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特許7605545情報処理装置、演算プログラム、および演算方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、演算プログラム、および演算方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0202 20230101AFI20241217BHJP
   G06Q 30/08 20120101ALI20241217BHJP
【FI】
G06Q30/0202
G06Q30/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024106252
(22)【出願日】2024-07-01
【審査請求日】2024-07-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】321009443
【氏名又は名称】株式会社エコノミクスデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 諒
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-313393(JP,A)
【文献】特開2005-129078(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141074(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03156960(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参加者に対し、商品について第1金額の範囲での購入希望金額の入力を指示する内容と、前記購入希望金額≧(乱数で設定された設定金額)となった場合には(前記第1金額-前記設定金額)が前記参加者に支払われ、前記購入希望金額<前記設定金額となった場合には前記第1金額が前記参加者に支払われるという内容と、を含む事前情報を出力する事前情報出力部と、
乱数を用いて前記設定金額を設定する設定部と、
前記事前情報出力部が前記事前情報を出力した後に、前記参加者から前記購入希望金額を取得する取得部と、
前記購入希望金額≧前記設定金額となった場合には(前記第1金額-前記設定金額)を第2金額として算出し、前記購入希望金額<前記設定金額となった場合には前記第1金額を前記第2金額とする算出部と、
前記算出部の結果を出力する結果出力部と、
前記設定部が前記設定金額を設定し、前記取得部が前記購入希望金額を取得し、前記算出部が前記第2金額を算出し、前記結果出力部が前記算出部の結果を出力するという一連の動作が複数回行われた場合に、前記取得部が最後に取得した前記購入希望金額を用いて前記算出部が算出した前記第2金額を第3金額として決定する決定部と、を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記設定金額に上限および下限を設けることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記設定部は、上限および下限を有する乱数の発生方法として、正の範囲に定義域を有する確率分布を利用することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記確率分布に、ベータ分布を用いることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記決定部が複数の参加者に対して前記第3金額を決定した場合に、前記決定部が前記複数の参加者に対して前記第3金額を決定した結果に応じて、前記設定金額を設定するための乱数を調整することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記決定部が複数の参加者に対して前記第3金額を決定した場合に、前記複数の参加者のうち、前記購入希望金額≧前記設定金額となる参加者の比率が所定範囲に入るように、前記乱数を調整することを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記決定部が複数の参加者に対して前記第3金額を決定した場合に、前記決定部が前記複数の参加者に対して前記第3金額を決定した結果に応じて、前記商品の売上予測に関する情報を提供する情報提供部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
コンピュータに、
参加者に対し、商品について第1金額の範囲での購入希望金額の入力を指示する内容と、前記購入希望金額≧(乱数で設定された設定金額)となった場合には(前記第1金額-前記設定金額)が前記参加者に支払われ、前記購入希望金額<前記設定金額となった場合には前記第1金額が前記参加者に支払われるという内容と、を含む事前情報を出力する事前情報出力処理と、
乱数を用いて前記設定金額を設定する設定処理と、
前記事前情報出力処理によって前記事前情報が出力された後に、前記参加者から前記購入希望金額を取得する取得処理と、
前記購入希望金額≧前記設定金額となった場合には(前記第1金額-前記設定金額)を第2金額として算出し、前記購入希望金額<前記設定金額となった場合には前記第1金額を前記第2金額とする算出処理と、
前記算出処理の結果を出力する結果出力処理と、
前記設定処理で前記設定金額を設定し、前記取得処理で前記購入希望金額を取得し、前記算出処理で前記第2金額を算出し、前記結果出力処理で前記算出処理の結果を出力するという一連の動作が複数回行われた場合に、前記取得処理において最後に取得した前記購入希望金額を用いて前記算出処理によって算出された前記第2金額を第3金額として決定する決定処理と、を実行させることを特徴とする演算プログラム。
【請求項9】
コンピュータが、
参加者に対し、商品について第1金額の範囲での購入希望金額の入力を指示する内容と、前記購入希望金額≧(乱数で設定された設定金額)となった場合には(前記第1金額-前記設定金額)が前記参加者に支払われ、前記購入希望金額<前記設定金額となった場合には前記第1金額が前記参加者に支払われるという内容と、を含む事前情報を出力する事前情報出力処理と、
乱数を用いて前記設定金額を設定する設定処理と、
前記事前情報出力処理によって前記事前情報が出力された後に、前記参加者から前記購入希望金額を取得する取得処理と、
前記購入希望金額≧前記設定金額となった場合には(前記第1金額-前記設定金額)を第2金額として算出し、前記購入希望金額<前記設定金額となった場合には前記第1金額を前記第2金額とする算出処理と、
前記算出処理の結果を出力する結果出力処理と、
前記設定処理で前記設定金額を設定し、前記取得処理で前記購入希望金額を取得し、前記算出処理で前記第2金額を算出し、前記結果出力処理で前記算出処理の結果を出力するという一連の動作が複数回行われた場合に、前記取得処理において最後に取得した前記購入希望金額を用いて前記算出処理によって算出された前記第2金額を第3金額として決定する決定処理と、を実行させることを特徴とする演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、演算プログラム、および演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新製品や既存製品について、WTP:Willingness to Payを正確に設定することができれば、消費者が損を感じない範囲で販売者は最大限の利益を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2021-503638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、新製品や既存製品に関するWTPを消費者から聞き出すことは困難である。そこで、第2価格オークション(例えば、特許文献1を参照)の思想を用いて消費者からWTPを取得することが考えられる。しかしながら、単純に第2価格オークションの思想を取り入れても、消費者がWTPを正確に提示するのは困難である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、消費者がWTPを正確に提示することができる、情報処理装置、演算プログラム、および演算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る情報処理装置は、参加者に対し、商品について第1金額の範囲での購入希望金額の入力を指示する内容と、前記購入希望金額≧(乱数で設定された設定金額)となった場合には(前記第1金額-前記設定金額)が前記参加者に支払われ、前記購入希望金額<前記設定金額となった場合には前記第1金額が前記参加者に支払われるという内容と、を含む事前情報を出力する事前情報出力部と、乱数を用いて前記設定金額を設定する設定部と、前記事前情報出力部が前記事前情報を出力した後に、前記参加者から前記購入希望金額を取得する取得部と、前記購入希望金額≧前記設定金額となった場合には(前記第1金額-前記設定金額)を第2金額として算出し、前記購入希望金額<前記設定金額となった場合には前記第1金額を前記第2金額とする算出部と、前記算出部の結果を出力する結果出力部と、前記参加者から前記取得部が複数回にわたって前記購入希望金額を取得した際に、前記取得部が最後に取得した前記購入希望金額を用いて前記算出部が算出した前記第2金額を第3金額として決定する決定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記情報処理装置において、前記設定部は、前記設定金額に上限および下限を設けてもよい。
【0008】
上記情報処理装置において、前記設定部は、上限および下限を有する乱数の発生方法として、正の範囲に定義域を有する確率分布を利用してもよい。
【0009】
上記情報処理装置において、前記設定部は、前記確率分布に、ベータ分布を用いてもよい。
【0010】
上記情報処理装置において、前記設定部は、前記決定部が複数の参加者に対して前記第3金額を決定した場合に、前記決定部が前記複数の参加者に対して前記第3金額を決定した結果に応じて、前記設定金額を設定するための乱数を調整してもよい。
【0011】
上記情報処理装置において、前記設定部は、前記決定部が複数の参加者に対して前記第3金額を決定した場合に、前記複数の参加者のうち、前記購入希望金額≧前記設定金額となる参加者の比率が所定範囲に入るように、前記乱数を調整してもよい。
【0012】
上記情報処理装置は、前記決定部が複数の参加者に対して前記第3金額を決定した場合に、前記決定部が前記複数の参加者に対して前記第3金額を決定した結果に応じて、前記商品の売上予測に関する情報を提供する情報提供部をさらに備えていてもよい。
【0013】
本発明に係る演算プログラムは、コンピュータに、参加者に対し、商品について第1金額の範囲での購入希望金額の入力を指示する内容と、前記購入希望金額≧(乱数で設定された設定金額)となった場合には(前記第1金額-前記設定金額)が前記参加者に支払われ、前記購入希望金額<前記設定金額となった場合には前記第1金額が前記参加者に支払われるという内容と、を含む事前情報を出力する事前情報出力処理と、乱数を用いて前記設定金額を設定する設定処理と、前記事前情報出力処理によって前記事前情報が出力された後に、前記参加者から前記購入希望金額を取得する取得処理と、前記購入希望金額≧前記設定金額となった場合には(前記第1金額-前記設定金額)を第2金額として算出し、前記購入希望金額<前記設定金額となった場合には前記第1金額を前記第2金額とする算出処理と、前記算出処理の結果を出力する結果出力処理と、前記参加者から前記取得処理によって複数回にわたって前記購入希望金額を取得した際に、前記取得処理において最後に取得した前記購入希望金額を用いて前記算出処理によって算出された前記第2金額を第3金額として決定する決定処理と、を実行させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る演算方法は、コンピュータが、参加者に対し、商品について第1金額の範囲での購入希望金額の入力を指示する内容と、前記購入希望金額≧(乱数で設定された設定金額)となった場合には(前記第1金額-前記設定金額)が前記参加者に支払われ、前記購入希望金額<前記設定金額となった場合には前記第1金額が前記参加者に支払われるという内容と、を含む事前情報を出力する事前情報出力処理と、乱数を用いて前記設定金額を設定する設定処理と、前記事前情報出力処理によって前記事前情報が出力された後に、前記参加者から前記購入希望金額を取得する取得処理と、前記購入希望金額≧前記設定金額となった場合には(前記第1金額-前記設定金額)を第2金額として算出し、前記購入希望金額<前記設定金額となった場合には前記第1金額を前記第2金額とする算出処理と、前記算出処理の結果を出力する結果出力処理と、前記参加者から前記取得処理によって複数回にわたって前記購入希望金額を取得した際に、前記取得処理において最後に取得した前記購入希望金額を用いて前記算出処理によって算出された前記第2金額を第3金額として決定する決定処理と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、消費者がWTPを正確に提示することができる、情報処理装置、演算プログラム、および演算方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1価格オークションの詳細について説明するための図である。
図2】第2価格オークションの詳細について説明するための図である。
図3】(a)は実施形態に係る情報処理装置のブロック図であり、(b)は演算装置の機能ブロック図であり、(c)は演算装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
図4】情報処理装置の動作の一例を表すフローチャートである。
図5】事前情報を例示する図である。
図6】練習処理の詳細を表すフローチャートである。
図7】実施形態の概要を例示する図である。
図8】需要予測および売上予測を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
WTP:Willingness to Payとは、消費者が商品やサービスに対して支払う意思がある最大金額のことである。新製品や既存製品について、WTPを正確に設定することができれば、消費者が損を感じない範囲で販売者は最大限の利益を得ることができる。しかしながら、新製品や既存製品に関するWTPを消費者から聞き出すことは困難である。例えば、消費者にとってみれば、製品価格はできるだけ安いことが好ましいからである。
【0018】
そこで、経済的コミットメントを課すことで、消費者の本当のWTPを測定することが考えられる。消費者の本当のWTPを測定する手段として、BDM(Becker DeGroot Marscha)オークションが挙げられる。BDMオークションは、第2価格オークションを元に設計されている。以下、第1価格オークションと第2価格オークションとを対比しながら、BDMオークションについて説明する。
【0019】
まず、第1価格オークションとは、競売などの一般的なオークションのことである。第1価格オークションでは、最も高い購入希望金額を提示した人が、勝者となって、自身が提示した購入希望金額を支払うことになっている。しかしながら、第1価格オークションでは、たとえ勝者になっても、「より低い購入希望金額にすればよかった」という損を感じる事態が生じ得る。これは、購入希望金額が、勝つためにやむを得ず高く提示した金額になっている場合があるからである。
【0020】
そこで、第2価格オークションが考えられる。第2価格オークションでは、最も高い購入希望金額を提示した人が勝者となるが、オークション参加者の中で2番目に高い購入希望金額を支払う。このようにすることで、正直に最大支払意思額で入札するインセンティブが働くのである。
【0021】
以下、先述の第1価格オークションの詳細について説明する。消費者A氏が商品に対して最大で300円支払ってもよいと考えているものとする。この場合、WTPは300円になる。オークションのライバルの購入希望金額が100円、200円、300円、または400円であり、消費者A氏の購入希望金額が100円、200円、300円、または400円であるそれぞれの場合を想定する。以上の想定についての消費者A氏の利益を図1に示す。
【0022】
図1に示すように、例えば、消費者A氏が購入希望金額を200円とし、ライバルの購入希望金額が300円になったとする。この場合には、消費者A氏は勝者になれないため、商品を得られない。しかしながら、支払金額も発生しない。したがって、消費者A氏の利益は0円ということになる。
【0023】
次に、消費者A氏が購入希望金額を200円とし、ライバルの購入希望金額が200円になったとする。この場合には、くじで勝った方が勝者となる。くじで勝つ確率および負ける確率は50%である。くじで勝てば300円-200円=100円の利益となり、負ければ0円の利益となる。したがって、期待値は、100円×50%+0円×50%=50円となる。以上のことから、消費者A氏の利益は50円ということになる。
【0024】
その他の全ての組み合わせについて検討してみても、消費者A氏のWTPの300円より低い200円を購入希望金額として提示する場合に、利益が最も大きくなる。したがって、第1価格オークションでは、WTPと、消費者A氏が最大の利益を得る金額との差が大きくなる。
【0025】
次に、第2価格オークションの詳細について説明する。第1価格オークションと同様に、消費者A氏のWTPは300円であるものとする。オークションのライバルの購入希望金額が100円、200円、300円、または400円であり、消費者A氏の購入希望金額が100円、200円、300円、または400円であるそれぞれの場合を想定する。以上の想定についての消費者A氏の利益を図2に示す。
【0026】
図2に示すように、例えば、消費者A氏が購入希望金額を400円とし、ライバルの購入希望金額が200円になったとする。この場合には、300円払ってもよい商品を200円で買えることになるため、消費者A氏の利益は、100円となる。
【0027】
次に、消費者A氏が購入希望金額を200円とし、ライバルの購入希望金額が300円になったとする。この場合には、消費者A氏は勝者になれないため、消費者A氏の利益は0円となる。
【0028】
次に、消費者A氏が購入希望金額を200円とし、ライバルの購入希望金額も200円になったとする。この場合、くじで勝った方が勝者となる。くじで勝つ確率および負ける確率は50%である。くじで勝てば300円-200円=100円の利益となり、負ければ0円の利益となる。したがって、期待値は、100円×50%+0円×50%=50円となる。以上のことから、消費者A氏の利益は、50円となる。
【0029】
次に、消費者A氏が購入希望金額をWTPと同じ300円とし、ライバルの購入希望金額が200円になったとする。この場合、300円払ってもよい商品を200円で買えることになるため、消費者A氏の利益は、100円となる。
【0030】
その他の全ての組み合わせについて検討してみても、消費者A氏がWTPである300円を提示するときに、最も利益が大きくなる。したがって、第2価格オークションでは、WTPと、消費者A氏が最大の利益を得る金額との差が小さくなる。
【0031】
以上のことから、BDMオークションを行うことで、正直に最大支払意思額で入札するインセンティブが働く。したがって、BDMオークションを行った場合に実際に勝者が支払う金額を商品の販売価格に設定することで、消費者が損をしたと感じることなく、販売者の利益を大きくすることができる。しかしながら、消費者がWTPを正確に提示するのは困難である。以下の実施形態では、消費者がWTPを正確に提示することができる例について説明する。
【0032】
(実施形態)
一例として、新商品などの、まだ価格が決まっていない商品が展示されたイベント会場を想定する。イベント会場には、参加者が招待されているものとする。当該商品の販売者は、適正な商品価格を把握することを希望しているものとする。したがって、販売者は、参加者からWTPを取得することを希望しているものとする。参加者には、第1金額(一例として1000円)が報酬として渡されているものとする。
【0033】
図3(a)は、実施形態に係る情報処理装置100のブロック図である。図3で例示するように、情報処理装置100は、演算装置10、操作装置20、通知装置30などを備える。
【0034】
操作装置20は、参加者が操作するための装置である。操作装置20は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置である。通知装置30は、参加者に情報を通知できる装置であれば特に限定されるものではない。例えば、通知装置30は、液晶画面などの表示装置であってもよく、スピーカーなどの音声出力装置などであってもよい。
【0035】
図3(b)は、演算装置10の機能ブロック図である。図3(b)で例示するように、演算装置10は、事前情報出力部11、設定部12、取得部13、算出部14、結果出力部15、決定部16、情報提供部17などとして機能する。
【0036】
図3(c)は、演算装置10のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。図3(c)で例示するように、演算装置10は、CPU101、RAM102、記憶装置103、などを備える。これらの各機器は、バスなどによって接続されている。CPU(Central Processing Unit)101は、中央演算処理装置である。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行するプログラム、CPU101が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置103は、不揮発性記憶装置である。記憶装置103として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。記憶装置103に記憶されている演算プログラムをCPU101が実行することによって、演算装置10の各部の機能が実現される。なお、演算装置10の各部の機能は、それぞれ専用の回路等によって構成されていてもよい。
【0037】
図4は、情報処理装置100の動作の一例を表すフローチャートである。以下、図4を参照しつつ、情報処理装置100の動作の一例について説明する。
【0038】
まず、事前情報出力部11は、参加者に対して事前情報を通知するために、通知装置30に対して事前情報を出力する(ステップS1)。それにより、通知装置30は、事前情報出力部11から受け取った事前情報を参加者に対して通知する。図5は、事前情報を例示する図である。例えば、以下のような事前情報が参加者に対して通知される。
「提示される商品について買いたいと思う金額を正直に入力してください。あなたの前に回答してもらった5名がつけた最高金額A円を記録してあります。その最高金額A円よりもあなたのつけた金額B円が高ければ、あなたは提示される商品をA円で手に入れられる、というゲームです。
<勝った場合>商品に加えて、1000円から、過去の最高金額A円を引いた額の報酬を得ることができます。
<負けた場合>1000円を得ることができ、そこでゲームは終了です。
ルールを理解したら、開始ボタンを押してください。開始ボタンを押すと、練習を3回行い、その後に本番1回となります。」
【0039】
次に、参加者が操作装置20を用いて開始ボタンを押した後、練習処理が実行される(ステップS2)。練習処理は、少なくとも1回実行される。本実施形態においては、練習処理は、3回実行される。
【0040】
図6は、練習処理の詳細を表すフローチャートである。図6で例示するように、設定部12は、乱数を用いて、設定金額(上記の最高金額A円)を設定する(ステップS11)。
【0041】
次に、取得部13は、参加者が操作装置20を用いて入力した購入希望金額を取得する(ステップS12)。なお、この練習処理で参加者に提示される商品は、後述する本番の処理とは異なるものであり、練習用の商品である。例えば、練習用の商品および本番用の商品として、飲料といった同じカテゴリで異なる商品としてもよく、食品と飲料といった異なるカテゴリの商品としてもよい。
【0042】
次に、算出部14は、第2金額を算出する(ステップS13)。具体的には、算出部14は、購入希望金額≧設定金額となった場合には、(第1金額-設定金額)を第2金額として算出し、購入希望金額<設定金額となった場合には第1金額を第2金額とする。
【0043】
次に、結果出力部15は、ステップS13における算出部14の算出結果を通知装置30に対して出力する(ステップS14)。それにより、通知装置30は、算出部14から受け取った算出結果を参加者に対して通知する。具体的には、購入希望金額≧設定金額となった場合には、通知装置30は、参加者が勝者であって商品を獲得することができることを参加者に対して通知するとともに、第2金額を参加者に対して通知する。購入希望金額<設定金額となった場合には、通知装置30は、参加者が敗者であって商品を獲得することができないことを参加者に対して通知するとともに、第2金額を参加者に対して通知する。
【0044】
ステップS2の練習処理が終了した後、本番の処理が実行される。具体的には、設定部12は、乱数を用いて、設定金額(上記の最高金額A円)を設定する(ステップS3)。
【0045】
次に、取得部13は、参加者が操作装置20を用いて入力した購入希望金額を取得する(ステップS4)。
【0046】
次に、算出部14は、第2金額を算出する(ステップS5)。具体的には、算出部14は、購入希望金額≧設定金額となった場合には、(第1金額-設定金額)を第2金額として算出し、購入希望金額<設定金額となった場合には第1金額を第2金額とする。
【0047】
次に、結果出力部15は、ステップS5における算出部14の算出結果を通知装置30に対して出力する(ステップS6)。それにより、通知装置30は、算出部14から受け取った算出結果を参加者に対して通知する。具体的には、購入希望金額≧設定金額となった場合には、通知装置30は、参加者が勝者であって商品を獲得することができることを参加者に対して通知するとともに、第2金額を参加者に対して通知する。購入希望金額<設定金額となった場合には、通知装置30は、参加者が敗者であって商品を獲得することができないことを参加者に対して通知するとともに、第2金額を参加者に対して通知する。
【0048】
次に、決定部16は、ステップS5で算出された第2金額を第3金額として決定する(ステップS7)。参加者には、第3金額が渡される。
【0049】
図7に、本実施形態の概要を示す。
【0050】
ここで、本実施形態の効果について説明する。
【0051】
一般の消費者の多くは、BDMオークションに慣れていないため、練習処理が実行されずに本番処理が実行されると、参加者はWTPを正確に提示できないおそれがある。例えば、練習処理を実行せずに参加者にBDMオークションの仕組みを説明したうえで本番の処理を実行することも考えられるが、この場合には参加者は実際にBDMオークションを実体験しないことになるため、やはり正確なWTPを提示することは困難である。
【0052】
これに対して、本実施形態によれば、練習処理が1回以上実行されてから、本番の処理が実行される。この場合、参加者は、BDMオークションを実体験するため、BDMオークションの仕組みを十分に理解したうえでBDMオークションに参加することができる。それにより、参加者は、WTPを正確に提示することができるようになる。また、乱数を用いて設定金額が設定されるため、販売者の思惑を排除することができ、公平な設定金額が設定されるようになる。それにより、参加者は、WTPを正確に提示することができるようになる。
【0053】
なお、参加者は1人に限られないため、複数の参加者が図4のフローチャートに従ってBDMオークションを行うことになる。この場合、同一の商品について、複数の参加者からWTPを取得することができる。そこで、情報提供部17は、決定部16が複数の参加者に対して第3金額を決定した結果に応じて、商品の売上予測に関する情報を提供する。
【0054】
一例として、情報提供部17は、決定部16が複数の参加者に対して第3金額を決定した結果と、マーケティングモデルとを組み合わせて、需要予測および売上予測を提供する。図8は、需要予測および売上予測を例示する図である。情報提供部17は、予め、上記のBDMオークションでの対象商品についての市場調査データおよび追加調査データを取得しているものとする。また、情報提供部17は、予め、上記のBDMオークションでの対象商品以外の同カテゴリ商品についての市場調査データおよび追加調査データも取得しているものとする。市場調査データには、認知率と配架率、それらを市場に拡大推計するための属性情報や購入経路情報、カテゴリ全体の売上規模、などが含まれる。追加調査データには、リピート確率、スイッチバック確率などが含まれる。
【0055】
まず、情報提供部17は、BDMオークションの対象商品を認知して入手可能という条件の下での価格ごとのトライアル確率(=F)を取得する。ここで、トライアル確率とは、試用購入する確率(1回目の購買をする確率)を指す。
【0056】
例えば、トライアル確率は、以下のようにして推定することができる。まず、上記のBDMオークションによって、各消費者のWTPを得ることができる。WTPは、上述したように消費者が商品やサービスに対して支払う意思がある最大金額のことであるため、各消費者は各々のWTPと新製品の価格が等しい、或いはそれよりも低ければトライアルをする、という意思決定をすると考えられる。この情報から価格ごとの消費者全体のトライアル確率Fを推定する。
【0057】
次に、情報提供部17は、市場調査データに基づいて、新製品の認知率(=K)を取得する。認知率とは、市場全体の構成人数のうち、当該新製品を認知している人数の割合のことである。次に、情報提供部17は、当該市場調査データに基づいて、配架率(=D)を取得する。
【0058】
次に、情報提供部17は、トライアル確率Fと、認知率Kと、配架率Dとに基づいて、最終的な累積トライアル確率Tを算出する。例えば、情報提供部17は、T=F×K×Dを算出する。この累積トライアル確率Tは、市場全体の構成人数のうち、当該新製品を試しに(少なくとも1回)購入する人数の割合に相当する。
【0059】
次に、情報提供部17は、追加調査に基づいて、トライアルをした人の価格ごとのリピート確率(=p)を取得する。リピート確率pは、トライアル購買(1回目の購買)を行った人のうち、次回購買機会に再度購入する人の割合のことである。次に、情報提供部17は、追加調査に基づいて、トライアルしなかった人の価格ごとのスイッチバック確率(=q)を取得する。スイッチバック確率qは、トライアル購買(1回目の購買)をしなかった人のうち、次回購買機会に購入する予定の人の割合のことである。
【0060】
次に、情報提供部17は、リピート確率pと、スイッチバック確率qとに基づいて、トライアルした人の最終的な継続購買率Rを算出する。例えば、情報提供部17は、R=q/(1-p+q)を算出する。継続購買率Rは、トライアル購入(1回目の購買)を行った人のうち、継続して2回目以降の購買を続ける人の割合のことである。
【0061】
次に、情報提供部17は、累積トライアル確率Tと、継続購買率Rとに基づいて、長期的なマーケットシェア・需要予測Mを算出する。マーケットシェア・需要予測Mは、最終的なマーケットシェアのことである。例えば、情報提供部17は、M=T×Rを算出する。
【0062】
最後に、情報提供部17は、マーケットシェア・需要予測Mと、カテゴリ全体の売上規模とから、売上予測に関する情報を提供する。
【0063】
なお、設定部12が設定する設定金額はランダムであっても構わないが、現実的にあり得る値の範囲で設定金額が設定されることが好ましい。例えば、500mlのペットボトル飲料の新製品について、50円は安すぎて、500円は高すぎるおそれがある。そこで、設定部12は、上限と下限を有する乱数を発生させることが好ましい。上限と下限を有する乱数の発生方法として、例えば、正の範囲に定義域を有する確率分布を利用することができる。正の範囲に定義域を有する確率分布として、例えば、ベータ分布などを用いることができる。
【0064】
ベータ分布は、2つのパラメータαおよびβを持つ[0,1]の値をとる確率密度である。確率変数をxとすると、確率密度関数は、f(x|α,β)=xα―1(1-x)β-1/B(α,β)のように表すことができる。なお、B(・)は、ベータ関数を表す。
【0065】
まず、乱数の従う分布fのとり得る上限をUとし、下限をLとする。
【0066】
次に、目標とする乱数の中央値を設定する。当該中央値をMとする。
【0067】
次に、Mの[U,L]におけるパーセンタイルqM*を求める。qM*は、(M-L)/(U-L)と表すことができる。
【0068】
ベータ分布fの中央値が、(α-1/3)/(α+β-2/3)で近似できることを利用して、fのパラメータαおよびβを求める。ここでは、βに適切な値を設定し、α=(3βqM*-2qM*+1)/3(1-qM*)によってf(y|α,β)を決定し、ベータ乱数をfから発生させる。なお、yは、fに従う確率変数である。
【0069】
yの変換をz=y(U-L)+Lのように行い、乱数zとする。この乱数zは、上限U、下限L、中央値Mを持つベータ分布に従う。
【0070】
なお、情報提供部17が商品の販売価格に関する情報を提供する際に、商品を獲得した参加者に対してさらなる調査を行うことで、その後の需要予測をより正確に行うことができるようになる。したがって、商品を獲得する参加者が少な過ぎる場合には、正しい需要予測を行うためのサンプルサイズを得ることができないおそれがある。一方で、商品を獲得する参加者が多過ぎる場合には、オークションの意味が薄れ、正確なWTPが得られないおそれがある。
【0071】
そこで、特定の商品について、複数の参加者に対して第3金額が決定した場合に、設定部12は、決定部16が当該複数の参加者に対して第3金額を決定した結果に応じて、設定金額を設定するための乱数を調整してもよい。例えば、複数の参加者のうち、購入希望金額が設定金額以上となる参加者の割合が適切になるように、正の範囲に定義域を持つ確率分布の中央値を設定することが好ましい。このようにすることで、新たな複数の参加者が図4のフローチャートに従って購入希望金額を入力する結果を調整することができる。
【0072】
例えば、必要となるサンプルサイズに対して、購入希望金額が設定金額以上となる参加者が少ない場合には、確率分布の中央値を小さくするような変更を適応的に行い、購入希望金額が設定金額以上となる参加者の比率が大きくなるように調整することが好ましい。このようにすることで、複数の参加者のうち、購入希望金額≧設定金額となる参加者の比率が所定範囲に入るように乱数を調整することができるようになる。
【0073】
または、「財」「対人サービス」などのように用意できる個数に制限がある場合には、当該制限に応じて、購入希望金額が設定金額以上となる参加者の比率を調整するように分布を適応的に調整することが好ましい。
【0074】
なお、練習処理の際には、購入希望金額が設定金額以上となる参加者の比率が5割程度になるように、分布の中央値を設定することが好ましい。このようにすることで、適切に購入希望金額を入力しないと購入希望金額が設定金額以上にならない可能性があることを参加者に認識させることができるようになる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 演算装置
11 事前情報出力部
12 設定部
13 取得部
14 算出部
15 結果出力部
16 決定部
17 情報提供部
20 操作装置
30 通知装置
100 情報処理装置
【要約】
【課題】 消費者がWTPを正確に提示することができる。
【解決手段】 参加者に対し商品について第1金額の範囲での購入希望金額の入力を指示する内容と、購入希望金額≧(乱数で設定された設定金額)となった場合には(第1金額-設定金額)が参加者に支払われ、購入希望金額<設定金額となった場合には第1金額が参加者に支払われるという内容と、を含む事前情報を出力する事前情報出力部と、乱数を用いて設定金額を設定する設定部と、参加者から購入希望金額を取得する取得部と、購入希望金額≧設定金額となった場合には(第1金額-設定金額)を第2金額として算出し、購入希望金額<設定金額となった場合には第1金額を第2金額とする算出部と、算出部の結果を出力する結果出力部と、参加者から取得部が複数回にわたって購入希望金額を取得した際に最後に取得した購入希望金額を用いて算出した第2金額を第3金額として決定する決定部と、を備える。
【選択図】 図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8