(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】生物槽管理システム、生物槽管理方法及び生物槽管理プログラム
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20241217BHJP
G01N 27/10 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C02F3/12 P
G01N27/10
(21)【出願番号】P 2023175872
(22)【出願日】2023-10-11
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】517039483
【氏名又は名称】WOTA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 拳人
(72)【発明者】
【氏名】向原 穂高
(72)【発明者】
【氏名】川越 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 陽一
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/017466(WO,A1)
【文献】特開2013-128884(JP,A)
【文献】実開昭58-040297(JP,U)
【文献】特開2004-097957(JP,A)
【文献】特開2022-175195(JP,A)
【文献】特開平09-038682(JP,A)
【文献】特開2002-112761(JP,A)
【文献】特開2015-167895(JP,A)
【文献】特開2004-275826(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105776770(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0009807(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
C02F 3/12
G01N 27/00 - 27/10
G01N 27/14 - 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口及び流出口を有する生物
処理槽と、
前記生物
処理槽に流入する流入水の物性を測定する流入水センサと、
前記生物
処理槽から排出される気体に含まれる所定のガスの濃度を測定するガスセンサと
を備え、
前記流入水センサの検出値と前記ガスセンサの検出値に基づいて、前記流入水が
前記生物処理槽内の微生物に対して有害であるか否かを判定する
生物槽管理システム。
【請求項2】
前記流入水センサは、ECセンサであり、
前記ガスセンサは、CO
2センサであり、前記流出口を通過する前記気体の全流量を測定するように構成されている
請求項1に記載の生物槽管理システム。
【請求項3】
前記ガスセンサの前記検出値に基づいて、前記気体に含まれる前記ガスの濃度の変化量が所定の変化量以上であるか否かを判定する変化量判定部を備える
請求項1又は2に記載の生物槽管理システム。
【請求項4】
前記流入水センサの前記検出値に基づいて、前記流入水が有害な可能性が高いか否かを判定する流入水判定部を備え、
前記流入水判定部により前記流入水は有害な可能性が高いと判定され、かつ、前記変化量判定部により前記ガスの濃度の変化量が前記所定の変化量以上であると判定された場合に、前記流入水が
微生物に対して有害であると判定する
請求項3に記載の生物槽管理システム。
【請求項5】
前記流入水が前記
微生物に対して有害であると判定した場合に、警告を報知、及び/又は前記流入水の導入を停止するように構成されている
請求項4に記載の生物槽管理システム。
【請求項6】
生物
処理槽に流入する流入水の物性を測定する流入水センサの検出値と、前記生物
処理槽から排出される気体に含まれる所定のガスの濃度を測定するガスセンサの検出値とに基づいて、前記流入水が
前記生物処理槽内の微生物に対して有害であるか否かを判定する
生物槽管理方法。
【請求項7】
生物
処理槽に流入する流入水の物性を測定する流入水センサの検出値と、前記生物
処理槽から排出される気体に含まれる所定のガスの濃度を測定するガスセンサの検出値とに基づいて、前記流入水が
前記生物処理槽内の微生物に対して有害であるか否かを制御装置に判定させる
生物槽管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物槽管理システム、生物槽管理方法及び生物槽管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物を使用して水を浄化する生物処理が様々な分野で使用されている。例えば、水洗便器と、当該水洗便器からの汚水を受け入れ、汚水中の有機物を分解するとともに硝化及び脱窒処理する生物処理槽を有し、処理水を洗浄水として前記水洗便器に循環させる循環式水洗トイレが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の循環式水洗トイレのような生物処理システムでは、例えば、殺菌作用のある液体等の生物処理槽内の微生物にとって有害な液体が生物処理槽に流入した場合、少量であっても微生物の大量死が発生し、その後の処置が遅れると、生物処理槽内の微生物が全て死滅するおそれがある。
【0005】
そして、生物処理槽の微生物が死滅した場合、再び生物処理システムを使用可能な状態に復旧するまでに多大な時間がかかり、復旧までの間、生物処理システムを使用できなくなるという問題がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、生物槽内の生物の死滅を防止できる生物槽管理システム、生物槽管理方法及び生物槽管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る生物槽管理システムは、流入口及び流出口を有する生物槽と、前記生物槽に流入する流入水の物性を測定する流入水センサと、前記生物槽から排出される気体に含まれる所定のガスの濃度を測定するガスセンサとを備え、前記流入水センサの検出値と前記ガスセンサの検出値に基づいて、前記流入水が生物に対して有害であるか否かを判定する。
【0008】
本発明に係る生物槽管理システムにおいて、前記流入水センサは、ECセンサであり、前記ガスセンサは、CO2センサであり、前記流出口を通過する前記気体の全流量を測定するように構成されてもよい。
【0009】
本発明に係る生物槽管理システムは、前記ガスセンサの前記検出値に基づいて、前記気体に含まれる前記ガスの濃度の変化量が所定の変化量以上であるか否かを判定する変化量判定部を備えてもよい。
【0010】
本発明に係る生物槽管理システムは、前記流入水センサの前記検出値に基づいて、前記流入水が有害な可能性が高いか否かを判定する流入水判定部を備え、前記流入水判定部により前記流入水は有害な可能性が高いと判定され、かつ、前記変化量判定部により前記ガスの濃度の変化量が前記所定の変化量以上であると判定された場合に、前記流入水が生物に対して有害であると判定してもよい。
【0011】
本発明に係る生物槽管理システムは、前記流入水が前記生物に対して有害であると判定した場合に、警告を報知、及び/又は前記流入水の導入を停止するように構成されてもよい。
【0012】
本発明に係る生物槽管理方法は、生物槽に流入する流入水の物性を測定する流入水センサの検出値と、前記生物槽から排出される気体に含まれる所定のガスの濃度を測定するガスセンサの検出値とに基づいて、前記流入水が生物に対して有害であるか否かを判定する。
【0013】
本発明に係る生物槽管理プログラムは、生物槽に流入する流入水の物性を測定する流入水センサの検出値と、前記生物槽から排出される気体に含まれる所定のガスの濃度を測定するガスセンサの検出値とに基づいて、前記流入水が生物に対して有害であるか否かを制御装置に判定させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生物槽内の生物の死滅を防止できる生物槽管理システム、生物槽管理方法及び生物槽管理プログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る生物槽管理システムを示す概略図
【
図2】本実施形態に係る生物槽管理システムを示す機能ブロック図
【
図4】本実施形態に係るガスの濃度の変化の一例を示す図
【
図5】本実施形態に係る生物槽管理方法の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0017】
[本実施形態に係る生物槽管理システムの構成]
まず、本発明の実施形態に係る生物槽管理システム1を概説する。本実施形態に係る生物槽管理システム1は、概略的には、
図1に示すように、生物槽10と、流入水センサ20と、ガスセンサ30とを備える。また、生物槽管理システム1は、
図2に示すように、制御装置50を備える。
【0018】
以下、本実施形態において、生物槽10は、水処理における生物処理槽であるものとして説明するが、これに限定されない。生物槽10は、例えば、水槽や生け簀、発酵食品及び発酵飲料の製造に使用する発酵槽、バイオマス反応槽等であってもよい。また、本実施形態において、生物は、生物槽10内の後述する微生物であるものとして説明するが、これに限定されず、生物槽10の種類に応じて種々の任意の生物であってもよい。例えば、生物は、植物や昆虫、牛や豚、鶏等の家畜、魚や甲殻類等の水産動物(観賞魚を含む)であってもよい。
【0019】
生物槽10は、
図1に示すように、流入口12及び流出口14を有する。本実施形態において、生物槽10は、密閉されており、生物槽10内の気体は、流出口14のみから排出されるように構成されている。生物槽10は、流入口12に配管(図示せず)が接続され、流出口14に排気ダクト(図示せず)が接続される。
【0020】
また、生物槽10には、流入水の生物処理が可能な微生物が少なくとも収容されている。生物槽10内の微生物は、流入水に含まれる有機物を分解した際に、CO2(二酸化炭素)を発生させる。
【0021】
流入水センサ20は、生物槽10に流入する流入水の物性を測定するように構成されている。本実施形態において、流入水は、液体だけでなく、スラリーや、粉体や、固体等が混合した液体等も含む。本実施形態において、流入水センサ20は、ECセンサである。また、流入水センサ20が測定する流入水の物性は、電気伝導率(導電率)である。
【0022】
なお、本実施形態において、流入水センサ20は、配管内で生物槽10に流入する流入水の電気伝導率を測定するが、これに限定されない。流入水センサ20は、流入口12で流入水の電気伝導率を測定してもよい。
【0023】
ガスセンサ30は、
図1に示すように、生物槽10から排出される気体に含まれる所定のガスの濃度を測定するように構成されている。本実施形態において、ガスセンサ30は、CO
2センサであり、所定のガスは、CO
2である。
【0024】
また、ガスセンサ30は、流出口14を通過する気体の全流量を測定するように構成されている。具体的には、ガスセンサ30は、
図3に示すように、センサ本体32と、該センサ本体32を取り付けるケース34とを有し、排気ダクトの間に取り付けられる。
【0025】
ケース34は、センサ本体32を収容する収容部と、排気ダクトに連通可能に構成された接続部とを有する。接続部は、排気ダクトに連通可能な径の円筒部を有し、該円筒部の内部には、十字状の補強部が形成されている。接続部は、補強部を有することにより、排気ダクトと接続部をホースバンドで締結する際に、接続部が破損することを防止できるが、補強部を有さなくてもよい。
【0026】
センサ本体32は、ケース34の収容部に接続部の円筒部の長手方向と、センサ本体32の表面とが直交する向きで取り付けられており、排気ダクトからケース34内に流入する気体の全流量がセンサ本体32の表面に当たるように構成されている。
【0027】
なお、ガスセンサ30は、排気ダクトで生物槽10から排出される気体に含まれるCO2の濃度を測定せずに、流出口14でCO2の濃度を測定してもよい。すなわち、ガスセンサ30は、排気ダクト内ではなく、流出口14に設置されてもよい。
【0028】
制御装置50は、
図2に示すように、制御部60及び記憶部70を備える。また、制御装置50は、入力部及び表示部を備えてもよい。本実施形態において、制御装置50は、例えば、マイクロコントローラ、シングルボードコンピュータ、パーソナルコンピュータ(ノートPC、デスクトップPC)、タブレット端末、スマートフォン等である。
【0029】
制御部60は、流入水判定部61と、変化量判定部63と、有害判定部65とを含む。また、制御部60は、流入水センサ20の検出値と、ガスセンサ30の検出値を取得可能に構成されている。
【0030】
流入水判定部61は、流入水センサ20の検出値(本実施形態において、電気伝導率)を取得可能に構成されている。流入水判定部61は、流入水センサ20の検出値に基づいて、流入水が有害な可能性が高いか否かを判定する。具体的には、電気伝導率が所定の値以上であった場合、流入水判定部61は、流入水は有害な可能性が高いと判定する。より具体的には、流入水判定部61は、流入水の電気伝導率が1000μS/cm以上の場合に、流入水は有害な可能性が高いと判定することが好ましく、流入水の電気伝導率が5000μS/cm以上の場合に、流入水は有害な可能性が非常に高いと判定することがより好ましい。
【0031】
変化量判定部63は、ガスセンサ30の検出値(本実施形態において、CO
2の濃度)を取得可能に構成されている。変化量判定部63は、ガスセンサ30の検出値に基づいて、気体に含まれるガスの濃度の変化量ΔCが所定の変化量以上であるか否かを判定する。具体的には、変化量判定部63は、
図4に示すように、所定の時間Δtにおけるガスの濃度の変化量ΔCが所定の変化量以上であるか否かを判定する。
【0032】
有害判定部65は、流入水センサ20の検出値とガスセンサ30の検出値に基づいて、流入水が生物に対して有害であるか否かを判定する。具体的には、有害判定部65は、流入水判定部61により流入水は有害な可能性が高いと判定され、かつ、変化量判定部63によりガスの濃度の変化量ΔCが所定の変化量以上であると判定された場合に、流入水が生物(本実施形態において、生物槽10内の微生物)に対して有害であると判定する。また、有害判定部65は、流入水が生物に対して有害であると判定した場合に、ユーザや生物槽管理システム1の管理者、保守事業者等に警告を報知するように構成されている。さらに、有害判定部65は、流入水が生物に対して有害であると判定した場合に、流入水の導入を停止するように構成されてもよい。
【0033】
さらに、有害判定部65は、流入水センサ20の検出値とガスセンサ30の検出値に加えて他の情報に基づいて、流入水が生物に対して有害であるか否かを判定してもよい。他の情報としては、例えば、ユーザが入力した情報や、生物槽10の状況情報である。生物槽10の状況情報は、例えば、生物槽10内を監視する画像情報、生物槽10内の温度変化情報、ガスセンサ30の通常パターンからの逸脱や、ガスセンサ30の検出値(CO2の濃度)に変化がない等の情報である。
【0034】
なお、生物槽10内に有害な流入水が流入した場合には、直ちにガスの濃度が変化するのではなく、有害な流入水が生物槽10内に流入→生物槽10内において生物の大量死が発生→ガスの濃度が変化という順序で事象が生じる。このため、流入水センサ20の検出値とガスセンサ30の検出値との間の因果関係を検知するためには、有害判定部65において参照する流入水センサ20の検出値とガスセンサ30の検出値とは、異なるタイミングで検出された値であることが好ましい。具体的には、有害判定部65は、あるタイミングで測定された流入水センサ20の検出値と、それよりも所定の時間(例えば、1~30分)経過後に測定されたガスセンサ30の検出値とを用いて、流入水が生物(本実施形態において、生物槽10内の微生物)に対して有害であるか否かを判定することが好ましい。
【0035】
なお、所定の時間は、30分以内、10分以内又は5分以内が最も好ましいが、生物槽10内の気相部の容積と、流出口14の容積と、該流出口14からガスセンサ30までの容積と、ガスの供給量とにより最適な所定時間を適宜選択できることがより好ましい。
【0036】
このことから、有害判定部65は、流入水判定部61が流入水は有害な可能性が高いと判定した後に、ガスの濃度の変化量ΔCが所定の変化量以上であると判定された場合に、流入水が生物に対して有害であると判定することが好ましい。例えば、有害判定部65は、流入水判定部61が流入水は有害な可能性が高いと判定した後、所定の時間(例えば、1~30分)の経過後に、CO2の濃度が所定の変化量以上に低下した場合に、流入水が生物に対して有害であると判定することが好ましい。
【0037】
ここで、「所定の変化量」とは、生物槽10内に異常が発生しているか否かを判定するための閾値であり、ガスセンサ30がCO2センサである場合には、生物槽10内の生物(例えば微生物)の大量死等によりCO2濃度が低下したことを検出するための閾値である。CO2濃度の「所定の変化量」の閾値は、例えば、100ppm以上のCO2濃度の低下である。例えば、有害判定部65は、CO2の濃度が1分間あたりに100ppm以上減少する場合は、生物槽10内の微生物の突然の大量死の発生を推定する。また、継続してCO2の濃度が長時間にわたり減少し続ける場合は、微生物の活性に異常が発生していると推定する。
【0038】
記憶部70は、記憶装置で構成され、生物槽管理プログラム71を格納する。また、記憶部70は、流入水センサ20の検出値及びガスセンサ30の検出値を格納してもよい。生物槽管理プログラム71は、流入水センサ20の検出値と、ガスセンサ30の検出値とに基づいて、流入水が生物に対して有害であるか否かを制御装置50に判定させる。
【0039】
[本実施形態に係る生物槽管理方法]
次に、本実施形態に係る生物槽管理システム1による生物槽管理方法について説明する。本実施形態に係る生物槽管理方法は、概略的には、流入水センサ20の検出値と、ガスセンサ30の検出値とに基づいて、流入水が生物に対して有害であるか否かを判定する。以下、本実施形態に係る生物槽管理方法について
図5を参照して詳述する。
【0040】
まず、流入水センサ20は、流入水が生物槽10に流入する際に、該流入水の物性(本実施形態において、電気伝導率)を測定する(
図5のS1:物性測定工程)。また、制御装置50の制御部60の流入水判定部61は、流入水センサ20が測定した検出値を取得する(
図5のS10:物性取得工程)。
【0041】
さらに、ガスセンサ30は、生物槽10から排出される気体に含まれる所定のガス(本実施形態において、CO
2)の濃度を測定する(
図5のS2:ガス濃度測定工程)。そして、制御装置50の制御部60の変化量判定部63は、ガスセンサ30が測定した検出値を取得する(
図5のS11:ガス濃度取得工程)。
【0042】
なお、流入水センサ20による流入水の物性の測定と、ガスセンサ30による所定のガスの濃度の測定は、それぞれ所定の頻度で行われるものである。
【0043】
その後、流入水判定部61は、取得した流入水センサ20の検出値に基づいて、流入水が有害な可能性が高いか否かを判定する(
図5のS12:有害可能性判定工程)。本実施形態において、変化量判定部63は、流入水の電気伝導率が所定の値以上であった場合、流入水は有害な可能性が高いと判定する。
【0044】
また、変化量判定部63は、取得したガスセンサ30の検出値に基づいて、所定の時間ΔtにおけるCO
2の濃度の変化量ΔCが所定の変化量以上であるか否かを判定する(
図5のS13:変化量判定工程)。
【0045】
そして、有害判定部65は、流入水判定部61により流入水は有害な可能性が高いと判定され(
図5のS12にてYES)、かつ、変化量判定部63によりCO
2の濃度の変化量ΔCが所定の変化量以上であると判定された場合に(
図5のS13にてYES)、流入水が生物に対して有害であると判定し(
図15のS14)、ユーザや生物槽管理システム1の管理者、保守事業者等に警告を報知する。なお、この際に参照するCO
2の濃度の変化量ΔCは、有害な可能性が高いと判定された流入水が流入してから所定の時間(例えば、1~30分)経過後に測定されたガスセンサ30の検出値を用いて算出されることが好ましい。
【0046】
一方で、有害判定部65は、流入水判定部61により流入水は有害な可能性が高くないと判定された場合(
図5のS12にてNO)、又は、流入水判定部61により流入水は有害な可能性が高いと判定され(
図5のS12にてYES)、かつ、変化量判定部63によりCO
2の濃度の変化量ΔCが所定の変化量未満であると判定された場合には(
図5のS13にてNO)、流入水が生物に対して無害であると判定する(
図15のS15)。
【0047】
以上の工程により、本実施形態に係る生物槽管理システム1による一連の生物槽管理方法が実行される。
【0048】
[本実施形態に係る生物槽管理システム、生物槽管理方法及び生物槽管理プログラムの利点]
以上説明したように、本実施形態に係る生物槽管理システム1は、流入口12及び流出口14を有する生物槽10と、生物槽10に流入する流入水の物性を測定する流入水センサ20と、生物槽10から排出される気体に含まれる所定のガスの濃度を測定するガスセンサ30とを備え、流入水センサ20の検出値とガスセンサ30の検出値に基づいて、流入水が生物に対して有害であるか否かを判定する。
【0049】
そして、本実施形態に係る生物槽管理システム1は、このような構成を備えることにより、流入水の物性と生物槽10から排出される気体に含まれる所定のガスの濃度から流入水が有害であるか判定するため、生物に対して有害な流入水が生物槽10に流入した場合に、早期に該流入水が有害であると分かり、生物槽10内の生物の死滅を防止できるという利点を有している。
【0050】
また、本実施形態に係る生物槽管理システム1において、流入水センサ20は、ECセンサであり、ガスセンサ30は、CO2センサであり、流出口14を通過する気体の全流量を測定するように構成されている。このような構成を備えることにより、メンテナンスフリーで精度よく測定ができるため、長期間に亘って生物槽10内の生物の死滅を防止できるという利点を有している。
【0051】
さらに、本実施形態に係る生物槽管理システム1は、ガスセンサ30の検出値に基づいて、気体に含まれるガスの濃度の変化量ΔCが所定の変化量以上であるか否かを判定する変化量判定部63を備える。このような構成を備えることにより、例えば、生物槽10内の生物が排出するCO2の濃度変化から生物の活性状態の変化が分かるため、有害な流入水が流入した際に、該流入水が有害であると判定でき、生物槽10内の生物の死滅を防止できるという利点を有している。
【0052】
またさらに、本実施形態に係る生物槽管理システム1は、流入水センサ20の検出値に基づいて、流入水が有害な可能性が高いか否かを判定する流入水判定部61を備え、流入水判定部61により流入水は有害な可能性が高いと判定され、かつ、変化量判定部63によりガスの濃度の変化量ΔCが所定の変化量以上であると判定された場合に、流入水が生物に対して有害であると判定する。このような構成を備えることにより、例えば、ガスの濃度の変化量ΔCでのみ判定をすると、生物槽10が生物処理槽の場合、流入水が有害な可能性が高くない場合であっても、流入水に有機物が多く含まれておらず、且つ流入水がアルカリ性である場合、生物槽10内の微生物による流入水の有機物の分解があまり行われない(CO2の生成が少ない)上に、流入水中へのCO2溶存率が高まることで、排出されるCO2の濃度の変化量ΔCが所定の変化量以上に低下し、誤って流入水が有害であると判定されることがあるが、流入水が有害な可能性が高いかどうかを判定することにより誤判定を防止でき、より正確に、生物槽10内の生物の死滅を防止できるという利点を有している。
【0053】
またさらに、本実施形態に係る生物槽管理システム1は、流入水が生物に対して有害であると判定した場合に、警告を報知、及び/又は前記流入水の導入を停止するように構成されている。このような構成を備えることにより、万が一生物槽10に有害な流入水が混入した場合でも迅速な措置をとることが可能であり、生物槽10内の生物の死滅をより防止できるという利点を有している。
【0054】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0055】
例えば、上述した実施形態において、流入水センサ20は、ECセンサであり、ガスセンサ30は、CO2センサであり、流出口14を通過する気体の全流量を測定するように構成されているものとして説明したが、これに限定されない。流入水センサ20は、ECセンサでなくてもよい。例えば、流入水センサ20は、pHセンサや、温度センサ、色度センサ、濁度センサ、ORPセンサ等であってもよい。また、流入水センサ20は、流入水の物性に加えて、流入水の流入量等の他、ユーザ有力情報や、生物槽10内部の様子を捉えた画像情報、平常時のパターンデータ等のユーザが参照する可能性のある情報を測定してもよい。また、ガスセンサ30は、CO2センサでなくてもよい。ガスセンサ30は、例えば、N2や、O2、H2、NH3、CO、O3、Cl2、CH4、H2S、臭気ガス、揮発性有機化合物等の濃度を測定するセンサであってもよい。さらに、ガスセンサ30は、流出口14を通過する気体の全流量を測定しなくてもよい。
【0056】
上述した実施形態において、生物槽管理システム1は、ガスセンサ30の検出値に基づいて、気体に含まれるガスの濃度の変化量ΔCが所定の変化量以上であるか否かを判定する変化量判定部63を備えるものとして説明したが、これに限定されない。生物槽管理システム1は、変化量判定部63を備えなくてもよい。
【0057】
上述した実施形態において、生物槽管理システム1は、流入水センサ20の検出値に基づいて、流入水が有害な可能性が高いか否かを判定する流入水判定部61を備え、流入水判定部61により流入水は有害な可能性が高いと判定され、かつ、変化量判定部63によりガスの濃度の変化量ΔCが所定の変化量以上であると判定された場合に、流入水が生物に対して有害であると判定するものとして説明したが、これに限定されない。生物槽管理システム1は、流入水判定部61を備えなくてもよい。
【0058】
上述した実施形態において、生物槽管理システム1は、流入水が生物に対して有害であると判定した場合に、警告を報知、及び/又は流入水の導入を停止するように構成されているものとして説明したが、これに限定されない。生物槽管理システム1は、流入水が生物に対して有害であると判定した場合に、警告を報知しなくてもよい。また、生物槽管理システム1は、流入水が生物に対して有害であると判定した場合に、流入水の導入を停止しなくてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 生物槽管理システム
10 生物槽
12 流入口
14 流出口
20 流入水センサ
30 ガスセンサ
32 センサ本体
34 ケース
50 制御装置
60 制御部
61 流入水判定部
63 変化量判定部
65 有害判定部
70 記憶部
71 生物槽管理プログラム
【要約】
【課題】生物の死滅を防止できる生物槽管理システム、生物槽管理方法及び生物槽管理プログラムを提供する。
【解決手段】流入口及び流出口を有する生物槽と、前記生物槽に流入する流入水の物性を測定する流入水センサと、前記生物槽から排出される気体に含まれる所定のガスの濃度を測定するガスセンサとを備え、前記流入水センサの検出値と前記ガスセンサの検出値に基づいて、前記流入水が生物に対して有害であるか否かを判定する。
【選択図】
図1