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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】内容物噴出ユニットおよび噴出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/32 20060101AFI20241217BHJP
   B65D 83/68 20060101ALI20241217BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B65D81/32 R
B65D83/68 100
B05B9/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021545526
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2020033803
(87)【国際公開番号】W WO2021049461
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2019167359
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 博史
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-537403(JP,A)
【文献】特表平07-508248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/32
B65D 83/68
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の内容物を上端から噴出する第1噴出筒と、第2の内容物を上端から噴出する第2噴出筒と、前記第1噴出筒の側面に設けられ、前記第1噴出筒の内部に前記第1の内容物を流入させる第1流入口と、前記第2噴出筒の側面に設けられ、前記第2噴出筒の内部に前記第2の内容物を流入させる第2流入口と、前記第1噴出筒の外周に配置され、前記第1流入口を開閉可能に塞ぐ第1の弁と、前記第2噴出筒の外周に配置され、前記第2流入口を開閉可能に塞ぐ第2の弁と、前記第1流入口に前記第1の内容物を導く第1の流路と、前記第2流入口に前記第2の内容物を導く第2の流路とを有し、
前記第1噴出筒は、前記第2噴出筒の上部の外周側に、前記第2噴出筒と同心円状に配置され、前記第1流入口および第1の弁は、前記第2流入口および第2の弁よりも前記第2噴出筒の軸方向の上側に位置し、
前記第2の弁の上側には、前記第1の流路を流れて前記第1流入口に供給される前記第1の内容物が前記第2の弁の上面に接するのを遮る第3の弁が配置され、
前記第1の流路は、前記第1噴出筒の外側に、前記第1噴出筒と同心円状に配置された第1筒状部を含み、前記第1筒状部の内周面は、前記第1の弁の外周面を支持し、前記第1筒状部と前記第1噴出筒の外周面との間を第1の内容物を通過させて前記第1流入口に到達させる構造であり、
前記第2の流路は、少なくとも一部が前記第1の流路の前記第1筒状部の内側に配置された第2筒状部を含み、前記第2筒状部の内周面は、前記第2の弁の外周面を支持し、前記第2筒状部と前記第2噴出筒の外周面との間を第2の内容物を通過させて前記第2流入口に到達させる構造であり、
前記第3の弁は、前記第2筒状部の内周面の上端と、前記第2噴出筒の外周面との間を塞ぐように配置され
前記第3の弁は、内周が前記第2噴出筒の外周面に接し、外周が前記第2筒状部の内周面に接する環状であって、内周が外周よりも軸方向の上側に位置し、半径方向の断面が、傾斜または湾曲または屈曲した形状であることを特徴とする内容物噴出ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の内容物噴出ユニットであって、前記第2の弁は、弾性のある有機高分子により構成されていることを特徴とする内容物噴出ユニット。
【請求項3】
請求項に記載の内容物噴出ユニットにおいて、前記第1の弁と前記第3の弁との間には、前記第1の弁に対する前記第3の弁の軸方向の間隔を維持するスペーサが配置されていることを特徴とする内容物噴出ユニット。
【請求項4】
請求項に記載の内容物噴出ユニットにおいて、前記第1噴出筒と前記第2噴出筒は、一体に構成され、前記第1筒状部および第2筒状部は、一体に構成され、前記第1および第2噴出筒を、前記第1および第2筒状部に対して軸方向に押し下げることにより、前記第1および第2の弁から前記第1および第2流入口がずれて開放されることを特徴とする内容物噴出ユニット。
【請求項5】
第1の内容物を収容する第1の空間と、第2の内容物を収容する第2の空間と、前記第1および第2の内容物を噴出する内容物噴出ユニットとを備えた噴出容器であって、
前記内容物噴出ユニットは、請求項1ないしのいずれか1項に記載の内容物噴出ユニットであることを特徴とする噴出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内において分離されて収容されている内容物を噴出時に混合する内容物噴出ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、染毛剤用の噴出容器などのように、複数種類の内容物(染料と酸化剤など)をそれぞれ収容袋に収容し、噴出時にステムのノズルの先端で混合する噴出容器が知られている(特許文献1および2)。これらの噴出容器は、噴出する複数種類の内容物が混合されると化学反応を生じるものであっても、化学反応を生じさせずに噴出容器内でそれぞれ保持できるため、噴出容器内で変質したり、反応物が容器内部の詰まりを引き起こしたりするのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8505775号公報
【文献】特開2004-244109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示されている噴出容器では、2種類の内容物を収容袋からステムのノズルの先端まで導く2つの流路を開閉するために、ステムを押下した場合に開放される1以上の弁を用いているが、内容物の噴出時に、2つの流路を流れる2種類の内容物が、直接または隙間を通って一つの弁の上面と下面にそれぞれ到達しうる個所がある。また、2種類の内容物を収容袋にそれぞれ充填する際には、2種類の内容物をそれぞれ圧力をかけてノズルの先端に供給し、2種類の流路をそれぞれ逆流させる方法が用いられるが、その場合も2種類の内容物が直接または隙間を通って一つの弁の上面と下面にそれぞれ到達しうる。
【0005】
一般的に、ステムの弁は、ラバー等の弾性のある有機高分子で構成されているため内容物に接触することにより膨潤する。このとき、2種類の内容物が、一つの弁の上面と下面にそれぞれ到達した場合、2種類の内容物の性質の違いから、弁の上面の膨潤量と、下面の膨潤量とが異なり、弁が変形して、弁の動きが設計時に想定した動きとは異なってしまうことが生じ得る。
【0006】
膨潤により変形した弁では2つの流路の開閉がうまくいかず、2種類の内容物が漏れ出たり、片方の内容物が噴出できない、という現象が生じ得る。
【0007】
本発明の目的は、2以上の内容物を混合して噴出する噴出ユニットであって、弁に2以上の内容物が接触するのを防ぎ、信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の内容物噴出ユニットは、第1の内容物を上端から噴出する第1噴出筒と、第2の内容物を上端から噴出する第2噴出筒と、第1噴出筒の側面に設けられ、第1噴出筒の内部に第1の内容物を流入させる第1流入口と、第2噴出筒の側面に設けられ、第2噴出筒の内部に第2の内容物を流入させる第2流入口と、第1噴出筒の外周に配置され、第1流入口を開閉可能に塞ぐ第1の弁と、第2噴出筒の外周に配置され、第2流入口を開閉可能に塞ぐ第2の弁と、第1流入口に第1の内容物を導く第1の流路と、第2流入口に第2の内容物を導く第2の流路とを有する。第1噴出筒は、第2噴出筒の上部の外周側に、第2噴出筒と同心円状に配置され、第1流入口および第1の弁は、第2流入口および第2の弁よりも第2噴出筒の軸方向の上側に位置する。第2の弁の上側には、第1の流路を流れて第1流入口に供給される第1の内容物が第2の弁の上面に接するのを遮る第3の弁が配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第3の弁を配置したことにより、第1の内容物が第2の弁の上面へ接触するのを遮ることができるため、第2の弁には、第2の内容物のみが接触し、第1の内容物は接触しないため、第2の弁の膨潤による変形を防ぎ、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)、(b)はそれぞれ、実施形態の内容物噴出ユニット10が装着された噴出容器20の非噴出時、および、噴出(または充填)時の断面図である。
図2】(a)、(b)は、図1(a)、(b)の拡大図である。
図3】実施形態1の内容物噴出ユニット10Aの仕切弁60の斜視図である。
図4】実施形態1の仕切弁60に加わる力の説明図。
図5】実施形態1においてブッシュを備えない構成の仕切弁60の拡大断面図。
図6】(a)実施形態2の内容物噴出ユニット10Bの断面図、(b)仕切弁の拡大断面図。
図7】(a)実施形態3の内容物噴出ユニット10Cの断面図、(b)仕切弁の拡大断面図。
図8】(a)実施形態4の内容物噴出ユニット10Dの断面図、(b)仕切弁の拡大断面図。
図9】(a)実施形態5の内容物噴出ユニット10Eの断面図、(b)図9(a)の一部分(R1)の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態の内容物噴出ユニットについて説明する。
【0012】
まず、図1(a)、(b)、および、図2(a),(b)を参照して、内容物噴出ユニット10の主な構成例と動作例について説明する。図1(a)、(b)は、内容物噴出ユニット10が装着された噴出容器20の静止時および噴出時の断面図であり、図2(a)、(b)は、その拡大図である。
【0013】
噴出容器20は、第1の内容物Aと第2の内容物Bを別々に収容する2つの空間(ここではパウチ28、29)と、パウチ28、29を収納し内部に圧縮ガスが充填されている容器体21と、容器体21の上部に備えられたマウンテンカップ22に装着された内容物噴出ユニット10とを備えている。
【0014】
内容物噴出ユニット10は、ステム30を含み、ユーザがステム30の先端を押下すると、容器体21のパウチ28に収容されている内容物Aと、パウチ29に収容されている内容物Bが同時に噴出される。なお、以下の説明において、上下方向は、容器体21の底部を下側、マウンテンカップ22が取り付けられている側を上側という。
【0015】
内容物噴出ユニット10は、ステム30として、第1の内容物Aを上端の第1噴出口31aから噴出する第1噴出筒31と、第2の内容物Bを上端の第2噴出口32aから噴出する第2噴出筒32とを備えている。第1噴出筒31は、第2噴出筒32の上部の外周側に、第2噴出筒32と同心円状に中心軸が一致するように配置されている。第1噴出筒31の側面には、第1噴出筒31の内部に第1の内容物Aを流入させる第1流入口33が設けられている。第2噴出筒32の側面には、第2噴出筒32の内部に第2の内容物Bを流入させる第2流入口34が設けられている。ここでは、一例として、第1流入口33および第2流入口34は、それぞれ第1噴出筒31および第2噴出筒32の周方向の2か所に設けられている。
【0016】
第1噴出筒31の外周には、第1流入口33を開閉可能に塞ぐ第1の弁(第1ステムラバー)40が配置されている。第2噴出筒32の外周には、第2流入口34を開閉可能に塞ぐ第2の弁(第2ステムラバー)50が配置されている。
【0017】
第1流入口33および第1の弁40は、第2流入口34および第2の弁50よりも第2噴出筒32の軸方向の上側に配置されている。
【0018】
また、ステム30の外側には、第1流入口33に第1の内容物Aを導く第1の流路71と、第2流入口34に第2の内容物Bを導く第2の流路72とを有するハウジング70が配置されている。
【0019】
ここで、本実施形態では、第2の弁50の上側に、第3の弁(以下、仕切弁と呼ぶ)60を配置している。仕切弁60は、第1の流路71を流れて第1流入口33に供給される第1の内容物Aが、第2の弁50の上面に接するのを遮る。これにより、第2の弁50には、第2の流路72を流れる第2の内容物Bのみがその下面に接触し、上面には第1の内容物Aが接触しないため、第2の弁50の上面が第1の内容物Aに接触して膨潤することを防止することができる。よって、第2の弁50が、例えば、弾性のある有機高分子により構成され、内容物との接触により膨潤する性質を有し、第2の弁50の下面が第2の内容物Bとの接触により膨潤した場合であっても、上面が第1の内容物Aによって異なる量で膨潤することはない。これにより、第2の弁50の形状と動きを設計時の形状と動きに維持することができ、第2流入口34を信頼性高く開閉することができる。
【0020】
例えば、第1の流路71は、第1噴出筒31の外側に、第1噴出筒31と同心円状に配置された第1筒状部71aを含むハウジング70によって構成とすることができる。第1筒状部71aの内周面は、第1の弁40の外周面を支持する。第1の内容物Aは、第1筒状部71aと第1噴出筒31の外周面との間を通過して第1流入口33に到達する。
【0021】
一方、第2の流路72は、少なくとも一部が第1の流路71のハウジング70の内側に配置された第2筒状部72aを含む構成とすることができる。第2筒状部72aの内周面は、第2の弁50の外周面を支持する。第2の内容物Bは、第2筒状部72aと第2噴出筒32の外周面との間を通過して第2流入口34に到達する。
【0022】
このような構成の場合、仕切弁60は、第2筒状部72aの内周面の上端と、第2噴出筒32の外周面との間を塞ぐように配置する。仕切弁60の形状は、第2の弁50の上面を覆って、第2の弁50に第1の内容部Aが接するのを防止できる形状であればどのようなものであってもよい。具体的な仕切弁60の形状例については、後述する実施形態1以降において説明する。
【0023】
また、第1の弁40と仕切弁60との間には、第1の弁40に対する仕切弁60の軸方向の間隔を維持するスペーサ(ブッシュ)65が配置されていることが望ましい。
【0024】
第1の流路71は、パウチジョイント81により、第1パウチ28に接続されている。第2の流路72は、パウチジョイント82により第2パウチ29に接続されている。
【0025】
第1噴出筒31と第2噴出筒32は、本実施形態では、一体となってステム30を構成している。ステム30の下部には、スプリング79が配置されている。
【0026】
[動作の概要]
<噴出時の各部動作>
ここで、内容物噴出ユニット10がパウチ28、29に収容された内容物A、Bを噴出する際の動作について簡単に説明する。
【0027】
ユーザがステム30を押下しておらず、噴出操作がなされない状態(以下、静止状態という)において、内容物噴出ユニット10は、図1(a)、図2(a)に示すように、ステム30がスプリング79により最も上部に押し上げられた状態となっている。
【0028】
容器体21の内部には、圧縮ガスが充てんされ、大気圧よりも高圧になっており、パウチ28、29は押圧されている。第1の弁40が第1流入口33を閉塞し、かつ第2の弁50が第2流入口34を閉塞しているため、パウチ28内の内容物Aとパウチ29内の内容物Bは、パウチ28、29が押圧されていても、それぞれステム30の内部に流入できないが、内容物Aはハウジング70の第1流路71の上端まで到達して仕切弁60の上面と第1の弁40の下面に接している。また内容物Bは、第2の流路72の上端まで到達して第2の弁50の下面に接している。
【0029】
このような静止状態からユーザがステム30を押下すると、図1(b)に示すように、ステム30は、第1の弁40、第2の弁50および仕切弁60に接触しながら軸方向の下方向に移動(摺動)する(矢印Y1、変位量h1)。ステム30の下降に伴って、第1流入口33と第2流入口34はそれぞれ第1の弁40と第2の弁50よりも下部に移動し、第1流入口33、第2流入口34が同時に開かれる。第1流入口33と第2流入口34が開いたことにより、内容物A、Bがそれぞれ第1流入口33、第2流入口34からステム30内に流入する。
【0030】
内容物Aは第1流入口33から第1噴出筒31内に流入後、第1噴出筒31の上端に到達し、第1噴出口31aから噴出される。内容物Bは、第2流入口34から第2噴出筒32内に流入後、第2噴出筒32の上端に到達し、第2噴出口32aから噴出される。
【0031】
このとき、内容物A、Bがステム30の押下時に接する弁は、静止状態に接する弁と同じである。すなわち、内容物Aは仕切弁60の上面と第1の弁40の下面に接し、内容物Bは第2の弁50の下面に接する。
【0032】
ユーザがステム30の押下をやめると、スプリング79がステム30を押し上げて(矢印Y2)、第1の弁40が第1流入口33を閉塞し、第2の弁50が第2流入口34を閉塞する静止状態に戻る。第1流入口33と第2流入口34の閉塞により、内容物A、Bの噴出が止まる。
【0033】
<充填時の動作>
噴出容器20内のパウチ28,29に内容物A,Bを充填する方法としては、ステム30を押下した状態で、ステム30の先端の第1および第2の噴出口からそれぞれ内容物A、Bをパウチ28,29に向かって注入する方法を用いることができる。すなわち、噴出筒31、32の噴出口31a、32a側から内容物A,Bを注入し、噴出時とは逆方向に内容物噴出ユニット1内を流して、内容物A、Bをそれぞれパウチ28、29内に注入する。この場合の内容物A、Bの流れについて以下説明する。
【0034】
ステム30が押下された状態では、第1の弁40は第1流入口33を開放し、第2の弁50は第2流入口34を開放している。第1流入口33は第1の弁40よりも下部に位置しており、第2流入口34は第2の弁50よりも下部に位置している。
【0035】
このような状態で噴出筒31、32の噴出口31a、32a側から、容器体21内に充填されているガスの圧力よりも高い圧力で内容物A、Bを注入する。
【0036】
第1の噴出口31aから注入された内容物Aは、噴出筒31内を通って第1流入口33側に向かい、第1流入口33からステム30の外部の第1の流路71に出る。第1の流路71に出た内容物Aは、第1の流路71を通って下方に進み、パウチ28内に収容される。
【0037】
第1の流路71内を通る内容物Aは、一部が第1の弁40の下面や仕切弁60の上面に触れる。内容物Aは、高圧で注入されるため、仕切弁60は、内容物Aによってステム30側に押し付けられ、仕切弁60による内容物Aを第2の弁50に触れないようにシールすることができる。そのため内容物Aは、仕切弁60の下面や第2の弁50に到達することはない。
【0038】
一方、第2の噴出口32aから注入された内容物Bは、噴出筒32内を通って第2流入口34からステム30の外部の第2の流路72に出る。第2の流路72に出た内容物Bは、さらに下方に進み、パウチ29内に収容される。第2の流路72に出た内容物Bの一部は、第2の弁50の下面に触れる。内容物Bは、高圧で注入されるが、第2の弁50がステム30の外周に接しているため、第2の弁50よりも上部に位置する仕切弁60や第1の流路71には到達しない。
【0039】
以上のようにユーザが内容物噴出ユニット10では、ステムが押下されていない状態と押下されている状態のいずれにおいても、仕切弁60が第1の内容物Aの第2の弁50への接触を防ぐ。すなわち内容物噴出ユニット10では、第1の弁40には第1の内容物Aのみが接触し、かつ第2の弁50には第2の内容物Bのみが接触する。これにより、1つの弁に複数種類の内容物が触れることによる弁の上面と下面の膨潤量の差から生じる弁の変形を防ぎ、複数種類の内容物の噴出タイミングのずれを防ぐことができる。
【0040】
以下、実施形態1~5により、内容物噴出ユニットの具体的な構成と動作を説明する。以上で説明した内容物噴出ユニット10の構成及び動作は以下の各実施形態の内容物噴出ユニットにおいて共通するものであり、以下、上述した構成及び動作では説明を省略した点について説明する。
【0041】
(実施形態1の内容物噴出ユニット10A)
実施形態1の内容物噴出ユニット10Aについて詳しく説明する。実施形態1の内容物噴出ユニット10Aは、図3に示すように、傾斜した筒部61と、筒部61の下端に接続された円環部62とを備えた仕切弁60を用いる。筒部61は、上端の径が下端の径よりも小さくなるように傾斜しており、上端の内径は、ステム30の外側面に接するように設計されている。また、円環部62の外径は、第2の流路72を構成する筒部の上部(固定筒部73)の内側面に接するように設計されている。
【0042】
また、本実施形態では、仕切弁60は、円環部62の下面が、第2の弁50の上面と接するように配置されている。
【0043】
このように、仕切弁60として、側面が傾斜した筒部61を有するものを用いることにより、第1の内容物Aの噴出時または充填時に、仕切弁60の上方の流路を第1の内容物Aが流れ、仕切弁60の上面に第1の内容物Aが到達すると、図4のように、第1の内容物Aから仕切弁60に対して、四方八方に押圧する力が加わる。この押圧力により、仕切弁60の内周端面(上端)はステム30に対して押し付けられ、外周端面は、固定筒部73に押し付けられる。これにより、仕切弁60によって第2の弁50を効果的にシールすることができ、第1の内容物Aが第2の弁50に到達するのを遮る高い効果が得られる。
【0044】
図1(a)、図2(a)に示すように、第1の弁40の下面と仕切弁60との間には、これらの間に挟まれて、仕切弁60を第2の弁50の上面に押し付けるスペーサ(ブッシュ)65が配置されている。
【0045】
ブッシュ65は、図1(a)、図2(a)に示すように、ステム30を囲む位置に配置されている円筒部65aと、円筒部65aの上部の内側に設けられたリブ65bとを備えている。円筒部65aは、第1の弁40の下面と仕切弁60との間に挟まれ、すなわち、円筒部65aの上端は、第1の弁40の下面に接し、下端は仕切弁60の外周の円環部62の上面に接している。これにより、ブッシュ65の円筒部65aの下端は、仕切弁60の円環部62を押し下げて、仕切弁60を第2の弁50の上面に押し付けている。
【0046】
リブ65bは、円筒部65aの内側に設けられ、ステム30の外周に接触することにより、ステム30の中心軸に対して、円筒部65aの径方向の位置ずれを抑制する位置決め部材として機能する。すなわち、リブ65bがステム30の外周に接することにより、円筒部65aの中心軸が、常にステム30の中心軸から所定範囲内に位置する。ブッシュ65の円筒部65aの形状は、円筒に限られるものではなく、上端が第1の弁40の下面、下端が仕切弁60の上面にそれぞれ接して、仕切弁60を押し下げる力を加える構造であればどのような形状でもよい。例えば、円筒部65aに1以上のスリットが設けられていてもよい。また、リブ65bは、周方向に所定の間隔で配置されていてもよいし、円筒形状であってもよい。
【0047】
ここで、ハウジング70の形状について説明する。ハウジング70は、第1の弁40、ブッシュ65、仕切弁60および第2の弁50の外周を覆う筒体である。ハウジング70の上端に、第1の弁40が配置されており、第1の弁40は、ハウジング70の上端の開口を閉じて開口から内容物が流出しないようにしている。
【0048】
ハウジング70は、その下部に、二股に分かれた筒部71,72を有している。一方の筒部71aにはパウチジョイント81が装着され、他方の筒部72aにはパウチジョイント82が装着されている。
【0049】
第2の流路72の筒状部72aの上部には、図1(a),図2(a)に示すように、第2の弁50と仕切弁60の外周部を固定する上述の固定筒部73が配置されている。固定筒部73は、その上端が、仕切弁60の円環部62の上端と同等以上の位置にくるような高さを有している。
【0050】
なお、ステム30の第1噴出筒31の上端は、第2噴出筒32の上端に対して異なる高さであることが好ましい。これにより、内容物A,Bをそれぞれ充填する際に、内容物Aと内容物Bとが混ざって注入されるのを防ぐことができる。図1(a)および図2(a)に示した内容物噴出ユニット10Aでは、第1噴出筒31の上端の高さが第2噴出筒32の上端の高さよりも低くなっている。
【0051】
ステム30外周面には、第1流入口33の位置と、第2流入口34の位置に周方向に沿って溝33c、34cがそれぞれ設けられている。溝33cおよび溝34cの上側の側面は、いずれも上部から下部に向かってステム30の径が小さくなる傾斜面33b、34bになっている。これにより、溝33c、34cの位置にある第1の弁40および第2の弁50はそれぞれ、ステム30が押下されるにつれて傾斜面33b、34bによって外周側に押し広げられながら溝33c、34cの位置から外れ、第1流入口33および第2流入口34を開放する。
【0052】
図1(a),(b)および図2(a),(b)に示すように、ハウジング70の固定筒部73の上端が仕切弁60の円環部62の上端以上の高さに位置し、第2の弁50の外周部は、固定筒部73に覆われている。
【0053】
上述してきたように、実施形態1の内容物噴出ユニット10Aでは、仕切弁60が傾斜した形状の筒部61を備えるため、第1の内容物Aが第2の弁に到達しないようにする高いシール性を発揮できる。
【0054】
なお、本実施形態は、仕切弁60を抑えるブッシュ65を備えない形態にすることも可能である。例えば、図5に示すように、固定筒部73の内壁面に、凹部73bを設け、仕切弁60の円環部62の外周を凹部73bに挿入し、固定筒部73の内壁に仕切弁60を固定する構成とする。これにより、ブッシュ65を備えない構成であっても、仕切弁60を第2の弁50の上に固定することができるため、仕切弁60は、第2の弁50をシールすることができる。
【0055】
<噴出容器20の全体構成>
【0056】
ここで、内容物噴出ユニット10が備えられた噴出容器20の全体構成について補足する。
【0057】
容器体21およびマウンテンカップ22はステム30の軸を中心とした回転体であり、ステム30の上端は、マウンテンカップ22の中央上部に設けられている孔から、ユーザにより押下可能な高さだけ突出している。
【0058】
なお図示していないが、噴出容器20には、内容物噴出ユニット10の上部の少なくとも一部を覆うキャップが取り付けられていてもよく、このキャップが、噴出容器20から着脱可能であってもよい。
【0059】
噴出容器20を構成する各部品は、内容物によって侵されない材料であれば、一般的な容器に用いられるプラスチック、ゴム、金属、セラミックス等の材料から用途に合わせて任意の材料を選択して用いることができる。
【0060】
(実施形態2の内容物噴出ユニット10B)
実施形態2の内容物噴出ユニット10Bの構成について、実施形態1の内容物噴出ユニット10Aの構成とは異なる点を説明する。内容物噴出ユニット10Bは、図6(a)、(b)に示すように、仕切弁60の筒部61Bの形状が、外側に凸の湾曲した形状である点で実施形態1とは異なっている。
【0061】
内容物噴出ユニット10Bの動作は、実施形態1の内容物噴出ユニット10Aの動作と同じであるが、内容物噴出ユニット10Bでは、筒部61Bが外側に凸の湾曲した形状であるため、内容物Aの圧力でつぶれにくく、より高圧な充填等にも耐えることができる。
【0062】
(実施形態3の内容物噴出ユニット10C)
実施形態3の内容物噴出ユニット10Cの構成について説明する。内容物噴出ユニット10Cは、図7(a)、(b)に示すように、仕切弁60の筒部61Cの形状が、内側に凸の湾曲した形状である点で実施形態1とは異なっている。
【0063】
内容物噴出ユニット10Cの動作は、実施形態1の内容物噴出ユニット10Aの動作と同じであるが、内容物噴出ユニット10Cでは、筒部61Cは、内側に凸の湾曲した形状であるため、内容物Aの充填時に実施形態1よりも小さい圧力で変形してステム30に押し付けられて、第2の弁50の上面を密閉することができる。
【0064】
(実施形態4の内容物噴出ユニット10D)
実施形態4の内容物噴出ユニット10Dについて説明する。内容物噴出ユニット10Dは、図8(a)、(b)に示すように、仕切弁60が筒部を有していない円環形状である点が、上述した内容物噴出ユニット10A~10Cとは異なっている。
【0065】
円環形状の仕切弁60は、内周の少なくとも上端がステム30の外周面に接しており、かつ、外周部が、実施形態1における円環部62と同様にハウジング70に固定されている。これにより、仕切弁60は、内容物Aが第2の弁50の上面に到達しないようにシールしている。
【0066】
(実施形態5の内容物噴出ユニット10E)
実施形態4の内容物噴出ユニット10Eについて説明する。内容物噴出ユニット10Eは、図9(a)、(b)に示すように、仕切弁60が第2の弁50から軸方向上側に離間した位置に配置されている点が、上述した内容物噴出ユニット10A~10Dとは異なっている。
【0067】
内容物噴出ユニット10Eの仕切弁60の形状は、上述した内容物噴出ユニット10A~10Dの仕切弁60のいずれであってもよい。
【0068】
仕切弁60を固定するために、固定筒部73には凹部73bが設けられ、仕切弁60の外周が挿入されている。凹部73bは、図9(b)に示すように、第2の弁50の上面よりも高い位置に設けられている。
【0069】
ブッシュ65の下端は、仕切弁60の円環部62Dを下側に押している。これにより仕切弁60の内周部は、凹部73bに固定されている外周部よりも上昇しない構成となっている。
【0070】
内容物噴出ユニット10Eの動作は、実施形態1の内容物噴出ユニット10Aの動作と同じである。
【0071】
なお、実施形態1~5の内容物噴出ユニットは、ステム30が仕切弁60に接しながら摺動可能な構成としたが、仕切弁60の外周部とハウジング70の内部との間、および仕切弁60の内周部とステム30の外周部との間に隙間が生じない構成ならば、上述した構成に限られない。例えば、仕切弁60は、ステム30がユーザにより押下されると、ステム30と接している部分がステム30と一緒に下降し、たわむ構成であってもよい。
【0072】
また、仕切弁60の筒部61は、傾斜したり湾曲したりした形状に限らず、ステム30の外周面に沿う形状を有していてもよい。その場合、ステム30は、ユーザにより押下されると筒部61の内周面に接しながら下降し、復帰時に、筒部61の内周面に接しながら上昇する。
【0073】
ステム30やハウジング70の材質としては、ポリプロピレン、高濃度ポリエチレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートなどの樹脂を使用することができる。第1の弁40、第2の弁50、仕切弁60は、同一の材料から構成されていてもよいし、異なる材料から構成されていてもよい。これらの材料には、例えばポリエチレン等の樹脂やゴム部材、ポリプロピレン、高濃度ポリエチレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート等の弾性体を用いることができる。スプリング79には、樹脂ばね、金属ばね、コイルばね等の弾性力を有するあらゆる部材を用いることができる。
【0074】
上述した実施形態1~4の仕切弁60は、一部が第2の弁50と接触しているため、接触している部分で仕切弁60と第2の弁50とを連続させ、一体成型で製造することも可能である。
【0075】
なお、上述した実施形態1~5の内容物噴出ユニットでは、仕切弁60とブッシュ65とが別部材から構成されているものとしたが、仕切弁60とブッシュ65は、一体となって形成されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10…内容物噴出ユニット、20…噴出容器、21…容器体、22…マウンティングカップ、23…ガスケットラバー、28…第1パウチ、29…第2パウチ、30…ステム、31…第1噴出筒、31a…第1噴出口、32…第2噴出筒、32a…第2噴出口、33…第1流入口、34…第2流入口、40…第1の弁(ステムラバー)、50…第2の弁(ステムラバー)、60…第3の弁(仕切弁)、65…ブッシュ、70…ハウジング、79…スプリング、81、82…パウチジョイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9