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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20241217BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20241217BHJP
   F25D 11/02 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F25D23/00 301L
F25D11/00 101B
F25D11/02 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023191491
(22)【出願日】2023-11-09
(65)【公開番号】P2024072267
(43)【公開日】2024-05-27
【審査請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2022182465
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 正昭
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-194516(JP,A)
【文献】特開2020-125883(JP,A)
【文献】特開2010-060263(JP,A)
【文献】特開2016-223728(JP,A)
【文献】特開2021-076313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00 - 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材で囲まれた急冷室と、
前記急冷室内を冷却する冷却部と、
前記冷却部を制御する制御部と、
温度センサと、
を備え、
前記制御部が、
非冷凍の食品(以下、「収納食品」という)が前記急冷室内に収納された状態で、使用者の入力に基づく開始信号を受信したとき、前記冷却部を急冷モードで稼働させ、
前記温度センサの測定値に基づいて、前記収納食品が潜熱域温度に達したか否か判定し、該潜熱域温度に達したと判別した後、所定の時間が経過したとき、前記収納食品がカット適正状態になったと判別し、前記収納食品がカット適正状態となったことを報知する制御を行うことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記温度センサが、赤外線を用いて非接触で前記収納食品の表面温度を計測するセンサ、前記急冷室内の気体の温度を計測する温度センサ、冷凍室内に配置された温度センサ、及び前記収納食品が載置される前記急冷室内に備えられた金属製の板状部材の温度を計測するセンサのうちの何れかであることを特徴とする請求項1に載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記収納食品の重量を計測する重量センサを更に備え、
前記制御部が、前記重量センサの測定値に基づいて、前記所定の時間を定めることを特徴とする請求項1に載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記冷却部として、庫内の気体を循環させる冷蔵庫の冷却ファンと、前記急冷室専用の急冷ファンと、を備え、
前記急冷モードでは、前記冷却ファンによる流動で蒸発器を通過した冷気が前記急冷室内に流入するとともに、前記急冷ファンにより前記急冷室内に流入した冷気の流速が上昇することを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記急冷室内に前記収納食品が載置される金属製の板状部材を備え、
前記冷却部により供給される冷気が板状部材の上面及び下面に沿って流れることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記収納食品が前記急冷室から取り出されたか否か判断するための識別センサを更に備え、
前記制御部が、前記収納食品がカット適正状態となったことを報知する制御を行った後、前記識別センサからの信号に基づいて、前記収納食品が前記急冷室から取り出されたと判別したとき、該報知を停止し、前記冷却部を他の冷却モードで稼働することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記識別センサが、前記急冷室を開閉する扉或いは前記急冷室が配置された領域の扉の開閉を検知する開閉センサ、または前記収納食品の重量を計測する重量センサであることを特徴とする請求項6に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納された食品をカットするのに適切な状態(カット適正状態)となったことを報知する機能を有する冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の様々な要望に応えるため、冷蔵、冷凍機能に加えて、その他の様々な機能を有する冷蔵庫が提案されている。そのような冷蔵庫の中には、チルド室に収納された食品がカット適正状態になったことを報知する機能を有する冷蔵庫が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-76313号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の冷蔵庫では、高温冷却制御と低温冷却制御とを繰り返し行うサイクルにおいて、制御の切り替えが行われた後、所定の時間が経過したとき、収納された食品がカット適正状態になったと識別して報知する制御を行う。特許文献1に記載の冷蔵庫は、一定の冷却サイクルを繰り返し行なう中で、既に収納されている食品がカット適正状態になったことを識別して報知を行うものである。つまり、食品の保存を前提として、食品を取り出す前に目的の状態となったときに報知するものである。
【0005】
一方、使用者の強い要望があるのは、冷凍されていない肉や魚のような生鮮食料品の外側を少し凍らせて、迅速にカットし易い状態にすることである。しかし、引用文献1に記載の冷蔵庫では、カットし易い状態になるまで長時間を要し、このような要望に応えることはできない。
【0006】
よって、本発明の目的は、上記の課題を解決するものであり、冷凍されていない食品を迅速にカットに適した状態にして報知することができる冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の態様は、
断熱材で囲まれた急冷室と、
前記急冷室内を冷却する冷却部と、
前記冷却部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
非冷凍の食品(以下、「収納食品」という)が前記急冷室内に収納された状態で、使用者の入力に基づく開始信号を受信したとき、前記冷却部を急冷モードで稼働させ、
所定の要件を満たしたとき、前記収納食品がカット適正状態になったと判別し、前記収納食品がカット適正状態となったことを報知する制御を行うことを特徴とする冷蔵庫である。
【0008】
第1の態様に係る冷蔵庫は、使用者の意図に基づいて、非冷凍の収納食品を急冷して、迅速に、食品を容易に形崩れ少なくカットできる状態にして、カット適合状態であることを報知することができる。このように本態様では、冷凍されていない食品を迅速にカットに適した状態にして報知することができる冷蔵庫を提供できる。
【0009】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、
温度センサを更に備え、
前記制御部が、前記温度センサの測定値に基づいて、前記収納食品が潜熱域温度に達したか否か判定し、該潜熱域温度に達したと判別した後、所定の時間が経過したとき、前記収納食品がカット適正状態になったと判別することを特徴とする冷蔵庫である。
【0010】
実証試験やそれを補足する理論計算により、食品が潜熱域温度に達した後の食品の凍結状態及び時間の相関関係について知見することができる。その知見に基づく所定の時間のデータを用いて、的確に収納食品がカット適正状態になったタイミングを判定することができる。
【0011】
また、本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、
前記収納食品の重量を計測する重量センサを更に備え、
前記制御部が、前記重量センサの測定値に基づいて、前記所定の時間を定めることを特徴とする冷蔵庫である。
【0012】
生鮮食品の水分含有量は80~90%以上あり、食品の重量が分かれば、凍結する水分の概算量が推測できる。カットする食品の重量を把握することにより、水分の概算量に基づいて凍結の状態を把握することができる。よって、重量センサで計測した収納食品の重量を用いることにより、所定の時間をより正確に推測することができ、延いては、収納食品がカット適正状態になったタイミングをより的確に判断することができる。
【0013】
また、本発明の第4の態様は、第1から第3の何れか1つの態様において、
前記冷却部として、庫内の気体を循環させる冷蔵庫の冷却ファンと、前記急冷室専用の急冷ファンと、を備え、
前記急冷モードでは、前記冷却ファンによる流動で蒸発器を通過した冷気が前記急冷室内に流入するとともに、前記急冷ファンにより前記急冷室内に流入した冷気の流速が上昇することを特徴とする冷蔵庫である。
【0014】
本態様では、急冷モードにおいて、冷却ファンによる流動で蒸発器を通過した冷気が急冷室内に供給されるとともに、急冷ファンにより急冷室内に流入した冷気の流速を更に上げることができる。このような急冷室を冷却する構成により、急冷室内に収納された食品の冷却能力を高めることができる。
【0015】
また、本発明の第5の態様は、第4の態様において、
前記急冷室内に前記収納食品が載置される金属製の板状部材を備え、
前記冷却部により供給される冷気が板状部材の上面及び下面に沿って流れることを特徴とする冷蔵庫である。
【0016】
本態様では、冷気が、熱伝導率に高い金属性の板状部材の上面及び下面に沿って流れるので、板状部材に載置された収納食品は上側及び下側の両側から冷却され、より効果的に収納食品を冷却することができる。
【0017】
また、本発明の第6の態様は、第1から第5の何れか1つの態様において、
前記収納食品が前記急冷室から取り出されたか否か判断するための識別センサを更に備え、
前記制御部が、前記収納食品がカット適正状態となったことを報知する制御を行った後、前記識別センサからの信号に基づいて、前記収納食品が前記急冷室から取り出されたと判別したとき、該報知を停止し、前記冷却部を他の冷却モードで稼働することを特徴とする冷蔵庫である。
【0018】
本態様によれば、収納食品を急冷するためだけでなく、冷却部を他の冷却モードで稼働して、急冷室を冷凍室、チルドルーム、冷蔵室をはじめとする通常の冷蔵庫の食品保管領域としても有効活用できる。
【0019】
また、本発明の第7の態様は、第6の態様において、
前記識別センサが、前記急冷室を開閉する扉或いは前記急冷室が配置された領域の扉の開閉を検知する開閉センサ、または前記収納食品の重量を計測する重量センサであることを特徴とする冷蔵庫である。
【0020】
本態様では、識別センサが開閉センサの場合には、既存の冷蔵庫のセンサを有効利用して食品が取り出されたか否か判別できる。識別センサが重量センサの場合には、物理的に確実に食品が取り出されたか否か識別できる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、冷凍されていない食品を迅速にカットに適した状態にして報知することができる冷蔵庫を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫を模式的に示す側面断面図である。
図2図1に示す急冷室を拡大して示す側面断面図と、ブロアファンである急冷ファンの外形を模式的に示す斜視図である。
図3図2に示す急冷室の冷却部の制御構成を示すブロック図である。
図4】急冷室の冷却制御の一例を示すフローチャートである。
図5】食品の重量とカット適正状態になる所定の時間との関係を示すグラフである。
図6】表面に温度センサが取り付けられた急冷される食品(鶏肉)を示す図(画像)である。
図7】冷蔵室に収納された食品(鶏肉)のカット時間と、カット適正状態となったと判別した食品(鶏肉)のカット時間を示したグラフである。
図8】実施例に用いた急冷室を拡大して示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。以下の説明では、冷蔵庫が水平面に載置された状態での上下を示し、扉を有する側を前側として示し、その反対の奥側を後側として示す。
【0024】
(本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫及び急冷室)
図1は、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫2を模式的に示す側面断面図である。図2は、図1に示す急冷室20を拡大して示す側面断面図と、ブロアファンである急冷ファン30の外形を模式的に示す斜視図である。図1及び図2では、気体の流れを点線の矢印で模式的に示している。
【0025】
<冷蔵庫>
はじめに、図1を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫2の説明を行う。本実施形態に係る冷蔵庫2は、断熱材で囲まれた内箱内の下側の領域に冷凍室4が配置され、上側の領域に冷蔵室6が配置されている。冷凍室4の前側には、冷凍室4を開閉する下扉8Aが回転自在に取り付けられ、冷蔵室6の前側には、冷蔵室6を開閉する上扉8Bが回転自在に取り付けられている。本実施形態では、冷凍室4の上側の領域に急冷室20が配置されている。
【0026】
冷凍室4の後側には、蒸発器12及び冷却ファン14が配置された第1流路10Aが設けられている。第1流路10Aの上側には、第1流路10Aと連通可能な第2流路10Bが設けられている。内箱の後方下側に配置された機械室50には、圧縮機52や凝縮器が配置されている。冷媒が圧縮機52、凝縮器、蒸発器12の順に流れて再び圧縮機52に戻る冷却機構が構成されている。
【0027】
冷却ファン14が稼働すると、第1流路10A内を気体が下から上に流れ、蒸発器12を通過するときに冷却されて冷気となる。第1流路10Aの上側に配置されたダンパ(図示せず)が開となると、この冷気が冷凍室4内に流入し、冷凍室4内を循環して、冷凍室4内を冷却する。冷凍室4内を循環した気体は、下側の開口から第1流路10Aに流入し、第1流路10A内を下から上に流れて、再び蒸発器12を通過する。これにより、冷凍室4を冷却する気体の循環サイクルが形成される。
【0028】
本実施形態では、急冷室20は、冷凍室4の幅方向の一部に配置されており、急冷室20が存在しない領域に、冷凍室4用のダンパ及び開口が配置されている。更に、急冷室20の上側をはじめとするその他の位置に、冷凍室4用のダンパ及び開口を配置することができる。
【0029】
第1流路10A及び第2流路10Bの間に配置された冷蔵室ダンパ16が開となると、冷気が第1流路10Aから第2流路10Bに流入し、開口を介して第2流路10Bから冷蔵室6内に流入する。そして、冷蔵室6内を循環して冷蔵室6を冷却した気体は、冷蔵室6の下側に開口した冷蔵室戻り流路10Cに流入する。冷蔵室戻り流路10C内の流入した気体は上から下に流れて、下側の開口から第1流路10Aに流入する。第1流路10Aに流入した気体は、第1流路10A内を下から上に流れて、再び蒸発器12を通過する。これにより、冷蔵室6を冷却する気体の循環サイクルが形成される。
【0030】
<急冷室>
次に、冷凍室4の上側の領域に配置された急冷室20の構造を説明する。図2の(a)に示すように、急冷室20は、断熱材で囲まれた筐体22を備える。筐体22は、前側に回転軸Gの回りを回転する扉部22Aを有し、この扉部22Aにより急冷室20が開閉する。筐体22内では、仕切板32の下側に収納食品Fが収納される急冷領域24Aが配置され、仕切板32の上側に冷却路24Bが配置されている。
【0031】
急冷領域24Aの後側の上方には、冷蔵庫2の第1流路10Aと連通可能な入側開口26が設けられている。急冷室ダンパ18を開にすることにより、入側開口26を介して、冷気が第1流路10Aから急冷領域24A内に流入する。また、急冷領域24Aの後側の下方には、急冷室戻り流路10Dと連通した出側開口28が設けられている。
【0032】
また、冷却路24Bには、急冷ファン30が配置されている。図2の(b)に示すように、急冷ファン30はブロアファンである。仕切板32の急冷ファン30が載置された領域には開口があり、急冷ファン30は下側から気体を吸い込んで(矢印P参照)、前側に吐出する(矢印Q参照)ように配置されている。急冷室20の前側には仕切板32が存在せず、急冷ファン30から吐出された気体は、仕切板32に沿って前側に流れた後、下側に流れて急冷領域24A内に流入する。これにより、図2の(a)の点線の矢印で示すように、急冷室20内で冷気を時計回りに循環させることができる。
【0033】
特に、急冷ファン30がブロアファンなので、エンペラで吐出された気体はケース内側に沿って流れ、同等サイズの軸流ファンや遠心ファンより高い静圧を得ることができる。ブロアファンである急冷ファン30により、急冷室20に供給された冷気の流速を効果的に上昇させることができる。
【0034】
更に、本実施形態に係る急冷室20内には、温度センサ70及び重量センサ72が配置されている。これらのセンサの説明は、追って詳細に述べる。なお、上記の冷蔵庫2及び急冷室20の構造及び配置は、あくまで一例であり、その他の任意の構造及び配置を採用できる。
【0035】
<急冷室内での気体の流れ>
次に、急冷室20内での気体の流れを説明する。使用者が冷凍されていない食品Fを迅速にカットに適した状態にしてカットを行う場合、まず、冷蔵庫2の下扉8A及び急冷室20の扉部22Aを開閉して、カットする食品Fを急冷室20の急冷領域24A内に収納する。そして、入力装置を操作して、急冷モードで冷却を行う。急冷モードでは、冷蔵庫2の圧縮機52及び冷却ファン14を稼働させ、急冷室ダンパ18を開にする。これにより、蒸発器12を通過した直後の冷気が、入側開口26を介して、急冷室20の急冷領域24Aに流入する。冷気の温度として、-20℃~-10℃程度の範囲の温度を例示できる。図2の(a)に示すように、急冷室20を蒸発器12の出側近傍に配置することにより、圧損を低減でき、蒸発器12を通過した直後の冷気を急冷室20に供給して、急冷室20内を効果的に冷却できる。
【0036】
更に、急冷ファン30を稼働することにより、冷却ファン14により急冷室20に流入した冷気の流速を更に上げることができる。これにより、食品Fに沿って流れる冷気の流速が上がって熱伝達率が上がり、食品Fをより効果的に冷却できる。
【0037】
急冷室20内に流入して、急冷室20内を循環する気体の一部は、出側開口28を介して、急冷室戻り流路10Dへ流入する。急冷室戻り流路10Dに流入した気体は、急冷室戻り流路10D内を上から下に流れ、下側の開口から第1流路10Aに流入する。第1流路10Aに流入した気体は、第1流路10A内を下から上に流れて、再び蒸発器12を通過する。これにより、急冷室2を冷却する気体の循環サイクルが形成される。
【0038】
このように、本実施形態では、急冷室20内を流れた気体が冷凍室4や冷蔵室6といった他の収納領域を流れないで、直接、蒸発器12が配置された第1流路10Aに戻るようになっている。これにより、気体の温度上昇を抑えて、急冷室20内の収納食品Fをより効果的に冷却できる。特に、冷凍室4用のダンパ及び冷蔵室ダンパ16が閉の状態では、蒸発器12を通過した冷気を急冷室20専用に用いることができる。また、急冷室20内を流れた気体が冷蔵室6を流れた場合、冷蔵室6が過度に冷却される虞がある。しかし、急冷室20内を流れた気体が他の収納領域を流れない場合には、そのような不具合が生じる虞もない。
【0039】
ただし、急冷室戻り流路10Dを備えない形態もあり得る。急冷室20内の気体が出側開口28から冷凍室4内に流れ、気体が冷凍室4内を流れて第1流路10Aに戻る形態もあり得る。また、急冷室20が出側開口28のような特定の開口を有さず、急冷室20に存在する複数の隙間から、周囲の冷凍室4内に流出するような形態もあり得る。また、急冷室20内を流れた気体が、冷蔵室戻り流路10Cに流入する形態もあり得る。
【0040】
以上のように、本実施形態では、急冷室20内を冷却する冷却部が、圧縮機52、蒸発器12を始めとする冷蔵庫の冷却機構や、庫内の気体を循環させる冷蔵庫2の冷却ファン14に加えて、急冷室20専用の急冷ファン30を備える。そして、冷却ファン14による流動で蒸発器12を通過した冷気が急冷室20内に供給されるとともに、急冷ファン30により急冷室20内に流入した冷気の流速を更に上げることができる。このような急冷室20を冷却する構成により、急冷室20内に収納された収納食品Fの冷却能力を高めることができる。
【0041】
更に、図2の(a)に示すように、本実施形態では、急冷室20の急冷領域24A内に収納食品Fが載置される金属製の板状部材40を備える。板状部材40を形成する金属材料として、熱伝導率が高く、軽量なアルミニウムまたはアルミニウム合金を例示することができる。ただし、これに限られるものではなく、用途に応じて、銅、炭素鋼、ステンレス鋼をはじめとする、その他の任意の金属材料を採用することができる。
【0042】
本実施形態では、板状部材40の下面と急冷室20の筐体22の底面との間に空間が存在するように、板状部材40が配置されて固定されている。例えば、板状部材40が、下側に配置されたスペーサを介して、筐体22の底面から離間して取り付けられる構造を例示できる。これにより、冷却ファン14や急冷ファン30により筐体22内を循環する冷気は、板状部材40の上面及び下面に沿って流れる。
【0043】
冷気が、熱伝導率の高い金属性の板状部材40の上面及び下面に沿って流れるので、板状部材40に載置された収納食品Fは、上側及び下側の両側から冷却され、より効果的に収納食品Fを冷却することができる。
【0044】
急冷室20の冷却部は、蒸発器12による冷気を用いるだけでなく、ペルチェ素子等の冷却装置で板状部材40を冷却して、接触冷却で収納食品Fを冷却することもできる。また、ペルチェ素子等の冷却装置で急冷室20の内面を冷却して、急冷室20内を循環する冷気の温度を更に降下させることも考えられる。
【0045】
(急冷室の冷却部の制御構成)
図3は、図2に示す急冷室20の冷却部の制御構成を示すブロック図である。次に、図3を参照しながら、急冷室20の冷却部の制御構成をについて説明する。
【0046】
図3に示すように、制御部100は、使用者が操作して入力可能な入力装置60から信号を受信する。入力装置60は、タッチパネルやキーボードをはじめとする任意の入力手段を用いることができる。また、使用者の携帯端末を用いて遠隔で入力することもできるし、音声入力を採用することもできる。
【0047】
制御部100は、急冷室20に配置された温度センサ70及び重量センサ72からの信号を受信する。本実施形態では、温度センサ70として、赤外線等を用いて非接触で収納食品Fの表面温度を計測するセンサが用いられている。ただし、これに限られるものではなく、急冷室20内の気体の温度を計測する温度センサで、収納食品Fの表面温度を近似的に測定することもできる。その場合、急冷室20内に配置された温度センサでなく、条件によっては、冷凍室4内に配置された温度センサを用いることもできる。更に、急冷室20内に配置された板状部材40の温度を計測するセンサを用いて、載置された収納食品Fの表面温度を近似的に測定することもできる。
【0048】
本実施形態では、重量センサ72として、歪ゲージを用いたロードセルが採用されている。ただし、これに限られるものではなく、圧力センサを用いたものをはじめとするその他の任意の重量センサを採用できる。重量センサ72が板状部材40に取り付けられ、板状部材40に載置された収納食品Fの重量を計測することができる。重量センサ72の測定値の変化で、板状部材40に収納食品Fが載せられているか否かを判別することができる。
【0049】
制御部100は、急冷室20の冷却部を構成する圧縮機52、冷却ファン14、急冷室ダンパ18及び急冷ファン30に信号を送信する。更に、カット適正状態を報知するため、制御部100は表示装置80に信号を送信する。
【0050】
(急冷室の冷却制御)
図4は、急冷室20の冷却制御の一例を示すフローチャートである。次に、図4を参照しながら、制御部100が、冷凍されていない食品Fが収納された急冷室20を急冷モードで冷却し、収納食品Fがカット適正状態になったことを識別して報知する制御処理について説明する。
【0051】
はじめに、制御部100は、重量センサ72を用いて重量計測を行う(ステップS2)。この重力計測により、カットする予定の食品Fが板状部材40に載置されたか否か、つまり急冷室20に収納されたか否か判別できる。制御部100は、重量センサ72で計測した収納食品Fの重量を記憶し、この重量に基づいて、後述するカット適正状態になる所定の時間Tを定めることができる。
【0052】
カットする予定の食品Fが急冷室20に収納された状態で、制御部100は、次に、使用者の入力に基づく開始信号を受信したか否か判断する(ステップS4)。制御部100は、開始信号を受信していない(NO)と判別したときには、この判断処理を繰り返し待機状態となる。使用者は、カットをする予定の未冷凍の食品Fを急冷室20に収納した後、入力装置60を用いて開始操作を行う。制御部100は、使用者の操作により発せられた開始信号を受信した(YES)と判別したとき、急冷モードで急冷室20の冷却を開始する。
【0053】
具体的には、制御部100は、圧縮機52をオンにして(ステップS6)、冷却ファン14をオンして(ステップS8)、急冷室ダンパ18を開にする(ステップS10)制御を行う。これにより、蒸発器12を通過した直後の冷気が、急冷室20に流入する。更に、制御部100が急冷ファン30をオンにする(ステップS12)制御を行うことにより、急冷室20内に流入した気体の流速を更に上げて、より効果的に収納食品Fを冷却できる。
【0054】
冷凍室4、冷蔵室6等の他室の冷却を行っている間に急冷モードを開始する場合には、制御部100は、他室の冷却も継続し、他室が所定の温度以下になれば、設定温度に達している前に急冷室20の急冷のみを行うように制御する。なお、蒸発器12の霜取り制御を行っている間に急冷モードが選択された場合には、制御部100は、霜取り制御を優先して行う。
【0055】
そして、急冷モードで収納物Fの急冷を開始した後、制御部100は、温度センサ70で計測した収納食品Fの表面温度が僭熱域温度に達したか否か判断する(ステップS14)。僭熱域温度は物質が相変化する温度域を意味し、ここでは、収納食品Fに含まれる水分が凝固して氷となる温度域を意味する。収納食品Fの表面温度は、冷却部による冷却で下降していくが、僭熱域温度では、冷却部により奪う熱量が収納食品Fの水分の凝固熱に使われるため、温度降下がほぼなくなる状態となる。この温度降下の変化により、僭熱域温度に達したか否か的確に判断することができる。僭熱域温度として、-3℃~-1℃程度の範囲の温度を例示できる。
【0056】
なお、僭熱域温度の温度領域で、収納食品Fに含まれる水分が過冷却状態になって凍結が進まない虞ある。これを回避するため、収納食品Fに振動等を与えて過冷却状態を解除する機構を備えることもできる。
【0057】
ステップS14の判断で、制御部100が、もし、収納食品Fの表面温度が僭熱域温度に達した(YES)と判別したときには、次に、僭熱域温度に到達後、計測した収納食品Fの重量に基づいて定めた所定の時間Tを経過したか否かを判断する(ステップS16)。
【0058】
<所定の時間T>
図5は、食品Fの重量とカット適正状態になる所定の時間Tとの関係を示すグラフである。次に、図5を参照しながら、どのようにして所定の時間Tを定めるかについて説明を行う。
【0059】
急冷室20を用いてカット適正状態にする食品Fの一例として、非冷凍状態では切りにくい、肉や魚をはじめとする生鮮食品を挙げることができる。生鮮食品の表面近傍の領域において、氷結率が70%以下の微凍結状態である場合、カットし易い状態であるとともに、食品Fの鮮度が保たれると考えられる。微凍結状態では、氷の結晶の成長が少ないので、細胞が壊れる虞が少なく、生鮮食品の品質が保たれることが期待できる。
【0060】
生鮮食品の水分含有量は80~90%以上あり、食品の重量が分かれば、凍結する水分の概算量が推測できる。カットする食品の重量を把握することにより、水分の概算量に基づいて凍結の状態を把握することができる。特に、急冷するため、収納食物Fの表面と内側との間に温度差が生じ易いので、表面近傍のみが微凍結する状態を作り易くなる。このような冷却状態を解析することにより、食品Fが潜熱域温度に達した後、カットに適した冷凍状態となる所定の時間Tを定めることができる。
【0061】
ただし、よりカットし易い状態を考慮すると、カットしやすい凍結状態は、肉、魚といった食品Fの種類によっても異なる。カットの容易さと、微凍結層が存在する表面からの厚みとは、食品Fの種類によっても異なる。よって、食品Fの種類に適合した微凍結層の表面からの厚みとなるように、所定の時間Tを定めるのが好ましい。図5のグラフは、横軸に食品Fの重量を示し、縦軸にカット適正状態となる所定の時間Tを示す。
【0062】
図5では、食品Fが魚の場合のプロファイル(実線)及び肉の場合のプロファイル(点線)が例示されている。食品Fの種類は、例えば、使用者が入力装置60を用いてインプットすることができる。また、撮像装置で食品Fの画像を取得して、画像解析で食品Fの種類を定めることもできる。制御部100は、重量センサ72で検出した食品Fの重量及び食品Fの種類に基づいて、図5に示すプロファイルから、食品Fが潜熱域温度に達した後、カット適正状態になる所定の時間Tを定めることができる。
【0063】
このように、食品Fの重量に加えて食品Fの種類に基づいて所定の時間Tを定めるのがより好ましいが、食品Fの種類に関わらず食品Fの重量で所定の時間Tを定める場合でも、実用上、十分なカット適正状態が得られる。
【0064】
以上のように、本実施形態では、収納食品Fの重量を計測する重量センサ72を備え、制御部100が、重量センサ72の測定値に基づいて、所定の時間Tを定めることができる。重量センサ72で計測した収納食品Fの重量を用いることにより、所定の時間Tをより正確に推測することができ、延いては、収納食品がカット適正状態になったタイミングをより的確に判断することができる。
【0065】
上記では、重量センサ72で計測した収納食品Fの重量を用いて所定の時間Tを定める場合を説明したが、これに限られるものではない。例えば、重量の大きな収納食品Fは、それに応じてより大きな表面積を有するので、冷気でより多くの熱量が奪われる。よって、収納食品Fの表面近傍の領域の凍結に関しては、収納食品Fの全体の凍結に比べて、収納食品Fの重量の影響は少ない。よって、収納食品Fの重量を用いずに、食品が潜熱域温度に達した後の食品の凍結状態及び時間の相関関係の検討に基づいて、所定の時間Tを定めることもできる。
【0066】
収納食品Fの重量を用いる場合も用いない場合も含む様々な手法で定めた所定の時間Tを用いて、制御部100は、収納食品Fが潜熱域温度に達したか否か判定し、潜熱域温度に達したと判別した後、所定の時間Tが経過したとき、収納食品Fがカット適正状態になったと判別することができる。これにより、的確に収納食品がカット適正状態になったタイミングを判定できる。
【0067】
温度センサ70に加えて、板状部材40の温度を計測するセンサを備える場合には、温度センサ70により収納食品Fの上側の温度を測定し、板状部材40のセンサにより収納食品Fの下側の近似温度を測定できる。測定した収納食品Fの上側及び下側の温度の温度差が所定の範囲を超えないように、制御部100が冷却制御することが考えられる。これにより、収納食品Fのカットのし易さと品質とを両立させることができる。板状部材40の上下でバランスを取る温度制御には、板状部材40に取り付けたペルチェ素子のような冷却装置の温度制御や、可変の整流板で板状部材40の上側及び下側に流れる気体の流量を調整することが考えられる。
【0068】
図4に示すフローチャートの説明に戻り、ステップS16の判断で、食品Fが潜熱域温度に達した後、所定の時間Tを経過した(YES)と判別したとき、制御部100は、表示装置80を用いて、収納食品Fがカット適正状態になったことを報知する制御を行う(ステップS18)。なお、音声を用いて、収納食品Fがカット適正状態になったことを報知することもできる。
【0069】
この報知に基づいて、使用者は、収納食品Fを急冷室20から庫外へ取り出して、カット適正状態で食品Fをカットすることができる。よって、使用者は、迅速に容易に食品Fをカットでき、カット時の形崩れも少ない。更に、カットした食品をすぐに食することもできる。
【0070】
報知の後、制御部100は、識別センサにより、収納食品Fが急冷室20から取り出されたか否か判断する(ステップS20)。本実施形態では、識別センサとして重量センサ72が用いられる。重量センサ72の測定値の減少により、収納食品Fが急冷室20から取り出されことを確実に識別することができる。
【0071】
ただし、識別センサが重量センサ72である場合に限られるものではない。カット適正状態になったことを報知した後の扉の開閉は、収納食品Fを取り出すための開閉の可能性が高い。よって、例えば、急冷室20を開閉する扉(ここでは扉部22A)の開閉を検知する開閉センサや、急冷室20が配置された領域の扉(ここでは冷凍室4を開閉する下扉8A)の開閉を検知する開閉センサが開閉を検知したとき、収納食品Fが急冷室20から取り出されたと判断することもできる。
【0072】
特に、カット適正状態になったことを報知した後、一定の時間経過以内に扉の開閉があった場合、収納食品Fが取り出された可能性が高い。よって、タイマを用いて、報知後の経過時間を含めた判断を行うこともできる。更に、撮像装置による画像を用いて、収納食品Fが急冷室20から取り出されたことを識別することもできる。
【0073】
このように、識別センサが、急冷室20を開閉する扉部22A、または急冷室20が配置された領域の扉8Aの開閉を検知する開閉センサの場合には、冷蔵庫2の既存のセンサを有効利用して食品が取り出されたか否か判別できる。また、識別センサが、重量センサ72の場合には、確実に物理的に収納食品Fが取り出されたか否か識別できる。
【0074】
更に、識別センサとして、収納食品Fの表面温度を計測する温度センサ70や、急冷室20内の気体の温度を計測するセンサを用いることもできる。このようなセンサの測定温度の変化で、収納食品Fが取り出されたか否か識別することができる。
【0075】
ステップS20の判断で、もし、収納食品Fが急冷室20から取り出された(YES)と判別したとき、制御部100は、報知を停止し(ステップS22)、他の冷却モードに切り替えて冷蔵庫2の制御を行う(ステップS24)。例えば、急冷室ダンパ18を開にしたまま冷凍室4のダンパも開にして、急冷室20及び冷凍室4を冷凍領域として用いることもできる。また、急冷室ダンパ18を開にしたまま、冷却モードを変更して、急冷室20をチルドルームやその他の収納領域として用いることもできる。急冷室20は断熱材で囲まれているので、周囲の冷凍室4と個別の温度域の収納領域として用いることができ、例えば冷蔵室として用いることもできる。
【0076】
以上のように、収納食品Fが急冷室20から取り出されたか否か判断するための識別センサを備え、制御部100が、収納食品Fがカット適正状態となったことを報知する制御を行った後、識別センサからの信号に基づいて、収納食品Fが急冷室20から取り出されたと判別したとき、この報知を停止し、冷却部を他の冷却モードで稼働する。
【0077】
これにより、収納食品Fを急冷するためだけでなく、急冷室20を冷凍室、チルドルーム、冷蔵室をはじめとする通常の冷蔵庫の食品保管領域としても有効活用できる。
【0078】
なお、上記のような識別センサを用いずに、使用者の入力装置60の操作で、報知を終了して、他のモードでの冷却制御を開始するように制御することもできる。
【0079】
(その他の実施形態)
上記の実施形態では、制御部100が、温度センサ70またはその他の温度センサの測定値に基づいて、収納食品Fが潜熱域温度に達したか否か判定し、潜熱域温度に達したと判別した後、所定の時間Tが経過したとき、収納食品Fがカット適正状態になったと判別している。ただし、収納食品Fの表面温度を計測する温度センサ70や他の温度センサの測定結果を用いない形態もあり得る。
【0080】
収納食品Fを急冷室20で急冷して、収納食品Fの冷凍状態を把握する試験を繰り返し行うことにより、収納食品Fの急冷を開始した後の経過時間及び食品の凍結状態の相関関係について知見することができる。その知見に基づき、収納食品Fの急冷を開始した後、どのぐらいの時間が経過したとき、収納食品Fがカット適正状態になるか把握することもできる。
【0081】
また、収納食品Fの急冷を開始した後、カット適正状態になる時間は、収納食品Fの水分含有量に相関するので、カット適正状態になる時間を、重量センサ72の測定値に基づいて定めることもできる。更に、収納食品Fがカット適正状態になったタイミングを判定する手段は、上記に限られるものではなく、その他の任意の判定方法に基づいて、所定の要件を満たしたとき、収納食品Fがカット適正状態になったと判別することができる。
【0082】
(全般)
以上のように、本発明に係る冷蔵庫2は、断熱材で囲まれた急冷室20と、急冷室20内を冷却する冷却部と、冷却部を制御する制御部100と、を備え、制御部100が、非冷凍の食品Fが急冷室20内に収納された状態で、使用者の入力に基づく開始信号を受信したとき、冷却部を急冷モードで稼働させ、所定の要件を満たしたとき、収納食品Fがカット適正状態となったことを報知する制御を行う。
【0083】
このような冷蔵庫2によれば、使用者の意図に基づいて、使用者の意図に基づいて、非冷凍の収納食品を急冷して、迅速に、食品Fを容易に形崩れ少なくカットできる状態にして、カット適合状態であることを報知することができる。使用者は、迅速に食品Fをカットでき、すぐに食品を食することもできる。このように、本発明では、冷凍されていない食品Fを迅速にカットに適した状態にして報知することができる冷蔵庫2を提供できる。
【0084】
(実施例)
次に、実際に、冷蔵室に収納された食品(鶏肉)のカット時間を測定し、冷蔵室に収納された食品(鶏肉)を急冷室で急冷して、カット適正状態となったと判別したときに取り出して、カット時間を測定する試験を行った。図6は、表面に温度センサが取り付けられた急冷される食品(鶏肉)を示す図(画像)である。図7は、冷蔵室に収納された食品(鶏肉)のカット時間と、カット適正状態となったと判別した食品(鶏肉)のカット時間を示したグラフである。図8は、この実施例に用いた急冷室を拡大して示す側面断面図である。
【0085】
この実施例で用いた急冷室20’は、上記の急冷室20に比べ、急冷ファンを備えず、代わりに整流板34を備える点で異なる。整流板34は、上側の冷却路24Bと下側の急冷領域24Aの間に配置されている。整流板34は、ハニカム状、略円形状または波形状の整流部を有し、気体が整流板34を通過するとき整流される。
【0086】
急冷モードでは、冷蔵庫2の圧縮機52及び冷却ファン14を稼働させ、急冷室ダンパ18を開にする。なお、冷凍室へ蒸発器12を通過した冷気を供給するか否かを定める冷凍室ダンパを備える場合には、冷凍室ダンパを閉にするのが好ましい。これにより、蒸発器12を通過した直後の冷気が、入側開口26を介して、急冷室20’の冷却路24Bに流入する。流入した冷気は、冷却路24B内を後側から前側に流れ、前側に配置された整流板34を通過して、下側の急冷領域24Aの前側に流入する。なお、整流板34を通過するときに冷気は整流される。
【0087】
急冷領域24Aに流入した冷気は、前側から後側に流れる間に収納食品Fを冷却し、前下側の出側開口28から冷凍4へ流出する。流出した気体は、冷凍室4内を流れて、下側の開口から第1流路10Aに流入する。第1流路10Aに流入した気体は、第1流路10A内を下から上に流れて、再び蒸発器12を通過する。これにより、急冷室20’を冷却する気体の循環サイクルが形成される。
【0088】
次に、上記のような急冷室20’を用いた実施例の詳細な説明を行う。冷蔵室に収納された2つの食品(鶏肉)の表面温度は、どちらも7℃であった。冷蔵室に収納された一方の食品(鶏肉)をカットしてカット時間を計測する試験を行った。具体的には、食品(鶏肉)を包丁で5回カット(ピースに分離)する時間を測定した。図7に示すように、冷蔵室に収納された一方の食品(鶏肉)を5回カットするのに71秒を要した。
【0089】
食品(鶏肉)の重量に基づいて、これまでの経験値及び理論計算を参照して、潜熱域温度に達した後、収納食品Fがカット適正状態になったと判別する所定の時間として、10分を設定した。
【0090】
冷蔵室に収納された他方の食品(鶏肉)を、急冷室20’で急冷した。急冷開始から5分が経過すると、表面温度が潜熱域温度である-1℃に到達した。潜熱域温度に到達後、所定の時間Tとして10分が経過したとき、収納食品(鶏肉)がカット適正状態になった判別して、食品(鶏肉)を急冷室から取り出した。なお、潜熱域温度(-1℃)到達後、10分が経過したときの収納食品(鶏肉)の表面温度は-4℃であった。
【0091】
カット適正状態になったと判別した他方の食品(鶏肉)を、上記と同じ包丁を用いて、5回カット(ピースに分離)する時間を測定した。図7に示すように、カット適正状態になったと判別した他方の食品(鶏肉)を5回カットするのに22秒を要した。つまり、カット適正状態になった判別した食品(鶏肉)のカットに要する時間は、冷蔵された食品(鶏肉)をカットする場合に比べて1/3未満となった。
【0092】
よって、カット適正状態になったと判別する所定の時間を適切に定めることにより、収納食品がカット適正状態になったという報知を適切に行うことができることが実証された。この実施例では、収納食品として鶏肉を用いているが、豚肉、牛肉をはじめとするその他の肉類についても同様な結果が得られると考えられる。この実施例では、温度センサを収納食品に接触させて表面温度を測定しているが、赤外線センサ等により非接触で収納食品の表面温度を測定した場合であっても、同様な結果が得られると考えられる。
【0093】
以上のように、本実施例により、温度センサの測定値に基づいて、収納食品が潜熱域温度(-1℃)に達したか否か判定し、潜熱域温度に達したと判別した後、所定の時間(10分)が経過したとき、収納食品がカット適正状態になったと判別することにより、的確に収納食品がカット適正状態になったことを報知できることが実証された。
【0094】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0095】
2 冷蔵庫
4 冷凍室
6 冷蔵室
8A 下扉
8B 上扉
10A 第1流路
10B 第2流路
10C 冷蔵室戻り流路
10D 急冷室戻り流路
12 蒸発器
14 冷却ファン
16 冷蔵室ダンパ
18 急冷室ダンパ
20,20’ 急冷室
22 筐体
22A 扉部
24A 急冷領域
24B 冷却路
26 入側開口
28 出側開口
30 急冷ファン
32 仕切板
34 整流板
40 板状部材
50 機械室
52 圧縮機
60 入力装置
70 温度センサ
72 重量センサ
80 表示装置
100 制御部
G 回転軸
F (収納)食品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8