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  • 特許-皮膚老化改善剤のスクリーニング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】皮膚老化改善剤のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20241217BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241217BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20241217BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20241217BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20241217BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20241217BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20241217BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
C12Q1/02
A61K45/00
A61P17/00
C12Q1/6806 Z
G01N33/15 Z
G01N33/50 P
G01N33/50 Z
G01N33/68
A23L33/10
C12N15/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018139454
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020014413
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悠
(72)【発明者】
【氏名】横田 絢
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 知佳
(72)【発明者】
【氏名】及川 優
(72)【発明者】
【氏名】多田 明弘
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】深草 亜子
【審判官】小暮 道明
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-536745(JP,A)
【文献】特開2011-032191(JP,A)
【文献】特表2013-542999(JP,A)
【文献】Arch.Dermatol.Res.,2013,Vol.305,pp.397-406
【文献】Biochimica et Biophysica Acta,2001,Vol.1522,No.2,pp.82-88
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/00-3/00
C12N15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPlus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維芽細胞中のアクアポリンの活性を指標として、皮膚老化改善剤をスクリーニングする方法であって、
前記アクアポリンが、アクアポリン1及びアクアポリン3であり、
前記皮膚老化改善剤は線維芽細胞の増殖能の低下抑制により皮膚老化を改善するものである、方法。
【請求項2】
前記アクアポリンの活性が、前記アクアポリンを構成するタンパク質をコードする遺伝子又は前記タンパク質の発現量であり、被験物質を添加した線維芽細胞における前記発現量が、被験物質を添加しなかった線維芽細胞における発現量と比較して大きい場合に、前記被験物質は皮膚老化改善作用を有すると判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスクリーニング方法を行う工程、及び前記工程により選択された物質を含有させる工程を含む、組成物の設計方法。
【請求項4】
前記組成物が皮膚老化改善用である、請求項に記載の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚老化改善剤をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シワやタルミ等の皮膚老化症状は、見た目の印象に大きな影響を与えるものであるため、その改善への関心は高い。近年、皮膚老化症状の改善を目的とする、抗老化剤、抗シワ剤、保湿剤等の開発が盛んに行われている(特許文献1~3等)。
【0003】
皮膚細胞では、水チャンネルとして知られるアクアポリンが、細胞膜上に発現して、細胞間隙の水をはじめとする低分子物質を細胞内へ取り込む役割を担っていることが知られている。ヒトでは、13種類のアクアポリン(AQP0~AQP12)の存在が知られている。表皮細胞においては、主としてAQP3が存在しており、皮膚の水分量や弾力を維持する役割を担っていると考えられている。そのため、表皮細胞におけるアクアポリンの産生を促進することで皮膚の健全化を図ることが提案されている(特許文献4等)。しかしながら、線維芽細胞におけるアクアポリンの機能については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-131797号公報
【文献】特開2015-174857号公報
【文献】特開2003-171225号公報
【文献】特開2015-134751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の皮膚の抗老化剤では、ある程度の抗老化効果は認められるものの、十分に満足のいく効果が得られているとは言い難い。また、皮膚老化症状の生じるメカニズムのさらなる解明も求められている。
本発明は、かかる状況に鑑み、皮膚老化症状に対する新たなアプローチによる皮膚老化改善剤として有効な成分を探索することを目的とし、そのための新たなスクリーニング方法を確立することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、老化により真皮の線維芽細胞におけるアクアポリンの発現が減少すること、かかる減少により真皮の線維芽細胞の増殖能が低下することを見出した。そして、アクアポリンの発現を亢進することにより皮膚老化症状を改善することができるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]線維芽細胞中のアクアポリンの活性を指標として、皮膚老化改善剤をスクリーニングする方法。
[2]前記アクアポリンの活性が、前記アクアポリンを構成するタンパク質をコードする遺伝子又は前記タンパク質の発現量であり、被験物質を添加した線維芽細胞における前記発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量と比較して大きい場合に、前記被験物質は皮膚老化改善作用を有すると判定する、[1]に記載の方法。
[3]前記アクアポリンが、アクアポリン1及び/又はアクアポリン3である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4][1]~[3]のいずれかに記載のスクリーニング方法を行う工程、及び前記工程により選択された物質を含有させる工程を含む、組成物の設計方法。
[5]前記組成物が皮膚老化改善用である、[4]に記載の設計方法。
[6]前記組成物が皮膚外用剤又は飲食品である、[4]又は[5]に記載の設計方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、皮膚外用剤や飲食品に含有させるのに好適な、皮膚老化改善剤として有効な成分を探索できるスクリーニング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】活性酸素を添加したヒト線維芽細胞におけるアクアポリン1及び3の各遺伝子の相対発現量を表すグラフ。
図2】アクアポリン1及び/又は3をノックダウンしたヒト線維芽細胞の細胞増殖能を表すグラフ。
図3】左:ヤグルマギクエキスを添加したヒト線維芽細胞におけるアクアポリン1遺伝子の相対発現量を表すグラフ。右:アマモエキスを添加したヒト線維芽細胞におけるアクアポリン3遺伝子の相対発現量を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のスクリーニングする方法は、線維芽細胞中のアクアポリンの活性を指標とすることを特徴とする。
アクアポリンは、細胞膜上に発現する水チャンネルとして知られており、表皮角化細胞においては加齢によりその発現量が低下することが知られている。
本発明者らは、線維芽細胞においてもアクアポリンの発現量が皮膚老化症状の発生に関与することを見出した。より具体的には、後述の実験例で示されるように、線維芽細胞において老化要因である活性酸素がアクアポリンの発現量を減少させる。アクアポリンの発現量が減少しその活性が低下した線維芽細胞は、その増殖能が有意に低下する。コラーゲンを産生する線維芽細胞の増殖能低下は、すなわち皮膚のハリや弾力を低下させ、皮膚老化症状を引き起こす。その他にも、本発明者らは、アクアポリンの発現量減少は、コラーゲン線維の架橋に関与するテネイシンX(TNXB)、2型コラーゲン(COL7A1)、上皮組織が基底膜に接着する機能を担うコラーゲン17(COL17)、及びコラーゲン形成の促進に関与するタンパク質(COMP)の発現を低下させることを見出した。
かかる皮膚老化フローにおいて、線維芽細胞におけるアクアポリンの活性を増強することによって皮線維芽細胞の増殖能の低下を抑制することができ、その結果皮膚老化症状が引き起こされるのを抑制し改善することができる。言い換えると、線維芽細胞におけるアクアポリンの活性を亢進させるような物質は、皮膚老化改善剤となり得る。
【0011】
本発明のスクリーニング方法において指標となるアクアポリンの活性とは、通常はアクアポリンの発現量である。ここで、発現量とは、アクアポリンを構成するタンパク質をコードする遺伝子のmRNAの転写量と、該タンパク質の翻訳量との何れかを指すものとする。
【0012】
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様においては、被験物質を添加した線維芽細胞におけるアクアポリンの発現量が、被験物質を添加しなかった線維芽細胞におけるアクアポリンの発現量(コントロール)と比較して大きい場合に、前記被験物質は皮膚老化改善作用を有すると判定される。
【0013】
本発明のスクリーニング方法において指標とするアクアポリンは、特に限定されないが、アクアポリン1(AQP1)及び/又はアクアポリン3(AQP3)が好ましく挙げられる。より好ましくは、AQP1及びAQP3の組み合わせを指標とする。より好ましい
態様としては、AQP1及びAQP3のいずれも発現量がコントロールと比較して大きくなる被験物質を、皮膚老化改善剤として選択する。
【0014】
アクアポリンをコードする遺伝子の発現量は、任意の方法を用いて測定することができる。例えば、当該遺伝子の配列に特異的に結合する配列を有するDNA断片をプライマーとして用いてPCRを行い、定量的な検出を行う。なお、アクアポリンをコードするヒトの遺伝子配列は公開されており、当業者は適宜プライマーを設計してPCRに供することができる。
また、例えば、アクアポリンタンパク質の細胞膜上の量を、常法で、例えば抗体を用いる免疫学的手法等で測定して、遺伝子の発現量としてもよい。
【0015】
本発明のスクリーニング方法に用いる細胞としては、線維芽細胞を用い、線維芽細胞は通常真皮に存する。
細胞の培養の条件としては、通常の培養条件の他、本発明のスクリーニング方法の実行を妨げない、具体的にアクアポリンの発現量の測定を妨げない培養条件であれば、特段の限定なく適用することができる。
【0016】
本発明のスクリーニング方法が対象とする被験物質は、純物質、動植物由来の抽出物、またはそれらの混合物等のいずれであってもよい。
動植物由来の抽出物は、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物又は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとし、植物由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等が挙げられる。
抽出操作は、植物部位の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花、花蕾、果実等の部位を使用することできるが、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される一種又は二種以上が好適なものとして例示することができる。具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位又はその乾燥物1質量部に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却した後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
【0017】
本発明のスクリーニング方法における手順の一例を以下に挙げるが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
まず、線維芽細胞に被験物質を添加し、24~48時間インキュベーションする。その後、該細胞からmRNAを抽出し、アクアポリンをコードする遺伝子の発現量を、該遺伝子を特異的に検出するプライマーを用いてRT-PCRを行い、定量的に測定する。コントロールとして被験物質を添加しなかった線維芽細胞においても該遺伝子の発現量を測定する。被験物質を添加した細胞における該遺伝子の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における該遺伝子の発現量(コントロール)に対して大きい場合、前記被験物質は皮膚老化改善作用を有すると判定する。該判定された物質は、皮膚老化改善用の組成物に好適に含有し得る皮膚老化改善剤となり得る。
なお、発現量の変動の程度としては、コントロールに対して120%以上が好ましく、150%以上がより好ましく、200%以上がさらに好ましい。
【0018】
スクリーニングにより選択された被験物質が皮膚老化改善作用を有することは、例えば
、該物質を含有する組成物を適用した被験者の自覚による評価、画像解析によるシワやタルミの評価、皮膚の粘弾物性の評価、皮膚のコラーゲン産生量の評価、皮膚の水分保持量の評価など、周知の方法によって確認することができる。
【0019】
本発明のスクリーニング方法により皮膚老化症状を改善する作用を有すると判定された物質(皮膚老化改善剤)は、任意の調製方法により組成物に含有させることができる。すなわち、本発明のスクリーニング方法は、組成物の設計に好適に用いることができる。かかる組成物としては、例えば皮膚外用組成物や飲食品組成等を好適に挙げられ、またこれらは皮膚老化改善用途や抗老化用途に好ましく適用できる。
本発明のスクリーニングにより皮膚老化症状を改善する作用を有すると判定された物質(皮膚老化改善剤)は、線維芽細胞におけるアクアポリンに起因する皮膚老化の発生をターゲットとする新たな機序で皮膚老化症状を改善する点で、新たなアプローチによる有効な抗老化用組成物の配合成分となり得る。
【0020】
本発明のスクリーニングにより皮膚老化症状を改善する作用を有すると判定された物質(皮膚老化改善剤)を組成物に含有させる場合、その含有量(配合量)は、通常、0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上であり、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。皮膚老化改善剤の含有量(配合量)が少なすぎると所望の効果が得られにくい場合があり、多すぎると効果が頭打ちになるばかりか組成物の処方の自由度を損なう場合があるからである。また、組成物に含有させる皮膚老化改善剤の種類は、1種類のみでなく2種類以上であってもよい。なお、動植物抽出物等についてはその配合量は固形物換算量とする。
また、該組成物には、本発明のスクリーニングにより皮膚老化症状を改善する作用を有すると判定された物質以外の皮膚老化改善用成分もともに配合してもよい。
【0021】
本発明に係る皮膚老化改善剤を皮膚外用組成物に含有させる場合、その製造に際しては、化粧料、医薬部外品、医薬品などの製剤化で通常使用される成分を任意に配合することができる。
かかる任意成分としては例えば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシルなどのエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油などのトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール等の多価アルコール類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を任意に配合することができる。
該皮膚外用組成物は、常法に従って前述の成分を処理・配合することにより製造することができる。また、その形態は、例えば、ローション剤型、乳化剤型、オイル剤型など任意の剤型とすることができる。
【0022】
本発明に係る皮膚老化改善剤を飲食品に含有させる場合、その製造に際しては、食品製造において通常使用される成分を任意に配合することができる。
かかる任意成分としては例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味料及び香味料等を用いることができる。炭水化物としては、単糖類、例えば、ブドウ糖、果糖など;二糖類、例えば、マルトース、スクロース、オリゴ糖など;及び多糖類、例えば、デキ
ストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖及び、キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールが挙げられる。香味料としては、天然香味料(タウマチン、ステビア抽出物等)及び合成香味料(サッカリン、アスパルテーム等)を使用することができる。その他に、前述の医薬組成物で用いられる添加物であって通常食品にも添加されるものを同様に用いてもよい。
【0023】
飲食品の形態としては、液状、ペースト状、固体、粉末、顆粒等の形態を問わない。また、錠菓、流動食、飼料等も飲食品の態様に含まれる。
【0024】
また、他に一般の飲食品に含有させる態様であってもよく、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉の小麦粉製品;、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品等の即席食品;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子等の菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類;これら以外の食品等に、本発明に係る皮膚老化改善剤を添加してもよい。
【0025】
本発明に係る皮膚老化改善剤を含有する食品組成物の態様としては、通常の食品、飲料、機能性表示食品、特定保健用食品等の保健機能食品、サプリメント等が挙げられ、特に機能性表示食品が好ましい。
本発明に係る食品組成物を皮膚老化改善用途や抗老化用途とする場合、製品化の際にその有する有用性や機能性に関する表示を付してもよい。
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、「皮膚老化の改善用」「抗老化用」「肌のハリ・弾力用」といった用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明の「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装、容器等に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材等、若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。なお、本発明の食品組成物が保健機能食品等の行政が定める各種制度に基づいて認可を受けその認可のもとで実施される場合は、該認可に基づく態様で表示することが好ましい。
【0026】
本発明に係る皮膚老化改善剤を含有する食品組成物の好ましい摂取量は、成人が摂取する場合、該皮膚老化改善剤の固形物換算で1日当たり0.001~1000mg/kgとすることが、十分に効果が発揮される観点から好ましく、更に0.01~100mg/k
g、特に0.1~10mg/kgとすることが好ましい。この1日分の量を一度に又は数回に分けて摂取することができる。また、単回摂取する他に、連続的に又は断続的に数週間~数か月の間摂取することが好ましい。
【実施例
【0027】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
<参考例1>線維芽細胞におけるアクアポリンに対する活性酸素の影響の確認
10%FBS入りDMEM培地を用いてヒト線維芽細胞を24ウェルプレートに2×10cells/ウェル播種し、37℃・5%CO環境下で24時間培養した。培養後、培地を除去し、1%FBS入りDMEM培地に交換してさらに24時間培養した。各ウェルに活性酸素を50μM添加して、3時間培養した後、活性酸素を除去し、さらに21時間培養した。
RNeasy Mini Kit(QIAGEN製)を用いて上記線維芽細胞のmRNAを抽出し、Superscript VILO DNA synthesis Kit(Lifetechnologies製)を用いてcDNAを合成後、プライマー(AQP1:QT00013237、QIAGEN製、AQP3:QT00212996、QIAGEN製)を用いてAQP1及びAQP3のmRNA発現量をリアルタイムqPCR法にて測定した。また、内在性コントロール遺伝子であるGAPDHのmRNA発現量を同様に測定した。測定には、QuantiFact SYBR GREEN PCR kit(QIAGEN製)を用いた。
活性酸素添加群及び非添加群におけるAQP1又はAQP3の各mRNA発現量について、GAPDHの発現量による補正を行い、非添加群の発現量を100とした場合の、活性酸素添加群の相対発現量を算出した。
結果を図1に示す。活性酸素の添加により、線維芽細胞におけるAQP1及びAQP3のmRNA発現量がいずれも有意に減少することが分かる。
【0029】
<参考例2>線維芽細胞の増殖能に対するアクアポリン発現量減少の影響の確認
10%FBS入りDMEM培地を用いてヒト線維芽細胞を24ウェルプレートに5×10cells/ウェル播種し、37℃・5%CO環境下で24時間培養した。リポフェクション試薬を用いて、siRNA(AQP1:s1516、Life technologies製、AQP3:s1521、Life technologies製)を導入し、AQP1及び/又はAQP3をノックダウンし、さらに72時間培養した。コントロールとしてはNon-coding siRNAを用いた。培養後、プレートから培地を除去し、PBS(-)にて洗浄した後、ウェル中に培地を用いて20倍希釈したテトラゾリウム塩WST-8試薬(Cell Counting Kit-8;同仁化学研究所)を1000μL/ウェル添加し、COインキュベーターにて2時間反応させた。プレートリーダーで450nm及び650nmの吸光度を測定し、該測定値の差(Abs.450-Abs.650)を細胞数として、コントロールを1としたときの相対量として算出した。
結果を図2に示す。AQP1及び/又はAQP3をノックダウンした線維芽細胞においてその増殖能が有意に低下したことが分かる。特に、AQP1とAQP3の両方をノックダウンした場合、細胞増殖能は顕著に低下した。
【0030】
<実施例1>皮膚老化改善剤のスクリーニング
以下の手順で、アクアポリンの遺伝子発現を指標に、皮膚老化改善剤のスクリーニングを行った。
DMEM培地(Sigma社製)を用い、ヒト線維芽細胞を24ウェルプレートに2×10cells/ウェルで播種し、37℃・5%CO環境下で24時間培養した。培養後、培地を除去し、PBSにて細胞を洗浄後、ヤグルマギクエキス(香栄興業株式会社製)0.2重量%(終濃度)、アマモエキス(株式会社テクノーブル社製)0.2重量%(終濃度)、又は溶媒対照(PBS、1.5μL/mL培地)を含む維持培地を加え、37℃・5%CO環境下にて、24時間培養した。培養後、培地を除去し、PBSにて細胞を洗浄
後、QIAzol Lysis Reagent(QIAGEN社製)を用いてヒト線維芽細胞のmRNAを抽出し、Superscript VILO DNA synthesis Kit(Lifetechnologies社製)を用いてcDNAを合成後、プライマー(AQP1:QT00013237、QIAGEN製、AQP3:QT00212996、QIAGEN製)を用いてAQP1又はAQP3のmRNA発現量をリアルタイムqPCR法にて測定した。また、内在性コントロール遺伝子であるGAPDHのmRNA発現量を同様に測定した。測定には、QuantiFact SYBR GREEN PCR kit(QIAGEN社製)を用いた。エキス添加群及び溶媒対照群におけるAQP1又はAQP3のmRNA発現量について、GAPDHの発現量による補正を行い、溶媒対照群の発現量を100とした場合の、エキス添加群の相対発現量を算出した。
結果を図3に示す。ヤグルマギクエキスはAQP1の発現量を、アマモエキスはAQP3の発現量を、それぞれ線維芽細胞において増加させ、皮膚老化改善剤の有効成分となり得ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のスクリーニング方法により、皮膚老化改善剤として有効な成分を探索することができる。かかる皮膚老化改善剤は、皮膚老化改善用途の皮膚外用剤や飲食品に好適に含有させることができるため、産業上非常に有用である。
図1
図2
図3