(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】電気化学セルおよび水素含有ガス気流を処理する方法
(51)【国際特許分類】
C25B 9/23 20210101AFI20241217BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20241217BHJP
C25B 1/02 20060101ALI20241217BHJP
C25B 9/60 20210101ALI20241217BHJP
C25B 9/65 20210101ALI20241217BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20241217BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20241217BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/04791 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/0662 20160101ALI20241217BHJP
【FI】
C25B9/23
C01B3/00 Z
C25B1/02
C25B9/60
C25B9/65
C25B13/04 301
C25B15/02
H01M8/04 N
H01M8/04746
H01M8/04791
H01M8/0662
(21)【出願番号】P 2023104482
(22)【出願日】2023-06-26
(62)【分割の表示】P 2022505533の分割
【原出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-06-26
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】321003751
【氏名又は名称】エナプター エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ヤンユストゥス
(72)【発明者】
【氏名】フィルピ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】チャップマン ショーン クロフォード
(72)【発明者】
【氏名】ダイヤモンド ラザラス
(72)【発明者】
【氏名】プロカッチオ ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】カッペレッティ アレッサンドロ
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0004862(US,A1)
【文献】国際公開第2018/195275(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0323442(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0082328(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0208791(US,A1)
【文献】国際公開第2011/004343(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/122320(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/155503(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧力で水素
の入口気流を受け取るように構成された入口を備えるアノード半電池と、
第2圧力で水素を移送するように構成された出口を備えるカソード半電池と、
前記アノード半電池と前記カソード半電池とを分離する膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、
電力源と、
を有してなり、
前記MEAは、少なくとも、
アノード電極と、
カソード電極と、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられた陰イオン交換膜(AEM:Anion Exchange Membrane)と、
を備えて、
前記MEAは、
アノードガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)と、
カソードGDLと、
のうち、いずれか1つ以上を備え
て、
前記入口気流は、AEM電解装置からの出口気流である、
ことを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
少なくとも1つのアノード出口、
を有してなる、
請求項1記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記アノード半電池の前記入口と、
前記カソード半電池の前記出口と、
存在する場合は、前記アノード半電池の出口と、
のうち、いずれか1つ以上に設けられる圧力調整手段、
を有してなる、
請求項1または2記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記カソード半電池の前記出口に設けられる前記圧力調整手段は、使用時に、前記カソード半電池におけるガス圧を前記アノード半電池におけるガス圧よりも高く維持するように構成されている、
請求項3記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記MEAは、1つ以上の触媒を備える、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記1つ以上の触媒は、白金族金属ではない、
請求項5記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記MEAは、
前記アノード側および/または前記カソード側に設けられたマイクロポーラス層(MPL:Microporous Layer)と、
前記アノード側および/または前記カソード側に設けられた水管理膜と、
前記アノード側および/または前記カソード側に設けられた膜支持物と、
のうち、いずれか1つ以上を備える、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
前記AEMは、複合膜を備える、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項9】
前記AEMは、OH
-源でドープされる、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項10】
前記AEMの前記カソード側と前記AEMの前記アノード側とのうち、少なくとも一方に、アイオノマを含む、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項11】
前記MEAは、前記AEMのアノード側とカソード側とのうち、少なくとも一方に、アイオノマおよび/またはバインダを備えない、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項12】
前記AEMは、吸湿性粒子を含む、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項13】
前記吸湿性粒子は、濃度勾配で配置され、
前記吸湿性粒子の濃度は、前記AEMのカソード側において、より高くなる、
請求項12記載の電気化学セル。
【請求項14】
前記圧力調節手段は、使用時に、1-1000バールの範囲でセルにかかる圧力差を維持するように構成されている、
請求項3、または、請求項3に従属する請求項4乃至13のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項15】
前記カソード半電池の前記出口と連結している水分センサ、
を有してなる、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項16】
水素を燃料とする外部装置と連通可能に連結するように構成された出力手段、
を有してなり、
前記出力手段は、前記外部装置に直接燃料を供給する、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項17】
使用時に、勾配減少中に前記セルにより生成された電力が貯蔵される、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項18】
前記電力源は、逆パルスである、
請求項1乃至17のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項19】
スタックに構成されている、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の、少なくとも、
第1電気化学セルと、
第2電気化学セルと、
を有してなり、
前記第1電気化学セルの前記カソード半電池の前記出口は、前記第2電気化学セルの前記アノード半電池の前記入口と流体連通している、
ことを特徴とする電気化学セル接合体。
【請求項20】
スタックとして直列に配置された、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の複数の電気化学セル、を有してなり、
前記スタックにおける最終の前記電気化学セル以外の前記電気化学セルそれぞれの前記カソード半電池の前記出口は、前記スタックにおける隣接する前記電気化学セルの前記アノード半電池の前記入口と流体連通し、
前記スタックにおける最終の前記電気化学セルの前記カソード半電池の前記出口は、外部の送り先へ水素を輸送するように構成されている、
請求項19記載の電気化学セル接合体。
【請求項21】
水素含有ガス気流を処理する方法であって、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の電気化学セルを提供する工程と、
前記アノード半電池の前記入口に水素含有ガス気流を供給する工程と、
前記カソード半電池の前記出口から水素を送出する工程と、
を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
水素含有ガス気流を処理する方法であって、
請求項19または20記載の電気化学セル接合体を提供する工程と、
前記スタックにおける前記第1電気化学セルの前記アノード半電池の前記入口に水素含有ガス気流を供給する工程と、
前記スタックにおける前記電気化学セルそれぞれの前記カソード半電池の前記出口から、別の前記電気化学セルの前記アノード半電池の前記入口へと、水素を移送する工程と、
前記スタックの最終の前記電気化学セルの前記カソード半電池の前記出口から、外部の送り先へと、水素を輸送する工程と、
を含む、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルと、スタックに配置された1つ以上の電気化学セルを任意に用いることにより水素含有ガス気流を処理する方法とに関する。セルまたはスタックを、例えば、気流中の水素の検出、水素の精製と圧縮、および発電のために使用し得る。
【背景技術】
【0002】
水素は、産業供給材料として、または長期エネルギー貯蔵の手段としてなど、多くの方法で用いられる。乗り物の燃料電池など、ある種の用途では、350バールまたは700バールなどの高圧が必要とされる。用途によっては、より高い圧力が望ましいとされることがある。残存水分は、構成要素を損ない、効率を低下させ、または、その他の好ましくない結果を招き得るため、貯蔵する水素は乾燥していることが不可欠である。
【0003】
水素は、長期と短期の両方のエネルギー貯蔵手段として、より広く採用されつつある。水素は、さらに、既存の天然ガスパイプラインで用いられて熱を提供し、燃料電池で用いられる場合は電気を提供し得る。水素には、多数の工業的用途もある。
【0004】
電気分解装置は、水を分解して水素と酸素とを生成するために用いられる装置である。このようなシステムは、一般に、現在利用可能な3つの主な技術、すなわち、陰イオン交換膜(AEM:Anion Exchange Membrane)システムと、プロトン交換膜(PEM:Proton Exchange Membrane)システムと、液体アルカリシステムのうちの1つである。固体酸化物の電気分解など、他のシステムも利用可能である。
【0005】
国際公開第2011/004343号に開示されているとおり、水素は、炭化水素から生成するか、または環境に配慮した方法で電気分解することにより生成することができる。化石燃料に依存することなく、「グリーン」水素を生成することが好ましい。
【0006】
従来の水素圧縮方法は、機械的手段と非機械的手段とを含む。機械圧縮にはエネルギーが必要とされること、コンプレッサ内の油/潤滑剤により水素が汚染されること、および、予備乾燥が必要とされることなど、多くの問題がある。さらには、そのようなコンプレッサへの給電やコンプレッサのコストも考慮の対象に含まれる。
【0007】
PEM電気化学圧縮では、低圧水素が水と反応して、ヒドロニウムイオンと電子とに分解され、ヒドロニウムイオンは、再結合する前に、膜を通過して、水素ガスと水とを形成する。PEMシステムでは、下記の反応が生じる。
PEMアノード
H2+2H2O→2H3O++2e-
PEMカソード
2H3O++2e-→H2+2H2O
【0008】
水は、PEM電気化学圧縮システムにおけるカソードに存在し、本発明で見られる反応経路に対して基本的な相違が観察される。したがって、水素をPEM電気化学セルで圧縮してもよいが、水素は、本質的には水分を含み、したがって不純物であるので、貯蔵前にPEM電気化学圧縮では乾燥機を使用しなくてはならない。
【0009】
さらに、PEMの酸性環境とは、白金族金属(PGM:Platinum Group Metal)触媒を意味し、高価な金属/コーティング(例えば、チタン)を使用しなくてはならない。これは、様々な理由で、広範囲の適用にとって障害となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、水素を電気化学的に圧縮かつ精製する手段と方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、第1圧力で水素を受け取るように構成された入口を有するアノード半電池と、第2圧力で水素を移送するように構成された出口を有するカソード半電池と、アノード半電池とカソード半電池とを分離する膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、電力源と、を備え、MEAは、少なくとも、アノード電極と、カソード電極と、アノード電極とカソード電極との間に設けられる陰イオン交換膜(AEM)と、を備える、電気化学セルが提供される。
【0013】
本明細書では、用語「セル」は、電気化学セルを意味する。スタックは、通常、複数のセルと見なされるが、用語「セル」を、1つのスタック内の単一セル、または、スタック全体を説明するのに用い得る。
【0014】
本明細書では、陰イオン交換膜に関して、用語「湿気を帯びた」と、用語「水和した」と、用語「給湿された」は、区別なく使用される。
【0015】
本明細書では、用語「水分センサ」と用語「湿度センサ」は、区別なく使用され、また、水の存在を検知することができるすべてのセンサをカバーするように意図されている。
【0016】
本明細書では、用語「アノードおよびカソード」は、アノード半電池およびカソード半電池と、区別なく使用され得る。
【0017】
本明細書では、用語「陰イオン交換膜(AEM)」は、陰イオン交換特性を有し、一方、陽イオン交換特性を有する、または有さない、任意のイオン交換材料(例えば、KOHドーピングPBI系材料により付加されたカリウムイオン、またはカチオンポリマーおよび/もしくは官能価とアニオンポリマーおよび/もしくは官能価との混合物)に使用され得る。付加的なカチオン基は、半反応のいずれかまたは両方に、関わっていても、関わっていなくてもよい。
【0018】
本明細書では、用語「圧縮」は、一般に、圧力の増加を意味するが、いくつかの実施形態では、圧力の低減が望まれ得ると想定し、用語「圧縮」は、減圧と同義的に使用され得る。電気化学セルをコンプレッサと称し得るが、それにより、セルが精製のためだけのセンサまたは手段として動作する変形例が除外されることはない。
【0019】
本明細書では、用語「送り先」は、精製および/または圧縮された水素の最終用途、例えば、限定はしないが燃料補給または貯蔵などを意味する。
【0020】
温度および圧力調整の手段と、バルブと、配線などを含む、バランスオブプラント(BOP:Balance Of Plant)については説明しない。電源と電気化学セルとの接続についても、本明細書では説明しない。
【0021】
水素は、単一のセルコンプレッサが達成可能な圧力よりも高い圧力で必要とされることがよくあるので、1つ以上のセルを直列に用いてもよく、複数のセルでスタックを構成すると想定する。なお、1つ以上のスタックをコンプレッサにおいて用いてもよい。さらに、不純物濃度が一定レベルより高い場合、2つ以上のセルが望ましいとされ得る。
【0022】
本発明によれば、第2実施形態として電気化学セル接合体が提供される。電気化学セル接合体は、おおむね前述のとおり、少なくとも第1電気化学セルと第2電気化学セルとを備え、電気化学セルはスタックに構成され、第1電気化学セルのカソード半電池の出口は、第2電気化学セルのアノード半電池の入口と流体連通している。
【0023】
本明細書では、用語「セルのステージ」は、1つ以上のセルを意味し、アノードに流入する水素は、圧力の点で互いにおおむね類似しており、また、1つのステージにおける各セルのカソードの出口が組み合わせられて、次のステージのセルのアノードへの供給装置となる。各ステージを、並列、直列、または、並列と直列との組み合わせで接続してもよい。
【0024】
流体を圧縮する際、多数のステージで圧縮するのが、一般的な方法である。同じ方法を電気化学圧縮に適用できる。本発明の一実施形態において、前述のとおり、1つ以上のセルを各ステージに設けることにより、多数のステージでの圧縮を実現すると想定する。第1圧力で第1ステージにおけるセルのアノードに水素が流入する。このとき、第1ステージのセルからのカソード出口では第2圧力であり、複数の出口は組み合わされている。第2圧力の第1ステージからのカソード出口は、通常、第2ステージの1つ以上のアノード半電池の入口となるか、または、圧縮/精製のステージが1つのみである場合、出口は、貯蔵所につながる。
【0025】
各ステージのセルまたはスタックを並列に配置するか、または、省スペース化の手段として、多数のステージを可能にする配管とBOPとに直列に配置することができると想定する。図は、様々な配置を示す。各セルを分離および/または絶縁する手段を提供してもよい。
【0026】
圧縮するセルの各グループまたはステージに対してセルまたはセルのスタックにかけられた電流の合計は、一般に、圧縮する次のグループまたはステージにかけられる電流の合計とほぼ同じである。あるステージにおける各セルの圧力差が他のステージにおける圧力差と異なる場合、各ステージで膜にかかる必要な電流にバラツキが生じる。圧力差が大きくなると、水素の逆拡散(クロスオーバ)を克服するために、より高い電流密度が必要となる。しかし、この結果、感応電流の効率が低下し得る。本実施形態は図に示されている。
【0027】
通常、精製は、圧縮と同時に生じる。そのような実施形態において、第2圧力は、第1圧力より高い。水素が高圧でカソード出口から流出するように、各カソード出口において、圧力を調整する任意の既知の手段を用いてもよい。別の実施形態において、水素を減圧する必要があってもよく、適宜、圧力調整手段を製造してもよい。
【0028】
単一セルまたはセルのスタックを備えたAEMコンプレッサにおいて、水素は、第1圧力で第1セルのアノード半電池に流入し、第1カソード半電池において第2圧力になるまで加圧される。第2圧力の水素気流は、第1カソード半電池から第2セルのアノード半電池へと送られる。水素は、第2カソード半電池において第3圧力になるまで加圧されるなどする。一連のセルにおいて、圧力は、例えば、P1<P2<P3<P4など、累進的に高くなる。カソード半電池の圧力は、アノードでの圧力よりも高く、カソード半電池に含有される水素は、それに対応するアノードにおける水素および前のセルの水素よりも純度が高いと想定される。
【0029】
AEMシステムは、ヒドロキシアニオンOH-であり、ヒドロニウム(溶媒和プロトン)ではなく膜を通過するため、PEMとは本質的に異なる。したがって、動作メカニズムが異なっており、新たな問題を克服しなくてはならない。反応は以下のとおりである。
AEMアノード
H2+2OH-→2H2O+2e-
AEMカソード
2H2O+2e-→H2+2OH-
【0030】
AEM系システムにおける電気化学圧縮では、水が水素圧縮と並行してカソードで消費されるので、さらなる乾燥工程は必要とされない。他の選択肢に優る明瞭な利点は、現行の実施において理解される。
【0031】
反応経路は、PEMとは基本的に異なり、水素は2つの水素イオンに必ず分解するという電気化学分野における一般的な見解とは相反する。
【0032】
AEMシステムで電気化学圧縮された水素は乾燥しているということが理解できる。水は、アノード反応で生成され、カソード反応で消費されるので、ほぼ乾燥している水素は、第1セルから第2セルなどへと移行し得る。MEAを適用して、本明細書に記載する水管理手段により、水を保持することが好ましい。
【0033】
PEMシステムにおいて、白金または白金族金属(PGM)は、アノードとカソードの両方で、触媒として必要である。本発明のAEM電気化学圧縮において、PGM触媒を使用してもよいが、システムを本質的により持続可能にできれば、PGM触媒を必要としない。水素発生反応(HER:Hydrogen Evolution Reaction)および/または水素酸化反応(HOR:Hydrogen Oxidation Reaction)のための任意の既知の触媒を使用してもよいが、本発明が前述の触媒により限定されることを意図しない。アノード触媒とカソード触媒とは、同じでも、異なってもよい。
【0034】
MEAは、アイオノマおよび/またはバインダを含まなくてもよい。あるいは、MEAは、アイオノマとバインダの両方、またはいずれかを含んでもよい。一実施形態において、MEAは、導電性ウイスカを有する基材を備え、薄い触媒層を基材上にスパッタリングすることで、表面積を最大にし、必要とされる触媒を最少にすると想定する。大きな表面積で密着させることで、アイオノマを必要とすることが少なくなる。
【0035】
陰イオン交換膜は、所望の特性を備えた任意の膜でもよい。必要とされる特性は、主に、高いイオン伝導性と、低い気体透過性と、高い機械的強度と、親水性である。しかし、膜は複合膜でもよいと想定する。複合膜は、限定されないがモンモリロナイトなどの粘土のナノ粒子などの吸湿性粒子からなる無機充填材、限定されないがエレクトロスピニングにより生成される任意のアイオノマナノ粒子もしくはファイバなどの有機充填材、または、無機充填材と有機充填材の組み合わせを備える。アイオノマは、アニオンアイオノマでもよい。
【0036】
膜は、親水性の無機充填材および/または有機充填材を備えたポリマーバックボーンを有することを想定する。親水性により、水は保持され、かつ、高圧の水素は、乾燥している状態を確実に保たれる。ポリマーは、ポリベンズイミダゾール(polybenzimidazole:PBI)でもよく、好ましくは、耐アルカリ性および/または正電荷との共有結合性を向上させるために改変したものでもよいと想定するが、これは、限定的な特徴となることを意図していない。さらに、共有結合した正電荷(例えば、第四級アンモニウム塩)、および/または、限定されないが高濃度アルカリ性溶液(例えば、KOH)などを用いた酸性水素(例えば、PBIにおけるピロール水素)の中和に由来するイオン交換能力と比較して、膜は、余剰のOH-でドープしてもよいと想定する。OH-源は、任意の形態でもよいが、水性であることが好ましい。
【0037】
水素を電気化学圧縮する際、膜にかかる圧力差を考慮しなくてはならない。圧力差が大きすぎる場合、膜または他の構成要素が損傷し得る。膜の機械的強度を高めると、イオン導電性など、他の領域における性能が低減し得る。単一セルにおける圧力差は、理論的には限定されないが、実際には、構成要素の保全性およびクロスオーバのため、限定される。各セルにおいて1バール-2000バール、より好ましくは1バール-1000バール、圧力が上昇するのを観察できることを想定する。圧力差は、10バール-500バール、10バール-100バール、10バール-80バール、20バール-50バール、30バール-40バールの範囲でもよい。AEM電気化学コンプレッサは、1つのスタックにおける1セルにつき約35バール上昇することを想定する。
【0038】
電気化学コンプレッサは水蒸気改質などの任意の既知の手段により生成される水素を用いて機能すると想定するが、グリーン水素源を用いることが好ましい。これを実現するために、入口気流は、電気分解装置、より好ましくはAEM電解装置からの出口気流であることが好ましい。不純物が存在してもよいが、水と酸素とに限定されるべきである。他の不純物は存在するとしても、触媒の作用を損なわせる虞がないものとすべきであり、一酸化炭素などの不純物は除外される。他の不純物、例えば、OH-とは異なる陰イオンを含む酸または塩は、OH-と反応し得る。CO2、SO3、NO3などの気体状の酸が許容される状況は生じてもよい。触媒の作用が損なわれるのが一時的な場合、気体状の酸は許容され得る。その理由は、ヒドロキシイオンを消費して酸を除去する反応のアノード側で、気体状の酸は酸性型に変換され得るからである。水蒸気改質からの水素を圧縮する実施形態では、不純物は除去されるものとする。
【0039】
本発明によれば、水素は加圧かつ精製され、また、許容されるいずれの不純物も、第1半電池を通過しない。水は、膜結合性を保持するはずであり、カソードで発生したOH-がアノードに移動すると、その結果、アノード反応により消費される。一部の水は、電気浸透抵抗により、OH-と共に、カソードからアノードまで輸送されてもよい。膜にかかる水分流動は、大きさと方向の両方において、供給される電流に依存する。
【0040】
電力を、DC、AC、パルス電流、または逆パルス電流として供給してもよいと想定する。しかし、好ましい実施形態では、供給電力は、DC、パルス電流、または逆パルス電流のうちのいずれかである。逆パルス電流の利点は、電流が一時的に逆になるときに、電極から有害物質が除去されることである。
【0041】
すべてのセルの膜は、十分に湿気を帯びた状態を保持しなければならない。その特性のために選択される膜と共に、アノード反応で発生した水は、上記目的を果たす。生成された水は、カソードを溢れさせることなく、または、カソード水素気流で除去されることなく、膜の水分を保持するのに十分な量であるべきである。不要な水移動を抑制する/防ぐために、水管理手段を用いる。水管理手段については本明細書で開示する。
【0042】
例えば、マイクロポーラス層(MPL:Microporous Layer)を用いてもよい。マイクロポーラス層は、水素が移動するのに十分な多孔性を有するが、いずれの方向にもMPLを越えて水が流動するのを防ぐ。さらに、膜は、親水性成分を有してもよく、水の膜結合性を維持するが、カソード反応に用いることができる。
【0043】
MEAが、アノードと、陰イオン交換膜と、カソードとを備えてもよいが、通常、さらなる層も備える。下記のうちのいずれか1つ以上が、一方の極または両極に、単独または組み合わせて含まれ得る。ガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)を、カソードとアノードのうちの一方または両方に設けてもよい。GDLを設ける場合、アノードGDLと、アノード触媒層と、膜と、カソード触媒層と、カソードGDLとにより、MEAが構成される。別の実施形態において、MPLを用いてもよい。MPLは、一般に、カソード側にのみ設けられるが、アノード側にのみ設けてもよく、または、1つ以上のMPLを用いる場合は両側に設けてもよく、このとき、MPLは、同じでも異なってもよい。多孔性と疎水性とを有するため、MPLは選択される。さらに後述のとおり、水管理膜を、アノード側、カソード側、または両側で用いてもよい。
【0044】
MPLは、カソード側の各セルの膜、または、膜の1つのみもしくはいくつかに設けてもよいと想定する。あるいは、MPLは、アノード側またはアノード側とカソード側の両方に設けてもよい。さらに、MPLを用いた場合、MPLは、スタックにおける様々な位置で異なる特性、例えば、後の方のセルでは、より疎水性になるなどの特性を有していてもよいと想定する。最終のセルにおいて、より疎水性となるMPLは、最終出口に(余剰の)水が存在することを防ぐだろうが、これは、変動するMPL特性が、膜の他の特性に影響を及ぼすため、第1セルにおいては望ましくないことがある。MPLは、一般に、導電材料と結合剤とを含むスラリーを基材上に鋳造することにより生成される。導電材料は、カーボンブラックやニッケルナノ粒子などであるが、これらに限定されない。結合剤は、疎水性ポリマーであり、例えば、PTFEやFEPなどであるが、これらに限定されない。孔径と、分布と、様々な大きさの孔の分布と、疎水性と、他の生理化学特性は、各構成要素、各構成要素の割合、および/または製造方法を変更することにより、調整することができる。
【0045】
水管理の別の手段は、AEMの一方の側または両側、すなわちアノード側とカソード側のうちの一方または両方においてMEAにアイオノマを包含させることである。膜のカソード側とアノード側の両方にアイオノマが含まれることが好ましい。通常、水管理のために、アノード側よりもカソード側に、比較的多くのアイオノマが含まれる。あるいは、AEMのアノード側にアイオノマが含まれず、一方、膜のもう一方の側にアイオノマが含まれてもよいと想定する。
【0046】
膜における水管理のためのさらに別の手段は、MEAに水管理膜を包含させることである。水管理膜は、吸湿性を有し、MEAのカソード側にあることが好ましい。また、水管理膜は、イオン伝導性が高く、かつ/または導電性が高いことが好ましい。水管理膜を、アノード側、カソード側、または両側に設けてもよい。さらに別の実施形態において、水管理膜を、2つのAEMの間に配置してもよく、前述のいずれかの実施形態における水管理膜は、MEAの一部を為す。水管理膜は、例えば、カーボンブラックと混合したアイオノマである。
【0047】
水管理のためのさらに別の手段は、陰イオン交換膜複合体を用いることであり、このとき、充填材粒子/ナノ粒子/マイクロ粒子は、吸湿性を有する。充填材粒子/ナノ粒子/マイクロ粒子は、膜内で濃度勾配を有してもよく、または、AEMの一方または両側での別の層でもよく、このとき、必ずしもAEMに隣接する必要はないと想定する。粒子の濃度が比較的高い膜のカソード側を、アノード側と比較する。
【0048】
本明細書に記載する水管理メカニズムのうち、いずれか1つを、単独、または組み合わせて用いることができると想定する。
【0049】
本発明によれば、水素含有ガス気流を処理する方法が提供され、方法は、おおむね前述のとおりの電気化学セルを設ける工程と、アノード半電池の入口に水素含有ガス気流を供給する工程と、カソード半電池の出口から水素を送出する工程と、を含む。
【0050】
装置に関連する構造的制限のすべては、セルを動作させる方法に適用され、したがって、同じことが、セルのスタックを備えたコンプレッサを使用する方法にもいえる。
【0051】
単一セルコンプレッサを動作させる方法は、セルのスタックを備えるコンプレッサを動作させることに、おおむね適用することができる。
【0052】
本発明によれば、水素含有ガス気流を処理する方法が提供され、方法は、おおむね前述のとおりの電気化学セル接合体を設ける工程と、スタックにおける第1電気化学セルのアノード半電池の入口に水素含有ガス気流を供給する工程と、スタックにおける各電気化学セルのカソード半電池の出口から別の電気化学セルのアノード半電池の入口へと水素を移送する工程と、スタックにおける最終の電気化学セルのカソード半電池の出口から外部の送り先へと水素を輸送する工程と、を含む。
【0053】
前述した、電気化学セルと、電気化学セル接合体と、方法とにおいて、入口気流は、電気分解装置、水素貯蔵タンク、または、考え得る適度な純度の水素源から、直接送出されてもよい。
【0054】
特に水素の電解生成からの、考えられる唯一の不純物は、水と酸素である。水は、膜と結合するはずであり、酸素は、第1アノード半電池において水素と反応して、水を生成する。触媒は、ORRに対して活性化せず、存在する酸素は、アノード半電池から排出されることが好ましい。したがって、これらの不純物が問題になるとは考えられない。しかし、CO2、NO2、SO3などの他の不純物が存在するかもしれず、これらの不純物は、最初のいくつかのセルの効率を低減し得る可能性があるので、アノード半電池をパージする手段を設けてもよい。
【0055】
装置に関連する上記構造的制限のすべては、セルまたはスタックを動作させる方法に適用され、それに応じて、扱われるべきである。
【0056】
スタックの最終出口は、30バール-1000バールのいずれでもあり得る所望の圧力で水素を収容するのに適した1つまたは複数の貯蔵タンクに接続されると想定する。圧力は、業界基準である、300バールと、700バールと、1000バールとを含む任意の必要レベルまで増加させることができる。出口からの加圧水素を、加圧水素を使用、輸送、または貯蔵する任意のシステムまたは手段へと誘導することができると想定する。
【0057】
水は、各カソードコンパートメントで消費されるので、水素は、圧縮されつつ、有効に乾燥する。これは、PEM電気化学圧縮とは基本的に異なり、水はヒドロニウム(溶媒和プロトン)の形態で関わる。PEMシステムでは、水は、ヒドロニウムの形態で、水素イオンと共にカソードに輸送される。したがって、生成された水素は、本質的に湿気を帯びている。必要な膜導電特性を維持するために、スタック内の各膜を確実に適切に水和することが重要である。アノード半電池で発生した水が不十分な場合、水素入口に水を添加して供給原料を確実に湿らせることで、膜の水分量を安定することができると想定する。しかし、過度に多量の水を水素気流に添加すると、出口気流が湿気を帯びるか、または、アノード半電池を溢れさせ、水素がアノード触媒に接触することを妨げる可能性がある。これにより、水素を加圧するという目標は達成されるものの、水素は乾燥されない、または、物質輸送による過電圧のため、セル効率が低減する可能性がある。水素を加圧かつ乾燥させるために、後述のとおり、制御システムを用いてもよい。
【0058】
システムにおける水分を制御するために、少なくとも2つの水分センサを使用することを想定する。第1水分センサを供給原料気流上に設置し、第2水分センサを各出口気流上に設置するが、最終セルにおける水素の出口に設置することが最も重要である。スタックにおける所与のポイントで膜の飽和を判定する水分センサをスタックにおける1つまたはすべてのセルに設けることも可能であり、それにより、膜がスタック内で動作不能なほど乾燥しているかどうか、または、出口からの湿気を帯びた水素を排気してもよいか、もしくは好ましくは、後述のとおり、減圧して入口へと再循環してもよいかをオペレータが判定することができる。あるいは、熱伝導率センサを、水分センサの代わりに用いてもよい。任意の好適なセンサの代替形態を用いてもよい。
【0059】
2つ以上のセンサを、制御モジュール、例えば、限定するわけではないがPIDコントローラなどに、動作可能に接続する。水分量が所定の閾値未満となった場合、1つ以上の水入口に水を導入する。水を導入する複数の入口を、スタックに設けることができ、通常、カソードコンパートメント、アノードコンパートメント、またはセル間のいずれかにつながると想定する。しかし、圧力はスタックに沿って増加するため、追加の水のための単一の入口を、第1圧力の供給原料気流上に設けることが好ましい。このとき、入口は、第1センサの後ろに設けられ、水入口は、スタックの前に設けられるか、または第1アノードコンパートメント内につながるように設けられる。
【0060】
湿気を帯びた水素がコンプレッサの最終セルから流出した場合、問題が生じ得る。湿気を帯びた水素は、目的にかなっていないかもしれず、よって、貯蔵すべきではない。したがって、湿気を帯びた水素がスタックから流出した場合、水素を排気し得ることを想定する。好ましい実施形態において、湿気を帯びた水素を、水素が送り先に到達する前に、出口から再循環させることができる。加圧水素を、コンプレッサスタックの初期ステージで再導入するのに適したレベルにまで減圧する手段を介して、出口から入口へと再循環させると想定する。
【0061】
一時貯蔵タンクを再循環気流上に設けて、過剰な水分があった場合に、排気の必要性を最小限に抑えることを想定する。一時貯蔵タンクは、濃縮水分を排出する手段を備え、タンクから濃縮水分は除去され得ると想定する。このシステムまたは別のシステムで再使用する水を誘導する手段を設けることが理想的である。
【0062】
再生可能資源からの過剰エネルギーを利用することで、通常、電気分解により生成されるグリーン水素が生じる。この結果、水素の発生は、必ず不連続となる。したがって、電気化学圧縮スタックのための供給原料流も不連続となる。電気化学精製装置とコンプレッサとは、間欠運転に適合したものである。中間圧力、例えば、35バールで水素を貯蔵するために、バッファータンクを電気分解装置とコンプレッサとの間で用いることで、AEMコンプレッサに水素をより一貫して供給することができる。
【0063】
膜厚はすべて同じでもよいが、一方、膜厚はスタックのセル間で異なってもよいと想定する。一実施形態において、第1セルの膜が最も厚く、後に続くセルの膜は、より薄くてもよい。あるいは、第1セルは、より薄い膜を有し、次に続くセルの膜は、次第に厚くなってもよい。別の実施形態において、膜厚は、非直線的に変動し得る。すなわち、膜厚は、比較的薄くから厚くなり、再度薄くなるか、または、厚くから薄くなり、再度厚くなるか、またはこれらのうちいずれかの変形例であり得る。より厚い膜は、より多くの水を保持するため、これらの膜は、水分量の変動に対して、より高い弾性を確実に有し、よって、導電特性が確実に維持され、水素出口が湿気を帯びている可能性が確実に低減する。より厚い膜は、より大きな圧力差に対して、より高い弾性を有し得る。それにより、圧力差の段階的変化を同じにすることが必要とされるセルが少なくなる。
【0064】
より厚い膜は、一般に、より大きな圧力差とより高い圧力とに対して、比較的弾性がある。つまり、膜の各側に支持物を設けてもよいと想定する。支持物は、任意の好適な材料、すなわち、システムと有害な形で反応しない材料でもよい。限定はしないが発泡ニッケルなど、任意の好適な膜支持物を用いてもよい。支持物は、メッシュ、または、圧力に対する膜弾性を促進する他の好適な構造を有してもよい。さらに、膜支持物は、高い圧力差が原因となって膜がクリープ変形するのを防ぐのに有用である。
【0065】
好ましい実施形態において、熱管理手段が、セルまたはセルのスタックに設けられる。加熱および/または冷却により、確実に最適温度に到達することができる。最適温度は、室温より高いが100℃未満、より好ましくは40℃-80℃、実質的には60℃と想定する。
【0066】
セルまたはスタックを熱管理する手段が設けられてもよいと想定する。例えば、スタックもしくはセルの各端板および/もしくは中間フレームに据え付けられた加熱カートリッジまたはラジエータを用いて、加熱および/または冷却してもよい。別の選択肢は、前述した構成要素のいずれかの内部で、または前述した構成要素のいずれかに接触して循環する液体であるが、反応またはスタック効率に影響を及ぼし得る構成要素に接触しないで循環する液体であることが好ましい。
【0067】
スタックは、実質的には同一の断面積を有する各セルで構成されると想定するが、一方、スタックは、様々な断面積を有するセルを備えてもよい。そのような実施形態では、断面積が第1セルから最終セルに向かって次第に小さくなり、これに応じて、電流密度が増加して、総電流に比例して同じ水素流量を維持し、容積の低減により受動的に圧力上昇を促進し、その結果、カソード水素気流により、過剰な水を1つのセルから次のセルへと輸送する際、電気浸透抵抗を増加させて水管理を向上させる。その逆、すなわち、断面積が第1セルから最終セルに向かって次第に大きくなり、これに応じて、電流密度が低減し、1つのセルから次のセルまで次第に脱水する場合には水管理が促進される。各セルの断面は変動してもよく、または、スタックにおける多数のセルは、面積減少前は、同じ断面積を有してもよい。別の実施形態では、断面は、非直線的に変動してもよく、すなわち、比較的大きくから小さくなり、再度大きくなるか、または小さくから大きくなり、再度小さくなってもよい。
【0068】
セルまたはセルのスタックの断面は、任意の形をとってもよい。形は、円形、正方形、または長方形であることが想定する。あるいは、限定はしないが、五角形、六角形、七角形、八角形など、他の形を用いてもよい。あるいは、他の規則的または不規則な形を断面積として用いてもよい。
【0069】
MPLまたはGDLなどの他の前述した変形例に加え、様々な膜断面積と膜厚とを組み合わせて用いることができると想定する。断面積がスタックに沿って減少する一実施形態において、膜厚は、スタックに沿って増加し得る。そのような構成により、容積低減により圧力が増加するのを促進し、また、より高い電流密度で電気浸透抵抗を増加させ、かつ、より厚い膜により水の輸送を低減することにより、カソード水素気流における水分量が低減するのを促進する。他の実施形態では、前述した変形例のいずれの組み合わせを用いてもよい。
【0070】
開始時に各膜において水が十分にあることを確実にすることが重要であり、また、膜、一般にはMEAが、組み立て時におおむね飽和していることが確実となるようにコンプレッサの組み立てと待機状況とを考慮にいれるべきである。また、水を添加する手段を各アノードセルに設けてもよい。
【0071】
本発明は、触媒または触媒を堆積する方法により限定されることは意図されないが導電性基材に触媒スラリーまたはスプレーを用いて触媒を配してもよいと想定する。触媒は、通常、ナノ粒子を含み、導電性触媒層基材は、炭素布またはNi発泡体などでもよい。別の触媒基材は、CeまたはCeのナノ/マイクロ粒子でもよい。
【0072】
なお、電気化学圧縮は、関連するすべての利点により、可動部を必要としない。さらに、電気化学圧縮は、代替圧縮方法よりもはるかに低いエネルギーを有し、したがって、環境的により健全であり、水素の生成と管理とを考慮した場合、全体効率を向上させるものである。圧縮は、使用された膜の弾性に依存して、単一のステージで行われてもよい。さらに、プロセスを、断熱ではなく一定温度で行うことができる。
【0073】
本明細書で述べるとおり、電気化学コンプレッサを、ほぼ類似した構成を備える他の用途で用いてもよい。
【0074】
電気分解または別のグリーン水素源を介して、圧縮する水素を得ることが好ましい。この場合、電気化学セルは、すべてのシナリオに適用可能であるが、断続運転する可能性がある。圧力勾配の維持ではなく、勾配減少中/待機手順への移行中に、スタック内での圧力勾配が均一になる。待機状態への移行中にスタックへの電流を逆にすることで、セルからエネルギーを得ることができる。発生した電力を、後に使用するために任意の既知の手段で貯蔵してもよい。このような運転により、エネルギーの消耗は最小限に抑えられる。起電力を発生させる圧力差を利用することにより、加圧水素を減圧した結果、エネルギーが得られる。
【0075】
セルまたはスタックから流出する加圧水素を貯蔵することを想定するが、一方、別の実施形態によれば、水素を必要とする装置、例えば、限定しないが、自動車、フォークリフト、ボート、バス、または他の水素が動力源となる装置に、直接、燃料補給することができる。このような実施形態では、適切な定格のパイプラインとノズルとを使用するべきである。
【0076】
前述のとおり、電気化学セルまたはスタックのための別の用途は、水素センサである。気流内の水素ガスの存在は、潜在的に水素を含有するガスをセルのアノードに供給し、セルまたはスタックに電圧をかけることにより、検知してもよい。水素が存在する場合、電流が計測される。計測された電流は分圧に比例する。反対に、電流をかけてもよく、測定された電圧は、ガス気流における水素の存在を示す。水素センサとして用いられるセルのアノードにおける圧力の増加を防ぐために、望ましくない圧力増加を防ぐアノードからの出口が必要とされる。アノード出口がなければ、水素の存在の検査対象である気流には、セルから流出するルートがないことになろう。上記については、別の用途において、さらに後述する。アノードの流量が高い場合、気流における水素含有率(%)が高い状態で、電気化学セルを、センサのみとして、またはセンサとコンプレッサとを兼ねて機能するように構成してもよい。他の実施形態のように、圧力調整手段と制御システムとが、上記いずれの構成にも必要となろう。
【0077】
水素を受動的に検知する別の手段は、セル開回路電圧を測定することである。触媒は、各側で、同じでも、異なっていてもよい。開回路電位は、存在する不純物ガスの分圧に正比例するので、受動的に測定され得る。電気化学セルへ既知の組成を有するガス気流を導入することにより、このような実施形態のセンサには較正が必要となろう。
【0078】
本発明にかかる単一セルまたはセルのスタックのための別の用途は、水素ガスを含む気流からの水素を分離し、圧縮することである。これは、水素を含む天然ガスの気流に適用されると想定するが、水素を含有する任意のガスを用いてもよい。つまり、限定はしないが、一酸化炭素、二酸化炭素、またはアンモニアなど、ガスによっては、セルまたはスタックの寿命に悪影響を及ぼし得る。不純物は、電気化学的または別の方法により、膜を通過することはなく、よって、アノード半電池に残存する。第1セルのアノードで圧力が増加するのを防ぐために、ガス不純物除去のための出口を設ける。水素の一部がアノード出口気流に残存する可能性があり、したがって、ガスを、さらに精製するためにアノードに再循環させてもよいと想定する。前述したような水素センサを用いて、水素の存在を検知し、再循環の必要性を判定してもよい。
【0079】
いずれの実施形態においても、アノード出口は、スタックにおける任意のセル上に設けてもよいが、アノード半電池からの不純物を除去できるように、第1セルまたはセルのステージに設けることが最も好ましい。これは、後に続くセルにアノード出口が含まれることを排除しない。
【0080】
圧力調節手段が、アノードセルへの入口と、存在するのであればアノードセルの出口と、カソードセルの出口のうち、いずれか1つ以上に設けられてもよい。圧力調節手段は、限定はしないがバルブを備える。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】
図1は、単一のセルAEM電気化学コンプレッサを示す。
【
図2】
図2は、AEM電気化学スタックを形成する複数のセルを示す。
【
図3B】
図3Bは、AEM電気化学スタックを形成する複数のセルを示す。
【
図4】
図4は、本発明での使用に適したMEAを示す。
【
図5】
図5は、水素センサとして使用するのに適した、または、水素含有ガス気流から水素を除去するのに適した、本発明にかかる電気化学セルを示す。
【
図6】
図6は、水素をさらに圧縮するために追加のセルを備えた
図5の電気化学セルを示す。
【
図7A】
図7Aは、圧縮の第1ステージとして多数のセルを備える電気化学コンプレッサを示す。
【
図7B】
図7Bは、別の配置で、圧縮の第1ステージとして多数のセルを備える電気化学コンプレッサを示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明を理解しやすくするために、実施例を用いて、下記添付図面を参照しながら、本発明の特定の実施形態について説明する。
【0083】
図1には、単一のセルAEM電気化学コンプレッサ1が示されている。入口2と出口3とが設けられている。電気分解装置または他の水素源からの主に水素からなる気流は、入口2を介して、アノード半電池5に供給される。MEA4は、アノード半電池5とカソード半電池6とを分離する。水素は、第1圧力P
1でアノード半電池5に流入し、カソード半電池6では、より高い第2圧力P
2まで圧力が増加する。アノード半電池とカソード半電池における反応は以下のとおりである。
AEMアノード
H
2+2OH
-→2H
2O+2e
-
AEMカソード
2H
2O+2e
-→H
2+2OH
-
【0084】
MEA4は、2つの半電池を分離するものであり、少なくとも、アノードと、カソードと、アノードとカソードの間に設けられるAEMとを備える。前述のとおり、必要に応じて変動する特性を有する、GDLまたはMPLなどの追加の層を用いてもよい。
図4は、MEA4の拡大図である。
【0085】
アノードで発生した水は、膜と結合し、その結果、カソード反応で消費される。カソードで発生したOH-は、アノードに戻り、その結果、アノード反応で消費される。アノードからの電子は、カソードで消費される。
【0086】
なお、水または酸素などの不純物は、水素入口に存在し得る。前述のとおり、水が作用するのも問題とはならず、また、酸素が、触媒に依存して、第1アノード半電池で水素と反応して水を生成し得るのも問題とはならない。
【0087】
単一のセルAEM電気化学コンプレッサは、所望の圧力に達するのに不十分である可能性が非常に高く、したがって、
図2に示すように、複数のセルを直列に用いてスタックを形成してもよい。
【0088】
図2(BOPは不図示)は、スタック10を形成する複数のセル1a、1b、1cを示す。1bを囲む角括弧は、1つのスタックに3つより多いセルが含まれ得ることを表す。1つのスタックにおけるセルの数が、本発明を限定する特徴となるとは意図されていない。電気分解装置、一時貯蔵所、または他の源からの水素は、入口2aを介してP
1で第1アノードコンパートメントに流入する。アノード反応が生じる一方で、3aでP
2に達するまで、水素は、カソード反応においてカソードで発生する。第1カソード6aからのP
2の水素は、入口2bと接続している出口3aを介して、P
2のままで第2セル5bのアノードに送られる。第2アノード反応および第2カソード反応が、それぞれ、半電池5bおよび半電池6bで生じる。一方、水素は、P
3に達するまで、第2カソードコンパートメント6bで生成される。
図2の1cでは、上記プロセスがスタックの最終セルまで連続的に行われる。このとき、水素は、最終圧力P
4で、最終出口3cから、貯蔵タンクまたは加圧水素を必要とする他の送り先へと供給される。制御システムおよびBOPは、図示されていない。
【0089】
図3Aおよび
図3Bには、様々なMEA断面積を有するセルが示されている。
図3Aは、MEA4に向かって狭くなる狭窄部7を有する単一のセル11を示し、
図3Bは、直列に配置されている2つの上記セルを示す。2本の点線X---Xは、第2セルのMEA4は第1セルのMEA4よりも小さいことを示す。そのような変化は、スタック内の各セルで観察される圧力差を管理するのに有用であり、水管理を向上するように意図されている。開示する他の手段として、膜の化学特性および生理化学特性に加え、膜の機械特性を変化させることが挙げられる。
【0090】
図4には、様々な構成要素を備えたMEA4が模式的に示されている。左から右へと順に、アノードGDL45aと、アノード触媒42と、陰イオン交換膜41と、カソード触媒43と、MPL44と、カソードGDL45cとが設けられている。中心的な構成要素は、2つの触媒と膜であり、他の構成要素は、システムの機能性を向上させるものであり得る。MPL44は、セル間で変動して、異なる特性を有し、所望の結果を実現し得るが、このような相違は図示されていない。スタックの後半のセルに設けられる疎水性の高いMPLは、膜から脱離する水を最小限に抑え、これにより、スタックから流出する圧縮水素が可能な限り乾燥している状態にあることが確実となる。
【0091】
図5には、本発明にかかる電気化学セル21の図が示されている。電気化学セル21は、水素の圧縮に適しており、一方、水素含有ガス気流から水素を分離させるか、または、水素センサとして機能する。先ず、水素を除去する手段としての動作について説明する。
【0092】
本実施形態のアノード25は、水素を含有する流体の流れを導入する入口22と、他の不純物ガスを移送してアノード半電池25で圧力が増加するのを防ぐ出口27とを備える。出口27に設けられる出口調整手段、通常、バルブは、図示されていない。セルに電流をかけると、前述の実施形態で開示したように水素は反応し、一方、残存ガスは反応しない。これは、水素は、AEM24を通過してカソード半電池26に達し、不純物ガスがアノード25に残存することを意味する。水素は、カソード26から、高圧力P2で流出する。本実施形態およびいずれの実施形態においても、圧力P2を、バルブなどの任意の既知の圧力調整手段により調整して圧力を増加させてもよい。
【0093】
図5に示すようなセルを、水素センサとして用いてもよい。そのような実施形態では、水素が存在しているかどうか不明なガス気流を、入口22を介してセル21へと供給する。低電圧をセルにかけると、水素が存在している場合は、電流を検知できる。測定された電流は、分圧または気流内の水素の濃度と比例するはずである。アノード出口27により、他のガスが除去され、アノードに残存する他の不純物ガスが原因となる望まれない圧力増加を防ぐことができる。カソード出口23を介して、水素の検出に適したセルは、さらなる圧縮または他の目的のためにセルから水素を送出する。センサを、水素の存在を検知するためだけに用いて、水素の存在をユーザへ通知してもよく、したがって、そのような実施形態では圧縮を所望しなくてもよい。
【0094】
図6には、
図5のセル21aが示されており、セル21aは、スタックの第2セル21bのアノード入口22bに接続しているカソード出口23aを備える。なお、水素をさらに圧縮できるように、より多くのセルを接続してもよい。その手順は、他のスタックに関する記載を大いに反映したものであり、相違点は、セル21aにおける不純物を含む気流から水素を除去することである。カソード26aにおける精製かつ圧縮された水素は、出口23a/入口22bを介してアノード25bに送られる。水素が膜24bを通過してカソード26bへ流入するときに、セル21bは、水素をさらに圧縮する。なお、さらなる圧縮を望む場合は、さらなるセルを直列に使用してもよい。
【0095】
図7Aおよび
図7Bは、電気化学スタックの別の配置に関する2つの実施形態を示す。先ず、
図7Aを参照すると、圧縮の第1ステージのための、スタックを形成する少なくとも2つの電気化学セル31a、31bが並列に接続されている。水素は、第1圧力で、各アノード35a、35bに流入し、電流をかけると、前述したアノード反応とカソード反応とが生じる。カソード36a、36bで水素は改質し、圧力調整手段(不図示)により、第2圧力でカソード出口33a、33bから水素が送られる。その後、パイプ37に示されるとおり、各ステージのカソード出口が組み合わせられ、第2圧力の水素は、次の圧縮ステージにおけるセルのアノード入口32cへの供給原料を形成する。各ステージのセルの数または圧縮のステージの数は限定されない。1つのステージにおける各セルの圧力差は、一般に、同じになろうが、ステージ間では異なる可能性がある。
【0096】
最後に、
図7Bには、ステージを形成する多数のセル51a、51bを備えた電気化学コンプレッサが示されている。前述のとおり、3つ以上のセルが各ステージに設けられる。水素は、第1圧力でアノード入口52a、52bを介して流入し、前述した反応メカニズムを介して膜54a、54bを通過し、カソード56a、56bで改質する。第2圧力の水素は、カソードから、カソード出口53a、53bを介して、管57へと送られ、気流は、次の圧縮ステージのための供給原料を形成する。水素は、アノード入口52cを介して、次の圧縮ステージ51cにおいてセルに流入する。セル51a、51b、51cは、絶縁膜58により、分離されている。
【0097】
なお、図示されてはいないが、供給装置57は、圧力調整手段と、BOPを構成する他の機能とを備える。
【0098】
明瞭にするために、上記実施例では、セル31a、31bが1つのステージを構成し、セル31cが1つのステージを構成する。同様に、
図7Bにおいては、セル51a、51bが、1つのステージを構成し、セル51cは、独自のステージを構成する。
図2では、セル1a、1b、1cは、それぞれ、独自のステージを構成する。ステージは、要件に依存して、同じまたは異なる数のセルを有する。各ステージは、ステージを形成する2つ以上のセルを有してもよい。
【0099】
一定の流量を維持するために、各ステージのセルの膜上の電流密度の合計は、各セルの圧力差が同じである場合は、ほぼ類似する。1つのステージのセルにおいて、より大きな圧力差がある場合、電流密度は、それに比例して高くなり、その結果、前述のとおり、逆流などが生じる。
【0100】
本発明が前述の実施形態のいずれかに関する詳細に限定されることを意図していない。例えば、AEMを備えた1つまたは複数のセルを使用する、いずれの水素用電気化学コンプレッサも、本発明に含まれる。
【0101】
電気化学コンプレッサの構成要素を製造する方法が本発明を限定するとは意図していない。
【0102】
コンプレッサから流出する水素は、本質的に乾燥しているはずであるが、加圧貯蔵前に水素がほぼ乾燥していることが確実となるように、ドライヤが最終出口に設けられてもよい。
【0103】
非PGM、膜組成、最終圧力、または、そのような他の構成要素が好ましいとされるが、使用する触媒により、本発明が限定されることを意図していない。
【0104】
両端に酸性領域およびアルカリ性領域を有するpH勾配が、極端な電流密度で生じ得ると想定するが、本発明におけるpHは、ほぼ7以上であることが好ましく、より好ましくは、ほぼ9-14であり、さらに好ましくは、ほぼ12-13である。いずれの場合においても、本発明はpH勾配に依存しない。
【0105】
多くの場合、水素を圧縮することが必要であるが、本発明を水素気流の精製のみに適用し、さらに圧縮を所望することがなくてもよいと想定する。そのような実施形態においては、セル間の水素の流れ、および水素流の精製を引き起こす、セル間に設けられた圧力調整手段、例えば、限定はしないがバルブなどを設けることなく、本発明にかかるセルまたはセルのスタックを用いてもよい。開示された水管理手段は、水素を乾燥するのに有用である。前述かつ図示したようなセルを、開示した機能、すなわち、センサ、コンプレッサ、ドライヤ、またはこれらの組み合わせのいずれかで構成してもよい。
【0106】
不純物は、通常、第1アノード半電池に残存する。水と酸素以外の不純物の場合、アノード出口は、第1セルにおいて圧力が増加することを防ぐのに好ましい。加えて、アノードが溢れるのを防ぐために、出口により水が除去される。
【0107】
圧縮水素は、エネルギー貯蔵のため、または燃料電池で使用されるであろうと想定するが、圧縮水素の別の用途としては、冷蔵が挙げられる。
【0108】
スタックに多数のセルを備えることができるが、ほぼ1000バール超の水素が必要となるとは想定しない。1セルあたり35バールまで圧力を増加させる場合、各スタックが有するセルの数は30以下であろうと想定する。
【0109】
本発明を複数の方法でアレンジすることができる。1つ以上のセルが1つの圧縮ステージを形成する場合、各ステージをスタックと見なしてもよい。そのようなスタックを、直列または並列に配置してもよい。
【0110】
本発明によれば、可動部を設けることなく、水素の圧縮と乾燥とを同時に行うことができる。また、本システムは、酸性環境またはPGM触媒に依存せず、可動部を備えない。したがって、本システムは、既知の選択肢よりも本質的に効率的にグリーン水素適格性を改善する。