(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法
(51)【国際特許分類】
G06N 3/0475 20230101AFI20241217BHJP
G06N 3/0455 20230101ALI20241217BHJP
G06N 3/094 20230101ALI20241217BHJP
G16H 50/80 20180101ALI20241217BHJP
【FI】
G06N3/0475
G06N3/0455
G06N3/094
G16H50/80
(21)【出願番号】P 2023535831
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(86)【国際出願番号】 CN2022111718
(87)【国際公開番号】W WO2024031520
(87)【国際公開日】2024-02-15
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】202210948304.5
(32)【優先日】2022-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】李 超
(72)【発明者】
【氏名】李 可漢
(72)【発明者】
【氏名】陳 積明
(72)【発明者】
【氏名】賀 詩波
(72)【発明者】
【氏名】楊 秦敏
【審査官】大倉 崚吾
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112257934(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113255951(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113780635(CN,A)
【文献】美嶋勇太朗 ほか,"新型コロナウイルス感染者予測タスクにおける人流データの入力形式に関する一検討",人工知能学会全国大会論文集 第36回 [online],一般社団法人 人工知能学会,2022年06月,p.1-4,[2022年08月01日検索],インターネット<URL:https://doi.org/10.11517/pjsai.JSAI2022.0_2P5GS1005>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
G16H 50/80
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが以下の各ステップを実行する敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法であって、
1つの都市をH×W個の等面積のメッシュに区分し、各メッシュは、都市のうちの1つの領域を表すステップ1と、
ステップ1における領域を区分し、異なる領域の群衆移動レベルmをそれぞれ統計するステップ2と、
ステップ2の中で統計される領域群衆移動レベルを利用して都市の中の一つの領域で構成される群衆移動ヒートマップM∈R
H×Wを得て、マトリクスにおける各要素は、対応する領域の群衆移動レベルを表すステップ3と、
疫病期間の異なる地区の毎日統計データと関連政策を収集し、毎日新たに確定診断された症例Cを疫病期間の代表的な統計データとして取得し、毎日政策の変化と強度を取得し、これらの政策の強度変数をPと記すステップ4と、
特定の都市について、履歴と現在の群衆移動ヒートマップ{M
t-1,M
t}と対応する新型コロナウイルス関連肺炎疫病統計データ{C
t-1,C
t,C
t+1}及び政策{P
t-1,P
t
}を与え、将来の一定時間の群衆移動レベルヒートマップ{M
t+1}を予測するステップ5と、を含む、敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【請求項2】
前記ステップ5において、疫病期間の群衆移動予測モデルによって疫病期間の人口流動の規律を予測し、将来の一定時間の群衆移動レベルヒートマップを生成し、該疫病期間の群衆移動予測モデルは、生成器モジュールと、判別器モジュールと、分野知識融合モジュールとを含み、
前記生成器モジュールは、過去の一定時間の履歴群衆移動データに基づいて、将来の一定時間の群衆移動規律を予測し、
前記判別器モジュールは、人口流動ヒートマップのラベルを予測し、生成された人口流動ヒートマップが真の人口流動分布と一致するか否かを判断するために用いられ、
前記分野知識融合モジュールは、疫病期間の外部要素の影響を融合するために用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【請求項3】
前記生成器モジュールは、異なる時間ステップの間の人口流動の変化値をモデリングすることによって、疫病期間の異なる領域の人口流動の強度の政策変化に対する応答をモデリングし、生成器モジュールの入力は、連続する2つの時間断片の間の群衆移動レベルの変化として表すことができる:
ΔM
t-1=M
t-M
t-1、ことを特徴とする請求項2に記載の敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【請求項4】
前記疫病期間の群衆移動予測モデルにtransformerに基づくエンコーダモジュールを導入し、長距離の時空間相関性をモデリングし、マルチヘッド自己注意力メカニズムモジュールを導入し、抽出して特徴図
【数1】
を得て、transformer処理を経た特徴を
【数2】
と記し、且つ出力された特徴と外部条件特徴とを接合してデコーダに搬送し、予測された人口流動の結果を出力する、ことを特徴とする請求項2に記載の敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【請求項5】
前記分野知識融合モジュールは、疫病期間の政策、疫病統計データを条件として、時空間群衆移動特徴と融合し、具体的には、1つの完全に接続されたニューラルネットワークを導入し、異なる種類の分野知識をまず隠れ変数
【数3】
に転換し、次に1つのゲートコントロール融合ネットワークモジュールを導入して異なる領域の時空間特徴を非アクティブ化することと:
【数4】
疫病期間の群衆移動予測モデルは、作動の時空間に1つのノイズベクトル
【数5】
と時空間特徴ベクトルを同時に導入して特徴次元上で接合し、最後に疫病期間の群衆移動予測モデルは、1つのモデル間の接続を導入し、次の時間ステップの人口流動のレベルに対する推定を得ることを含む:
【数6】
、ことを特徴とする請求項2に記載の敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【請求項6】
前記疫病期間の群衆移動予測モデルに1つのマスクマトリクス
【数7】
を導入し、サンプリングが欠けている領域による影響を減少し、生成器モジュールからマスクマトリクス付きの損失関数を計算することができる:
【数8】
得られた判別器モジュールの損失関数は、以下の通りである:
【数9】
最終的に生成器モジュールと判別器モジュールの損失関数を合併して以下を得る:
【数10】
モデルをトレーニングするによって生成器モジュールと判別器モジュールの損失関数の鞍点に達し、モデルトレーニングが完了することを示す、ことを特徴とする請求項2に記載の敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【請求項7】
前記毎日政策は、移動制限、封鎖政策、経済政策、衛生システム政策のうちの1つ又は複数の指標を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、群衆移動の予測分野に属し、具体的には、敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法に関し、該疫病期間の群衆移動予測方法は、COVID-19疫病期間の群衆移動パターンがどのように変化するかを理解するのに役立つことができ、特に疫病期間で政府が発表した移動制限政策と関連統計データ(例えば確定診断された症例)が新型コロナウイルス関連肺炎の大流行期間で群衆移動を主導した規律を示している。群衆移動レベルの予測を正確に行う。
【背景技術】
【0002】
COVID-19疫病期間の群衆移動パターンがどのように変化するかを理解することは、流行病の伝播を抑えるために非常に重要である。複雑な社会背景、個人行動の違い、極めて限られたデータなどの要素の影響を考慮すると、疫病期間の群衆移動のパターンは予測不可能になっているようである。
【0003】
群衆の移動規律を正確に予測できなければ、合理的な政策を制定することは難しく、過度に厳格な防疫政策は、経済に比較的大きな影響を与え、過度に緩い防疫政策は、また疫病の制御が困難になり、人々の生命と健康に影響を及ぼす。そのため、正確な政策制定参考を提供するために、正確な予測が必要である。
【0004】
深層学習モデルに基づいて都市群衆移動予測を解決する現在のパターンは、主に豊富な履歴データに基づいてトレーニングを行い、その後、現在と履歴時間における一定期間の観測データを与えれば、モデルは、決定的な予測結果を出力することができる。しかし、このような方式には一定の限界があり、まず、決定的予測モデルは、群衆流動性の確率推定を生成することができず、また、生成された結果は、比較的に固定されており、多次元シミュレーションを行うためにいくつかの条件を柔軟に変更することは容易ではない。新型コロナウイルス関連肺炎の疫病期間の中で、政府の意思決定者の意思決定者は、生成式モデルなど、より柔軟なモデルが必要とされているが、それは、データの分布を学習して異なる政策下の複数の潜在的な群衆流動の規律をシミュレーションすることができ、政府は、疫病期間のシミュレーションした群衆移動応答結果に基づき、段階的な再開計画を制定することができる。そのため、出願人は、新たに確定診断された症例、政策と群衆移動の間の複雑な動的モデリングのための条件敵対的生成ネットワークを提供した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、既存の研究と技術に存在する不足を完備と規範化し、敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法を提供することにある。該方法は、疫病期間の異なる政策と疫病状况の影響をモデリングすることによって、群衆移動の変化傾向を正確に予測し、より実用的価値があり、且つデータ予測の結果によって潜在的な政策影響を解析することに有利であり、方法応用の拡張性が高い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、以下の技術案によって実現される:
【0007】
敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法は、
1つの都市をH×W個の等面積のメッシュに区分し、各メッシュは、都市のうちの1つの領域を表すステップ1と、
ステップ1における領域を区分し、異なる領域の群衆移動レベルmをそれぞれ統計するステップ2と、
ステップ2の中で統計される領域群衆移動レベルを利用して都市の中の一つの領域で構成される群衆移動ヒートマップM∈RH×Wを得て、マトリクスにおける各要素は、対応する領域の群衆移動レベルを表すステップ3と、
疫病期間の異なる地区の毎日統計データと関連政策を収集し、毎日新たに確定診断された症例Cを疫病期間の代表的な統計データとして取得し、毎日政策の変化と強度を取得し、これらの政策の強度変数をPと記すステップ4と、
特定の都市について、履歴と現在の群衆移動ヒートマップ{Mt-1,Mt}と対応する新型コロナウイルス関連肺炎疫病統計データ{Ct-1,Ct,Ct+1}及び政策{Pt-1,P
t
}を与え、将来の一定時間の群衆移動レベルヒートマップ{Mt+1}を予測するステップ5と、を含む。
【0008】
さらに、前記ステップ5において、疫病期間の群衆移動予測モデルによって疫病期間の人口流動の規律を予測し、将来の一定時間の群衆移動レベルヒートマップを生成し、該疫病期間の群衆移動予測モデルは、生成器モジュールと、判別器モジュールと、分野知識融合モジュールとを含み、
前記生成器モジュールは、過去の一定時間の履歴群衆移動データに基づいて、将来の一定時間の群衆移動規律を予測し、
前記判別器モジュールは、人口流動ヒートマップのラベルを予測し、生成された人口流動ヒートマップが真の人口流動分布と一致するか否かを判断するために用いられ、
前記分野知識融合モジュールは、疫病期間の外部要素の影響を融合するために用いられる。
【0009】
さらに、前記生成器モジュールは、異なる時間ステップの間の人口流動の変化値をモデリングすることによって、疫病期間の異なる領域の人口流動の強度の政策変化に対する応答をモデリングし、生成器モジュールの入力は、連続する2つの時間断片の間の群衆移動レベルの変化として表すことができる:
ΔMt-1=Mt-Mt-1。
【0010】
さらに、前記疫病期間の群衆移動予測モデルにtransformerに基づくエンコーダモジュールを導入し、長距離の時空間相関性をモデリングし、マルチヘッド自己注意力メカニズムモジュールを導入し、抽出して特徴図
【数1】
を得て、transformer処理を経た特徴を
【数2】
と記し、且つ出力された特徴と外部条件特徴とを接合してデコーダに搬送し、予測された人口流動の結果を出力する。
【0011】
さらに、前記分野知識融合モジュールは、疫病期間の政策、疫病統計データを条件として、時空間群衆移動特徴と融合し、具体的には、1つの完全に接続されたニューラルネットワークを導入し、異なる種類の分野知識をまず隠れ変数
【数3】
に転換し、次に1つのゲートコントロール融合ネットワークモジュールを導入して異なる領域の時空間特徴を非アクティブ化することと:
【数4】
疫病期間の群衆移動予測モデルは、作動の時空間に1つのノイズベクトル
【数5】
と時空間特徴ベクトルを同時に導入して特徴次元上で接合し、最後に疫病期間の群衆移動予測モデルは、1つのモデル間の接続を導入し、次の時間ステップの人口流動のレベルに対する推定を得ることを含む:
【数6】
。
【0012】
さらに、前記疫病期間の群衆移動予測モデルに1つのマスクマトリクス
【数7】
を導入し、サンプリングが欠けている領域による影響を減少し、生成器モジュールからマスクマトリクス付きの損失関数を計算することができる:
【数8】
得られた判別器モジュールの損失関数は、以下の通りである:
【数9】
最終的に生成器モジュールと判別器モジュールの損失関数を合併して以下を得る:
【数10】
モデルをトレーニングするによって生成器モジュールと判別器モジュールの損失関数の鞍点に達し、モデルトレーニングが完了することを示す。
【0013】
さらに、前記毎日政策は、移動制限、封鎖政策、経済政策、衛生システム政策のうちの1つ又は複数の指標を含む。
【発明の効果】
【0014】
従来の技術と比べて、本発明の有益な効果は、以下のとおりである:
【0015】
1)本発明は、漸進式の学習方式を採用し、迅速に変化する疫病期間の人口流動のデータを処理することができ、
2)本発明は、分野知識融合モジュールを導入し、人口流動の変化に対する政策と疫病発展状况の影響をモデリングすることができ、
3)本発明における生成器モジュールと判別器モジュールは、敵対的生成ネットワークを構成し、人口流動過程における不確定性をモデリングする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明における疫病期間の群衆移動予測モデルの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の説明では、理解する必要なものは、用語「一端」、「他端」、「外側」、「上」、「内側」、「水平」、「同軸」、「中央」、「端部」、「長さ」、「外端」などに示される方位又は位置関係は、図面に基づいて示される方位又は位置関係であり、本発明を容易に説明及び簡略化するためのものだけであり、言及された装置又は素子は、必ず特定の方位を有し、特定の方位で構築及び操作することを示し又は暗示するためのものではなく、したがって、本発明を制限するためのものと理解されるべきではない。
【0018】
以下では、添付図面を結び付けて本発明をさらに説明する。
【0019】
図1を参照し、敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法であって、該方法は、
1つの都市をH×W個の等面積のメッシュに区分し、各メッシュは、都市のうちの1つの領域を表すステップ1と、
ステップ1における領域を区分し、異なる領域の群衆移動レベルmをそれぞれ統計するステップ2と、
ステップ2の中で統計される領域群衆移動レベルを利用して都市の中の一つの領域で構成される群衆移動ヒートマップM∈R
H×Wを得て、マトリクスにおける各要素は、対応する領域の群衆移動レベルを表すステップ3と、
疫病期間の異なる地区の毎日統計データと関連政策を収集し、毎日新たに確定診断された症例Cを疫病期間の代表的な統計データとして取得し、毎日政策の変化と強度を取得し、これらの政策の強度変数をPと記すステップ4と、
特定の都市について、履歴と現在の群衆移動ヒートマップ{M
t-1,M
t}と対応する新型コロナウイルス関連肺炎疫病統計データ{C
t-1,C
t,C
t+1}(大量の文章はすでに新たに確定診断された症例の正確なリアルタイム予測を実証した)及び政策{P
t-1,P
t
}(政策制定者が事前に制定することができる)を与え、将来の一定時間の群衆移動レベルヒートマップ{M
t+1}を予測するステップ5と、を含む。
【0020】
さらに、前記ステップ5において、疫病期間の群衆移動予測モデルによって疫病期間の人口流動の規律を予測し、将来の一定時間の群衆移動レベルヒートマップを生成し、該疫病期間の群衆移動予測モデルは、生成器モジュールと、判別器モジュールと、分野知識融合モジュールとを含み、前記生成器モジュールは、過去の一定時間の履歴群衆移動データに基づいて、将来の一定時間の群衆移動規律を予測し、前記判別器モジュールは、人口流動ヒートマップのラベルを予測し、生成された人口流動ヒートマップが真の人口流動分布と一致するか否かを判断するために用いられ、前記分野知識融合モジュールは、疫病期間の外部要素の影響を融合するために用いられる。
【0021】
そのうち、生成器モジュールと判別器モジュールは、敵対的生成ネットワークを構成し、人口流動過程における不確定性をモデリングするために用いられる。
【0022】
疫病期間政策と新たに確定診断された人数等の統計状況を結合して群衆移動推定を行う。本発明は、深層生成ネットワークに基づくモデルが疫病期間の人口流動の規律を予測するために用いられることをを提供した。生成式モデルは、データの分布を学習して異なる政策下の複数の潜在的な群衆流動の規律をシミュレーションすることができ、政府は、疫病期間のシミュレーションした群衆移動応答結果に基づき、段階的な再開計画を制定することができる。本発明は、新たに確定診断された症例、政策と群衆流動の間の複雑な動的モデリングのための条件敵対的生成ネットワークを提供した。モデルは、長期的なタイミング依存関係をモデリングする従来のモデルと異なり、潜在的な疫病関連統計データ、政策と群衆流動性の最新動態から形成された隣接する時間帯の間の群衆流動性変換を予測することに集中している。具体的には、本発明は、1つのPolicy-Human Mobility Interplay Network(PHMIN)モデルを設計して群衆の移動性変化を推定する。ここで、モデルの条件入力は、主に疫病期間の統計データと政策からである。モデルは、細かい粒度の群衆移動動態を柔軟に学習し、且つ都市間の複数回の疫病の予測に正確に拡張することができ、モデルの構造は、
図1に示される。
【0023】
さらに、前記生成器モジュールは、異なる時間ステップの間の人口流動の変化値をモデリングすることによって、疫病期間の異なる領域の人口流動の強度の政策変化に対する応答を効率的にモデリングし、生成器モジュールの入力は、連続する2つの時間断片の間の群衆移動レベルの変化として表すことができる:ΔMt-1=Mt-Mt-1。
【0024】
さらに、前記疫病期間の群衆移動予測モデルに、一方、マルチスケールの時空間群衆移動特徴を考慮し、ここでtransformerに基づくエンコーダモジュールを導入し、長距離の時空間相関性をモデリングし、マルチヘッド自己注意力メカニズムモジュールを導入し、抽出して特徴図
【数11】
を得て、transformer処理を経た特徴を
【数12】
と記し、且つ出力された特徴と外部条件特徴とを接合してデコーダに搬送し、予測された人口流動の結果を出力する。
【0025】
さらに、前記分野知識融合モジュールは、疫病期間の政策、疫病統計データを条件として、時空間群衆移動特徴と融合することによって、予測の精度を向上させる。具体的には、1つの完全に接続されたニューラルネットワークを導入し、異なる種類の分野知識をまず隠れ変数
【数13】
に転換し、次に1つのゲートコントロール融合ネットワークモジュールを導入して異なる領域の時空間特徴を非アクティブ化することと:
【数14】
同時に人口流動の予測過程における不確定性を考慮し、疫病期間の群衆移動予測モデルは、作動の時空間に1つのノイズベクトル
【数15】
と時空間特徴ベクトルを同時に導入して特徴次元上で接合し、最後に疫病期間の群衆移動予測モデルは、1つのモデル間の接続を導入し、次の時間ステップの人口流動のレベルに対する推定を得ることを含む:
【数16】
。
【0026】
さらに、前記疫病期間の群衆移動予測モデルのモデル最適化の過程に1つのマスクマトリクス
【数17】
を導入し、サンプリングが欠けている領域による影響を減少するため、生成器モジュールからマスクマトリクス付きの損失関数を計算することができる:
【数18】
さらに得られた判別器モジュールの損失関数は、以下の通りである:
【数19】
最終的に生成器モジュールと判別器モジュールの損失関数を合併して以下を得る:
【数20】
モデルをトレーニングするによって生成器モジュールと判別器モジュールの損失関数の鞍点に達し、モデルトレーニングが完了することを示す。
【0027】
さらに、前記毎日政策は、移動制限、封鎖政策、経済政策、衛生システム政策のうちの1つ又は複数の指標を含む。
【0028】
実施例
本実施例は、上記疫病期間の群衆移動予測方法を採用して北京、大連、石家庄の3つの都市の疫病期間の群衆移動状況を予測し、そのうち、BJは、北京を表し、DLは、大連を表し、SJZは、石家庄を表し、後ろの番号は、異なる疫病期間の群衆移動データを示す。本実施例では、上記3つの都市で7回の新型コロナウイルス関連肺炎疫病が発生したことを考慮し、実際の状況に応じて疫病を2つの強度に分け、さらに、1)異なる都市間で類似した強度での実験、2)異なる都市で異なる強度での実験、3)同一都市で類似した又は異なる強度の場面での実験、という3組の実験を得て、結果を階層的に分析した。これらの実験は、次の疫病が到来する時に政策が群衆流動に与える影響を予測するために、モデルが異なる環境で効果的に汎化できるか否かという基本的な質問に答えるように設計されている。この問題について、以下で詳細に議論する。
【0029】
【0030】
異なる都市間で類似した強度:表6.1に示す実験結果より、以下の結論が得られる:
【0031】
全体的に、PHMINモデルは、ベースラインモデルと比較して最高の性能を達成しており、都市間の群衆移動予測の場面でモデルが優れた汎化能力を有することを証明している。具体的には、比較的簡単なHAやARIMAモデルがDeepSTやcGANよりも優れた性能を示していることは、問題の中で最も価値のある情報が、群衆流動の最新状況と相関していることをある程度意味している。なお、cGANは、群衆流動の未知要素を生成の方式でモデリングすることができるため、DeepSTよりもやや優れている。一方、DeepSTは、豊富な履歴観察に基づく確定的予測を示しており、疫病の場面では履歴データの欠如からあまり適していない。
【0032】
同じテスト都市を予測目標として与え、異なる都市トレーニングセットに基づいて得られたモデルは、異なる表現を持つことが分かった。DL1、SJZ1、SJZ2でテストを行う場合、BJ1トレーニングに基づくモデルは、明らかに他の都市よりも良い結果を示した。これは、北京のデータの質がより高く、利用可能なサンプルがより多く、人の密度が高いことに起因することができる。
【0033】
都市の地理的分布の類似性は、モデルの都市間予測の効果に影響を及ぼす可能性がある。実験結果から、DL1トレーニングに基づくモデルは、通常、より悪い性能をもたらし、DL1-BJ1、DL1-SJZ1、DL1-SJZ2上の結果を例にとると、従来のARIMAとあまり差がない(MAEがより良く、MAPEがより悪い)ことが分かった。実際には、大連市街地は、四方を海に囲まれており、地理的な分布もあまり規則的ではないが、北京と石家荘には非常に規則的で、碁盤の目のような配置の市街地がある。これにより、空間分布のギャップがモデルの都市間での汎化をより困難にしている可能性が推測される。
【0034】
【0035】
異なる都市で異なる強度:異なる強度の疫病の間のモデルの汎化表現を研究するために、表6.2に示す実験をさらに設計して行い、実験の結果は、次のことを説明した:
【0036】
ほとんどの場合、PHMINモデルの方がベースラインモデルよりも優れている。しかし、同じテスト都市について、異なる強度のトレーニングセットで予測される全体的な性能は、表6.1の類似した強度から得られたモデルよりも若干劣る。これは、異なる都市配置と比べ、疫病の強度がモデルの汎化能力に影響を与えるより重要な指標であることを示している。
【0037】
大連市のデータに基づいてトレーニングされたモデルは、他の都市(例えば、DL1-BJ2とDL2-SJZ2)ではまだ良くないことから、都市の地理的分布が類似していることの重要性が改めて示された。なお、地理的分布と疫病強度の二重の違いにより、提供されるモデルのDL2-SJZ2場面での予測結果は、ベースライン方法ARIMAより悪い。
【0038】
【0039】
同じ都市の類似した又は異なる強度:直感的に言えば、同じ都市で実験を行う場合、モデルは、より汎化しやすく、より良い結果が得られるはずである。しかし表6.3における実験データは、いくつかの異なる結果を示している:
【0040】
まず、PHMINモデルは、すべての実験でベースラインモデルよりも優れており、なお、SJZ1-SJZ2、DL2-DL3、BJ1-BJ2の3組の実験は、表6.1と6.2の結果と比べてより優れた効果を達成しており、これは、同じ都市内のギャップがもたらすマイナスの影響は、疫病の強度の作用よりも小さいかもしれないことを意味している。
【0041】
しかし、DL1-DL2とDL1-DL3の2組の実験では結果に異常が発生し、それぞれBJ2-DL2とBJ2-DL3よりも悪い結果となった。これは、BJ2、DL2、DL3に起因することができ、3つのデータセットは、異なる都市にあるにもかかわらず、経験した疫病の強度は似ている。DL2-DL3とDL1-DL3間の結果を比較すると、提供されたモデルは、同一都市内の類似した疫病強度の場面で群衆流動予測を行う場合、より高い汎化性能を示すことができると推論できる。
【0042】
最後に、以上の各実施例は、本発明の技術案を説明するためにのみ使用され、それを制限するのではなく、前記各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者は、前記各実施例に記載された技術案を修正したり、その一部又はすべての技術的特徴を均等に置換したりすることができ、これらの修正又は置換は、対応する技術案の本質を本発明の各実施例の技術案の範囲から逸脱させるものではないことを理解すべきである。
【0043】
(付記)
(付記1)
1つの都市をH×W個の等面積のメッシュに区分し、各メッシュは、都市のうちの1つの領域を表すステップ1と、
ステップ1における領域を区分し、異なる領域の群衆移動レベルmをそれぞれ統計するステップ2と、
ステップ2の中で統計される領域群衆移動レベルを利用して都市の中の一つの領域で構成される群衆移動ヒートマップM∈RH×Wを得て、マトリクスにおける各要素は、対応する領域の群衆移動レベルを表すステップ3と、
疫病期間の異なる地区の毎日統計データと関連政策を収集し、毎日新たに確定診断された症例Cを疫病期間の代表的な統計データとして取得し、毎日政策の変化と強度を取得し、これらの政策の強度変数をPと記すステップ4と、
特定の都市について、履歴と現在の群衆移動ヒートマップ{Mt-1,Mt}と対応する新型コロナウイルス関連肺炎疫病統計データ{Ct-1,Ct,Ct+1}及び政策{Pt-1,P
t
}を与え、将来の一定時間の群衆移動レベルヒートマップ{Mt+1}を予測するステップ5と、を含む、敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【0044】
(付記2)
前記ステップ5において、疫病期間の群衆移動予測モデルによって疫病期間の人口流動の規律を予測し、将来の一定時間の群衆移動レベルヒートマップを生成し、該疫病期間の群衆移動予測モデルは、生成器モジュールと、判別器モジュールと、分野知識融合モジュールとを含み、
前記生成器モジュールは、過去の一定時間の履歴群衆移動データに基づいて、将来の一定時間の群衆移動規律を予測し、
前記判別器モジュールは、人口流動ヒートマップのラベルを予測し、生成された人口流動ヒートマップが真の人口流動分布と一致するか否かを判断するために用いられ、
前記分野知識融合モジュールは、疫病期間の外部要素の影響を融合するために用いられる、ことを特徴とする付記1に記載の敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【0045】
(付記3)
前記生成器モジュールは、異なる時間ステップの間の人口流動の変化値をモデリングすることによって、疫病期間の異なる領域の人口流動の強度の政策変化に対する応答をモデリングし、生成器モジュールの入力は、連続する2つの時間断片の間の群衆移動レベルの変化として表すことができる:
ΔMt-1=Mt-Mt-1、ことを特徴とする付記2に記載の敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【0046】
(付記4)
前記疫病期間の群衆移動予測モデルにtransformerに基づくエンコーダモジュールを導入し、長距離の時空間相関性をモデリングし、マルチヘッド自己注意力メカニズムモジュールを導入し、抽出して特徴図
【数21】
を得て、transformer処理を経た特徴を
【数22】
と記し、且つ出力された特徴と外部条件特徴とを接合してデコーダに搬送し、予測された人口流動の結果を出力する、ことを特徴とする付記2に記載の敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【0047】
(付記5)
前記分野知識融合モジュールは、疫病期間の政策、疫病統計データを条件として、時空間群衆移動特徴と融合し、具体的には、1つの完全に接続されたニューラルネットワークを導入し、異なる種類の分野知識をまず隠れ変数
【数23】
に転換し、次に1つのゲートコントロール融合ネットワークモジュールを導入して異なる領域の時空間特徴を非アクティブ化することと:
【数24】
疫病期間の群衆移動予測モデルは、作動の時空間に1つのノイズベクトル
【数25】
と時空間特徴ベクトルを同時に導入して特徴次元上で接合し、最後に疫病期間の群衆移動予測モデルは、1つのモデル間の接続を導入し、次の時間ステップの人口流動のレベルに対する推定を得ることを含む:
【数26】
、ことを特徴とする付記2に記載の敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【0048】
(付記6)
前記疫病期間の群衆移動予測モデルに1つのマスクマトリクス
【数27】
を導入し、サンプリングが欠けている領域による影響を減少し、生成器モジュールからマスクマトリクス付きの損失関数を計算することができる:
【数28】
得られた判別器モジュールの損失関数は、以下の通りである:
【数29】
最終的に生成器モジュールと判別器モジュールの損失関数を合併して以下を得る:
【数30】
モデルをトレーニングするによって生成器モジュールと判別器モジュールの損失関数の鞍点に達し、モデルトレーニングが完了することを示す、ことを特徴とする付記2に記載の敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。
【0049】
(付記7)
前記毎日政策は、移動制限、封鎖政策、経済政策、衛生システム政策のうちの1つ又は複数の指標を含む、ことを特徴とする付記1に記載の敵対的生成ネットワークに基づく群衆移動予測方法。