(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】射出装置および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B22D 17/20 20060101AFI20241217BHJP
B29C 45/50 20060101ALI20241217BHJP
B29C 45/13 20060101ALI20241217BHJP
B22D 17/26 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B22D17/20 L
B29C45/50
B29C45/13
B22D17/26 A
(21)【出願番号】P 2021098480
(22)【出願日】2021-06-14
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕
(72)【発明者】
【氏名】米原 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】豊島 敏雄
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-313408(JP,A)
【文献】特開平09-001615(JP,A)
【文献】特開2009-255476(JP,A)
【文献】特許第5057688(JP,B2)
【文献】米国特許第06517337(US,B1)
【文献】特開2003-266472(JP,A)
【文献】特開2001-225345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00-32
B29C 45/00-84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダと、
該加熱シリンダ内に設けられているスクリュと、
前記加熱シリンダの両側方に配置されている一対のピストンシリンダユニットと、を備え、
前記一対のピストンシリンダユニットは、それぞれ一方の端部が型締装置に連結され、伸縮させることにより前記加熱シリンダと前記スクリュが一体的に前記型締装置に近接あるいは離間する方向に駆動されるように設置されており、
前記一対のピストンシリンダユニットのうち一方
のみが、伸縮を不可にする停止手段が設けられた停止手段有りピストンシリンダユニットになっている、射出装置。
【請求項2】
前記停止手段は、前記停止手段有りピストンシリンダユニットの油圧回路に設けられているバルブからなる、請求項1に記載の射出装置。
【請求項3】
前記バルブはストップバルブからなる、請求項2に記載の射出装置。
【請求項4】
前記一対のピストンシリンダユニットは、
それぞれの他方の端部が前記スクリュを駆動するスクリュ駆動装置の部材に連結され、
伸縮させることにより前記スクリュ駆動装置も前記加熱シリンダ及び前記スクリュとともに一体的に前記型締装置に近接あるいは離間する方向に駆動されるように設置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の射出装置。
【請求項5】
金型を型締めする型締装置と、
射出材料を前記金型に射出する射出装置と、を備えた射出成形機であって、
前記射出装置は、加熱シリンダと、
該加熱シリンダ内に設けられているスクリュと、
前記加熱シリンダの両側方に配置されている一対のピストンシリンダユニットと、を備え、
前記一対のピストンシリンダユニットは、それぞれ一方の端部が前記型締装置に連結され、伸縮させることにより前記加熱シリンダと前記スクリュが一体的に前記型締装置方向にあるいは反対方向に駆動されるように設置されており、
前記一対のピストンシリンダユニットのうち一方
のみが、伸縮を不可にする停止手段が設けられた停止手段有りピストンシリンダユニットになっている、射出成形機。
【請求項6】
前記型締装置と、2台の前記射出装置とを備えた射出成形機であって、
前記2台の射出装置は、前記型締装置の機械中心線に対して対称に配置され、
前記2台の射出装置のそれぞれの前記停止手段有りピストンシリンダユニットは、前記機械中心線寄りのピストンシリンダユニットである、請求項5に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記停止手段は、前記停止手段有りピストンシリンダユニットの油圧回路に設けられているバルブからなる、請求項5または6に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記バルブはストップバルブからなる、請求項7に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記一対のピストンシリンダユニットは、
それぞれの他方の端部が前記スクリュを駆動するスクリュ駆動装置の部材に連結され、
伸縮させることにより前記スクリュ駆動装置も前記加熱シリンダ及び前記スクリュとともに一体的に前記型締装置に近接あるいは離間する方向に駆動されるように設置されている、請求項5~8のいずれか一項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出装置および射出成形機に関するものであり、より詳しくは、一対のピストンシリンダユニットにより型締装置に近接あるいは離間する方向に駆動されるようになっている射出装置、および射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出装置は、例えば特許文献1に記載されているように、加熱シリンダと、加熱シリンダ内に入れられているスクリュと、加熱シリンダの両側方に配置されている一対のピストンシリンダユニットとを備えている。一対のピストンシリンダユニットは、それぞれの一方の端部が型締装置に連結され、他方の端部が射出装置の部材に連結されている。一対のピストンシリンダユニットを伸縮させると、射出装置が型締装置に近接したり離間したりする。これによって加熱シリンダの先端に設けられている射出ノズルを金型にタッチさせ、離間させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出装置において、加熱シリンダ、スクリュ、射出ノズルの交換等の、メンテナンスを実施する場合、予め一対のピストンシリンダユニットを型締装置から切り離す必要がある。一対のピストンシリンダユニットと型締装置との連結を解いておき、旋回装置により射出装置を旋回させる。あるいは昇降装置により射出装置を昇降させる。そして射出装置をメンテナンスする。メンテナンスが完了したら、射出装置を元の位置に戻し、再び一対のピストンシリンダユニットを型締装置に連結する。このように、射出装置のメンテナンスをする毎に、事前に一対のピストンシリンダユニットと型締装置との連結を解いて、メンテナンス後に連結し直す必要がある。これによって作業時間が長くなるという問題がある。
【0005】
本開示において、メンテナンスに要する作業時間を短縮できる射出装置および射出成形機を提供する。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、加熱シリンダと、加熱シリンダ内に設けられているスクリュと、加熱シリンダの両側方に配置されている一対のピストンシリンダユニットと、を備えた射出装置を対象とする。一対のピストンシリンダユニットは、それぞれ一方の端部が型締装置に連結され、伸縮させることにより加熱シリンダとスクリュが一体的に型締装置に近接あるいは離間する方向に駆動されるようになっている。本開示は、このような一対のピストンシリンダユニットのうち一方のみを、伸縮を不可にする停止手段が設けられた停止手段有りピストンシリンダユニットとして構成する。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、射出装置をメンテナンスするとき、停止手段有りピストンシリンダユニットについて型締装置との連結を解く必要がなくなり、作業時間を短縮化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係るツイン射出成形機を示す上面図である。
【
図2】本実施の第1の形態に係る移動装置を示す油圧回路図である。
【
図3】本実施の第1の形態に係る移動装置を示す油圧回路図である。
【
図4】本実施の第1の形態に係る移動装置を示す油圧回路図である。
【
図5】本実施の第1の形態に係る移動装置を示す油圧回路図である。
【
図6】本実施の形態に係るツイン射出成形機を示す上面図である。
【
図7】本実施の第1の形態に係る移動装置を示す油圧回路図である。
【
図8】本実施の形態に係る射出成形機を示す上面図である。
【
図9】本実施の形態に係る射出成形機を示す上面図である。
【
図10】本実施の第2の形態に係る移動装置を示す油圧回路図である。
【
図11】本実施の第3の形態に係る移動装置を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0011】
<本実施の形態に係るツイン射出成形機>
本実施の形態に係るツイン射出成形機1は、
図1に示されているように、1台の型締装置2と、第1、2の射出装置4A、4Bとから構成されている。本実施の形態に係るツイン射出成形機1は金属を溶融して射出する、いわゆる金属射出成形機になっている。しかしながら、本発明は金属射出成形機だけでなく樹脂を射出する射出成形機であっても同様に実施できる。
【0012】
<型締装置>
型締装置2は、ベッド5に対して固定されている固定盤6と、ベッド5上をスライド可能に設けられている可動盤7と、ベッド5上をスライド可能に設けられている型締ハウジング8と、を備えている。固定盤6と型締ハウジング8は複数本のタイバー10、10、…によって連結され、可動盤7は固定盤6と型締ハウジング8の間でスライド自在に配置されている。型締ハウジング8と可動盤7の間には型締機構であるトグル機構12が設けられている。図に示されていない駆動系部品、例えば型締モータを駆動してトグル機構12を屈伸させると、可動盤7がスライドして型開閉される。なお、型締機構はトグル機構12に限定される必要はなく、型締シリンダ等を採用することができる。
【0013】
<射出装置>
本実施の形態に係る第1、2の射出装置4A、4Bは、型締装置2の機械中心線Cに対して対称に配置されている。第1、2の射出装置4A、4Bを構成している各部品についても、機械中心線Cに対して実質的に対称になっている。そこで、一方の射出装置である第1の射出装置4Aについて説明し、必要が無い限り、第2の射出装置4Bについての説明は省略する。なお、第1の射出装置4Aの各部品に対しては数字と「A」を合わせた符号を付し、第2の射出装置4Bにおける同等の部品に対しては同じ数字と「B」を合わせた符号を付す。
【0014】
第1の射出装置4Aは、加熱シリンダ14Aと、この加熱シリンダ14Aに入れられている図示されないスクリュと、スクリュを回転方向と軸方向とに駆動するスクリュ駆動装置15Aと、を備えている。本来、スクリュはその後端部がスクリュ駆動装置15Aに接続されて、スクリュ駆動装置15Aによって駆動されるようになっている。そうすると、
図1においてスクリュの後端部が示されているはずである。しかしながら、
図1には、スクリュがスクリュ駆動装置15Aから切り離されて加熱シリンダ14A内に完全に収納された状態で示されている。つまり、メンテナンス等を目的としてホイストクレーンによって加熱シリンダ14Aとスクリュとを第1の射出装置4Aから取り外すことが可能な状態になっている。
【0015】
第1の射出装置4Aは、支持フレーム18Aによって支持されている。支持フレーム18Aは第1~3のプレート20A、21A、22Aを備えている。第1、2のプレート20A、21Aと、第2、第3のプレート21A、22Aのそれぞれは複数本のロッドによって連結されている。加熱シリンダ14Aは、第1、2のプレート20A、21Aによって、それぞれ中央部と後端部とが支持されている。そしてスクリュ駆動装置15Aは第3のプレート22Aに設けられている。
【0016】
<移動装置>
第1の射出装置4Aは、加熱シリンダ14A、スクリュ等を型締装置2に近接させたり離間させたりする本実施の第1の形態に係る移動装置25Aを備えている。移動装置25Aは、一対のピストンシリンダユニット26A、27Aを備えている。これら一対のピストンシリンダユニット26A、27Aは、加熱シリンダ14Aの両側に配置され、一方は機械中心線Cから離間した側、つまり外側に配置されており、他方は、機械中心線Cに近接した側、つまり内側に配置されている。
【0017】
以下、一対のピストンシリンダユニット26A、27Aを適宜、外側ピストンシリンダユニット26A、内側ピストンシリンダユニット27Aと呼ぶ。外側、内側ピストンシリンダユニット26A、27Aは、いずれも一方の端部41A、42Aが固定盤6に連結され、他方の端部43A、44Aが支持フレーム18Aの第3のプレート22Aに設けられたクレビス29A、29Aに連結されている。
【0018】
外側、内側ピストンシリンダユニット26A、27Aは、次に説明する、油圧供給機構によって圧油が供給されて伸縮する。伸縮すると、加熱シリンダ14A、スクリュ等が型締装置2に近接し、あるいは型締装置2から離間する。ところで、機械中心線Cに近接している内側ピストンシリンダユニット27Aは、後で説明するが、その油圧回路に圧油の供給を妨げて伸縮を不可にする停止手段が設けられている。つまり内側ピストンシリンダユニット27Aは、停止手段有りピストンシリンダユニット27Aになっている。
【0019】
<移動装置の油圧回路>
移動装置25Aは、
図2に示されている、油圧供給機構30Aを備えている。油圧供給機構30Aは、油圧源31Aと、減圧弁32Aと、方向切換弁34Aと、第1、2のパイロット逆止弁36A、37Aとを備えている。油圧源31Aから供給される圧油は減圧弁32Aによって油圧が調整され、方向切換弁34Aに送られる。方向切換弁34AはA、B、P、Tの4ポートを備え、a、bの2個のソレノイドにより3位置に切換える、いわゆる4ポート3位置方向制御弁から構成されている。方向切換弁34Aは、圧油をAポートまたはBポートに供給し、あるいは供給を停止するようになっている。
【0020】
方向切換弁34AのAポートは、第1のパイロット逆止弁36Aに接続され、第1のパイロット逆止弁36Aからの圧油の管路は分岐して、外側、内側ピストンシリンダユニット26A、27Aの、それぞれのAポートに接続されている。一方、方向切換弁34AのBポートは、第2のパイロット逆止弁37Aに接続され、第2のパイロット逆止弁37Aからの圧油の管路は分岐して、外側、内側ピストンシリンダユニット26A、27Aの、それぞれのBポートに接続されている。ただし、第2のパイロット逆止弁37Aから内側ピストンシリンダユニット27AのBポートに向かう管路には、圧油の供給を停止する停止手段40Aが設けられている。停止手段40Aについては後で説明する。
【0021】
第1、2のパイロット逆止弁36A、37Aは、いずれも圧油の逆流を禁止する弁になっているが、これらの第1、2のパイロット逆止弁36A、37Aは、相互に圧油の逆流禁止を解除するようになっている。具体的に説明すると、第1のパイロット逆止弁36Aにおいて入力側に油圧が作用すると、第2のパイロット逆止弁37Aを操作して第2のパイロット逆止弁37Aにおいて圧油の逆流禁止を解除する。つまり圧油の逆流を許可するようになっている。一方、第2のパイロット逆止弁37Aにおいて入力側に油圧が作用すると、第1のパイロット逆止弁36Aを操作して第1のパイロット逆止弁36Aにおいて圧油の逆流禁止を解除する。つまり圧油の逆流を許可するようになっている。これら第1、2のパイロット逆止弁36A、37Aを逆流して戻ってくる圧油は、方向切換弁34Aを経由してオイルタンク39Aに戻されるようになっている。
【0022】
<停止手段>
油圧供給機構30Aには、内側ピストンシリンダユニット27AのBポート側に、圧油の供給を停止する停止手段40Aが設けられている。本実施の形態において停止手段40Aは、ストップバルブ45Aから構成されている。ストップバルブ45Aは、ソレノイドbによって切換えられるようになっており、圧油の供給を許可したり、停止するようになっている。ストップバルブ45Aによって圧油の供給が停止されると、内側ピストンシリンダユニット27AのBポートへの圧油の供給も、Bポートからの圧油の排出も停止する。すなわち内側ピストンシリンダユニット27Aは伸縮が不可になる。
【0023】
<本実施の形態に係るツイン射出成形機の作用>
本実施の形態に係るツイン射出成形機1(
図1参照)は、第1、2の射出装置4A、4Bが本実施の第1の形態に係る移動装置25A、25Bを備えている。この本実施の第1の形態に係る移動装置25A、25Bによって、第1、2の射出装置4A、4Bが駆動される。最初に通常の運転方法を説明する。
【0024】
第1、2の射出装置4A、4B(
図1参照)において、加熱シリンダ14A、14B、スクリュ駆動装置15A、15B等を固定盤6に近接させるには次のようにする。
図3に示されているように、油圧供給機構30Aにおいて、ストップバルブ45Aを通常の状態、つまり圧油の供給を許容した状態にしておく。第2の射出装置4Bの移動装置25Bに設けられている油圧供給機構30Bは、図には示されていないが、この油圧供給機構30Bにおいても同様にストップバルブ45Bを操作する。以下、図示されていない油圧供給機構30Bについて、
図3に示されている油圧供給機構30Aと同様に操作するものとし、油圧供給機構30Bについての操作の説明を省略する。
【0025】
方向切換弁34Aにおいてソレノイドaを駆動する。そうすると油圧源31Aからの圧油は第1のパイロット逆止弁36Aを通って、外側、内側ピストンシリンダユニット26A、27AのAポートに供給される。外側、内側ピストンシリンダユニット26A、27Aのそれぞれの端部41A、42Aは固定盤6(
図1参照)に固定されているので、外側、内側ピストンシリンダユニット26A、27Aは矢印47、47(
図3参照)方向に駆動される。すなわち加熱シリンダ14A、14B等が固定盤6に近接する。このとき外側、内側ピストンシリンダユニット26A、27AのBポートから圧油が排出される。排出された圧油は第2のパイロット逆止弁37A、方向切換弁34Aを通って、オイルタンク39Aに戻される。
【0026】
第1、2の射出装置4A、4B(
図1参照)において、加熱シリンダ14A、14B、スクリュ駆動装置15A、15B等を固定盤6から離間させるには次のようにする。
図4に示されているように、油圧供給機構30Aにおいて、ストップバルブ45Aを通常の状態、つまり圧油の供給を許容した状態にしておく。前記したように、第2の射出装置4Bの移動装置25Bに設けられている油圧供給機構30Bは図に示されていないが、油圧供給機構30Aと同様に操作するものとする。
【0027】
方向切換弁34Aにおいてソレノイドbを駆動する。油圧源31Aからの圧油は第1のパイロット逆止弁36Aを通って、外側、内側ピストンシリンダユニット26A、27AのBポートに供給される。外側、内側ピストンシリンダユニット26A、27Aのそれぞれの端部41A、42Aは固定盤6(
図1参照)に固定されているので、外側、内側ピストンシリンダユニット26A、27Aは矢印48、48(
図3参照)方向に駆動される。すなわち加熱シリンダ14A、14B等が固定盤6から離間する。外側、内側ピストンシリンダユニット26A、27AのAポートの圧油はオイルタンク39Aに戻される。
【0028】
第1、2の射出装置4A、4B(
図1参照)のメンテナンスを実施する場合には次のようにする。まず、上で説明したように本実施の第1の形態に係る移動装置25A、25Bを操作して、加熱シリンダ14A、14B、スクリュ駆動装置15A、15B等を固定盤6から十分に離間させておく。次いで、第1、2の射出装置4A、4Bのそれぞれの外側ピストンシリンダユニット26A、26Bの、それぞれの一方の端部41A、41Bを固定盤6から切り離す。
【0029】
図5に示されているように、油圧供給機構30Aにおいてストップバルブ45Aのソレノイドbを駆動して、圧油の供給を停止する。図示されていない油圧供給機構30Bについても以下、同様の操作をするものとする。方向切換弁34Aにおいてソレノイドaを駆動する。油圧源31Aからの圧油は外側ピストンシリンダユニット26AのAポートに供給される。しかしながら内側ピストンシリンダユニット27Aにおいては停止手段40Aにより圧油の流れが妨げられているので、圧油は供給されない。外側ピストンシリンダユニット26Aの一方の端部41Aは固定盤6(
図1参照)から切り離されているので、
図5に示されているように矢印50方向に駆動される。このようにして第1、2の射出装置4A、4Bの外側ピストンシリンダ26A、26Bが縮められた様子が、
図6に示されている。
【0030】
このとき、内側ピストンシリンダユニット27A、27Bは、停止手段40Aにより停止しているので第1、2の射出装置4A、4Bは移動しない。外側ピストンシリンダユニット26A、26Bは縮められているので、第1、2の射出装置4A、4Bのメンテナンスの妨げにならない。必要なメンテナンスを実施する。
【0031】
なお従来は、メンテナンス時において、内側ピストンシリンダユニット27A、27Bについても一方の端部42A、42Bを固定盤6から切り離す必要があった。しかしながら、このようにするには、
図6において矢印53、53で示されているように作業員が第1、2の射出装置4A、4Bを横断する必要があり、危険があった。そして切り離すための作業時間がかかっていた。本実施の第1の形態に係る移動装置25A、25Bを備えた本実施の形態に係るツイン射出成形機1では、メンテナンス時に内側ピストンシリンダユニット27A、27Bを固定盤6から切り離す必要がなく、安全であると共に作業時間を短縮化できる。
【0032】
メンテナンスが完了したら、
図7に示されているように、油圧供給機構30Aを次のように操作する。図には示されていないが油圧供給機構30Bについても同様に操作する。まず、ストップバルブ45Aにおいてソレノイドbを駆動した状態にして、内側ピストンシリンダユニット27Aへの圧油の供給を停止しておく。方向切換弁34Aのソレノイドbを駆動する。油圧源31Aからの圧油が第2のパイロット逆止弁37Aを介して外側ピストンシリンダユニット26AのBポートにのみ供給される。外側ピストンシリンダユニット26Aの一方の端部41Aは、矢印54で示されているように駆動される。すなわち外側ピストンシリンダユニット26Aが伸長する。同様に第2の射出装置4B(
図1参照)の外側ピストンシリンダユニット26Bも伸長する。外側ピストンシリンダユニット26A、26Bのそれぞれの一方の端部41A、41Bを固定盤6に連結する。
【0033】
なお、上の説明では、
図2に示されている油圧供給機構30Aと、図示されていない油圧供給機構30Bは同時に同じ操作をしている。つまり、第1、2の射出装置4A、4Bにおいて同じ操作をしている。しかしながら、第1、2の射出装置4A、4Bは、油圧供給機構30A、30Bが独立して別々に設けられているので、一方だけを操作することも可能である。つまり、第1の射出装置4Aだけをメンテナンスする場合には、油圧供給機構30Aだけ操作すればよい。
【0034】
<射出装置が1台の射出成形機>
図2に示されている本実施の第1の形態に係る移動装置25Aは、射出装置が1台の射出成形機にも採用することができる。
図8には、1台の射出装置4を備えた射出成形機1‘が示されている。この射出成形機1’において、本実施の形態に係るツイン射出装置1(
図1参照)に設けられている装置、部材と同様の作用を奏する装置、部材には、同じ符号を付して説明を省略する。また、ツイン射出装置1には2台の射出装置4A、4Bが設けられ、それぞれに設けられている部材には、数字と英字「A」、「B」とを組み合わせた符号を付して説明したが、射出成形機1‘において同様の作用を奏する部材については同じ数字からなる符号を付して説明を省略する。
【0035】
射出成形機1‘には、第1、2のピストンシリンダユニット26、27が設けられている。これら第1、2のピストンシリンダユニット26、27も、
図2に示されているような油圧供給機構30Aが設けられている。つまり、これら第1、2のピストンシリンダユニット26、27のうち、第2のピストンシリンダユニット27は、その油圧回路において圧油の供給を妨げて伸縮を不可にする停止手段が設けられ、停止手段有りピストンシリンダユニット27になっている。
【0036】
第1、2のピストンシリンダユニット26、27の一方の端部41、42はいずれも固定盤6に連結されている。しかしながらこの実施の形態においては、他方の端43、44は、支持フレーム18の第2のプレート21のクレビス29’、29‘に連結されている。つまり、第1、2のピストンシリンダユニット26、27は、
図1に示されている本実施の形態に係るツイン射出成形機1の、一対のピストンシリンダユニット26A、27Aより短くなっている。したがって、
図8に示されている射出成形機1‘は、射出装置4を固定盤6から離間させる距離は若干短くなっており、メンテナンス時には射出装置4を旋回させる必要がある。
【0037】
射出成形機1‘において射出装置4をメンテナンスする場合次のようにする。まず、移動装置25の一対のピストンシリンダユニット26、27を駆動して、射出装置4を固定盤6から離間させる。次いで、第1のピストンシリンダユニット26の一方の端部41を固定盤6から切り離す。次いで、図に示されていない油圧供給機構を駆動して、第1のピストンシリンダユニット26を縮める。このとき、第2のピストンシリンダユニット27は停止手段により停止しておく。
図9に示されているように射出装置4を旋回する。このとき、第2のピストンシリンダユニット27は、一方の端部42が固定盤6に連結されているので、射出装置4の旋回に伴って若干回転するが、メンテナンスにおいて支障はない。
【0038】
メンテナンスが完了したら、逆の手順を実施する。すなわち射出装置4を旋回して元の状態に戻す。次いで、第1のピストンシリンダユニット26を伸長させ、端部41を固定盤6に連結する。この実施の形態に係る射出成形機1‘も、メンテナンス時に固定盤6から切り離し、再連結するピストンシリンダユニット27は1本で済み、作業時間を短縮化できる。
【0039】
<本実施の第2の形態に係る移動装置>
本実施の形態に係るツイン射出成形機1(
図1参照)の第1、2の射出装置4A、4Bは、それぞれに異なる移動装置25A、25Bが設けられているように説明した。つまり、第1の射出装置4Aを移動させる移動装置25Aの油圧供給機構30A(
図2参照)と、第2の射出装置4Bを移動させる移動装置25Bの油圧供給機構30B(図示されず)とが別々に設けられていた。これに対して、第1、2の射出装置4A、4Bに対して、
図10に示されているような、共通の1個の移動装置25‘、つまり本実施の第2の形態に係る移動装置25’を設けることもできる。
【0040】
本実施の第2の形態に係る移動装置25’は、1個の油圧供給機構30‘を備えている。油圧供給機構30’は、
図2に示されている油圧供給機構30Aと同様に、油圧源31、減圧弁32、方向切換弁34、第1、2のパイロット逆止弁36、37、ストップバルブ45を備えている。この実施の形態においては、第1のパイロット逆止弁36からは、2台の外側ピストンシリンダユニット26A、26BのAポートと、2台の内側ピストンシリンダユニット27A、27BのAポートに対して圧油を供給するようになっている。また、第2のパイロット逆止弁37からは、2台の外側ピストンシリンダユニット26A、26BのBポートに対して直接圧油を供給し、2台の内側ピストンシリンダユニット27A、27BのBポートに対して、ストップバルブ45を介して圧油を供給するようになっている。
【0041】
この実施の形態に係る移動装置25‘においても、2台の内側ピストンシリンダユニット27A、27Bは、停止手段40であるストップバルブ45によって圧油の供給が許可され、あるいは停止される停止手段ありピストンシリンダになっている。したがって、第1、2の射出装置4A、4Bにそれぞれに異なる移動装置25A、25Bが設けられている本実施の形態に係るツイン射出成形機1(
図1参照)と同様の作用を奏することになり、容易にメンテナンスすることができる。
【0042】
<本実施の第3の形態に係る移動装置>
図2に示されている第1の実施の形態に係る油圧供給機構30Aは、
図11に示されているように変形することが可能である。
図11に示されている第3の形態に係る油圧供給機構30A‘は、停止手段40A’が内側ピストンシリンダユニット27AのAポート側に設けられ、電磁開閉弁57Aから構成されている。この実施の形態も、第1の実施の形態に係る油圧供給機構30Aと同様の作用を奏する。
【0043】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 ツイン射出成形機 2 型締装置
4A 第1の射出装置 4B 第2の射出装置
C 機械中心線 5 ベッド
6 固定盤 7 可動盤
8 型締ハウジング 10 タイバー
12 トグル機構 14A 加熱シリンダ
15A スクリュ駆動装置 18A 支持フレーム
20A 第1のプレート 21A 第2のプレート
22A 第3のプレート 25A 移動装置
26A 外側ピストンシリンダユニット 27A 内側ピストンシリンダユニット
29A クレビス 30A 油圧供給機構
31A 油圧源 32A 減圧弁
34A 方向切換弁 36A 第1のパイロット逆止弁
37A 第2のパイロット逆止弁 39A オイルタンク
40A 停止手段 41A 一方の端部
42A 一方の端部 43A 他方の端部
44A 他方の端部 45A ストップバルブ
47A 電磁開閉弁