の物体。
【請求項20】
コンピュータ上で実行されるとき、請求項1乃至16のいずれか1項に記載のジャイロメータを較正する方法を実行するためのコード命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項21】
コンピュータ装置の一部によって読取可能な記憶手段であって、前記記憶手段のコンピュータプログラム製品が請求項1乃至16のいずれか1項に記載のジャイロメータを較正する方法を実行するためのコード命令を含む、記憶手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GNSSなしのナビゲーションに関する。
【0002】
より正確には、本発明は、磁力計に固定されたジャイロメータを較正する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
今日では、GNSS(グローバルナビゲーション衛星システム(Global Navigation Satellite System)、例えばGPS)を介して又は無線通信ネットワーク(放射ターミナル、wifiネットワークなどを用いた三角測量)を使用して車両の位置を追跡するのが一般的である。
【0004】
これらの方法は、情報のアベイラビリティと精度を保証することができず、一方と他方とが、ソースと受信機との間の任意のマスキングによって影響を受けるため、非常に制限される。また、それらは、利用できないことがあり、自発的にスクランブルさえされることがあるGNSSのための衛星などの外部技術に依存している。
【0005】
代替的には、「自律」方法が、例えば、慣性又は磁気慣性ユニットのために、車両の相対変位を任意の環境で追跡することも知られている。「相対変位」とは、初期化時の点及びデータマーカに対する空間における車両の軌跡を意味する。軌跡に加えて、これらの方法はまた、同じ初期マーカに対して車両の向きを得ることを可能にする。
【0006】
ナビゲーションクラス慣性ユニットは、少なくとも三軸配置を持つ3つの加速度計と3つのジャイロメータから形成される。典型的には、ジャイロメータはマーカを「保持」し、加速度計の測定値の二重時間積分は、運動を推定することを可能にする。
【0007】
特に、戦闘機や民間航空機、潜水艦、艦艇などのナビゲーションのような複雑な用途で実施されるような従来の慣性航法を使用できるようにするためには、非常に精密なセンサを使用する必要があることが知られている。実際、加速度測定値の二重時間積分は、加速度における一定誤差が、時間の二乗に比例して増加する位置の誤差を生じることを意味する。
【0008】
代替的には、キャリアのマーカ内の速度ベクトル情報が、外部ソース(車両の走行距離測定、船舶のログ、航空機のピトー管)によって提供され得る場合、キャリアの向き、特にその方位を知ることが可能なときに、キャリアの軌道を得ることが可能であることが知られている。
【0009】
一定の数の場合には、初期方位は既知であり(慣性装置の初期「アライメント」)、慣性(例えば、磁気)以外のセンサによって得ることができるか、又は慣性センサが地上回転を正確に測定することを可能にする場合には、慣性センサから直接導き出すことができる。
【0010】
低コストのセンサを用いて作業することが望ましい場合の困難は、キャリアの配向情報、特に地上車両の方位情報を可能な限り良好に維持するような方法で、それらの誤差パラメータを連続的に較正することによってそれらの性能を「増加」させることである。
【0011】
従って、磁気測定を使用してジャイロメータを較正することが、この文脈で提案された。
【0012】
特許文献1は、2つの測定点間の磁場の変化が、ジャイロメータの積分によって予測される姿勢の変化に対応するかどうかを検査することを提案している。しかし、磁気測定/加速度測定は信頼できると仮定しており、これは扱いづらい。実際には、次のようなことが観察される:
- 周囲の磁場は常に均一且つ定常とは限らない;
- 近傍の金属要素(例えば、ボディワーク)又は磁石は、磁気測定に影響を及ぼす(軟鉄及び硬鉄のタイプの効果)。特許文献2も参照されたい。
- 磁力計を正確に較正するために、可観測性を得るために「誤差モデルを励起する」ように、磁力計を最大の空間方位に配置する必要がある。この問題は、手で持ち運ぶことができ、あらゆる方向に回すことができる装置の場合に容易に解決される。例えば、特許文献3を参照)。磁力計が車両に装着されている場合、次の制限がある:
・ 車両の典型的な走行の間に、ロールとピッチがわずかにゼロから逸脱するという事実による。
・ ボディが磁化される、又は車両が積載されるという事実により、これは、較正がもはや適切でなくなる可能性があることを意味する;これは、定期的な再較正が必要となる。
【0013】
特許文献4は、磁気コンパスとジャイロメータを有するスマートフォンタイプのデバイスにより的確に関連し、磁気外乱の問題に言及している。本特許文献4は、むしろ、ジャイロメトリックデータを用いた磁気コンパスの較正を目的とするが、出発点として磁気加速度計測の四元数を取り、この四元数から再較正角速度ω=2q-1を得ることによって、逆(すなわち、磁気データを用いたジャイロメータの較正)も提案する。しかしながら、磁気計測/加速度計測測定が信頼できるという仮定は依然として成り立っており、逆の場合には、この状況が続く限り、ジャイロメータのバイアスを更新しないか、又はメモリに記憶されたデフォルトの四元数を使用することを単純に提案する。
【0014】
結果の優れた品質を可能にし、かつ限定的でない、物体の運動を推定する目的のために、物体のジャイロメータを較正するための新しい方法を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】US2012/0116716
【文献】US2004/0123474
【文献】FR1757082
【文献】US2011/0178707
【発明の概要】
【0016】
したがって、本発明は、第1の態様によれば、周囲磁場中を移動する物体のジャイロメータを較正する方法に関し、その方法は、以下のステップを含むことを特徴とする:
(a)取得のステップであって、
- ジャイロメータによる、物体の測定角速度の、及び
- 前記物体に固定された磁気測定手段による、磁気測定手段の周りの、磁場の及び/又は磁場のi次の微分の少なくとも2つの成分の、
取得のステップと;
(b)データ処理手段による、物体の推定角速度並びに磁場及び/又は磁場のi次の微分の成分の少なくとも1つの第1の磁気方程式によって定義される第1の式を最小化するジャイロメータの少なくとも1つの較正パラメータの値を決定するステップであって、
- 物体の推定角速度は、測定された角速度及びジャイロメータの較正パラメータの関数であり、
- 少なくとも1つの第1の磁気方程式は、磁場が磁気測定手段の周囲で均一かつ定常と仮定する、
決定するステップ。
【0017】
他の有利かつ非限定的な特徴によれば:
・ 物体の推定角速度ω(estimation) gyroは、モデル
【数1】
によって測定角速度ω(measurement) gyroにリンクされ、ここでD及びbgyroは、ジャイロメータの較正パラメータである;
・ 本方法はさらに、較正パラメータ上の誤差を表すパラメータを推定するステップ(c)を含む;
・ 本方法はさらに、誤差を表す前記パラメータが所定の閾値よりも大きい場合、取得追加手段によって物体の測定線速度を取得し、データ処理手段による、物体の推定角速度並びに測定線速度並びに磁場及び/又は前記磁場のi次の微分の成分の少なくとも1つの第2の磁気方程式によって定義される第2の式を最小化するジャイロメータの少なくとも1つの較正パラメータの値を再決定するステップ(d)を含み、少なくとも1つの第2の磁気方程式は、磁場が前記磁気測定手段の周りで定常であると仮定する、
・ 本方法は、較正パラメータ上の誤差を表す前記パラメータの新たな推定のステップ(e)を含む;
・ 較正パラメータ上の誤差を表す前記パラメータは、較正パラメータの決定された値について計算された、前記第1の式の値、又は適用可能な場合には前記第2の式の値の関数である;
・ ステップ(c)、及び適用可能な場合にはステップ(e)は、較正パラメータ上の誤差を表す前記パラメータ及びジャイロメータの最後の較正からの継続時間の値に従って、累積誤差間隔を決定するステップを含み、前記所定の閾値は、前記累積誤差間隔に依存する;
・ ステップ(b)、及び適用可能な場合にはステップ(d)は、再帰フィルタ又は最適化の実施を含む;
・ ステップ(a)で取得された磁場及び/又は磁場のi次の微分の成分は測定成分であり、前記第1及び第2の磁気方程式によって使用される成分は、測定成分及び磁気測定手段の較正パラメータの関数としての推定成分であり、ステップ(b)及び適用可能な場合にはステップ(d)はまた、磁気測定手段の少なくとも1つの較正パラメータの値の決定を含む;
・ 磁気測定手段は、三軸磁力計であり、磁場の推定成分M(estimation)は、モデル
【数2】
による測定成分M(measurement)にリンクされ、ここでA及びbmagnetoは磁気測定手段の較正パラメータである;
・ 第1の磁気方程式は
【数3】
の形態であり、適用可能な場合には、第2の磁気方程式は
【数4】
の形態であり、ここで、∇Mは磁場のn次微分、ωは角速度、Vは線速度、f及びgは所定の関数である;
・ 第1の磁気方程式は
【数5】
であり、該当する場合、第2の磁気方程式は
【数6】
である;
・ 第1の式は
【数7】
の関数であり、オプションの第2の式は
【数8】
の関数である。
・ 較正パラメータ上の誤差を表す前記パラメータは、所与の時間間隔にわたる
【数9】
若しくは
【数10】
の平均、又は磁場の及び/又は磁場のi次の微分の前記成分の空間勾配のすべて若しくは一部である;
・ 本方法は、前記物体の測定角速度、前記磁場及び/又は前記磁場のi次の微分の成分、及び/又は前記物体の測定線速度、及び前記物体の測定線速度に従って前記物体(1)の運動をデータ処理手段によって推定するステップ(f)を含み、車両の向きは、ステップ(f)において、車両の測定角速度及び較正パラメータの値の関数としてのみ推定される。
【0018】
第2の態様によれば、周囲磁場中を移動する物体であって、前記物体の測定角速度を取得するように構成されるジャイロメータと、磁場及び/又は磁場のi次の微分の少なくとも2つの成分を取得するように構成される磁気測定手段とを有し、物体は、データ処理手段であって:
- 物体の推定角速度並びに磁場及び/又は磁場のi次の微分の成分に関する少なくとも1つの第1の磁気方程式によって定義される第1の式を最小化するジャイロメータの少なくとも1つの較正パラメータの値を決定するように構成されるデータ処理手段をさらに有することを特徴とし、
〇 物体の推定角速度は、測定角速度とジャイロメータの較正パラメータの関数であり、
〇 少なくとも1つの第1の磁気方程式は、磁場が磁気測定手段の周囲で均一かつ定常であると仮定している。
【0019】
他の有利かつ非限定的な特徴によれば:
・ 物体は、物体の測定線速度を取得するように構成される追加の取得手段をさらに含み、データ処理手段はさらに:
- 較正パラメータ上の誤差を表すパラメータを推定し;
- 誤差を表す前記パラメータが所定の閾値よりも大きい場合、物体の推定角速度ならびに磁場及び/又は磁場のi次の微分の成分に関する少なくとも1つの第2の磁気方程式によって定義される第2の式を最小化するジャイロメータの少なくとも1つの較正パラメータの値を再決定するように、構成され、少なくとも1つの第2の磁気方程式は磁場が磁気測定手段の周りで定常であると仮定している;
・ 物体は、車輪を有する車両であり、追加の取得手段は、車両の車輪に取り付けられた少なくとも2つの走行距離計である。
【0020】
第3の態様及び第4の態様によると、ジャイロメータを較正するための本発明の第1の態様による方法の実行のためのコード命令を含むコンピュータプログラム製品と;コンピュータプログラム製品が、ジャイロメータを較正する第1の態様による方法の実行のためのコード命令を含む、コンピュータ装置の一部によって読取可能な記憶手段とが提案される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、好ましい実施形態の以下の説明を読むときに現れるものとする。この説明は、添付の図面を参照して、以下に示す。
【0022】
図1】本発明による方法の実装のための車両アーキテクチャの例を示す。
図2】本発明による方法の好ましい実施形態のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
アーキテクチャ
【0024】
図1を参照すると、本方法は、Mとして記述される、周囲磁場(典型的には、地球磁場(該当する場合は近傍の金属物体によって変更される))中を移動する物体1のジャイロメータ11の較正を可能にする。既に説明したように、磁場は、三次元空間におけるベクトル場であり、すなわち、物体1が移動可能である各三次元点に三次元ベクトルを関連付ける。
【0025】
この物体1は、位置の知識が望まれる任意の移動可能な物体、例えば、車両、特に、車輪を備えた車両、ドローン等であるが、人又はこの人の人体又は身体の一部(手、頭部等)でもよい。
【0026】
物体1は、ジャイロメータ11及び磁気測定手段20を備える。手段20及びジャイロメータ11は、物体1に、例えば、車両の場合にはボディワークに固定され、概して物体1の基準フレーム内に固定される。
【0027】
磁気測定手段20は、典型的には磁力計及び/又は磁気勾配計である。後者の場合、磁場Mの成分の値を測定する代わりに、勾配計は、磁場Mの勾配の成分の値、すなわち、空間微分の値を直接測定する(オプションで、磁場に加えて)。このような磁気勾配計20は、当業者に知られている。本発明のある実施形態によれば、2次微分(次数2の勾配)、一般にi次の微分(次数iの勾配)の値を直接測定する勾配計を使用することが可能である。
【0028】
本明細書の残りの部分では、磁力計の例が使用されることになっているが、当業者はそれを勾配計に置き換える方法を知っているであろう。
【0029】
磁力計又は磁力計(複数)20は、好ましくは「軸方向」にある、すなわち、前記磁場の成分、すなわち、前記磁場ベクトルMのそれらの軸に沿った投影(又は、勾配計の場合は、前記磁場の次数iの空間微分の成分、すなわち、その軸に沿った勾配計の周囲の∇i-1M成分の変動)を測定することができる。
【0030】
磁力計20は、少なくとも2つの数、好ましくは少なくとも3つの数であり、それぞれ、磁場の少なくとも2つ又は3つの成分を獲得することができる。実際、2つの磁力計は、それらが車両の回転の垂直軸に直交する平面、すなわち水平面内に互いに直交して配置されていれば、十分であり得ることが理解される。しかしながら、3つの磁力計20を使用し、3つの構成要素を取得することにより、この特定の準備の必要性を克服することが可能になる。
【0031】
有利には、磁力計20は、「三軸」の3つのグループ、すなわち、同じ空間位置に関連付けられ、3つの軸に沿って磁場を測定する直交する2×2の磁力計20のトリプレット(6つの磁力計20の場合は2つの三軸があり、9つの磁力計20の場合は3つの三軸がある)によって有利に編成された、6つ又は9つの磁力計のような3つよりも大きい数字でさえある。2つの三軸により、磁場及びその勾配(以下参照)の一部を測定することが可能であり、適切に配置され且つ配向された8つの磁力計20を用いて、勾配のすべての成分を決定することができる。これは、例えば、矩形の二等辺三角形の角に配置された3つの三軸の場合である。
【0032】
好ましくは、物体に関連する直交系は、計算を容易にするようなやり方で、三軸が前記直交系に従って有利に配向されるような慣例によって(及び、本明細書の残りの部分については装置によって)選択される。
【0033】
しかし、当業者は、どのような場合でも、磁力計/勾配計の任意の空間配置に置き換える方法を知っているであろう。
【0034】
「ジャイロメータ」11は、物体1のマーカを規定する3つの直交軸系に従って物体1の角速度を測定することができる、すなわち、ωとして記述される角速度ベクトルの3つの成分を測定することができる慣性測定手段を意味する。したがって、ジャイロメータ11は、実際には、3つの軸のうちの1つ、特に、3軸配置(すなわち、各ジャイロメータは、上述の角速度ベクトルの3つの成分のうちの1つを測定することができる)に関連する3つのジャイロメータのセットを指定することができることが理解される。
【0035】
物体1が車両である好ましい実施形態では、このマーカは、好ましくは、垂直軸と、2つの水平軸、特に、長手方向軸と、横軸とを含む。車両の垂直軸周りの回転は、運転者がステアリングホイールを回すことによって動作する角度で表される。一般に平坦な地面上では、車両の方向の変化は、水平面内にある、すなわち、ヨーの前記垂直軸にも従う。実際には、ロール(車両の長手方向軸に沿った回転)及びピッチ(車両の横軸に沿った回転)についてのゼロ以外の値は、例えば、傾斜道路の結果であり得るが、典型的には低い。
【0036】
本発明の方法物体は、角速度ベクトルωの3つの成分を較正することを可能にする。
【0037】
さらに、物体1は、物体1の測定線速度(Vとして記述される)、すなわち、変位、の「付加的な」取得手段10を有利に備える。これらの手段10は、直接的又は間接的に、線速度を得ることを可能にすることができ、従って、例えば慣性測定手段などの多くのタイプのものであることができる。従って、ジャイロメータ11を1つ以上の加速度計で補完することができ、物体1も「6軸」の慣性単位を有することができる。加速度計は、このセンサに加わる重力以外の外力に敏感であり、γとして記述される特定の加速度を測定することができる。
【0038】
代替的に、物体1が車輪を有する車両である場合、手段10は、例えば図1の例に示すように、車輪の少なくとも2つの走行距離計、例えば、2つの後輪の少なくとも2つの走行距離計から成ることができる。
【0039】
「走行距離計」は、回転数をカウントすることにより車輪の速度を測定することができる装置(回転計)を意味する。一般に、走行距離計は、車輪に取り付けられた部分(例えば、磁石)を有し、回転数である単位時間当たりの回転の数をカウントするようにこの固定部分(いわゆる「トップ」)の各通過を検出する。他の技術、例えば、ホイール上のマスクの光学的検出、又はホイールなどの金属物体の回転を検出する特許FR2939514の磁力計が知られている。
【0040】
ここで、ホイールの「速度」はスカラー、すなわち、地上基準システムにおけるホイールの速度のノルム(滑りがないという仮説の場合)である。ホイールの半径rが既知であれば、回転数の測定により、速度:v=2πrfのこのノルムを推定することができる。
【0041】
また、追加の手段10は、GNSS受信機であってもよい。当業者は、速度測定のための特定の技術に限定されないことが理解されるであろう。
【0042】
さらに、物体1は、本方法の処理の特にリアルタイムの実装のための説明された処理手段21(通常はプロセッサ)、例えば、車両のオンボードコンピュータ、オプションでメモリ22、及び物体1の動きに関する情報(瞬間速度値、方向、地図上の位置など)を返す、及び/又は、物体1にコマンドを送信するインターフェース23を有する。物体1は、それ自体、特に自動運転車であることができ、処理手段21は、車両の自律的なナビゲーションを実施するように構成される。従って、前記コマンドは、運転者による運転をシミュレートするために、車両の制御部材(エンジン、ステアリングホイールのアクチュエータ等)に送られる。
【0043】
処理手段21は、物体1の外部にあってもよく、例えば、無線ネットワークによって物体1に接続されてもよいことに留意されたい。代替的には、ジャイロメータ11及び磁気測定手段20は、ワイヤで、例えばイーサネット(登録商標)を介してデータ処理手段21に接続することができる。
【0044】
方法
【0045】
本発明の方法の目的は、少なくともジャイロメータ11を較正する方法である。「較正」とは、1つ又は複数の較正パラメータを決定することを意味し、そのリストを以下に示す。特に、特定の較正パラメータは、信頼性があり、所定のものとみなすことができ、他の較正パラメータは、決定されることになる。決定されることになるものに関して、それらは「現在の」値(他の用語では、較正が既に行われている)を有し、これらの値は、適用可能な場合に修正される(新規の較正の場合)。
【0046】
特に好ましい実施形態では、この方法はさらに、磁気測定手段20を較正するための方法であることができる、すなわちジャイロメータ11と磁力計20を同時に較正することができる。これは非常に有利なモードである。なぜなら、これから分かるように、ジャイロメトリー(ジャイロメトリーデータ)と磁気データ(磁気データ)のうちの1つが、他方を較正するための基準としてそれを使用するために信頼できると仮定する必要はもはやないからであり、すなわち、2つは互いに自動的に較正する。代替的には、当然ながら、磁力計20を十分に較正されたとみなし、その結果としてジャイロメータ11を較正することが可能であり、これは、例えば、ジャイロメータ11のより多くのパラメータを較正することを可能にする。
【0047】
以上のように、有利な実施形態では、本方法は、物体1の運動を推定する方法でさえある。すなわち、本方法は、運動の1つ又は複数の成分を確実に推定するために、較正の後に、測定値を使用することを含む。
【0048】
第1のステップ(a)では、この方法は、ジャイロメータ11による、ω(measurement) gyroとして記述される、物体1の測定角速度、及び磁気測定手段20による、磁場及び/又は磁場のi次の微分の少なくとも2つの成分の取得を含む。これらの成分は、より正確には、いわゆる測定成分であり、磁場の場合、M(measurement)として記述される(i次の微分の場合、それは∇(measurement)として記述される)ベクトルを形成する。好ましくは、角速度の3つの成分、及び少なくとも6つ又は8つの磁気成分(有利には、矩形の二等辺三角形のコーナーにおける2つ又は3つの磁気三軸位置)が、それらから磁場及びその勾配の少なくとも一部(すなわち、3つの軸に従った以下の次数の導関数)を導出することができるように取得される。
【0049】
これらの大きさは、物体1の動きの特徴的な時間の前に非常に小さいdt、典型的には40msで、サンプリングdtを用いて(すなわち、「dt」秒毎に)有利に測定される。
【0050】
ステップ(b)では、データ処理手段21は、物体1の推定角速度並びに磁場及び/又は磁場のi次の微分の成分の少なくとも1つの第1の磁気方程式によって定められる第1の式を最小化するジャイロメータ11の少なくとも1つの較正パラメータの値を決定する。
【0051】
このアイデアは、磁気方程式によって理論的にリンクされるジャイロメトリックデータと磁気データを別々に推定することである。したがって、この方程式のおかげで、理想的にはゼロであるべき量を表現することができ(すなわち、ジャイロメトリックデータと磁気データは、正確に磁気方程式を満たす)、さもなければ、完全にされなければならないのは較正である。
【0052】
ω(estimation) gyroとして記述される物体1の推定角速度は、測定角速度及びジャイロメータ11の較正パラメータに従い、すなわち、一般に、較正パラメータによって決定される関数(アプリケーション)を有する
【数11】
である。最も単純な場合、gは微調整され、ω(estimation) gyroは、
【数1】
タイプの式によって測定角速度ω(measurement) gyroにリンクされ、D及びbgyroは、ジャイロメータ11の較正パラメータを表す。
【0053】
三次元姿勢の場合、bgyroはバイアスベクトルであり、Dは3×3行列=(正しいマーカでの転送のための直交行列)×(スケール係数と較正を含む上三角行列)である。単純化された方法では、例えば、Dは所定のものであり(実際には非常にゆっくりと変化する)、ジャイロメータ11について決定されるべき唯一の較正パラメータはbgyroであり、これは実質的に経時的に変化する傾向がある(ジャイロメータ11のドリフトと呼ばれる)ことを考慮することが可能である。
【0054】
説明したように、ステップ(a)で取得された磁場及び/又は磁場のi次の微分の成分は、好ましくは測定成分(すなわち、バイアスされている可能性がある)であり、前記第1の磁気方程式によって使用される成分は、磁気測定手段20の測定成分及び較正パラメータによる、推定成分である(磁場の場合、対応するベクトルはM(estimation)と記述され、i次の微分の場合、それは∇(measurement)と記述されることができる)。
【0055】
磁気測定手段20が磁力計である場合(すなわち、作業が、微分ではなく、磁場の成分に関して行われる場合)、磁場の推定成分M(estimation)は、有利には、
【数2】
の形態のモデルによって測定成分M(measurement)にリンクされ、3×3行列A及びベクトルbmagnetoは、磁気測定手段20の較正パラメータである。それはむしろ、測定成分の関数として表現したい推定成分であり、
【数12】
と書くことが可能である。
【0056】
magnetoは、概して「硬鉄型」効果を表し、行列Aは「軟鉄型」効果を表す。これらの効果は、厳密に言えば、硬/軟鉄の効果に対応するが、同一の影響を有するが異なる原因(例えば、磁力計20のエレクトロニクス/物理学による効果)を有する現象を含むことができる。
【0057】
ジャイロメータに関しては、より一般的には、一般的な誤差モデル
【数13】
を調べることができ、hは必ずしも微調整されていない関数(アプリケーション)である。
【0058】
微調整されたケース(
【数2】
)では、Aは3×3行列であり、これは、Rは直交、
(外1)
は上三角である
【数14】
と書くことができる。
【0059】
なお、磁気測定手段20自体は、事前に完全に較正されているものと仮定されていることに留意すると、物体1が存在しない場合に測定されるであろう地球磁場を推定することができるように、較正において補正されなければならないのは、それらの直接的な環境(車体等)のみである。従って、行列Rは重要であり、物体磁気マーカが安定したままであるように決定される。
【0060】
球体に関する従来の較正方法は、最も近い軸周りの1回転でのみ決定する(E. Dorveaux, D. Vissiere, A.
P. Martin, N. Petit, "Iterative calibration method for inertial and
magnetic sensors", in Proc. of the 48th IEEE Conf. on Decision and Control
2009参照)。センサ軸は、これらの方法の適用した後に固定されたままではない。
【0061】
実際には、較正中のAの8つの係数を決定することができる(1つの係数、テスラ(又はガウス)の物理単位に測定値を結びつけるグローバルスケールファクタを決定することはできないが、同時に、ジャイロメータ11を較正するためにそれを知る必要はない。
【0062】
従って、同時二重較正の特に好ましい実施形態では、決定されるべき較正パラメータは3つだけである:bgyro、A及びbmagneto。この限られた数のパラメータは、物体1が「変化する」軌道(時間の関数として値の大きな多様性を有する方向/速度)を有する場合に、このような二重の較正を可能にする。
【0063】
磁気方程式
【0064】
物体1(ボディと呼ばれる)のマーカにおける磁場の経時変化は式
【数15】
によって記述される。
【0065】
第1項-ω×Mは、固定マーカに対するこのマーカの回転に起因する物体1のマーカにおける磁場の変化を記述する。第2項∇M・Vは、不均一磁場を有する領域の運動から生じる測定磁場の変化を記述する。最後に、第3項
(外2)
は、磁場の非定常性(例えば、ヨーロッパにおける50Hzのような周期的な電流、磁石/鋼製の物体の前記物体の近傍での運動など)を考慮に入れる。
【0066】
「移動可能な」磁気外乱がなければ、すなわち磁場は定常の性質、
【数16】
、を有し、式は
【数6】
に減らすことができる。
【0067】
磁気外乱がまったくない場合、すなわち、磁場は、定常であることに加えて、均一な性質を有する場合、
【数17】
、式は、さらに、
【数5】
に減らすことができる。
【0068】
方位を決定するために磁気センサを用いる場合、この均一性と定常性の二重仮定は、最も頻繁に検証又は仮定される(コンパスを使用する場合のように)。実際、地球磁場について、金属構造物や強化コンクリート製のもの(典型的には橋)が周囲に存在する場合を除いて、均一性は、我々の緯度において極めて良好な近似として局所的に観測される。近傍の変位物体による非定常性は、外乱のソースが移動しなければならないので、さらに稀であり、周期的な電流による非定常性は、平均ゼロであり、推定技術を用いて処理することもでき、例えば、文献C.-I. Chesneau, M. Hillion, and C. Prieur, Motion estimation of a Rigid Body with an EKF using Magneto-Inertial Measurements, 7th Conf. on Indoor Positioning and Indoor Navigation (IPIN'16), Madrid, Spain, 2016を参照されたい。
【0069】
磁気計測定を用いて評価された磁場の空間的及び時間的変動ではなく、特に勾配計測定を用いて評価された磁気勾配の空間的及び時間的変動(すなわち、磁場の空間的変動)をリンクするような方法で、磁気方程式を一般化する可能性が知られていることに留意されたい。より正確には、式
【数6】
は、n+i≧i≧1で、
【数18】
として導出され、∇Mは磁場のn次微分、f及びgは所定の関数であり、出願FR1756675を参照されたい。
【0070】
本明細書の残りの部分では、商品によって、0次方程式が使用される(すなわち、
【数6】
に基づく)が、当業者は、この方法をより高い次数に変換する方法を知っているであろう。
【0071】
図2を参照すると、本較正方法は、いくつかのレベルの仮定を有する較正を巧みに提案する。
【0072】
より正確には、ステップ(b)において、まず、磁場の均一性と定常性の二重の仮定を行うことによってジャイロメータを較正し、次に、較正パラメータ上の誤差を表すパラメータを推定するオプションのステップ(c)において、外乱がないこと、すなわち、仮定の妥当性が検証される。
【0073】
好ましい実施形態では、この検証が失敗した場合(誤差を表す前記パラメータが所定の閾値よりも大きい場合)、較正は、ステップ(d)において、定常性の仮定のみ(かつもはや均一性の仮定ではない)を行うことによって、再度試みられる。ステップ(e)では、この仮定の妥当性を再検証することができる。代替的には、ステップ(c)の検証が失敗した場合(誤差を表す前記パラメータが所定の閾値よりも大きい場合)、この方法を停止し、現在の較正を維持することができる。
【0074】
しかしながら、ステップ(d)の存在は、前述した追加の収集手段10を有する条件で、磁場が均一でない可能性のある場合に較正を実行することを可能にすることが理解される。しかし、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、ジャイロメータ11及び磁気測定手段20のみを有することが可能であり、ステップ(a)、(b)及びオプションで(c)のみを実施することが可能である。
【0075】
したがって、可能なステップ(d)は、Vとして記述される物体1の測定線速度の追加の取得手段10による取得と(実際には、この取得は、特に、各時間ステップにおいて、ステップ(a)の他の取得と同時に実施することができる)、次に、データ処理手段21によって、物体1の推定角速度と線速度並びに磁場及び/又は磁場のi次の微分の成分についての少なくとも1つの第2の磁気方程式とによって規定される第2の式を最小化するジャイロメータ11の少なくとも1つの較正パラメータの値を再決定することとを含み、少なくとも1つの第2の磁気方程式は、磁場が磁気測定手段20の周囲で定常であることだけを仮定する。
【0076】
「取得」は、広い意味、すなわち、直接的又は間接的に理解されるべきである。実際には、手段10は、ほとんどの場合線速度ではない第1の大きさ(加速度、車輪の回転数など)を測定し、いわゆる測定線速度は、実際これらの大きさから推定され、オプションで組み合わされる。当業者は、物体1の線速度を、例えば磁気グラジオメトリー(磁気勾配計測)によって、多くの方法で得る方法を知っているであろう。
【0077】
したがって、磁場がステップ(d)で使用される磁気測定手段20の周りで定常であることだけを仮定した少なくとも1つの第2の方程式は、好ましくは、
【数4】
の形態であり、ωは理論的角速度であり、磁場の成分が直接測定される好ましい実施形態で説明されるような
【数19】
である。
【0078】
従って、磁気測定手段20の周囲の磁場の定常性の仮定において、量
【数20】
(特に、次数0におけるそのバージョン
【数21】
)は、最も近い較正誤差においてゼロに等しいことが理解される。
【0079】
同様に、ステップ(b)で使用される磁場が磁気測定手段20の周囲で均一かつ定常であると仮定する少なくとも1つの第1の磁気方程式は、少なくとも1つの第2の方程式の単純化されたバージョンであり、好ましくは、
【数3】
の形態であり、磁場の成分が直接測定される好ましい実施形態において説明されるような
【数5】
である。従って、磁気測定手段20の周囲の磁場の均一性及び定常性の二重の仮定において、量
【数22】
(特に次数0におけるそのバージョン
【数23】
)は、最も近い較正誤差においてゼロに等しいことが理解される。
【0080】
第1の較正は、線速度Vの知識を必要としないので、実行が容易であることが分かる。
【0081】
有利には、第1の式(ステップ(b)で最小化される)は、
【数23】
、好ましくは、
【数24】
又は
【数25】
の関数であり、第2の式(ステップ(d)で最小化される)は、
【数26】
、好ましくは、
【数27】
又は
【数28】
の関数である。一般的な条件下では、これらの式の最小化は一般的な軌跡に対してあいまいさなしにパラメータを与える。しかしながら、代替的には、当業者であれば、第1/第2の式(ノルム(norme)のL、Lなど)によって定められる関係に関連して差異に感受性のある任意の他の関数を第1/第2の式として使用することができることが理解される。
【0082】
この最小化を実装するために、データ処理手段21は、所与の長さのインターバルで経時的に動作することができる。そのようなものとして、既知の方法では、再帰フィルタ(RLS、再帰最小二乗法など)又は最適化(最小二乗法など)を使用することができる。
【0083】
例えば、磁力計20の較正パラメータ、すなわち、パラメータA及びbmagnetoが同時に決定される仮定において、
【数29】
又は
【数30】
が、
【数31】
及び
【数12】
を用いて最小二乗法で最小化される、いわゆる差分較正原理を実施することが可能である。
【0084】
誤差特性評価
【0085】
説明したように、本方法は有利には、較正パラメータ上の誤差を表すパラメータを推定するステップ(c)を含み、さらに有利には、(ステップ(c)及び(d)が行われた場合には)較正パラメータ上の誤差を表す前記パラメータを新たに推定するステップ(e)を含む。
【0086】
このアイデアは、周囲磁場に関する仮定のレベルを検証するために、又は検証しないために、磁気測定手段20によって提供される情報の質を推定することである。より正確には、図2に示すように:
- 誤差を表すパラメータの第1の推定(ステップ(c))が、前記所定の閾値よりも小さい場合、周囲磁場の均一性及び定常性の二重の仮定が検証され、ステップ(b)の較正の結果が受け入れられる。次いで、ステップ(c)は、較正パラメータのステップ(b)で決定された値によるジャイロメータ11及び/又は磁気測定手段20の有効な較正を含み、ステップ(d)及び(e)を実行する必要はない;
- 誤差を表すパラメータの第1の推定(ステップ(c))が前記所定の閾値よりも大きい場合、周囲磁場の均一性及び定常性の二重の仮定は棄却され、ステップ(b)の較正の結果は受け入れられず、停止する又はステップ(d)であって:
〇 誤差を表すパラメータの第2の推定(ステップ(e))が、前記所定の閾値未満の時間である場合、周囲磁場の定常性のみの仮定が検証され、ステップ(b)の較正の結果が受け入れられる。次いで、ステップ(e)は、較正パラメータのステップ(d)で決定された値によるジャイロメータ11及び/又は磁気測定手段20の有効な較正を含む;
〇 誤差を表すパラメータの第2の推定(ステップ(e))が常に前記所定の閾値よりも大きい場合、周囲磁場の定常性の仮定さえも棄却され(摂動が存在する)、ステップ(d)の較正の結果は受け入れられない。従って、前者の較正のパラメータは、較正として維持される。その後、完全な磁気方程式(項
(外2)
を含む)を使用するか、又は磁気測定値を一時的に破棄するかのいずれかを試みることが可能である;
ステップ(d)の再較正を実行することができる:
【0087】
なお、ステップ(b)及び/又は(d)の発生中の決定された値は、有効な較正には使用されないが、データ記憶手段12に記憶することができ、ステップ(c)及び/又は(e)の将来の発生中に使用することができる。例えば、誤差を表すパラメータが閾値を超える限り、決定された較正パラメータが記憶され、閾値を下回る場合、有効な較正は、記憶された値も考慮に入れる。さらに、ステップ(c)及びステップ(e)の結果は、(例えば、閾値の値を介して)以前の較正パラメータの年齢に依存し得る。
【0088】
最後の良好な較正以降の継続時間tの後の累積誤差間隔は、この継続時間tに従って推定されることができ、例えば、継続時間tに比例する増分をこの誤差に加算することによる、この較正における推定誤差であり得ることに留意されたい。予測された誤差間隔は、将来の較正の結果を特徴付けるために使用することができ、特に、前記所定の閾値の値を定義するために使用することができる:例えば、誤差間隔が大きいほど、ジャイロメータを再較正することがより緊急になり、従って、誤差を表すパラメータの値に対して「寛容性」が高くなる(すなわち、所定の閾値はより高い)。さらに、誤差間隔は、推定誤差が大きいときに比例的により速く増加し、これは、非常に低い推定誤差を有する「良好」な計算を長時間保持することが可能となり、一方、「あまり良好でない」較正の再較正をより速く強いる。
【0089】
概して、較正パラメータ上の誤差を表す前記パラメータは、較正パラメータの決定された値に対して計算された、第1/第2の式の値の関数である(それがパラメータの第1の推定の発生であるか第2の推定の発生であるかに従う)。
【0090】
ステップ(c)/(e)の第1の実施形態は、ステップ(b)/(d)で利用可能な大きさのみを使用するので、内的であると言われる。好ましくは、ステップ(b)/(d)からの推定残余(residus)が使用される、すなわち、誤差を表す前記パラメータは、特に、所与の時間間隔にわたる第1/第2の式の値のノルム(例えば、L又はL)、典型的には、
【数29】
又は
【数30】
である。このような場合、ステップ(d)/(e)は、ステップ(b)/(d)と同時に実行することができる。再帰フィルタの場合、一定期間にわたるフィルタのイノベーション(innovation)のノルム(例えば、L又はL)を使用することができる。
【0091】
代替的には、偏差は、正規分布に関連して定量化することができ、すなわち、
【数32】
(又は
【数33】
)の統計値がガウスノイズの統計値に類似しているか否かを、例えば、2より高い次数のモーメントを計算することによって、検査することができる。
【0092】
外的と呼ばれるステップ(c)/(e)の第2の実施形態では、別のタイプの大きさが、推定角速度と比較するために、これらの大きさのいずれかに基づいて、いわゆる基準角速度を計算するような方法で、使用される。
当業者は、そのような基準角速度を様々な種類の大きさから計算する方法を知っており、特に、例えば:
- ハンドル角(物体1が車両の場合)、
- GNSSデータ、例えばGPS(利用可能な場合/利用可能なとき)、
- 走行距離計のデータ、
を使用することが可能である
【0093】
後者の場合、線速度の追加の取得手段10が少なくとも2つの走行距離計からなる場合(なお、物体1が車両の場合)、前記理論的角速度は、車輪の測定速度から実際に得ることができる。特に、後輪が各々走行距離計を備えている場合、アッカーマン差動ジオメトリを仮定すると、物体1の第2の推定角速度は、
【数34】
のタイプの式によって左後輪及び右後輪のそれぞれについての測定速度v、vにリンクされ、dは車輪間の距離であり、誤差を表す前記パラメータは、その結果、特に、所与の時間間隔にわたる
【数35】
のノルム(例えば、L又はL)であり、
(外3)
は、物体1の垂直軸の周りの回転のみに対する角速度である。
【0094】
第3の実施形態によれば、誤差パラメータの推定の第1の発生(ステップ(c))に関して、磁場及び/又は磁場のi次の微分の前記成分の空間勾配全て又は一部、すなわち、∇M又は∇i+1Mを、使用する第2の方程式の次数に従って、極めて簡単に推定することが可能である。
【0095】
実際、この推定は、均一な性質を維持するためにはゼロに近くなければならない。勾配の成分のサブセットの推定は、各非零成分が既に不均一性の発現であるので、実際にはこの特性評価に十分であることが理解される。
【0096】
代替的に又は補足として、この誤差パラメータの推定を改善するため、及び/又は、よりロバストな方法で、かつ、利用可能性を増加させて、好ましい条件(すなわち、定常及び均一)を識別するためのアプローチを開発するために、学習を用いることができる。
【0097】
特に、ニューラルネットワーク、サポートベクトルを用いるマシン、最近傍法、決定木などの学習メカニズムを実装することが可能である。従って、ステップ(b)から(e)の各発生時に、各測定データセットが、(ステップ(b)から(e)の連続した発生が起こるように)漸進的に、且つ許容可能な較正を許容不可能な較正から区別するように自動的に学習するような方法で、誤差を表すパラメータの対応する値で「タグ付けされる」学習ベースを充実させることができる。このように、較正は常に改善されている。
【0098】
運動の推定
【0099】
説明したように、本方法は、有利には、物体1の測定角速度及び/又は、磁場及び/又は磁場のi次の微分の少なくとも2つの成分、及び/又は(手段10による)物体1の任意の測定された線速度、及び、較正パラメータの値、すなわち、再較正後の値に応じて、物体1の運動をデータ処理手段21によって推定するステップ(f)を含む。このステップ(f)は、較正に焦点を当てた図2には示されていないが、並列に連続的に実行することができる。
【0100】
「運動の推定」とは、特に、少なくとも物体1の向き(水平面、すなわち、方位)の推定を意味し、有利には、法線速度の推定を意味する。向きは、典型的には、既知の初期配向からの角速度の積分によって得られる。
【0101】
好ましくは、前記物体1の方位のデータ処理手段21による推定は、物体1の測定角速度及び較正パラメータの値に応じてのみ、すなわちジャイロメトリックデータのみを用いて行われる。要約すると、磁気データは、ジャイロメータ11を較正するために使用され、次いで、方位を推定するためにジャイロメータデータだけが使用される。該当する場合、測定された線速度(オプションの手段10による)は、ステップ(f)において、物体1のグローバル速度を決定するためにのみ使用される。
【0102】
自動運転車両の場合、ステップ(f)は、例えば車両1を所望の目的地に運ぶ、又は車両1を障害物のない軌道に保持することによって車両1を停止させるような方法で、推定された運動に応じた前記車両1のコマンドの生成を含むことができることに留意されたい。
【0103】
機器及び物体
【0104】
第2の態様によれば、本発明は、特に、本方法の実施形態の一又は他を実施するための装置11、20、21及びオプションで10のセットに関する。
【0105】
このセットは、「従来の」物体1に、それを変換するような方法でキットとしてインストールすることができる。代替的に、特に、物体1が車両である場合、これは、車両のナビゲーションのためのデータ処理手段21、並びに追加の取得手段10として使用されるジャイロメータ11及び/又は走行距離計などのセンサを既に備えている自動運転車両であることができる。
【0106】
物体1は、特に、車輪型の車両について特に提案されており、以下を含む:
- 物体1の測定角速度を取得するように構成されるジャイロメータ11;
- 磁場及び/又は磁場のi次の微分の少なくとも2つの成分を取得するように構成される磁気測定手段20;
- 該当する場合、物体1の測定線速度を取得するように構成される追加の取得手段10(有利には、車両の車輪の少なくとも2つに取り付けられ、前記2つの車輪の測定速度を取得するように構成される走行距離計);
- データ処理手段21であって、
〇 物体1の推定角速度並びに磁場及び/又は磁場のi次の微分の成分の少なくとも1つの第1の磁気方程式によって定義される第1の式を最小化するジャイロメータ11の少なくとも1つの較正パラメータの値を決定するように構成され、
・ 物体1の推定角速度は、測定角速度及びジャイロメータ11の較正パラメータの関数であり、
・ 少なくとも1つの第1の磁気方程式は、磁場が磁気測定手段20の周囲で均一かつ定常であると仮定し、
- データ処理手段21は、さらに以下のように構成することができ:
〇 較正パラメータ上の誤差を表すパラメータを推定し:
〇 誤差を表す前記パラメータが所定の閾値より大きい場合、物体1の推定角速度並びに、測定線速度、磁場及び/又は磁場のi次の微分の成分の少なくとも1つの第2の磁気方程式によって定義される第2の式を最小化するジャイロメータ11の少なくとも1つの較正パラメータの値を再決定し、少なくとも1つの第2の磁気方程式は、磁場が磁気測定手段20の周りで定常であることのみを仮定する。
【0107】
上述したように、物体1は、さらに、メモリ22及びインターフェース23、ならびにハンドル角センサ又はGNSS受信機などの他のセンサを含むことができる。
【0108】
さらに、データ処理手段21は、物体1の測定角速度にしたがって、物体1の測定角速度と、及び/又は物体1の測定線速度(該当する場合は、誤差を表す前記パラメータと閾値との比較結果)と、較正パラメータの値とにしたがって、前記物体1の動きを推定するように構成することができる。
【0109】
コンピュータプログラム製品
【0110】
第3の態様及び第4の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様によるジャイロメータ11を較正する方法の実行(処理手段21上)のためのコード命令を備えるコンピュータプログラム製品と、そこでこのコンピュータプログラム製品が見つかるコンピュータ装置の一部(例えば、データ記憶手段22)によって読み取ることができる記憶手段とに関する。
図1
図2