(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】貯水池区域コカナダモ生息地逆改造方法
(51)【国際特許分類】
A01M 21/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
A01M21/00 Z
(21)【出願番号】P 2023184288
(22)【出願日】2023-10-26
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】202211428803.8
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522025503
【氏名又は名称】長江水利委員会長江科学院
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】周銀軍
(72)【発明者】
【氏名】郭超
(72)【発明者】
【氏名】姚仕明
(72)【発明者】
【氏名】金中武
(72)【発明者】
【氏名】文雄飛
(72)【発明者】
【氏名】龍瑞
(72)【発明者】
【氏名】単敏爾
(72)【発明者】
【氏名】李志晶
(72)【発明者】
【氏名】胡建華
(72)【発明者】
【氏名】呉華莉
(72)【発明者】
【氏名】劉玉嬌
(72)【発明者】
【氏名】劉昭希
(72)【発明者】
【氏名】朱帥
(72)【発明者】
【氏名】劉小斌
(72)【発明者】
【氏名】陳鵬
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-117629(JP,A)
【文献】特開2022-087038(JP,A)
【文献】特開2015-008656(JP,A)
【文献】特開2018-121582(JP,A)
【文献】特開2010-190002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0205917(US,A1)
【文献】児玉貴央 外3名,オオカナダモの広域空間分布に影響を及ぼす環境要因の検討,土木学会論文集B1,第76巻第2号,日本,2020年,第1261-1266頁,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejhe/76/2/76_I_1261/_article/-char/ja
【文献】沈水植物群落の監視(モニタリング)手法に関する研究,沈水植物群落の監視手法に関する研究,日本,2020年08月19日,第1-4頁,https://www.nies.go.jp/biwakobranch/projects/aquaticplants.html
【文献】浅枝隆,沈水植物の光阻害、枯死の過程―活性酸素の分析からわかること―,第34回柿田川生態系研究会,日本,2018年11月18日,第1-13頁,https://www.rfc.or.jp/kakita/presentation1803.pdf
【文献】琵琶湖沈水植物図説 第4版,日本,独立行政法人 水資源機構 琵琶湖開発総合管理所,2018年03月,第1―15頁,https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/download/files/zusetsu/2018033002_plant.pdf
【文献】今本博臣 外3名,琵琶湖に生育する6種の沈水植物の光・水温特性,応用生態工学,第11巻第1号,日本,2008年,第1-12頁,https://www.jstage.jst.go.jp/article/ece/11/1/11_1_1/_article/-char/ja
【文献】中嶋拓郎 外1名,コカナダモの成長抑制に対する南湖底質の浚渫と覆砂の効果,魚類等増殖環境評価調査研究,日本,2022年07月08日,第80頁,https://web.archive.org/web/20220708232515/https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/4041190.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローンによる航空測量でリモートセンシング画像を形成し、かつリモートセンシング画像から貯水池区域の植生被覆区域を抽出して、コカナダモ/水体境界線が得られるステップS100と、
水深等値線図と流速等値線図を取得するステップS200と、
コカナダモ/水体境界線を、それぞれ水深等値線図、流速等値線図に重ねることにより、臨界水深と流速、即ちコカナダモ生息適地因子の閾値を取得するステップS300と、
コカナダモ分布水域の流体力学的条件を統計し、下記式1によって表される生息地因子制御指標体系を取得するステップS400と、
【数5】
取得したコカナダモ生息適地因子の閾値と生息地因子制御指標体系に基づいて、水深の増加、流速の増大、水中光照度の減少などの観点から、コカナダモの成長に不利な環境を改造し、貯水池区域コカナダモ生息地逆改造技術体系を形成し、ここで、貯水池区域コカナダモ生息地逆改造技術体系は、流体力学的条件の改造と光照射条件の改造を含むステップS500と、を含
み、
前記流体力学的条件の改造は、貯水池生態スケジューリングと局所的な地形改造を含み、ここで、貯水池生態スケジューリングは、上流貯水池の水流出量を増大させることにより、コカナダモが所在する貯水池区域の貯水位を上昇させ、流速を増加させるものであり、局所的な地形改造は、局所の浚渫又は局所の埋め立てにより、地形を改造し、すなわち水中の緩斜面を急斜面に変更し、水中の浅瀬部では、高い所をさらに持ち上げて水面を露出させ、低い所をさらに掘り下げることで、
前記光照射条件の改造は、日陰被覆と土砂投入を含み、ここで、日陰被覆は、コカナダモが成長する重要な区域に浮体式太陽光発電所を建設する方式を採用することを特徴とする貯水池区域コカナダモ生息地逆改造方法。
【請求項2】
前記水深等値線図は、実測水中地形と調査期間の水位に基づいて、GIS系ソフトウェアを用いて作られるものであることを特徴とする請求項1に記載の貯水池区域コカナダモ生息地逆改造方法。
【請求項3】
流速等値線図を取得する具体的な方法は、貯水池区域における平面2次元水流数理モデルを構築し、実測水中地形を底部境界として導入し、貯水池入口流量とダム前の水位を上流と下流の計算条件とし、流体速度場を計算し、すなわち流速等値線図を取得することを含むことを特徴とする請求項1に記載の貯水池区域コカナダモ生息地逆改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は河川生態管理の技術分野に関し、具体的には貯水池区域コカナダモ生息地逆改造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コカナダモは、南アメリカ原産の日当たりが良く、速生育沈水植物であり、中国に導入されて湖や貯水池の水質改善、水産養殖の補助に用いられているが、天敵が不足しているため、大面積水域ではコントロール不良や、過成長及び規模拡大による新たな生態リスクひいては工事リスクをもたらす。漢江丹江口貯水池所属の王甫洲、崔家営などの貯水池を例に、貯水池の砂堆積、水流動性の低下、砂含有量の減少により、コカナダモは狂ったように成長し、不利な影響は主に以下の通り、(1)水防の安全性に影響する。水草の大量繁茂と蓄積は、水の流れを阻害し、洪水期間中に洪水放流に影響し、洪水防止に不利である。(2)航行安全に影響する。水草の大量繁茂は航路を塞ぎ、船舶のスクリュープロペラが絡まって航行しにくくなる。(3)水力発電設備の正常な運転を阻害する。水草が水力発電ダムの前に集まって、水力発電設備の正常な運行に影響して、酷い時には発電ユニットの故障、運転停止あるいは損傷を招く。(4)水生態系の健全性に影響する。水草が水面を覆い、水域に照射される日光が不足し、間接的に水界生態系の群系分布に影響を与え、水草が死亡すると分解しにくい残骸が水底に蓄積し、湖や貯水池の沼化を加速させる。(5)水環境の悪化を引き起こし、水使用の安全性に深刻な影響を与える。水草は大気の水体に対する再酸素化作用を阻害され、溶存酸素不足により水草が大量死滅し、腐敗し、成長期に吸収された栄養塩類などの物質はまた水域に放出され、水域の内因性汚染源となり、水質の悪化を招き、水資源の利用価値を低下する。
【0003】
漢江王甫洲水力発電所を例にとし、貯水池区域にはコカナダモのバイオマスが非常に大きく、「水中の森」を形成する。大増水の時に根こそぎ引き抜かれ、王甫洲水力発電所の区域に押し流されて、汚物止め格子の外に大量に堆積し、発電所の洪水調節と発電機能に深刻な影響を及ぼしている。2017年と2019年の水草災害による年間発電損失がそれぞれ5100万度と2400万度、直接的な経済損失はそれぞれ2040万元と960万元となった。水草災害は貯水池区域の水生態環境の安全性に深刻な影響を与えた。
【0004】
現在、国内外では、水草成長に関する制御技術は主に物理、化学、生物の3種類の方法がある。化学的方法は、主に除草剤などの化学薬品を採用し、該方法は操作が容易であり、効き目が速いが、化学薬品は水環境に二次汚染を生じやすく、しかも湖と貯水池は通常水源地であるため、一般的に化学方法の使用は禁止です。生物学的方法は、主に魚類、水禽などの生物の摂食を利用して水草の成長を抑制するもので、低コストで長期間にわたり安全性が高い。しかし、生物学的方法は長時間の試験研究と論証を展開する必要があり、管理が難しく、新たな優占種の導入や水生生態系に悪影響を及ぼしやすいため、該方法の使用は通常比較的に慎重である。物理的方法は主に収穫、物理的障害物などがあり、これらの技術は比較的簡単で、環境への影響も少なく、効き目が速いが、根治的治療が難しく、「姑息的治療」に属し、常態化メンテナンスが必要で、コストも高いため、現在は小範囲で役割を果たすことが多く、根本的に危害を取り除くことが難しい。物理的方法全体は二次的自然、生態系への影響をもたらすことはないが、コカナダモに対して有効な管理方法がないため、「根治的治療」の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、背景技術に提案された問題を解決するために、貯水池区域コカナダモ生息地逆改造方法を提供することにある。
【0006】
以上の目的を達成するために、本発明は以下の技術案を提供し、
貯水池区域コカナダモ生息地逆改造方法であって、
ドローンによる航空測量でリモートセンシング画像を形成し、かつリモートセンシング画像から貯水池区域の植生被覆区域を抽出して、コカナダモ/水体境界線が得られるステップS100と、
水深等値線図と流速等値線図を取得するステップS200と、
コカナダモ/水体境界線を、それぞれ水深等値線図、流速等値線図に重ねることにより、臨界水深と流速、即ちコカナダモ生息適地因子の閾値を取得するステップS300と、
コカナダモ分布水域の流体力学的条件を統計し、下記式1によって表される生息地因子制御指標体系を取得するステップS400と、
【0007】
【0008】
取得したコカナダモ生息適地因子の閾値と生息地因子制御指標体系に基づいて、水深の増加、流速の増大、水中光照度の減少などの観点から、コカナダモの成長に不利な環境を改造し、貯水池区域コカナダモ生息地逆改造技術体系を形成する。ここで、貯水池区域コカナダモ生息地逆改造技術体系は、流体力学的条件の改造と光照射条件の改造を含むステップS500と、を含む。
【0009】
上記の技術案に加えて、本発明は以下のオプションの技術案をさらに提供し、
オプションの技術案において、前記水深等値線図は、実測水中地形と調査期間の水位に基づいて、GIS系ソフトウェアを用いて作られるものである。
【0010】
オプションの技術案において、流速等値線図を取得する具体的な方法は、貯水池区域における平面2次元水流数理モデルを構築し、実測水中地形を底部境界として導入し、貯水池入口流量とダム前の水位を上流と下流の計算条件とし、流体速度場を計算し、すなわち流速等値線図を取得することを含む。
【0011】
オプションの技術案において、前記流体力学的条件の改造は、貯水池生態スケジューリングと局所的な地形改造を含み、ここで、貯水池生態スケジューリングは、上流貯水池の水流出量を増大させることにより、コカナダモが所在する貯水池区域の貯水位を上昇させ、流速を増加させるものであり、局所的な地形改造は、局所の浚渫又は局所の埋め立てにより、地形を改造する。すなわち、水中の緩斜面を急斜面に変更し、水中の浅瀬部では、高い所をさらに持ち上げて水面を露出させ、低い所をさらに掘り下げる。
【0012】
オプションの技術案において、前記光照射条件の改造は、日陰被覆と土砂投入を含み、ここで、日陰被覆は、コカナダモが成長する重要な区域に浮体式太陽光発電所を建設する方式を採用する。
【発明の効果】
【0013】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は以下の通り、
本発明は生息地因子の閾値の確定と逆改造の角度から、コカナダモの光合成を遮断し、影響し、コカナダモの生息地逆改造技術を提案する。具体的には、適切な生息地因子の調査と指標の確認、水中地形の改造、砂含有量補充と回復、春と夏運転水位の上昇、太陽光発電パネルの日除などを含む。その利点は、(1)二次的自然、生態系への影響をもたらすことはない。(2)コカナダモの成長に適さない生息地を構築し、「根治的治療」の目的を達成することができる。(3)一定の経済効果を生み、管理プロジェクトへの投入を補うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るコカナダモ生息適地流体力学的要因を調査する方法のフローチャートである。
【
図2】本発明に係る貯水池区域コカナダモ生息地逆改造技術体系実施のフローチャートである。
【
図3】本発明に係る実施例のコカナダモが重要な分布区域のリモートセンシング画像である。
【
図4】本発明に係る実施例のコカナダモが重要な分布区域の区分概略図である。
【
図6】本発明に係る実施例区域Aの改造前後の地形比較図である。
【
図7】本発明に係る実施例区域Bの改造前後の地形比較図である。
【
図8】本発明に係る実施例区域Cの改造前後の地形比較図である。
【
図9】本発明に係る実施例の代表的な断面A1改造前後の水深と流速の比較図である。
【
図10】本発明に係る実施例の代表的な断面A2改造前後の水深と流速の比較図である。
【
図11】本発明に係る実施例の代表的な断面B1改造前後の水深と流速の比較図である。
【
図12】本発明に係る実施例の代表的な断面B2改造前後の水深と流速の比較図である。
【
図13】本発明に係る実施例の代表的な断面C1改造前後の水深と流速の比較図である。
【
図14】本発明に係る実施例の代表的な断面C2改造前後の水深と流速の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的、請求項及び利点をより明確にするために、添付の図面および実施例と併せて本発明をさらに詳細に説明する。本発明が挙げた各実施例は、本発明を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。本発明に対して行った修飾または変更は、本発明の主題および範囲から逸脱しない。
【0016】
本発明の実施例は貯水池区域コカナダモ生息地逆改造方法を提案し、
図1と2に示すように、該方法は、以下のステップを含み、
(1)ドローンによる航空測量でリモートセンシング画像を形成し、かつリモートセンシング画像から貯水池区域の植生被覆区域を抽出して、コカナダモ/水体境界線が得られるステップ。空撮する前に、測定区の実状に基づいて、グラウンドコントロールポイントを配置し、グラウンドコントロールポイントに基づいて航路計画を行う必要がある。グラウンドコントロールポイントの配置と航路計画が完了した後、ドローンを離陸し、計画された航路に従って測定区のUAV画像を収集する。その後、画像をコンピュータに取り込み、植物パッチと水体を識別した後、植物パッチの境界を描画、コカナダモ/水体境界線を作成する。低コストのドローンを使用することで、貯水池や湖の水生植物の空撮画像を迅速かつ安価に取得することが可能になる。UAVリモートセンシングは柔軟なデータ収集、高い画像解像度などの特徴を持ち、プランドスケープスケールの湖貯水池河川の異なる植生被覆タイプ、被覆度の動態モニタリングの分析に非常に適している。デジタルカメラに比べて、ハイパースペクトルカメラは高価で、水上作業リスクが高く、データ処理が複雑で、比較的に良い実施の将来性を備えているが、現在デジタルカメラを搭載している一般消費者用のドローンは、湖沼、貯水池、河川における水生植物の日常的なモニタリングに適している。本発明はデジタルカメラを搭載した一般消費者用のドローンを用いて貯水池の水草被覆度モニタリングを展開する。ドローンリモートセンシング画像における特徴分類方法には主に2つの種類があり、1つは画像中のパッチのサイズ、形状、色、テクスチャなどの分類に基づく目視による解読法であり、もう1つは画像スペクトル特性に基づく自動分類法である。後者は複数のタイプの植生識別に適しており、実地踏査によって構築された水生植物サンプルと結合して、ニューラルネットワーク、ランダムフォレストを構築する方法により、厚さが分割された画像のパッチをモニタリング、分類することが要求されている。
【0017】
(2)水深等値線図と流速等値線図を取得するステップ。
貯水池区域の実測水中地形(貯水池は一般的に年次モニタリングする)と調査期間の水位に基づいて、貯水池区域の水深等値線図が得られる。三次元数値標高モデルを用いて貯水池区域絶対座標の実測水中地形(mapinfo形式であればそのまま使用可能)はdwg形式のデータを導出した後、水位値を参照しながら標高を水深値に変換、mapinfoやsurferなどのGIS系ソフトウェアを用いて上記データを導入することにより、水深等値線図を描画することができる。
【0018】
貯水池区域における平面2次元水流数理モデルを構築し、実測水中地形を底部境界として導入した後、貯水池入口流量とダム前の水位を上流と下流の計算条件とし、流速場を計算し、貯水池区域の流速場に基づいて流速等値線図を描画することができ、三次元数値標高モデルを用いて貯水池区域絶対座標の実測水中地形(mapinfo形式であればそのまま使用可能)はdwg形式のデータを導出した後、水位値を参照しながら標高を水深値に変換、mapinfoやsurferなどのGIS系ソフトウェアを用いて上記データを導入することにより、流速等値線図を描画することができる。
【0019】
(3)コカナダモ/水体境界線を、それぞれ水深等値線図、流速等値線図に重ねることにより、臨界水深と流速、即ちコカナダモ生息適地因子の閾値を求めることができる。コカナダモ/水体境界線を含む貯水池区域リモートセンシング画像と水深等値線図を同座標に重畳し、コカナダモ/水体境界線のある水深を得て、水深最大値をコカナダモ逆改造の水深閾値hとし、絶対座標のコカナダモ/水体境界線と水深等値線図を重ねて、境界線のある水深を得て、境界線と水深等値線は異なるかもしれなく、境界線の所在の水深最大値をコカナダモの逆方法改造の水深閾値hとする。
【0020】
(4)コカナダモ分布水域の流体力学的条件を統計し、生息地因子制御指標体系を取得する。
【0021】
【0022】
まずコカナダモ生息適地因子を研究し、ライフサイクル全体と大水域調査を通じて、その主要なコカナダモ分布水域の流体力学的条件を統計すると、一、光照射と透明度条件が得られ、3500-5600lx範囲内(夏季に全照射条件水面における照度は最大で約10万lx)、水域の光合成が強く、盛んに成長して、一定水深の光照度Ih=Ie-kh、ここで、Ihは水深hになる時の光照度、Iは水面の光照度、kは水体中の光の垂直減衰係数、濁度と関係があり、透明度と該係数は指数が負の相関である。二、流速条件が得られ、密生区域の実測流速の殆どは0.14m/s未満で、流速が大きすぎると植物の根を洗い流しやすく、成長に不利である。三、水深条件が得られ、水深が2.5m未満の区域では群系の優位性が大きく、水深が3.5mを超える区域ではコカナダモはほとんど生息していない。上述のコカナダモ生息適地に対する調査を通じて、以下の式3によって表れる生息地因子制御指標体系が得られ、
【0023】
【0024】
(5)取得したコカナダモ生息適地因子の閾値と生息地因子制御指標体系に基づいて、水深の増高、流速の増大、水中照度の減少などの角度から、コカナダモの成長に不利な環境を改造し、貯水池区域コカナダモ生息地逆改造技術体系を形成する。ここで、貯水池区域コカナダモ生息地逆改造技術体系は、流体力学的条件の改造と光照射条件の改造を含まれる。
【0025】
上述の指標に対する調査データに基づいて、水深の増高、流速の増大、水中照度の減少などの角度から、コカナダモの成長に不利な環境を改造し、貯水池区域コカナダモ生息地逆改造技術体系を提案する。
【0026】
措置1、貯水池生態スケジューリング
流量と水位変化過程を調節することにより水草の成長に不利な流体力学的条件を形成し、水草の成長を制御する。しかし、該措置は上流貯水池の水量Qを増加させたり、或いは本級貯水池の貯水位を上昇させたりすることで、水深hを増加させたり、流速vを高めたりする必要がある。貯水池の河川区間の幅Bが一定で横断面が矩形に概略化可能な場合、
【0027】
【0028】
措置2、局所的な地形改造
局所的な地形を改造は、貯水池区域の浅瀬部で成長に適するコカナダモに対して、局所の浚渫又は局所の埋め立てにより、地形を改造し、すなわち水中の緩斜面を急斜面に変更し、水中の浅瀬部では、高い所をさらに持ち上げて水面を露出させ、低い所をさらに掘り下げ、水中部分で水深hが3.5mより大きい区域の割合をできるだけ増加させ、流速vが小さい浅瀬部では、水流を整備し、流速を増大させ、コカナダモの成長に適さない地形環境を作る。
【0029】
措置3、日陰被覆
コカナダモが成長する重要な区域(植生被覆度が30%以上に達する位置)を選択し、日陰被覆または浮体式太陽光発電所を建設するなどの方式を採用し、日陰を通じて、水面光照度I低下させることにより、水草の成長を抑制する。
【0030】
措置4、土砂投入
一定の土砂を投入して水体の砂含有量と濁度kを増大させ、水体の透明度を減少させ、それによって水草の成長を抑制する。砂含有量は貯水池建設前の天然河川区間敷に近いことが望ましい。
【0031】
下表1は貯水池区域コカナダモ生息地逆改造技術措置の比較表である。
【0032】
【0033】
上記4つの措置は、従来技術と政策の実行可能性に基づいて、順次展開することを提案する。投資額が少なく、発電収益を増える角度から考え、生態スケジューリング措置は最優先ですけれども、貯水池スケジューリング規程の変更審査過程が複雑で、実際に実施するのは難しい。地形改造措置は工事量が多く、かつ事前に堆積物汚染物の検査を行う必要があるが、貯水池の容量を回復することができるとともに、一定の土砂資源化利用効果をもたらすことができる。太陽光日陰被覆は、一定の投資が必要が、発電の収益も得るが、現在は大面積水面の太陽光発電プロジェクトの審査・認可が厳しく、天然の水体光照射条件の変更、より詳細な環境影響評価を行う必要がある。土砂投入は、細かい砂の購入と常態化の投入する必要があり、「根治的治療」ことはできず、地形改造、貯水池の土砂浚渫の補助措置として行うことができる。
【0034】
本発明は実際に適用され、良好な技術効果が得られ、
図3-
図15に示すように、実施例は以下の通り、
(1)基本的な状況
王甫洲水利中枢は、漢江中下流が丹江口水利中枢を結ぶ最初階段級中枢プロジェクトであり、発電を主とし、運航を組み合わせ、灌漑、養殖、観光などの総合的な利益を兼ねる大型水利プロジェクトであり、流域面積9.59万km
2を制御する。貯水池は湖北省老河口市の漢江主流上に位置し、上游の丹江口中枢から30km離れ、老河口市市街地の下游から約3kmの箇所は、開発中の16級の漢江主流上の第10級である。王甫洲貯水池の正常貯水位は86.23m、対応する容量は1.495億m
3、校正洪水水位は89.3m、総容量は3.095億m
3。
【0035】
王甫洲発電所1号機は2000年5月に正式に稼動し、2011年に汚物止め格子の前に水草の集積状況が見られ始め、2017年と2019年9月~11月の秋の洪水期間中、河道の水草が王甫洲発電所の貯水池区域に押し流され、汚物止め格子の前に水草が急増し、汚物止め格子の外に大量の水草と雑物が堆積した。貯水池区域に漂う水草はコカナダモを主とし、堆積した水草雑物は汚物止め格子を押し出し、水流の累積に伴い、汚物止め格子の下から押し出され、4台の発電ユニットの斜面汚物止め格子のところに堆積した。2017年と2019年の水草災害による年間発電ロスは5100万度と2400万度で、大きな直接的な年間経済損失をもたらした。同時に大量の水草が死亡して水中に沈殿して腐敗、分解し、成長期に吸収された栄養塩類などの物質はまた水域に放出され、水体栄養成分が基準値を超えやすく、水体内の汚染源となる。
【0036】
(2)改造
ステップS1、
2020年に王甫洲貯水池区域で現場調査が実施され、(1)ドローンによる航空測量でリモートセンシング画像を形成し、画像中の植物パッチと水体を識別し、植物パッチの境界を描画することにより、コカナダモの重要な分布区域と水体との境界線を形成し、
図3に示すようになった。
【0037】
ステップS2、
貯水池区域の実測水中地形と調査期間の水位に基づいて、貯水池区域の水深等値線図を得た。貯水池区域の範囲が広いため、本実施例はコカナダモの重要な分布区域の一つである光化大橋近くの中州区域を選択して具体的に分析を挙げ、後の実施例もこの区域を囲んで、それを区域A、区域Aの水深分布図と定義する。
【0038】
ステップS3、
王甫洲貯水池区域は代表的な浅水型貯水池であり、水流の垂直方向の変化を考慮せず、デンマーク水理環境研究所(DHI)が開発したMIKE21モデルを用いて該河川区間の2次元流体力モデルを構築した。シミュレーション範囲は丹江口貯水池下側から王甫洲発電所まで、王甫洲倉貯水池区域と丹江口貯水池下河川区間を含み、長さは約35kmである。1:2000実測水中地形を持つ、貯水池入口流量とダム前の水位を上流と下流の計算条件とし、区域Aの流体速度場を計算する。
【0039】
ステップS4、
絶対座標のコカナダモ/水体境界線と水深等値線図を重ね、境界線が所在する水深を得て、境界線が所在する水深の最大値をコカナダモ逆改造の水深閾値値hとし、約3m。
【0040】
ステップS5、
絶対座標のコカナダモ/水体境界線と流速等値線図を重ねて、境界線が所在する流速を得て、境界線が所在する流速の最大値をコカナダモ逆改造の流速閾値値vとして約0.03m/s。
【0041】
調査によると、発電所から放流ゲート区間までのコカナダモの分布は少なく、光化漢江大橋以上から木排港区間までのコカナダモのバイオマスは多く、特に中洲島区間と木排港砕石堆積箇所範囲内では、秋の洪水による草の氾濫を引き起こすリスクは高い。コカナダモは主に河畔付近と人工的に砂を掘って堆積した停滞区に沿って密集して分布している。面積が大きく、成長が安定した群落の最大水深は約3-3.5mであり、密集成長区域の実測流速は0.14m/s未満が多い。
【0042】
表1に記載された各措置に基づき、まず措置1を考慮するが、その上流は丹江口貯水池であり、中国南水北調の水源地であり、水資源が貴重で、春季に排出流量を増やして生態スケジューリングを形成することができないため、措置1は実施できない。措置2は、費用効果比が実行可能な場合に実施することができる。措置3は、水面の太陽光発電は河道主管部門の審査を経なければならないが、漢江は長江の一級支流として、水面の太陽光発電には厳格な制限があるため、措置3は現在も実施できない。措置5は、投入が小さく、便利で、応急的に実施することができる。措置4は、外来砂源がなく、措置2を協力して行うことを考慮し、即ち地形改造によって発生した細砂を再び徐々に貯水池区域に戻し、中砂と粗砂は資源活用が可能であり、砂利販売の経済効果を生む。そのため、王甫洲貯水池区域が最終的に考慮した生息地逆方法改造技術は措置2を採用した。
【0043】
コカナダモの分布特性を調査した結果に基づいて、コカナダモが最も集中している区域A、区域Bと区域Cを実施地として選定され、それぞれの位置は
図4に示されている。ここで、区域Aと区域Bは王甫洲貯水池区域の管理範囲内にあり、区域Cは王甫洲貯水池区域の管理範囲内にはないが、コカナダモ高リスク区域でもあるため、今回の管理方案においても統一的に考慮した。
【0044】
区域Aが沈泥を取り除く予定の平面面積は312.1万m2、区域Bが沈泥を取り除く予定の平面面積は562.8万m2、区域Cが沈泥を取り除く予定の平面面積は398.9万m2である。コカナダモの大規模で安定した群落を形成するための最大水深は約3-4mであるため、中州改造掘削深さを82.2mとし、王甫洲貯水池の正常貯水位86.23mに対応する場合の水深は約4mとすることを提案した。新しい中州を形成するためのカバー範囲を86.3m以上に統一的に埋め、正常な貯水位以上にした。「区間掘り深さ-局所中州嵩上げ再形成」によりコカナダモの生存に不利な地形環境を形成する。
【0045】
該区域Bは漢江特大橋の下にある中洲島であり、区域A中州改造構想と同様に、この区域を一定の掘り深さにし、過去に採砂が残した散らばっている中州を一定の整頓を行い、新しい中州を形作る予定である。
【0046】
区域Cは漢江特大橋から約3km上の木排港付近の右側灘で、砂掘りなどにより非常に散らばっているブロックが形成されており、現場調査期間中、該区域には数キロの江川区間に10隻近くの砂採取船があった。該区域を一定の掘り深さにして、過去に採砂が残した小さく散らばっている堆積体を除去する予定である。
【0047】
2021年に丹江口貯水池は王甫洲ダムと連合して、それぞれ2月末と3月初めに生態スケジューリングを展開し、丹江口貯水池の水流出量を増大させ、それによってコカナダモの所在する貯水池区域の水位を高め、コカナダモがカバーしている区域の水深を水深の閾値3mより大きくした。2021年2月22日~26日丹江口貯水池から漢江中下流への給水流量は591~1280m
3/s変動、最大流量と最小流量の比は2倍を超え、平均給水流量は941m
3/sである。3月8日~12日に第2回生態スケジューリングを実施し、期間中漢江中下流の給水流量は464~1240m
3/s変動、最大流量と最小流量の比は3倍近く、平均給水流量は873m
3/sで、
図5に示す。流体力変化の情況から見ると、区域A岸辺のコカナダモ集中分布区域のスケジューリング前の平均流速は約0.03m/s、最大流速は0.05m/sであった。2月22日~26日の第1回生態スケジューリング期間の区間平均流速は0.05m/sに増加し、最大値は0.09m/sに増加した、3月8日~3月12日の第2回生態スケジューリング期間の区間平均流速は0.04m/sに増加し、最大値は0.06m/sに増加した。
【0048】
2021年のコカナダモバイオマスの観測結果によると、1月に回復したコカナダモは主に水深1~2mに集中、3mの水深では散発的な生育が見られ、5mと7mの水深には水草が見られなかった。1月の水岸新城区域のコカナダモは主に特に浅い水域に分布し、基本的に1mを超えず、2月の分布区域の水深は1.5m未満、5月の分布水深は2m未満、7月の分布水深は3~3.5m未満である。7-8月の丹江口-王甫洲区間の大部分のコカナダモはすでにバイオマスピークに達している。2021年の結果は2019年と2020年と比較して、代表的な地域Aは茂った「水中の森」を形成しておらず、コカナダモバイオマスは改造前の約770トンから約233トンに減少し、約70%のバイオマスを減少し、良好な予想効果を得た。また、コカナダモ分布の変化を見ると、これまで主に分布していた静水に近い浅水域は地形改造の変化により流体力が増強され、水深が増大し、コカナダモバイオマスが著しく低下し、区域Aのコカナダモバイオマスの低下が最も大きい位置であった。
【0049】
丹江口貯水池の水資源は非常に重要であるため、水資源が十分な年にしか生態スケジューリングを行わなく、2022年のような干ばつ条件の下では、生態スケジューリングを展開することができない。貯水池区域のコカナダモ災害を治めるために、局所的な区域でも王甫洲貯水池区域の水中地形を改造する方式を探索展開し、コカナダモのコントロールを強化するため、コカナダモが集中する局所領域Aは浚渫され、浚渫制御標高は83.2m、すなわち貯水池の正常貯水位86.2mである場合、水深は3m、ステップS4で得られたコカナダモ成長閾値水深の3mに対応する。水中地形の改造後、正常水位下区域Aが3m未満の小水深区域の改善は明らかで、典型的な断面から見ると、改造前は起点距離600-1800mの範囲内で、水深はすべて2m未満で、しかも80%を超える区域が存在して水深は1m未満で、改造後、同じ区域で、水深はすべて3mを超えた。流速の変化から見ると、タールヴェグに近い区域では流速が減少したが、地形改造区域ではコカナダモ成長流速しきい値0.03m/s未満の範囲で顕著に減少した(
図6に示す)。地形改造後、比較的低い流量条件下でも区域Aの水深と流速の改善はコカナダモの成長に不利であり、中流量と大流量の場合、水深と流速はさらに増大し、それによってコカナダモに不利な生息地を形成し、観測結果に基づいて、生態スケジューリングを展開せずに地形改造のみを採用した場合、区域Aコカナダモのバイオマスピーク期間のバイオマスは約116万tであり、2019年と2020年の平均値770万tに比べて約85%減少し、生態スケジューリングを採用した2021年のコカナダモバイオマスよりさらに減少し、コカナダモの成長抑制に明らかな効果をもたらした。
【0050】
以上述べたのは、本開示の具体的な実施形態にすぎないが、本開示の保護範囲はこれに限定されるものではなく、本開示の開示の技術範囲内において、本開示の保護範囲内に含まれるべき変更または置換を容易に思いつくことができる当技術分野に詳しいいかなる技術者も含まれるべきである。したがって、本開示の保護範囲は請求項の保護範囲に準じなければならない。