(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】什器
(51)【国際特許分類】
A47C 17/02 20060101AFI20241217BHJP
F16B 12/44 20060101ALI20241217BHJP
F16B 12/10 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A47C17/02 Z
F16B12/44 E
F16B12/10 A
(21)【出願番号】P 2020011984
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 太一
(72)【発明者】
【氏名】西澤 崇爾
【審査官】丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-179321(JP,A)
【文献】特開2017-080373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 17/02
A47C 4/02
A47F 5/00
F16B 12/00-12/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース構造体と、前記ベース構造体に装着される装着部品とを備えた什器であって、
前記ベース構造体と前記装着部品との連結は、前記ベース構造体に対して前記装着部品を前記ベース構造体に対向する第1方向に移動させてから前記第1方向と交差する第2方向に移動させる二段階の移動によって、互いに抜け及びずれが規制されるように嵌まり合う係合方式になっており、
前記係合方式は、前記ベース構造体及び前記装着部品のうちいずれか一方に形成された係止穴と、他方に設けられた係止部材または係止爪とによって構成されており、
前記係止部材は、前記係止穴の縁部に引っ掛かり係止される抜け止め爪部と、前記係止穴に嵌入する方向に付勢されるずれ止め片部と、前記ずれ止め片部を前記係止穴から離脱する方向に操作する解除操作部とを有しており、前記抜け止め爪部が前記係止穴の縁部に引っ掛かり係止した状態で、前記ずれ止め片部が前記係止穴に嵌入することによって、前記ベース構造体と前記装着部品とが連結されており、
前記ベース構造体に前記装着部品を装着する際に用いられる四つの前記係止穴は、前記ベース構造体または前記装着部品に対して、平面視で正方形の四隅の位置をなすように配置されており、前記係止部材の前記解除操作部は、前記ベース構造体と前記装着部品との間に位置している、
什器。
【請求項2】
前記ベース構造体及び前記装着部品のうちいずれか一方において、前記第2方向手前側に前記係止部材が設けられている一方、前記第2方向奥側には前記係止爪が設けられている、
請求項1に記載の什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース構造体と、前記ベース構造体に装着される装着部品とを備えた什器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
袖部や脚部といったベース構造体上に天板を取り付ける技術として、本願出願人は、特許文献1において、ベース構造体の上面奥部に形成した係止縁に、天板の下面奥部に設けた係止爪を斜め前方から挿入して係合させた状態で、ベース構造体の上面手前部に形成した係止穴に、天板の下面手前部に設けた合成樹脂製の係着具を落とし込んで弾性係合させるという構成を以前に開示している。特許文献1の構成によれば、ベース構造体に天板を簡単に取り付けできるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、ベース構造体の係止縁に天板の係止爪を係合させるのに、天板を奥側が高い斜めの姿勢にするので、例えば奥側に棚等を有する天板を、壁際に設置されたベース構造体に取り付ける際は、奥側(壁側)にスペースがなくて、棚等や天板で壁を擦って傷付けてしまう懸念があった。このような問題は、ベース構造体に天板を取り付ける場合だけでなく、例えば座といった各種装着部品をベース構造体に取り付ける場合にも起こり得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような現状を検討して改善を施した什器を提供することを技術的課題としている。
【0006】
本発明は、ベース構造体と、前記ベース構造体に装着される装着部品とを備えた什器であって、前記ベース構造体と前記装着部品との連結は、前記ベース構造体に対して前記装着部品を前記ベース構造体に対向する第1方向に移動させてから前記第1方向と交差する第2方向に移動させる二段階の移動によって、互いに抜け及びずれが規制されるように嵌まり合う係合方式になっているというものである。
【0007】
本発明の什器において、前記係合方式は、前記ベース構造体及び前記装着部品のうちいずれか一方に形成された係止穴と、他方に設けられた係止部材または係止爪とによって構成されており、前記係止部材は、前記係止穴の縁部に引っ掛かり係止される抜け止め爪部と、前記係止穴に嵌入する方向に付勢されるずれ止め片部と、前記ずれ止め片部を前記係止穴から離脱する方向に操作する解除操作部とを有しており、前記抜け止め爪部が前記係止穴の縁部に引っ掛かり係止した状態で、前記ずれ止め片部が前記係止穴に嵌入することによって、前記ベース構造体と前記装着部品とが連結されており、前記ベース構造体に前記装着部品を装着する際に用いられる四つの前記係止穴は、前記ベース構造体または前記装着部品に対して、平面視で正方形の四隅の位置をなすように配置されており、前記係止部材の前記解除操作部は、前記ベース構造体と前記装着部品との間に位置している。
【0009】
本発明の什器では、前記ベース構造体及び前記装着部品のうちいずれか一方において、前記第2方向手前側に前記係止部材が設けられている一方、前記第2方向奥側には前記係止爪が設けられているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、例えば壁際に設置されたベース構造体に、付属物を有する装着部品を取り付けるに際して、前記従来技術のように装着部品を斜めの姿勢にして抱え上げたりする必要がなく、壁側にスペースがなくても装着部品で壁を擦って傷付けるおそれがない。つまり、周囲のものや装着部品を傷付けることなく、什器の組み立て作業を行える。また、前記従来技術のように装着部品を斜めの姿勢にして抱え上げる力作業をなくせるから、什器の組み立て作業の作業性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る什器としての椅子装置の斜視図である。
【
図2】装着部品とベース構造体との分離斜視図である。
【
図5】装着部品とベース構造体との分離平面図である。
【
図6】係止部材における基部及び抜け止め爪部の説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は(a)のf-f視断面図、(g)は(a)のg-g視断面図である。
【
図7】係止部材におけるずれ止め片部の説明図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は平面図、(d)は右側面図、(e)は(a)のe-e視断面図である。
【
図8】係止部材における解除操作部の説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b視断面図である。
【
図9】係止爪の説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は(a)のf-f視断面図である。
【
図10】(a)~(c)は係止穴に対する係止部材の係合手順を示す説明図である。
【
図11】(d)~(f)は係止穴に対する係止爪の係合手順を示す説明図である。
【
図12】(a)~(c)は係止穴に対する係止部材の係合解除手順を示す説明図である。
【
図13】第2実施形態における係止部材の分離斜視図である。
【
図14】(a)~(c)は係止穴に対する係止部材の係合手順を示す説明図である。
【
図15】(d)~(f)は係止穴に対する係止爪の係合手順を示す説明図である。
【
図16】(a)~(c)は係止穴に対する係止部材の係合解除手順を示す説明図である。
【
図17】L字状構成の椅子装置の例を示す斜視図である。
【
図18】L字状構成の椅子装置における装着部品とベース構造体との分離斜視図である。
【
図19】台枠と延長連結具との連結態様を示す分離斜視図である。
【
図20】台枠と延長連結具との連結態様を示す分離平面図である。
【
図21】スペーサの説明図であり、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づき説明する。以下の説明では方向を特定するために「前後」「左右」「手前」「奥」等の文言を使用するが、これらは、本発明に係る什器としての椅子装置を用いるユーザーの向きを基準としている。つまり、椅子装置における座の並び方向を左右方向又は横方向と規定し、奥行き方向を前後方向と規定している。ただし、これらの用語は説明の便宜上用いたものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、水平方向という場合は、左右方向又は横方向と前後方向との総称として用いている。
【0013】
図1~
図5に示す什器としての椅子装置1は、装着部品としての座体2と、装着部品(座体2)を支持するベース構造体3とを備えている。第1実施形態の椅子装置1では、二つの座体2がベース構造体3上に左右方向に並べて取り付けられている。座体2は、人が腰掛ける座部4と、座部4の一辺に立設したパネル5とを有している。パネル5の表面(座部4に向いた面)にはクッション体5aが設けられている。第1実施形態のパネル5は、クッション体5aを有するクッションパネルであり、板状部分がクッション体5aよりも高く突出した(高さの高い)形態になっている。なお、座体2は装着部品を構成するものであるが、座関係のものに限らず、例えば天板や棚といったベース構造体に取り付けて使用する様々な部品も含まれる概念である。
【0014】
図4及び
図5に示すように、各座体2は、平面視で同サイズの正方形状に構成して規格化されている。すなわち、各座体2は、座部4にパネル5を取り付けた状態で平面視正方形状になっている。なお、本明細書において、正方形状、長方形状又は矩形状等の文言は、コーナー部に丸みをつけたり面取りしたりしたものを含む概念である。
【0015】
図1~
図5に示すように、ベース構造体3は、平面視矩形枠状の台枠6と、台枠6における四つのコーナー部を支持する四本の脚支柱9とを有している。台枠6は、一対の長フレーム7と一対の短フレーム8とで構成されていて、長フレーム7及び短フレーム8はいずれも金属製で中空角形状に形成されている。長フレーム7の長手各端部がベース構造体3のコーナー部を構成するように、隣り合う長フレーム7と短フレーム8とを溶接で固着することによって、平面視矩形枠状の台枠6が形成されている。詳細は後述するが、第1実施形態では、台枠6の各コーナー部、すなわち両方の長フレーム7の長手各端部に、これに対応する脚支柱9の上端側が着脱可能に取り付けられている。
【0016】
各座体2とベース構造体3との連結は、ベース構造体3に対して各座体2をベース構造体3に対向する第1方向に移動させてから第1方向と交差する第2方向に移動させる二段階の移動によって、互いに抜け及びずれが規制されるように嵌まり合う係合方式になっている。第1実施形態の係合方式としては、ベース構造体3及び各座体2のうちいずれか一方に形成された係止穴10と、他方に設けられた係止部材11及び係止爪12とによって構成される。
【0017】
第1実施形態の係合方式は、ベース構造体3に対して各座体2を第1方向としての下方向に移動させてから、第2方向としての奥方向に移動させる二段階の移動によって嵌まり合うものになっている。この場合、ベース構造体3に係止穴10が形成され、各座体2に係止部材11及び係止爪12が設けられている。もちろん、係止穴10を座体2側に形成し、係止部材11及び係止爪12をベース構造体3(台枠6)側に設けてもよい。
【0018】
すなわち、
図3~
図5に示すように、台枠6における各長フレーム7の上面には、上向き開口状の係止穴10が長手方向に沿って適宜間隔で複数箇所形成されている。第1実施形態では、各長フレーム7の上面に八箇所ずつ、平面視正方形状の係止穴10が形成されている。
【0019】
各座体2の座部4下面のうちパネル5寄りの二隅部には、奥側の長フレーム7において対応する係止穴10の縁部に引っ掛かり係止される係止爪12(
図2、
図4、
図5、
図9及び
図11参照)が下方からのねじ13にて締結されている。各係止爪12の先端爪側は、奥方向に向かって突出している。第1実施形態の係止爪12は合成樹脂製のものであるため、奥側の長フレーム7において対応する係止穴10の縁部に係止爪12を引っ掛かり係合させるに際して、係止穴10の縁部に係止爪12が当たって異音を発生させるおそれを抑制でき、静粛性に優れている。係止爪12の上面には、一対の上向き突起12aが形成されている。これら上向き突起12aを座部4下面に嵌め込んでおくことによって、係止爪12の姿勢ずれが防止される。
【0020】
各座体2の座部4下面のうちパネル5と対向する側(反対側)の二隅部には、手前側の長フレーム7において対応する係止穴10に係合する係止部材11(
図2、
図4~
図8、
図10及び
図12参照)が下方からのねじ13にて締結されている。各係止部材11は、手前側の長フレーム7における係止穴10の縁部に引っ掛かり係合される抜け止め爪部11bと、抜け止め爪部11bが嵌まった係止穴10に嵌入する方向(下方向)に付勢されるずれ止め片部11cとを有している。さらに、第1実施形態の係止部材11は、ずれ止め片部11cをこれが嵌まった係止穴10から離脱する方向に操作する解除操作部11dを有している。抜け止め爪部11bの先端爪側は、奥方向に向かって突出している。
【0021】
図10及び
図12に示すように、ずれ止め片部11cは、係止部材11の基部11a内に、ばね11eの弾性を利用して上下動可能に嵌め入れられている。当該上下動によって、係止部材11の基部11aに形成した下向きの穴から、ずれ止め片部11cの下部側が出没するように構成されている。解除操作部11dは、係止部材11の基部11a内に横移動可能に嵌め入れられている。当該横移動によって、係止部材11の基部11aに形成した横向きの穴から、解除操作部11dの突端側が出没するように構成されている。なお、ベース構造体に装着部品を載置固定するタイプでは、ばね11eの弾性を用いずにずれ止め片部11cの自重にて下降動する構成を採用することも可能である。
【0022】
また、第1実施形態では、解除操作部11dを指で押し操作すると、解除操作部11dの先端傾斜部がずれ止め片部11cに形成した横穴の内傾斜面に当接して、ばね11eの弾性に抗してずれ止め片部11cを上昇動させるように構成されている(
図12(a)(b)参照)。
【0023】
第1実施形態の係止部材11は合成樹脂製のものであるため、手前側の長フレーム7において対応する係止穴10に係止部材11を係合させるに際して、係止穴10の縁部に抜け止め爪部11bやずれ止め片部11cが当たって異音を発生させるおそれを抑制でき、係止爪12と同様に静粛性に優れている。係止部材11の基部11a上面には、一対の上向き突起11fが形成されている。これら上向き突起11fを座部4下面に嵌め込んでおくことによって、係止部材11の姿勢ずれが防止される。
【0024】
なお、第1実施形態の係止爪12は、第1実施形態の係止部材11からずれ止め片部11c、解除操作部11d及びばね11eを取り外した形態である。つまり、第2実施形態では、係止爪12と、係止部材11の抜け止め爪部11bとが共通部品になっている。これらが共通部品であることは必須でないが、共通化によって部品点数の削減ができて好適である。
【0025】
図4及び
図5に示すように、座体2における座部4下面の四隅部にある係止部材11及び係止爪12はそれぞれ、座体2の平面視での各対角線DI上に位置している。なお、第1実施形態では、台枠6上に座体2を所定の取付け向きで配置した状態で、対応する係止穴10に係止部材11又は係止爪12を係合させることによって、ベース構造体3に対して、各座体2の取り付け向きを水平四方向(前後左右の四方向)に変更することが可能になっている。この場合、各座体2は、平面視で同サイズの正方形状に構成して規格化されているため、取り付け向きを変更してもパネル5の存在が邪魔にならず、そのままベース構造体3に取り付けが可能である。
【0026】
なお、両方の長フレーム7における長手各端部の上面にある係止穴10は、当該長フレーム7内に溶接で固着した脚用ブレート14(
図10~
図12参照)に臨ませている。また、両方の長フレーム7における長手各端部の下面には、下向き開口状の脚装着穴15が形成されている。
図10~
図12に示すように、脚装着穴15に脚支柱9の上端側を嵌め込んだ状態で、係止穴10及び脚用プレート14を介してビス16を上方からねじ込むことによって、脚支柱9が台枠6の各コーナー部に着脱可能に締結されている。
【0027】
上記の構成において、ベース構造体3に対する座体2の取り付けは、例えば次の手順で行われる。すなわち、座体2における座部4下面側の係止部材11及び係止爪12が各長フレーム7において対応する係止穴10に対峙するように、ベース構造体3の台枠6上方に座体2を運ぶ(
図10(a)及び
図11(d)参照)。この場合、手前側に各係止部材11が、奥側に各係止爪12が位置するように、座体2を台枠6上方に移動させる。
【0028】
それから、台枠6に対向する下方向に座体2を移動させて、係止部材11の抜け止め爪部11bと係止爪12とをそれぞれ対応する係止穴10内に挿入する(
図10(b)及び
図11(e)参照)。そうすると、係止部材11のずれ止め片部11cが係止穴10の縁部上面に当接して、ばね11eの弾性に抗して上昇動し、係止部材11の基部11a内に没入する(
図10(b)参照)。
【0029】
次いで、座体2を奥方向に押し込んで、係止部材11の抜け止め爪部11bと係止爪12とをそれぞれ対応する係止穴10の縁部に引っ掛かり係合させる(
図10(c)及び
図11(f)参照)。そうすると、係止部材11の抜け止め爪部11bの手前側にできた係止穴10の隙間に、係止部材11のずれ止め片部11cを臨ませることになって、ずれ止め片部11cがばね11eの復元力によって下降動し、前述した係止穴10の隙間に嵌入する(
図10(c)参照)。その結果、座体2とベース構造体3とが連結される。
【0030】
この場合、係止部材11における抜け止め爪部11bの先端爪側と係止爪12とが上下方向の抜け(ガタつき)を規制し、係止部材11における抜け止め爪部11bの本体側とずれ止め片部11cとが水平方向のずれ(ガタつき)を規制している。ちなみに、係止爪12の手前側にできた係止穴10の隙間はそのままである(
図11(f)参照)。
【0031】
逆に、ベース構造体3から座体2を取り外す場合は、例えば次の手順で行われる。すなわち、座体2における座部4下面の手前側にある両方の係止部材11の解除操作部11dを指で押し操作して、ばね11eの弾性に抗してずれ止め片部11cを上昇動させ、当該ずれ止め片部11cを対応する係止穴10の隙間から引き上げる(
図12(a)参照)。
【0032】
次いで、座体2を手前方向に引っ張って、係止部材11の抜け止め爪部11bと係止爪12とをそれぞれ対応する係止穴10の縁部からずらして係合解除させる(
図12(b)参照)。そうすると、係止部材11のずれ止め片部11cが対応する係止穴10の縁部上面に乗り上げて当接して、ばね11eの弾性に抗して上昇動し、係止部材11の基部11a内に没入する(
図12(b)参照)。この状態になれば、解除操作部11dから指を離しても構わない。ここで、係止爪12側の挙動の図示はしていないが、状態としては
図11(e)と同じようになる。
【0033】
それから、台枠6に対向する上方向に座体2を移動させて、係止部材11の抜け止め爪部11bと係止爪12とをそれぞれ対応する係止穴10から引き上げる(
図12(c)参照)。その結果、座体2とベース構造体3との連結が解除される。ここで、係止爪12側の状態としては、
図11(d)と同じようになる。
【0034】
以上の構成によると、ベース構造体3に対して座体2をベース構造体3に対向する第1方向(下方向)に移動させてから第1方向と交差する第2方向(奥方向)に移動させる二段階の移動によって、互いに抜け及びずれが規制されるように嵌まり合う係合方式になっているから、例えば壁際に設置されたベース構造体3に、奥側にパネル5等の付属物を有する座体2を取り付けるに際して、前記従来技術のように座体2を斜めの姿勢にして抱え上げたりする必要がなく、奥側(壁側)にスペースがなくても、座体2で壁を擦って傷付けるおそれがない。つまり、周囲のものを傷付けることなく、椅子装置1の組み立て作業を行える。また、前記従来技術のように座体2を斜めの姿勢にして抱え上げる力作業をなくせるから、椅子装置1の組み立て作業の作業性も向上する。
【0035】
また、係止部材11の抜け止め爪部11bが対応する係止穴10の縁部に引っ掛かり係止した状態で、係止部材11のずれ止め片部11cを係止穴10に嵌入させることによって、ベース構造体3と座体2とが連結される構成を採用すると、係止部材11における抜け止め爪部11bの先端爪側で抜け(ガタつき)を規制し、係止部材11における抜け止め爪部11bの本体側とずれ止め片部11cとでずれ(ガタつき)を規制することになり、抜け止め爪部11bとずれ止め片部11cとで規制方向を分担でき、連結強度を確保し易い利点がある。
【0036】
さらに、ベース構造体3及び座体2のいずれか一方において、第2方向(奥方向)手前側に係止部材11を設ける一方、第2方向(奥方向)奥側には、これに対応して他方に形成された係止穴10の縁部に引っ掛かり係止される係止爪12を設けるようにすると、係止部材11よりも係止爪12の方が簡素な構造にできるので、連結強度を維持しつつも部品コストの低減を図れる。その上で、係止部材11には、ずれ止め片部11cを対応する係止穴10から離脱する方向に操作する解除操作部11dを有するので、ベース構造体3から座体2を取り外す作業、すなわち椅子装置1の分解作業を簡単に行える。また、専用の工具を使うことなく取り付け・取り外し作業が可能であるし、座体2の取り付け向き変更等、自由に組み替えもでき、これらの点でも、椅子装置1の組み立て・分解作業の作業性向上に寄与する。
【0037】
図13~
図16は、係止部材及び係止爪の構造を第1実施形態のものと異ならせた場合の第2実施形態を示している。ここで、第2実施形態以降の実施形態において、構成及び作用が第1実施形態と同様なものには、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0038】
第2実施形態では前述の通り、係止部材及び係止爪の構造を第1実施形態のものと異ならせている。第2実施形態の係止部材21は、手前側の長フレーム7における係止穴10の縁部に引っ掛かり係合される断面コ字状で金属製の抜け止め爪部21bと、抜け止め爪部21bが嵌まった係止穴10に嵌入する方向(下方向)に付勢される合成樹脂製のずれ止め片部21cとを有している。
【0039】
さらに、第2実施形態の係止部材21は、抜け止め爪部21bが係止穴10の縁部に当たる際の緩衝材となる合成樹脂製のカバー体21aを有している。ずれ止め片部21cには、これが嵌まった係止穴10から離脱する方向に操作する解除操作部21dと、これを下向き付勢する弾性片部21eとが一体的に設けられている。
【0040】
第2実施形態の係止部材21は、カバー体21aが取り付けられた抜け止め爪部21bの内側にずれ止め片部21cを収容した状態で、座体2の座部4下面のうちパネル5と対向する側(反対側)の二隅部に下方からのねじ23にて締結されている。抜け止め爪部21bの先端爪側は奥方向に向かって突出している。解除操作部21dは奥方向と反対の手前側に向かって突出している。
【0041】
図13、
図14及び
図16に示すように、ずれ止め片部21cは、抜け止め爪部21b内に、弾性片部21eの弾性を利用して上下動可能に嵌め入れられている。当該上下動によって、係止部材21の抜け止め爪部21bから、ずれ止め片部11cの下部側が出没するように構成されている。
【0042】
第2実施形態では、解除操作部21dを指で押し上げ操作すると、弾性片部21eの弾性に抗してずれ止め片部21cを上昇動させるように構成されている(
図16(a)(b)参照)。この場合、ねじ23には、頭部より小径で軸部より大径の首部23aが形成されていて、首部21aの長さ分だけずれ止め片部21cが上下動することが可能になっている。抜け止め爪部21bの上面には上向き突片21fが形成されている。当該上向き突片21fを座部4下面に嵌め込んでおくことによって、係止部材21の姿勢ずれが防止される。
【0043】
図15に示すように、第2実施形態の係止爪22は、第2実施形態の係止部材21からずれ止め片部21cを取り外した形態になっていて、座体2の座部4下面のうちパネル5寄りの二隅部に下方からのねじ23にて締結されている。すなわち、第2実施形態の係止爪22は、奥側の長フレーム7における係止穴10の縁部に引っ掛かり係合される断面コ字状で金属製の抜け止め爪部22bと、抜け止め爪部21bが係止穴10の縁部に当たる際の緩衝材となる合成樹脂製のカバー体21aとを有している。
【0044】
係止爪22の先端爪側は奥方向に向かって突出している。係止爪22の上面には上向き突起22fが形成されている。当該上向き突片22fを座部4下面に嵌め込んでおくことによって、係止爪22の姿勢ずれが防止される。前述の通り、第2実施形態の係止爪22は、第2実施形態の係止部材21からずれ止め片部21cを取り外した形態である。つまり、第2実施形態では、係止爪22と、カバー体21a付きの抜け止め爪部21bとが共通部品になっている。第1実施形態と同様に、これらが共通部品であることは必須でないが、共通化によって部品点数の削減ができて好適である。
【0045】
上記の構成において、ベース構造体3に対する座体2の取り付け及び取り外し手順は、第1実施形態の場合と略同様である(
図14~
図16参照)。第2実施形態の構成を採用した場合も、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0046】
次に、
図17以降を参照しながら、第1(又は第2)実施形態で採用可能なその他の構造について説明する。
図17及び
図18に示すように、第1(又は第2)実施形態の椅子装置1は、ベース構造体3の複数個を水平方向に連設することが可能になっている。この場合、隣り合うベース構造体3は、延長連結具40を介して台枠6同士を連結することによって連設されている。
図17及び
図18は、L字状構成の椅子装置31の例である。
【0047】
図17及び
図18の例では、二つの延長連結具40を介して一方の台枠6と他方の台枠6とを連結することによって、二つのベース構造体3がL字状に連結されている。ベース構造体3の組合せのコーナー部分には、座部4の隣り合う二辺に沿って二つのパネル5を立設したコーナー座体32が配置されている。コーナー座体32の一側方には、第1(又は第2)実施形態に示した二つの座体2が配置されている。コーナー座体32の他側方には、座体2及びコーナー座体32よりも横長の長座体33が配置されている。コーナー座体32及び長座体33のパネル35は、座体2のパネル5よりも高さの低い形態になっている。
【0048】
台枠6の各コーナー部には、水平方向外側の二箇所に、別のベース構造体3を連設するための延長連結具40が取り付け可能になっている。この場合、各フレーム7,8の長手両端部には、水平開口状のねじ挿通穴7a,8aが形成されている(
図18及び
図19参照)。当該ねじ挿通穴7a,8aは、延長連結具40を台枠6に取り付けるためのものである。延長連結具40において相対向する二側部には、台枠6を抱持する抱持部41がそれぞれ設けられている。延長連結具40には、両方の抱持部41のある水平方向に開口したナット部42が埋め込んで設けられている。延長連結具40の抱持部41で台枠6を抱持して、各フレーム7,8のねじ挿通穴7a,8aを介して台枠6内側からのねじ43を延長連結具40のナット部42にねじ込むことによって、台枠6のコーナー部に延長連結具40が着脱可能に締結される。
【0049】
また、
図18に示すように、台枠6の各コーナー部だけでなく、各長フレーム7の長手中途部にも水平方向外側の二箇所に、延長連結具40が取り付け可能になっている。各長フレーム7の長手中途部の二箇所に、水平開口状のねじ挿通穴7bが形成されている。延長連結具40の抱持部41で台枠6を抱持して、各長フレーム7のねじ挿通穴7bを介して台枠6内側からのねじ43を延長連結具40のナット部42にねじ込むことによって、台枠6における長フレーム7の長手中途部の二箇所に延長連結具40が着脱可能に締結される。
【0050】
仮に延長連結具40に抱持部41がなければ、ねじ43に負荷が集中し、荷重に耐えることが困難である。そこで、台枠6同士の相対的な変位を延長連結具40の抱持部41によって規制すると共に、ねじ43に鉛直方向の負荷がかからないように抱持部41で鉛直方向の負荷を受ける構造になっている。また、延長連結具40に脚支柱9を取り付けた場合(詳細は後述する)は、下側の抱持部41の存在によって延長連結具40と脚支柱9とで負荷を分散して受けられる。
【0051】
延長連結具40の上面には係止穴10が形成されている(
図20参照)。つまり、延長連結具40にも、係止部材11や係止爪12を係合させることが可能になっている。延長連結具40の係止穴10は、延長連結具40の内部にある内板部44に臨ませている。延長連結具40の下部側には脚装着溝45が形成されている。脚装着溝45に脚支柱9の上端側を嵌め込んだ状態で、係止穴10及び内板部44を介してねじ46を上方からねじ込むことによって、脚支柱9が延長連結具40に着脱可能に締結される。従って、各脚支柱9は、台枠6と延長連結具40とのいずれにも付け替え可能になっている。
【0052】
図18及び
図21に示すように、台枠6上に長座体33を取り付けるにあたり、台枠6と長座体33との間にスペーサ47を介在させている。各スペーサ47は合成樹脂製のものであり、平面視矩形状の本体部47aと、本体部47aと位相を略45°ずらして本体部47aに一体形成された嵌合部47bとを有している。係止部材11や係止爪12が係合しない係止穴10にスペーサ47の嵌合部47bを嵌め入れてから、本体部47aを略45°回転操作することによって、スペーサ47が係止穴10に装着される。
【0053】
図17、
図18及び
図22に示すように、隣り合う座体2のパネル5同士は、ずれ防止のために、板状部分の上部をジョイント片48でつないでいる。ジョイント片48は、隣り合うパネル5の板状部分の上部に跨って配置されている。ジョイント片48の長手両端部が各パネル5の板状部分にビス49止めされている。ビス49止めされたジョイント片48にはジョイントカバー50が着脱可能に被せ付けられていて、ビス49の露出を防いでいる。
【0054】
なお、本発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば装着部品とベース構造体との連結は、ベース構造体の上面ではなく下面に対して装着部品を第1方向としての上方向に移動させてから、第2方向としての水平方向に移動させる二段階の移動によって嵌まり合う吊り下げ式であってもよいし、上下方向に延びるベース構造体の表面に対して装着部品を第1方向としての水平方向に移動させてから、第2方向としての上又は下方向に移動させる二段階の移動によって嵌まり合う横付け式(壁付けのような形式)であってもよい。また、係止穴を装着部品側に設け、係止部材及び係止爪をベース構造体側に設けてもよい。
【0055】
さらに、ベース構造体の構造も、上記実施形態のように台枠と脚支柱とからなるものに限る必要性はなく、例えば梁や壁等、種々の構造を採用できる。装着部品について、上記実施形態の座体2のように平面視で同サイズの正方形状に構成して規格化することは必須でない。
【符号の説明】
【0056】
1 什器としての椅子装置
2 装着部品としての座体
3 ベース構造体
3 ベース構造体
4 座部
5 パネル
6 台枠
7 長フレーム
8 短フレーム
9 脚支柱
10 係止穴
11 係止部材
11b 抜け止め爪部
11c ずれ止め片部
11d 解除操作部
12 係止爪
13 ねじ