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特許7605612オレフィン重合用触媒およびオレフィン重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】オレフィン重合用触媒およびオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/64 20060101AFI20241217BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C08F4/64
C08F10/00 510
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020180632
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071588
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 恭行
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 浩志
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-545639(JP,A)
【文献】特開2006-176601(JP,A)
【文献】特開2020-117711(JP,A)
【文献】中国特許第102731693(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60-4/70
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(A-I)および(A-II)を満たすカーボン材料(A)と、
下記一般式(B-I)で表される有機アルミニウム化合物(B)と、
下記一般式(C-I)で表される遷移金属化合物(C)と
を含むオレフィン重合用触媒。
(A-I)X線光電子分光法(XPS)における酸素原子/炭素原子モル比が0.018以上0.400以下である;
(A-II)BET多点法における比表面積が100m2/g以上5000m2/g以下である;
a mAl(ORb)n p q ・・・(B-I)
[一般式(B-I)中、Ra およびRb は、炭素数1以上15以下の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは1以上3以下の整数、nは0以上2以下の整数、pは0以上2以下の整数、qは0以上2以下の整数であり、かつm+n+p+q=3である。]
【化1】
[一般式(C-II)中、Mは周期表第4族もしくは第5族の遷移金属原子を示し、
1 、R 2 、R 3 、R 4 、およびR 5 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、
6 は、水素原子、1級または2級炭素のみからなる炭素数1以上3以下の炭化水素基、炭素数4以上のアルキル基、アリール基置換アルキル基、単環性もしくは二環性の環状炭化水素基、アリール基またはハロゲン原子を示し、
nは、Mの価数を満たす1以上4以下の整数であり、
Xは脱離基であり、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、共役ジエン系誘導体基、および孤立電子対で配位可能な中性配位子からなる群より選ばれ、nが2以上の場合は、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。]
【請求項2】
前記一般式(C-I)におけるMが周期表第4族遷移金属原子である、請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項3】
前記要件(A-I)における酸素原子/炭素原子モル比が0.020以上0.250以下である請求項1または2に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項4】
前記要件(A-II)における比表面積が150m2/g以上3000m2/g以下である請求項1~のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項5】
前記カーボン材料(A)が、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、グラファイトおよび活性炭からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合させる工程を含むオレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
前記オレフィンを重合させる工程が、エチレンを単独重合させる工程、または、エチレンと炭素数3以上30以下の直鎖状もしくは分岐状のα-オレフィンとを共重合させる工程である請求項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合用触媒および該オレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)などのカーボン材料(炭素材料)をポリオレフィンに配合することで、 ポリオレフィンに高い熱導電性、電気伝導性および耐候性を付与することができる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これらのカーボン材料をポリオレフィン中に分散させることは難しいという問題がある。
【0003】
ポリオレフィン中へのカーボン材料の分散性を向上させるために、カーボン材料に金属錯体を担持または含侵させた重合触媒を用いて重合することにより、カーボン材料とポリオレフィンの複合体を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2~4参照)。しかしながら、これらの方法では、いずれも高価なメチルアルミノキサン(MAO)等の有機アルミニウムオキシ化合物を助触媒として用いており、製造コストの低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-071079号公報
【文献】特開2006-176601号公報
【文献】特開2007-161741号公報
【文献】特表2005-506404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高価な有機アルミニウムオキシ化合物を用いなくても高い重合活性を示し、かつ、カーボン材料を効率的に分散させたオレフィン重合体を製造することができるオレフィン重合用触媒および該オレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、特定のカーボン材料と特定の有機アルミニウム化合物を助触媒として用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、
下記要件(A-I)および(A-II)を満たすカーボン材料(A)と、
下記一般式(B-I)で表される有機アルミニウム化合物(B)と、
下記一般式(C-I)で表される遷移金属化合物(C)と
を含む。
(A-I)X線光電子分光法(XPS)における酸素原子/炭素原子モル比が0.018以上0.400以下である;
(A-II)BET多点法における比表面積が100m2/g以上5000m2/g以下である;
a mAl(ORb)n p q ・・・(B-I)
[一般式(B-I)中、Ra およびRb は、炭素数1以上15以下の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは1以上3以下の整数、nは0以上2以下の整数、pは0以上2以下の整数、qは0以上2以下の整数であり、かつm+n+p+q=3である。]
mMXn・・・(C-I)
[一般式(C-I)中、Mは周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族原子、およびランタニド原子からなる群より選択される原子であり、
Lは配位子であり、複数のLは互いに同一でも異なっていてもよく、L中の置換基により複数のLが繋がっていてもよいが、少なくとも1つのLには、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子が含まれ、
mは2以上の整数であり、
nは、Mの価数を満たす1以上4以下の整数であり、
Xは脱離基であり、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、共役ジエン系誘導体基、孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれ、nが2以上の場合は、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。]
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高価な有機アルミニウムオキシ化合物を用いなくても高い重合活性を示し、かつ、カーボン材料を効率的に分散させたオレフィン重合体を製造することができるオレフィン重合用触媒および該オレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法を提供することできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
[オレフィン重合用触媒]
本発明のオレフィン重合用触媒は、
下記要件(A-I)および(A-II)を満たすカーボン材料(A)と、
下記一般式(B-I)で表される有機アルミニウム化合物(B)と、
下記一般式(C-I)で表される遷移金属化合物(C)と
を含むことを特徴とする。
【0010】
(A-I)X線光電子分光法(XPS)における酸素原子/炭素原子モル比が0.018以上0.400以下である。
(A-II)BET多点法における比表面積が100m2/g以上5000m2/g以下である。
【0011】
a mAl(ORb)n p q ・・・(B-I)
前記一般式(B-I)中、Ra およびRb は、炭素数1以上15以下の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは1以上3以下の整数、nは0以上2以下の整数、pは0以上2以下の整数、qは0以上2以下の整数であり、かつm+n+p+q=3である。
【0012】
mMXn・・・(C-I)
前記一般式(C-I)中、Mは周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族原子、およびランタニド原子からなる群より選択される原子を示し、Lは配位子であり、複数のLは互いに同一でも異なっていてもよく、L中の置換基により複数のLが繋がっていてもよいが、少なくとも1つのLには、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子が含まれ、mは2以上の整数であり、nは、Mの価数を満たす1以上4以下の整数であり、Xは脱離基であり、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、共役ジエン系誘導体基、および孤立電子対で配位可能な中性配位子からなる群より選ばれ、nが2以上の場合は、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
【0013】
以下、本発明のオレフィン重合用触媒を構成する各成分について説明する。
<カーボン材料(A)>
本発明に用いられるカーボン材料(A)は、下記要件(A-I)および(A-II)を満たす。
【0014】
(A-I)X線光電子分光法(XPS)における酸素原子/炭素原子モル比が0.018以上0.400以下、好ましくは0.020以上0.250以下、より好ましくは0.022以上0.200以下である。
【0015】
酸素原子/炭素原子モル比は、X線光電子分光法(XPS)測定により得られる値であり、具体的には、カーボン材料(A)から得られるスペクトルの酸素原子および炭素原子のピーク面積より、酸素原子/炭素原子モル比を算出して得られる。
【0016】
酸素原子/炭素原子モル比が高いほど、後述する有機アルミニウム化合物(B)と接触可能な酸素原子の量が増えるため好ましいが、酸素原子/炭素原子モル比が高くなり過ぎると、カーボン材料(A)中のsp2結合炭素による二次元シート構造が減少する傾向にある。
【0017】
前記カーボン材料(A)中の酸素原子は、炭素材料中の炭素原子の一部が酸素原子に置き換わったものでもよく、炭素材料上の置換基内に含まれていてもよく、炭素材料の表面もしくは細孔に配位もしくは吸着した化合物中に含まれていてもよい。
【0018】
前記カーボン材料(A)中の酸素原子の量は、炭素材料の製造条件、熱処理(例えば、乾燥、焼成)、吸水処理、表面改質または修飾処理(例えば、官能基導入、酸化処理、還元処理)などにより制御することができる。
【0019】
(A-II)BET多点法における比表面積が100m2/g以上5000m2/g以下、好ましくは150m2/g以上3000m2/g以下、より好ましくは200m2/g以上2000m2/g以下である。
【0020】
比表面積は、吸着等温線を用いたBET(Brunauer-Emmett-Teller)多点法により得られる値であり、具体的には、50℃以上300℃以下の真空加熱脱気処理を行ったカーボン材料(A)を、吸着質として窒素ガスを用いて吸着等温線を測定し、吸着等温線からBETプロットを作成し、この勾配と切片から単分子吸着量を求め、比表面積を算出して得られる。
【0021】
細孔を有するカーボン材料(A)を用いる場合、比表面積が高過ぎると、細孔径が小さくなり(言い換えると、ミクロ孔の割合が増加し)、後述する有機アルミニウム化合物(B)および遷移金属化合物(C)との接触が阻害される。
細孔を有するカーボン材料(A)の場合、細孔容積は好ましくは0.1~5.0cm3/g、より好ましくは0.3~4.0cm3/gである。
【0022】
前記カーボン材料(A)の比表面積は、前記炭素材料の原料、大きさ(ナノサイズ化)、形状ならびに細孔などにより制御することができ、細孔を形成する方法としては、特開2020-093977号公報に例示されている鋳型源を導入する方法、賦活処理による方法などが挙げられる。
【0023】
本発明で用いられるカーボン材料(A)は、固体状の炭素材料であり、上記要件(A-1)および(A-II)を満たす限り特に限定されず、結晶性、低結晶性、非晶性およびこれらの混合物からなる炭素材料を含む。
【0024】
前記炭素材料の内、結晶性炭素としては、カーボンナノチューブ(例えば、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)および多層カーボンナノチューブ(MWCNT))、グラフェン(例えば、単層グラフェン、多層グラフェン)、フラーレン(例えば、バックミンスターフラーレン、高次フラーレン)、グラファイト(例えば、天然黒鉛、人造黒鉛)、ダイヤモンドなどが例示できる。低結晶性および非晶性炭素としては、カーボンブラック、活性炭などが例示できる。
【0025】
前記カーボン材料(A)は、前記炭素材料に表面改質または修飾処理(例えば、官能基導入、酸化処理、還元処理)が施されたものでもよく、金属などが内包されたものでもよく、炭素原子の一部が別の原子に置換されたものでもよい。
【0026】
本発明に係るカーボン材料(A)は従来公知の方法で製造したものを使用でき、市販品を用いてもよい。
例えば、カーボンナノチューブは、特開2009-196873号公報に例示されている、アーク放電、レーザー蒸着、気相化学蒸着などの方法により製造され、特表2014-501689号公報に例示されている方法などにより表面修飾処理を行うことができる。市販品としては、Nanocyl社の「Multi Walled Carbon nanotubes NANOCYL NC7000」、「Multi Walled Carbon nanotubes NANOCYL NC3101」、SkySpring Nanomaterials社の「Single Walled Nanotubes OH Functionalized」、「Multi Walled Nanotubes OH Functionalized」、IoLiTec社の「Multi-Walled Carbon Nanotubes, -OH Functionalized」などが挙げられる。
【0027】
グラフェンは、特開2014-152095号公報に例示されている、アーク放電、レーザー蒸着、気相化学蒸着、炭化ケイ素の熱処理、機械的剥離、化学酸化後の超音波剥離などの方法により製造することができる。市販品としては、XG Sciences社の「Graphene Nanoplatelets xGnP」、Graphitene社の「Reduced Graphene Oxide」、「Boron-doped Graphene Powder」、「Phosphorus-doped Graphene Powder」、「Sulfur-doped Graphene Powder」、「Nitrogen-doped Graphene Powder」、「Graphene Film」などが挙げられる。
【0028】
フラーレンは、特開2013-241379号公報に例示されている、アーク放電、抵抗加熱、レーザー蒸発、燃焼、熱分解などの方法により製造され、化学処理などによりフラーレンの炭素上にヒドロキシル基やカルボキシル基を導入することができる。市販品としては、IoLiTec社の「C60 PCPA」「C60(OH)22-26」などが挙げられる。
【0029】
グラファイトは、天然黒鉛と人造黒鉛とに大別でき、天然黒鉛の例としては、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛(鱗状黒鉛)、土状黒鉛などが挙げられる。人造黒鉛は、特開平02-083208号公報に例示されている、Fe、Ni/C系溶融体からの析出、Si、Al等の炭化物の分解、高温・高圧下での炭素融液の冷却、炭化水素ガスの高温分解沈積などの方法により製造することができる。市販品としては、日本黒鉛社の「高純度黒鉛粉末 SP-270」、「人造黒鉛粉末 HAG-150」などが挙げられる。
【0030】
カーボンブラックは、油や天然ガスなどの炭化水素を原料として、熱分解法や不完全燃焼させることで製造することができる。具体的には、ファーネス法、チャンネル法、アセチレン法、松煙法として知られる方法などが挙げられる。
【0031】
活性炭は、木材(例えば、木炭、おがくず、樹皮)、果物殻(例えば、ヤシガラ)、穀物殻(例えば、籾殻)、石炭(例えば、草炭、タール、コークス)、石油(例えば、タール、ピッチ)などを高温で炭化および賦活することなどにより製造することができる。市販品としては、東洋炭素社の「多孔質炭素 CNоvel」、ソニー社の「Triporous」などが挙げられる。
【0032】
前記カーボン材料(A)は、sp2結合炭素による二次元シート構造を有することが好ましく、二次元シートが筒状に巻かれた構造や、球状となった構造も好ましい。具体的には、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、グラファイト、活性炭からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0033】
前記カーボン材料(A)は、形状および大きさに特に制限はなく、顆粒状、粉末状、繊維状、シート状などの形状でもよいが、顆粒状、粉末状の形状の場合には、メソ孔またはマクロ孔を有することが、後述する有機アルミニウム化合物(B)および遷移金属化合物(C)との接触が促進されるため好ましい。
前記カーボン材料(A)は、必要に応じて50℃以上1000℃以下、好ましくは100℃以上800℃以下で乾燥または焼成して使用してもよい。
【0034】
<有機アルミニウム化合物(B)>
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(B)は、下記一般式(B-I)で表される化合物である。
【0035】
a mAl(ORb)n p q ・・・(B-I)
式(B-I)中、Ra およびRb は、炭素数1以上15以下の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは1以上3以下の整数、nは0以上2以下の整数、pは0以上2以下の整数、qは0以上2以下の整数であり、かつm+n+p+q=3である。
【0036】
炭素数1以上15以下の炭化水素基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などである。
【0037】
前記有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジヒドロフェニルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ-n-ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジイソヘキシルアルミニウムハイドライド、ジフェニルアルミニウムハイドライド、ジシクロヘキシルアルミニウムハイドライド、ジ-sec-ヘプチルアルミニウムハイドライド、ジ-sec-ノニルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド;ジメチルアルミニウムエトキキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソプロピルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシドなどが挙げられる。
【0038】
上記の中では、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシドが特に好ましい。
【0039】
<遷移金属化合物(C)>
本発明で用いられる遷移金属化合物(C)は、下記一般式(C-I)で表される化合物である。
【0040】
mMXn・・・(C-I)
式(C-I)中、Mは周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族原子、およびランタニド原子からなる群より選択される原子である。好ましくは、周期表第4族遷移金属原子であり、具体的にはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子である。
【0041】
Lは配位子であり、複数のLは互いに同一でも異なっていてもよく、L中の置換基により複数のLが繋がっていてもよいが、少なくとも1つのLには、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子が含まれる。中でも、L中のホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子が前記Mと共有結合または配位結合していることが好ましい。さらに前記Mと結合する原子が、窒素原子、酸素原子であることが特に好ましい。
mは2以上の整数であり、好ましくは2である。
nは、Mの価数を満たす1以上4以下の整数であり、好ましくは1または2である。
【0042】
Xは脱離基であり、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、共役ジエン系誘導体基、および孤立電子対で配位可能な中性配位子からなる群より選ばれる。nが2以上の場合は、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基または共役ジエン系誘導体基である。
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる、好ましくは塩素または臭素である。
【0043】
前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基(ブタン-2-イル基)、tert-ブチル基(2-メチルプロパン-2-イル基)、iso-ブチル基(2-メチルプロピル基)、ペンタン-2-イル基、2-メチルブチル基、iso-ペンチル基(3-メチルブチル基)、ネオペンチル基(2,2-ジメチルプロピル基)、シアミル基(1,2-ジメチルプロピル基)、iso-ヘキシル基(4-メチルペンチル基)、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基(2,3-ジメチルブタ-2-イル基)、4,4-ジメチルペンチル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、プロペニル基(プロパ-1-エン-1-イル基)、iso-プロペニル基(プロパ-1-エン-2-イル基)、アレニル基(プロパ-1,2-ジエン-1-イル基)、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基(ブタ-2-エン-1-イル基)、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基(2-メチルアリル基)、ブタ-1,3-ジエニル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基(3-メチルブタ-3-エン-1-イル基)、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、プレニル基(3-メチルブタ-2-エン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基;
エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基(プロパ-1-イン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基; ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基(4-iso-プロピルベンジル基)、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、1-フェニルエチル基、ベンズヒドリル基(ジフェニルメチル基)、クミル基などの芳香族含有直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;
フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、メシチル基(2,4,6-トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso-プロピルフェニル基)、ジュリル基(2,3,5,6-テトラメチルフェニル基)、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基などの芳香族置換基(アリール基)
が挙げられる。前記炭化水素基の中でも、メチル基、iso-ブチル基、ネオペンチル基、シアミル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基が好ましい。
【0044】
前記ハロゲン含有基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、ヘキサクロロアンチモン酸アニオンなどが挙げられる。前記ハロゲン含有基の中でも、ペンタフルオロフェニル基が好ましい。
【0045】
前記ケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、トリメチルシリルメチル基などが挙げられる。前記ケイ素含有基の中でも、トリメチルシリルメチル基が好ましい。
【0046】
前記酸素含有基としては、例えば、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシメトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,6-ジ-iso-プロピルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェノキシ基などのアリーロキシ基、フリル基、ベンゾフリル基、テトラヒドロフリル基、ピラニル基、テトラヒドロピラニル基、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、過塩素酸アニオン、過ヨウ素酸アニオンなどが挙げられる。前記酸素含有基の中でも、メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、tert-ブトキシ基が好ましい。
【0047】
前記硫黄含有基としては、例えば、メシル基(メタンスルフォニル基)、フェニルスルホニル基、トシル基(p-トルエンスルホニル基)、トリフリル基(トリフルオロメタンスルホニル基)、ノナフリル基(ノナフルオロブタンスルホニル基)、チオフェニル基、メシラート基(メタンスルホナート基)、トシラート基(p-トルエンスルホナート基)、トリフラート基(トリフルオロメタンスルホナート基)、ノナフラート基(ノナフルオロブタンスルホナート基)、チオフェン基、ベンゾチオフェン基などが挙げられる。前記硫黄含有基の中でも、トリフラート(トリフルオロメタンスルホナート)が好ましい。
【0048】
前記窒素含有基としては、例えば、アミノ基、シアノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ジアリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ニトロ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ピロリル基、ビストリフリルイミド基、ピリジニル基、ピリミジニル基、キノリニル基、トリアジニル基、オキサゾリン基、イミダゾール基、インドール基、カルバゾール基などが挙げられる。前記窒素含有基の中でも、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、ピロリル基、ビストリフリルイミド基が好ましい。
【0049】
前記リン含有基としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸アニオンなどが挙げられる。
前記ホウ素含有基としては、例えば、テトラフルオロホウ酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン、(メチル)(トリス(ペンタフルオロフェニル))ホウ酸アニオン、(ベンジル)(トリス(ペンタフルオロフェニル))ホウ酸アニオン、テトラキス((3,5-ビストリフルオロメチル)フェニル)ホウ酸アニオン、BR4(Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子等を示す。)で表される基などが挙げられる。
【0050】
前記アルミニウム含有基としては、例えば、
【化1】
で表される四員環、あるいは
【化2】
で表される四員環
(Mは、前記一般式[3]または[4]中のMを表す。)
を形成可能な、AlR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子等を示す)で表される基などが挙げられる。
【0051】
前記共役ジエン系誘導体基としては、例えば、1,3-ブタジエニル基、イソプレニル基(2-メチル-1,3-ブタジエニル基)、ピペリレニル基(1,3-ペンタジエニル基)、2,4-ヘキサジエニル基、1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル基、シクロペンタジエニル基など、メタロシクロペンテン基などが挙げられる。
【0052】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類、トリエチルアミン、ジエチルアミンなどのアミン類、ピリジン、ピコリン、ルチジン、オキサゾリン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、チオフェンなどの複素環式化合物、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィンなどの有機リン化合物が挙げられる。
【0053】
前記炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、共役ジエン系二価誘導体基、孤立電子対で配位可能な中性配位子は、さらに別の置換基で置換されていてもよい。
【0054】
このような遷移金属化合物(C)としては、例えば、特開2003-206310号公報、特開2020-117711号公報、特表2009-537656号公報、特表2017-520548号公報、特開2004-269825号公報、特開2011-127121号公報、特表2016-527182号公報、特表2017-535518号公報などに記載されている遷移金属化合物が挙げられ、好ましくは下記一般式(C-II)、(C-III)、(C-IV)、(C-V)、(C-VI)で表される遷移金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0055】
【化3】
【0056】
前記一般式(C-II)において、Mは周期表第4族もしくは周期表第5族遷移金属原子を示し、具体的には、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、バナジウム原子、ニオブ原子、タンタル原子である。好ましくは周期表第4族遷移金属原子、具体的にはチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子であり、特に好ましくはチタン原子またはジルコニウム原子である。
【0057】
なお、前記一般式(C-II)において、窒素原子(N)とMとを繋ぐ点線は、一般的には窒素原子(N)がMに配位していることを示すが、本発明においては配位していてもしていなくてもよい。
【0058】
1、R2、R3、R4およびR5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
【0059】
前記ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基の具体例としては、前記一般式(C-I)におけるXとして例示したものと同様のものが挙げられ、前記ゲルマニウム含有基または前記スズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムまたはスズに置換した基が挙げられる。加えて、前記炭化水素基中の置換基として、前記ハロゲン含有基、前記ケイ素含有基、前記酸素含有基、前記硫黄含有基、前記窒素含有基、前記リン含有基、前記ホウ素含有基を有する構造もR1、R2、R3、R4、R5として例示できる。
【0060】
前記炭化水素基としては、特に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素数1以上30以下、好ましくは1以上20以下の直鎖状または分岐状のアルキル基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素数6以上30以下、好ましくは6以上20以下のアリール基;
これらのアリール基にハロゲン原子、炭素数1以上30以下、好ましくは1以上20以下のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数6以上30以下、好ましくは6以上20以下のアリール基もしくはアリーロキシ基などの置換基が1~5個置換した置換アリール基が好ましい。
【0061】
1は、オレフィン重合触媒活性の観点および高分子量のエチレン系重合体を与えるという観点から、炭素数1以上20以下の直鎖状もしくは分岐状の炭化水素基、炭素数3以上20以下のアルキル基および炭素数6以上20以下のアリール基から選ばれる基であることが好ましい。
【0062】
6は、水素原子、1級または2級炭素のみからなる炭素数1以上3以下の炭化水素基、炭素数4以上のアルキル基、アリール基置換アルキル基、単環性もしくは二環性の環状炭化水素基、アリール基およびハロゲン原子から選ばれる。これらのうち、オレフィン重合触媒活性の観点、高分子量のエチレン重合体を与えるという観点から、炭素数4以上のアルキル基、アリール基置換アルキル基、単環性または二環性の環状炭化水素基およびアリール基から選ばれる基であることが好ましく、より好ましくはtert-ブチル基などの分岐状のアルキル基;ベンジル基、1-メチル-1-フェニルエチル基(クミル基)、1-メチル-1,1-ジフェニルエチル基、1,1,1-トリフェニルメチル基(トリチル基)などのアリール置換アルキル基;シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデシル基などの炭素数6以上15以下の環構造を有する環状炭化水素基が挙げられる。
【0063】
Xは脱離基であり、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子からなる群より選ばれる置換基であり、該アニオン配位子が、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系誘導体基である。nが2以上の場合は、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。 好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基または共役ジエン系誘導体基である。
Xの具体例としては、前記一般式(C-I)におけるXとして例示したものと同様のものが挙げられる。
nは、Mの価数を満たす1~4の整数であり、好ましくは1または2である。
【0064】
【化4】
【0065】
前記一般式(C-III)および(C-IV)において、Mは周期表第4族の遷移金属原子を示し、具体的には、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子であり、好ましくはチタン原子である。
【0066】
7は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、隣接したR7は、互いに結合して置換基を有していてもよい単環性または二環性の環を形成してもよい。前記ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基の具体例としては、前記一般式(C-II)におけるR1、R2、R3、R4、R5として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0067】
7は、好ましくは、炭素数1以上25以下の炭化水素基、炭素数1以上25以下の酸素含有基または炭素数1以上25以下の窒素含有基である。R7が、置換基を有していてもよい単環性または二環性の環を形成する場合には、リン原子またはホウ素原子を含む置換基を有していてもよい4~8員環の飽和または不飽和ヘテロ環として環を形成することが好ましい。
【0068】
Cpは、置換基を有していてもよい、シクロペンタジエニル型配位子である。前記置換基のうち、相互に隣接した置換基は、互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成してもよい。
【0069】
前記シクロペンタジエニル型配位子は、π型結合によって金属に結合している5員環炭素環を有する置換配位子であり、置換シクロペンタジエニル配位子、置換テトラヒドロインデニル配位子、置換オクタヒドロフルオレニル配位子、置換ヒドロアズレニル配位子、置換ペンタヒドロアズレニル配位子、置換ジヒドロシクロペンテノアニュレン配位子、置換シクロペンテノピロール配位子、置換シクロペンテノチオフェン配位子および置換シクロペンテノジチオフェン配位子等の置換シクロペンタジエニル型配位子、置換インデニル配位子、置換テトラヒドロインデニル配位子、置換ベンゾインデニル配位子、置換ジヒドロインダセニル配位子、置換インデノピロール配位子、置換インデノインドール配位子および置換インデノチオフェン等の置換インデニル型配位子、ならびに置換フルオレニル配位子等を含む。シクロペンタジエニル型配位子としては、置換シクロペンタジエニル型配位子および置換インデニル型配位子が好ましく、より好ましくは、置換シクロペンタジエニル配位子、置換ジヒドロシクロペンテノアニュレン配位子、置換シクロペンテノチオフェン配位子、置換シクロペンテノジチオフェン配位子、置換インデニル配位子である。
【0070】
前記シクロペンタジエニル型配位子の置換基は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上40以下の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基である。
【0071】
前記シクロペンタジエニル型配位子の置換基における、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基および硫黄含有基の具体例としては、前記R7における炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基および硫黄含有基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0072】
Zは周期表第15族または16族の原子であり、好ましくは窒素原子、酸素原子である。
Yは、リン原子またはホウ素原子である。
実線は共有結合または配位結合であり、点線はZが15族元素の場合に存在する共有結合である。
【0073】
yは、Zが15族元素の原子である場合は2であり、Zが16族元素の原子である場合は3である。
zは、Zが15族元素の原子である場合は3であり、Zが16族元素の原子である場合4である。
【0074】
Xは、脱離基であり、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子からなる群より選ばれる置換基であり、該アニオン配位子が、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系誘導体基である。nが2以上の場合は、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。 好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基または共役ジエン系誘導体基である。
【0075】
Xの具体例としては、前記一般式(C-I)におけるXとして例示したものと同様のものが挙げられ、nは、Mの価数を満たす1~4の整数であり、好ましくは1または2である。
nは、Mの価数を満たす1~4の整数であり、好ましくは1または2である。
【0076】
【化5】
【0077】
前記一般式(C-V)および(C-VI)において、Mは周期表第3族、第4族、第5族、第6族原子またはランタニド原子からなる群より選択される原子を示す。好ましくは周期表第4族の遷移金属原子であり、具体的には、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子である。
【0078】
前記一般式(C-V)および(C-VI)において、ZαおよびZβとMとを繋ぐ4本の点線のうち、少なくとも2本は共有結合であり、その他の結合は配位結合である。ただし配位結合を示す結合について、本発明においては配位していてもしていなくてもよい。
【0079】
αがMと共有結合を形成している場合、Zαは互いに同一でも異なっていてもよく、窒素原子またはリン原子から選択され、ZαがMと共有結合を形成していない場合、Zαは互いに同一でも異なっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、-NRα-、および-PRα-からなる群より選択される。
【0080】
βがMと共有結合を形成している場合、Zβは互いに同一でも異なっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、-NRβ-、および-PRβ-からなる群より選択され、ZβがMと共有結合を形成していない場合、Zβは互いに同一でも異なっていてもよく、-ORβ、-SRβ、-NRβ 2、および-PRβ 2からなる群より選択される。
【0081】
前記Rα、Rβは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基またはホウ素含有基を示し、具体例としては、前記一般式(C-II)におけるR1、R2、R3、R4、R5として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0082】
8は、原子数1以上50以下(水素原子は数に加えない)の原子を含む架橋基であり、好ましい構造としては、直鎖状または分岐状のアルキル基、環状飽和炭化水素を含むアルキル基、芳香族炭化水素を含むアルキル基を挙げることが出来る。これらの中でも、直鎖状または分岐状のアルキル基、環状飽和炭化水素を含むアルキル基が特に好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ペンタン-2,4-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジメチレン基が挙げられる。
【0083】
9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23およびR24は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基またはホウ素含有基を示し、具体例としては、前記一般式(C-II)におけるR1、R2、R3、R4、R5として例示したものと同様のものが挙げられる。これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。好ましくは、R10、R18の少なくとも一方は水素ではなく、R10、R18がともに、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよい、アリール基芳香環中の1つ以上のヘテロ原子を含むアリール基から成る群から選択されることが特に好ましい。
【0084】
Xは、脱離基であり、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子からなる群より選ばれる置換基であり、該アニオン配位子が、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系誘導体基である。nが2以上の場合は、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基または共役ジエン系誘導体基である。
【0085】
Xの具体例としては、前記一般式(C-I)におけるXとして例示したものと同様のものが挙げられ、nは、Mの価数を満たす1~4の整数であり、好ましくは1または2である。
nは、Mの価数を満たす1~4の整数であり、好ましくは1または2である。
【0086】
前記要件(A-I)および(A-II)を満たすカーボン材料(A)と、
前記一般式(B-I)で表される有機アルミニウム化合物(B)と、
前記一般式(C-I)で表される遷移金属化合物(C)と
を含む、本発明のオレフィン重合用触媒は、カーボン材料を効率的に分散させたオレフィン重合体を、高い重合活性で製造することができる。
【0087】
本発明の効果が奏される理由は、必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。
カーボン材料(A)中の酸素原子と有機アルミニウム化合物(B)との接触により、遷移金属化合物(C)の触媒活性を発現させる、一般的に助触媒と呼ばれる化学種が形成し、この化学種と遷移金属化合物(C)とを接触させた後、オレフィンを重合させることでオレフィン重合体を製造することができる。この時、前記要件(A-I)および(A-II)を満たすカーボン材料(A)を用いることで、遷移金属化合物(C)と接触可能な前記化学種をより多く形成させることができ、また前記一般式(C-I)で表される遷移金属化合物(C)を用いることで、カーボン材料(A)中のsp2結合炭素で形成される二次元シート構造の特異な電子特性により、前記一般式(C-I)で表される遷移金属化合物(C)中のヘテロ原子と電子的な相互作用が生じることで、大幅に高いオレフィン重合活性を発現するオレフィン重合用触媒になっている、と推察される。
【0088】
このことは、特開2003-206310号公報の比較例1において、ヘテロ原子を有する遷移金属化合物に対して、酸素原子含有化合物(アルコール)と有機アルミニウム化合物との接触物を用いても触媒活性が発現しなかったことからも、驚くべき結果であり、いかに当業者といえども容易に発見に至ることがない技術と言える。
【0089】
<オレフィン重合用触媒の調製方法>
本発明のオレフィン重合用触媒は、前記カーボン材料(A)、前記有機アルミニウム化合物(B)および前記遷移金属化合物(C)を接触させることにより調製される固体触媒成分(X)が好ましい態様の一つである。
【0090】
前記有機アルミニウム化合物(B)および前記遷移金属化合物(C)は液体状であれば不活性溶媒を用いて希釈し、固体状であれば不活性溶媒に溶解させ、前記カーボン材料(A)と接触させることが好ましい。用いることができる不活性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素や、へキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族飽和炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物を例示できる。
【0091】
前記カーボン材料(A)、前記有機アルミニウム化合物(B)および前記遷移金属化合物(C)の接触方法は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、例えば、前記カーボン材料(A)に前記有機アルミニウム化合物(B)または前記遷移金属化合物(C)を含む不活性溶媒を添加し前記カーボン材料(A)の細孔内に含侵させる方法、前記カーボン材料(A)を前記有機アルミニウム化合物(B)または前記遷移金属化合物(C)を含む不活性溶媒に浸して静置する方法、前記カーボン材料(A)と、前記有機アルミニウム化合物(B)または前記遷移金属化合物(C)を含む不活性溶媒とを撹拌などにより混合する方法、前記カーボン材料(A)に前記有機アルミニウム化合物(B)または前記遷移金属化合物(C)を含む不活性溶媒を流通させる方法などが挙げられ、前記カーボン材料(A)は、固体状の支持体(粉末、造粒粒子、繊維やフィルムなども含む)に物理的もしくは化学的に固定化された状態のものを用いても良く、接触の際に加熱操作を行ってもよい。
【0092】
この内、前記カーボン材料(A)と前記有機アルミニウム化合物(B)または前記遷移金属化合物(C)を含む不活性溶媒とを撹拌などにより混合する方法が好ましく、接触操作の後、必要に応じて接触液を静置させて上澄みを抜く、もしくはろ過等の方法により前記不活性溶媒を除き、必要に応じて前記不活性溶媒で洗浄してもよい。
【0093】
加熱操作を行う場合の温度は、用いる溶媒にもよるが通常、その溶媒の凝固点温度以上200℃以下、好ましくは150℃以下である。接触時間は、接触方法や温度にもよるが通常、30秒以上1000時間以下、好ましくは5分以上120時間以下である。
前記接触方法におけるいずれの工程においても、成分(G)を共存させることにより、重合反応中のファウリングをさらに高度に抑制したり、生成重合体の粒子性状をさらに改善したりすることができる。成分(G)としては、極性官能基を有する化合物を用いることができ、非イオン性(ノニオン)界面活性剤が好ましく、ポリアルキレンオキサイドブロック、高級脂肪族アミド、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、N-アシルアミノ酸がより好ましい。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記カーボン材料(A)、前記有機アルミニウム化合物(B)および前記遷移金属化合物(C)の接触順序は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、
前記カーボン材料(A)と、前記有機アルミニウム化合物(B)とを接触させる工程(1-1)と、
前記工程(1-1)で得られた接触物と、前記遷移金属化合物(C)とを接触させて固体触媒成分(X)を得る工程(1-2)とを含む方法や、
前記カーボン材料(A)と、前記有機アルミニウム化合物(B)とを接触させる工程(2-1)と、
前記遷移金属化合物(C)と、前記有機アルミニウム化合物(B)とを接触させる工程(2-2)と、
前記工程(2-1)で得られた接触物と、前記工程(2-2)で得られた接触物とを接触させて固体触媒成分(X)を得る工程(2-3)とを含む方法などが挙げられる。この時、前記工程(2-1)と前記工程(2-2)で用いる前記有機アルミニウム化合物(B)は同一でも異なっていてもよい。
【0095】
前記工程(1-1)、(2-1)において、前記有機アルミニウム化合物(B)は、前記カーボン材料(A)1g当たり、好ましくは0.1mmol以上500mmol以下、より好ましくは0.2mmol以上200mmol以下、さらに好ましくは0.5mmol以上100mmol以下の範囲で用いることができる。
【0096】
前記工程(2-2)において、前記有機アルミニウム化合物(B)は、前記遷移金属化合物(C)1mmоl当たり、好ましくは0.1mmol以上3000mmol以下、より好ましくは0.5mmol以上1000mmol以下、さらに好ましくは1mmol以上500mmol以下の範囲で用いることができる。
【0097】
前記工程(1-2)、(2-3)において、前記遷移金属化合物(C)は、前記カーボン材料(A)1g当たり、好ましくは0.1μmol以上1000μmol以下、より好ましくは0.5μmol以上500μmol以下、さらに好ましくは1μmol以上200μmol以下の範囲で用いることができる。
【0098】
オレフィン重合体の製造には、前記固体触媒成分(X)を不活性炭化水素中に懸濁した状態で用いてもよく、乾燥させた状態で用いてもよい。また、オレフィン重合体の製造の製造に用いられるオレフィンと同一でも異なっていてもよいオレフィンを用いて、前記固体触媒成分(X)を予備重合させてから用いても良い。
【0099】
[オレフィン重合体の製造方法]
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、上述した本発明のオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合させる工程を含むことを特徴とする。本発明において、「重合」には、ホモ重合の他、ランダム共重合、ブロック共重合などの共重合の意味が含まれることがある。
【0100】
本発明において重合されるオレフィンとしては、エチレン、α-オレフィン、環状オレフィンが挙げられる。
これらのうち、α-オレフィンとしては、炭素数3以上30以下の直鎖状または分岐状のα-オレフィンが挙げられ、好ましくは炭素数3以上20以下である。より具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。これらの中では、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテンが好ましく、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンがより好ましい。
【0101】
環状オレフィンとしては、炭素数3~30の環状オレフィンが挙げられ、好ましくは炭素数3~20である。より具体的には、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0102】
前記オレフィンを重合させる工程は、前記固体触媒成分(X)存在下に、エチレンを単独重合させる工程、または、エチレンと炭素数3以上20以下のα-オレフィンを共重合させる工程であることが好ましい。
【0103】
本発明のオレフィン重合体の製造方法では、重合は、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0104】
本発明の方法におけるオレフィンを重合させる温度の下限は-20℃、好ましくは0℃、さらに好ましくは20℃、特に好ましくは30℃であり、オレフィンを重合させる温度の上限は、200℃、好ましくは150℃、さらに好ましくは100℃、特に好ましくは80℃である。
【0105】
本発明の方法における重合圧力は、通常、常圧以上10MPa以下、好ましくは常圧以上5MPa以下の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。
また、本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、重合反応の条件を変えて二段以上に分けて反応を行う、いわゆる多段重合方法であってもよい。
【0106】
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。
前記オレフィンを重合させる工程には、重合反応器への付着(ファウリング)抑制または粒子性状改善を目的として、前記成分(G)を共存させることができる。
【0107】
<オレフィン重合体>
本発明のオレフィン重合体の製造方法により得られるオレフィン重合体の一態様としては、エチレン由来の構成単位を好ましくは90モル%以上100モル%以下、より好ましくは95モル%以上100モル%以下の範囲で含むエチレン系重合体が挙げられる。前記エチレン系重合体は、炭素数3以上20以下のα-オレフィン由来の構成単位を好ましくは合計0モル%以上10モル%以下、より好ましくは0モル%以上5モル%以下の範囲で含む。ただし、エチレン由来の構成単位の含量と炭素数3以上20以下のα-オレフィン由来の構成単位の含量との合計を100モル%とする。
【0108】
これらの重合体の中でも、エチレン単独重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体、エチレン/1-オクテン重合体、エチレン/1-ヘキセン重合体、エチレン/4-メチル-1-ペンテン重合体、エチレン/プロピレン/1-オクテン重合体、エチレン/プロピレン/1-ヘキセン重合体、エチレン/プロピレン/4-メチル-1-ペンテン重合体が好ましい。また、これらの重合体から選択される二種以上を混合または連続的に製造することによって得られる、いわゆるブロック共重合体(インパクトコポリマー)でもよい。
【0109】
前記オレフィン重合体の製造方法で得られるオレフィン重合体中に、前記カーボン材料(A)が好ましくは0.01重量%以上25重量%以下、より好ましくは0.02重量%以上10重量%以下の範囲で含まれる。前記カーボン材料(A)はオレフィン重合体中に効率的に分散されており、高い熱導電性、電気伝導性および耐候性を有することが期待される。
【実施例
【0110】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0111】
[カーボン材料]
カーボン材料として、下記カーボン材料(A-1)~(A-8)および(A’-9)~(A’-11)を使用した。なお、カーボン材料はいずれも使用前に100℃、3時間の条件で減圧乾燥を行った後、窒素雰囲気下で室温に戻してから固体触媒成分(X)の調製に使用した。
【0112】
・カーボン材料(A-1):XG Sciences社 Graphene Nanoplatelets xGnP C750
・カーボン材料(A-2):XG Sciences社 Graphene Nanoplatelets xGnP C500
・カーボン材料(A-3):XG Sciences社 Graphene Nanoplatelets xGnP C300
・カーボン材料(A-4):XG Sciences社 Graphene Nanoplatelets xGnP M25
・カーボン材料(A-5):Graphitene社 Reduced Graphene Oxide
・カーボン材料(A-6):日本黒鉛社 高純度黒鉛粉末 SP-270
・カーボン材料(A-7):Nanocyl社 Multi Walled Carbon nanotubes NANOCYL NC3101
・カーボン材料(A-8):東洋炭素社 多孔質炭素 CNоvel MJ(4)010)
・カーボン材料(A’-9):Graphitene社 Graphene Nanocarbonplatelets - Powder
・カーボン材料(A’-10):日本黒鉛社 薄片化黒鉛粉末 UP-5N
・カーボン材料(A’-11):Southwest Nanotechnologies社 Single Walled Carbon nanotubes Signis SG65i
【0113】
≪酸素含量≫
カーボン材料の酸素含量は、X線光電子分光法(XPS)(KRATOS社製「AXIS-NOVA」)により求めた。試料は100℃で3時間減圧乾燥した後、窒素雰囲気下で取り扱い、X線源として単色化AlKαを用いて測定した。測定時には帯電補正中和を行った。O1sナロースペクトルのピーク面積から酸素原子濃度を、C1sナロースペクトルのピーク面積から炭素原子濃度を求め、酸素原子/炭素原子のモル比を算出した。結果を表1に示す。
【0114】
≪比表面積≫
カーボン材料の比表面積は、液体窒素温度下における窒素ガス吸着法(マイクロトラック・ベル社製「BELSORP-max」)により、吸着脱離等温線を測定した。解析法として、BET多点法を用いて比表面積を求めた。分析結果を表1に示す。
【0115】
[有機アルミニウム化合物]
有機アルミニウム化合物として、下記有機アルミニウム化合物(B-1)~(B-3)を使用した。有機アルミニウム化合物(B-1)~(B-3)はデカン溶液として1.0mоl/Lに希釈した後に使用した。
【0116】
・有機アルミニウム化合物(B-1):東ソー・ファインケム社 トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)
・有機アルミニウム化合物(B-2):東ソー・ファインケム社 トリエチルアルミニウム(TEAL)
・有機アルミニウム化合物(B-3):東ソー・ファインケム社 ジエチルアルミニウムエトキシド(DEAL-E)
【0117】
[遷移金属化合物]
遷移金属化合物として、下記式(C-1)~(C-5)および(C’-6)~(C’-7)で表される遷移金属化合物(C-1)~(C-5)および(C’-6)~(C’-7)を公知の方法で製造して使用した。
【化6】
【0118】
<遷移金属化合物の同定>
遷移金属化合物の構造は、270MHz 1H-NMR(日本電子製GSH-270)等を用いて常法に従って測定し、決定した。
【0119】
[固体触媒成分(X)の調製]
<調製例1>
充分に窒素置換した内容積30mLのシュレンク管に、カーボン材料(A-1)100mg、トルエン5mLを加え、回転子を用いて撹拌を開始した。この懸濁液に有機アルミニウム化合物(B-1)のデカン溶液0.25mL(有機アルミニウム化合物(B-1)換算で0.25mmоl)を加え、室温で30分間撹拌を継続した。その後、遷移金属化合物(C-1)3.0μmоlをトルエン溶液として加え、さらに室温で30分間撹拌を行うことで、カーボン材料(A-1)の固体分濃度が10.0g/Lとなる固体触媒成分(X-1)のスラリーを調製した。
【0120】
<調製例2~11>
カーボン材料(A-1)の代わりにカーボン材料(A-2)~(A-8)および(A’-9)~(A’-11)を用いたこと以外は調製例1と同様の方法にて、固体触媒成分(X-2)~(X-11)のスラリーを調製した。
【0121】
<調製例12>
有機アルミニウム化合物(B-1)の添加量を有機アルミニウム化合物(B-1)換算で0.10mmоlに変更したこと以外は調製例1と同様の方法にて、固体触媒成分(X-12)のスラリーを調製した。
【0122】
<調製例13および14>
有機アルミニウム化合物(B-1)の代わりに有機アルミニウム化合物(B-2)およおび(B-3)を用いたこと以外は調製例1と同様の方法にて、固体触媒成分(X-13)および(X-14)のスラリーを調製した。
【0123】
<調製例15>
有機アルミニウム化合物(B-1)を用いなかったこと以外は調製例1と同様の方法にて固体触媒成分(X-15)のスラリーを調製した。
【0124】
<調製例16~21>
遷移金属化合物(C-1)の代わりに遷移金属化合物(C-2)~(C-5)および(C’-6)~(C’-7)を用いたこと以外は調製例1と同様の方法にて、固体触媒成分(X-16)~(X-21)のスラリーを調製した。
【0125】
[オレフィン重合体の製造]
<実施例1>
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブ反応器に、窒素雰囲気下、ヘプタン500ミリリットルを添加した後、エチレンを流通させて反応器内をエチレンで飽和させた。次に、有機アルミニウム化合物(B-1)のデカン溶液0.375mL(有機アルミニウム化合物(B-1)換算で0.375mmоl)、および調製例1で得られた固体触媒成分(X-1)のスラリーから、カーボン材料(A-1)の固体分として30mgに相当する量のスラリーを抜き出して反応器に装入した。その後、エチレンにて80℃、0.8MPaGに昇温昇圧し、回転数350rpmで60分間重合反応を行った。反応終了後、反応器内の内容物をろ過し、80℃で10時間減圧乾燥することで、オレフィン重合体53.8gを得た。
【0126】
<実施例2~8および比較例1~3>
固体触媒成分(X-1)の代わりに調製例2~8で得られた固体触媒成分(X-2)~(X-8)のスラリーを用い、カーボン材料の固体分として表1に記載の量を反応器に装入したこと以外は実施例1と同様の方法にて重合反応を行った。反応終了後、反応器内の内容物をろ過し、80℃で10時間減圧乾燥することで、表1に示す量のオレフィン重合体を得た。
【0127】
<比較例1~3>
固体触媒成分(X-1)の代わりに調製例9~11で得られた固体触媒成分(X-9)~(X-11)のスラリーを用い、カーボン材料の固体分として表1に記載の量を反応器に装入したこと以外は実施例1と同様の方法にて重合反応を行った。反応終了後、反応器内の内容物をろ過し、80℃で10時間減圧乾燥することで、表1に示す量のオレフィン重合体を得た。
【0128】
【表1】
【0129】
実施例のオレフィン重合用触媒を構成するカーボン材料(A)は比表面積および酸素含量がともに高く、比表面積と酸素含量の少なくともいずれかが低いカーボン材料を用いた比較例に比べ、より多くのオレフィン重合体を得られることが分かる。
【0130】
<実施例9>
固体触媒成分(X-1)の代わりに調製例12で得られた固体触媒成分(X-12)のスラリーを用い、カーボン材料(A)の固体分として表2に記載の量を反応器に装入したこと以外は実施例1と同様の方法にて重合反応を行った。反応終了後、反応器内の内容物をろ過し、80℃で10時間減圧乾燥することで、表2に示す量のオレフィン重合体を得た。
【0131】
<実施例10~11>
有機アルミニウム化合物(B-1)の代わりに有機アルミニウム化合物(B-2)~(B-3)を用いたこと、および固体触媒成分(X-1)の代わりに調製例13~14で得られた固体触媒成分(X-13)~(X-14)のスラリーを用い、カーボン材料(A)の固体分として表2に記載の量を反応器に装入したこと以外は実施例1と同様の方法にて重合反応を行った。反応終了後、反応器内の内容物をろ過し、80℃で10時間減圧乾燥することで、表2に示す量のオレフィン重合体を得た。
【0132】
<比較例4>
有機アルミニウム化合物(B-1)を用いなかったこと、および固体触媒成分(X-1)の代わりに調製例15で得られた固体触媒成分(X-15)のスラリーを用い、カーボン材料(A)の固体分として表2に記載の量を反応器に装入したこと以外は実施例1と同様の方法にて重合反応を行った。反応終了後、反応器内の内容物をろ過し、80℃で10時間減圧乾燥することで、表2に示す量のオレフィン重合体を得た。
【0133】
【表2】
【0134】
有機アルミニウム化合物(B)を用いた実施例は、有機アルミニウム化合物(B)を用いなかった比較例に比べ、より多くのオレフィン重合体を得られることが分かる。
【0135】
<実施例12>
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブ反応器に、窒素雰囲気下、ヘプタン500ミリリットルを添加した後、エチレンを流通させて反応器内をエチレンで飽和させた。次に、有機アルミニウム化合物(B-1)のデカン溶液0.375mL(有機アルミニウム化合物(B-1)換算で0.375mmоl)、および調製例1で得られた固体触媒成分(X-1)のスラリーから、カーボン材料(A)の固体分として30mgに相当する量のスラリーを抜出し反応器に装入した。その後、エチレンにて80℃、0.8MPaGに昇温昇圧し、回転数350rpmで90分間重合反応を行った。反応終了後、反応器内の内容物をろ過し、80℃で10時間減圧乾燥することで、表3に示す量のオレフィン重合体を得た。得られたオレフィン重合体の分子量を表3に示す。
【0136】
<実施例13~15>
固体触媒成分(X-1)の代わりに調製例16~18で得られた固体触媒成分(X-16)~(X-18)のスラリーを用い、カーボン材料(A)の固体分として表3に記載の量を反応器に装入したこと以外は実施例12と同様の方法にて重合反応を行った。反応終了後、反応器内の内容物をろ過し、80℃で10時間減圧乾燥することで、表3に示す量のオレフィン重合体を得た。得られたオレフィン重合体の分子量を表3に示す。
【0137】
<実施例16>
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブ反応器に、窒素雰囲気下、ヘプタン500ミリリットルを添加した後、エチレンを流通させて反応器内をエチレンで飽和させた。次に、1-ヘキセン3mL、有機アルミニウム化合物(B-1)のデカン溶液0.375mL(有機アルミニウム化合物(B-1)換算で0.375mmоl)、および調製例19で得られた固体触媒成分(X-19)のスラリーから、カーボン材料(A)の固体分として30mgに相当する量のスラリーを抜出し反応器に装入した。その後、エチレンにて80℃、0.8MPaGに昇温昇圧し、回転数350rpmで90分間重合反応を行った。反応終了後、反応器内の内容物をろ過し、80℃で10時間減圧乾燥することで、表3に示す量のオレフィン重合体を得た。得られたオレフィン重合体の分子量を表3に示す。
【0138】
<比較例5~6>
固体触媒成分(X-1)の代わりに調製例20~21で得られた固体触媒成分(X-20)~(X-21)のスラリーを用い、カーボン材料(A)の固体分として表3に記載の量を反応器に装入したこと以外は実施例12と同様の方法にて重合反応を行った。反応終了後、反応器内の内容物をろ過し、80℃で10時間減圧乾燥することで、表3に示す量のオレフィン重合体を得た。得られたオレフィン重合体の分子量を表3に示す。
【0139】
【表3】
【0140】
遷移金属化合物として、ヘテロ原子を含有している遷移金属化合物(C-1)~(C-5)を用いた実施例は、ヘテロ原子を有していない遷移金属化合物(C’-6)~(C’-7)を用いた比較例に比べ、より多くのオレフィン重合体を得られることが分かる。
【0141】
≪重量平均分子量(Mw)≫
オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。Waters社製「Alliance GPC 2000」ゲル浸透クロマトグラフ(高温サイズ排除クロマトグラフ)により得られる分子量分布曲線から計算したものであり、操作条件は、下記の通りである。
【0142】
解析ソフト;クロマトグラフィデータシステム Empower(Waters社)
カラム;TSKgel GMH6-HT×2+TSKgel GMH6-HT×2
(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー社)
移動相;o-ジクロロベンゼン
検出器;示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度;140℃
流速;1.0mL/min
注入量;400μL
サンプリング時間間隔;1秒
試料濃度;0.15%(w/v)
分子量較正 単分散ポリスチレン(東ソー社)/分子量495から分子量2060万