(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】溶融可能および湿潤リンクを有するデバイスの薄膜コーティングパッケージング
(51)【国際特許分類】
H01H 69/02 20060101AFI20241217BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241217BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20241217BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20241217BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01H69/02
B05D7/24 301E
B05D3/02 Z
B05D3/12 Z
B05D7/00 H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021091064
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2024-02-09
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519226506
【氏名又は名称】リテルフューズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユーリー ボリソヴィッチ マトゥス
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ジー. ピネダ
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ゴルボビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ディーパック ネイヤー
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-036775(JP,A)
【文献】特表2000-512066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/02
B05D 7/24
B05D 3/02
B05D 3/12
B05D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不溶性ポリマーおよび可溶性ポリマーを固体形態で混合する段階と、
前記不溶性ポリマーおよび前記可溶性ポリマーを加熱し混合することによって、前記不溶性ポリマーと前記可溶性ポリマーの溶融混合物を作成する段階と、
前記溶融混合物を溶媒に暴露してスラリーを作成する段階と、
前記スラリーをデバイス上に堆積させてコーティングを作成する段階と
を備える、薄膜コーティングを作成する方法
であって、
前記デバイスは、2つの電極の間に溶融可能要素を備えるデバイスであり、更に前記薄膜コーティングが前記溶融可能要素を少なくとも被覆する、方法。
【請求項2】
前記不溶性ポリマーが、ポリアミド、コポリマー、低温高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、PET、可溶性または半可溶性EBA、およびEMAポリマーを備える群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不溶性ポリマーがポリアミドである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記可溶性ポリマーが、可溶性ポリウレタンまたはワックス、ポリアミン酸、およびPVDFを備える群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記可溶性ポリマーが低溶融温度ポリウレタンである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、キシレン、トルエン、アニソール、DMF、およびNMPを備える群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記不溶性ポリマーおよび前記可溶性ポリマーが、40:60~60:40の比で前記溶融混合物中に存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶融混合物および前記溶媒が、溶融混合物3重量部および溶媒7重量部の比で混合される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記不溶性ポリマーおよび前記可溶性ポリマーが、最も高い溶融温度を有する成分の溶融温度まで加熱される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記スラリーが、スピンコーティング、
および滴下コーティングを備える群から選択された方法を使用して、前記デバイス上に堆積される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記薄膜コーティングが誘電特性を有する、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記薄膜コーティングが、前記溶融可能要素が自身の融点に達した後、前記溶融可能要素が前記電極から離れて流動することを可能にする、請求項
1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記薄膜コーティングが厚さ50ミクロン未満である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数の電極と、
前記1つまたは複数の電極を電気的に接合する溶融可能リンクと、
前記1つまたは複数の電極および前記溶融可能リンクを被覆する薄膜コーティングと、を備え、
前記薄膜コーティングが、不溶性ポリマー、可溶性ポリマーおよび溶媒の溶融混合物を備えるスラリーをデバイス上に堆積させることによって形成される
デバイス。
【請求項15】
前記スラリーが、スピンコーティング、
および滴下コーティングを備える群から選択された方法を使用して、前記デバイス上に堆積される、請求項
14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記薄膜コーティングが、前記溶融可能リンクが自身の融点に達した後、前記溶融可能リンクが前記複数の電極から離れて流動することを可能にする、請求項
14または
15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記不溶性ポリマーが、ポリアミド、コポリマー、低温高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、PET、可溶性または半可溶性EBA、およびEMAポリマーを備える群から選択される、請求項
14から
16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記可溶性ポリマーが、可溶性ポリウレタンまたはワックス、ポリアミン酸、およびPVDFを備える群から選択される、請求項
14から
17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記溶媒が、キシレン、トルエン、アニソール、DMF、およびNMPを備える群から選択される、請求項
14から
18のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、回路保護デバイスの分野に関し、特に、ヒューズ、熱保護金属酸化物バリスタ(TMOV)、およびサーマルカットオフデバイス(TCO)に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒューズおよびTMOVは、一般的に、電力源と保護されるべき電気回路の構成要素との間に設置される、一般に知られている回路保護デバイスである。ヒューズおよびTMOVなどのデバイスは、過電流または過電圧条件で溶融する溶融可能リンクを有する。かかるデバイスは、低プロファイルまたはウェハベースのデバイスであってもよく、ディウェッティングに適応する誘電性コーティングで被覆されてもよい。しかしながら、かかるデバイスに対する現在のパッケージングは、その相対厚さにより、堆積させるのが困難である。そのため、現在の誘電性コーティングは高価であり、50μm未満のスケールで堆積させるのが困難である。
【0003】
理想的には、溶融可能リンクのコーティングは3つの評価基準を満たす。第一に、コーティングは誘電特性を有するべきである。特に、コーティングは絶縁体として作用すべきである。第二に、コーティングは、溶融可能リンクがその溶融温度に達したときにリンクが流動するのを制限することなく、溶融可能リンクを被覆することができるべきである。いくつかの現在のコーティングは、溶融可能リンクがその溶融温度に達した後、リンクを適所で保持し、それによって回路が開くのを制限することができる。第三に、被覆は、50μm以下のスケールでコーティングを作成するため、溶液相のときに堆積させることができるべきである。
【0004】
これらのデバイスをコーティングする現在の方法は、3つの評価基準全てを満たすことができない。例えば、一部のポリマー、シリコンポリエステル、およびポリプロピレンは、コーティングとして使用されたとき、誘電特性を有するという第1の評価基準は満たすが、溶融後のリンクの流動を制限することなく溶融可能リンクを被覆するという第2の評価基準を満たすことができない。現在のデバイスはポリアミド族からのポリマーを使用することがあり、これは最初の2つの評価基準は満たすが、溶液相から堆積させ、それによって薄いコーティング層をもたらすことができるという第3の評価基準は満たすことができない。
【0005】
したがって、3つの評価基準全てを満たす溶融可能リンクを有する、低プロファイルおよびウェハベースのデバイスのコーティングを有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0006】
溶融可能リンクを有するデバイスのコーティングは、不溶性ポリマーを可溶性ポリマーと溶融混合する段階と、溶融混合物を溶媒に暴露してスラリーを作成する段階とを含み、スラリーを次に、例えばスピンコーティング、ディープコーティング、滴下コーティングなどの任意の周知の技術を用いて堆積させることができる、方法によって作成されてもよい。本発明にしたがって作成されるコーティングは、内部デバイス上の絶縁層として使用されてもよく、または外部コーティングとして使用されてもよい。
【0007】
このように、ウェハおよび/または非常に小さいデバイス上に作られるデバイスは、高価なパッケージングを排除する薄い誘電性コーティングを有することができる。コーティングは、デバイスの素早い開放を可能にし、デバイスのいずれの露出した金属表面も腐食しないように保護するのにも役立つ、制御されたディウェッティングに適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】溶融可能リンクを有するデバイスの従来技術の例を示す写真図である。
【0009】
【
図2】本発明のコーティングを生成し塗布する方法の段階を示すフローチャートである。
【0010】
【
図3】デバイス上の適所にある本発明の被覆を示す、溶融可能リンクを有するデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の溶液ベースのコーティングは、溶融可能リンクの上に使用するのに適した薄い誘電層を作成する。コーティングは、パッケージングとして役立ち、ヒューズまたはTMOVのための低プロファイルを作成する。誘電膜は、ヒューズの湿潤特性に適応し、50ミクロンのスケールのパッケージング膜を作る。
【0012】
図1は、溶融可能要素を有するデバイスの一部分の写真図である。デバイスは、はんだボール104によってブリッジされた、一般的には銅から作られる金属電極102を有する。はんだボール104は、特定の温度に達すると溶融し、回路を開くように設計される。
図1のデバイスは、本発明のコーティングの利益を得るであろうタイプのデバイスの典型例である。
【0013】
図2は、本発明のコーティングを作成する方法200の段階を示すフローチャートである。段階202で、不溶性ポリマーおよび可溶性ポリマーが組み合わされる。不溶性および可溶性ポリマーは市販されており、ペレットまたはチップの物理的形態で提供される。
【0014】
いくつかの実施形態では、不溶性ポリマーは、ポリアミド、ならびにそれらのコポリマーおよびグラフト材料(例えば、ホットグルー)を備える群から選択されてもよい。他の実施形態では、低温高密度ポリエチレン(HDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)、低Tg(ガラス転移温度)PET、可溶性または半可溶性EBA、EMAポリマー族(ホットグルーの一般用語によって呼ばれる)、ならびに脂肪酸またはロジンと呼ばれる場合が多い木材ピッチが、不溶性ポリマーとして使用されてもよい。好ましい実施形態では、不溶性ポリマーはポリアミドである。不溶性ポリマーは、一般的に、サイズ1/8インチ~1/4インチ(0.32cm~0.64cm)のペレットの形態である。
【0015】
多くの可溶性ポリマーが本発明で使用可能である。いくつかの実施形態では、可溶性ポリマーは、例えば、キシレン、トルエン、もしくはアニソール、または他の任意の可溶性ポリマーなど、DMFまたは芳香族溶媒に可溶性である、可溶性ポリウレタンまたはワックスであってもよい。本発明の他の実施形態では、可溶性ポリマーは、DMFまたはNMPに可溶性である、ポリアミン酸またはPVDFであってもよい。一般に、可溶性ポリマーが、約130℃未満またははんだリンクの融点未満の融点を有し、溶融はんだを拘束せず、アーキングをより良好に抑制しない限り、任意の可溶性ポリマーが使用されてもよい。本発明の好ましい実施形態では、低溶融温度ポリウレタンが可溶性ポリマーとして使用される。可溶性ポリマーは、一般的に、サイズ1/2mm~5mmのチップの形態である。
【0016】
不溶性および可溶性ポリマーは、不溶性対可溶性の比が約75:25で混合されてもよいが、好ましい実施形態では、比は40:60~60:40であろう。
【0017】
段階204で、不溶性および可溶性ポリマーペレットは、熱に暴露することによって溶融されて、溶融混合物が作成される。混合物は、加熱素子および混合ブレードを含む工業用機械、または好ましくは、不溶性および可溶性ポリマーを加熱し混合して溶融混合物を作成し、その後に溶融混合物を、比較的小さい断面を有するワイヤもしくは繊維状に押し出すことができる押出し機によって、溶融され混合されてもよい。
【0018】
不溶性および可溶性ポリマーが溶融する温度は、特定のポリマーの選択に依存するが、一般に、混合物は、高い方の融点を有する材料の温度まで少なくとも加熱されてもよい。他の実施形態では、混合物は、不溶性および可溶性ポリマーの融点の間の温度で溶融されてもよく、混合機の混合ブレードは、混合物の温度を増加させる傾向がある、混合物中の剪断力を作り出す。本発明のいくつかの実施形態では、溶融混合物は、押出し機から出る際に小さいペレットサイズの個片に切断されて、溶融混合物の表面積を増加させてもよい。
【0019】
プロセスの段階206は、溶融混合物を冷却し固化させることができる任意の段階であり、また任意の段階208で、固化した溶融混合物がチップまたはペレットサイズの個片に切断されて、表面積を増加させる。本発明の他の実施形態では、206から208の段階を飛ばしてもよく、溶融混合物は、溶融形態で溶媒中に直接押し出されるかまたは別の方法で入れられてもよい。
【0020】
プロセスの段階210で、溶融混合物は溶媒に暴露され、混合されると最終的にスラリーを作成する。溶融混合物をペレットサイズの個片に切断することによって作られる、溶融混合物の増加した表面積により、スラリーを作成するプロセスがより簡単になる。溶媒は、例えば、キシレン、トルエン、アニソール、DMF(ジメチルホルムアミド)、またはNMP(N-メチルピロリドン)、あるいは可溶性ポリマーを溶解することができる任意の溶媒を備えてもよい。溶媒の選択は可溶性ポリマーの選択に大きく依存する。溶融混合物および溶媒は、およそ溶融混合物3重量部および溶媒約7重量部の比で混合されるが、やはりこれも、ポリマーおよび溶媒の選択に大きく依存する。結果として得られるスラリーは、1cps~約10,000cpsの粘性を有してもよい。
【0021】
段階212で、一旦スラリーが作成されると、内部絶縁層または外部コーティングのどちらかとして、デバイスにコンフォーマルに堆積させてもよい。コーティングは、任意の周知の手段、例えばスピンコーティング、ディープコーティング、滴下コーティングなどによって、塗布されてもよい。
【0022】
図3は、溶融可能リンク302、一般的にははんだボールによって接合された、銅電極304を有する一般的なデバイスを示している。本発明のコンフォーマルコーティングは、図面には306として示されている。
【0023】
本明細書に開示する方法にしたがって作られたコーティングは、背景技術の項に記載した3つの設計評価基準全てを満たす。方法は、絶縁特性を有する誘電性コーティングを作成する。コーティングは、一旦溶融可能要素上にコンフォーマルに堆積されると、溶融可能要素がその融点に達したときだけに溶融可能要素が流動することを可能にする。最後に、コーティングは、厚さ50μmの範囲の薄膜として塗布することができ、そのため、低プロファイルTMOVおよび他のウェハベースのデバイスとともに使用するのに適している。