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特許7605563固体酸化物セルの温度制御システム及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】固体酸化物セルの温度制御システム及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0267 20160101AFI20241217BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20241217BHJP
   C25B 9/67 20210101ALI20241217BHJP
   C25B 15/027 20210101ALI20241217BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20241217BHJP
   H01M 8/0228 20160101ALI20241217BHJP
   H01M 8/0271 20160101ALI20241217BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20241217BHJP
   H01M 8/04029 20160101ALI20241217BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20241217BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20241217BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20241217BHJP
【FI】
H01M8/0267
C25B9/23
C25B9/67
C25B15/027
H01M8/0206
H01M8/0228
H01M8/0271
H01M8/04014
H01M8/04029
H01M8/04701
H01M8/04746
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023563920
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 FI2021050303
(87)【国際公開番号】W WO2022223870
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-10-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516183473
【氏名又は名称】エルコーゲン オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ノポネン,マッティ
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/009542(WO,A1)
【文献】特開2007-123241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0042254(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0267
C25B 9/23
C25B 9/67
C25B 15/027
H01M 8/0206
H01M 8/0228
H01M 8/0271
H01M 8/04007 - 04044
H01M 8/04701
H01M 8/04746
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物セルの温度制御システムであって、セルは、燃料側と、酸素リッチ側と、前記燃料側と前記酸素リッチ側との間の電解質要素とを有し、前記温度制御システムは、前記固体酸化物セルの反復ユニット構造を有し、前記温度制御システムは、燃料のための燃料フローフィールドプレート構造と、酸素リッチガスのための酸化剤フローフィールドプレート構造と、前記燃料及び酸化剤のための電気接触構造と、温度制御流体のためのフローフィールドプレート内の温度制御流体構造とを有し、前記フローフィールドプレート内の温度制御流体構造は、前記フローフィールドプレート内の前記燃料フローフィールドプレート構造と前記酸化剤フローフィールドプレート構造との間に別れて配置され、液体形態では、前記温度制御流体は、溶融塩を含む液体、超臨界流体及び相変化材料のうちの少なくとも1つを含み、ガス形態の前記温度制御流体では、前記温度制御流体のガスは、吸熱反応及び発熱反応の少なくとも1つによって反応しており、前記温度制御システムは、前記燃料フローフィールドプレート構造、前記酸化剤フローフィールドプレート構造、前記電気接触構造及び前記温度制御流体構造における漏れを防止するためのシーリング構造と、温度制御流体温度及び流量を最適化することにより、350°C超に前記固体酸化物セルにおける動作温度を制御するための手段とを有する、
固体酸化物セルの温度制御システム。
【請求項2】
前記温度制御流体はガス形態にある、
請求項1に記載の固体酸化物セルの温度制御システム。
【請求項3】
前記温度制御システムは、鋼構造から作られた前記燃料フローフィールドプレート構造及び前記酸化剤フローフィールドプレート構造のための保護コーティングを有し、前記保護コーティングは、燃料、酸化剤及び熱制御流体の特性に従って選択される、
請求項1に記載の固体酸化物セルの温度制御システム。
【請求項4】
固体酸化物セルの温度制御方法であって、前記温度制御方法は、燃料フローフィールドプレート構造内に燃料を流し、酸化剤フローフィールドプレート構造内に酸化剤を流し、前記燃料と前記酸化剤のための電気接触構造を形成し、フローフィールドプレート内の前記燃料フローフィールドプレート構造と前記酸化剤フローフィールドプレート構造との間に別れて配置される温度制御流体構造内に温度制御流体を流し、液体形態では、前記温度制御流体は、溶融塩を含む液体、超臨界流体及び相変化材料のうちの少なくとも1つを含み、ガス形態の前記温度制御流体では、前記温度制御流体のガスは、吸熱反応及び発熱反応の少なくとも1つによって反応しており、前記燃料フローフィールドプレート構造、前記酸化剤フローフィールドプレート構造、前記電気接触構造及び前記温度制御流体構造における漏れを防止するシーリング構造を形成し、温度制御流体温度及び流量を最適化することにより、350°C超に前記固体酸化物セル内の動作温度を制御する、
固体酸化物セルの温度制御方法。
【請求項5】
前記温度制御流体はガス形態にある、
請求項4に記載の固体酸化物セルの温度制御方法。
【請求項6】
鋼構造から作られた前記燃料フローフィールドプレート構造及び前記酸化剤フローフィールドプレート構造は、燃料、酸化剤及び熱制御流体の特性に従って選択される保護コーティングによって保護される、
請求項4に記載の固体酸化物セルの温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
世界のエネルギーのほとんどは、石油、石炭、天然ガス、又は原子力によって生産されている。これらすべての生産方法は、例えば、利用可能性及び環境への優しさに関係する限り、特有の問題がある。環境に関する限り、特に石油と石炭は、それらが燃焼されると汚染を引き起こす。原子力発電の問題は、少なくとも使用済み燃料の貯蔵である。
【0002】
特に環境問題のため、従来のエネルギー源よりも環境に優しく、例えば効率の良い新エネルギー源が開発されている。
【0003】
固体酸化物セルは、環境に優しいプロセスで化学反応を介して動作し、将来のエネルギー変換デバイスとして非常に有望である。再生可能エネルギー源の間欠性は、電力網の安定性に対する課題をもたらし、増加する需要と供給側の柔軟性並びに新しいエネルギー貯蔵及び変換技術を求めている。
【背景技術】
【0004】
電気化学活性固体酸化物セルは、燃料電池又は電解装置(electrolyser)として使用することができる。燃料電池は、様々な燃料から電気と熱を生成し、電解セルは、水蒸気(steam)、CO2、及び窒素、電気と熱から水素、メタン、アンモニア及び一酸化炭素などの化学物質を生成する。燃料電池及び電解装置として、両方のモードで動作するこのようなセルは、固体酸化物電気化学セル(SOEC)又は可逆固体酸化物セル(rSOC)又は単に固体酸化物セル(SOC)と呼ばれる。
【0005】
固体酸化物セル(SOC)は、図1に示すように、燃料側100と酸素リッチ側102とそれらの間の電解質材料104とを有する。固体酸化物燃料電池(SOFC)では、酸素106は酸素リッチ側102に供給され、酸素リッチ側から電子を受けることによって負の酸素イオンに還元される。負の酸素イオンは電解質材料104を介して燃料側100に輸送され、そこで燃料108と反応し、典型的には水、一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO2)を生成する。燃料側100及び酸素リッチ側102は、システムから電気エネルギーを引き出す燃料電池動作モード用の負荷110を有する外部電気回路111を介して接続される。燃料電池はまた、反応物排気流に熱を発生する。電解動作モードでは、電流の流れは逆になり、固体酸化物セルは電気が供給される負荷として作用する。電解反応動作条件に応じて、セル動作は吸熱、発熱又は熱中性であることができる。
【0006】
メタン、一酸化炭素及び水素燃料の場合の燃料電池反応を以下に示す:
【0007】
燃料側:CH4+H2O=CO+3H2
CO+H2O=CO2+H2
H2+O2-=H2O+2e-
【0008】
酸素リッチ側:O2+4e-=2O2-
【0009】
ネットの反応(Net reactions):CH4+2O2=CO2+2H2O
CO+1/2O2=CO2
H2+1/2O2=H2O
【0010】
電解動作モード(固体酸化物電解セル(SOEC))では、反応は逆になり、すなわち、電源110からの電気エネルギーがセルに供給され、そこでは水としばしば二酸化炭素も燃料側で還元されて酸素イオンを形成し、酸素イオンは電解質材料を通って酸化反応が起こる酸素リッチ側に移動する。SOFCモードとSOECモードの両方で同じ固体酸化物セルを使用することが可能である。
【0011】
従来技術の固体酸化物電解装置セルは、高温電解反応が起こることを可能にする温度で動作し、前記温度は、典型的には500-1000°Cの間であるが、1000°Cを超える温度であっても有用であり得る。これらの動作温度は、固体酸化物燃料電池(SOFC)の条件と類似している。ネットのセルの反応は、水素及び酸素ガスを生成する。1モルの水に対する反応を以下に示す:
【0012】
燃料側:H2O+2e---->2H2+O2-
【0013】
酸素リッチ側:O2---->1/2O2+2e-
【0014】
正味反応:H2O--->H2+1/2O2
【0015】
共電解の場合、水蒸気に加えて炭素質種がセルに供給され、典型的には、例えば、フィッシャー・トロプシュ法による結果ガスのその後の精製に有利な割合である。二酸化炭素は一酸化炭素に直接還元されることができる、又は、水性ガスシフト反応(water-gas shift reaction)を介して水素と相互作用して一酸化炭素と水蒸気を生成する。固体酸化物セルは、電気化学反応によって又は化学反応を介して直接他のタイプの化学物質を生成するためにも使用できる。このような化学物質は、例えば、メタン及びアンモニアを含み得る。メタンは、水蒸気及び炭素質種が固体酸化物電解装置に供給されるときに生成されることができ、アンモニアは、水蒸気及び窒素が供給されるときに生成されることができる。化学生成の反応速度は、供給電流、燃料及び空気側流量、燃料及び空気側ガス濃度、燃料及び空気側圧力、並びに燃料及び空気側温度に依存する。
【0016】
燃料側ガスの流れ方向が、各セル内の酸素リッチ側ガスに対して、及び隣接セル間のガスの流れ方向に対して相対的である固体酸化物燃料電池(SOFC)及び固体酸化物電解質(SOE)スタックでは、スタックはスタックの異なるセル層を介して結合される。さらに、燃料側ガス又は酸素リッチ側ガス又はその両方は、排出される前に1より多いセルを通過することができ、一次セルを通過した後かつ二次セルを通過する前に、複数のガス流を分割又は結合することができる。これらの組み合わせは、電流密度を増加させ、セル及びスタック全体にわたる熱勾配を最小化するのに役立つ。
【0017】
SOCセル及びシステムにおける高い動作温度は、熱機械力、材料特性、化学的安定性及び動作条件の均一性に関して、材料関連の課題をもたらす。これらの側面は、実現可能なSOCセル、スタック及びモジュールサイズに実際的な制約を与える。したがって、SOECアプリケーションに典型的な大規模インストールのための技術のスケーリングは、主にセル、スタック及びSOCモジュールの増加(multiplication)に依存する。したがって、すべてのレベルでの各増加ユニットのコストを最小化することは、全体的なコストを削減するために重要である。
【0018】
SOFCは通常動作時に約0.8Vの電圧を供給し、SOEセルの典型的な動作電圧は約1.3Vである。総電圧出力を増加させるために、SOCは通常、セルがフローフィールドプレート(また、インターコネクタプレート、バイポーラプレート)を介して電気的に接続されたスタックに組み立てられる。所望の電圧レベルは、必要なセルの数を決定する。
【0019】
バイポーラプレートは、隣接するセルユニットのアノード側とカソード側を分離し、同時にアノードとカソード間の電子伝導を可能にする。相互接続、又はバイポーラプレートは、通常、相互接続プレートの一方の側に燃料ガスを、他方の側に酸化剤ガスを通過させるための複数のチャネルを備えている。燃料ガスの流れ方向は、セルユニットの燃料入口部から燃料出口部への実質的な方向として定義される。同様に、酸化剤ガス(すなわち空気)の流れ方向は、セルユニットの入口部から出口部への実質的な方向として定義される。
【0020】
従来、セルは、完全にオーバーラップして互いに積み重ねられ、例えば、スタックの一側にすべての燃料と酸化剤の入口を有し、反対側にすべての燃料と酸化剤の出口を有する並流(co-flow)を有するスタックをもたらす。動作中の構造の温度に影響する1つの特徴は、セルに供給される燃料の水蒸気改質である。水蒸気改質は吸熱反応であり、セルの燃料入口エッジを冷却する。電気化学プロセスの発熱性により、出口ガスは入口ガスの入口温度よりも高い温度で離れる。吸熱反応と発熱反応がSOFCスタック内で結合されると、スタックにわたって著しい温度勾配が生じる。システム全体の効率を最大化するために、燃料と酸素リッチ側の両方で同時に流量を最小化することが望まれる。大きな熱勾配は、非常に望ましくないスタック内の熱応力を誘発し、それらは電流密度と電気抵抗の差を伴う。SOCスタックの性能と寿命は、スタック全体にわたって可能な限り均一な温度プロファイルを維持できる場合に最大化できる。したがって、SOFCスタックの熱管理の問題は、許容できない応力を回避し、均一な電流密度プロファイルを通じて電気効率を最大化するのに十分な熱勾配の低減に存在する。
【0021】
従来技術の実施形態では、金属の腐食を遅くするために、フローフィールドプレートを保護的にコーティングすることがしばしば必要である。一般に、固体酸化物燃料電池及び電解装置に老化を引き起こす2つの腐食メカニズムがある。1つのメカニズムは、金属表面上への電気伝導が悪い酸化物層の形成であり、もう1つのメカニズムは、ユニットセルの活性表面上への金属から蒸発したクロム化合物の沈降であり、活性物質の電気化学的、化学的、電気伝導性及び/又はガス透過性を弱める電気化学的活性物質との反応である。酸化物構造は、一方では金属の表面上への酸化物拡散を遅くし、他方では酸化物構造を介した合金原子及び化合物の拡散を遅くする保護コーティングとして一般的に使用される。保護コーティングの価格は、典型的にはセルスタックの総コストの中でかなり大きく、保護コーティングのコストは、保護コーティングに使用される製造プロセス、材料及び保護コーティングされることになる表面に影響される。さらに、シーラントとして一般的に使用されるガラス、セラミック材料又は鉱物は、保護コーティングと反応して、例えばガス漏れの増加及び/又は望ましくない電気伝導率の増加のために、セルスタック構造に老化効果を引き起こす可能性があるので、保護コーティングを、セルスタックをシールするために使用される領域まで拡張することは好ましくない。
【0022】
SOCモジュールは、数十から数百までのSOCスタック、支持構造、断熱、反応物の搬送及び分配構造、計装、ならびにアプリケーション又は他のモジュールに向けた電気及び反応物のインターフェースを含む。高温インターフェースは、コストが高く、スペースを消費し、点火源を構成する可能性があるため、反応物インターフェースの温度を下げるためにモジュール内で熱交換を含めることも有益である。さらに、SOCモジュールは、安全な起動と停止を容易にするために内部又は外部の手段を必要とする。
【0023】
SOCの利点は、変換プロセスにおけるその高い性能である。小規模なユニットセル試験では、このような構造は、2W/cm2を超える電力密度を生成することができ、ポリマー電解質やアルカリ技術のような低温ソリューションに基づく他の電気化学セル技術や、タービンやエンジン技術のようなカルノーサイクルに基づく他の変換技術などの競合技術と比較して、依然として非常に高いエネルギー変換効率を有する。このセルは、電力密度と同等の熱電力密度を燃料電池モードで生成する。この高い電力密度に達するためのSOC技術の現在の問題は、熱が燃料と酸化剤の流れに放散されるか、又はSOC構造を過熱しないように電気化学的に活性なサイトからの伝導又は放射を介して伝達される必要があることである。熱伝達の課題は、主な熱伝達メカニズムが燃料と空気流体への対流熱伝達であるスタックレベルで顕著である。SOCスタックは、SOC、燃料のためのフローフィールドプレート構造、酸化剤のためのフローフィールドプレート構造、燃料と酸化剤のための電気接触構造、フローフィールドプレート構造のための保護コーティング、及び電気化学的に活性なSOC領域上を反応ガスが確実に流れることを防止するシーリングソリューション(sealing solution)から構成される。SOCスタックにおいて、その反対側のSOCに燃料を供給するフローフィールドプレートは、スタック内の隣接するSOCに酸化剤を供給することができる。また、同じSOCに酸化剤を供給する他のフローフィールドプレートは、第3のSOCに燃料を供給することができる。この種の構造は、シングルリピートユニット(SRU)構造と呼ばれる。このような構造のSOCスタックでは、典型的な電力密度は0.1から0.4W/cm2の間である。限られた熱伝達特性と共に発生する熱は、電気化学的に活性なSOC構造において温度上昇と大きな温度勾配をもたらす。最大電力密度は、通常、セラミックセルだけでなく、スチールベースの相互接続部品、コーティング及びシーリングソリューションを含むスタックにおいて、これらの部品及び材料の最大動作温度によって制限される。勾配としての絶対温度は、腐食、化学的安定性、機械的強度特性の低下、応力レベルの増加などに関連する問題のため、SRUにとって有害である可能性がある。しかし、ユニットセルは、今日のスタック値を超える電力密度を提供することができ、最大2W/cm2が公開文献で報告されている。電力密度を高めることができれば、これは生産される電力又は生産される化学種の立方メートル当たりのコストを下げることができる。
【0024】
電解モードのSOCは、高温排気ガスを生成するパルプ及び紙生産、鉄鋼生産、エネルギー生産などの既存の産業プロセスと接続することができる。これらの排気ガスは、液体の水から水蒸気を生成し、それを電解スタックの動作温度まで過熱するために使用することができる。同じ排気ガスは、SOCスタックをその動作温度まで効果的に加熱し、吸熱電解反応のための熱供給に使用するためにも使用することができる。排気ガスは通常、硫黄やハロゲン化物のような高濃度の不純物を含むので、これらのガスは、広範なガス洗浄プロセスなしに電気化学的に活性な要素に直接供給することができない。
【0025】
SOCスタックにおける温度制御は、今日では、主に電力密度、燃料及び酸素側エンタルピーフロー量、並びに、厚さ及び熱伝導特性を含む材料選択によって制御されている。高分子電解質燃料電池及び高分子電解質電解スタック構造における典型的なソリューションは、熱伝達及び平衡目的に使用される第3の流体を供給することである。典型的な流体は、水、アルコール及び油である。SOC技術では、800°Cを超える高い動作温度のために、同じソリューションを使用することは不可能である。この温度では、液体形態の可能性のある流体は、有毒又は極度に腐食性である。
【0026】
先行技術文献CN1339181A(特許文献1)は、空気が燃料電池スタックの酸化剤として作用し、同時に、約1000°Cで動作する高温燃料電池スタックの動作中に発生する廃熱を除去するのに役立つ冷却媒体として作用する実施形態を提示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【文献】CN1339181A
【発明の概要】
【0028】
本発明の目的は、エネルギー生産能力を増加させ、エネルギー生産効率を向上させるとともに、固体酸化物セルの寿命を延長させる固体酸化物セルシステム及びその動作を実現することにある。
【0029】
これは、固体酸化物セルの温度制御システムによって実現され、セルは、燃料側、酸素リッチ側、及び燃料側と酸素リッチ側との間の電解質要素を有し、システムは、固体酸化物セルのための反復ユニット構造(repetitious unit structure)を有する。温度制御システムは、燃料のための燃料フローフィールドプレート構造と、酸化剤のための酸化剤フローフィールドプレート構造と、燃料及び酸化剤のための電気接触構造と、温度制御流体のためのフローフィールドプレート内の温度制御流体構造とを有し、フローフィールドプレート内の温度制御流体構造は、フローフィールドプレート(121)内の、燃料フローフィールドプレート構造と酸化剤フローフィールドプレート構造との間に別々に配置され、液体形態では、温度制御流体は、塩溶液を含む液体、超臨界流体及び相変化材料のうちの少なくとも1つを含み、ガス形態の温度制御流体では、ガスは、吸熱反応及び発熱反応の少なくとも1つによって反応しており、温度制御システムは、構造における漏れを防止するためのシーリング手段と、温度制御流体温度及び流量を最適化することにより、350°C超に固体酸化物セル内の動作温度を制御するための手段とを有する。
【0030】
本発明の焦点は、固体酸化物セルの温度制御方法でもある。本方法では、燃料フローフィールドプレート構造内に燃料が流され、酸化剤フローフィールドプレート構造内に酸化剤が流され、燃料と酸化剤のための電気接触構造が形成され、フローフィールドプレート内の燃料フローフィールドプレート構造と酸化剤フローフィールドプレート構造との間に別々に配置される温度制御流体構造内に温度制御流体が流され、液体形態では、温度制御流体は、塩溶液を含む液体、超臨界流体及び相変化材料のうちの少なくとも1つを含み、ガス形態の温度制御流体では、ガスは、吸熱反応及び発熱反応の少なくとも1つによって反応しており、構造内の漏れを防止するシーリング構造が形成され、温度制御流体温度及び流量を最適化することにより、350°C超に固体酸化物セル内の動作温度が制御される。
【0031】
本発明は、燃料のための燃料フローフィールドプレート構造、酸化剤のための酸化剤フローフィールドプレート構造、燃料と酸化剤のための電気接触構造、温度制御流体のためのフローフィールドプレート内の温度制御流体構造、構造内の漏れを防止するシーリング構造に基づいており、本発明は、さらに、固体酸化物セル内の動作温度の制御に基づいている。
【0032】
本発明の利点は、同じ反応領域での高い電力密度の利用を可能にすることによって、生成された電気と化学物質のコストを削減することができることである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】典型的な反復セル構造を示す。
【0034】
図2】燃料電池スタックのためのフローフィールドプレートの例示的な配置を示す。
【0035】
図3】本発明による例示的なセルスタック構造を示す。
【0036】
図4】本発明による例示的な燃料電池システムを示す。
【0037】
図5】本発明による例示的な電解セルシステムを示す。
【0038】
図6】流れ方向の組み合わせを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
使用温度を800°Cより下に下げることにより、塩溶液等の液体流体、超臨界流体、相変化材料、ヘリウム等の気体流体を熱制御目的に利用し始めることができる。このような構造は、フローフィールドプレートの燃料側と酸化剤側との間に位置する追加の流路構造を必要とする。これらの反応物流の間では、温度制御流体流が適用され、それは酸化剤流と燃料流から分離される。温度制御流体組成と流量は、流体が2W/cm2の範囲で熱を伝達するように最適化できる。本発明によるシステムの動作温度は、800°Cより下に制限されないが、それらは、例えば、350°Cから1000°Cの間で変化することができるが、起動と停止の状況では、より低い温度でも変化する。
【0040】
電気化学活性固体酸化物セルは、燃料電池又は電解装置として使用することができる。燃料電池は、様々な燃料から電気と熱を生成し、電気分解電池は、水蒸気、CO2及び窒素、電気及び熱から水素、メタン、アンモニア及び一酸化炭素のような化学物質を生成する。このような燃料電池と電気分解器の両方のモードとして動作するセルは、固体酸化物電気化学セル(SOEC)又は可逆固体酸化物セル(rSOC)又は単に固体酸化物セル(SOC)と呼ばれる。
【0041】
本発明によれば、燃料電池又は電気分解器スタックは、図1に一例を示すように、少なくとも2つの単一反復構造を有する。単一反復構造は、少なくとも2つのフローフィールドプレート間に配置された、燃料側、その間の電解質、及び酸素リッチ側を含む少なくとも1つの電気化学的に活性な電解質要素構造を含み、他方は電解質要素構造の酸素リッチ側に酸素リッチガスを分配し、他方は電解質要素の燃料側に燃料ガスを分配し、少なくとも1つのシーリング手段は、意図された筐体でガス雰囲気をシールする。フローフィールドプレートは、燃料ガス、温度制御流体及び/又は酸素リッチガスのための少なくとも1つの入口オリフィスと、燃料ガス、温度制御流体及び/又は酸素リッチガスのための少なくとも1つの出口オリフィスとを有する。酸素リッチ側は、入口又は出口オリフィスが存在しない、いわゆるオープンエア構造で達成され得る。
【0042】
システムは、好ましくは、固体酸化物セルのための反復、すなわち単一反復ユニット(SRU)構造を含む。図3には、反復スタック103構造の一例が示され、燃料108は燃料フローフィールドプレート構造107に流れ、酸化剤106は酸化剤フローフィールドプレート構造109に流れ、温度制御流体117は温度制御流体構造112に流れる。燃料フローフィールドプレート構造107、酸化剤フローフィールドプレート構造109、及びフローフィールドプレート121内の温度制御流体構造112は、並流、向流又はクロスフローのジオメトリ配置として、又は燃料108、酸化剤106及び温度制御流体117の流れのこれらの流れジオメトリのうちの2つ又は3つの組み合わせとして配置することができる。流れる方向の異なる組み合わせの様々な例が、例示的な図6に記載されている。並流配置(図6a)では、すべての流れは本質的に同じ方向を有する。向流配置(b,c,d)では、流れ方向は互いに本質的に180°異なっているが、クロスフロー配置(e,f,g,h,i,j)では、少なくとも1つの流れ方向が他の流れ方向と本質的に90°異なっている。
【0043】
図2は、SOCの例示的なフローフィールドプレート121を示す。完全な燃料電池スタックは、示された方法で互いに連続的に配置されたいくつかのプレート121を含む。この例示的な実施形態におけるプレートは、長方形であり、対称である。アノード電極とカソード電極との間に電解質層を含む電解質要素構造104が、プレート121の間のほぼプレートの中央に配置される。電解質要素構造104は、任意の適当な電解質要素構造であり得るので、本明細書ではこれ以上詳細には説明しない。フローフィールドプレート121及び電解質要素構造104は、シーリング手段114によってシールされる。シーリング手段114の目的は、酸化剤と燃料が電気化学的に活性な領域内の燃料電池反応なしに直接混合されないこと、燃料と酸化剤が電気化学セルから漏れないこと、隣接する電気化学セルが互いに電子的に接触しないこと、及び酸化剤と燃料が所望のフローフィールドプレート面121に供給されることを確実にすることである。2つの対向するフローフィールドプレート121及びその間の電解質要素構造104は、単一の反復構造を形成する。フローフィールドプレート121は、金属合金、セラミック材料、サーメット材料又は燃料電池に存在する化学的、熱的及び機械的ストレスに耐えることができる他の材料で作られた平面状の薄板である。本発明によれば、フローフィールドプレート121は、プレート121の縁(edges)に配置された流入及び流出オリフィスを含む。この例では、プレート121は長方形であり、フローオリフィスはわずかに短い縁に配置される。縁の両方は、酸素リッチガス(以下の例示的な実施形態では、空気)のための3つの流入及び流出オリフィス109と、燃料のための流入及び流出オリフィス107と、熱制御流体のための流入及び流出オリフィス112とを有する。酸素リッチガスは、出口で測定可能な量の酸素を含む任意のガス又はガス混合物であり得る。電解セル構成の場合には、酸素リッチガス側には供給がなくてもよく、又は、入口ガスは、窒素、ヘリウム又はアルゴンのような非酸素ガスであり得る。縁19の両方の上に、オリフィスを、第1の燃料107、次いで熱制御流体112を有する順序で配置することができる。フローフィールドプレートの縁の周りの第1の面(図2の上面)及び第2の面(表面の下、図示せず)の表面は、効率的なシールを可能にするように形成することができ、それらは、電解質要素104の表面上に燃料ガス108、空気106及び熱制御流体117を導くための特定の輪郭を有するフローフィールドプレートの中央に輪郭形成された表面(contoured surfaces)を制限する。図2のガス流路106,108及び117を示すシーリング手段114は、シーリング手段114に面している反対側のフローフィールドプレート121の表面及び輪郭形成された表面160を参照するためにも使用されることに留意されたい。
【0044】
燃料電池スタック上のガス流を配置するためのオリフィスの数は、ガス流がどのように配置されるかと同様に変化し得る。基本的な考え方は、重畳された(superposed)フローフィールドプレート121上のオリフィスは、それらの位置が一致し、同一ライン内のオリフィスがスタックを通るガスマニホルドチャネルを形成するように配置され得るということである。シーリング手段114は、電解質要素とフローフィールドプレートとの間の誤った層への燃料、空気及び熱制御流体の供給を防止するために使用される。シーリング手段は、フローフィールドプレート121上の各オリフィスを囲むように配置される。フローフィールドプレート121及びシール要素114は、燃料電池スタック全体を通るダクト(すなわちチャネル)を形成するために使用される。フローフィールドプレート内のオリフィスは、このようなダクトを形成するために重畳される。
【0045】
ガス供給に使用されるオリフィスの数は、燃料電池の設計によって異なる場合がある。最小数はガスのための1つの流入オリフィスと流出オリフィスである。より多くのオリフィスを使用すると、より多くの流れパターンが可能になるが、当然設計は複雑になる。一実施形態によれば、燃料流、空気流及び熱制御流体は、互いに横方向に配置することができる。これは、例えば、他の全てのフローフィールドプレートを90°回転させることによって行うことができる。上記の長方形形状は、製造及び組立工程を簡素化するために使用することができる。しかしながら、多角形、円形、楕円形等の任意の所望の幾何学形状を使用することができる。
【0046】
図3は、本発明によるSOC(固体酸化物セル)温度制御システムを示し、セルは、燃料側100、酸素リッチ側102、及び燃料側と酸素リッチ側の間の電解質要素104を含む。温度制御システムは、燃料のための燃料フローフィールドプレート構造107、酸化剤のための酸化剤フローフィールドプレート構造109、及び燃料と酸化剤のための電気接触構造110を含む。本発明によるシステムは、温度制御流体のためのフローフィールドプレート121内に温度制御流体構造112を含む。フローフィールドプレート121内の温度制御流体構造112は、燃料フローフィールドプレート構造107と酸化剤フローフィールドプレート構造109との間に別々に配置することができる。システムはまた、構造104、107、109、110、112内の漏れを防止するためのシーリング構造114を含む。シーリング構造114は、例えば、溶接、はんだ付け、金属ブレース、ガラス接合、及びガスケット材料を含む圧縮接合(compressed joints)を含むことができる。本発明による温度制御システムは、固体酸化物セル内の動作温度を制御するための手段116をさらに含むことができる。
【0047】
本発明によるシステムは、例えば800°Cより下の固体酸化物セル内の動作温度を制御するための手段116を含むことができる。一実施形態において、前記制御は、温度制御流体温度及び流量を最適化することによって実行することができる。手段116は、図4及び図5に示されるように、エンタルピーフロー量制御によって実行することができる。図4は、本発明による例示的な燃料電池(SOFC)システムを示し、図5は、本発明による例示的な電解セル(SOEC)システムを示す。
【0048】
システム内のすべてのエンタルピーストリームの合計は0である。1つのエンタルピーストリームだけが不明な場合は、他のものに基づいて計算できる。1つの実施形態では、エンタルピーストリームは、SOC(SOFC又はSOEC)ユニット制御における他の目的にすでに必要とされている測定値に基づいて計算できる。メタンCH4含有量を含むガス組成とその測定値は、SOFCシステムにおけるエンタルピーフローを計算及び制御するときに重要な役割を果たす。SOFCアノードリサイクルタイプのユニットにおける既知のエンタルピーフィード及び利用される測定は:A)空気フィードイン(air feed-in(供給))の温度、流量及び湿度測定などの空気フィードイン測定、B)流入する燃料132の流量及び温度測定のような燃料132及び始動ガス144フローイン測定(flow in measurements)、C)好ましくは排気温度測定情報並びに組成及び流量のプロセス計算の組み合わせである、排気フィードアウト情報(exhaust feed out information)。プロセス計算は、例えば、すべての燃料がバーナ142で燃焼されると仮定することによって、システムインフローから実行することができる。D)測定された電圧及び/又は電流に基づくことができる電力生産情報110、E)例えば、少なくとも1つの電気ヒータ128から測定された電力消費に基づくことができる、システム加熱情報、F)ガスライン132及び154のファン及び/又はコンプレッサ加熱情報、この情報は、例えば、メーカーから提供された効率情報及び/又は少なくとも1つのファン及び/又はコンプレッサで測定された電力消費に基づくことができる、G)例えば、この説明で後述するように、計算することができる、熱損失情報103、H)リサイクルループガス濃度情報、温度測定及び流量測定148、及びI)エンタルピーフロー制御流体116、150、152の流量及び温度。
【0049】
固体酸化物セル内の動作温度を制御するための手段116は、使用された燃料及び空気量を最小化することによって、セルシステムに供給されるエネルギーを最小化するように構成される。これは、温度制御流体への熱伝達が最大化されるSOC反応における面積当たりの出力密度を最大化することによって達成できる。これにより、温度制御流体材料の比熱容量は、液体流体、相変化材料、高い比熱容量を有するガス及び反応性ガス、例えば改質されたガスの少なくとも1つを使用することによって最大化される。比熱容量はまた、流体を電気化学的に活性な反応界面の近くに配置することによって、SOC要素から熱制御流体への熱伝達を最大化することによって増加させることができる。さらに、比熱容量を最大化するために、熱伝達面積を増加させることができ、構造の厚さを最大化することができ、流路のサイズを最大化することができ、流路の形態を最適化することができる。また、流れ特性は、例えば乱流を形成することによって、流れの高い熱容量特性を達成するように設計することができる。流れの形態は、例えば流路の特定の形態によって変更することができる。
【0050】
次に、燃料電池システムに燃料を供給し、反応物のアノード100側再循環流を行う、燃料電池システムのエンタルピーバランスを決定するための好ましい例示的な方法について説明する。エンタルピーフィードインフロー情報は、次の方法ステップ:空気フィードイン情報を形成するために空気フィードイン測定が行われる、水フローイン情報を形成するために水フローイン測定が行われる、排気フィードアウト情報を形成するために排気フィードアウトが測定される、電力生産情報を形成するために電力が測定される、燃料電池システムの加熱情報を形成するために温度条件が測定される、及び燃料電池システムの熱損失情報が形成される、のいずれか1つ又は複数を実行することによって得られる情報から形成される。前記測定は、高い精度を要求されることなく、一般的で比較的安価な測定装置を利用することによって、少なくとも主に実行することができる。エンタルピーフィードインフロー情報は、例えば、ファン、圧縮機などからガスラインに関する情報を得ることによって提供することができる。排気フィードアウト情報は、基本的にすべての燃料がアフターバーナーで燃焼されるという仮定に基づいて、燃料電池システムインフローから情報を計算することによって提供することができる。さらに、この方法では、少なくとも1つの電気ヒータの消費電力を測定して、燃料電池システムの加熱情報を形成することができる。
【0051】
形成されたエンタルピーフィードインフロー情報に基づいて、エンタルピーフローの情報を合計し、エンタルピーフローの合計情報の合計が0又は本質的に0に近いことを検出することによって、燃料電池システムのエンタルピーバランス情報を提供するエンタルピーフローの情報が達成される。燃料フィードのメタン含有量情報は、エンタルピーフローの情報を合計して得られたエンタルピーバランス情報に基づいて決定される。1つのエンタルピーフローの情報は、エンタルピーフローの合計情報に基づいて計算することによって決定することができる。
【0052】
図4に示す本発明による例示的な燃料電池システムでは、温度制御流体117(図1)が温度制御流体構造112に送られる。温度制御流体117の化学的性質は、次の章でより詳細に説明される。流体117は、温度、圧力及び流量を制御する手段116によって制御することができる。外部制御流体150は、手段116に搬送することができる。外部制御流体150は、熱制御流体117の目的の化学的性質及び温度を達成し、したがって燃料電池システムの目的の動作温度を達成するために必要な化学的性質及び温度を有する。また、必要に応じて、制御された所望の流出流体152を手段116から送ることができる。手段116は、温度制御流体117の温度を最適化し、それに加えて、手段116は、燃料電池システムの動作温度にも影響するので、流量も最適化することができる。流出ストリーム152は、熱を利用する任意の外部又は内部システムにさらに接続することができる。内部システムは、プロセスガスを加熱するための熱交換器のような温度制御ユニットを含み得る。外部システムは、地域暖房ネットワーク、電源サイクル又はヒートポンプサイクルのような熱力学サイクルを含むことができる。
【0053】
図4に、スタック103構造の電気負荷110を示す。燃料供給及び制御132は、燃料を燃料電池システムに供給する。起動制御144は、システムの起動動作を行う。燃料は燃料のリサイクル動作を行うためのリサイクル装置148に供給される。ガスのリサイクル機能は、メカニカルポンプ、圧縮機タイプのソリューション、又はエジェクタソリューションによって行うことができる。改質器146は、燃料を燃料電池システムの燃料側107(アノード側)に供給される適切な形に改質するために、燃料に対して改質反応を行う燃料を受け取る。改質反応は、典型的には、使用される入口流量、濃度、圧力、温度、及び触媒タイプによって規定される平衡状態にある。別の実施形態では、例えば、アンモニアNH4が燃料として使用される場合、反応は、改質反応ではなく、分解反応であるので、改質器は図4に例示的である。
【0054】
空気供給制御154は、酸素側109への温度制御128を介して燃料電池システムに酸素を供給する。出口流には、温度制御128を介して出口156に排出される排気ガスに対するアフターバーニング反応を行うバーナがある。
【0055】
説明した手段116及び関連する流体117,150,152だけでなく、手段116及び関連する流体117,150,152の助けを借りて、目標動作温度がより効果的に達成されるように、他の燃料システム圧力及び温度条件を制御することもできる。
【0056】
図5には、本発明による例示的な電気分解(SOEC)システムが示されており、このシステムでは、温度フロー及び関連する流体117,150、152は、図5に関連して説明したように同様に動作するが、温度は、電気分解システムの目標動作温度を達成するために、電気分解モード条件に基づいて制御される。電力ユニット140は、スタック103に電力を供給する。ガス(例えば、空気、酸素O2、二酸化炭素CO2、窒素N2)は、温度制御128を介してガス制御ユニット126から酸素側109に供給される。反応物(すなわち、水H2O、二酸化炭素CO2)供給制御132は、反応物クリーニングユニット134から水又は水と二酸化炭素の混合物を受け取り、蒸気発生器136に供給して水蒸気を発生させる。発生した水蒸気は、温度制御ユニット138を介して燃料側107に供給される。燃料側からは、温度制御ユニット138を介して蒸気循環が行われ、さらに、可能な圧力制御ユニット120を介して製品ガス出口122に送られる。製品ガスは、例えば、水素H2、アンモニア、メタン及び/又は一酸化炭素である。一実施形態では、水蒸気は、反応物供給制御ユニット132又は蒸気発生器136に再循環させることもできる。酸素側109から、酸素は、温度制御ユニット128を介して、可能な圧力制御ユニット120を介して酸素出口124に供給される。
【0057】
説明された手段116及び関連する流体117,150,152だけでなく、他の電解システムの圧力及び温度条件は、手段116及び関連する流体117,150,152の助けを借りて、目標動作温度がより効果的に達成されるように制御することができる。
【0058】
温度制御流体は、例えば塩溶液及び溶融金属を含む液体形態とすることができる。フッ化物(例えば、FLiNaK)、塩化物(例えば、MgCl2-KCl)、炭酸塩(例えば、60%Li2CO3及び40%K2CO3又はNa2CO3)及び硝酸塩(例えば、NaNO3-KNO3[40-60wt%]、LiNO3-NaNO3-KNO3[30-52-18wt%])化合物に基づく溶融塩及びウッドメタル及び鉛ビスマス共晶合金のような溶融金属は、350°Cを超える高温で使用できる熱伝達流体の例である。熱伝達流体は、アルゴン、ヘリウム、窒素のような不活性ガスであり得るガス状化合物である場合もある。熱伝達流体は、電気化学的に活性なセルだけでなく、未使用の化学エネルギーを熱に変換するアフターバーナー反応器も含む固体酸化物セルプロセスのための典型的な動作温度領域である周囲温度と900°Cの間の温度領域で化学的に反応し得る二元、三元、又はより多くの複合ガス混合物(complex gas mixtures)から構成されるガス状溶液の反応性化合物又は混合物である場合もある。このようなガス混合物は、二原子系、例えば、窒素原子(N)、水素原子(H)及びこれらの組み合わせ(窒素分子(N2)、水素分子(H2)アンモニア(NH3)の形態)、三原子系、炭素(C)、水素(H)及び酸素(O)原子、並びにこれらの組み合わせ(メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)及び水素(H2)の形態)を含むことができる。温度制御流体は、固相から溶融相又は液相へ、溶融相又は液相から気相へ、又は固相から気相への相変化を受ける相変化材料であってもよい。固液相変化材料は、形態安定剤として例えばMgOとの共晶K2CO3-Na2CO3塩のような安定化剤、硝酸カリウム及びAl-Si合金のようなカプセル化及びマイクロカプセル化材料を含む様々な塩溶液を含むことができる。温度制御流体はまた、臨界、超又は超超臨界状態にある相変化流体であってもよい。使用することができるそのような流体は、例えば、二酸化炭素、水、及び、アルカン、シクロアルカン、ベンゼン及びそれらの混合物などの炭化水素である。原則として、効果的な熱伝達流体は、プロセスの一方の側での冷却、熱エネルギーの輸送及び貯蔵、並びにプロセスの他方の側での加熱のための熱伝達に関与する気体、液体、固体又はそれらの組み合わせである。
【0059】
異なる熱伝達流体は、異なる熱プロセスと結合することができる。例えば、溶融塩、溶融金属及び相変化材料は、太陽からの放射熱を使用して溶融物質又は相変化材料を加熱する太陽光発電アプリケーションのために使用され、開発されている。このようなプロセスでは、固体酸化物電解装置は、温度制御流体とともに、集光型太陽光発電プラントであるエンタルピー制御ユニット116に結合することができ、電気化学プロセスは、水蒸気からの水素生成の100%を超える変換効率を可能にする吸熱反応ゾーンで行われる。このようなアプリケーションでは、熱伝達流体は、集光型太陽光によってエンタルピー制御ユニット116内で加熱され、燃料側107と酸素リッチ側109の流体ストリームのために、TCF112内の電気化学反応のための熱を放出する。エンタルピー制御ユニット116として動作する太陽光発電アプリケーションは、熱伝達流体を介して燃料電池と結合することもでき、この場合、TCF109内の溶融溶液又は相移動流体が、温度制御流体回路を備えていない典型的な固体酸化物燃料電池構成と比較して熱伝達を高めるので、燃料電池は高い出力密度で動作することができる。一例として、KNO3と空気の比熱容量は750Kで同一桁(~1kJ/kg.K)であるが、同一温度での密度差は溶融溶液(~1700kg/m3)の方が空気(0.5kg/m3)よりも約4桁大きい。したがって、塩溶液中の同一体積の物質で熱を伝達する能力も空気の場合よりも約4桁大きい。典型的な相変化材料(無水塩化カルシウムと塩化ナトリウムの混合塩化物塩)の潜熱は90kJ/kgの範囲であり、熱伝達を劇的に強化する。
【0060】
不活性ガス又は臨界流体が固体酸化物セルスタックと結びつけられ得るプロセスの例は、例えば、高温原子炉である。このような原子炉では、ヘリウム又は二酸化炭素が、熱交換器を介して間接的に、又はエンタルピー制御ユニット116内で、それぞれTCF112を介して電気化学デバイスのために加熱機能又は熱安定化機能のいずれかを導入する電解装置又は燃料電池プロセスに直接結合される熱伝達流体として使用され得る。このようなプロセスを液気相変化流体の助けを借りて行う場合、プロセスはランキンサイクルと呼ばれる。他の相変化流体サイクルは、例えば、カリーナサイクル、吸湿サイクル及び再生冷却である。加えて、冷却サイクルは、温度制御流体を介して固体酸化物セルスタック構造と、相変化流体の有無にかかわらず結び付けられ得る。
【0061】
熱平衡目的のために化学反応が使用され得るプロセスの例は、例えば、ハーバープロセスを含み得る。このループにおいて、エンタルピー制御ユニット116は、窒素と水素からアンモニアを生成するために使用される。このプロセスは、燃料電池反応が生成する熱を必要とする。TCF112では、アンモニアが窒素と水素に変換される。この反応は吸熱性であり、したがって熱を消費し、したがって燃料電池反応の熱平衡化を助ける。エンタルピーフローダイアグラムが変更されるとき、電気分解反応のための熱を生成し、それをアンモニアの分解反応に放散することができる。他の同様の化学反応ループ、例えば、メタンのための水蒸気改質-メタン化反応ループ、又は、一酸化炭素、二酸化炭素及び水のための水ガスシフト反応ループも利用することができる。熱伝達目的で化学反応を利用する利点は、これらの反応の高い反応エンタルピーに関連する。例えば、ハーバープロセス(-90kJ/mol)、水ガスシフト反応(-40kJ/mol)及びメタン化反応(-206kJ/mol)エンタルピーはすべて発熱性であり、したがって、電気化学プロセスのための熱を生成し、それらの逆吸熱反応によってTCF112における発熱性電気化学反応のバランスをとることができる。このような構成では、TCF112内の触媒活性物質が有利であると考えられる。このような触媒は、チャネル112の表面に堆積されたコーティングによって、又はガスチャネル112に挿入された別個の触媒粒子として、構造に適用され得る。
【0062】
本発明によるシステムは、金属相互接続構造上のフローフィールドプレート構造、例えば鋼構造から作られたフローフィールドプレート構造のための保護コーティング115を含むことができる。保護コーティングは、空気側108、燃料側107及び温度制御流体側117に適用することができる。コーティングは、好ましくは、燃料、酸化剤、温度制御流体並びに金属相互接続構造及び材料の少なくとも1つの特性に従って選択することができる。いくつかの実施形態では、保護コーティング115は触媒特性を有する。
【0063】
固体セル構造の空気側の保護コーティング115の最大の可能性は、スピネル(A,B)3O4の一般式を有するセラミック材料であり、ここで、A及びBは金属カチオンである。SOFC使用における現在の関心はMn2-xCo1+xO4ベースのスピネル(x=0...1)に集中しており、これらの材料は移動するCr種に対して良好なCrバリア特性と、保護コーティング構造なしで鋼構造上に形成するCr酸化物層と比較して、強化した電気伝導特性を持つより化学的に安定な(Mn,Co,Cr)3O4スピネルの形成を得る。Mn-Co-Oスピネルは、Mn1+xCo2-xO4系において化学量論係数xが0.3-0.9の間のとき、立方晶及び正方晶結晶構造を持つ。Mn2-xCo1+xO4スピネルは化学組成に関して、700...800°Cの温度範囲で電気伝導率が15から...68S/cmに変化する許容可能な電気特性を持つ。MnCo2-xFexO4を得ることにより少量の鉄ドーピングは電子伝導を増強する可能性が高い。CoカチオンはMnカチオンに比べて四面体サイトを占有する傾向が強く、FeカチオンはCo及びMnカチオンに比べて四面体サイトを占有する傾向が低いため、ドーピングはスピネル系における(Co2+、Mn2+、Fe3+)(Co2+、Co3+、Mn3+、Mn4+、Fe2+、Fe3+)2O4カチオン分布の形成を引き起こす。(A,B)3O4スピネル系における八面体サイトにおける混合原子価状態の存在により、MnCo1.9Fe0.1O4の活性化エネルギー(Ea)は0.38eVであり、すなわち0.44eVであるMnCo2O4のEaよりも低い。その結果、空気中で800°CでMnCo1.9Fe0.1O4の38...72S/cm及び800°CでMnCo1.8Fe0.15O4の85S/cmの電子伝導率を得ることができる。CuFe2O4,CuMn2O4のような他のいくつかのスピネルも高い電気伝導率を得ることに大きな関心を示した。スピネル材料は、コーティングと鋼の結合強度を増加させることによりコーティング構造をさらに安定化し、コーティング構造中のクロム移動度を減少させることが示されているCe,Yのような希土類金属をさらにドープすることができる。同じ材料は、活性燃料電極から金属構造への酸化物スケール成長とニッケルの拡散を防止するために、固体酸化物構造の燃料側を保護するためにも使用できる。
【0064】
接触コーティング115は、界面間の接触損失を減少させ、コーティングソリューション115の横方向導電性を増加させるために、活性電極100,102構造とセル構造プレート121の間に適用される。接触コーティング材料は、典型的には、活性電極材料と同じであり、すなわち、空気側では、コーティング材料は、典型的には、(La,Sr)MnO3-δ、(La,Sr)(Co,Fe)O3-δ、(La,Sr)CoO3-δのようなペロブスカイト構造(ABO3)である、又は、La(Ni,Fe)O3-δ、Sr(Ti,Fe)O3-δのような高い電気伝導率値、活性電極層に対する低い接触抵抗及び高い化学的安定性を有し、燃料側では、最も一般的に使用される接触材料は、NiOの形で蒸着されたニッケルであるが、チタン酸塩のような他の材料も目的のために使用することができる。電気伝導率は、効果的であるために、保護コーティング材料と比較して、使用された接触材料に対してより高い必要がある。例えば、(La,Sr)CoO3-δは、典型的な固体酸化物セル動作温度範囲で>1000S/cm、La(Ni,Fe)O3-δ約300S/cm及びNi>>1000S/cmの電気伝導率を有し、いずれも典型的に使用される保護コーティングスピネル材料より約一桁高い伝導率を有する。接触コーティング162の典型的な層厚は、数マイクロメートルから数十マイクロメートルである。接触コーティング115層のミクロ組織特性及び表面特性は、接触層115と活性電極100,102構造の1つとの間の接触点及び結合を最大化するために、活性電極表面構造に従って変化し得る。
【0065】
温度制御流体構造は、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化鉄、酸化クロム、酸化シリコン、酸化ニッケル及びそれらの化合物を含む標準工業用酸化物金属コーティングでコーティングされ得る。コーティングが酸化アルミニウム及びLi2CO3から作られる場合、これらは温度制御流体溶液と反応し、例えばLiAlO2を生じる。温度制御流体構造はまた、異なる化学プロセスに対して選択的であり得る触媒反応性化合物及び構造を含むことができる。コーティングは、例えば、スラリー法、物理的及び化学的堆積プロセス及び反応性サブプロセスの有無にかかわらず高温堆積プロセスを含む任意の適用方法によって金属相互接続表面に適用することができる。触媒活性構造の場合、触媒は、気体流体チャネル112内の別個の粒子の形態であることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6