(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】インクジェットプリンター
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 129
B41J2/01 307
(21)【出願番号】P 2019186753
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-04-28
【審判番号】
【審判請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】竹花 宗一郎
【合議体】
【審判長】川俣 洋史
【審判官】門 良成
【審判官】山本 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-53221(JP,A)
【文献】特開2003-177063(JP,A)
【文献】特開2005-47261(JP,A)
【文献】特開2014-231161(JP,A)
【文献】特開2020-1296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0311234(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01- 2/215
G01J 1/00- 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を支持するプラテンと、
光が照射されることによって硬化するインクを、前記プラテンに支持されている前記記録媒体に向けて吐出するノズルが形成されているノズル面が形成されているインクジェットヘッドと、
前記記録媒体に付着したインクに光を照射する光照射装置と、
前記インクジェットヘッドおよび前記光照射装置を搭載して前記プラテンに対して走査されるキャリッジと
を備えるインクジェットプリンターであって、
前記光照射装置からの迷光が前記ノズル面に到達することを抑えるための凹凸部を、前記プラテンに対して前記キャリッジが走査される第1の方向において前記光照射装置より前記ノズル面に近い部分に備え、
前記凹凸部は、前記部分と、前記プラテンとの間の
領域のうち前記光照射装置から前記ノズル面への前記迷光の経路上の
領域に面する位置に備えられ、
前記凹凸部は、前記第1の方向に直交する第2の方向に延在する複数の溝が前記第1の方向に並べて形成されており、
前記第2の方向における範囲のうち前記溝が存在している範囲は、前記第2の方向における範囲のうち前記ノズルが存在している範囲全体を含み、
前記インクジェットプリンターは、前記インクジェットヘッドを搭載するヘッドベースを備え、
前記キャリッジは、前記ヘッドベースを搭載することによって前記インクジェットヘッドを搭載し、
前記ヘッドベースは、前記部分を含むことを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項2】
記録媒体を支持するプラテンと、
光が照射されることによって硬化するインクを、前記プラテンに支持されている前記記録媒体に向けて吐出するノズルが形成されているノズル面が形成されているインクジェットヘッドと、
前記記録媒体に付着したインクに光を照射する光照射装置と、
前記インクジェットヘッドおよび前記光照射装置を搭載して前記プラテンに対して走査されるキャリッジと
を備えるインクジェットプリンターであって、
前記光照射装置からの迷光が前記ノズル面に到達することを抑えるための凹凸部を、前記プラテンに対して前記キャリッジが走査される第1の方向において前記光照射装置より前記ノズル面に近い部分に備え、
前記凹凸部は、前記部分と、前記プラテンとの間の
領域のうち前記光照射装置から前記ノズル面への前記迷光の経路上の
領域に面する位置に備えられ、
前記凹凸部は、前記第1の方向に直交する第2の方向に延在する複数の溝が前記第1の方向に並べて形成されており、
前記第2の方向における範囲のうち前記溝が存在している範囲は、前記第2の方向における範囲のうち前記ノズルが存在している範囲を含み、
前記インクジェットプリンターは、前記インクジェットヘッドを搭載するヘッドベースを備え、
前記キャリッジは、前記ヘッドベースを搭載することによって前記インクジェットヘッドを搭載し、
前記ヘッドベースは、前記部分を含み、
前記凹凸部は、前記ヘッドベースのうち、前記プラテンに支持されている前記記録媒体に対向する面に形成されており、
前記プラテンに支持されている前記記録媒体と、前記ヘッドベースのうち、この記録媒体に対向する面との距離は、前記プラテンに支持されている前記記録媒体と、前記光照射装置のうち、この記録媒体に対向する面との距離より短いことを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項3】
記録媒体を支持するプラテンと、
光が照射されることによって硬化するインクを、前記プラテンに支持されている前記記録媒体に向けて吐出するノズルが形成されているノズル面が形成されているインクジェットヘッドと、
前記記録媒体に付着したインクに光を照射する光照射装置と、
前記インクジェットヘッドおよび前記光照射装置を搭載して前記プラテンに対して走査されるキャリッジと
を備えるインクジェットプリンターであって、
前記光照射装置からの迷光が前記ノズル面に到達することを抑えるための凹凸部を、前記プラテンに対して前記キャリッジが走査される第1の方向において前記光照射装置より前記ノズル面に近い部分に備え、
前記凹凸部は、前記部分と、前記プラテンとの間の
領域のうち前記光照射装置から前記ノズル面への前記迷光の経路上の
領域に面する位置に備えられ、
前記凹凸部は、前記第1の方向に直交する第2の方向に延在する複数の溝が前記第1の方向に並べて形成されており、
前記第2の方向における範囲のうち前記溝が存在している範囲は、前記第2の方向における範囲のうち前記ノズルが存在している範囲を含み、
前記インクジェットプリンターは、前記インクジェットヘッドを搭載するヘッドベースを備え、
前記キャリッジは、前記ヘッドベースを搭載することによって前記インクジェットヘッドを搭載し、
前記ヘッドベースは、前記部分を含み、
前記部分は、金属で形成されており、
前記凹凸部は、サンドブラストで表面処理されていることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項4】
記録媒体を支持するプラテンと、
光が照射されることによって硬化するインクを、前記プラテンに支持されている前記記録媒体に向けて吐出するノズルが形成されているノズル面が形成されているインクジェットヘッドと、
前記記録媒体に付着したインクに光を照射する光照射装置と、
前記インクジェットヘッドおよび前記光照射装置を搭載して前記プラテンに対して走査されるキャリッジと
を備えるインクジェットプリンターであって、
前記光照射装置からの迷光が前記ノズル面に到達することを抑えるための凹凸部を、前記プラテンに対して前記キャリッジが走査される第1の方向において前記光照射装置より前記ノズル面に近い部分に備え、
前記凹凸部は、前記部分と、前記プラテンとの間の
領域のうち前記光照射装置から前記ノズル面への前記迷光の経路上の
領域に面する位置に備えられ、
前記凹凸部は、前記第1の方向に直交する第2の方向に延在する複数の溝が前記第1の方向に並べて形成されており、
前記第2の方向における範囲のうち前記溝が存在している範囲は、前記第2の方向における範囲のうち前記ノズルが存在している範囲を含み、
前記インクジェットプリンターは、前記インクジェットヘッドを搭載するヘッドベースを備え、
前記キャリッジは、前記ヘッドベースを搭載することによって前記インクジェットヘッドを搭載し、
前記ヘッドベースは、前記部分を含み、
前記凹凸部は、梨地状に表面処理されていることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項5】
前記部分は、アルミニウムで形成されており、
前記凹凸部は、表面がアルマイトであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のインクジェットプリンター。
【請求項6】
前記凹凸部は、表面が黒色であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のインクジェットプリンター。
【請求項7】
前記迷光は、前記プラテンに支持されている前記記録媒体によって反射された反射光であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載のインクジェットプリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出するインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェットプリンターとして、記録媒体を支持するプラテンと、光が照射されることによって硬化するインクを、プラテンに支持されている記録媒体に向けて吐出するノズルが形成されているノズル面が形成されているインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドを搭載してプラテンに対して走査されるキャリッジと、キャリッジに搭載されていて記録媒体に付着したインクに光を照射する光照射装置と、キャリッジに搭載されていて光照射装置を覆うカバーとを備えるものが知られている(特許文献1参照。)。従来のカバーは、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えるための凹凸部を、プラテンとの間の空間のうち光照射装置からノズル面への迷光の経路上の空間に面する位置に備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の発明者は、鋭意研究の結果、「光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えるための凹凸部をインクジェットヘッドのノズル面に近い位置に配置するほど、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを凹凸部によって効果的に抑えることができる」という知見を得た。
【0005】
しかしながら、従来のインクジェットプリンターにおいては、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えるための凹凸部を光照射装置のカバーに備えるので、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えるための凹凸部がインクジェットヘッドのノズル面に十分に近い位置に配置されておらず、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを凹凸部によって十分に抑えることができていないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを凹凸部によって従来より効果的に抑えることができるインクジェットプリンターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェットプリンターは、記録媒体を支持するプラテンと、光が照射されることによって硬化するインクを、前記プラテンに支持されている前記記録媒体に向けて吐出するノズルが形成されているノズル面が形成されているインクジェットヘッドと、前記記録媒体に付着したインクに光を照射する光照射装置と、前記インクジェットヘッドおよび前記光照射装置を搭載して前記プラテンに対して走査されるキャリッジとを備え、前記光照射装置からの迷光が前記ノズル面に到達することを抑えるための凹凸部を、前記プラテンに対して前記キャリッジが走査される方向において前記光照射装置より前記ノズル面に近い部分に備え、前記凹凸部は、前記部分と、前記プラテンとの間の空間のうち前記光照射装置から前記ノズル面への前記迷光の経路上の空間に面する位置に備えることを特徴とする。
【0008】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えるための凹凸部がインクジェットヘッドのノズル面に対して従来より近い位置に配置されているので、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを凹凸部によって従来より効果的に抑えることができる。
【0009】
本発明のインクジェットプリンターは、前記インクジェットヘッドを搭載するヘッドベースを備え、前記キャリッジは、前記ヘッドベースを搭載することによって前記インクジェットヘッドを搭載し、前記ヘッドベースは、前記部分を含んでも良い。
【0010】
従来のインクジェットプリンターにおいては、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えるための凹凸部を光照射装置のカバーに備えるので、インクジェットヘッドおよびカバーの少なくとも一方が予め設計された位置からずれてキャリッジに設置された場合に、インクジェットヘッドのノズル面に対してカバーの凹凸部が予め設計された位置からずれ、その結果、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを凹凸部によって効果的に抑えることができない。本発明のインクジェットプリンターは、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えるための凹凸部を、インクジェットヘッドを搭載するヘッドベースに備えるので、ノズル面に対して凹凸部が予め設計された位置からずれる可能性を従来より抑えることができ、その結果、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを凹凸部によって従来より効果的に抑えることができる。
【0011】
本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記凹凸部は、前記ヘッドベースのうち、前記プラテンに支持されている前記記録媒体に対向する面に形成されており、前記プラテンに支持されている前記記録媒体と、前記ヘッドベースのうち、この記録媒体に対向する面との距離は、前記プラテンに支持されている前記記録媒体と、前記光照射装置のうち、この記録媒体に対向する面との距離より短くても良い。
【0012】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、プラテンに支持されている記録媒体からの距離に関して、光照射装置のうち、この記録媒体に対向する面が、ヘッドベースのうち、この記録媒体に対向する面より遠いので、プラテンに対してキャリッジが走査される場合に光照射装置が記録媒体に引っ掛かってジャムが発生する可能性を低減することができる。また、本発明のインクジェットプリンターは、プラテンに支持されている記録媒体からの距離に関して、ヘッドベースのうち、この記録媒体に対向する面を、光照射装置のうち、この記録媒体に対向する面より近くして、ヘッドベースのうち、この記録媒体に対向する面に凹凸部を形成しているので、光照射装置のうち、この記録媒体に対向する面に凹凸部を形成する場合と比較して、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを凹凸部によって効果的に抑えることができる。また、本発明のインクジェットプリンターは、プラテンに支持されている記録媒体からの距離に関して、ヘッドベースのうち、この記録媒体に対向する面が、光照射装置のうち、この記録媒体に対向する面より近いので、プラテンに支持されている記録媒体と、インクジェットヘッドのうち、この記録媒体に対向する面との距離、すなわち、ヘッドギャップが短く、その結果、印刷品質を向上することができる。
【0013】
本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記キャリッジは、前記部分を含んでも良い。
【0014】
従来のインクジェットプリンターにおいては、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えるための凹凸部を光照射装置のカバーに備えるので、インクジェットヘッドおよびカバーの少なくとも一方が予め設計された位置からずれてキャリッジに設置された場合に、インクジェットヘッドのノズル面に対してカバーの凹凸部が予め設計された位置からずれ、その結果、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを凹凸部によって効果的に抑えることができない。本発明のインクジェットプリンターは、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えるための凹凸部を、インクジェットヘッドを搭載するヘッドベースを搭載するキャリッジに備えるので、ノズル面に対して凹凸部が予め設計された位置からずれる可能性を従来より抑えることができ、その結果、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを凹凸部によって従来より効果的に抑えることができる。
【0015】
本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記部分は、金属で形成されており、前記凹凸部は、サンドブラストで表面処理されていても良い。
【0016】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、凹凸部を形成する溝より細かい凹凸がサンドブラストによって凹凸部の表面に形成されているので、光照射装置からの迷光が凹凸部におけるサンドブラストによる細かい凹凸によって散乱することによって、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えることができ、その結果、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを更に効果的に抑えることができる。
【0017】
本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記部分は、アルミニウムで形成されており、前記凹凸部は、表面がアルマイトであっても良い。
【0018】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、アルマイトによる細かい凹凸が凹凸部の表面に形成されているので、光照射装置からの迷光が凹凸部におけるアルマイトによる細かい凹凸によって散乱することによって、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えることができ、その結果、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを更に効果的に抑えることができる。
【0019】
本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記凹凸部は、表面が黒色であっても良い。
【0020】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、凹凸部の表面が黒色であるので、光照射装置からの迷光が凹凸部の表面によって吸収されることによって、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えることができ、その結果、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを更に効果的に抑えることができる。
【0021】
本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記迷光は、前記プラテンに支持されている前記記録媒体によって反射された反射光であっても良い。
【0022】
本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記凹凸部は、梨地状に表面処理されていても良い。
【0023】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、細かい凹凸が凹凸部の表面に形成されているので、光照射装置からの迷光が凹凸部の表面における細かい凹凸によって散乱することによって、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えることができ、その結果、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを更に効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のインクジェットプリンターは、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを凹凸部によって従来より効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンターの斜視図である。
【
図2】
図1に示すヘッドベースの近傍の正面図である。
【
図3】
図1に示すヘッドベースの近傍の底面図である。
【
図5】
図1に示すインクジェットプリンターのブロック図である。
【
図6】
図4に示す凹凸部の近傍の正面断面図である。
【
図7】
図6に示す例とは異なる例での、凹凸部の近傍の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0027】
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成について説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター10の斜視図である。
【0029】
図1に示すように、インクジェットプリンター10は、矢印Zで示す鉛直方向における下側から記録媒体90を支持するプラテン11と、鉛直方向に直交する矢印Yで示す左右方向に延在しているレール12と、プラテン11によって支持されている記録媒体90に対して鉛直方向における上側に配置されて左右方向に移動可能にレール12に支持されているキャリッジ13と、キャリッジ13に搭載されているヘッドベース14と、ヘッドベース14に搭載されている複数のインクジェットヘッド15と、左右方向においてヘッドベース14の両側でキャリッジ13に搭載されている2つのUV(Ultraviolet)LED(Light Emitting Diode)ランプユニット16とを備えている。インクジェットヘッド15によって吐出されるインクは、UVが照射されることによって硬化するUVインクである。
【0030】
図2は、ヘッドベース14の近傍の正面図である。
図3は、ヘッドベース14の近傍の底面図である。
図4は、
図3のA-A矢視断面図である。
図2~
図4は、キャリッジ13が省略して描かれている。
【0031】
図2~
図4に示すように、インクジェットヘッド15は、インクを鉛直方向における下側に向けて吐出するノズル15aが複数並べられたノズル列15bが形成されているノズル面15cが形成されている。ノズル列15bは、鉛直方向および左右方向の両方に直交する矢印Xで示す前後方向に延在している。
【0032】
UVLEDランプユニット16は、UVを照射する光照射装置としてのUVLEDランプ16aが左右方向および前後方向に複数並べられている。UVLEDランプ16aは、主に、ノズル面15cから遠ざかるように鉛直方向に対して傾けられた矢印16bで示す方向にUVを照射する。
【0033】
ヘッドベース14は、複数の溝14aが左右方向に並べて形成された凹凸部14bを左右方向においてインクジェットヘッド15と、UVLEDランプ16aとの間に備えている。凹凸部14bは、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを抑えるためのものである。ヘッドベース14は、プラテン11との間の空間のうちUVLEDランプ16aからノズル面15cへの迷光の経路上の空間に面する位置に凹凸部14bが備えられている。溝14aは、鉛直方向における下側が開口しており、前後方向に延在している。鉛直方向における溝14aの深さは、例えば2mmである。溝14aを形成する面のうち、左右方向においてノズル面15c側の面14cは、溝14aを形成する面のうち、UVLEDランプ16aからの迷光が最初に入射し易い面である。ヘッドベース14は、例えばアルミニウムで形成されており、例えばダイカストで製造される。ヘッドベース14は、少なくとも凹凸部14bがサンドブラストで表面処理されることによって溝14aより細かい凹凸が形成された後、少なくとも凹凸部14bが黒色でアルマイト処理されている。
【0034】
インクジェットヘッド15と、UVLEDランプ16aとは、プラテン11に対してキャリッジ13が走査される方向、すなわち、矢印Yで示す方向に並んで配置されている。ヘッドベース14は、矢印Yで示す方向において、インクジェットヘッド15と、UVLEDランプ16aとの間に配置されている。
【0035】
なお、UVLEDランプ16aからの迷光は、例えば、プラテン11に支持されている記録媒体90によって反射された反射光である。
【0036】
図5は、インクジェットプリンター10のブロック図である。
【0037】
図5に示すように、インクジェットプリンター10は、上述したインクジェットヘッド15と、上述したUVLEDランプユニット16と、キャリッジ13(
図1参照。)をレール12(
図1参照。)に沿って左右方向、すなわち、主走査方向に移動させるキャリッジ走査装置17と、前後方向、すなわち、副走査方向に記録媒体90(
図1参照。)を搬送する媒体搬送装置18と、種々の操作が入力される例えばボタンなどの操作部21と、種々の情報を表示する例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示部22と、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部23と、各種の情報を記憶する例えば半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部24と、インクジェットプリンター10全体を制御する制御部25とを備えている。
【0038】
制御部25は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを予め記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMまたは記憶部24に記憶されているプログラムを実行するようになっている。
【0039】
次に、インクジェットプリンター10の動作について説明する。
【0040】
制御部25は、通信部23を介して印刷データを受信すると、この印刷データに基づいて、記録媒体90に対して印刷を実行する。すなわち、制御部25は、キャリッジ走査装置17によって主走査方向にキャリッジ13を移動させてインクジェットヘッド15によって記録媒体90に向けてインクを吐出し、記録媒体90に付着したインクに向けてUVLEDランプユニット16によって光を照射することによって、主走査方向における記録媒体90に対する印刷を実行する。また、制御部25は、主走査方向における記録媒体90に対する印刷を実行すると、必要に応じて、媒体搬送装置18によって副走査方向に記録媒体90を搬送することによって、副走査方向における記録媒体90に対する印刷の位置を変更した後、再び主走査方向における記録媒体90に対する印刷を実行する。
【0041】
図6は、凹凸部14bの近傍の正面断面図である。
図6は、キャリッジ13が省略して描かれている。
【0042】
UVLEDランプユニット16によって光が照射される場合、UVLEDランプユニット16によって照射された光は、例えば
図6において矢印16cで示すように、直接に、または、例えば記録媒体90などの何からの物体に反射して、プラテン11と、ヘッドベース14との間の空間に入り込む可能性がある。しかしながら、プラテン11と、ヘッドベース14との間の空間に入り込んだ光は、ヘッドベース14の凹凸部14bの表面に吸収または反射されることによって、インクジェットヘッド15まで到達する可能性が抑えられる。
【0043】
以上においては、溝14aを形成する面のうち、左右方向においてノズル面15c側の面14cが左右方向に直交している。しかしながら、面14cは、
図7に示すように、左右方向に対して90°以外の角度14dで傾いていても良い。なお、
図7は、キャリッジ13が省略して描かれている。左右方向に対する面14cの角度14dは、例えば、UVLEDランプ16aと、インクジェットヘッド15との間の距離や、プラテン11からインクジェットヘッド15までの高さや、ヘッドベース14における凹凸部14bの設置可能範囲など、様々な要素に応じて適正な角度が存在する。
【0044】
以上に説明したように、インクジェットプリンター10は、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを抑えるための凹凸部14bがインクジェットヘッド15のノズル面15cに対して従来より近い位置に配置されているので、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを凹凸部14bによって従来より効果的に抑えることができる。
【0045】
従来のインクジェットプリンターにおいては、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを抑えるための凹凸部を光照射装置のカバーに備えるので、インクジェットヘッドおよびカバーの少なくとも一方が予め設計された位置からずれてキャリッジに設置された場合に、インクジェットヘッドのノズル面に対してカバーの凹凸部が予め設計された位置からずれ、その結果、光照射装置からの迷光がノズル面に到達することを凹凸部によって効果的に抑えることができない。インクジェットプリンター10は、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを抑えるための凹凸部14bを、インクジェットヘッド15を搭載するヘッドベース14に備えるので、ノズル面15cに対して凹凸部14bが予め設計された位置からずれる可能性を従来より抑えることができ、その結果、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを凹凸部14bによって従来より効果的に抑えることができる。
【0046】
インクジェットプリンター10は、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを効果的に抑えることができるので、ノズル面15cに付着したインクがノズル面15cに固着することを効果的に抑えることができる。
【0047】
インクジェットプリンター10は、従来のような、UVLEDランプ16aを覆うカバーを備える必要がないので、部品点数を低減することができ、その結果、製造コストを低減することができる。
【0048】
インクジェットプリンター10は、プラテン11に支持されている記録媒体90と、ヘッドベース14のうち記録媒体90に対向する面との距離が、プラテン11に支持されている記録媒体90と、UVLEDランプ16aのうち記録媒体90に対向する面との距離より短い。この構成により、インクジェットプリンター10は、プラテン11に支持されている記録媒体90からの距離に関して、UVLEDランプ16aのうち記録媒体90に対向する面が、ヘッドベース14のうち記録媒体90に対向する面より遠いので、プラテン11に対してキャリッジ13が走査される場合にUVLEDランプ16aが記録媒体90に引っ掛かってジャムが発生する可能性を低減することができる。また、インクジェットプリンター10は、プラテン11に支持されている記録媒体90からの距離に関して、ヘッドベース14のうち記録媒体90に対向する面を、UVLEDランプ16aのうち記録媒体90に対向する面より近くして、ヘッドベース14のうち記録媒体90に対向する面に凹凸部14bを形成しているので、UVLEDランプ16aのうち記録媒体90に対向する面に凹凸部を形成する場合と比較して、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを凹凸部14bによって効果的に抑えることができる。また、インクジェットプリンター10は、プラテン11に支持されている記録媒体90からの距離に関して、ヘッドベース14のうち記録媒体90に対向する面が、UVLEDランプ16aのうち記録媒体90に対向する面より近いので、プラテン11に支持されている記録媒体90と、インクジェットヘッド15のうち記録媒体90に対向する面であるノズル面15cとの距離、すなわち、ヘッドギャップが短く、その結果、印刷品質を向上することができる。
【0049】
インクジェットプリンター10は、凹凸部14bを形成する溝14aより細かい凹凸がサンドブラストによって凹凸部14bの表面に形成されているので、UVLEDランプ16aからの迷光が凹凸部14bにおけるサンドブラストによる細かい凹凸によって散乱することによって、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを抑えることができ、その結果、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを更に効果的に抑えることができる。
【0050】
インクジェットプリンター10は、本実施の形態において凹凸部14bの表面にサンドブラストによって細かい凹凸が形成されているが、凹凸部14bの表面にサンドブラストによって細かい凹凸が形成されていなくても良い。インクジェットプリンター10は、凹凸部14bの表面にサンドブラストによって細かい凹凸が形成されていない場合、凹凸部14bの表面にサンドブラストが施される必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0051】
インクジェットプリンター10は、アルマイトによる細かい凹凸が凹凸部14bの表面に形成されているので、UVLEDランプ16aからの迷光が凹凸部14bにおけるアルマイトによる細かい凹凸によって散乱することによって、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを抑えることができ、その結果、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを更に効果的に抑えることができる。
【0052】
インクジェットプリンター10は、本実施の形態において凹凸部14bの表面がアルマイトであるが、凹凸部14bの表面がアルマイトでなくても良い。インクジェットプリンター10は、凹凸部14bの表面がアルマイトでない場合、凹凸部14bの表面にアルマイト処理が施される必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0053】
なお、インクジェットプリンター10は、サンドブラストやアルマイト以外の方法によって凹凸部14bが梨地状に表面処理されていても良い。インクジェットプリンター10は、凹凸部14bが梨地状に表面処理されている場合、細かい凹凸が凹凸部14bの表面に形成されているので、UVLEDランプ16aからの迷光が凹凸部14bの表面における細かい凹凸によって散乱することによって、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを抑えることができ、その結果、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを更に効果的に抑えることができる。
【0054】
インクジェットプリンター10は、凹凸部14bの表面が黒色であるので、UVLEDランプ16aからの迷光が凹凸部14bの表面によって吸収されることによって、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを抑えることができ、その結果、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを更に効果的に抑えることができる。
【0055】
インクジェットプリンター10は、本実施の形態において凹凸部14bの表面がアルマイトによって黒色に形成されているが、例えば、めっき、塗装など、アルマイト以外の方法によって黒色に形成されても良い。
【0056】
インクジェットプリンター10は、本実施の形態において凹凸部14bの表面が黒色に形成されているが、凹凸部14bの表面が黒色以外の色に形成されても良いし、凹凸部14bの表面が着色されなくても良い。インクジェットプリンター10は、凹凸部14bの表面が着色されない場合、凹凸部14bの表面を着色するための処理が施される必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0057】
インクジェットプリンター10は、本実施の形態においてヘッドベース14がアルミニウムで形成されている。しかしながら、インクジェットプリンター10は、ヘッドベース14がアルミニウム以外の金属で形成されていても良いし、ヘッドベース14が例えば樹脂など金属以外の材料で形成されていても良い。
【0058】
インクジェットヘッド15によって吐出されるインクは、本実施の形態において、UVが照射されることによって硬化するUVインクである。しかしながら、インクジェットヘッド15によって吐出されるインクは、UV以外の光が照射されることによって硬化するインクでも良い。
【0059】
インクジェットプリンター10は、本実施の形態においてヘッドベース14に凹凸部14bを備えている。しかしながら、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを抑えるための凹凸部は、プラテン11に対してキャリッジ13が走査される方向、すなわち、矢印Yで示す方向においてUVLEDランプ16aよりノズル面15cに近い部分に備えられていれば良いので、ヘッドベース14以外の箇所に備えられていても良い。例えば、インクジェットプリンター10は、凹凸部14bと同様の凹凸部を、凹凸部14bに代えて、または、凹凸部14bに加えて、キャリッジ13がプラテン11との間の空間のうちUVLEDランプ16aからノズル面15cへの迷光の経路上の空間に面する位置に備えても良い。また、インクジェットプリンター10は、UVLEDランプ16aからの迷光がノズル面15cに到達することを抑えるための凹凸部をインクジェットヘッド15に備えても良い。
【0060】
インクジェットプリンター10は、凹凸部14bと同様の凹凸部を、凹凸部14bに代えて、キャリッジ13がプラテン11との間の空間のうちUVLEDランプ16aからノズル面15cへの迷光の経路上の空間に面する位置に備える場合、ヘッドベース14を備えずに、インクジェットヘッド15がキャリッジ13に直接搭載されても良い。
【0061】
インクジェットプリンター10は、本実施の形態において、プラテン11に対して記録媒体90を副走査方向に搬送することによって、インクジェットヘッド15およびUVLEDランプユニット16に対して記録媒体90を副走査方向に移動させている。しかしながら、インクジェットプリンター10は、プラテン11を
図1に示すものより副走査方向に伸ばして、いわゆるフラットベッドタイプのインクジェットプリンターにして、プラテン11に対してレール12およびキャリッジ13を副走査方向に移動させる機構を備えることによって、記録媒体90に対してインクジェットヘッド15およびUVLEDランプユニット16を副走査方向に移動させても良い。
【0062】
本発明は、上述した各実施の形態において平面に印刷するインクジェットプリンターに採用されているが、3D造形用のインクジェットプリンターに採用されても良い。
【符号の説明】
【0063】
10 インクジェットプリンター
11 プラテン
13 キャリッジ
14 ヘッドベース(部分)
14b 凹凸部
15 インクジェットヘッド
15a ノズル
15c ノズル面
16a UVLEDランプ(光照射装置)
90 記録媒体