(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】固定周波数量子ビットの共振周波数調整
(51)【国際特許分類】
H10N 60/01 20230101AFI20241217BHJP
H01P 7/08 20060101ALI20241217BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20241217BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20241217BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H10N60/01 F
H01P7/08
H01P11/00 300
B81B3/00
B81C1/00
(21)【出願番号】P 2021547513
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 IB2020051458
(87)【国際公開番号】W WO2020178657
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-07-25
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】ストフェルレ、ティロ、ヘルマン クルト
(72)【発明者】
【氏名】ジャネット、アンドレアス、フューラー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、ステファン
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0072504(US,A1)
【文献】特開2003-297926(JP,A)
【文献】特開2000-277691(JP,A)
【文献】特開2000-252533(JP,A)
【文献】特開2018-006771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/01
H01P 7/08
H01P 11/00
B81B 3/00
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
非線形共振器用の
複数のキャパシタ・パッドを形成するステップであって、前記
複数のキャパシタ・パッド
各々は
、ジョセフソン接合部と電気的に結合する第1の部分と
、前記第1の部分と空隙を隔てて配置される第2の部分と、
前記空隙に隣接して配置され、前記第1の部分と前記第2の部分とを電気的に結合するブリッジとを含む、形成するステップと、
前記非線形共振器の共振周波数を目標周波数と比較して、前記共振周波数が前記目標周波数の範囲内にあるかどうかを判定するステップと、
前記共振周波数が前記範囲内にないことに応答して、前記
複数のキャパシタ・パッド
のうちの少なくとも1つの前記ブリッジを除去し
て、前記空隙および前記ブリッジの除去部分により前記第1の部分および前記第2の部分を分離
し、前記ジョセフソン接合部と、前記ジョセフソン接合部との電気的な結合が維持される前記複数のキャパシタ・パッドの部分とを含む、変形された非線形共振器を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ブリッジが、前記
複数のキャパシタ・パッド
各々をマスキングおよびエッチングすることによって形成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
複数のキャパシタ・パッド
各々に複数のブリッジを形成するステップをさらに含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のブリッジが、前記
複数のキャパシタ・パッド
各々をマスキングおよびエッチングすることによって形成される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記共振周波数が前記範囲内にないことに応答して、前記
複数のキャパシタ・パッド
の少なくとも1つの第2の部分を除去するステップをさらに含む、
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ブリッジがレーザ・アブレーションによって除去される、
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ブリッジがイオン・ビーム・ミリングによって除去される、
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
非線形共振器デバイスであって、
第1の超伝導材料を含み、
ジョセフソン接合部である論理回路要素の第1の端部に結合するように構成された、第1のキャパシタ・パッドと、
第2の超伝導材料を含み、前記論理回路要素の第2の端部に結合するように構成され、
前記第2の端部に電気的に結合する第1の部分、
前記第1の部分と空隙を隔てて配置される第2の部分、および
前記空隙に隣接して配置され、前記第1の部分と前記第2の部分とを電気的に接続するように構成され、除去可能で
あるブリッジであって、除去されると、
前記空隙と併せて前記ブリッジの除去部分により前記第1の部分および前記第2の部分が分離するように構成された
前記ブリッジ
を含む、第2のキャパシタ・パッドと
を備
え、前記ジョセフソン接合部と、前記ジョセフソン接合部との電気的な結合が維持される前記第1のキャパシタ・パッドおよび前記第2のキャパシタ・パッドの部分とを含む、非線形共振器デバイス。
【請求項9】
前記ブリッジが、マスキングおよびエッチングによって除去可能であるように構成される、
請求項8に記載の非線形共振器デバイス。
【請求項10】
前記ブリッジが、レーザ・アブレーションによって除去可能であるように構成される、
請求項8に記載の非線形共振器デバイス。
【請求項11】
前記ブリッジが、イオン・ビーム・ミリングによって除去可能であるように構成される、
請求項8に記載の非線形共振器デバイス。
【請求項12】
前記第1のキャパシタ・パッドが、
第1の部分、
第2の部分、および
前記第1の部分と前記第2の部分とを電気的に接続するように構成されたブリッジ
をさらに含む、
請求項9に記載の非線形共振器デバイス。
【請求項13】
前記第1のキャパシタ・パッドおよび前記第2のキャパシタ・パッドが対称である、
請求項12に記載の非線形共振器デバイス。
【請求項14】
前記第1のキャパシタ・パッドおよび前記第2のキャパシタ・パッドが非対称である、
請求項12に記載の非線形共振器デバイス。
【請求項15】
前記第1のキャパシタ・パッドが、
複数の部分、および
前記複数の部分のうちの隣接部分を電気的に接続するように構成された複数のブリッジ
をさらに含む、
請求項8ないし14のいずれかに記載の非線形共振器デバイス。
【請求項16】
前記複数の部分が非対称である、
請求項15に記載の非線形共振器デバイス。
【請求項17】
リソグラフィ構成要素を備える超伝導体製造システムであって、超伝導デバイスを製造するように動作されると、請求項1ないし7のいずれかに記載の方法の前記ステップを実行する、
超伝導体製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、超伝導量子ビット共振器のための超伝導デバイス、製造方法、および製造システムに関する。より詳細には、本発明は、固定周波数量子ビットの共振周波数調整のためのデバイス、方法、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
以下、単語または語句の「Q」または「q」接頭辞は、使用される場合に明確に区別されない限り、量子計算の文脈におけるその単語または語句についての言及を示す。
【0003】
分子および亜原子粒子は、物理界が最も基本的なレベルでどのように機能するかを探究する物理学の一分野である量子力学の法則に従う。このレベルでは、粒子は、奇妙な振舞いを示し、同時に複数の状態をとり、非常に遠くにある他の粒子と相互作用する。量子計算は、これらの量子現象を利用して情報を処理する。
【0004】
今日使用しているコンピュータは、古典的なコンピュータ(本明細書では「従来の」コンピュータ、または従来のノードすなわち「CN:conventional nodes」とも呼ぶ)として知られている。従来型コンピュータは、フォン・ノイマン型アーキテクチャとして知られている、半導体材料および半導体技術、半導体メモリ、ならびに磁気または固体記憶デバイスを使用して製造された従来のプロセッサを使用する。詳細には、従来のコンピュータにおけるプロセッサは、2進プロセッサ、すなわち1および0で表される2進データに対して演算を実施するプロセッサである。
【0005】
量子プロセッサ(qプロセッサ)は、もつれた量子ビット・デバイス(本明細書では簡潔に、「量子ビット」と呼ぶ)の奇妙な性質を使用して、計算タスクを実行する。量子力学が機能する特定の領域において、物質の粒子は、「オン」状態、「オフ」状態、および「オン」状態と「オフ」状態との両方を同時にとる状態など、複数の状態で存在することができる。半導体プロセッサを使用する2進計算が、オン状態とオフ状態(2進コードにおける1と0に相当)のみを使用するように限定されるのに対して、量子プロセッサは、物質のこれらの量子状態を利用して、データ計算において使用可能な信号を出力する。
【0006】
従来のコンピュータは、情報をビットで符号化する。各ビットは、1または0の値をとることができる。これらの1および0は、最終的にコンピュータ機能を駆動するオン/オフ・スイッチとして機能する。一方、量子コンピュータは、量子物理学の2つの主要な原理、すなわち重ね合せおよびもつれに従って動作する量子ビットに基づく。重ね合せとは、各量子ビットが1と0との両方を同時に表すことができることを意味する。もつれとは、重ね合せ状態にある量子ビットを非古典的な方法で相互に関連付けることができることを意味し、すなわち、ある状態が(その状態が1または0であれ、その両方であれ)、別の状態に依存することができ、2個の量子ビットを個別に処理する場合よりも、もつれさせる場合の方が、2個の量子ビットに関して解明され得る情報が多いことを意味する。
【0007】
量子ビットは、これらの2つの原理を使用して、より高度な情報プロセッサとして動作し、これにより量子コンピュータは、従来のコンピュータの使用では解決困難である問題を解決できるように機能することが可能になる。IBM(R)は、量子プロセッサの構築、および量子プロセッサの運用性の実証に成功した(IBM(R)は、米国および他国におけるInternational Business Machines corporationの登録商標である)。
【0008】
超伝導量子ビットは、ジョセフソン接合を含むことがある。ジョセフソン接合は、2つの薄膜超伝導金属層を非超伝導材料によって分離することによって形成される。超伝導層の金属を、たとえばその金属の温度を指定された極低温まで下げることによって超伝導性にすると、電子対は、一方の超伝導層から非超伝導層を通って他方の超伝導層まで通り抜けることができる。超伝導量子ビットでは、インダクタンスを有するジョセフソン接合が1つまたは複数の容量デバイスと並列に電気的に結合されて、非線形共振器を形成する。
【0009】
超伝導状態では、第1に、材料は、電流の通過に対する抵抗がなくなる。抵抗がゼロになると、電流は、エネルギーを全く消費することなく材料内を循環することができる。第2に、材料はマイスナー効果を見せる、すなわち、外部磁場が十分に弱い場合、外部磁場は超伝導体に侵入せず、その表面に留まる。これらの性質の一方または両方が材料にもはや見られなくなった場合、材料はもはや超伝導性ではないと考えられる。
【0010】
超伝導材料の臨界温度は、材料が超伝導の特性を見せ始める温度である。超伝導材料は、電流の流れに対する抵抗が非常に低くなるか、またはゼロになる。臨界磁場は、所与の温度に対する最大磁場であり、最大磁場未満では、材料は超伝導性のままである。
【0011】
超伝導体は、一般に、2つの種類のうちのいずれかに分類される。第1種超伝導体は、臨界磁場において単一の転移を見せる。第1種超伝導体は、臨界磁場に達すると、非超伝導状態から超伝導状態に転移する。第2種超伝導体は、2つの臨界磁場および2つの転移を含む。第2種超伝導体は、下部臨界磁場以下では、超伝導状態を見せる。第2種超伝導体は、上部臨界磁場より上では、超伝導の性質を見せない。第2種超伝導体は、上部臨界磁場と下部臨界磁場との間では、混合状態を見せる。混合状態では、第2種超伝導体は、マイスナー効果が不完全となる、すなわち、超伝導体材料を介して、特定の場所で量子化されたパケットに外部磁場が侵入する。
【0012】
マイスナー効果は、超伝導体材料の表面に永久電流が生成されることによって生じる。永久電流は、外部電源を必要としない永続的な電流である。永久電流は、超伝導材料の大部分全体にわたって外部磁場を打ち消すように逆向きの磁場を生成する。超伝導状態では、ゼロ抵抗の性質により、永久電流は時間が経っても減衰しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
量子ビットによって処理された情報は、マイクロ波周波数範囲でマイクロ波エネルギーの形態で放射される。マイクロ波放射は、そこに符号化されている量子情報を解読するために、捕捉、処理、および分析される。量子ビットの量子計算が信頼できるものであるためには、量子回路、たとえば、量子ビット自体、量子ビットに関連付けられた読出し回路、および他のタイプの超伝導量子論理回路は、粒子またはマイクロ波放射のエネルギー状態をなんら著しく変化させてはならない。量子情報を使用して動作する任意の回路に対するこの動作上の制約は、このような回路で使用される半導体構造物または超伝導体構造物あるいはその両方を製造する際に特別な考慮を必要とする。
【0014】
読出し回路は一般に、共振器を使用した電磁共振(通常は、マイクロ波または高周波共振)によって量子ビットと結合される。読出し回路における共振器は、誘導要素および容量要素を備える。一部の量子ビットは、固定周波数量子ビットであり、すなわちそれらの共振周波数を変更することはできない。他の量子ビットは、周波数可変の量子ビットである。qプロセッサは、固定周波数量子ビット、周波数可変量子ビット、またはそれらの組合せを使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、固定周波数量子ビットを周波数が固定されるように設計することで、ノイズに対する耐性が向上すると認識されている。本発明では、チップ上の隣接する2個の量子ビットの共振周波数が同じであるか、周波数帯域の閾値内にあるとき、またはそれらのより高い遷移周波数が共振上にあるまたは共振に近いとき、クロストーク、量子デコヒーレンス、エネルギー減衰、混合状態の生成、意図しない情報転送、量子状態の漏洩などの悪影響が発生し得ると認識されている。本発明ではさらに、このような量子ビットが、ゲートが動作している量子ビットの共振周波数のスペクトルに対して厳しい要件を有する交差共振ゲートなどの特定の量子ゲートの性能または有用性にも悪影響を及ぼし得ると認識されている。本発明ではさらに、固定周波数量子ビットに基づく量子プロセッサにおける課題の1つが、周波数混雑または隣接する量子ビット間の周波数衝突であると認識されている。
【0016】
本発明では、固定周波数量子ビットに基づく量子プロセッサにおける別の課題が、マイクロ波信号が相互作用をオンにするとき(相互作用強度がオンのとき)の隣接する量子ビット間の相互作用と、これらの信号が無効であるとき(相互作用強度がオフのとき)の隣接する量子ビット間の相互作用との間のオン/オフ比が低いことであると認識されている。例示的な実施形態ではさらに、固定周波数量子ビットに基づく量子プロセッサにおける課題のもう1つが、対象となるゲートを、他のゲートで望ましくない相互作用を生成することなく有効にすることであると認識されている。本発明ではさらに、固定周波数量子ビットの製造における欠陥、および固定周波数量子ビット用に現在利用可能な製造方法で使用される材料における欠陥が、意図した共振周波数からの逸脱につながると認識されている。
【0017】
図1は、外部回路への容量結合を伴う量子ビットの縮尺画像を示す。画像100は、量子ビット・チップの一部分を示す。結合キャパシタ102は、ジョセフソン接合部104から電磁信号を送り出す伝送路(非表示)と結合する。キャパシタ・パッド106は、ジョセフソン接合部104を駆動するとともに非線形共振器を形成する容量デバイスである。接地面(非表示)は典型的には、この構造の全部または一部分を包囲する。
【0018】
本発明では、量子ビットが製造されるとき、すなわちジョセフソン接合および量子ビット発振器の容量要素がqプロセッサ・チップ上に製造されるときに量子ビットの共振周波数が本質的に固定されると認識されている。本発明ではさらに、qプロセッサの最も単純な実装では、量子論理ゲートを実装するために少なくとも2個の量子ビットが必要であると認識されている。したがって、qプロセッサ・チップは典型的には、単一のqプロセッサ・チップ上に少なくとも2個、しかし多くの場合8個、16個、またはそれ以上の量子ビットを有するように製造される。
【0019】
本発明は、超伝導デバイス、ならびにその製造方法および製造システムを提供する。本発明の方法は、非線形共振器用のキャパシタ・パッドを形成することを含む。本発明の一実施形態では、この方法は、非線形共振器の共振周波数を目標周波数と比較して、共振周波数が目標周波数の範囲内にあるかどうかを判定することを含む。
【0020】
本発明の一実施形態では、この方法は、共振周波数が範囲内にないことに応答して、キャパシタ・パッドの一部分を除去することを含む。本発明の一実施形態では、この方法は、第2のキャパシタ・パッドのセグメントを除去してブリッジを形成することであって、ブリッジが、第2のキャパシタ・パッドの第1の部分と第2のキャパシタ・パッドの第2の部分とを電気的に結合する、除去して形成することを含む。
【0021】
部分は、ブリッジを含んでもよい。セグメントは、第2のキャパシタ・パッドをマスキングおよびエッチングすることによって除去されてもよい。この方法は、第2のキャパシタ・パッドの複数のセグメントを除去して、複数のブリッジを形成することを含んでもよい。
【0022】
部分は、複数のブリッジを含んでもよい。複数のセグメントは、第2のキャパシタ・パッドをマスキングおよびエッチングすることによって除去されてもよい。この方法は、共振周波数が許容範囲内にないことに応答して、第2のキャパシタ・パッドの第2の部分を除去することを含んでもよい。部分は、レーザ・アブレーションによって、またはイオン・ビーム・ミリングによって除去されてもよい。
【0023】
本発明のデバイスは、超伝導材料を含み、論理回路要素の第1の端部に結合するように構成された第1のキャパシタ・パッドを含む。このデバイスは、第2の超伝導材料を含み、論理回路要素の第2の端部に結合するように構成された第2のキャパシタ・パッドを含んでもよい。第2のキャパシタ・パッドは、第1の部分、第2の部分、および第1の部分と第2の部分とを電気的に接続するように構成されたブリッジを含んでもよい。
【0024】
ブリッジは、マスキングおよびエッチングによって除去可能であるように構成されてもよい。ブリッジは、レーザ・アブレーションによって、またはイオン・ビーム・ミリングによって除去可能であるように構成されてもよい。
【0025】
第1のキャパシタ・パッドは、第1の部分、第2の部分、および第1の部分と第2の部分とを電気的に接続するように構成されたブリッジをさらに含んでもよい。第1のキャパシタ・パッドおよび第2のキャパシタ・パッドは、対称または非対称とすることができる。第1のキャパシタ・パッドは、複数の部分、および複数の部分のうちの隣接部分を電気的に接続するように構成された複数のブリッジをさらに含んでもよい。複数の部分は、非対称とすることができる。
【0026】
本発明の一実施形態では、超伝導体製造システムは、リソグラフィ構成要素を含み、この超伝導体製造システムは、超伝導デバイスを製造するように動作されると、非線形共振器用のキャパシタ・パッドを形成することと、非線形共振器の共振周波数を目標周波数と比較して、共振周波数が目標周波数の範囲内にあるかどうかを判定することと、共振周波数が範囲内にないことに応答して、キャパシタ・パッドの一部分を除去することとを含む動作を実行する。
【0027】
本発明の一実施形態は、超伝導デバイスを製造するための製造方法を含む。
【0028】
本発明の一実施形態は、超伝導デバイスを製造するための製造システムを含む。
【0029】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面と合わせて読むことによって、本発明自体、ならびにその使用の好ましい態様、さらにはその目的および利点が最もよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】外部回路への容量結合を伴う量子ビットの縮尺画像である。
【
図2】本発明の一実施形態による、固定周波数共振器の製造プロセスのステップを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、固定周波数共振器を製造するための第2の製造プロセスのステップを示す図である。
【
図4】第2の製造プロセスのステップを示す図である。
【
図5】第2の製造プロセスのステップを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による、固定周波数共振器の構成を示す図である。
【
図7】固定周波数共振器の共振周波数を判定するためのシミュレーションの結果を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態による、固定周波数共振器を製造するための製造プロセスの流れ図である。
【
図9】本発明の一実施形態による、固定周波数共振器を製造するための第2の例示的な製造プロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を説明するために使用される本発明の実施形態は、概して、固定周波数量子ビットの超伝導量子ビット共振器における上記の問題に対処し、解決する。本発明の実施形態は、固定周波数量子ビットの共振周波数調整のための製造方法を提供する。
【0032】
本発明の一実施形態は、超伝導量子ビット共振器として実施され得る。超伝導量子ビット共振器の製造方法は、ソフトウェア・アプリケーションとして実施され得る。アプリケーションは、リソグラフィ・システムなどの既存の半導体/超伝導体製造システムと連携して動作するように構成され得る。
【0033】
説明を明確にするために、本発明の実施形態について、図中の例示的な超伝導量子ビット共振器の簡略図を使用して説明しているが、これに限定することを暗示するものでは全くない。超伝導量子ビット共振器の実際の製造において、本明細書に図示も記載もされていない追加の構造、または本明細書に図示および記載されている構造とは異なる構造が、本発明の範囲を逸脱することなく存在することがある。同様に、例示的な超伝導量子ビット共振器における図示または記載されている構造は、本発明の範囲内で、本明細書に記載のものと同様の動作または結果をもたらすように、異なる方法で製造されてもよい。
【0034】
本明細書に記載のように、例示的な構造、層、および構成の2次元図面中の異なる陰影部分は、例示的な製造における異なる構造、層、材料、および構成を表すことを意図している。異なる構造、層、材料、および構成は、当業者に知られている適切な材料を使用して製造されてもよい。
【0035】
本明細書に示される形状の特定の形状、場所、位置、または寸法は、そのような特性が本発明の特徴として明示的に記載されていない限り、本発明を限定することを意図するものではない。形状、場所、位置、寸法、またはそれらのうちのいくつかの組合せは、図面および説明を明確にするために選択されているにすぎず、目的を達成するために実際のフォトリソグラフィで使用され得る実際の形状、場所、位置、または寸法と比較して、誇張、最適化、または別の方法で変更されていることがある。
【0036】
本発明の一実施形態は、アプリケーションにおいて実施されると、製造プロセスに、本明細書に記載のような特定のステップを実行させる。製造プロセスのステップは、いくつかの図に示されている。特定の製造プロセスにおいて、すべてのステップが必要となり得るわけではない。いくつかの製造プロセスは、本発明の範囲を逸脱することなく、ステップを異なる順序で実施するか、特定のステップを組み合わせるか、特定のステップを除去もしくは置換するか、またはこれらのステップおよびステップの他の操作のいくつかの組合せを実行してもよい。
【0037】
本発明の実施形態は、特定のタイプの材料、電気的性質、構造、構成、層の配向、方向、ステップ、動作、平面、寸法、数、データ処理システム、環境、構成要素、および用途に関して、単なる例として説明されている。これらおよび他の同様の人工物のいかなる具体的な明示も、本発明に限定することを意図するものではない。これらおよび他の同様の人工物のいかなる適切な明示も、本発明の範囲内で選択され得る。
【0038】
本発明の実施形態は、特定の設計、アーキテクチャ、レイアウト、図表、およびツールを単なる例として使用して説明されており、本発明に限定するものではない。本発明の実施形態は、他の同等のまたは同様の目的の設計、アーキテクチャ、レイアウト、図表、およびツールと組み合わせて使用されてもよい。
【0039】
本開示における例は、説明を明確にするために使用されているにすぎず、本発明に限定するものではない。本明細書に列挙されているいずれの利点も単なる例であり、本発明に限定することを意図するものではない。本発明の特定の実施形態によって、追加の利点または異なる利点が実現される場合がある。さらに、本発明の特定の一実施形態には、上記に列挙された利点の一部があるか、全部があるか、またはいずれもない場合がある。
【0040】
量子ビットは、本発明の一実施形態が使用され得る例示的な超伝導量子論理回路としてのみ使用される。当業者であれば、本開示から、本発明の共振周波数調整が使用可能である他の多くの超伝導量子論理回路および従来の論理回路を構想することができ、それらもまた本発明の範囲内であると考えられる。
【0041】
図2は、固定周波数共振器を製造するための製造プロセスのステップを示す。
図2~
図5は、固定周波数共振器を製造するための第2の製造プロセスの様々なステップを示す。2つの例示的なプロセスによって形成される固定周波数共振器は、以下に説明するように構造的に異なるが、
図1のキャパシタ・パッド106の代わりに相互に交換可能に使用可能とするために、機能的には等価である。
【0042】
図2を参照すると、キャパシタ・パッド204A、204Bは、本明細書に記載の方法で製造された、たとえば
図1のキャパシタ・パッド106の代わりに使用可能な容量デバイスを表す。
【0043】
キャパシタ・パッド204A、204Bは、ジョセフソン接合部202を駆動し、非線形共振器を形成する。キャパシタ・パッド204A、204Bは、70~0.01Kの間(範囲の両端を含む)の極低温温度範囲の一部分において超伝導性を示す材料を含み得る。キャパシタ・パッド204A、204Bの超伝導材料は、ニオブとすることができる。製造システムは、超伝導材料を基板上にスパッタリングして、キャパシタ・パッド204A、204Bを形成することができる。キャパシタ・パッド204A、204Bは、長さLを有することができる。
【0044】
キャパシタ・パッド204A、204Bはそれぞれ、対応する容量値を有してもよい。容量値は、対応するキャパシタ・パッドの面積に正比例する。固定周波数共振器は、全容量Cを伴う集中素子LC回路としてモデル化され得る。キャパシタ・パッド204A、204Bの各容量値は、全容量Cに寄与する。固定周波数共振器の共振周波数は、式
【数1】
によって、固定周波数共振器の共振周波数fに比例する。
【0045】
ステップ200において、本発明の一実施形態は、製造システムにキャパシタ・パッド204A、204Bの一部分を除去させ、それにより、第1の部分206A、206B、および第2の部分208A、208Bを形成する。たとえば、本発明の一実施形態は、製造システムに、レーザ・アブレーションまたはイオン・ビーム・ミリングを使用してキャパシタ・パッド材料を除去させることができる。第1の部分206A、206Bは、ジョセフソン接合部202との電気的接続を維持し、変形した非線形共振器を形成する。本発明の一実施形態は、製造システムに、容量デバイスから第2の部分208A、208Bを除去させ、それにより、全容量を減少させ、固定周波数共振器の共振周波数を増加させる。
【0046】
両方のキャパシタ・パッドからキャパシタ・パッド材料を除去する必要がない場合がある。2つのパッドのうちの一方のみの面積の減少、たとえば、パッド204Bからではなく204Aからの減少は、全容量C、したがって共振周波数fを変化させるのに効果的である。両方のパッドからの除去は、描写を明確にするために描写および説明されているにすぎず、本発明を限定するものとしてではない。本明細書に記載の効果をもたらすために、パッドの一方からは除去しないことを含む、キャパシタ・パッドからの非対称的な除去も、本発明の範囲内で企図される。
【0047】
引き続き
図2を参照すると、第1の部分206Aおよび206Bは、対称である。たとえば、第1の部分206Aおよび206Bのサイズは、0~5パーセントの間(範囲の両端を含む)でほぼ等しくなり得る。本発明の別の実施形態では、第1の部分206Aおよび206Bは、非対称である。たとえば、第1の部分206Aおよび206Bのサイズは、5パーセントを超えて最大で40パーセントと同程度まで異なり得る。
【0048】
第2の部分208Aおよび208Bは、対称である。たとえば、第2の部分208Aおよび208Bのサイズは、0~5パーセントの間(範囲の両端を含む)でほぼ等しくなり得る。本発明の別の実施形態では、第2の部分208Aおよび208Bは、非対称である。たとえば、第2の部分208Aおよび206Bのサイズは、5パーセントを超えて最大で約200パーセントと同程度まで異なり得る。別のステップでは、本発明の一実施形態は、製造システムにキャパシタ・パッド204Aの一部分のみを除去させ、それにより、第1の部分206Aおよび第2の部分208Aを形成する。
【0049】
本発明の一実施形態では、製造システムは、長さLのキャパシタ・パッド204A、204Bから、長さΔLのキャパシタ・パッド材料を除去する。本発明の別の実施形態では、ΔLは、切断部(cut)の長さを含む。たとえば、製造システムは、1~5マイクロメートルの間(範囲の両端を含む)の長さのキャパシタ・パッド材料を除去することができる。一実施形態では、ΔLは、切断部の長さ、および対応する第2の部分の長さを含む。
【0050】
本発明の別の実施形態では、製造システムは、固定周波数共振器の第1の端部にあるキャパシタ・パッド204Aの一部分と、固定周波数共振器の対向する端部にあるキャパシタ・パッド204Bの一部分とを除去する。本発明の別の実施形態では、製造システムは、キャパシタ・パッド204Aの長さLに対して斜めの角度でキャパシタ・パッド204Aの一部分を除去する。ステップ300を繰り返して、キャパシタ・パッド材料をさらに除去し、固定周波数共振器にとって所望の共振周波数に到達することができる。
【0051】
図3を参照すると、キャパシタ・パッド304A、304Bは、本明細書に記載の方法で製造された、たとえば
図1のキャパシタ・パッド106の代わりに使用可能な容量デバイスを表す。
【0052】
キャパシタ・パッド304A、304Bは、ジョセフソン接合部302を駆動し、非線形共振器を形成する。キャパシタ・パッド304A、304Bは、極低温温度範囲の一部分において超伝導性を示す材料を含み得る。たとえば、超伝導材料は、ニオブとすることができる。
【0053】
ステップ300において、本発明の一実施形態は、製造システムにキャパシタ・パッド304A、304Bのセグメントを除去させ、それにより、第1の部分306A、306B、第2の部分308A、308B、およびブリッジ310A、310Bを形成する。たとえば、一実施形態は、製造システムにキャパシタ・パッドをマスキングおよびエッチングさせて、対応するキャパシタ・パッドのセグメントを除去することができる。ステップ300において、本発明の一実施形態は、製造システムに、第1の部分306A、360Bと第2の部分308A、308Bとの間に対応する空隙を形成させる。
【0054】
ブリッジ310A、310Bは、第2の部分308A、308Bを第1の部分306A、306Bと電気的に接続する。たとえば、第2の部分308A、308Bおよびブリッジ310A、310Bは、対応するキャパシタ・パッドの容量値に寄与する。第1の部分306A、306B、第2の部分308A、308B、およびブリッジ310A、310Bは、ジョセフソン接合部302との電気的な接続を維持し、変形した非線形共振器を形成する。
【0055】
本発明の一実施形態では、第1の部分306Aおよび306Bは、対称である。たとえば、第1の部分306Aおよび306Bのサイズは、0~5パーセントの間(範囲の両端を含む)でほぼ等しくなり得る。本発明の別の実施形態では、第1の部分306Aおよび306Bは、非対称である。たとえば、第1の部分306Aおよび306Bのサイズは、5パーセントを超えて最大で40パーセントと同程度まで異なり得る。
【0056】
本発明の一実施形態では、第2の部分308Aおよび308Bは、対称である。たとえば、第2の部分308Aおよび308Bのサイズは、0~5パーセントの間(範囲の両端を含む)でほぼ等しくなり得る。本発明の別の実施形態では、第2の部分308Aおよび308Bは、非対称である。たとえば、第2の部分308Aおよび308Bのサイズは、5パーセントを超えて最大で約200パーセントと同程度まで異なり得る。別のステップでは、本発明の一実施形態は、製造システムにキャパシタ・パッド304Aの一部分のみを除去させ、それにより、第1の部分306Aおよび第2の部分308Aを形成する。
【0057】
本発明の一実施形態では、製造システムは、キャパシタ・パッド304A、304Bから、ある長さのキャパシタ・パッド材料を除去する。本発明の別の実施形態では、除去された材料は、ある長さの切断部を含む。たとえば、製造システムは、1~5マイクロメートルの間(範囲の両端を含む)の長さのキャパシタ・パッド材料を除去することができる。一実施形態では、除去された材料は、ある長さの切断部、およびある長さの対応する第2の部分を含む。
【0058】
本発明の別の実施形態では、製造システムは、固定周波数共振器の第1の端部にあるキャパシタ・パッド304Aの一部分、および固定周波数共振器の対向する端部にあるキャパシタ・パッド304Bの一部分を除去する。別の実施形態では、製造システムは、キャパシタ・パッド304Aの長さに対して斜めの角度でキャパシタ・パッド304Aの一部分を除去する。
【0059】
図4を参照すると、この図は、第2の製造プロセスにおけるステップを示す。キャパシタ・パッド404A、404Bは、本明細書に記載の方法で製造された、たとえば
図1のキャパシタ・パッド106の代わりに使用可能な容量デバイスを表す。
【0060】
キャパシタ・パッド404A、404Bはジョセフソン接合部402を駆動し、非線形共振器を形成する。一実施形態では、キャパシタ・パッド404A、404Bは、極低温温度範囲の一部分において超伝導性を示す材料を含む。たとえば、キャパシタ・パッド404A、404Bの超伝導材料は、ニオブとすることができる。
【0061】
ステップ400において、本発明の一実施形態は、製造システムに、キャパシタ・パッド404A、404Bの複数のセグメントを除去させ、それにより、第1の部分406A、406B、第2の部分410、第3の部分414、第4の部分418、第5の部分422、第6の部分426、およびブリッジ408、412、416、420、424を形成する。たとえば、本発明の一実施形態は、製造システムに、キャパシタ・パッドをマスキングおよびエッチングさせて、対応するキャパシタ・パッドの複数のセグメントを除去することができる。ステップ400において、本発明の一実施形態は、製造システムに、第1の部分406Aと部分410、414、418との間に対応する空隙を形成させ、第1の部分406Bと部分422、426との間に対応する空隙を形成させる。
【0062】
ブリッジ408、412、416は、部分410、414、418を第1の部分406Aと電気的に接続する。たとえば、部分410、414、418およびブリッジ408、412、416は、対応するキャパシタ・パッドの容量値に寄与する。ブリッジ420、424は、部分422、426を第1の部分406Bと電気的に接続する。たとえば、部分422、426およびブリッジ420、424は、対応するキャパシタ・パッドの容量値に寄与する。部分406A、406B、410、414、418、422、426、およびブリッジ408、412、416、420、424は、ジョセフソン接合部402との電気的な接続を維持し、変形した非線形共振器を形成する。
【0063】
本発明の一実施形態では、第1の部分406Aおよび406Bは、対称である。たとえば、第1の部分406Aおよび406Bのサイズは、0~5パーセントの間(範囲の両端を含む)でほぼ等しくなり得る。本発明の別の実施形態では、第1の部分406Aおよび406Bは、非対称である。たとえば、第1の部分406Aおよび406Bのサイズは、5パーセントを超えて最大で40パーセントまで異なり得る。
【0064】
本発明の一実施形態では、部分410、414、418、422、426のうちの少なくとも2つは、対称である。たとえば、部分410、414、418、422のうちの少なくとも2つのサイズは、0~5パーセントの間(範囲の両端を含む)でほぼ等しくなり得る。別の実施形態では、部分410、414、418、422、426のうちの少なくとも2つは、非対称である。たとえば、部分410、414、418、422、426のうちの少なくとも2つのサイズは、5パーセントを超えて最大で約200パーセントと同程度まで異なり得る。
【0065】
キャパシタ・パッド材料、堆積方法、および材料除去方法のこれらの例は、限定することを意図したものではない。当業者であれば、本開示から、キャパシタ・パッドの部分を形成および除去するのに適した他の多くの材料および方法を考案することができ、それらもまた本発明の範囲内であると考えられる。
【0066】
図5を参照すると、この図は、第2の例示的な製造プロセスのステップを示す。
図3の変形した固定周波数共振器において、製造を継続する。
【0067】
ステップ500において、本発明の一実施形態は、製造システムにブリッジ506A、506Bを除去させ、それにより、第1の部分504A、504B、および第2の部分508A、508Bを分離する。たとえば、一実施形態は、製造システムに、レーザ・アブレーションまたはイオン・ビーム・ミリングを使用してキャパシタ・パッド材料を除去させることができる。第1の部分504A、504Bは、ジョセフソン接合部502との電気的な接続を維持し、さらに変形した非線形共振器を形成する。本発明の一実施形態は、製造システムに、容量デバイスから第2の部分508A、508Bおよびブリッジ506A、506Bを除去させ、それにより、全容量を減少させ、固定周波数共振器の共振周波数を増加させる。ステップ500を繰り返して、キャパシタ・パッド材料をさらに除去し、固定周波数共振器にとって所望の共振周波数に到達することができる。たとえば、製造システムは、
図4の変形した非線形共振器においてのように、ブリッジをさらに除去することができる。
【0068】
図6を参照すると、構成600は、
図3の変形した非線形共振器と同様の固定周波数共振器の一例である。
【0069】
構成600は、ジョセフソン接合部602、第1の部分606A、606B、第2の部分608A、608B、およびブリッジ610を備える。ブリッジ612、614、616は、
図3のステップ300で形成されたブリッジの例である。
【0070】
図7を参照すると、この図は、固定周波数共振器の一例の共振周波数を判定するためのシミュレーションの結果を示す。固定周波数共振器は、
図4に示す複数のブリッジを有する変形した非線形共振器に基づいていており、この固定周波数共振器の共振周波数の結果は、
図6に示されている。具体的には、非限定的な例示的な実装形態では、元のキャパシタ・パッドのサイズは、長さ500マイクロメートル、幅120マイクロメートルであり、2つの第1のセグメントは、長さ35マイクロメートルであり、2つの第2のセグメントは、長さ40マイクロメートルであり、それぞれセグメントとキャパシタ・パッドの中央部分との間の空隙は、長さ5マイクロメートルであり、空隙を隔ててそれぞれのセグメントをキャパシタ・パッドの中央部分と接続するブリッジはそれぞれ、長さ5マイクロメートル、幅5マイクロメートルであった。各ブリッジの除去プロセスによって、それぞれのセグメントを、キャパシタ・パッドの中央部分から分離させた。
【0071】
データ点704は、ブリッジが除去されていない変形した非線形共振器の共振周波数に対応する。データ点706は、1つのブリッジが除去された変形した非線形共振器の共振周波数に対応する。データ点708は、2つのブリッジが除去された変形した非線形共振器の共振周波数に対応する。データ点710は、3つのブリッジが除去された変形した非線形共振器の共振周波数に対応する。データ点712は、4つのブリッジが除去された変形した非線形共振器の共振周波数に対応する。見て取れるように、変形した非線形共振器の共振周波数は、各ブリッジの除去とともに増加する。
【0072】
図8を参照すると、この図は、固定周波数共振器を製造するための製造プロセスの流れ図を示す。プロセス800は、リソグラフィ・システムなどの既存の半導体/超伝導体製造システムと連携して動作するように構成され得る。
【0073】
本発明の一実施形態では、製造システムは、キャパシタ・パッドを形成する(ブロック802)。本発明の一実施形態では、周波数共振器は、キャパシタ・パッドを備える。本発明の一実施形態では、製造システムは、周波数共振器(量子ビット)の共振周波数を目標周波数と比較する(ブロック804)。本発明の一実施形態では、製造システムは、共振周波数が目標周波数の許容範囲内にあると判定する(ブロック806)。たとえば、製造システムは、共振周波数が目標周波数の0.5パーセントの誤差内(within half of one percent)にあると判定することができる。本発明の一実施形態では、製造システムは、共振周波数が目標周波数の許容範囲外にあると判定する。たとえば、製造システムは、共振周波数が目標周波数と比べて0.5パーセントを超えて異なると判定することができる。製造システムが、共振周波数が許容範囲外にあると判定した場合(ブロック806の「いいえ」の経路)、製造システムは、キャパシタ・パッドの一部分を除去する(ブロック808)。次いで、プロセス800は、ブロック804に戻って継続する。製造システムが、共振周波数が許容範囲内にあると判定した場合(ブロック806の「はい」の経路)、プロセス800は終了する。
【0074】
図9を参照すると、この図は、固定周波数共振器を製造するための第2の例示的な一製造プロセスの流れ図を示す。プロセス900は、リソグラフィ・システムなどの既存の半導体/超伝導体製造システムと連携して動作するように構成され得る。
【0075】
本発明の一実施形態では、製造システムは、キャパシタ・パッドを形成する(ブロック902)。本発明の一実施形態では、周波数共振器は、キャパシタ・パッドを備える。本発明の一実施形態では、製造システムは、キャパシタ・パッドのセグメントを除去して、ブリッジを形成する(ブロック904)。たとえば、製造システムは、キャパシタ・パッドのセグメントを除去して、間に空隙を有する第1の部分および第2の部分を形成することができる。一実施形態では、ブリッジは、第1の部分と第2の部分とを電気的に接続する。本発明の一実施形態では、製造システムは、周波数共振器(量子ビット)の共振周波数を目標周波数と比較する(ブロック906)。一実施形態では、製造システムは、共振周波数が目標周波数の許容範囲内にあると判定する(ブロック908)。たとえば、製造システムは、共振周波数が目標周波数の0.5パーセントの誤差内にあると判定することができる。本発明の一実施形態では、製造システムは、共振周波数が目標周波数の許容範囲外にあると判定する。たとえば、製造システムは、共振周波数が目標周波数と比べて0.5パーセントを超えて異なると判定することができる。製造システムが、共振周波数が許容範囲外にあると判定した場合(ブロック908の「いいえ」の経路)、製造システムは、キャパシタ・パッドのブリッジを除去する(ブロック910)。次いで、プロセス900は、ブロック906に戻って継続する。製造システムが、共振周波数が許容範囲内にあると判定した場合(ブロック908の「はい」の経路)、プロセス900は終了する。
【0076】
本明細書では、本発明の様々な実施形態について、関連する図面を参照して説明している。本発明の範囲から逸脱することなく、代替の実施形態も考案することができる。以下の説明および図面では、要素間の様々な接続および位置関係(たとえば、上、下、隣接など)が記載されているが、配向が変更されても記載されている機能が維持されるとき、本明細書に記載の位置関係の多くが配向とは無関係であることが当業者には理解されよう。これらの接続または位置関係あるいはその両方は、特に明記されていない限り、直接的または間接的とすることができ、本発明はこの点に関して限定するよう意図されていない。したがって、エンティティの結合は、直接的または間接的な結合のいずれかを指す場合があり、エンティティ間の位置関係は、直接的または間接的な位置関係である場合がある。間接的な位置関係の一例として、本明細書において、層「B」の上に層「A」を形成することを言及する場合、層「A」と層「B」との関連する特性および機能が中間層によって実質的に変更されない限り、層「A」と層「B」との間に1つまたは複数の中間層(たとえば、層「C」)があるという状況を含む。
【0077】
特許請求の範囲および本明細書の解釈のために以下の定義および略語を使用するものとする。本明細書で使用するような「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、もしくは「含有する(containing)」という用語、またはこれらの他の任意の変形は、非排他的な包含を含むよう意図されている。たとえば、列挙されている要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるわけではなく、明示的に列挙されていないかまたはそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含むことができる。
【0078】
さらに、本明細書では、「例示的」という用語は、「一例、実例、または例証として機能する」ことを意味するように使用されている。本明細書において「例示的」と記載されているいずれの実施形態または設計も、他の実施形態または設計と比較して、必ずしも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」という用語は、1以上の任意の整数、すなわち1、2、3、4などを含むと理解される。「複数」という用語は、2以上の任意の整数、すなわち2、3、4、5などを含むと理解される。「接続」という用語は、間接的「接続」および直接的「接続」を含むことができる。
【0079】
本明細書における「一実施形態」、「ある実施形態」、「例示的なある実施形態」などについての言及は、説明される実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得ることを示すが、それぞれの実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含んでも含まなくてもよい。また、このような語句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が、ある実施形態と関連して説明されるとき、明示的に説明されているかどうかに関係なく、他の実施形態と関連するそのような特徴、構造、または特性に影響を与えることは、当業者の知識の範囲内であると考えられる。
【0080】
「約」、「実質的に」、「おおよそ」という用語およびそれらの変形は、本出願時に利用可能な機器に基づく特定の量の測定に関連した誤差の程度を含むことを意図している。たとえば、「約」は、所与の値の±8%もしくは5%、または2%の範囲を含むことができる。
【0081】
本発明の様々な実施形態の説明を例示の目的で提示してきたが、これらは、網羅的であること、または開示された実施形態に限定されるようには意図されていない。本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更形態および変形形態が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、本発明の原理、実際の適用例、または市場で見られる技術を超える技術的な改良を最もよく説明するように、あるいは本明細書に記載の本発明の実施形態を当業者が理解することが可能になるように選択されたものである。