(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/025 20190101AFI20241217BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20241217BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241217BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B32B7/025
B32B7/022
B32B27/00 B
H05K1/03 610H
(21)【出願番号】P 2023012966
(22)【出願日】2023-01-31
【審査請求日】2023-01-31
(32)【優先日】2022-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】510064451
【氏名又は名称】亞洲電材股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杜伯賢
(72)【発明者】
【氏名】李韋志
(72)【発明者】
【氏名】何家華
(72)【発明者】
【氏名】林志銘
(72)【発明者】
【氏名】李建輝
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-510985(JP,A)
【文献】特開2009-038278(JP,A)
【文献】特開2015-111669(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112437598(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103144376(CN,A)
【文献】米国特許第06265466(US,B1)
【文献】中国実用新案第216391960(CN,U)
【文献】国際公開第2013/047285(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0020036(US,A1)
【文献】特開2021-177505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0246528(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110012655(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/02-7/022
B32B 7/025
B32B 15/08
B32B 27/00
H05K 1/03
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが3~50μmであり、バイオベース樹脂及び石化系樹脂を含有するバイオベース導電性ペースト層と、
厚みが0.1~15μmの金属層と、
厚みが2~50μmであり、バイオベース樹脂及び石化系樹脂を含有するバイオベース絶縁層とを含む、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜であって、
前記金属層は、金属めっき層であり、前記バイオベース導電性ペースト層に形成されており、
前記バイオベース絶縁層は、前記金属層に形成されて前記金属層が前記バイオベース絶縁層と前記バイオベース導電性ペースト層との間に位置しており、
前記バイオベース絶縁層は、第1の表面と、前記第1の表面に相対する第2の表面とを有し、前記第2の表面は、
前記金属層
との接触面であり、前記第1の表面及び前記第2の表面は、異なる表面粗さRzを有し、前記第1の表面の表面粗さRzは、0.001~10μmの範囲にあり、前記第2の表面の表面粗さRzは、3~8μmの範囲にあり、
前記つや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜のバイオベースの含有量は、規格ASTM D6866-12に準拠して、バイオベース由来炭素と石化由来炭素との比率として、20~100%である、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜。
【請求項2】
厚みが12.5~250μmである担体層をさらに含み、前記担体層は、前記バイオベース絶縁層の前記第1の表面に形成されており、前記担体層を剥離した後、前記バイオベース絶縁層の前記第1の表面は、測定角度60°で0~60GUの光沢度を有し、
前記担体層を形成する材料は、無機粉体と、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ポリウレタン及びポリアミドからなる群から選ばれる少なくとも1つとを含み、前記ポリプロピレンは、二軸延伸ポリプロピレンであり、
前記無機粉体は、硫酸カルシウム、カーボンブラック、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、アルミナ、タルク粉体、窒化アルミニウム、ガラス粉体、石英粉体及びクレーからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、前記担体層における無機粉体の粒子径は、10nm~20μmである、請求項1に記載のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜。
【請求項3】
前記バイオベース絶縁層及び前記バイオベース導電性ペースト層それぞれにおける前記バイオベース樹脂及び前記石化系樹脂は、各々独立してエポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ウレタン系樹脂、シリコンゴム系樹脂、パリレン系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、ポリイミド系樹脂及びポリアミドイミドからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、前記バイオベース絶縁層における前記バイオベース樹脂の含有量は、0重量%超100重量%以下であり、前記石化系樹脂の含有量は、0~80重量%であり、
前記バイオベース導電性ペースト層の全重量に対して、前記バイオベース導電性ペースト層における前記バイオベース樹脂の含有量は、0重量%超95重量%以下であり、前記石化系樹脂の含有量は、0~70重量%である、請求項1に記載のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜。
【請求項4】
前記バイオベース絶縁層は、硫酸カルシウム、カーボンブラック、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、アルミナ、タルク粉体、窒化アルミニウム、ガラス粉体、石英粉体及びクレーからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粉体をさらに含み、前記無機粉体の粒子径は、10nm~20μmであり、
前記バイオベース絶縁層における前記無機粉体の含有量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、0重量%超50重量%以下である、請求項1に記載のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜。
【請求項5】
前記バイオベース絶縁層は、ハロゲン、リン系、窒素系及び硼系からなる群から選ばれる少なくとも1つの難燃性を有する化合物をさらに含み、
前記バイオベース絶縁層における前記難燃性を有する化合物の含有量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、1~40重量%である、請求項1に記載のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜。
【請求項6】
前記バイオベース絶縁層は、無機顔料及び/または有機顔料を含み、前記無機顔料は、カドミウムレッド、カドミウムレモンイエロー、カドミウムイエロー、二酸化チタン、カーボンブラック、黒色酸化鉄及び黒色錯体無機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、前記有機顔料は、アニリンブラック、ペリレンブラック、アントラキノンブラック、ベンジジン類黄色顏料、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
前記バイオベース絶縁層における前記無機顔料及び/または有機顔料の含有量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、0重量%超50重量%以下である、請求項1に記載のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜。
【請求項7】
前記バイオベース絶縁層及び前記バイオベース導電性ペースト層の少なくとも1つは、添加剤をさらに含み、前記添加剤は、固化剤、触媒及び界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
前記バイオベース絶縁層における前記添加剤の含有量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、0重量%超20重量%以下であり、
前記バイオベース導電性ペースト層における前記添加剤の含有量は、前記バイオベース導電性ペースト層の全重量に対して、0重量%超10重量%以下である、請求項1に記載のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜。
【請求項8】
前記金属めっき層は、厚みが0.1~5μmの銅箔層、銀箔層、アルミ箔層、またはニッケル箔層である、請求項1に記載のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜。
【請求項9】
前記バイオベース導電性ペースト層は、複数の導電粒子を有する単層の導電性ペースト層であり、前記複数の導電粒子を形成する材質は、銅、銀、ニッケル、スズ、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、炭素、ニッケル-金合金、金-銀合金、銅-ニッケル合金、銅-銀合金、銀-ニッケル合金及び銅-ニッケル金合金からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
前記複数の導電粒子の含有量は、前記バイオベース導電性ペースト層の全重量に対して、5~85重量%である、請求項1に記載のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜。
【請求項10】
前記バイオベース導電性ペースト層は、二層構造であって、1層の導電粒子を有しない粘着層と、1層の複数の導電粒子を有する導電粘着層とで積層されて構成されており、
前記導電粒子を有しない粘着層は、前記金属層と前記複数の導電粒子を有する導電粘着層との間に粘着されており、
前記複数の導電粒子の含有量は、前記導電粘着層の全重量に対して、5~85重量%である、請求項1に記載のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜。
【請求項11】
前記バイオベース絶縁層は、2H~6Hの硬度を有する、請求項1に記載のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜。
【請求項12】
担体層にバイオベース絶縁層を形成した後、50℃~180℃の条件で前記バイオベース絶縁層を固化させる工程と、
前記バイオベース絶縁層に真空スパッタリング、蒸着、化学めっき及び電気めっきから選ばれる1種によって金属めっき層を形成する工程と、
前記金属めっき層にバイオベース導電性ペースト層を形成して、前記金属めっき層を前記バイオベース絶縁層と前記バイオベース導電性ペースト層との間に位置させる工程と、
前記バイオベース導電性ペースト層に剥離層を押圧する工程とを含み、
前記バイオベース絶縁層と前記金属めっき層接触面との間の表面粗さRzは、3~8μmの範囲にある、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の製造方法。
【請求項13】
金属めっき層を形成する前、前記バイオベース絶縁層にもう1層のバイオベース絶縁層を形成し、50℃~180℃の条件で前記もう1層のバイオベース絶縁層を固化させ、さらに前記金属めっき層を形成して、前記金属めっき層を前記もう1層のバイオベース絶縁層と前記バイオベース導電性ペースト層との間に位置させる工程をさらに含む、請求項12に記載のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高遮蔽膜性を有する遮蔽膜技術分野に関し、特にバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオベース(Bio-based)は、重要な再生材料であり、太陽エネルギー、風力エネルギー、または地熱等と同様に再利用可能と再生可能の特性を有し、また、植物の成長に使用すると、二酸化炭素を吸収し、温室効果ガスの蓄積を減らすことに役に立つ。近年、既存の石化系材料技術の代わりに、様々なバイオベース材料技術が徐々に開発され、将来の省エネ・炭素排出削減と地球の資源枯渇を回避することに対してのニーズに応えるために、開発される様々なバイオベース材料製品は、既存の石化系材料製品に置き換えつつある。また、様々なバイオベース材料製品の製造条件に対する要求は、人間の石油依存を徐々に低減でき、再生可能な農業資源の使用を増やすことで、環境と健康への悪影響を減らすのに役立つ。バイオベース製品は市場での販売状況を促進する方法は主に以下の2部分に分けられ、(1)政府機関及びその請負業者は、バイオベース製品が強制的に購入されることと、(2)業者のバイオベース製品に対する自主標示であり、自主標示によって、消費者に製品または包装中に含まれた検証済みバイオベース成分の含有量を説明すること。バイオベース含有量の試験規格は、主にASTM D6866(14C年代測定方法)に記載の3つの方法のいずれかにより測定する。例えば、日本有機資源協会(Japan Organic Recycling Association、JORA)は、バイオベース誘導成分と石化系誘導成分の重量%(wt.%)を測定し、アメリカ合衆国農務省(United States Department of Agriculture、USDA)は、改訂版のASTM D6866-12に従い、バイオベース由来炭素と石化由来炭素の比率を測定し、他の国は、材料のバイオベース誘導成分と石化系誘導成分の割合により、測定する材料はバイオベースプラスチックであるかどうか、及びそのバイオベース度を見分けることが多い。
【0003】
遮蔽膜の設計に関しては、製品外観、表面保護等の要求に対応するため、例えば、黒色ポリイミド膜が求められている。また、市販のポリイミドは、主に流延法(casting)で製造されるが、流延法の一軸延伸法で製造された薄膜の寸法安定性が業界の要求に満たさないため、二軸延伸法がより多く求められ、設備及び製造工程に対する要求がより高まっている。また、市場からの電子製品の軽薄型化に対する要求に対応するため、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit、FPC)の多層基板を製造する時、ユーザー側が求める超薄型製品を満たすため、フレキシブルプリント基板材料の厚みを減らす必要がある。しかし、ポリイミド製造業者は、薄膜の厚みを減らすため、薄型化厚みを5~7.5μmに設計する場合は、外観としては現在求められるつや消し表面(光沢度が25 GUよりも小さい)を満たすのが難しく、その機械的強度、加工操作性、曲げ性等の一般的な技術の指標も、業界規格の要求を満たすことができず、製品の収率が低い。
【0004】
また、科学研究組織としては、リサイクル原料をバイオベース原料として製造したバイオベースポリイミド樹脂薄膜に関する発展に向けて進めて、例えば、清華大学材料工学とエンジニアリング研究所、清華大学化学工業学科高分子研究所、中国科学院長春応用化学研究所、吉林大学等の組織は、イソソルビド、イソマンニット、リグニン誘導体(Acta Polymerica Sinica, 2006 (2):284-288、Polymer,2015,74:38-45、Acta Polymerica Sinica,2019(3):261-270)等のリサイクル原料から一連のバイオベース成分を有するポリイミド樹脂を製造する。しかし、上記リサイクル原料の中に脂肪族官能基が多く含まれるため、このような原料に由来する樹脂から製造されたポリイミド薄膜は、一般的には耐熱性や機械の性能が悪い。したがって、リサイクル原料からポリイミド樹脂を製造する技術が存在するが、それにより製造されたポリイミド薄膜の性能が十分ではないという問題を克服する必要がある。
【0005】
上記のポリイミド薄型化した薄膜、有色薄膜の遮蔽膜への適用する問題を解決するため、有色ポリイミド膜を剥離フィルム付エポキシ樹脂またはポリウレタンインクに切り替えることにより、厚みが薄く、つや消し性の表面を有する絶縁層を得る。しかし、このインクタイプの絶縁層は、一般的には機械的強度、絶縁性、硬度、耐薬品性、耐熱性等の性能が黒色ポリイミド薄膜よりも悪いので、ポリイミドワニス系を剥離フィルムに塗布する発展がさらに促進され、同時にこの製造工程にはバイオベース成分の設計を使用することが可能であるが、バイオベースポリイミド樹脂で製造したポリイミド薄膜は一般的には耐熱性及び機械的性能が劣るため、絶縁層樹脂の変更や粉体の添加等の方法、または粉体含有量の割合や粒子径等を変えることにより、高い難燃性、高いイオン純度、高い硬度、高い熱伝導率、高いバイオベース含有量等の色々な利点を有する絶縁層を得て、また、流延法製造工程で製造した薄膜と比べ、ワニスタイプ絶縁層は、製造工程での残留応力がないため、より好ましい寸法安定性を有し、薄膜の場合と比べ、ワニスタイプは直接的に剥離フィルムに生成する点で下流の製造工程に対してより加工しやすい。
【0006】
また、電磁干渉遮蔽性能に対する要求が高まるに伴い、電磁干渉遮蔽膜構造中の金属層の厚みもますます高くなるが、金属層の厚みが増すことに従い、その欠点も現れ、特に電磁干渉遮蔽膜のはんだ耐熱性、及びユーザー側の表面実装技術(Surface Mount Technology, SMT)製造工程のシミュレーション試験において特に著しく、例えば、常態で熟成工程後の錫めっき試験における大面積の剥離、SMT製造工程後の電磁干渉遮蔽膜の大面積の剥離またはSMT製造工程の配線におけるオン抵抗の著しい増加、及び厚みが高い遮蔽金属層及び厚みが薄い絶縁層を導電性ペースト接触層と併用する場合、一連の耐候性に関する問題を起こしやすく、例えば、高温多湿な環境または冷熱衝撃試験の条件でのオン抵抗の著しい増加、及び接着力の低下、さらに遮蔽金属層の剥離などの問題を引き起こす。
【0007】
上記で述べた製品の種類及び技術問題としては、CN 203194086U号(特許文献1)には、インクタイプであり金属層を含まない電磁遮蔽膜が開示され、CN 203859982U号(特許文献2)、及びCN205864954U号(特許文献3)には、金属めっき付きインクタイプ電磁遮蔽膜が開示され、CN 107791641B(特許文献4)、CN 206481556U(特許文献5)、及びCN 108541204B(特許文献6)には、金属めっき付き薄膜型電磁遮蔽膜が開示され、また、CN 210275019U(特許文献7)には、外層がつや消し性を有する下塗り層であり、金属の電磁遮蔽膜の代わりに導電性繊維を使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国実用新案第203194086号明細書
【文献】中国実用新案第203859982号明細書
【文献】中国実用新案第205864954号明細書
【文献】中国特許第107791641号明細書
【文献】中国実用新案第206481556号明細書
【文献】中国特許第108541204号明細書
【文献】中国実用新案第210275019号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、良好な表面絶縁性、高い表面硬度、良好な耐薬品性、高い遮蔽性、良好な接着強度、低い伝送ロス、高い伝送品質、高いバイオベース含有量、つや消しの外観、良好な操作性、高い耐熱性、長い内層導電性ペーストの保存期限、貯蔵安定性等の特性を有する、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本開示は、厚みが3~50μmであり、バイオベース樹脂及び石化系樹脂を含有するバイオベース導電性ペースト層と、厚みが0.1~15μmの金属層と、厚みが2~50μmであり、バイオベース樹脂及び石化系樹脂を含有するバイオベース絶縁層とを含む、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜であって、前記金属層は、金属めっき層または多孔金属層であり、前記バイオベース導電性ペースト層に形成されており、前記バイオベース絶縁層は、前記金属層に形成されて前記金属層が前記バイオベース絶縁層と前記バイオベース導電性ペースト層との間に位置しており、前記バイオベース絶縁層は、第1の表面と、第1の表面に相対する第2の表面とを有し、前記第2の表面は、前記金属層に向かい、前記第1の表面及び前記第2の表面は、異なる表面粗さRzを有し、前記表面粗さRzは、0.001~10μmの範囲にあり、前記つや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜のバイオベース含有量は、規格ASTM D6866-12に準拠して、バイオベース由来炭素と石化由来炭素との割合として20~100%である、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜を提供する。
【0011】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜は、厚みが2~50μmであり、バイオベース樹脂及び石化系樹脂を含有し、かつ、前記金属層に形成されて前記金属層が前記バイオベース接着剤層と前記バイオベース導電性ペースト層との間に位置するバイオベース接着剤層をさらに含む。
【0012】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜は、厚みが12.5~250μmである担体層をさらに含み、前記担体層は、前記バイオベース絶縁層の前記第1の表面に形成されており、前記担体層を剥がした後、前記バイオベース絶縁層の前記第1の表面は、測定角度60°で0~60GUの光沢度を有する。
【0013】
1つの具体的な実施態様において、前記担体層は、担体膜または剥離フィルムであり、前記担体層を形成する材料は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ポリウレタン及びポリアミドからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、前記ポリプロピレンは、二軸延伸ポリプロピレンである。
【0014】
1つの具体的な実施態様において、前記担体層は、硫酸カルシウム、カーボンブラック、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、アルミナ、タルク粉体、窒化アルミニウム、ガラス粉体、石英粉体及びクレーからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粉体を含み、前記担体層における無機粉体の粒子径は、10nm~20μmである。
【0015】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層、前記バイオベース接着剤層、及び前記バイオベース導電性ペースト層それぞれにおける前記バイオベース樹脂、及び前記石化系樹脂は、各々独立してエポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ウレタン系樹脂、シリコンゴム系樹脂、パリレン系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体ポリイミド系樹脂及びポリアミドイミドからなる群から選ばれる少なくとも1つである。ここで、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、前記バイオベース絶縁層における前記バイオベース樹脂の含有量は、0重量%超100重量%以下であり、前記石化系樹脂の含有量は、0~80重量%であり、前記バイオベース接着剤層の全重量に対して、前記バイオベース接着剤層における前記バイオベース樹脂の含有量は、0重量%~100重量%以下であり、前記石化系樹脂の含有量は、0~80重量%であり、また、前記バイオベース導電性ペースト層の全重量に対して、前記バイオベース導電性ペースト層における前記バイオベース樹脂の含有量は、0重量%超95重量%以下であり、前記石化系樹脂の含有量は、0~70重量%である。
【0016】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層、及び前記バイオベース接着剤層の少なくとも1つは、硫酸カルシウム、カーボンブラック、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、アルミナ、タルク粉体、窒化アルミニウム、ガラス粉体、石英粉体及びクレーからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粉体をさらに含み、且つ、前記無機粉体の粒子径は、10nm~20μmである。ここで、前記バイオベース絶縁層における前記無機粉体の含有量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、0重量%超50重量%以下であり、前記バイオベース接着剤層における前記無機粉体の含有量は、前記バイオベース接着剤層の全重量に対して、0重量%超50重量%以下である。
【0017】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層、及び前記バイオベース接着剤層の少なくとも1つは、ハロゲン、リン系、窒素系及び硼系からなる群から選ばれる少なくとも1つの難燃性を有する化合物をさらに含む。ここで前記バイオベース絶縁層における前記難燃性を有する化合物の含有量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、1~40重量%であり、前記バイオベース接着剤層における前記難燃性を有する化合物の含有量は、前記バイオベース接着剤層の全重量に対して、1~50重量%である。
【0018】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層、及び前記バイオベース接着剤層の少なくとも1つは、無機顔料及び/または有機顔料を含んで自然ではない色の有色層を形成し、前記無機顔料は、カドミウムレッド、カドミウムレモンイエロー、カドミウムイエロー、二酸化チタン、カーボンブラック、黒色酸化鉄及び黒色錯体無機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1つである。ここで、前記有機顔料は、アニリンブラック、ペリレンブラック、アントラキノンブラック、ベンジジン類の黄色顏料、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンからなる群から選ばれる少なくとも1つである。ここで、前記バイオベース絶縁層における前記無機顔料及び/または有機顔料の含有量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、0重量%超50重量%以下であり、前記バイオベース接着剤層における前記無機顔料及び/または有機顔料の含有量は、前記バイオベース接着剤層の全重量に対して、0重量%超50重量%以下である。
【0019】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層、前記バイオベース接着剤層、及び前記バイオベース導電性ペースト層の少なくとも1つは、添加剤をさらに含み、前記添加剤は、固化剤、触媒及び界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである。ここで、前記バイオベース絶縁層における前記添加剤の含有量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、0重量%超20重量%以下であり、前記バイオベース接着剤層における前記添加剤の含有量は、前記バイオベース接着剤層の全重量に対して、0重量%超20重量%以下であり、前記バイオベース導電性ペースト層における前記添加剤の含有量は、前記バイオベース導電性ペースト層の全重量に対して、0重量%超10重量%以下である。
【0020】
1つの具体的な実施態様において、前記添加剤は、固化剤であり、前記添加剤は、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン(4,4’-diaminodiphenylsulfone)から選ばれてもよい。
【0021】
1つの具体的な実施態様において、前記金属めっき層は、厚みが0.1~5μmの銅箔層、銀箔層、アルミ箔層、またはニッケル箔層である。もう1つの具体的な実施態様において、前記多孔金属層は、厚みが2~15μmであり、5μm~25μmの穴径を有する。前記多孔金属層は、5μm~25μmの穴径及び15%~30%の空隙率を有し、その引っ張り強度は、20kg/mm2以上であり、伸長率は、5%以上である。
【0022】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース導電性ペースト層は、複数の導電粒子を有する單層のバイオベース導電性ペースト層であり、前記複数の導電粒子を形成する材質は、銅、銀、ニッケル、スズ、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、炭素、ニッケル-金合金、金-銀合金、銅-ニッケル合金、銅-銀合金、銀-ニッケル合金及び銅-ニッケル金合金からなる群から選ばれる少なくとも1つである。ここで、前記複数の導電粒子の含有量は、前記バイオベース導電性ペースト層の全重量に対して、5~85重量%である。
【0023】
もう1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース導電性ペースト層は、二層構造であって、1層の導電粒子を有しない粘着層、及び1層の複数の導電粒子を有する導電粘着層で積層されて構成されており、前記導電粒子を有しない粘着層は、前記金属層と前記複数の導電粒子を有する導電粘着層との間に粘着されており、前記金属層は、多孔金属層であり、前記導電粘着層の全重量に対して、前記複数導電粒子の含有量は、5~85重量%である。
【0024】
1つの具体的な実施態様において、バイオベースイミド樹脂は、ポリアミド結合(-C(O)-N(R)-C(O)-)を有するバイオベースポリアミドイミド樹脂である。ここで、前記バイオベースポリアミドイミド樹脂は、少なくとも以下の式(I)で表される構成単位を含む。
【0025】
【化1】
(式(I)中、nは、20~35である。)
【0026】
1つの具体的な実施態様において、石化系樹脂は、石化系ポリアミドイミド樹脂である。ここで、前記石化系ポリアミドイミド樹脂は、少なくとも以下の式(II)で表される構成単位を含む。
【0027】
【0028】
もう1つの具体的な実施態様において、石化系樹脂は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、アクリル系樹脂、または1:1の重量比で混合してなるビスフェノールAエポキシ樹脂とアクリル系樹脂との組み合わせから選ばれる。
【0029】
本開示は、担体層にバイオベース絶縁層を形成した後、50℃~180℃の条件で前記バイオベース絶縁層を固化させる工程と、
前記バイオベース絶縁層に真空スパッタリング、蒸着、化学めっき及び電気めっきから選ばれる1種によって金属めっき層を形成する工程と、
前記金属めっき層にバイオベース導電性ペースト層を形成して、前記金属めっき層を前記バイオベース絶縁層と前記バイオベース導電性ペースト層の間に位置させる工程と、
前記バイオベース導電性ペースト層に剥離層を押圧する工程とを含む、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の製造方法を提供する。
【0030】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の製造方法は、金属めっき層を形成する前、前記バイオベース絶縁層にもう1層のバイオベース絶縁層を形成し、50℃~180℃の条件で前記もう1層のバイオベース絶縁層を固化させ、さらに前記金属めっき層を形成して、前記金属めっき層を前記もう1層のバイオベース絶縁層と前記バイオベース導電性ペースト層の間に位置させる工程をさらに含む。
【0031】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の製造方法は、前記金属めっき層前を形成する前、前記バイオベース絶縁層、または前記もう1層のバイオベース絶縁層に、塗布法または転写法によってバイオベース接着剤層を形成し、さらに前記金属めっき層を形成して、前記金属めっき層を前記バイオベース接着剤層と前記バイオベース導電性ペースト層との間に位置させる工程をさらに含む。
【0032】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層は、2H~6Hの硬度を有する。
【0033】
本開示は、担体層にバイオベース絶縁層を形成した後、50℃~180℃の条件で前記バイオベース絶縁層を固化させる工程と、
多孔金属層に塗布法または転写法によってバイオベース接着剤層を形成する工程と、
前記バイオベース絶縁層を前記バイオベース接着剤層に接触押圧し、前記バイオベース接着剤層を前記バイオベース絶縁層と、前記多孔金属層の間に位置させる工程と、
前記多孔金属層にバイオベース導電性ペースト層を形成する工程と、
前記バイオベース導電性ペースト層に剥離層を押圧する工程とを含む、もう1種のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の製造方法を提供する。
【0034】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の製造方法は、前記バイオベース絶縁層を固化させた後、前記バイオベース絶縁層にもう1層のバイオベース絶縁層を形成し、50℃~180℃の条件で前記もう1層のバイオベース絶縁層を固化させる工程をさらに含む。
【0035】
1つの具体的な実施態様において、前記多孔金属層の製造方法は、
薄膜にアルミ層を塗布する工程と、
前記アルミ層の表面に剥離処理を行う工程と、
前記剥離処理をしたアルミ層の表面にスパッタリング、蒸着及びめっきから選ばれる1種によって金属層を形成する工程と、
前記金属層にマイクロエッチング処理を施して、複数の穴を形成する工程と、
前記薄膜及び前記アルミ層を剥離して、前記金属層に多孔金属層を形成させる工程とを含む。
【0036】
1つの具体的な実施態様において、前記薄膜は、ポリイミド薄膜またはエチレンテレフタレート薄膜である。前記金属層は、銅、アルミニウム、鉛、ニッケル、コバルト、スズ、銀、鉄及び金からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【発明の効果】
【0037】
本開示の有利な効果は少なくとも下記の点を有する。
【0038】
1、市販の黒色インク層、ポリイミドワニス層の表面硬度の多くは、HB~2Hであり、表面が脆く、傷がつきやすく、外観と機械的性能に影響を与えるが、本開示のバイオベース絶縁層では、粉体を添加した後、その硬度の改善に役立ち、硬度が2H~6Hに達し、同時に、割合が異なる粉体が増加するほど、その難燃性能も異なり、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機粉体のうち1種または2種以上の混合粉体の添加割合が高いほど、その難燃性も高くなる。より高い硬度が求められる時、好ましくは二酸化チタン、(焼結)二酸化ケイ素等のうち1種または2種以上の混合物を使用する。より高い難燃性が求められる時、好ましくは水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウムのうち1種または2種以上の混合粉体、及びハロゲン、リン系、窒素系または硼系等のうち1種または複数種の難燃性を有する化合物の混合物を使用する。
【0039】
2、既存の遮蔽膜は、厚い金属層を採用し、はんだ耐熱性及びSMT製造工程の試験において、大面積の剥離、オン抵抗の増加、接着力の低下、及び金属層の剥離等の問題を起こしやすいが、本開示の電磁干渉遮蔽膜は、厚みが0.2μmより大きく、さらには0.5μmより大きいという厚い金属めっき層を含んでもよく、バイオベース絶縁層に(または、例えば、二つの絶縁体層における第2の絶縁体層に、または、複数の絶縁体層における金属めっき層向き絶縁体層に)粗い粉体を添加することにより、バイオベース絶縁層と金属めっき層接触面との間の表面粗さ(Rz粗化は3~6μm)及び硬度(2~6H)を変え、さらに金属めっきを施す(例えば、銅めっきを施す)時に欠陥を形成し、または押圧時に亀裂を形成し、例えば、逃げ穴及びクラックを生成し、或いは、本開示の電磁干渉遮蔽膜は、逃げ穴の形成に類似する機能を有する多孔金属層を含んでもよいため、遮蔽膜全体のはんだ耐熱性が著しく改善されており、続く製品のリフローはんだ付けの製造工程に役立つ。
【0040】
3、既存の遮蔽膜は、通常の金属めっき層を採用するが、本開示の電磁干渉遮蔽膜は、多孔金属層を含んでもよく、これは良好な電磁干渉遮蔽性能、及びSMTに耐える特性を有する。具体的に、前記多孔金属層は、電磁波に対して反射作用を作用することにより、大部分の無線周波数及びマイクロ波エネルギーを反射させ、透過の量が極めて小さいため、良好な遮蔽性能を有し(1GHzで60dBより大きい)、電磁波放射による干渉を効果的に遮蔽できる。また、通常の金属めっき層と比べて、前記多孔金属層は、製造した製品のはんだ耐熱性が著しく改善されており、下流のはんだ付けの製造工程により、そのはんだ耐熱性は、300℃より大きいなる可能である。
【0041】
4、本開示のバイオベース絶縁層は、ポリイミド系樹脂を含んでもよく、エポキシ樹脂(Epoxy)、またはポリウレタン樹脂(PU)系のインク絶縁層と比べ、より好ましい表面絶縁特性(例えば、絶縁抵抗値は、1012Ωより大きい)、インピーダンス制御能力が良い、耐薬品性、はんだ付けに耐える特性、高い表面硬度を有する。厚みが5~7.5μmの超薄黒色ポリイミド薄膜と比べ、本開示は、製造工程にはキャリアフィルムを別途添付する必要がなく、工程がより簡単で低コストであり、市販からのこの厚みの薄膜は、60 GUより小さいというGloss値に達しないことが多い。
【0042】
5、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜は、バイオベース絶縁層及びバイオベース導電性ペーストの組成設計により、その全体のバイオベース含有量は、JORA認定とUSDA認定で測定しても、実際のバイオベース含有量が20%より大きいため、各国のバイオベースプラスチック認定を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
以下、例示の参考図により本開示の実施態樣を説明する。
【0044】
【
図1A】
図1Aは、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の1つの実施例の構造模式図である。
【0045】
【
図1B】
図1Bは、さらに担体層を含む、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の1つの実施例の構造模式図である。
【0046】
【
図1C】
図1Cは、さらに剥離層を含む、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の1つの実施例の構造模式図である。
【0047】
【
図1D】
図1Dは、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜のもう1つの実施例の構造模式図である。
【0048】
【
図1E】
図1Eは、さらに担体層を含む、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜のもう1つの実施例の構造模式図である。
【0049】
【
図1F】
図1Fは、さらに剥離層を含む、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜のもう1つの実施例の構造模式図である。
【0050】
【
図2】
図2は、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜のもう1つの実施例の構造模式図であり、ここで、そのバイオベース絶縁層は、2層または2層以上の絶縁体層を含む。
【0051】
【
図3】
図3は、金属層が1種または複数種の欠陥を含む、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜のもう1つの実施例の構造模式図であり、ここで、その金属層は、1種または複数種の欠陥を含む。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下は、特定の具体的な実施例により本開示の実施態樣を説明し、当業者は、本明細書の記載内容により、本開示の利点及び効果を容易に理解できる。
【0053】
ただし、本明細書に添付された図面に示す構造、比例、寸法等は、明細書の記載内容に合わせて、当業者に理解や閲覧させるためのものであり、本開示の実施可能の限定条件を限定するためのものではないため、技術上の実質的な意味を有せず、任意の構造の修飾、比例関係の変更又は寸法の調整は、本開示の効果及び達成できる目的に影響を与えない限り、本開示に開示された技術内容でカバーできる範囲に含まれている。また、本明細書に記載の「1つ」、「下」、または「上」等の用語は、説明が容易に理解できるようにするためのものであり、本開示の実施可能な範囲を限定するものではなく、その相対関係の変更又は調整は、技術内容を実質的に変更しない限り、本開示の実施可能の範囲と見なされる。なお、本明細書に記載のすべての数値範囲と値は、包含的にかつ合併できるものである。本明細書に記載の範囲内に含まれる任意の数値または端点、例えば任意の整数は、すべて最小値または最大値としてさらなる範囲を導き出すことができる。本明細書に記載されている組成または工程を「含む」、「含有する」、または「有する」ことは、特に明記しない限り,他の組成または他の工程をさらに含んでもよく、これらの他の組成または他の工程を除外することはない。また、本開示で特に明記しない限り、本明細書に記載されている単数形の「1つ」及び「前記」は、複数の特定物を含み、また、本開示に記載されている「または」と「及び/または」は、交換可能に使用される。注意すべきことは、「第1」、「第2」、または「第3」のような用語を使用し、本明細書、及び請求の範囲における各構造を記載することは、これらの工程/構造の略語の參考として用いられ、この順番でこれらの工程/構造を行う/形成することは意図していない。
【0054】
図1Aに示すように、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜100は、厚みが3~50μmであり、バイオベース樹脂及び石化系樹脂を含有するバイオベース導電性ペースト層104と、厚みが0.1~15μmであり、かつ前記バイオベース導電性ペースト層104に形成される金属層103と、厚みが2~50μmであり、バイオベース樹脂及び石化系樹脂を含有し、前記金属層103に形成されて前記金属層103が前記バイオベース絶縁層101と前記バイオベース導電性ペースト層104との間に位置するバイオベース絶縁層101とを含む、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜であって、前記バイオベース絶縁層101は、第1の表面1011及び前記第1の表面1011に相対する第2の表面1012を有し、前記第2の表面1012は、前記金属層103に向かい、前記第1の表面1011と前記第2の表面1012は、異なる表面粗さRzを有するバイオベース絶縁層101とを含む。
【0055】
図1Bに示すように、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜100は、厚みが12.5~250μmの担体層105をさらに含み、前記担体層105は、前記バイオベース絶縁層101の前記第1の表面1011に形成されており、前記担体層105を剥離した後、前記バイオベース絶縁層101の前記第1の表面1011と前記担体層105との接触面は測定角度60°で0~60 GU、例えば、0、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60GUの光沢度を有し、中でも、好ましくは光沢度0~25 GUの光沢度を有する。
【0056】
図1Cに示すように、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜100は、前記バイオベース導電性ペースト層104を保護するための剥離層106をさらに含み、前記剥離層106は、前記バイオベース導電性ペースト層104に形成されて前記バイオベース導電性ペースト層104が前記金属層103と前記剥離層106との間に位置しており、ここで、前記剥離層は、厚みが25~100μmの剥離フィルム、厚みが25~130μmのPEコート紙、または厚みが25~100μmのキャリアフィルムであり、PETフッ素剥離フィルム、PETシリコーンオイル含有剥離フィルム、PETつや消し剥離フィルム及びPE剥離フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0057】
図1D~1Fに示すように、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜100は、厚みが2~50μmで、バイオベース樹脂及び石化系樹脂を含有するバイオベース接着剤層102をさらに含み、前記バイオベース接着剤層102は、前記金属層103に形成されて前記金属層103が前記バイオベース接着剤層102と前記バイオベース導電性ペースト層104との間に位置する。
【0058】
図2に示すように、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜200におけるバイオベース絶縁層の設計は、上記1層のバイオベース絶縁層101の態樣に加え、2層または2層以上の絶縁体層2013から形成されたバイオベース絶縁層201のもう1つの態樣を含んでもよく、ここで、これらの絶縁体層2013は、各々独立して異なる成分を含んでもよく、これらの絶縁体層2013の少なくとも1つは、バイオベース成分を含み、また、形成されたバイオベース絶縁層201の総厚は2~50μmである。
図2を参照し、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜200は、剥離層206、バイオベース導電性ペースト層204、金属層203、バイオベース絶縁層201及び担体層205を含むが、前記金属層203と前記バイオベース絶縁層201との間にバイオベース接着剤層102を含まない。また、複数の層を有する絶縁体層の態樣において、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜は、担体層205及び/または剥離層206を含まなくてもよい(不図示)。さらに、前記バイオベース絶縁層201は、第1の表面2011、及び前記第1の表面2011に相対する第2の表面2012も有し、前記第2の表面2012は、前記金属層203に向かい、前記第1の表面2011及び前記第2の表面2012は、異なる表面粗さRzを有する。
【0059】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層の前記第1の表面1011/2011、及び前記第2の表面1012/2012の表面粗さRzは、各々独立して、0.001~10μmの範囲であり、例えば、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10μmであり、中でも、3~6μmの表面粗さRzは銅めっき時の欠陥、押圧する時の亀裂を形成し、または多孔金属層における欠陥を形成するのに役立つため好ましい。
【0060】
図3に示すように、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜300は、剥離層306、バイオベース導電性ペースト層304、金属層303、バイオベース絶縁層301、及び担体層305を含み、前記金属層303は、金属めっき層または多孔金属層である。本具体的な実施態様において、金属層303は、より厚い厚みを有し、かつ、1種または複数種の欠陥3031を含み、例えば、表面の凹み、表面突起、表面亀裂、クラック、割れ、気泡、または逃げ穴等であるが、これらに限定されない。また、複数の層の絶縁体層を有する態樣において、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜300は、担体層305及び/または剥離層306を含まなくてもよい(不図示)。
【0061】
1つの具体的な実施態様において、前記つや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜のバイオベース含有量は、規格ASTM D6866-12に準拠して、バイオベース由来炭素と石化由来炭素の比率として、20~100%であり、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%である。
【0062】
1つの具体的な実施態様において、前記担体層は、担体膜または剥離フィルムであり、前記担体層を形成する材料は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ポリウレタン及びポリアミドからなる群から選ばれる少なくとも1つである。本具体的な実施態様において、前記ポリプロピレンは、二軸延伸ポリプロピレンである。
【0063】
1つの具体的な実施態様において、自然ではない色を有するため、前記担体層は、硫酸カルシウム、カーボンブラック、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、アルミナ、タルク粉体、窒化アルミニウム、ガラス粉体、石英粉体及びはクレーからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粉体を含み、前記担体層における無機粉体の粒子径は10nm~20μmであり、例えば、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、または20μmである。
【0064】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層、前記バイオベース接着剤層及び前記バイオベース導電性ペースト層それぞれにおける前記バイオベース樹脂及び前記石化系樹脂は、各々独立して、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ウレタン系樹脂、シリコンゴム系樹脂、パリレン系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、ポリイミド系樹脂及びはポリアミドイミドからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、ポリイミド系樹脂が好ましい。本具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、前記バイオベース絶縁層における前記バイオベース樹脂の含有量は、0重量%超100重量%以下であり、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100重量%であり、前記石化系樹脂の含有量は、0~80重量%であり、例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80重量%である。前記バイオベース接着剤の全重量に対して、前記バイオベース接着剤層における前記バイオベース樹脂の含有量は、0重量%超100重量%以下であり、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100重量%であり、前記石化系樹脂の含有量は、0~80重量%であり、例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80重量%である。前記バイオベース導電性ペースト層の全重量に対して、前記バイオベース導電性ペースト層における前記バイオベース樹脂の含有量は、0重量%超95重量%以下であり、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90または95重量%であり、前記石化系樹脂の含有量は0~70重量%であり、例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、または70重量%である。
【0065】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層における「ポリイミド系樹脂」とは、イミド結合骨格を有するポリイミド樹脂を指し、ポリイミドワニスとも称する。例えば、前記ポリイミド樹脂は、ポリイミド(Polyimide、PI)、ポリアミドイミド及びポリイミド(Polyimide-ester)からなる群から選ばれる少なくとも1つであるが、これらに限定されない。
【0066】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層及び前記バイオベース接着剤層の少なくとも1つは、硫酸カルシウム、カーボンブラック、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、アルミナ、タルク粉体、窒化アルミニウム、ガラス粉体、石英粉体及びはクレーからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粉体をさらに含み、前記バイオベース絶縁層及び/または前記バイオベース接着剤層を粗化するため、前記無機粉体の粒子径は、10nm~20μm、例えば、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、または20μである。本具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層における無機粉体の含有量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、0重量%超50重量%以下であり、前記バイオベース接着剤層における無機粉体の含有量は、前記バイオベース接着剤層の全重量に対して、0重量%超50重量%以下であり、前記バイオベース絶縁層における無機粉体及び前記バイオベース接着剤層における無機粉体的含有量は、例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50重量%であってもよく、中でも、添加の割合は、0重量%超20重量%以下であるのが好ましい。また、本開示の二酸化ケイ素は、焼結二酸化ケイ素であってもよい。例えば、焼結二酸化ケイ素、カーボンブラック、タルク粉体、炭酸カルシウム、ガラス粉体、及び石英粉体の合計重量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、0重量%超50重量%以下であり、好ましくは0重量%超20重量%以下であるが、これらに限定されない。また、例として、焼結二酸化ケイ素、カーボンブラック、タルク粉体、炭酸カルシウム、ガラス粉体及び石英粉体の合計重量は、前記バイオベース接着剤層の全重量に対して、0重量%超50重量%以下であり、好ましくは0重量%超20重量%以下であるが、これらに限定されない。
【0067】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層及び前記バイオベース接着剤層の少なくとも1つは、ハロゲン、リン系、窒素系及び硼系からなる群から選ばれる少なくとも1つの難燃性を有する化合物をさらに含む。本具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層における前記難燃性を有する化合物の含有量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、1~40重量%であり、例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、または40重量%であり、中でも、添加の割合は、5~35重量%であるのが好ましい。本具体的な実施態様において、前記難燃性を有する化合物の含有量は、前記バイオベース接着剤層の全重量に対して、1~50重量%であり、例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50重量%であり、中でも、添加の割合は、5~35重量%であるのが好ましい。
【0068】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層及び前記バイオベース接着剤層の少なくとも1つは、有機粉体をさらに含んでもよい。もう1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース接着剤層は、ポリテトラフルオロエチレンまたはフッ素系樹脂をさらに含んでもよい。
【0069】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層及び前記バイオベース接着剤層の少なくとも1つは、無機顔料及び/または有機顔料を含んで自然ではない色の有色層を形成する。本具体的な実施態様において、前記無機顔料は、カドミウムレッド、カドミウムレモンイエロー、カドミウムイエロー、二酸化チタン、カーボンブラック、黒色酸化鉄及び黒色錯体無機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、前記有機顔料は、アニリンブラック、ペリレンブラック、アントラキノンブラック、ベンジジン類の黄色顏料、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンからなる群から選ばれる少なくとも1つである。本具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層における前記無機顔料及び/または有機顔料の含有量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、0重量%超50重量%以下であり、例えば、0、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50重量%である。本具体的な実施態様において、前記バイオベース接着剤層における前記無機顔料及び/または有機顔料の含有量は、前記バイオベース接着剤層の全重量に対して、0重量%超50重量%以下であり、例えば、0、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50重量%である。
【0070】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層、前記バイオベース接着剤層及び前記バイオベース導電性ペースト層の少なくとも1つは、添加剤をさらに含み、前記添加剤は、固化剤、触媒及び界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、ここで、前記バイオベース絶縁層における前記添加剤の含有量は、前記バイオベース絶縁層の全重量に対して、0重量%超20重量%以下であり、例えば、1、2、3、4、5、10、15、または20重量%であり、前記バイオベース接着剤層における前記添加剤の含有量は、前記バイオベース接着剤層の全重量に対して、0重量%超20重量%以下であり、例えば、1、2、3、4、5、10、15または20重量%であり、前記バイオベース導電性ペースト層における前記添加剤の含有量は、前記バイオベース導電性ペースト層の全重量に対して、0重量%超10重量%以下であり、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10重量%である。
【0071】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層は、2H~6Hの硬度を有する。
【0072】
1つの具体的な実施態様において、バイオベース樹脂は、イミド結合(-C(O)-N(R)-C(O)-)を有するバイオベースポリアミドイミド樹脂であり、ここで、前記バイオベースポリアミドイミド樹脂は、少なくとも以下の式(I)で表される構成単位を含む。
【0073】
【化3】
(式(I)中、nは、20~35である。)
【0074】
1つの具体的な実施態様において、石化系樹脂は、石化系ポリアミドイミド樹脂であり、ここで、前記石化系ポリアミドイミド樹脂は、少なくとも以下の式(II)で表される構成単位を含む。
【0075】
【0076】
もう1つの具体的な実施態様において、石化系樹脂は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、アクリル系樹脂、または1:1の重量比で混合してなるビスフェノールAエポキシ樹脂とアクリル系樹脂との組み合わせから選ばれる。
【0077】
1つの具体的な実施態様において、前記添加剤は、固化剤であり、前記添加剤は例えば4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン(4,4’-diaminodiphenyl sulfone)から選ばれる。
【0078】
1つの具体的な実施態様において、前記金属めっき層は、厚みが0.1~5μmの銅箔層、銀箔層、アルミ箔層、またはニッケル箔層である。本具体的な実施態様において、前記金属めっきの厚みは、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5μmである。
【0079】
もう1つの具体的な実施態様において、前記多孔金属層は、厚みが2~15μmであり、5μm~25μmの穴径、及び15%~30%の空隙率を有し、その引っ張り強度は、20kg/mm2以上であり、伸長率は、5%以上である。本具体的な実施態様において、前記多孔金属層の厚みは、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15μmであり、前記多孔金属層の穴径は、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25μmであり、前記多孔金属層の空隙率は、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、17、28、29、または30%である。
【0080】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース導電性ペースト層は、複数の導電粒子を有する単層のバイオベース導電性ペースト層である。本具体的な実施態様において、前記複数の導電粒子を形成する材質は、銅、銀、ニッケル、スズ、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、炭素及びそれらの合金からなる群から選ばれる少なくとも1つである。1つの好ましい実施態樣において、前記合金は、ニッケル-金合金、金-銀合金、銅-ニッケル合金、銅-銀合金、銀-ニッケル合金及び銅-ニッケル金合金からなる群から選ばれる少なくとも1つである。本具体的な実施態様において、前記複数の導電粒子の含有量は、前記バイオベース導電性ペースト層の全重量に対して、5~85重量%であり、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85重量%である。
【0081】
もう1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース導電性ペースト層は、二層構造であり、1層の導電粒子を有しない粘着層、及び1層の複数の導電粒子を有する導電粘着層で積層されて構成されており、ここで、前記導電粒子を有しない粘着層は、前記金属層と、前記複数の導電粒子を有する導電粘着層との間に粘着し、前記金属層は多孔金属層である。本具体的な実施態様において、前記複数の導電粒子の含有量は、前記導電粘着層の全重量に対して、5~85重量%であり、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85重量%である。
【0082】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層の厚みは、2~50μmであり、前記バイオベース接着剤層の厚みは、2~50μmであり、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50μmであり、前記金属めっき層の厚みは、0.1~5μmであり、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5μmであり、前記バイオベース導電性ペースト層の厚みは、3~50μmであり、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50μmである。
【0083】
もう1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層の厚みは、2~50μmであり、前記バイオベース接着剤層の厚みは、2~50μmであり、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50μmであり、前記多孔金属層の厚みは、2~15μmであり、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15μmであり、前記バイオベース導電性ペースト層の厚みは、3~50μmであり、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50μmである。
【0084】
もう1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース絶縁層の厚みは、3~10μmであり、前記バイオベース接着剤層の厚みは、3~10μmであり、例えば、3、4、5、6、7、8、9、または10μmであり、前記多孔金属層の厚みは、3~8μmであり、例えば、3、4、5、6、7、または8μmであり、前記バイオベース導電性ペースト層の厚みは、5~15μmであり、例えば、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50μmである。
【0085】
1つの具体的な実施態様において、前記担体層は、厚みが12.5~250μmの担体膜または剥離フィルムであり、例えば、12.5、13、14、15、20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、245、または250μmである。
【0086】
1つの具体的な実施態様において、前記バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜は、剥離層をさらに含み、前記剥離層は、前記バイオベース導電性ペースト層上に形成されて前記バイオベース導電性ペースト層が前記金属層と前記剥離層との間に位置する。1つの実施例において、前記剥離層は、厚みが25~100μm、例えば、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100μmの剥離フィルムであり、前記剥離フィルムは、PETフッ素剥離フィルム、PETシリコーンオイルを含む剥離フィルム、PETつや消し剥離フィルム及びPE剥離フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1つである。もう1つの実施例において、前記剥離層は、厚みが25~130μm、例えば、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、または130μmのPEコート紙である。もう1つの実施例において、前記剥離層は、厚みが25~100μm、例えば、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100μmのキャリアフィルムであり、前記キャリアフィルムは、弱粘着キャリアフィルムである。
【0087】
1つの具体的な実施態様において、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の製造方法は、金属めっき層を有する遮蔽膜の製造に用いられ、
担体層にバイオベース絶縁層を形成した後、50℃~180℃の条件で前記バイオベース絶縁層を固化させる工程S101と、
前記バイオベース絶縁層に真空スパッタリング、蒸着、化学めっき及び電気めっきから選ばれる1つによって金属めっき層を形成する工程S102と、
前記金属めっき層にバイオベース導電性ペースト層を形成して、前記金属めっき層を前記バイオベース絶縁層と前記バイオベース導電性ペースト層との間に位置させる工程S103と、
前記バイオベース導電性ペースト層に剥離層を押圧する工程S104とを含む。
本具体的な実施態様において、前記製造方法は、バイオベース金属めっき層を形成する前、前記バイオベース絶縁層にもう1層のバイオベース絶縁層を形成し、50°C~180°Cの条件で前記もう1層のバイオベース絶縁層を固化させ、さらに前記バイオベース金属めっき層を形成して、前記金属めっき層を前記もう1層のバイオベース絶縁層と前記バイオベース導電性ペースト層との間に位置させる工程S1011と、
前記金属めっき層前を形成する前、前記バイオベース絶縁層または前記もう1層のバイオベース絶縁層に塗布法または転写法によってバイオベース接着剤層を形成し、さらに前記金属めっき層を形成して、前記金属めっき層を前記バイオベース接着剤層と前記バイオベース導電性ペースト層との間に位置させる工程S1012とをさらに含んでよい。
【0088】
もう1つの具体的な実施態様において、本開示は、多孔金属層を有する遮蔽膜の製造に用いられるバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の製造方法であって、
担体層にバイオベース絶縁層を形成した後、50℃~180℃の条件で前記バイオベース絶縁層を固化させる工程S201と、
多孔金属層に塗布法または転写法によってバイオベース接着剤層を形成する工程S202と、
前記バイオベース絶縁層接触を前記バイオベース接着剤層に押圧して、前記バイオベース接着剤層を前記バイオベース絶縁層と前記多孔金属層との間に位置させる工程S203と、
前記多孔金属層にバイオベース導電性ペースト層を形成する工程S204と、
前記バイオベース導電性ペースト層に剥離層を押圧する工程S205とを含む、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の製造方法をさらに提供する。
【0089】
本具体的な実施態様において、前記製造方法は、前記バイオベース絶縁層を固化させた後、前記バイオベース絶縁層にもう1層のバイオベース絶縁層を形成し、50℃~180℃の条件で、前記もう1層のバイオベース絶縁層を固化させる工程S2011をさらに含んでもよい。
【0090】
さらに、本具体的な実施態様において、前記多孔金属層の製造方法は、
薄膜にアルミ層を塗布する工程S2012と、
前記アルミ層の表面に剥離処理を行う工程S2013と、
前記剥離処理したアルミ層の表面にスパッタリング、蒸着及びめっきから選ばれる1つによって金属層を形成する工程S2014と、
前記金属層をマイクロエッチング処理して、複数の穴を形成するように、前記金属層における金属粒子をきれいに並べさせる工程S2015と、
前記薄膜と前記アルミ層を剥離して、前記金属層に多孔金属層を形成させる工程S2016とを含む。
【0091】
本具体的な実施態様において、前記薄膜は、ポリイミド薄膜またはエチレンテレフタレート薄膜であり、前記金属層における金属粒子は、銅、アルミニウム、鉛、ニッケル、コバルト、スズ、銀、鉄及び金からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【実施例】
【0092】
以下、実施例と比較例により本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜の性能を説明する。また、本開示に記載の概念は、以下の実施例でさらに説明するが、前記実施例は、請求項に記載された本開示の範囲に限定されるものでない。
【0093】
実施例A1~A9とB1~B8は、本開示のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜である。
【0094】
本開示の実施例で使用される材料及び成分を以下の表1に示す。
【0095】
【0096】
上記の表において、R-1、R-2、R-3、R-4、及びDDSは、それぞれ以下に示す。
【0097】
(1)バイオベース樹脂R-1
ポリアミドイミドワニスを使用する。具体的に、自然界の動植物から抽出して得るバイオベース二無水物とバイオベースジアミン部分を前駆体モノマーとして、さらにシクロヘキサノンを溶剤として添加して合成反応を行った後、形成されたイミド結合(-C(O)-N(R)-C(O)-)を有するバイオベース樹脂である。前記バイオベースポリアミドイミド樹脂は、少なくとも以下の式(I)で表される構成単位を含有し、ここで、式(I)中、nは20~35である。
【0098】
【0099】
(2)石化系樹脂R-2
石油化学産物であるポリアミドイミド樹脂を使用する。具体的に、石油化学産物から抽出して得る前駆体モノマーを合成反応により形成された石化系樹脂である。前記石化系ポリアミドイミド樹脂は、少なくとも以下の式(II)で表される構成単位を含有する。
【0100】
【0101】
(3)石化系樹脂R-3:ビスフェノールAエポキシ樹脂BE501A80(長春化工より購入)を使用する。
(4)石化系樹脂R-4:ビスフェノールAエポキシ樹脂BE501A80(長春化工より購入)及びアクリル系樹脂JT-A1767(JPT CORPORATIONより購入)を1:1の重量比で混合して使用する。
(5)添加剤DDS:4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン(4,4’-diaminodiphenyl sulfone)を固化剤として使用する。
【0102】
本開示の実施例及び比較例における遮蔽膜の各層の厚みを以下の表2に示す。
【0103】
【0104】
本開示の実施例における遮蔽膜の製造は、以下の通りである。
【0105】
<実施例A1及びA2>
表1における実施例A1及びA2の各層成分の含有量、及び表2における実施例A1とA2の各層の厚みに従って、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜を製造し、それはバイオベース絶縁層(2層のバイオベース絶縁体層を含む)、バイオベース接着剤層、金属層(多孔金属層である)、及びバイオベース導電性ペースト層を含み、具体的な製造方法は、以下のように説明する。
【0106】
まず、厚みが50μmの担体膜にポリアミドイミドワニスを塗布し、浮動式塗布オーブンで、50~180℃の範囲で10分間加熱する(通常は、3~10分間加熱する)温度範囲を採用し、低温で固化させて第1のバイオベース絶縁体層を形成する。次に、前記第1のバイオベース絶縁体層の表面にポリアミドイミドワニスを塗布し、浮動式塗布オーブンで、50~180℃の範囲で10分間加熱する(通常は、3~10分間加熱する)温度範囲を採用し、低温で固化させて第2のバイオベース絶縁体層を形成する。
【0107】
次に、多孔銅箔金属層となる多孔金属層を製造しておく。薄膜及びアルミニウムワイヤを溶解炉蒸発器に置き、高真空の条件で1700℃まで加熱して蒸発させて、前記薄膜に厚みが400nmのアルミ層を積層した後、前記アルミ層の表面に剥離処理を行い、さらに前記剥離処理をしたアルミ層の表面に、スパッタリングで銅箔金属層を形成し、化学マイクロエッチングで前記銅箔金属層を処理して複数の穴を形成する。最後は、前記薄膜及び前記アルミ層を剥離し、前記銅箔金属層に多孔銅箔金属層を形成させて、ここで、前記多孔銅箔金属層は、直径が1~20μmの穴及び25±2%の空隙率を有し、引っ張り強度が22kgf/mm2であり、伸び率が6%である。
【0108】
次に、前記多孔銅箔金属層に転写法でバイオベース接着剤層を形成し、前記バイオベース絶縁層を前記バイオベース接着剤層に接触押圧して、前記バイオベース接着剤層を前記バイオベース絶縁層と前記多孔金属層との間に位置させ、その後、前記多孔金属層にバイオベース導電性ペースト層を塗布し、最後は、前記バイオベース導電性ペースト層にCA-0700剥離フィルム(南亜より購入)を押圧し、ここで、前記押圧製造工程の温度は60℃であり、圧力は、2kgである。
【0109】
<実施例A3及びA4>
表1における実施例A3及びA4の各層成分の含有量、及び表2における実施例A3とA4の各層の厚みに従って、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜を製造し、それはバイオベース絶縁層(絶縁体層を含まない)、バイオベース接着剤層、金属層(多孔金属層である)、及びバイオベース導電性ペースト層を含む。
【0110】
その製造方法において、2層のバイオベース絶縁体層を1層のバイオベース絶縁層に変更する以外は、実施例A1及びA2と同様に行う。
【0111】
<実施例A5及びA6>
表1における実施例A5及びA6の各層成分の含有量、及び表2における実施例A5とA6の各層の厚みに従って、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜を製造し、それはバイオベース絶縁層(2層のバイオベース絶縁体層を含む)、バイオベース接着剤層、金属層(金属めっき層である)、及びバイオベース導電性ペースト層を含み、具体的な製造方法は、以下のように説明する。
【0112】
まず、厚みが50μmの担体膜にポリアミドイミドワニスを塗布し、浮動式塗布オーブンで、50~180℃の範囲で10分間加熱する(通常は、3~10分間加熱する)温度範囲を採用し、低温で固化させて第1のバイオベース絶縁体層を形成し、次に前記第1のバイオベース絶縁体層の表面にポリアミドイミドワニスを塗布し、浮動式塗布オーブンで、50~180℃の範囲で10分間加熱する(通常は、3~10分間加熱する)温度範囲を採用し、低温で固化させて第2のバイオベース絶縁体層を形成した。また、前記第1のバイオベース絶縁体層におけるカーボンブラックの添加割合は、前記第1のバイオベース絶縁体層の全重量に対して10%であり、前記第2のバイオベース絶縁体層には、カーボンブラックを添加しない。その後、前記第2のバイオベース絶縁体層に塗布法によってバイオベース接着剤層を形成する。
【0113】
次に、前記バイオベース接着剤層に蒸着及び化学めっきを組み合わせる方式で金属めっき層を形成し、前記金属めっき層は、銅めっき金属層であり、ここで、前記蒸着の出力パラメーターは、10~50KWであり、蒸着のガス流量は、100~500SCCMであり、その線速度は、3~10m/minであり、化学めっきの電流密度は、5~100A/dm2(ASD)、その線速度は、3~10m/minである。
【0114】
最後は、前記鍍銅金属層に相対するもう一方の面にバイオベース導電性ペースト層を塗布し、最後は、前記バイオベース導電性ペースト層に相対するもう一方の面にCA-0700剥離層(南亜より購入)を押圧し、ここで、前記押圧製造工程の温度は、60℃であり、圧力は、2kgfである。
【0115】
<実施例A7>
表1における実施例A7の各層成分の含有量、及び表2における実施例A7の各層の厚みに從って、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜を製造し、それはバイオベース絶縁層(バイオベース絶縁体層を含まない)、バイオベース接着剤層、金属層(金属めっき層である)、及びバイオベース導電性ペースト層を含む。
【0116】
その製造方法において、2層のバイオベース絶縁体層を1層のバイオベース絶縁層に変更する以外は、実施例A5及びA6と同樣に行う。
【0117】
<実施例A8及びA9>
表1における実施例A8及びA9の各層成分の含有量、及び表2における実施例A8とA9の各層の厚みに従って、バイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜を製造し、それはバイオベース絶縁層(2層のバイオベース絶縁体層を含む)、金属層(金属めっき層である)、及びバイオベース導電性ペースト層を含む。
【0118】
その製造方法において、バイオベース接着剤層を含まず、また、金属めっき層に亀裂及び/または欠陥を有する以外は、実施例A5及びA6と同様に行う。
【0119】
<比較例1>
バイオベース成分を含まず、かつ一般の金属層を含有する市販の遮蔽性が高い高周波遮蔽膜を使用し、その各層の厚みは、表2に示しており、ここで、比較例1の絶縁層は、ポリウレタンインクである。
【0120】
<比較例2>
バイオベース成分を含まず、かつ一般の金属層を含有する市販の遮蔽性が高いる高周波遮蔽膜を使用し、その各層の厚みは、表2に示しており、ここで、比較例2の絶縁層は、Kapton黒色ポリイミド薄膜(デュポンより購入)である。
【0121】
<比較例3>
バイオベース成分を含まず、かつ一般の金属層を含有する市販の遮蔽性が高い高周波遮蔽膜を使用し、その各層の厚みは、表2に示しており、ここで、比較例3の絶縁層は、Kapton黒色ポリイミド薄膜(デュポンより購入)である。
【0122】
また、比較例1~3の金属層は、いずれも一般のマイクロエッチング処理が施されない銅箔層であり、バイオベース樹脂を石化系樹脂に変更する以外、比較例1~3の接着剤層及び導電性ペースト層の成分及び含有量は、表1に示す。
【0123】
表3には、実施例A1~A9、及び比較例1~3のGloss値、抵抗値、絶縁抵抗値、剥離強度、硬度、遮蔽性能、はんだ耐熱性、ユーザー側SMTのシミュレーション等の試験結果を示す。
【0124】
<試験方法>
1.空隙率試験:多孔金属層の空隙率は、以下の式によって計算される。
【0125】
【0126】
(式中、Mは、サンプルの質量(g)であり、Vは、サンプルの体積(cm3)であり、ρsは、緻密固体材質に対応する多孔体の密度(g/cm3)である。)
【0127】
2.引っ張り強度試験:規格IPC-TM-650 2.4.19 C(5/98)に従って試験を行う。
【0128】
3.伸長率試験:規格IPC-TM-650 2.4.19 C(5/98)に従って試験を行う。
【0129】
4.剥離強度試験:規格IPC-TM-650 2.4.9 Dに従って、サンプルの導電性ペーストの面に対して試験を行う。
【0130】
5.はんだ耐熱性試験:規格IPC-TM-650 2.4.13 Fに従って試験を行う。
【0131】
6.表面硬度試験:規格ASTM D3363に従って、鉛筆でサンプルの絶縁層面または第1の絶縁体層面に対して硬度試験を行う。
【0132】
7.電磁遮蔽性能試験:規格GB/T 30142-2013《平面の電磁遮蔽材料のシールド効果測定法》に従って試験を行う。
【0133】
8.光沢度(Gloss)値試験:寸法が3cm×8cmより大きいサンプルを用意し、光沢度装置でサンプル絶縁層の表面の縦向き方向(MD方向)に測定し、60°の値を読み出し、測定値とする。
【0134】
9.絶縁抵抗試験:金属層めっきが施されない遮蔽膜半製品を絶縁抵抗値の測定を行い、前記遮蔽膜半製品は、絶縁層と接着剤層のみを有する。まず、前記遮蔽膜半製品からA4サイズの大きさを切り出し、厚みが1ozの電解銅箔の光沢面にエポキシ樹脂接着剤を塗布し、ラミネートで前記切り出した半製品に前記エポキシ樹脂接着剤を塗布した電解銅箔を押圧し、絶縁層/接着剤層/エポキシ樹脂ペースト/電解銅箔の積層構造を形成し、その後、温度160℃で1時間熟成した後、試験サンプルを得た。その後、抵抗計を使用し、前記試験サンプルの絶縁層面の左、中、右の位置を測定し、上記3つのデータから平均結果を得る。
【0135】
10.抵抗値試験:デジタルマルチメータのオームモードで配線サンプルの抵抗値を測定する。長さ6cm(TD)×幅0.8cm(MD)の配線サンプル8本を直線的な方式で並べ、1~8の番号を付け、8本の配線サンプルは、それぞれ径が1.0mmの穴を有し、2つの穴の間の間隔は1cmであり、サンプル1とサンプル8の穴間の間隔は、7cmであり、MD方向に沿って2つの穴を1セットにして(番号1-番号2、番号1-番号3、番号1-番号4…番号1-番号8)試験を行い、合計7つの値を測定し、その平均で表1に記録する。
【0136】
11.バイオベース含有量試験:USDA認定、測定方法は、バイオベース由来炭素と石化由来炭素の比率として、規格ASTM D6866-12の14Cにより測定する。具体的に、バイオベース含有量%=[バイオ(有機)炭素]/[全(有機)炭素]×100%(% Bio-content =[Bio(Organic)Carbon]/[Total(Organic)Carbon]*100%)。
【0137】
12.ユーザー側SMTのシミュレーション試験:2℃/秒で120℃まで昇温した後に2分間予熱し、3℃/秒で245℃まで昇温した後に0.5分間維持し、4℃/秒で室温まで冷却し、その後、取り出して外観に欠けがあるかどうかを確認する。
【0138】
13.表面粗さ試験:原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、AFM)を使用し、規格JIS-B0601を従って試験を行う。
【0139】
14.剥離試験:引張試験機(tension testing machine)を使用し、規格ASTM D3330を従って試験を行う。
【0140】
【0141】
表3の試験の比較結果より、本願のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜は、良好な関連特性を有すると認められる。具体的に、バイオベース成分を含まず、かつマイクロエッチング処理が施されない金属層を使用した比較例1~3の遮蔽膜と比べて、本願実施例A1~A9におけるバイオベース成分を含む遮蔽膜において、実施例A1~A4における多孔金属層を使用した遮蔽膜、実施例A5~A7における亀裂及び/または欠陥を含まない金属めっき層を使用した遮蔽膜、または実施例A8とA9における亀裂及び/または欠陥を含み、かつより厚い金属めっき層を使用した遮蔽膜のいずれにも、電磁遮蔽性能、ユーザー側SMTのシミュレーション試験、SMT後のオン抵抗、耐候性能等において全て既存の遮蔽膜より優れており、ユーザー側の製造工程が求められる特別な条件を満たす。また、絶縁層、導電性ペースト、及び接着層の組分設計により、全体のバイオベース含有量がJORA認定とUSDA認定で測定しても、実際のバイオマスバイオベース含有量は20%より多くなり、各国からのバイオベースプラスチック認定を得る。また、比較例1~3の遮蔽膜の絶縁層面は、HB~2Hの表面硬度を有し、その表面が脆くて傷つきやすいことを示したが、本願実施例A1~A7の遮蔽膜のバイオベース絶縁層面/第1の絶縁体層面は、全て2Hの表面硬度を有するだけではなく、本願実施例A8とA9の遮蔽膜のバイオベース第1の絶縁体層面は、3Hの表面硬度をさらに有するため、優れた外観と機械的性能を実現できる。
【0142】
<実施例B1~B8>
実施例B1~B8のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜は、その各層成分の含有量、厚み、及び製造方法の全ては実施例A9と同様であるが、バイオベース絶縁体層及び担体膜それぞれのカーボンブラック添加量を以下の表4に示すように調整する。
【0143】
<比較例4>
比較例4のバイオベース成分を含むつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜は、比較例1と同様であるが、その絶縁層は、2層の絶縁体層の構造を有し、この絶縁体層及び担体膜のカーボンブラック添加量を以下の表4に示す。
【0144】
【0145】
上記の表において、第1の表面粗さとは、第1の絶縁層が担体膜に向かう方向の表面粗さを意味し、第2の表面粗さとは、第2の絶縁層が金属層に向かう方向の表面粗さを意味する。
【0146】
表4の試験の比対結果は、比較例4の遮蔽膜と比べ、本開示の実施例B3~B8は、異なる表面粗さを有するつや消しタイプ電磁干渉遮蔽膜が良好なユーザー側SMTのシミュレーション結果を有することを示した。また、比較例4の遮蔽膜と比べ、本開示の実施例B1~B8は、いずれも優れた担体膜との剥離力を有する。
【符号の説明】
【0147】
100:遮蔽膜
101:バイオベース絶縁層
1011:第1の表面
1012:第2の表面
102:バイオベース接着剤層
103:金属層
104:バイオベース導電性ペースト層
105:担体層
106:剥離層
200:遮蔽膜
201:バイオベース絶縁層
2011:第1の表面
2012:第2の表面
2013:絶縁体層
203:金属層
204:バイオベース導電性ペースト層
205:担体層
206:剥離層
300:遮蔽膜
301:バイオベース絶縁層
303:金属層
3031:欠陥
304:バイオベース導電性ペースト層
305:担体層
306:剥離層