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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】低・中電圧の電気筐体
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/56 20060101AFI20241217BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20241217BHJP
   H02B 1/28 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H02B1/56 A
H05K5/03 A
H02B1/28 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020176082
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2021069273
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】19204679.5
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508161584
【氏名又は名称】エービービー・エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】ABB S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Vittor Pisani, 16, I-20124, MILANO, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】ベネデッティ,ピアチェレステ
(72)【発明者】
【氏名】ベルガミーニ,アレッシオ
(72)【発明者】
【氏名】ナヴァ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】ガンバ,フェデリコ
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-226208(JP,A)
【文献】実開昭55-098103(JP,U)
【文献】実開昭52-118957(JP,U)
【文献】実開昭52-147253(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/56
H05K 5/03
H02B 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の電気機器を収容する1つ以上の区画を形成する壁(13、14)によって区切られた内部空間を規定する支持構造(11)を備えた低・中電圧電気筐体(1)であって、
前記壁(13、14)の少なくとも1つが、前記低・中電圧の電気筐体(1)の外部と前記内部空間とを通す1つ以上の通気口(20、30)を有し、
前記1つ以上の通気口(20、30)は、第1の閉鎖動作状態で対応する通気口(20、30)を閉じるカバー(21、31)と、前記内部空間内でアーク障害が発生した場合に第2の開放動作状態で前記カバー(21、31)を開くように適合された作動装置(40)とを有し、
前記作動装置(40)は、第1の所定温度で第1の寸法を有し、第2の所定温度で第2の寸法に可逆的に変化可能な形状記憶合金ベース(SMAベース)の作動要素(42、421)を有する作動機構(41)を備え、
前記SMAベースの作動要素(42、421)の前記第1の寸法から前記第2の寸法への可逆的な寸法変化が、前記カバー(21、31)の前記第1の閉鎖動作状態から前記第2の開放動作状態への可逆的な動きを決定し、その逆も可能であり、
前記電気筐体(1)が、対応する第1および第2のカバー(21、31)が設けられた第1および第2の通気口(20、30)の1以上の組を備え、
前記SMAベースの作動要素(42、421)が、前記第1の所定温度における第1の所定長さと、前記第2の所定温度における第2の所定長さとを有するバーまたはワイヤ(42、421)を備え、
前記作動機構(41)は、前記第1および第2のカバー(21、31)に接続された、第1の端部(511)および第2の端部(512)をそれぞれ有する第1および第2のレバー(51、52)を備え、前記バーまたはワイヤ(42、421)は、前記第1のレバー(51)に作動的に接続された第1の端部(431)と、前記第2のレバー(52)に接続された第2の端部(441)とを有することを特徴とする低・中電圧の電気筐体(1)
【請求項2】
1つ以上の電気機器を収容する1つ以上の区画を形成する壁(13、14)によって区切られた内部空間を規定する支持構造(11)を備えた低・中電圧の電気筐体(1)であって、
前記壁(13、14)の少なくとも1つが、前記低・中電圧の電気筐体(1)の外部と前記内部空間とを通す1つ以上の通気口(20、30)を有し、
前記1つ以上の通気口(20、30)は、第1の閉鎖動作状態で対応する通気口(20、30)を閉じるカバー(21、31)と、前記内部空間内でアーク障害が発生した場合に第2の開放動作状態で前記カバー(21、31)を開くように適合された作動装置(40)とを有し、
前記作動装置(40)は、第1の所定温度で第1の寸法を有し、第2の所定温度で第2の寸法に可逆的に変化可能な形状記憶合金ベース(SMAベース)の作動要素(42、421)を有する作動機構(41)を備え、
前記SMAベースの作動要素(42、421)の前記第1の寸法から前記第2の寸法への可逆的な寸法変化が、前記カバー(21、31)の前記第1の閉鎖動作状態から前記第2の開放動作状態への可逆的な動きを決定し、その逆も可能であり、
前記カバー(21、31)が、対応する通気口(20、30)のリム部分(211、311)にヒンジされ、前記第1の閉鎖動作状態と前記第2の開放動作状態との間で枢動可能であり、
前記カバー(21、31)は、前記カバー(21、31)によって対応する通気口(20、30)を閉鎖動作状態において前記通気口(20、30)のリム部分(211、311)の外面に重なるリム部分を有する、ことを特徴とする低・中電圧の電気筐体(1)。
【請求項3】
前記SMAベースの作動要素(42、421)が、前記第1の所定温度における第1の所定長さと、前記第2の所定温度における第2の所定長さとを有するバーまたはワイヤ(42、421)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の低・中電圧の電気筐体(1)。
【請求項4】
前記作動機構(41)が、前記カバー(21、31)に作動可能に接続された第1の端部(511)と、前記バーまたはワイヤ(42、421)の第1の端部(43、431)に作動可能に接続された第2の端部(512)とを有するレバー(51)を備えたことを特徴とする、請求項3に記載の低・中電圧の電気筐体(1)。
【請求項5】
前記バーまたはワイヤ(42、421)が、前記電気筐体(1)の固定点(45)に固定された第2の端部(44)を有することを特徴とする、請求項4に記載の低・中電圧の電気筐体(1)。
【請求項6】
電気筐体(1)が、対応する第1および第2のカバー(21、31)が設けられた第1および第2の通気口(20、30)の1以上の組を備え、
前記SMAベースの作動要素(42、421)が、前記第1の所定温度における第1の所定長さと、前記第2の所定温度における第2の所定長さとを有するバーまたはワイヤ(42、421)を備え、
前記作動機構(41)は、前記第1および第2のカバー(21、31)にそれぞれ接続された第1の端部(511)をそれぞれ有する第1および第2のレバー(51、52)を備え、
前記バーまたはワイヤ(42、421)は、前記第1のレバー(51)に作動的に接続された第1の端部(431)と、前記第2のレバー(52)に接続された第2の端部(441)とを有することを特徴とする、請求項2または3に記載の低中電圧の電気筐体(1)。
【請求項7】
前記通気口(30)のリム部分(311)が、前記通気口(30)が配置された対応する前記(13、14)の表面に対して隆起していることを特徴とする、請求項2~6のいずれか1つに記載の低・中電圧の電気筐体(1)。
【請求項8】
前記カバー(31)が、前記通気口(30)にヒンジされた前記カバー(31)において前記リム部分(211、311)から延びる第1の部分(312)と、前記通気口(30)とは反対側の前記リム部分(311)から延びる第2の部分(313)とを有することを特徴とする、請求項7に記載の低・中電圧の電気筐体(1)。
【請求項9】
前記カバー(31)の前記第2の部分(313)が、前記カバー(31)の前記第1の部分(312)の重量を少なくとも部分的に相殺することを特徴とする、請求項8に記載の低・中電圧の電気筐体(1)。
【請求項10】
前記第1の所定温度が前記第2の所定温度よりも低く、前記SMAベースの作動要素(42、421)の前記第1の寸法が前記SMAベースの作動要素(42、421)の前記第2の寸法よりも大きいことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1つに記載の低・中電圧の電気筐体(1)。
【請求項11】
前記1つ以上の通気口(20、30)が、前記電気筐体(1)の上壁(13)に配置されていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1つに記載の低・中電圧電気筐体(1)。
【請求項12】
前記1つ以上の通気口(20、30)が、前記電気筐体(1)の側壁(14)に配置されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1つに記載の低・中電圧の電気筐体(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低・中電圧の電気筐体、特に、冷却機能と特性を改善した低・中電圧の電気筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、低・中電圧の配電用の筐体(enclosure)は、側壁、後壁、上壁および底壁によって区切られ、ドアによって閉鎖された支持構造によって形成された公知の装置であり、この筐体は、1つ以上の内部区画内に、例えば、サーキットブレーカおよび/または類似の装置、バスバーシステム、電気機器および類似の装置といった電気器具および装置を収容する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
動作中にいくつかの理由で、筐体内で内部電気アークが放たれることがある。内部アーク発生の結果の1つは、筐体の1つ以上の区画内での圧力増加である。
通常の既存の解決策は、通常、電気アークの発生によって生じた圧力の下で、ガスの排出を可能にし、通常の圧力状態を回復するように開くことが可能な折り蓋によって保護された1つ以上の通気口(開口部)を設けることにあるだろう。
【0004】
しかし、折り蓋の通気口は、折り蓋のない類似の筐体に対して、元のIP等級および定格の劣化をもたらす。
言い換えれば、現在の技術状況では、既存の低・中電圧の電気筐体は、望ましい高いIP度と、内部アーク障害が発生した場合の良好な性能と、抵抗性との間の満足できるバランスをとることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本開示は、上述の欠点の少なくともいくつかを克服することを可能にする低・中電圧の電気筐体を提供することを目的とする。
特に、本発明は、内部アーク障害時に発生した増加圧力を、元のIP定格を取り返しのつかないほど失うことなく放出することができる低・中電圧の電気筐体を提供することを目的としている。
【0006】
より具体的には、本発明は、通常状態での通常動作中に高いIP度が保たれ、アークフラッシュ発生中にIP値の低下が限定された時間だけ一時的に起こる低・中電圧の電気筐体を提供することを目的としている。
さらに、本発明は、内部アーク発生時にその内部の圧力増加を制御するための装置を備え、負担のかかる保守介入を必要としない低・中電圧の電気筐体を提供することを目的としている。
【0007】
また、本発明は、内部アーク発生時にその内部の圧力増加を制御するための装置を備え、追加の専用の試験や認証を必要としない低・中電圧の電気筐体を提供することを目的としている。
さらに、本発明は、内部アーク発生時にその内部の圧力増加を制御するための装置を備え、信頼性が高く、競争力のあるコストで比較的容易に製造することができる低・中電圧の電気筐体を提供することを目的とする。
【0008】
したがって、本発明は、1つ以上の電気機器を収容する1つ以上の区画を形成する壁によって区切られた内部空間を規定する支持構造を備えた低・中電圧の電気筐体に関するものである。本発明の低・中電圧の電気筐体は、前記壁の少なくとも1つが、前記低・中電圧の電気筐体の外部と前記内部空間とを通す1つ以上の通気口を備え、前記1つ以上の通気口は、第1の閉鎖動作状態で対応する通気口を閉じるカバーを備え、前記低・中電圧の電気筐体は、前記内部空間内にアーク障害が発生した場合に、第2の開放動作状態で前記カバーを開くように適合された作動装置を備えていることを特徴としている。本発明の低・中電圧の電気筐体は、前記作動装置が、第1の所定温度で第1の寸法を有し、第2の所定温度で第2の寸法に可逆的に変化可能な形状記憶合金ベース(SMAベース)の作動要素を有する作動機構を備え、前記SMAベースの作動要素の前記第1の寸法から前記第2の寸法への可逆的な変化が、前記第1の閉鎖動作状態から前記第2の開放動作状態への前記カバーの可逆的な動きを決定し、その逆も可能であることをさらに特徴としている。
【0009】
以下の説明でより良く説明されるように、本発明の低・中電圧の電気筐体の特定の構造の結果、上述の問題は回避されるか、少なくとも大幅に減少することができる。
実際、内部アークフラッシュの場合に発生する圧力および温度条件の下では、筐体の外壁の1つ以上の通気口(開口部)を閉じるカバーを開くことができ、それによってアーク中に発生したガスを排出し、生成された過圧を排出することができる。同時に、通気口は、温度を所望の値に保つために、筐体内に対流空気循環を作り出すことを可能にする。
【0010】
言い換えれば、アークフラッシュ状態では、カバーとそれに対応する通気口が開いた状態になるため、筐体のIP等級が一時的に変化する可能性がある。温度がある所定の値未満に戻るとすぐに、カバーは閉鎖位置に戻され、それによって元のIP度が回復する。
以下の説明でより良く説明されるように、カバーの閉鎖状態から開放状態への移動、より詳しくは、開放状態から閉鎖状態への移動は、温度に敏感なアクチュエータ、すなわち、追加の電力供給または専用の制御システムを必要とせずに温度変化に応じて作動するアクチュエータによって決定され、制御される。
【0011】
これに関連して、本開示の筐体で使用されるアクチュエータは、形状記憶合金ベース(SMAベース)の作動要素によって形成される。
形状記憶合金は、温度条件に応じてその寸法を可逆的に変化させる能力を有するよく知られた材料であり、これについてはさらに詳細には説明しない。形状記憶合金の温度変化に対する応答速度は非常に速く、寸法変化の間は比較的単純な機構を作動させるのに十分な力を発揮することができる。その上、形状記憶合金の温度係数(すなわち、ある寸法変化を受ける温度値または範囲)は、既知の基準に基づいて適切な材料を選択することで、ニーズに応じて調整・微調整することができる。
【0012】
言い換えれば、本発明の筐体内で使用されるSMAベースの作動要素は、筐体内の温度条件に応じてその寸法を変化させる。特に、第1の所定の温度条件では、SMAベースの作動要素は第1の寸法を有し、第2の所定の温度条件では、SMAベースの作動要素は第2の寸法を有する。SMAベースの作動要素をカバーに動作可能に接続することで、筐体内の温度条件に応じて、前記カバーを閉鎖位置から開放位置に移動させることが可能であり、またその逆も可能である。
【0013】
このように、例えば、内部アークフラッシュによって筐体内部の温度が所定のレベル以上に急速に上昇すると、カバーは閉鎖位置から開放位置に急速に移動し、それによりアークフラッシュによって発生した過圧を放出することができる。
この状態では、一時的に制御された対流空気の循環が筐体内で行われ、それによって筐体の冷却が可能となる。同時に、筐体のIP等級が一時的に変わる。その後、温度が所定のレベル未満に戻ると、カバーは開放位置から閉鎖位置に戻され、元のIP等級に回復する。
【0014】
前記SMAベースの作動要素は、負の温度係数を有する形状記憶合金、すなわち、前記温度が前記所定の値または範囲を超えると収縮する形状記憶合金をベースとすることができる。この場合、SMAベースの作動要素は、温度が前記所定の値または範囲を超えると、その作動寸法を減少させる(すなわち、縮む)。
あるいは、SMAベースの作動要素は、正の温度係数を有する形状記憶合金、すなわち、前記温度が前記所定の値または範囲を超えると膨張する形状記憶合金をベースとすることができる。この場合、SMAベースの作動要素は、温度が前記所定の値または範囲を超えると、その作動寸法を増大させる(すなわち、伸びる)。
【0015】
さらに、SMAベースの作動要素の作動原理(例えば、温度に応じた直線的な移動)は極めて単純であるため、SMAベースの作動要素とカバーとを結合する作動機構が極めて単純であり、したがって、製造および保守が極めて容易であることは注目に値する。
本発明によれば、低・中電圧の電気筐体の好ましい実施形態では、1つ以上のカバーは、対応する通気口のリム部分にヒンジされている。カバーは、SMAベースの作動要素の作用により、前記第1の閉鎖動作状態から前記第2の開放動作状態へ、またその逆の動きに枢動的に移動可能である。
【0016】
本発明の低・中電圧の電気筐体の大部分の好ましい実施形態では、SMAベースの作動要素は、有利には、前記第1の所定温度での第1の所定長さと、前記第2の所定温度での第2の所定長さとを有するバーまたはワイヤを備える。実際には、この実施形態によれば、SMAベースの作動要素は、温度条件に応じて、その長手方向の延長に沿った直線的な作動方向で、短くまたは長くなり、それによってカバーの作動機構との結合を非常に容易にする。
例えば、この場合、前記作動機構は、前記カバーに作動可能に連結された第1の端部と、前記バーまたはワイヤの第1の端部に作動可能に連結された第2の端部とを有するレバーを都合よく備えていてもよい。従って、SMAベースの作動要素の直線的な移動は、非常に簡単な方法で直ちにカバーに伝達される。
次に、本発明の低・中電圧の電気筐体の特定の実施形態では、前記バーまたはワイヤは、好ましくは前記筐体の固定点に固定される第2の端部を有する。実際には、この実施形態によれば、以下により良く説明されるように、前記SMAベースの作動要素の移動は、一方向のみで行われる。
【0017】
あるいは、本発明の低・中電圧の電気筐体の特定の実施形態では、筐体は、対応する第1および第2のカバーが設けられた第1の通気口および第2の通気口の1つ以上の組を備える。この実施形態では、SMAベースの作動要素は、有利には、前記第1の所定温度における第1の所定長さと、前記第2の所定温度における第2の所定長さとを有するバーまたはワイヤを備える。さらに、前記作動機構は、前記第1および第2のカバーにそれぞれ接続された第1の端部を有する第1および第2のレバーを備える。そして、前記バーまたはワイヤは、有利には、前記第1のレバーに動作可能に接続された第1の端部と、前記第2のレバーに動作可能に接続された第2の端部とを有する。
【0018】
実際には、この実施形態によれば、SMAベースの作動要素は、2つの通気口と対応するカバーとの間に配置され、その動きは、以下により良く説明されるように、前記第1および第2のレバーに同時に作用して、2つの方向に行われる。
本発明によれば、低・中電圧の電気筐体の特定の実施形態では、前記通気口のリムは、それが配置されている対応する壁の表面に対して隆起している。
特に、このような場合、前記カバーは、有利には、前記通気口の上に前記カバーがヒンジされるリム部分から延びる第1の部分と、前記通気口とは反対側の前記リム部分から延びる第2の部分とを備えてもよい。
【0019】
実際には、この実施形態によれば、カバーの第1の部分の重量は、前記カバーの回転軸に対して反対方向に延びるカバーの第2の部分によって少なくとも部分的に相殺される。このようにして、カバーの閉鎖位置から開放位置への移動、およびその逆の移動は、カバーの回転軸に対して全体的にバランスのとれた重量のために、最小限の作動エネルギーしか必要としない。
本発明の低・中電圧の電気筐体の好ましい実施形態では、SMAベースの作動要素は負の温度係数を有し、すなわち、第1の所定温度は第2の所定温度よりも低く、SMAベースの作動要素の第1の寸法はSMAベースの作動要素の第2の寸法よりも大きい。
【0020】
低・中電圧の電気筐体の壁上の通気口の数および位置は、必要に応じて変化し得る。
例えば、1つ以上の通気口は、有利には、筐体の上壁に配置されることができ、そのような位置は、通常、内部アークの場合に排出されるガスを排出するために比較的安全である。
前述した実施形態に代えて、または前述の実施形態と組み合わせて、1つ以上の通気口は、安全性の考慮にもよるが、筐体の側壁に配置することも可能である。
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面の例を通して示された本発明による低・中電圧の電気筐体の好ましいが排他的ではない実施形態の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明による低・中電圧の電気筐体の第1実施形態の斜視図である。
図2a図2aは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する通気口の第2の開放動作状態を示す第1実施形態の斜視図である。
図2b図2bは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する通気口の第1の閉鎖動作状態を示す第1実施形態の正面図である。
図3a図3aは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する作動装置の第1の閉鎖動作状態を示す第1の実施形態の第1の側面図である。
図3b図3bは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する作動装置の第2の開放動作状態を示す第1の実施形態の第2の側面図である。
図4a図4aは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する通気口の第2の開放動作状態を示す第2実施形態の斜視図である。
図4b図4bは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する通気口の第1の閉鎖動作状態を示す第2実施形態の正面図である。
図5a図5aは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する作動装置の第1の閉鎖動作状態を示す第2実施形態の第1の側面図である。
図5b図5bは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する作動装置の第2の開放動作状態を示す第2実施形態の第2の側面図である。
図6a図6aは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する通気口の第2の開放動作状態を示す第3実施形態の斜視図である。
図6b図6bは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する通気口の第1の閉鎖動作状態を示す第3実施形態の正面図である。
図6c図6cは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する通気口の第1の閉鎖動作状態を示す第3実施形態の側面図である。
図7a図7aは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する通気口の第2の開放動作状態を示す第4実施形態の斜視図である。
図7b図7bは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する通気口の第1の閉鎖動作状態を示す第4実施形態の正面図である。
図7c図7cは、本発明による筐体で使用されるカバーおよび対応する通気口の第1の閉鎖動作状態を示す第4実施形態の側面図である。
【0022】
添付の図を参照して、参照番号1を有する様々な実施形態で示された低・中電圧の電気筐体は、そのより一般的な定義では、上壁(外壁、壁)13、側壁(外壁、壁)14によって区切られた内部空間を規定し、1つ以上の電気機器を収容する1つ以上の区画を有する支持構造11を備えている。
本発明の低・中電圧の電気筐体1の特徴の1つは、外壁13、14の少なくとも1つは、低・中電圧の電気筐体1の外部と内部空間とを通す1つ以上の通気口20、30が設けられているという事実によって与えられていることである。
【0023】
通気口20、30には、対応するカバー21、31が、第1の所定温度における第1の閉鎖動作状態で通気口20、30を閉じるように都合よく設けられている。また、電気筐体1には、カバー21、31を第1の閉鎖動作状態から第2の所定温度での第2の開放動作状態に移動させるように都合よく適合された作動装置40が設けられている。
本発明の低・中電圧の電気筐体1の更なる特徴は、前記作動装置40が、第1の所定温度における第1の寸法および第2の所定温度における第2の寸法に可逆的に変化可能な形状記憶合金ベース(SMAベース)の作動要素42、421を有する作動機構41を便利に備えているという事実によって与えられている。
【0024】
したがって、SMAベースの作動要素42、421が第1の寸法から第2の寸法に可逆的に寸法を変化させると、カバー21、31の可逆的な動きが、第1の閉鎖動作状態から第2の開放動作状態、およびその逆の動作によって決定される。
そのため、開放状態では、温度が第1の所定温度未満に回復するまで、低・中電圧の電気筐体1の制御された対流換気が可能である。この時点で、SMAベースの作動要素42、421は、その寸法を第2の寸法から第1の寸法に変化させ、それによってカバー21、31を第2の開放動作状態から第1の閉鎖動作状態に移動させ、筐体1の元の閉鎖状態および元のIP定格を回復させる。
【0025】
添付の図に示すように、現在開示されている低・中電圧の電気筐体1の好ましい実施形態では、カバー21、31は、対応する通気口20、30のリム部分211、311にヒンジ可能である。そして、カバー21、31は、ヒンジ軸を中心に回転することにより、先に説明した機構に従って、第1の閉鎖動作状態と第2の開放動作状態との間で枢動可能である。
本発明の低・中電圧の電気筐体1の大部分の好ましい実施形態では、SMAベースの作動要素42、421は、好ましくは、第1の所定温度での第1の所定長さと、第2の所定温度での第2の所定長さとを有するバーまたはワイヤを備える。
【0026】
添付の図に示すように、SMAベースの作動要素42、421がバーまたはワイヤで形成されている場合、作動機構は非常に単純なものとすることができる。特に、図3および図5を参照して、そのような場合、作動機構41は、有利には、対応するカバー21、31に動作可能に接続された第1の端部511と、バーまたはワイヤ42、421の第1の端部43、431に動作可能に接続された第2の端部512とを有するレバー51を備えることができる。
図3aおよび3bに示された低・中電圧の電気筐体1の実施形態では、バーまたはワイヤ42は、筐体1の固定点45に固定された第2の端部44を有する。したがって、SMAベースの作動要素42の動きは、バーまたはワイヤ42の第1の端部43がレバーの第2の端部512に作用して、一方向のみで行われ、それによって、その変位およびその結果として生じるカバー21の閉鎖位置から開放位置への動き、およびその逆の動きが決定される。
【0027】
図4および図7に示す低・中電圧の電気筐体1の代替実施形態では、電気筐体1は、有利には、第1および第2のカバー21(および31)の組に対応して設けられた第1および第2の通気口20(および30)の1つ以上の組を備える。
この場合、図5aおよび5bを参照して、SMAベースの作動要素421は、有利には、第1の所定温度における第1の所定長さと、第2の所定温度における第2の所定長さとを有するバーまたはワイヤを備える。これに対して、作動機構41は、有利には、第1および第2のカバー21(および31)に接続された第1の端部511をそれぞれ有する第1および第2のレバー51、52を備える。さらに、バーまたはワイヤ421は、第1のレバー51に動作可能に接続された第1の端部431と、第2のレバー52に動作可能に接続された第2の端部441とを有する。
【0028】
実際には、この実施形態によれば、SMAベースの作動要素421は、2つの通気口20(および30)と対応するカバー21(および31)との間に配置され、互いにミラーリングされている。バーまたはワイヤ421の動きは、バーまたはワイヤ421の第1の端部431が第1のレバー51に作用し、バーまたはワイヤ421の第2の端部441が第2のレバー52に作用するように、第1および第2のレバー51、52に同時に作用する2つの反対方向に行われ、それにより、それらの反対方向への変位およびその結果としてのカバー21(および31)の閉鎖位置から開放位置への動き、およびその逆の動きが決定される。
【0029】
図6および図7を参照して、本開示の低・中電圧の電気筐体1の特定の実施形態では、通気口30のリムは、それが配置されている対応する壁の表面に対して隆起している。
次に、好ましい実施形態によれば、カバー31は、リム部分311にヒンジされており、有利には、リム部分311から通気口30の方向にかつ通気口30の上に延びる第1の部分312を備えている。カバー31はさらに、リム部分311から通気口30および第1の部分312と反対の方向に延びる第2の部分313を備える。
【0030】
前述したように、この実施形態によれば、カバー31の第2の部分313は、カバー31の第1の部分312の重量を少なくとも部分的に相殺し、それにより、ヒンジ軸を中心とするカバー31の回転を容易にする。
図6および図7のカバー31を移動させるために使用される作動機構および要素は図示されていないが、基本的には、図2および図4の実施形態に使用され、図3および図5で表されるものと実質的に類似したものとすることができる。
また、通気口、カバーおよび作動装置は、筐体1の外壁のいずれかに直接形成されてもよいし、前記外壁のいずれかに取り付け可能なプレート301、302、303、304に形成されてもよい。
【0031】
添付の図に示す低・中電圧の電気筐体1の実施形態では、第1の所定温度は第2の所定温度よりも低く、SMAベースの作動要素42、421の第1の寸法はSMAベースの作動要素42、421の第2の寸法よりも大きい。
言い換えれば、示された実施形態では、SMAベースの作動要素42、421は、負の温度係数を有する形状記憶合金、すなわち、温度が所定の値または範囲を超えたときに収縮する形状記憶合金に基づいている。したがって、SMAベースの作動要素42、412は、温度が所定の値または範囲を超えると縮む。
【0032】
代替的に、図示されていないが、逆の動作条件に基づく実施形態によれば、SMAベースの作動要素42、421は、正の温度係数を有する形状記憶合金、すなわち、温度が所定の値または範囲を超えたときに膨張する形状記憶合金をベースにすることができる。この場合、SMAベースの作動要素42、421は、温度が所定の値または範囲を超えると、その作動寸法を増大させる(すなわち、伸びる)。
【0033】
図1を参照して、本発明の低・中電圧の電気筐体1の一実施形態では、通気口20は、筐体1の上壁13に配置されている。この位置は、安全性を考慮して大いに好ましい。しかしながら、前に述べたように、通気口20の位置は、筐体1内の様々な区画内でのアークフラッシュの可能性に応じて変化してもよい。
本発明の低・中電圧の電気筐体1における通気口20、30の数および位置に関するものについては、必要性および筐体のレイアウトに応じて、先に説明した実施形態の任意の組み合わせも可能であることは明らかである。
【0034】
通気口20、30の寸法は比較的広いので、および/またはその上に何らかの保護を有することが好ましい場合には、ネットまたはメッシュ300を前記通気口に対応して都合よく配置してもよい。
本発明の低・中電圧の電気筐体が、意図された目的を完全に達成し、既存の筐体の上述した問題を解決したことは、上記の説明から明らかである。
特に、本発明の低・中電圧の電気筐体においては、望ましい高いIP度と、内部アーク障害時の良好な性能と、抵抗性との間に満足のいくバランスをとることが可能である。
【0035】
実際、本発明の低・中電圧の電気筐体では、内部アーク障害時に発生した増加圧力は、元のIP定格を取り返しのつかないほど失うことなく放出されることができる。
したがって、高いIP度は、通常の条件での通常の動作中に維持され、一方、IP値の低下は、アークフラッシュの発生中に、限られた時間にのみ一時的に行われる。
さらに、内部アーク発生時に温度および圧力の増加を制御するための装置(本発明の低・中電圧の電気筐体で使用される)では、負担のかかるメンテナンス介入を必要としないため、このことは注目に値する。
【0036】
その上、通気口のカバーの開閉温度を予め決めておき、かつ、SMAベースの作動要素の材質を適切に選択することで、内部の温度変化を容易に制御することができる。
このようにして、本発明の低・中電圧の電気筐体に使用される作動装置は、専用のケーブル配線や給電を必要とせず、非常に簡単かつ迅速に設置することができる。
【0037】
また、筐体内の温度変化を制御するための装置の非常にシンプルな構造の結果として、通常はメンテナンスの介入が不要であるか、または非常に簡単かつ迅速に実行できる。
このようにして考え出された低・中電圧の電気筐体にはいくつかのバリエーションがあり、そのすべてが添付の特許請求の範囲に含まれている。実際には、使用される材料および偶発的な寸法および形状は、要件および技術の状態に応じて、任意のものとすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1:低・中電圧の電気筐体(筐体)
11:支持構造
13:上壁(外壁、壁)
14:側壁(外壁、壁)
20、30:通気口(開口部)
21:カバー(第1のカバー)
31:カバー(第2のカバー)
40:作動装置
41:作動機構
42、421:作動要素(バーまたはワイヤ)
43、431:第1の端部
44:第2の端部
45:固定点
51:レバー(第1のレバー)
52:第2のレバー
211、311:リム部分
300:ネットまたはメッシュ
301、302、303、304:プレート
311:リム
312:第1の部分
313:第2の部分
441:第2の端部
511:第1の端部
512:第2の端部
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c