(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】錠剤カセット
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
A61J3/00 310F
(21)【出願番号】P 2021127301
(22)【出願日】2021-08-03
【審査請求日】2024-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【氏名又は名称】出山 匡
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-289463(JP,A)
【文献】特開2015-012893(JP,A)
【文献】特開2021-036959(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133094(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の錠剤をランダムに収容する錠剤収容空間と、前記錠剤収容空間内の前記複数の錠剤を1錠ずつ落下させる排出口を底壁部に備えた錠剤容器と、
前記底壁部と直交する方向に軸線が延びる回転軸と、
前記回転軸の回転に伴って前記錠剤容器の前記錠剤収容空間内において前記軸線を中心にして回転し、さらに前記錠剤を一つずつ収納して前記排出口に前記錠剤を通過させうる複数の錠剤収納室を有し且つ前記複数の錠剤収納室が前記回転軸の回転方向に並ぶように外周部に設けられているロータを有する錠剤カセットであって、
前記錠剤収容空間内に収納され、前記錠剤収納室内に嵌まり込むことがない形状寸法を有し、しかも前記ロータの回転に伴って、前記錠剤収容空間内を非拘束状態で移動可能な1以上の移動体と、
前記ロータの回転中に、前記1以上の移動体と一時的に係合して前記1以上の移動体を前記錠剤収容空間内で一時的に停止状態にする一時係合部を備えて
おり、
前記移動体には移動中に前記錠剤を損傷しない態様で永久磁石が配置されており、
前記錠剤容器には、前記永久磁石との間に吸引力を発生して、前記移動体を一時的に停止状態にする磁力発生部が設けられており、
前記一時係合部が前記移動体に配置された前記永久磁石と前記磁力発生部によって構成されていることを特徴とする錠剤カセット。
【請求項2】
前記移動体は、長軸と短軸を有し且つ該長軸と短軸に対して対称な非球形形状を有している請求項1に記載の錠剤カセット。
【請求項3】
前記磁力発生部が前記錠剤容器の周壁部に隣接して配置された1以上の永久磁石によって構成されている請求項
1に記載の錠剤カセット。
【請求項4】
前記磁力発生部は、前記錠剤容器の前記周壁部に外側から嵌合される嵌合ユニットとして構成されている請求項
1に記載の錠剤カセット。
【請求項5】
前記移動体の内部には、前記永久磁石が収納されており、前記移動体には該永久磁石を露呈するように形成された孔部が形成されている請求項
1に記載の錠剤カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や薬局等で行われる調剤を自動化するための錠剤フィーダにおいて被駆動部を成す錠剤カセットに関するものであり、詳しくは、錠剤を収容する錠剤容器と錠剤容器の中のロータとを具備していてロータが回転駆動されると錠剤をロータの周囲に整列させながら錠剤容器の排出口から逐次落下させる錠剤カセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の錠剤フィーダは(例えば特許文献1の
図1参照)、給電や制御のために錠剤分包機の引出棚や錠剤分割装置の本体部などに固定して列設される駆動部と、錠剤補充作業の容易化などのため駆動部に対して着脱自在になっている錠剤カセットを用いる。この錠剤フィーダは、多数の錠剤を錠剤カセットの錠剤容器の錠剤収容空間にランダム収納しておき、必要に応じて駆動部を間欠動作または連続動作させて、錠剤カセットから錠剤を一つずつ送り出すようになっている。錠剤カセットは、特許文献2及び3に示されるように、複数の錠剤をランダムに収容する錠剤収容空間と、錠剤収容空間内の複数の錠剤を1錠ずつ落下させる排出口を底壁部に備えた錠剤容器と、底壁部と直交する方向に軸線が延びる回転軸と、回転軸の回転に伴って錠剤容器の錠剤収容空間内において軸線を中心にして回転し、さらに錠剤を一つずつ収納して排出口に錠剤を通過させうる複数の錠剤収納室を有し且つ複数の錠剤収納室が前記回転軸の回転方向に並ぶように外周部に設けられているロータを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-192702号公報
【文献】特開2015-12893号公報
【文献】特開2019-141330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような錠剤カセットでは、錠剤収納容器内の錠剤の数が少なくなってくると、錠剤収納室内に入らずに、いつまでもロータ上に載ったまま回転を続ける錠剤も現れてくる。
【0005】
本発明の目的は、錠剤収納容器内の錠剤の数が少なくなったときに、複数の錠剤収納室内に早期に錠剤を落下させることができる錠剤カセットを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、既存のカセットの構造をそのまま利用して目的を達成することができる錠剤カセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の錠剤カセットは、複数の錠剤をランダムに収容する錠剤収容空間と、錠剤収容空間内の複数の錠剤を1錠ずつ落下させる排出口を底壁部に備えた錠剤容器と、底壁部と直交する方向に軸線が延びる回転軸と、回転軸の回転に伴って錠剤容器の錠剤収容空間内において前記軸線を中心にして回転し、さらに錠剤を一つずつ収納して排出口に錠剤を通過させうる複数の錠剤収納室を有し且つ複数の錠剤収納室が回転軸の回転方向に並ぶように外周部に設けられているロータを有する。本発明の錠剤カセットは、錠剤収容空間内に収納され、錠剤収納室内に嵌まり込むことがない形状寸法を有し、しかもロータの回転に伴って、錠剤収容空間内を非拘束状態で移動可能な1以上の移動体を有する。また本発明の錠剤カセットは、ロータの回転中に、1以上の移動体と一時的に係合して1以上の移動体を錠剤収容空間内で一時的に停止状態にする一時係合部を備えている。
【0008】
本発明においては、ロータの回転に伴って回転する移動体が一時係合部の証で一時的に停止すると、ロータ上には、移動体が停止している位置で後続の複数の錠剤が溜まることになる。その結果、ロータ上に散らばっていた複数の錠剤が集まる。溜まる錠剤の数が多くなると、ロータの回転力が複数の錠剤から一時停止中の移動体に加算されて加わり、遂には、移動体は再度移動を開始する。位置停止していた移動体の後方に溜まった錠剤で錠剤収納室の上方に位置する錠剤は、ロータの回転に伴って錠剤収納室内に落下する。この動作が繰り返されることにより、ロータの上に残っている錠剤は、錠剤収納室内に落下して排出口から排出される。移動体は、非拘束状態で錠剤収容空間内に投入されているため、錠剤収容空間内の錠剤が多い場合には、複数の錠剤に囲まれてあまり動かない状態にある。したがって錠剤の数が少なくなるまでの間に、周囲の錠剤に損傷を与えることがない。また移動体が非拘束状態にあるため、錠剤の数が減るとともに、移動体は下方に移動し、錠剤の数が少なくなったときには、ロータの上面に接触した状態になる。その結果、移動体が一時的に停止しているときには、ロータの上に残っている複数の錠剤に対してストッパとなり、ロータの回転方向の後方に複数の錠剤を効果的に滞留させることができる。
【0009】
移動体は、長軸と短軸を有し且つ該長軸と短軸に対して対称な非球形形状を有しているのが好ましい。このような形状の典型的な形状は、ラグビーボールのような形状であり、このような形状の移動体は、規則的な動きではなく、不規則な動きをする。そのためロータの上に残った錠剤に対しては、移動するごとに、姿勢を変えることになり、ロータの回転方向の後方に複数の錠剤を効果的に滞留させることができる。
【0010】
移動体には移動中に錠剤を損傷しない態様で永久磁石が配置されており、錠剤容器には、永久磁石との間に吸引力を発生して、移動体を一時的に停止状態にする磁力発生部が設けられているのが好ましい。なお磁力発生部が、錠剤容器の周壁部に隣接して配置された1以上の永久磁石によって構成されているのがこのましい。この態様では、一時係合部が移動体に配置された永久磁石と磁力発生部によって構成されることになる。このような一時係止部を配置すると、残留する錠剤に損傷を与えることなく、移動体を定位置に一時的に停止させることができる上、移動体の移動開始条件を磁力の設定によってある程度任意に変更することができる。したがって錠剤の重さに応じて、磁力を変えて、効果的な一時停止期間を設定することができる。
【0011】
磁力発生部は、錠剤容器の周壁部に外側から嵌合される嵌合ユニットとして構成されていてもよい。このようにすると既存の錠剤カセットの錠剤容器にこの嵌合ユニットを嵌合し、移動体を錠剤容器内に投入するだけで、本発明を実施することができる。そのため新たに専用の錠剤カセットを購入することなく、既存の錠剤カセットを利用して、本発明を実施できるので、経済的である。
【0012】
また移動体の内部には、永久磁石が収納されており、移動体にはこの永久磁石を露呈するように形成された孔部が形成されていてもよい。このようにすると、孔部を通して、磁気吸引力を作用させることができるので、安定した動作を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態の錠剤カセットの蓋部を除いた外観斜視図である。
【
図4】嵌合ユニット以外の部品を透明なものとして示した錠剤カセットの斜視図である。
【
図5】蓋部を取り外したの錠剤カセットとその装着先の駆動部の要部の縦断面図である。
【
図7(A)】移動体の作用を説明するために用いる図である。
【
図7(B)】移動体の作用を説明するために用いる図である。
【
図7(C)】移動体の作用を説明するために用いる図である。
【
図7(D)】移動体の作用を説明するために用いる図である。
【
図7(E)】移動体の作用を説明するために用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照して、本発明の錠剤カセットの実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、本発明の一実施の形態の錠剤カセット1の蓋部を除いた外観斜視図であり、
図2は錠剤カセットの正面図である。この実施の形態の錠剤カセット1は、既存の錠剤カセットの錠剤容器3の周壁部に後述する嵌合ユニット7を嵌合したものである。
図3には、後に詳しく説明する嵌合ユニット7の斜視図を示してある。
図4は、嵌合ユニット7以外の部品を透明なものとして描いた斜視図であり、
図5は蓋部を取り外した本実施の形態の錠剤カセット1とその装着先の駆動部2の要部の縦断面図である。
【0016】
錠剤カセット1は、錠剤容器3は、容器本体31に、複数の錠剤をランダムに収容する錠剤収容空間32と、錠剤収容空間32内の複数の錠剤を1錠ずつ落下させる排出口33を底壁部34に備えている。錠剤容器3内には、ロータ4が配置されている。ロータ4は、錠剤容器3の容器本体31の底壁部34と直交する方向に軸線が延びる回転軸41と、回転軸41の回転に伴って錠剤容器3の錠剤収容空間32内において軸線を中心にして回転するロータ本体42を備えている。そして、錠剤Tを一つずつ収納して排出口33に錠剤を通過させ得る複数の錠剤収納室43が、回転軸41の回転方向(ロータ本体42の周方向)に並ぶようにロータ本体42の外周部に設けられている。
【0017】
錠剤容器3は、プラスチックの射出成型などで量産される箱形の容器本体31を主体にしたものである。容器本体31の内部空間が多数の錠剤Tをランダム収容しうる錠剤収容空間32になっており、錠剤補充時等には図示しない蓋部により錠剤収容空間32を開閉する。容器本体31の外側には持ち運び用の把手35が設けられており、容器本体31の下部が駆動部2に対する脱着部36になっている。なお、
図5において駆動部2として示したものは、錠剤カセット1を着脱する対象とされるベースの上端部分であり、錠剤カセット1には含まれない。
【0018】
また、錠剤容器3には、容器本体31の底壁部34のうち一カ所に(
図5では底壁部34の左側のエリアに)、排出口33が貫通形成されている。ロータ4が回転軸41を中心として回転して、錠剤収納室43内に収納された錠剤が排出口33の上に運ばれてくると、その錠剤は排出口33を通して下方へ落下する。さらに、
図4に示すように、錠剤容器3は、容器本体31に仕切ユニット50を着脱できる構造を有している。そして、仕切保持部51を容器本体31に外側から装着して、仕切作用部52を容器本体31のスリットから錠剤収容空間32へ差し込むと、仕切作用部52が排出口33の上方に位置する。この状態では、仕切作用部52より下の錠剤は落下するが、仕切作用部52よりも上の錠剤の落下は阻止される。その結果、錠剤Tの落下は1つずつ行われる。なおこの構造は、特開2019-141330号公報に詳しく説明されているので説明を省略する。
【0019】
また
図4に示すように、錠剤容器3は、ベルト保持部53も容器本体31に対して外側から装着できる又は着脱できる構造を有している。ベルト保持部53は、例えば丸紐状のゴム製で伸縮性を有する無端ベルト54を張った状態で保持するものである。仕切ユニット50を容器本体31に装着して、無端ベルト54を容器本体31のスリットから錠剤収容空間32へ差し込むと、無端ベルト54が排出口33及び仕切作用部52の上方に位置する。なおこの構造は、特開2015-12893号公報に詳しく説明されているので説明を省略する。
【0020】
ロータ4は(
図2乃至
図4参照)、従来品と同様に(例えば特許文献1~3参照)、回転軸41と一緒に回転可能な状態で錠剤容器3に収められている。ロータ本体42の外周部には、周方向に所定の間隔を開けて一体に形成されて径方向に延びる複数の隔壁板44が設けられている。隣り合う2枚の隔壁板44の間には、錠剤収容空間32の底壁部34側に複数の錠剤収納室43が形成されている。ロータ4は、各錠剤収納室43の中に落ち入った錠剤を回転時に錠剤収納室43と共に排出口33の上に移送する。
【0021】
なおロータ4は、回転軸41の突き出し部分を除いた大部分が、容器本体31の内部の錠剤収容空間32の中に位置する内挿部分になっている。回転軸41は、錠剤容器3の底壁部34の貫通穴37に挿入されて、底壁部34を回転可能な状態で貫通する。回転軸41の下端部が、底壁部34から外へ突き出ていて駆動部2の回転駆動軸21と嵌合する。ロータ4の上面45は、中央部位が高くそこから周縁部へなだらかに下る傾斜面が形成された形状を有しており、上面45に接触した錠剤Tは径方向外側に向けて滑落する。
【0022】
各隔壁板44には、3本のスリット47が上下方向に間隔をあけて形成されている。スリット47は、それぞれ回転方向の両方向と径方向の外側に開口している。中央のスリット47には、ロータ4が回転しているときに、前述の仕切作用部52が入る。スリット47は、ロータ4が回転しているときに、仕切作用部52がスリット47の内部に入るが、スリット47と干渉しない寸法を有している。
【0023】
図5に示すように、本実施の形態の錠剤カセット1では、錠剤収容空間32内に移動体8が収納されている。移動体8は、錠剤収納室43内に嵌まり込むことがない形状寸法を有し、しかもロータ4の回転に伴って、錠剤収容空間32内を非拘束状態で移動可能である。また錠剤カセット1には、ロータ4の回転中に、移動体8と一時的に係合して移動体8を錠剤収容空間
32内で一時的に停止状態にする一時係合部の一部を構成する嵌合ユニット7を備えている。
【0024】
図6に示すように、ラグビーボール状の移動体8は、長軸LAと短軸SAを有しており、且つ長軸LAと短軸SAに対して対称な非球形形状を有している。具体的には、移動体8は、長軸LAが延びる方向の両端に向かうに従って径寸法が小さくなり、短軸SAが通る領域の径寸法は長軸LAが延びる方向に所定の範囲で一定になる形状を有している。移動体8の内部には、移動中に錠剤を損傷しない態様で永久磁石81が配置されている。そして移動体8には永久磁石81を露呈するように形成された孔部82が形成されている。移動体8は、錠剤に損傷を与えないようなゴム等の軟質材料により、永久磁石81をインサートとしてインサート成形されている。そして錠剤容器3の容器本体31の下側周壁部31Aには、移動体8中の永久磁石81との間に吸引力を発生して、移動体8を一時的に停止状態にする磁力発生部としての3つの永久磁石71を備えた嵌合ユニット7が嵌合されている。
図3に示すように、嵌合ユニット7は、3つの永久磁石71を保持して、容器本体31の下側周壁部31Aを通して、錠剤収容空間32内に磁場を形成する磁石保持部72と、磁石保持部72を下側周壁部31Aに押し付けるために、下側周壁部31Aの外周面を挟持する一対のホールド部73,73とを備えている。磁石保持部72の下部領域には、横長の開口孔74が形成されている。この開口孔74は、嵌合ユニット7の軽量化に寄与し、容器本体31が透明であれば、容器本体31の内部の状態を確認する際に利用できる。しかしながらこの開口孔74は、必ず必要なものではない。磁力発生部を錠剤容器3の周壁部に外側から嵌合される嵌合ユニット7により構成すると、既存の錠剤カセットの錠剤容器にこの嵌合ユニット7を嵌合し、移動体8を錠剤容器内に投入するだけで、本発明を実施することができる。
【0025】
以下、移動体8と一時係合部(永久磁石81,71)を設けた本実施の形態の錠剤カセットの動作について、
図7(A)乃至(E)を参照して説明する。なお
図7(A)乃至(E)には、動作の説明に必要な部品だけを表示してあり、これらの図には
図1乃至
図6に示した部材と同じ部材には、
図1乃至
図6に付した符号と同じ符号を付してある。
図7(A)は、容器本体31の錠剤収容空間32内の錠剤Tが少なくなっている状況を示している。このような状況になると、残った錠剤Tは移動し難くなって、どうしても錠剤収納室43内にスムーズに入り難い、すなわち錠剤収納室43内に落下し難い状態になる。このようなときに移動体8が、錠剤収容空間32内に入っている、残った錠剤Tと一緒にロータ4の上面45上に載った状態でロータ4が回転する[
図7(B)]。例えば、
図7(C)に示すように、移動体8がゴム製で伸縮性を有する無端ベルト54に一時的に引っかかて一時的に停止したり、
図7(D)に示すように、移動体8内の永久磁石と磁石保持部72内の永久磁石71[
図3参照]とが磁力で引き合って、移動体が一時的に停止状態になると、移動体8が停止している位置で後続の複数の錠剤Tが溜まる。その結果、ロータ4の上面45に散らばっていた複数の錠剤が集まる。溜まる錠剤Tの数が多くなると、ロータ4の回転力が複数の錠剤Tから一時停止中の移動体8に加算されて加わり、遂には、移動体8は再度移動を開始する。そして位置停止していた移動体8の後方に溜まった錠剤Tで錠剤収納室43の上方に位置する錠剤Tは、ロータ4の回転に伴って錠剤収納室43内に落下する。この動作が繰り返されることにより、ロータ4の上面45上に残っている錠剤Tは、錠剤収納室43内に落下して排出口33(
図5)から排出される。そして
図7(E)に示すように、移動体8が磁気吸引力によって、磁石保持部72近傍で停止状態になると、最後の錠剤Tは移動体に当たって最終的に錠剤収納室43内に落下する。
【0026】
移動体8は、非拘束状態で錠剤収容空間32内に投入されているため、錠剤収容空間32内の錠剤が多い場合には、複数の錠剤に囲まれて移動体8はあまり動かない状態にある。したがって錠剤の数が少なくなるまでの間に、周囲の錠剤に損傷を与えることがない。また移動体8が非拘束状態にあるため、錠剤の数が減るとともに、移動体8は下方に移動し、錠剤の数が少なくなったときには、ロータ4の上面45に接触した状態になる。その結果、前述のうに、移動体8が一時的に停止しているときには、ロータ4の上に残っている複数の錠剤Tに対してストッパとなり、ロータ4の回転方向の後方に複数の錠剤を効果的に滞留させることができて、錠剤を錠剤収納室43内に落下させることができる。
【0027】
本実施の形態のように、一時係合部を移動体8に配置された永久磁石81と磁力発生部の永久磁石71によって構成すると、残留する錠剤に損傷を与えることなく、移動体8を定位置に一時的に停止させることができる上、移動体8の移動開始条件を磁力の設定によってある程度任意に変更することができる。したがって錠剤Tの重さに応じて、磁力を変えて、効果的な一時停止期間を設定することができる。また、このような形状の移動体8は、規則的な動きではなく、不規則な動きをする。そのためロータの上に残った錠剤Tに対しては、移動するごとに、姿勢を変えることになり、ロータ4の回転方向の後方に複数の錠剤Tを効果的に滞留させることができる。
【0028】
さらに移動体8の形状は、上記実施の形態に限定されるものはなく、非対称な外形を有するものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、錠剤収納容器内の錠剤の数が少なくなったときに、複数の錠剤収納室内に早期に錠剤を落下させることができる。
【符号の説明】
【0030】
1…錠剤カセット、2…駆動部、3…錠剤容器、31…容器本体、32…錠剤収容空間、33…排出口、34…底壁部、4…ロータ、41…回転軸、42…ロータ本体、43…錠剤収納室、44…隔壁部、45…上面、50…仕切ユニット、51…仕切保持部、52…仕切作用部、53…ベルト保持部、54…無端ベルト、7…嵌合ユニット、71…永久磁石、8…移動体、81…永久磁石、T…錠剤。