(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】SA@CDs/g-C3N4複合材料、その調製方法およびアフラトキシン除去における使用
(51)【国際特許分類】
B01J 37/32 20060101AFI20241217BHJP
B01J 35/39 20240101ALI20241217BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20241217BHJP
B01J 35/56 20240101ALI20241217BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20241217BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20241217BHJP
B01J 31/04 20060101ALI20241217BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20241217BHJP
A23L 5/20 20160101ALI20241217BHJP
A23D 9/02 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
B01J37/32
B01J35/39
B01J37/08
B01J35/56 301B
B01J37/34
B01J37/04 102
B01J31/04 M
B01J37/10
A23L5/20
A23D9/02
(21)【出願番号】P 2024078028
(22)【出願日】2024-05-13
【審査請求日】2024-05-15
(31)【優先権主張番号】202311460428.X
(32)【優先日】2023-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518193700
【氏名又は名称】青▲島▼▲農▼▲業▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】楊慶利
(72)【発明者】
【氏名】馬永超
(72)【発明者】
【氏名】劉萍
(72)【発明者】
【氏名】▲シィン▼福国
(72)【発明者】
【氏名】王玉涛
(72)【発明者】
【氏名】呉子健
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108686697(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109603879(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104857978(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109875762(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
A23L 5/00-5/30,29/00-29/10
A23D 7/00-9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDs/g-C
3N
4複合物を水に添加し、超音波処理を行い、それを均一分散させ、次にアルギン酸ナトリウムを添加し、激しく攪拌し、十分に混合し、プレゲル溶液を形成し、十分に混合したプレゲル溶液を型に移し、その後凍結乾燥して固体スポンジを得、固体スポンジをCaCl
2溶液に浸漬してゲル化し、その後脱イオン水で洗浄し、凍結乾燥して、SA@CDs/g-C
3N
4複合材料を得るステップを含み、
前記CDs/g-C
3N
4複合物と水の質量体積比は1:300~1:800g/mLから選択され、前記CDs/g-C
3N
4複合物とアルギン酸ナトリウムの質量比は、1:4~1:10から選択され、前記CaCl
2溶液の濃度は1~8wt%から選択され、
前記CDs/g-C
3N
4複合物の調製方法のステップは以下のとおりであり:
メラミンとトリチオシアヌル酸を水に添加し、均一に攪拌し、次にCDs溶液を添加し、均一に攪拌し、混合溶液を濾過、洗浄および乾燥してマッフル炉に移し、高温焼成してCDs/g-C
3N
4複合物を得、
前記メラミンとトリチオシアヌル酸のモル比は1:0.5~1:1.5から選択され、前記高温焼成の条件としては、2~6℃/minの速度で550~650℃まで昇温し、この温度下で3~6h焼成し、
前記CDs溶液の調製方法のステップは以下のとおりであり:
オレンジ果汁をポリテトラフルオロエチレンで裏打ちした反応器に入れ、180~210℃で8~12h加熱し、自然冷却後、反応生成物を遠心分離して濾過し、透明な茶黄色の炭素量子ドット溶液、すなわちCDs溶液を形成する、SA@CDs/g-C
3N
4複合材料の調製方法。
【請求項2】
食品中のアフラトキシン除去における、請求項
1に記載の
方法によって調製されたSA@CDs/g-C
3
N
4
複合材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機材料の技術分野に属し、具体的に、SA@CDs/g-C3N4複合材料、その調製方法およびアフラトキシン除去における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
穀物、食用油、食肉などの食品は、栽培、貯蔵、飼育中に環境汚染の影響を受けやすく、食品の安全性に問題が生じることがある。また、これらの食品中には、病気を引き起こす微生物が繁殖し、マイコトキシンを形成することがあり、中でも代表的なマイコトキシンはアフラトキシン(AFT)であり、大きな経済的損失と健康被害を引き起こす可能性がある。これをいかに無害化するかは、食品産業にとって大きな課題である。現在、アフラトキシンの除去技術には物理的方法と化学的方法がある。化学的方法は一般的に強力な酸化剤(オゾン、過酸化水素など)を使用し、これらの強力な酸化剤で農産物や食品を処理すると、アフラトキシンの良好な除去を達成できるが、農産物の栄養や風味物質の構造を破壊するため、製品の風味や栄養に影響を与え、規模化も制限され、物理的方法は一般的に高温処理を使用し、沸点が低く不安定な風味や栄養素の一部は高温処理後に破壊される。そのため、これらの方法は効果が不安定で、栄養素の損失が大きく、新たな有害成分が混入するという欠点があり、現代農産物産業の発展の要求を満たすことが難しい。従って、より環境に優しく、効果的で、安全な食品中のアフラトキシンの除去方法を探索することは大きな意義がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、SA@CDs/g-C3N4複合材料の調製方法を提供し、そのステップは以下のとおりであり:
CDs/g-C3N4複合物を水に添加し、超音波処理を行い、それを均一分散させ、次にアルギン酸ナトリウムを添加し、激しく攪拌し、十分に混合し、プレゲル溶液を形成し、十分に混合したプレゲル溶液を型に移し、その後凍結乾燥して固体スポンジを得、固体スポンジをCaCl2溶液に浸漬してゲル化し、その後脱イオン水で洗浄し、凍結乾燥してSA@CDs/g-C3N4複合材料を得る。
上記SA@CDs/g-C3N4複合材料の調製方法において、CDs/g-C3N4複合物と水の質量体積比は1:300~1:800から選択され、好ましくは1:500、g/mLである。
上記SA@CDs/g-C3N4複合材料の調製方法において、CDs/g-C3N4複合物とアルギン酸ナトリウムの質量比は1:4~1:10から選択され、好ましくは1:7.5である。
上記SA@CDs/g-C3N4複合材料の調製方法において、CaCl2溶液の濃度は1~8wt%から選択され、好ましくは3wt%である。
本発明は上記CDs/g-C3N4複合物の調製方法を提供し、そのステップは以下のとおりであり:
メラミンとトリチオシアヌル酸を水に添加し、均一に攪拌し、次にCDs溶液を添加し、均一に攪拌し、混合溶液を濾過、洗浄および乾燥してマッフル炉に移し、高温焼成してCDs/g-C3N4複合物を得る。
上記CDs/g-C3N4複合物の調製方法において、メラミンとトリチオシアヌル酸のモル比は1:0.5~1:1.5から選択され、好ましくは1:1である。
上記CDs/g-C3N4複合物の調製方法において、メラミンと水のモル体積比は1:4000~1:8000から選択され、好ましくは1:6000、mol/mLである。
上記CDs/g-C3N4複合物の調製方法において、CDs溶液と水の体積比は1~7:60から選択され、好ましくは3:60である。
上記CDs/g-C3N4複合物の調製方法において、高温焼成条件としては、2~6℃/minの速度で550~650℃まで昇温し、この温度下で3~6h焼成し、好ましくは3℃/minの速度で600℃まで昇温し、この温度下で4h焼成する。
本発明は上記CDs溶液の調製方法を提供し、そのステップは以下のとおりであり:
オレンジ果汁をポリテトラフルオロエチレンで裏打ちした反応器に入れ、高温加熱し、自然冷却後、反応生成物を遠心分離および濾過して透明な茶黄色の炭素量子ドット溶液、すなわちCDs溶液を形成する。
上記CDs溶液の調製方法において、高温加熱条件としては、180~210℃で8~12h加熱し、好ましくは200℃で10h加熱する。
本発明は、上記方法によって調製されたSA@CDs/g-C3N4複合材料を提供する。
本発明は、食品中のアフラトキシン除去における、上記SA@CDs/g-C3N4複合材料の使用を提供する。前記アフラトキシンはアフラトキシンB1から選択される。
【発明の効果】
【0004】
本発明は以下の有益な効果を有する。
本発明により調製されたSA@CDs/g-C3N4複合材料は、食品中の残留アフラトキシンを効果的に除去することができ、作用が温和で、環境に優しく、安全で、リサイクルが容易であり、材料残留が食品品質に与える影響を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】炭素量子ドット溶液のXRDパターンとFTIRスペクトルを示し、ここで、aはXRDパターンであり、bはFTIRスペクトルである。
【
図2】STCNとCSTCN-3のSEM図、TEM図、HRTEM図およびTEM-EDX元素マッピング図であり、ここで、aはSTCNのSEM図であり、bとcはSTCNの異なる倍数下でのTEM画像であり、dはCSTCN-3のSEM図であり、e~gはCSTCN-3の異なる倍数下でのTEM画像であり、hはHRTEM図(挿入図はSAED画像である)であり、i~lはCSTCN-3の対応するTEM-EDX元素パターンである。
【
図3】実施例1のステップ(2)で得られた生成物のXRDパターン(a)、FT-IRスペクトル(b)、UV-vis吸収スペクトル(c)、PLスペクトル(d)、EIS図(e)および過渡的な光電流応答性(f)であり、ここで、cにおいて、曲線は上から下へ順次CSTCN-7、CSTCN-5、CSTCN-3、CSTCN-1、STCNであり、dにおいて、曲線は上から下へ順次STCN、CSTCN-3、CSTCN-1、CSTCN-5、CSTCN-7であり、eにおいて、曲線は左から右へ順次CSTCN-3、CSTCN-7、CSTCN-5、STCN、CSTCN-1であり、fにおいて、曲線は上から下へ順次CSTCN-3、CSTCN-5、CSTCN-7、CSTCN-1、STCNである。
【
図4】STCNとCSTCN-3の高分解能XPSスペクトルである。
【
図5】SA@CSTCNスポンジ調製のフローチャート(a)、SAスポンジとSA@CSTCNスポンジ外観図(b)、SA@CSTCNスポンジ表面図(c)およびSA@CSTCNスポンジ断面(d)である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明で使用される他の材料は、特に断らない限り、市販の供給源を通じて入手可能である。本発明で使用される他の用語は、特に断らない限り、一般に当業者によって一般的に理解される意味を有する。本発明は、特定の実施形態に関連して、データを参照しながら以下にさらに詳細に説明される。以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0007】
実施例1
SA@CDs/g-C
3N
4複合材料を調製し、そのステップは以下のとおりであり:
(1)炭素量子ドット溶液の調製
新鮮なオレンジ由来の30mLのオレンジ果汁をポリテトラフルオロエチレンで裏打ちした100mLの反応器に添加し、200℃で10h加熱する。自然冷却後、反応生成物を遠心分離して0.22μmポリエーテルスルホンフィルターで濾過し、透明な茶黄色の炭素量子ドット(CDs)溶液を形成する。
炭素量子ドット溶液のXRDパターンとFTIRスペクトルは
図1に示される。
図1から分かるように、調製された炭素量子ドットはアモルファス構造であり、表面にカルボニル基、水酸基などの官能基を有している。
(2)CDs/g-C
3N
4複合物の調製
1.26gのメラミン(0.01mol)と3.16gのトリチオシアヌル酸(0.01mol)を60mLの脱イオン水に添加し、1h攪拌して均一な混合溶液を得、一定体積(それぞれ1mL、3mL、5mLと7mL)のCDs溶液を上記混合溶液に添加し、引き続き12h攪拌する。混合溶液を濾過、洗浄および乾燥してマッフル炉に移し、3℃/minの速度で600℃まで昇温し、この温度下で4h焼成してCDs/g-C
3N
4複合物を得、CSTCN-x光触媒と略称され、ここで、x=1、3、5および7とし、すなわち、それぞれ1mL、3mL、5mLおよび7mLのCDs溶液調製条件下で得られた生成物である。
比較として、本発明では、CDs溶液を添加せずに同じ条件下で調製された生成物をSTCNと略称する。
【0008】
図2に示すように、調製されたCSTCN-3とSTCNの物理的特徴を特定する。ここで、aはSTCNのSEM図であり、bとcはSTCNの異なる倍数下でのTEM画像であり、dはCSTCN-3のSEM図であり、e~gはCSTCN-3の異なる倍数下でのTEM画像であり、hはHRTEM図(挿入図はSAED画像である)であり、i~lはCSTCN-3の対応するTEM-EDX元素パターンである。
【0009】
SEM図によってSTCNとCSTCN-3のミクロモルフォロジーを観察する。
図2aから分かるように、STCNはナノロッド構造を有しており、
図2dから分かるように、CDsをドープした後、CSTCN-3はナノロッド構造を維持しているが、表面に多数の孔が生成される。
図2bと
図2eのTEM図から明らかに分かるように、STCNとCSTCN-3の両方は中空構造であり、
図2cと
図2fから分かるように、CSTCN-3は薄い壁を有し、これは、焼成過程で放出された大量のガスに起因すると考えられる。
図2gに示すCSTCN-3の拡大TEM画像から分かるように、CDがSTCNに成功にドープされた。
図2hから分かるように、HRTEMに炭素(001)結晶面に属する格子筋が現れており、これはCDsがSTCNに強固に結合していることをさらに示している。さらに、
図2i-
図2lに示すCSTCN-3の関連するTEM-EDX元素パターンから分かるように、C、N、OとSはサンプル中で均一に分布している。上記結果から、柑橘類由来のCDsがg-C
3N
4ナノ管にうまく固定されていることが確認される。
【0010】
図3は、上記ステップ(2)で得られた生成物のXRDパターン(a)、FT-IRスペクトル(b)、UV-vis吸収スペクトル(c)、PLスペクトル(d)、EIS図(e)および過渡的な光電流応答性(f)を示す。
XRDスペクトルから分かるように調製されたg-C
3N
4材料の晶体構造について、
図3aに示すように、すべてのサンプルは類似の2つの特徴回折ピークを示し、13.1°でのブロードなピークはトリス-s-トリアジン環の面内繰り返しモチーフに対応し、27.3°でのシャープなピークは共役芳香族ユニットのファセット積層に起因する。XRD画像と同様に、すべてのサンプルのFT-IRスペクトルは、ほぼ同じ特徴ピークを示し、
図3bに示すように、816cm
-1でのシャープなピークはヘプタジンの形成に起因し、1100~1750cm
-1での複数のピークはC-Nヘテロ環の伸縮振動に起因する。3000~3500cm
-1範囲内のブロードなピークは吸着水とN-H伸縮振動に起因する。CDsで修飾したCSTCN-x曲線はSTCNと比較して大きな変化を示さなかったことから、複合材料中のSTCNの結晶と分子構造はCDsからの影響を受けていないことが示される。
【0011】
光吸収の向上は、光触媒の触媒性能を向上させる最も効果的な方法の一つであり、
図3cに示すように、CDsの量子効果により、CSTCN-x複合材料の光吸収能力が著しく向上した。また、量子ドット濃度が高くなるにつれて、さらに吸収が促進された。サンプルの色は黄色から褐色に徐々に変化した。フォトルミネッセンスと時間分解フォトルミネッセンスを用いて、光生成キャリアの分離と移動効率を測定した。
図3dに示すように、CDsの導入後、CSTCN-x複合材料はSTCNよりも低いPL強度を示した。この結果、CDの導入はキャリアの分離を効果的に促進できることを示している。
CSTCN-xにおける効果的な光生成キャリアの分離と移動効率をさらに評価するために、電気化学的特性評価を行い、
図3eは、調製された触媒の電気化学インピーダンススペクトル(EIS)を示し、STCNに比べて、CSTCN-3はより短いアーク半径を示し、電荷移動抵抗が小さく、電荷分離効率がより効果的であることを示唆している。さらに、
図3fに示すように、CSTCN-3は「スイッチング」照明の繰り返しサイクルにおいて最も高い光電流応答強度を示し、可視光でのキャリア輸送速度が速いことを示している。このことから分かるように、CSTCN-3は最も優れた光触媒性能を有する。しかし、CDsドープ濃度の増加に伴い、光電流応答強度が低下し、これは、CDsの増加により新しい錯体サイトが導入されたためと考えられる。
【0012】
図4は、STCNとCSTCN-3の高分解能XPSスペクトルである。XPSスペクトルを用いて調製されたサンプルの表面成分と元素組成を分析した。
図4a中の高分解能C1sスペクトルは、それぞれC-C/C=CとN-C=Nに起因する284.7と287.9eVの結合エネルギーを持つ2つのピークにデコンボリューションすることができる。
図4bに示すように、N1sスペクトルは、398.4、399.9および401.1eVに位置する3つのピークにフィッティングできる。これらのピークはそれぞれC-N=C、N-(C)
3およびN-Hxに対応する。
図4cは、高分解能O1sスペクトルにおいて得られた3つのピークを示し、それぞれ531.5eVのC=O、532.2eVのC-Oおよび533.3eVのO-H/吸着水に起因する。なお、STCNに比べて、CSTCN-3の表面にC=OおよびC-Oの含有量が著しく増加し、これはCD表面に多数の酸素含有官能基が存在するためと考えられる。高分解能S2pスペクトルには弱いS元素信号が見られた。163.4eVでのピークはS-N結合と同定され、162.8eVのピークは硫黄酸化物の生成と同定された。さらに、CSTCN-3中のO1sのピークはすべて結合エネルギーが低い方にシフトしており、これは、複合材料中のCDsに電子流が存在することが示唆された。
CSTCN-3が最も優れた光触媒性能を有することから、本発明では、CSTCN-3を直接用いて以下のステップ(3)のようにSA@CSTCN複合物を調製した。
【0013】
(3)SA@CDs/g-C3N4複合材料の調製
0.1gのCSTCN-3光触媒を50mLの脱イオン水に加え、30min超音波処理し、それを均一に分散させた。その後、0.75gのアルギン酸ナトリウム(SA)を加え、6h激しく攪拌し、十分に混合し、プレゲル溶液を形成した。十分に混合したプレゲル溶液を型に移し、その後24h凍結乾燥して固体スポンジを得た。固体スポンジを300mL 3wt% CaCl2溶液に6h浸漬してゲル化させた。脱イオン水で十分に洗浄し、36h凍結乾燥した後、CSTCN-3付着のアルギン酸ナトリウムゲルシート、すなわちSA@CDs/g-C3N4複合材料を得、その物理的形態はスポンジ状であるため、SA@CSTCNスポンジとも呼ばれる。
比較として、本発明では、CSTCN光触媒を添加せずに同じ条件下でSAスポンジを調製した。
【0014】
図5は、SA@CSTCNスポンジの調製フローチャート(a)、SAスポンジとSA@CSTCNスポンジ外観図(b)、SA@CSTCNスポンジ表面SEM図(c)およびSA@CSTCNスポンジ断面SEM図(d)を示す。
SA@CSTCNスポンジの調製模式図である
図5aに示すように、凍結乾燥過程を経て、SAゲル内の氷結晶が昇華して細孔を形成した。その後、Ca
2+を添加してゲルを架橋・固化させ、一定の機械的強度を与えた。光触媒がない場合、調製されたSAスポンジは半透明性を示し、これは、光がSAゲルマトリックスを良く透過することを示した。
SAスポンジと比較すると、SA@CSTCNスポンジは黄色を示し、触媒がよく分散していることが分かる(
図5b)。SA@CSTCNスポンジの
図5cおよび
図5dに示すように、孔が大きいと、光子の反射が促進されるだけでなく、より多くの反応活性サイドが得られる。さらに、豊富な細孔はスポンジに浮遊性を与え、酸素の継続的な供給を確保し、ROSの発生を促進した。
【0015】
応用例1
ピーナッツ中のアフラトキシンB1の除去:
ピーナッツを1kgずつ5回取った。ピーナッツにそれぞれ1gのCSTCN(CSTCN-1、CSTCN-3、CSTCN-5およびCSTCN-7を含む)と3gのSA@CSTCNを加え、230rpmの均一速度で8min均一に攪拌し、400kgの純水を加えて均一混合し、6h光を当て、固液分離するまで静置し、上澄みを捨て、日干し、ピーナッツ中のアフラトキシンB1を除去する。
【0016】
上記方法に従って無毒化する前後のピーナッツを5gずつ取り、10mLの冷メタノールを加えて溶出させ、静置し、1mLの懸濁液を遠心分離管に入れ、2minボルテックスショックし、4℃、10000rpmの条件下で10min遠心分離し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて上澄み液中のアフラトキシン濃度を分析し、毒素濃度が85%以上減少した場合、国家標準の要件を満たし、除去成功として記録される。
試験結果は表1に示され:
表1
上記試験結果は、本発明により調製されたCSTCNがピーナッツ中のアフラトキシンを効果的に分解除去できることを示している。CSTCNとSAを結合させてSA@CSTCNを形成した後、材料はスポンジ状となり、リサイクルが容易であるため、食品の品質への影響が少ない。
【0017】
応用例2
ピーナッツ油中のアフラトキシンB
1の除去:
ピーナッツ油を1kgずつ5回取った。ピーナッツ油中にそれぞれ1gのCSTCN(CSTCN-1、CSTCN-3、CSTCN-5およびCSTCN-7を含む)と3gのSA@CSTCNを加え、10kgの純水を加え、35min振とうした後、光照射下で6h攪拌し、10000rpmで10min遠心分離し、静置し、水層を捨て、すなわち水に不溶性のピーナッツ油中のアフラトキシンB
1を除去した。
上記方法に従って無毒化する前後のピーナッツ油を5mLずつ取り、5mLのアセトニトリルを加え、静置し、1mLの上澄み液を遠心分離管に入れ、13000rpm、4℃下で10min遠心分離し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて上澄み液中のアフラトキシン濃度を分析し、毒素濃度が85%以上低下した場合、国家標準の要件を満たし、除去成功として記録された。
試験結果は表2に示され:
表2
上記試験結果は、本発明により調製されたCSTCNとSA@CSTCNスポンジがピーナッツ油中のアフラトキシンの分解除去にも有効であることを示している。
【0018】
上述した内容は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を何ら限定するものではなく、当業者であれば、上記開示された技術的内容に変更や変形などの等価な変化を加えて等価実施例を得ることができる。しかしながら、本発明の技術的解決策の内容から逸脱しないかぎり、本発明の技術的実質に基づいて以上の実施例に加えられた任意の単純な修正、等価変化や変形は、すべて本発明の技術的解決策の保護範囲に含まれるものとする。
【要約】 (修正有)
【課題】食品中の残留アフラトキシンを効果的に除去することができ、作用が温和で、環境に優しく、安全で、リサイクルが容易であり、材料残留が食品品質に与える影響を回避することができるSA@CDs/g-C
3N
4複合材料、その調製方法、およびその使用を提供する。
【解決手段】CDs/g-C
3N
4複合物を水に添加し、超音波処理を行い、それを均一分散させ、次にアルギン酸ナトリウムを添加し、激しく攪拌し、十分に混合し、プレゲル溶液を形成し、十分に混合したプレゲル溶液を型に移し、その後凍結乾燥して固体スポンジを得、固体スポンジをCaCl
2溶液に浸漬してゲル化させ、その後脱イオン水で洗浄し、凍結乾燥してSA@CDs/g-C
3N
4複合材料を得る。
【選択図】
図5