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特許7605585コンクリート構造物の施工方法及びコンクリート構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の施工方法及びコンクリート構造物
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20241217BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20241217BHJP
   E04C 5/07 20060101ALI20241217BHJP
   E04B 1/35 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
E04G21/02 103B
E04G21/02 103Z
E04G21/12 105A
E04C5/07
E04B1/35 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019234097
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102867
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-10-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】和田 健介
(72)【発明者】
【氏名】小倉 大季
(72)【発明者】
【氏名】田中 博一
(72)【発明者】
【氏名】野澤 剛二郎
(72)【発明者】
【氏名】兼光 知巳
【審査官】齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-217682(JP,A)
【文献】特開平10-235623(JP,A)
【文献】特開2019-112884(JP,A)
【文献】特開2015-186851(JP,A)
【文献】特開2004-036123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0071949(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
E04G 21/12
E04C 5/07
E04B 1/04
E04B 1/35
B29C 67/00
B28B 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造装置の第1射出ノズルから補強材料を射出して補強部材を形成する補強部材形成工程と、
付加製造装置の噴射ノズルからコンクリート流動物を噴射し、前記コンクリート流動物が前記補強部材に接して堆積したコンクリート堆積部を形成するコンクリート堆積部形成工程と、
を交互に、且つ複数回行ってコンクリート構造物を形成し、
前記補強部材は、微小な任意数の多面体を三次元の各方向に連結させたものの全ての辺をなぞるように網状に形成されている、
コンクリート構造物の施工方法。
【請求項2】
前記噴射ノズルから噴射される前記コンクリート流動物の拡散角度は、前記第1射出ノズルから射出される前記補強材料の拡散角度よりも大きい、
請求項1に記載のコンクリート構造物の施工方法。
【請求項3】
付加製造装置の第2射出ノズルから定着材料を射出して定着部材を形成する定着部材形成工程をさらに備え、
前記コンクリート堆積部形成工程において、前記コンクリート流動物を前記定着部材に定着させつつ前記補強部材及び前記定着部材に接して堆積させる、
請求項1または2に記載のコンクリート構造物の施工方法。
【請求項4】
請求項1からの何れか一項に記載のコンクリート構造物の施工方法によって形成された、
コンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の施工方法及びコンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば橋脚等のコンクリート構造物を建築する際には、先ず、足場を組み立てる。その後、基礎に鉄筋を組み立て、鉄筋を囲むように型枠を組み立て、型枠内にコンクリートを打ち込む。コンクリートの養生、硬化後に、型枠を解体する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-214290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コンクリート構造物を施工する際の足場の組み立て及び解体は、煩雑な作業であり、コンクリート構造物の建築方法の生産性の向上を妨げる一因であった。また、鉄筋等の従来の補強部材は長尺、大型であり、頑強であるため、施工時の作業効率及びコンクリート構造物の形状の自由度が低下する場合があった。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされ、生産性及びコンクリート構造物の形状の自由度を高めるコンクリート構造物の施工方法及びコンクリート構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンクリート構造物の施工方法は、付加製造装置の第1射出ノズルから補強材料を射出して補強部材を形成する補強部材形成工程と、付加製造装置の噴射ノズルからコンクリート流動物を噴射し、前記コンクリート流動物が前記補強部材に接して堆積したコンクリート堆積部を形成するコンクリート堆積部形成工程と、を交互に、且つ複数回行ってコンクリート構造物を形成し、前記補強部材は、施工面から上方に突出した長尺形状の複数の縦部と、隣り合う前記縦部どうしを接続するように配された複数の横部と、で形成されている。
【0007】
上述のコンクリート構造物の施工方法によれば、補強部材形成工程において補強部材を形成し、補強部材が硬化等によって安定し次第、コンクリート堆積部形成工程を行い、安定した補強部材に接するコンクリート堆積部を形成できる。第1射出ノズルから射出する補強材料の射出量や射出速度を調整し、コンクリート構造物を完成させるまでに補強部材形成工程とコンクリート堆積部形成工程とを交互に行う回数を調整することで、任意の形状のコンクリート構造物を容易に施工できる。また、第1射出ノズルから射出されて施工面又は硬化したコンクリート流動物から突出する補強材料の長さを従来の鉄筋等よりも短くすることができる。このことによって、鉄筋等を用いた従来の施工時のように複数の鉄筋等を互いに束ねる結束具や、長尺の鉄筋等を支える支持具等を用いずに済み、施工時の作業効率が向上する。
【0008】
本発明に係るコンクリート構造物の施工方法では、補強部材は長尺形状を有し、前記補強部材形成工程において、前記補強部材の軸線方向に沿って幅が連続的に変化する前記補強部材を形成してもよい。
【0009】
上述のコンクリート構造物の施工方法によれば、コンクリート構造物の形状に合わせて補強部材の軸線方向の幅を連続的に変化させることができる。例えばコンクリート構造物の補強度を最も高めるべきと思われる位置の補強部材の幅を大きくし、その位置からコンクリート構造物の各位置において求められる補強度に合わせて補強部材の幅を調整できる。
【0010】
本発明に係るコンクリート構造物の施工方法では、補強部材は長尺形状を有し、前記補強部材形成工程において、前記補強部材の軸線方向に沿って断面形状が連続的に変化する前記補強部材を形成してもよい。
【0011】
上述のコンクリート構造物の施工方法によれば、コンクリート構造物の形状に合わせて補強部材の軸線方向の断面形状を連続的に変化させることができる。コンクリート構造物の各位置において求められる補強度や細かい形状、装飾等に合わせて補強部材の断面形状を変更できる。
【0012】
本発明に係るコンクリート構造物の施工方法では、前記噴射ノズルから噴射される前記コンクリート流動物の拡散角度は、前記第1射出ノズルから射出される前記補強材料の拡散角度よりも大きくてもよい。
【0013】
上述のコンクリート構造物の施工方法によれば、第1射出ノズルから補強材料をコンクリート流動物よりも小さい拡散角度で射出すると共に積層し、噴射ノズルからコンクリート流動物を補強材料よりも大きい拡散角度で噴射することで、補強部材に接し且つ任意の大きさ及び形状を有するコンクリート構造物を容易に形成できる。
【0014】
本発明に係るコンクリート構造物の施工方法では、付加製造装置の第2射出ノズルから定着材料を射出して定着部材を形成する定着部材形成工程をさらに備え、前記コンクリート堆積部形成工程において、前記コンクリート流動物を前記定着部材に定着させつつ前記補強部材及び前記定着部材に接して積層させてもよい。
【0015】
上述のコンクリート構造物の施工方法によれば、定着部材形成工程において定着部材を形成し、コンクリート堆積部形成工程においてコンクリート流動物を定着部材に定着させつつ積層できる。その結果、コンクリート堆積部形成工程において、コンクリート流動物を効率良く積層し、コンクリート構造物を容易に形成できる。
【0016】
本発明に係るコンクリート構造物は、上述のコンクリート構造物の施工方法によって形成されている。
上述のコンクリート構造物によれば、補強部材が従来のように補強部材として定型の鉄筋等を用いた場合に施工するのは難しい形状を有していても、第1射出ノズルからの補強材料の射出量及び射出速度を調整しつつ、所望の形状の補強部材及びこの補強部材を備えたコンクリート構造物を形成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コンクリート構造物の生産性及び形状の自由度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態のコンクリート構造物の側面図である。
図2図1に示すコンクリート構造物の断面図であり、図1に示すZ-Z線で矢視した断面図である。
図3図1に示すコンクリート構造物の施工方法を説明するための側面図である。
図4図1に示すコンクリート構造物の施工方法を説明するための側面図である。
図5】本発明の第2実施形態のコンクリート構造物の図であり、図1に示すZ-Z線で矢視した場合に対応する断面図である。
図6図5に示すコンクリート構造物の施工方法を説明するための側面図である。
図7図5に示すコンクリート構造物の施工方法を説明するための側面図である。
図8図5に示すコンクリート構造物の施工方法を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るコンクリート構造物の施工方法及びコンクリート構造物の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
先ず、本発明に係る第1実施形態のコンクリート構造物11の構成及びコンクリート構造物11の施工方法について説明する。
【0021】
[コンクリート構造物の構成]
図1及び図2に示すように、コンクリート構造物11は、コンクリート本体21と、補強部材30と、を備える。第1実施形態のコンクリート構造物11は、不図示の土木構造物、建築物等に用いられる柱状体であり、例えば地面や基礎の表面等の施工面Pに対して略垂直なD1方向に沿って延びている。コンクリート構造物11は、略角柱状に形成されている。
【0022】
コンクリート本体21は、付加製造装置の噴射ノズル202(図4参照)から噴射されたコンクリート流動物121が積層した後に硬化したものである。コンクリート本体21の材料には、例えば水硬性混合物が用いられる。コンクリート本体21の材料及びコンクリート流動物121は、例えばセメントペースト、モルタル、コンクリート等の種々のセメント系材料と、ジオポリマー組成物等を含んでいる。
【0023】
補強部材30は、コンクリート本体21の内部に埋まっており、コンクリート本体21の芯材の役割を担っている。第1実施形態では、補強部材30は、複数の縦部31と、複数の横部32と、を備える。複数の縦部31は、施工面Pから上方に突出し、D1方向に沿って延び、D1方向を軸線方向として長尺形状を有する。複数の横部32は、D1方向に交差するD2方向及びD3方向に沿って延び、D2方向又はD3方向を軸線方向とする長尺形状を有する。
【0024】
D1方向に沿って平面視すると、複数の縦部31は、互いに所定の間隔をあけて、コンクリート構造物11の輪郭よりも内側においてコンクリート構造物11の輪郭をなぞるように配置されている。以下、D1方向に沿って見る場合を単に「平面視」と記載し、例えばD2方向やD3方向から見る場合等のようにZ方向に交差する方向から見る場合を単に「側面視」と記載する場合がある。
【0025】
複数の横部32の各々は、互いに隣り合う縦部31、31を接続して支持するように形成されている。さらに、複数の横部32は、D1方向の互いに異なる位置に、互いに所定の間隔をあけて配置されている。即ち、複数の横部32の各々は、複数の縦部31と互いに異なる方向に延び、複数の縦部31と交差している。
【0026】
補強部材30の材料は、例えば鉄等の金属材料を含み、必要に応じて所定の条件等により硬化可能な粘着材等をさらに含んでいる。金属材料は、コンクリート構造物11のコンクリート本体21を補強し得る主体物であれば、特に限定されない。粘着材は、金属材料を含んだ状態で金属材料を射出ノズルから射出可能な程度に流動させ、且つ所望の形状をなし得るものであることが好ましい。粘着材は、例えば熱可塑性のバインダーや、一定時間以上空気に触れると乾燥により硬化するもの、紫外線が照射されることによって硬化する紫外線硬化樹脂であってもよい。
【0027】
[コンクリート構造物の施工方法]
第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法は、上述のコンクリート構造物11を施工する方法であり、少なくとも補強部材形成工程と、コンクリート堆積部形成工程と、を備える。
【0028】
先ず、1回目の補強部材形成工程において、施工面Pに補強部材30を形成する。図3に示すように、補強部材形成用の付加製造装置の射出ノズル(第1射出ノズル)201から所謂積層方式で補強部材30の材料(補強材料)MをD1方向に沿って射出し、複数の縦部31を所定の配置(図1及び図2参照)に形成する。補強部材形成用の付加製造装置及び射出ノズル201として、所謂、金属3Dプリンタ及び金属用射出ノズルを適用できる。
【0029】
詳しく説明すると、D2方向又はD3方向(図3ではD2方向)で互いに所定の間隔をあけて、且つコンクリート構造物11の形状に合わせて、射出ノズル201から材料Mを射出し、射出ノズル201を施工面PからD1方向に沿って上方に移動させ、材料MをD1方向に積層する。D1方向に積層された材料Mは、一定時間以上空気に触れる等の所定の条件を満たすと硬化すること等によって安定し、複数の縦部31を形成する。ここで、安定するとは、自重や重力によって変形したり、折れたりしない状態になることを意味する。
【0030】
図3では、材料Mが複数の射出ノズル201から並列で射出されることによって、D2方向及びD3方向に互いに間隔をあけて並ぶ縦部31が略同時に形成されている。なお、複数の縦部31は、1つの射出ノズル201から材料Mが射出されて逐次形成されてもよい。
【0031】
図3では、複数の射出ノズル201の各々から、略一定の射出量及び略一定の射出速度で材料Mが射出されている。そのため、D1方向における縦部31の幅W31は、略一定である。なお、射出ノズル201から射出する材料Mの射出量及び射出速度を、D1方向に沿って射出ノズル201の射出面を施工面Pから上方に移動させる間に増減させてもよい。材料Mの射出速度が略一定であれば、材料Mの射出量が増大すると、縦部31の幅W31が増加する。材料Mの射出量が減少すると、縦部31の幅W31が減少する。材料Mの射出量が略一定であれば、材料Mの射出速度が増大すると、縦部31の幅W31が減少する。材料Mの射出速度が減少すると、縦部31の幅W31が増加する。
【0032】
続いて、図示していないが、補強部材形成用の付加製造装置の射出ノズル201から材料MをD2方向又はD3方向に沿って射出し、D2方向又はD3方向で隣り合う縦部31、31を接続するように積層し、複数の横部32を形成する。材料MをD2方向又はD3方向に沿って射出する場合、材料Mが射出ノズルの射出口から射出された後に重力の影響を受けても落下しない程度に硬化して安定するまでの時間tを考慮して、材料Mの射出量及び射出速度を設定する。時間tが短くなる程、D2方向又はD3方向の縦部31、31の許容間隔を広くすることができる。
【0033】
複数の射出ノズル201の各々から、材料Mを射出する際に、材料Mの射出量、射出速度及び射出口の形状等を連続的に変更することで、縦部31及び横部32の各々の断面形状を変化させることができる。
【0034】
次いで、材料Mの特性及び安定させるための条件をふまえ、少なくともD1方向における長さH31の範囲内の複数の縦部31及び横部32を所定の条件で安定させる。例えば、材料Mが一定時間空気に触れることで硬化して安定する場合は、材料Mの射出量、射出速度、及び、射出ノズル201のZ方向の移動を時間tに合わせて調整する。材料Mが加熱されることで硬化して安定する場合は、射出ノズル201から射出された材料Mに対して、必要に応じて側方から熱風を当てる。
【0035】
次いで、1回目のコンクリート堆積部形成工程において、図4に示すように、縦部(補強部材)31及び図示略の横部(補強部材)32に接するコンクリート堆積部80を形成する。コンクリート堆積部形成工程では、コンクリート噴射用の付加製造装置の噴射ノズル202から、縦部31及び横部32に向けて所謂吹付け方式でコンクリート流動物121を噴射する。噴射されたコンクリート流動物121は、縦部31及び横部32を埋めつつ、施工面Pから概ね長さH31と同じ高さまで堆積し、コンクリート堆積部80を形成する。
【0036】
コンクリート噴射用の付加製造装置及び噴射ノズル202として、公知の噴射ノズルを適用でき、例えばトンネルの内壁等の補強に用いられる吹き付け装置等を適用できる。噴射ノズル202から噴射されるコンクリート流動物121の進行方向の中心に対してなす拡散角度θ2は、射出ノズル201から射出される材料Mの進行方向の中心に対してなす拡散角度θ1よりも大きい。噴射ノズル202には、複数の噴射口が互いに間隔をあけて形成されている。噴射ノズル202の噴射口の各々は、射出ノズル201の射出口よりも小さい。
【0037】
1回目のコンクリート堆積部形成工程の後、又は1回目のコンクリート堆積部形成工程と同時に、2回目の補強部材形成工程を行う。2回目の補強部材形成工程では、図4に示すように、既に安定した複数の縦部31の各々の上端部に、射出ノズル201から材料(補強材料)MをD1方向に沿って射出する。また、補強部材形成用の付加製造装置の射出ノズル201から材料MをD2方向又はD3方向に沿って射出し、D2方向又はD3方向で隣り合う縦部31、31を接続するように積層し、複数の横部32を形成する。
【0038】
次いで、2回目のコンクリート堆積部形成工程において、1回目のコンクリート堆積部形成工程で形成したコンクリート堆積部80の上、且つ2回目の補強部材形成工程で形成した縦部31及び横部32に向けて、噴射ノズル202からコンクリート流動物121を噴射する。このことによって、2回目の補強部材形成工程で形成した縦部(補強部材)31及び図示略の横部(補強部材)32に接するコンクリート堆積部80を1回目のコンクリート堆積部形成工程で形成したコンクリート堆積部80の上に堆積させる。
【0039】
この後、上述の補強部材形成工程と、コンクリート堆積部形成工程とを交互に且つK回(Kは2以上の自然数)行う。「交互に」とは、射出ノズル201から射出された材料Mのうち少なくとも安定して形成された複数の縦部31及び横部32に接するコンクリート堆積部80を複数回にわたって段階的に形成することを意味する。1回の「補強部材形成工程」は、D1方向、D2方向及びD3方向における所定の範囲内に複数の縦部31や横部32(範囲の大きさに応じて横部32は含まれない場合がある)を形成することを意味する。そのため、射出ノズル201からの材料Mの射出は中断せずに連続して行い、射出された材料Mのうち所定の範囲内で安定してなる複数の縦部31や横部32に噴射ノズル202からコンクリート流動物121を噴射し、複数の縦部31や横部32に接するコンクリート堆積部80を射出ノズル201の移動方向に沿って断続的に形成する場合も、補強部材形成工程とコンクリート堆積部形成工程とを交互に且つ複数回行うことに含まれる。即ち、k回目(kは、1以上K以下の自然数)の補強部材形成工程として、(k-1)回目のコンクリート堆積部形成工程の後、又は(k-1)回目のコンクリート堆積部形成工程と同時に、射出ノズル201から材料Mを(k-1)回目の補強部材形成工程で形成した複数の縦部31及び複数の横部32につなげて射出し、積層する。このことによって、(k-1)回目の複数の縦部31及び複数の横部32に連結するk回目の複数の縦部31及び複数の横部32を形成する。
【0040】
続いて、k回目のコンクリート堆積部形成工程として、k回目の補強部材形成工程後に安定した縦部31及び横部32に向けて、コンクリート噴射用の付加製造装置の噴射ノズル202からコンクリート流動物121を噴射し、(k-1)回目のコンクリート堆積部形成工程で形成したコンクリート堆積部80にコンクリート流動物121を堆積させる。このことによって、k回目の複数の縦部31及び複数の横部32に接し且つ(k-1)回目のコンクリート堆積部80と一体であるk回目のコンクリート堆積部80を形成する。
【0041】
補強部材形成工程とコンクリート堆積部形成工程とを交互に且つK回行うことによって、1回目からK回目までの複数の縦部31及び横部32は補強部材30を構成し、1回目からK回目までのコンクリート堆積部80はコンクリート本体21を構成し、コンクリート構造物11が完成する。
【0042】
回数K及びk回目の縦部31及び横部32の各々の長さは、コンクリート構造物11の形状を勘案して適宜設定する。例えば、予備実験等により1回ごとの縦部31のD1方向の好適な長さHdが予めわかっていれば、D1方向の全長がHtのコンクリート構造物11を、補強部材形成工程とコンクリート堆積部形成工程とを交互に且つ凡そ(Ht/Hd)回行うことによって形成できる。
【0043】
また、k回目の縦部31及び横部32の各々の長さは、1回目からK回目まで一定であってもよく、一定ではなくてもよい。例えば、射出ノズル201から材料MをD2方向又はD3方向やD1方向及び水平方向に交差する任意の方向に射出する場合、材料Mは、特に安定するまでの間、施工面Pに脱落する方向に重力を受ける。そのため、例えば横部32のように、射出ノズル201から材料Mを水平方向の成分を含む任意の方向に射出する場合には、縦部31のように射出ノズル201から材料MをD1方向のみに射出する場合よりも1回ごとに射出して安定させる材料Mの長さを短くすることができる。
【0044】
以上説明した第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法によれば、補強部材形成工程において補強部材30の一部の縦部31及び横部32を形成し、縦部31及び横部32が硬化等によって安定し次第、コンクリート堆積部形成工程において前述の縦部31及び横部32に接するコンクリート堆積部80を形成できる。第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法によれば、射出ノズル201から射出する材料Mの射出量や射出速度、補強部材形成工程及びコンクリート堆積部形成工程を行う回数K、及び1回ごとの縦部31及び横部32の各々の長さ等を調整することで、任意の形状のコンクリート構造物11を容易に施工できる。
【0045】
射出ノズル201から射出されて施工面P又は(k-1)回目のコンクリート堆積部80から所定の方向に突出するk回目の縦部31や横部32の各々の長さを従来のコンクリート構造物の施工方法等に用いられる鉄筋等の補強部材よりも短く且つ自由に設定できる。そのため、k回目の縦部31及び横部32は、自立し易くなる。このことによって、鉄筋等を用いた従来の施工時のように、複数の鉄筋等を互いに束ねる結束具や、長尺の鉄筋等を支える支持具等を用いずに済み、コンクリート構造物11の施工時の作業効率が向上する。
【0046】
また、従来のコンクリート構造物の施工時のように、事前に足場を組み立てる必要もコンクリート構造物11の完成後に足場を解体する必要もなく、コンクリート構造物11の生産性を高めることができる。さらに、付加製造装置又は射出ノズル201、噴射ノズル202をロボット装置や自動走行装置に接続し、自動的に作業可能とすることで、作業者が休む夜間や、作業者が作業し難い場所、環境等でもコンクリート構造物11を施工可能にし、コンクリート構造物11の生産性をより一層高めることができる。したがって、第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法によれば、コンクリート構造物11の生産性及び形状の自由度を高めることができる。
【0047】
また、第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法の補強部材形成工程において、補強部材30が形成されるD1方向(軸線方向)での縦部(補強部材)31や、D2方向又はD3方向(軸線方向)での横部(補強部材)32の幅を軸線方向に沿って連続的に変化させることができる。第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法によれば、コンクリート構造物11の形状に合わせて補強部材30の縦部31や横部32の幅を連続的に変化させ、例えばコンクリート構造物11において補強度を最も高めるべきと思われる位置の補強部材30の幅を大きくし、その位置から周辺に向かって補強部材30の幅を減じることができる。即ち、コンクリート構造物11の各位置において求められる補強度に合わせて補強部材30の幅を調整できる。
【0048】
また、第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法の補強部材形成工程において、D1方向での縦部31の断面形状やD2方向又はD3方向での横部32の断面形状を軸線方向に沿って連続的に変化させることができる。第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法によれば、コンクリート構造物11の各位置において求められる補強度や細かい形状、装飾等に合わせて補強部材30の断面形状を軸線方向で容易且つ自在に変更できる。
【0049】
また、第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法において、噴射ノズル202から噴射されるコンクリート流動物121の拡散角度θ2は、射出ノズル201から射出される材料Mの拡散角度θ1よりも小さい。第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法によれば、材料Mを射出ノズル201からコンクリート流動物121よりも狭い拡散角度で射出すると共に所定の方向に積層できる。噴射ノズル202からコンクリート流動物121を材料Mの幅よりも広い拡散角度で噴射することで、縦部31及び横部32に接し且つ任意の大きさのコンクリート堆積部80を円滑に形成できる。
【0050】
第1実施形態のコンクリート構造物11は、コンクリート本体21と、コンクリート本体21に埋まっている補強部材30と、を備え、上述のコンクリート構造物の施工方法によって形成される。上述のコンクリート構造物11の施工方法によれば、補強部材30が従来のように補強部材として定型且つ長尺の鉄筋等を用いた場合に施工するのは難しい形状を有していても、射出ノズル201からの材料Mの射出量及び射出速度を調整しつつ、所望の形状の補強部材30を形成できる。上述のコンクリート構造物11の施工方法によれば、噴射ノズル202からのコンクリート流動物121の噴射量及び噴射速度、噴射角度等を調整しつつ、所望の形状のコンクリート堆積部80を形成できる。したがって、第1実施形態のコンクリート構造物11によれば、施工時の生産性及び形状の自由度を高めることができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態のコンクリート構造物の構成及びコンクリート構造物の施工方法について説明する。なお、以下の第2実施形態のコンクリート構造物の構成及びコンクリート構造物の施工方法の説明では、第1実施形態のコンクリート構造物11の構成及びコンクリート構造物の施工方法とは異なる内容について説明し、第1実施形態のコンクリート構造物11の構成及びコンクリート構造物の施工方法と重複する内容は省略する。また、以下の第2実施形態のコンクリート構造物において、第1実施形態のコンクリート構造物11の構成と共通する構成については同一の符号を用いる。
【0052】
[コンクリート構造物の構成]
図5に示すように、本発明に係る第2実施形態のコンクリート構造物12は、コンクリート本体21と、補強部材30に加えて、定着部材40を備える。コンクリート構造物12は、不図示の土木構造物、建築物等に用いられる柱状体であり、施工面Pに対して略垂直なD1方向に沿って延びている。コンクリート構造物12は、略角柱状に形成されている。
【0053】
定着部材40は、少なくとも補強部材30とは異なる位置に配置され、第2実施形態では平面視で補強部材30に囲まれた領域内に配置されている。定着部材40は、図5に示すようにD2方向に沿って一直線上に延びており、図示していないが縦部31と同様に施工面PからD1方向に沿って上方に延びている。
【0054】
定着部材40は、コンクリート噴射用の付加製造装置の噴射ノズル202から噴射されたコンクリート流動物121を自身に定着させる部材である。「自身に定着させる」とは、噴射ノズル202から定着部材40に向けて噴射されたコンクリート流動物121の少なくとも一部が先ず定着部材40の表面等に付着し、表面等に付着したコンクリート流動物121に対して続いて噴射ノズル202から噴射されたコンクリート流動物121が積層され得ることを意味する。
【0055】
定着部材40は、後述する射出ノズル(第2射出ノズル)203(図6参照)から定着材料Qが所望の形状を描くように射出され、硬化等することによって安定することで形成されている。所望の形状は、例えば、D1方向及びD2方向を含む面内で構成される2次元の網状や、2次元の網状がD3方向に拡がった3次元の網状、2次元もしくは3次元の格子状等であってもよい。定着部材40には、複数の孔が形成されていることが好ましい。孔の面積は、D2方向又はD3方向で互いに隣り合う縦部31、31とD1方向で互いに隣り合う横部32、32とに囲まれる隙間の面積よりも小さい。孔が形成されている場合、前述のように噴射ノズル202から噴射された初期のコンクリート流動物121が孔を通過しつつ、コンクリート流動物121の定着部材40の表面への付着によって孔の面積が徐々に縮小し、噴射ノズル202から噴射された中期以降のコンクリート流動物121が孔の外周部に効率良く定着する。定着部材40の形状は、噴射ノズル202から噴射されたコンクリート流動物121を自身に定着させることができる形状であれば、特に限定されない。
【0056】
定着部材40の材料(定着材料)Qは、補強部材30の材料Mと同じ材料であってもよい。材料Qが材料Mと同じである場合、定着部材40は、コンクリート構造物12の補強部材としても機能する。材料Qは、例えば、コンクリート流動物121に対する定着力を発現可能な粗骨材、或いは樹脂、或いは石膏等の母材と、必要に応じて所定の条件等により硬化可能な粘着材等と、を含んでいる。粘着材は、母材を含んだ状態で母材を射出ノズル203から射出可能な程度に流動させ、且つ所望の形状をなし得るものであれば、特に限定されない。粘着材は、例えば熱可塑性のバインダーや、一定時間以上空気に触れると乾燥により硬化するもの、紫外線が照射されることによって硬化する紫外線硬化樹脂であってもよい。
【0057】
[コンクリート構造物の施工方法]
第2実施形態のコンクリート構造物の施工方法は、上述のコンクリート構造物12を施工する方法であり、少なくとも第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法と同様の補強部材形成工程と、コンクリート堆積部形成工程に加え、定着部材形成工程を備える。
【0058】
定着部材形成工程は、コンクリート堆積部形成工程と交互に複数回、又はコンクリート堆積部形成工程の前に行われる。第2実施形態では、定着部材形成工程は、補強部材形成工程と略同時に、コンクリート堆積部形成工程と交互に複数回行われるものとする。第2実施形態では、定着部材40が平面視で補強部材30に囲まれた領域内に形成されることを考慮し、射出ノズル203の移動のしやすさを確保するため、D1方向において定着部材形成工程を補強部材形成工程よりもやや先行させる。
【0059】
図6に示すように、1回目の定着部材形成工程において、定着材料射出用の付加製造装置の射出ノズル203から所謂積層方式で材料Qを射出し、材料Qを安定させ、定着部材40を形成する。例えば、定着部材40は、定着部材40の設置領域内で、微小な任意数の多面体(図6では正四面体)をD1方向、D2方向、D3方向の各方向に連結させたものとする。射出ノズル203は、前述の多面体の全辺をなぞるように移動しつつ、材料Qを射出し、安定させることができる。安定した材料Qは、定着部材40を構成する。このような形状を有する定着部材40では、前述の多面体の各面にあたる部分に孔が形成されている。
【0060】
次いで、図7に示すように、材料QがD1方向にある程度の長さ(高さ)積層されたところで、第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法と同様に1回目の補強部材形成工程を行い、D1方向の概ね長さH31を有する複数の縦部31を形成する。図示していないが、補強部材形成用の付加製造装置の射出ノズルから材料MをD2方向又はD3方向に沿って射出し、複数の横部32を適宜形成してもよい。
【0061】
次いで、図8に示すように、第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法と同様に1回目のコンクリート堆積部形成工程を行う。第2実施形態のコンクリート堆積部形成工程では、コンクリート噴射用の付加製造装置の噴射ノズル202から、定着部材40(即ち、安定した材料Q)に向けてコンクリート流動物121を噴射する。噴射ノズル202から噴射されたコンクリート流動物121は、定着部材40の前述の孔を通過しつつ、多面体の辺に相当する部分に徐々に積層される。コンクリート流動物121の積層によって孔の面積が徐々に縮小し、噴射ノズル202から噴射されたコンクリート流動物121は、孔の外周部に効率良く積層され、全体として定着部材40に定着する。このことによって、定着部材40の少なくとも下端部に接するコンクリート堆積部80が形成される。
【0062】
さらに、噴射ノズル202から、定着部材40に向けてコンクリート流動物121を噴射し、1回目の補強部材形成工程で形成した縦部31及び横部32を埋めつつ、施工面Pから概ね長さH31と同じ高さまで堆積させ、コンクリート堆積部80を形成する。即ち、第2実施形態の1回目のコンクリート堆積部形成工程では、噴射ノズル202から噴射したコンクリート流動物121を定着部材40に定着させつつ、縦部31や横部32(即ち、補強部材30)及び定着部材40に接するように積層させる。
【0063】
次いで、上述の定着部材形成工程及び補強部材形成工程と、コンクリート堆積部形成工程とを交互に且つK回行う。即ち、k回目の定着部材形成工程及び補強部材形成工程として、(k-1)回目のコンクリート堆積部形成工程の後、又は(k-1)回目のコンクリート堆積部形成工程と同時に、射出ノズル203から材料Qを(k-1)回目の定着部材形成工程での形成後に安定した材料Qにつなげて射出し、D1方向に定着部材40を延ばす。また、射出ノズル201から材料Mを(k-1)回目の補強部材形成工程で形成した縦部31及び複数の横部32につなげて射出し、積層する。
【0064】
続いて、k回目のコンクリート堆積部形成工程として、k回目の定着部材形成工程でD1方向に延ばして形成した定着部材40に向けてコンクリート噴射用の付加製造装置の噴射ノズル202からコンクリート流動物121を噴射し、(k-1)回目のコンクリート堆積部形成工程で形成したコンクリート堆積部80にコンクリート流動物121を堆積させる。このことによって、k回目の定着部材形成工程で形成した定着部材40に定着し、k回目の複数の縦部31及び複数の横部32に接し且つ(k-1)回目のコンクリート堆積部80と一体であるk回目のコンクリート堆積部80を形成する。
【0065】
定着部材形成工程及び補強部材形成工程とコンクリート堆積部形成工程とを交互に且つK回行うことによって、安定した材料Qの形成範囲が延びて定着部材40が構成され、第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法と同様に、補強部材30及びコンクリート本体21が構成され、コンクリート構造物12が完成する。
【0066】
以上説明した第2実施形態のコンクリート構造物12及びコンクリート構造物の施工方法によれば、第1実施形態のコンクリート構造物11及びコンクリート構造物の施工方法と同様の構成を備えることで、第1実施形態のコンクリート構造物11及びコンクリート構造物の施工方法と同様の作用効果が得られる。
【0067】
また、第2実施形態のコンクリート構造物の施工方法は、第1実施形態のコンクリート構造物の施工方法の各工程に加え、定着部材射出用の付加製造装置の射出ノズル203から材料Qを射出して定着部材40を形成する定着部材形成工程をさらに備える。第2実施形態のコンクリート構造物の施工方法では、コンクリート堆積部形成工程において、噴射ノズル202から噴射されたコンクリート流動物121を定着部材40に定着させつつ、縦部31及び横部32に接するように積層させる。第2実施形態のコンクリート構造物の施工方法によれば、コンクリート堆積部形成工程において、コンクリート流動物121を定着部材40に定着させて効率良く積層し、コンクリート構造物12を容易に形成できる。
【0068】
以上、本発明に係る実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されない。特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、本発明の種々の変更が可能である。
【0069】
例えば、本発明に係るコンクリート構造物の形状は、コンクリート構造物11、12のように四角柱状(角柱状)に限定されず、三角柱状、六角柱状や円柱状でもよく、付加製造技術で造形し得る複雑曲面や任意の非平面等を有する複雑な形状であってもよい。また、本発明に係るコンクリート構造物は、柱状体に限定されず、例えば梁や壁部材であってもよく、コンクリートで形成可能な構造物を広く含む。
【0070】
本発明に係るコンクリート構造物の補強部材の形状は、縦部31及び横部32のみで構成される形状に限定されない。補強部材30の自立性等を高める目的で、補強部材30は、縦部31及び横部32に加え、図1に二点鎖線で示す傾斜部33を備えてもよい。傾斜部33は、D3方向から見るとD2方向と重なり、且つ側面視でD1方向に交差する傾斜方向を軸線方向とする長尺形状を有する。傾斜部33は、D2方向又はD3方向で互いに隣り合う縦部31、31とD1方向で互いに隣り合う横部32、32とに囲まれる隙間を側面視で対角線状に横断して隙間の対角にある縦部31及び横部32の交差位置同士を接続する。また、補強部材は、定着部材に関して説明したように、微小な任意数の多面体をD1方向、D2方向、D3方向の各方向に連結させたものの全ての辺をなぞるように網状に形成されてもよい。また、補強部材は、例えば三角形を基本単位としてその集合体で構成されるトラス形状、トラス構造を有してもよい。補強部材がトラス形状を有することで、基本単位の三角形が含まれる面方向で負荷が良好に分散され、コンクリート構造物の形状保持能力が向上する。
【0071】
図示していないが、例えば、補強部材形成工程において、射出ノズル201から材料Mを鉛直方向及び水平方向に交差する斜め方向(方向)に沿って射出し、補強部材の自立性を高めてもよい。また、補強部材は、射出ノズル201から積層方式で射出された材料Mで形成可能であれば任意の形状を有してよく、例えば曲線を有してもよく、螺旋状に形成されてもよい。本発明に係るコンクリート構造物は、コンクリート本体21と、コンクリート本体21に埋まり、斜め方向に延びる直線状又は曲線状に延びる補強部材30と、を備えてもよい。
【0072】
噴射ノズル202から噴射された後に硬化したコンクリート流動物121の表面がコンクリート構造物に求められる程度よりも荒くなる場合は、噴射ノズル202の噴射孔よりも小さい複数の噴射口が形成された仕上げ用噴射ノズルを用いてコンクリート流動物121を吹付けた部分を追ってコンクリート流動物121の外表面に新たにコンクリート流動物を細かく吹き付けてもよい。
【0073】
上述の各実施形態において、補強材料射出用の付加製造装置、コンクリート流動物噴射用の付加製造装置、及び定着材料射出用の付加製造装置の各ノズルは互いに異なるノズルである。しかしながら、補強部材形成工程、コンクリート堆積部形成工程及び定着部材形成工程の各々で説明した内容のように材料M、Qの射出やコンクリート流動物121の吹き付けを実施できれば、同一のノズルで補強部材30、コンクリート堆積部80、定着部材40を形成してもよい。例えば、同一のノズルとして、ノズルからの出射物の進行方向から見て、ノズルの出射面の略中央に材料M,Qの射出口が形成され、出射面において射出口の周囲に射出口よりも小径のコンクリート流動物の噴射口が形成されているノズルが考えられる。
【0074】
本発明に係るコンクリート構造物の補強部材の材料は、各種金属材料に限定されず、連続繊維或いは繊維補強プラスチック(FRP)等であってもよい。なお、補強部材の材料は、所定の強度、コンクリート流動物121に対する定着性を発現する等の好適な条件を満たせば、特に限定されない。
【0075】
また、上述の射出ノズル201、203及び噴射ノズル202の各々は、ロボット装置のロボットアームや自動走行装置に装着されている場合に限らず、例えば門形クレーン、バックホウや各種建設機械のアタッチメントに装着されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
11、12 コンクリート構造物
30 補強部材
40 定着部材
80 コンクリート堆積部
201 射出ノズル(第1射出ノズル)
202 噴射ノズル
203 射出ノズル(第2射出ノズル)
121 コンクリート流動物
D1、D2、D3 方向(軸線方向)
M 材料(補強材料)
Q 材料(定着材料)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8