(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】建物の給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 9/04 20060101AFI20241217BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20241217BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241217BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20241217BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H02J9/04
H02J9/06 150
H02J7/00 303D
H02J7/00 303C
E05B47/00 G
E05B49/00 J
(21)【出願番号】P 2020213223
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健一
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-229991(JP,A)
【文献】特開2009-144422(JP,A)
【文献】特開2001-103676(JP,A)
【文献】特開2017-143710(JP,A)
【文献】特開2015-089220(JP,A)
【文献】特表2015-516531(JP,A)
【文献】特開2005-068822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 9/00-11/00
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内外の出入りを行う出入口に設けられたドアを電気的に施解錠する施錠装置を備える建物に適用され、
前記建物には、車載バッテリを搭載する車両と給電ケーブルを介して接続される接続部と、前記接続部と前記施錠装置とを接続する給電経路とが設けられ、
前記車載バッテリは、その電圧が100Vよりも低い所定電圧に設定されており、
前記接続部に前記車両を前記給電ケーブルを介して接続した状態で、前記車載バッテリから前記所定電圧の直流電力を前記給電ケーブルを通じて前記接続部に供給可能となっており、
前記給電経路は、前記接続部に供給される直流電力を前記施錠装置に供給可能な直流給電経路であり、
前記施錠装置は、前記直流給電経路より供給される直流電力により作動する
とともに、ユーザの携帯する携帯機器を用いて施解錠することが可能となっており、
屋外において前記出入口の周辺には、前記携帯機器を接続して充電することが可能な充電部が設けられ、
前記直流給電経路は、前記施錠装置に加え前記充電部にも接続され、前記接続部に供給される前記車載バッテリからの直流電力を前記充電部にも供給可能となっており、
前記充電部は、前記直流給電経路より供給される直流電力により前記携帯機器を充電することを特徴とする、建物の給電システム。
【請求項2】
屋外において前記出入口の周辺には、照明装置が設けられており、
前記直流給電経路は、前記施錠装置に加え前記照明装置にも接続され、前記接続部に供給される前記車載バッテリからの直流電力を前記照明装置にも供給可能となっており、
前記照明装置は、前記直流給電経路より供給される直流電力によって作動する、請求項1に記載の建物の給電システム。
【請求項3】
商用電源からAC100Vの商用電力が送られる分電盤と、
前記分電盤と前記直流給電経路とを接続する接続経路と、
前記分電盤から前記直流給電経路へ向けて前記接続経路を流れる商用電力を直流電力に変換する電力変換部と、
前記直流給電経路と前記接続経路との接続部分に設けられ、前記電力変換部により直流電力に変換された商用電力、及び前記車載バッテリから供給される直流電力のうちいずれを前記施錠装置に供給するか切り替える切替部と、
を備える、請求項1
又は2に記載の建物の給電システム。
【請求項4】
前記施錠装置は、前記所定電圧の直流電力により作動する、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の建物の給電システム。
【請求項5】
前記車両には、前記車載バッテリと接続されたシガーソケットが設けられ、
前記給電ケーブルは、前記シガーソケットと前記接続部とを接続するものである、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の建物の給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載された車載バッテリを用いて、車両側から建物側に給電を行う給電システムが実用化されている(例えば特許文献1参照)。かかる給電システムによれば、災害等に伴い、建物で停電が発生した場合に、車両側から建物側に電力を供給することで、建物内の電気機器を作動させることが可能となる。
【0003】
上記の給電システムにより車両側から建物側に電力を供給する際には、車両側と建物側とを給電ケーブルを介して接続し、その接続状態で車載バッテリの電力を建物側に給電ケーブルを通じて供給することになる。この場合、例えば、車両側で車載バッテリの直流電力をAC100Vの交流電力に変換し、その変換したAC100Vの交流電力を車両から建物側に供給するようにする。
【0004】
車載バッテリからの給電能力は商用電源の給電能力と比べると小さい。そのため、車載バッテリから建物側に給電を行う際には、給電先を、建物内の特定エリアに絞って給電することになると考えられる。例えばリビングやダイニング等の居室エリアを給電先とし、その居室エリアに設けられた電気機器に絞って給電を行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、建物には、玄関ドアの施錠装置として、電気的に施解錠を行う電子錠が設けられている場合がある。かかる建物では、停電が起こると、施錠装置に電力が供給されなくなるため、施錠装置が動作しなくなる。そのため、停電時に住人が外出先から帰宅して施錠装置を解錠しようとしても解錠することができず、住人が屋外に締め出されてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、上述した給電システムによる給電先に、施錠装置を含めることが考えられる。しかしながら、上述の給電システムは、建物内の居室エリアを対象として給電を行うものであるため、居室エリアに加えて、施錠装置にも給電を行うとなると、居室エリアへの給電に制限が加わり、停電時に快適に過ごせる時間が限られてしまう等の不都合が発生するおそれがある。
【0008】
また、上述の給電システムは、車両から建物に給電ケーブルを介して比較的高電圧であるAC100Vの交流電力を供給するものであるため、給電時の安全を図るべく、給電ケーブルの地絡異常等、給電異常を検出する検出装置を別途設ける必要があると考えられる。しかしながら、かかる検出装置は、一般に高価であり、給電システムを導入する上で、コストの増大を招くおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、導入コストの増大を抑制しながら、停電時における屋外への締め出しを回避することができる建物の給電システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の給電システムは、屋内外の出入りを行う出入口に設けられたドアを電気的に施解錠する施錠装置を備える建物に適用され、前記建物には、車載バッテリを搭載する車両と給電ケーブルを介して接続される接続部と、前記接続部と前記施錠装置とを接続する給電経路とが設けられ、前記車載バッテリは、その電圧が100Vよりも低い所定電圧に設定されており、前記接続部に前記車両を前記給電ケーブルを介して接続した状態で、前記車載バッテリから前記所定電圧の直流電力を前記給電ケーブルを通じて前記接続部に供給可能となっており、前記給電経路は、前記接続部に供給される直流電力を前記施錠装置に供給可能な直流給電経路であり、前記施錠装置は、前記直流給電経路より供給される直流電力により作動することを特徴とする。
【0011】
一般に、車両に搭載された車載バッテリは、その電圧(バッテリ電圧)が12Vや24V等、100Vよりも低い所定電圧に設定されている。そこで、第1の発明では、建物側の接続部に車両を給電ケーブルを介して接続した状態で、車載バッテリから上記所定電圧の直流電力を給電ケーブルを通じて接続部に供給するようにしている。この場合、車両から建物側に100Vの交流電力を供給する場合のように、給電異常を検出するための高価な検出装置を設ける必要がない。そのため、給電システムを導入する上で、コストの増大を抑制することができる。
【0012】
また、車載バッテリから接続部に供給された直流電力は直流給電経路を通じて施錠装置に供給される。これにより、建物で停電が発生した場合には、供給された直流電力により施錠装置を作動させることができる。そのため、帰宅したユーザは施錠装置を解錠して建物内に入ることができる。これにより、停電時に、ユーザが屋外に締め出されてしまうのを回避することができる。
【0013】
第2の発明の建物の給電システムは、第1の発明において、屋外において前記出入口の周辺には、照明装置が設けられており、前記直流給電経路は、前記施錠装置に加え前記照明装置にも接続され、前記接続部に供給される前記車載バッテリからの直流電力を前記照明装置にも供給可能となっており、前記照明装置は、前記直流給電経路より供給される直流電力によって作動することを特徴とする。
【0014】
第2の発明によれば、屋外において出入口周辺に設けられた照明装置にも、車載バッテリからの直流電力が供給され、その供給される直流電力により照明装置が作動される。これにより、夜間に停電になった場合には、照明装置の光により出入口周辺を照らすことができるため、施錠装置の解錠操作を好適に行うことができる。
【0015】
第3の発明の建物の給電システムは、第1又は第2の発明において、前記施錠装置は、ユーザの携帯する携帯機器を用いて施解錠することが可能となっており、屋外において前記出入口の周辺には、前記携帯機器を接続して充電することが可能な充電部が設けられ、前記直流給電経路は、前記施錠装置に加え前記充電部にも接続され、前記接続部に供給される前記車載バッテリからの直流電力を前記充電部にも供給可能となっており、前記充電部は、前記直流給電経路より供給される直流電力により前記携帯機器を充電することを特徴とする。
【0016】
施錠装置として、ユーザの携帯するスマートフォン等の携帯機器を用いて施解錠することが可能となっているものがある。ここで、停電時に、かかる携帯機器を用いて施錠装置を解錠しようとした際に、携帯機器の充電が切れてしまっている場合には、施錠装置に給電がされていても施錠装置を解錠することができず、屋外に締め出されてしまうことになってしまう。
【0017】
そこで、第3の発明では、屋外において出入口の周辺に、携帯機器を接続し充電可能な充電部を設け、その充電部にも車載バッテリからの直流電力を供給できるようにしている。これにより、停電時には、上記直流電力により携帯機器を充電できるため、携帯機器が充電切れとなって屋外に締め出されてしまうのを回避できる。
【0018】
第4の発明の建物の給電システムは、第1乃至第3のいずれかの発明において、商用電源からAC100Vの商用電力が送られる分電盤と、前記分電盤と前記直流給電経路とを接続する接続経路と、前記分電盤から前記直流給電経路へ向けて前記接続経路を流れる商用電力を直流電力に変換する電力変換部と、前記直流給電経路と前記接続経路との接続部分に設けられ、前記電力変換部により直流電力に変換された商用電力、及び前記車載バッテリから供給される直流電力のうちいずれを前記施錠装置に供給するか切り替える切替部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
第4の発明によれば、分電盤と直流給電経路とが接続経路を介して接続されている。分電盤から直流給電経路へ向けて接続経路を流れる商用電力は電力変換部により直流電力に変換される。接続経路と直流給電経路との接続部分には切替部が設けられ、その切替部により、電力変換部により直流電力に変換された商用電力及び車載バッテリからの直流電力のうちいずれを施錠装置に供給するかが切り替えられる。
【0020】
かかる構成では、切替部による切替によって商用電力が施錠装置に供給される際、商用電力が(AC100Vの)交流電力から直流電力に変換され、直流電力として車両からの給電経路である直流給電経路を通じて施錠装置に供給される。例えば、AC100Vの商用電力を分電盤から施錠装置に商用給電経路(AC100V用の給電経路)を通じて供給し、施錠装置に商用電力を直流電力に変換する電力変換部を設けるといった構成も考えられる。ただ、こうした構成では、施錠装置に通じる給電経路として、直流給電経路に加え、商用給電経路が必要となり、構成が煩雑となる。その点、第4の発明では、施錠装置に通じる給電経路を直流給電経路のみとすることができるため、構成の簡素化を図ることが可能となる。
【0021】
第5の発明の建物の給電システムは、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記施錠装置は、前記所定電圧の直流電力により作動することを特徴とする。
【0022】
第5の発明によれば、施錠装置が車載バッテリの電圧と同じ所定電圧で作動するようになっている。この場合、直流給電経路上にDC-DCコンバータ等の電圧変換装置を設ける必要がないため、その分、導入コストの低減を図ることができる。
【0023】
第6の発明の建物の給電システムは、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記車両には、前記車載バッテリと接続されたシガーソケットが設けられ、前記給電ケーブルは、前記シガーソケットと前記接続部とを接続するものであることを特徴とする。
【0024】
一般に、車両にはシガーソケットが設けられ、シガーソケットから車載バッテリの直流電力を取出可能となっている。その点、第6の発明では、車両のシガーソケットと、建物側の接続部とを給電ケーブルを介して接続するようにし、車載バッテリの直流電力をシガーソケットから給電ケーブルを通じて接続部に供給するようにしている。この場合、上記第1の発明を実施する上で、汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】他の実施形態における給電システムの全体構成を示す図。
【
図3】他の実施形態における給電システムの全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、給電システムの全体構成を示す図である。
【0027】
図1に示すように、建物10は、戸建ての住宅となっている。建物10には、出入口としての玄関口11が設けられ、この玄関口11を通じて建物10への出入りが可能となっている。玄関口11には、玄関ドア12(ドアに相当)が設けられている。玄関ドア12は、例えば開き戸からなる。なお、図中の符号12aは玄関ドア12のドアハンドル(取っ手)である。
【0028】
玄関ドア12には、施錠装置13が設けられている。施錠装置13は、玄関ドア12を電気的に施解錠する電子錠からなる。施錠装置13は、デッドボルトやそれを駆動する駆動部等を有して構成され、デッドボルトが駆動部により駆動されることで施解錠を行う。また、施錠装置13は、DC12Vの直流電力により作動するものとなっている。
【0029】
施錠装置13は、建物10の居住者が携帯する電子キー16によって施解錠される。電子キー16は、無線通信を利用して施錠装置13を施錠及び解錠操作するものである。また、施錠装置13は、居住者(ユーザに相当)が携帯する携帯機器としてのスマートフォン17によっても施解錠することが可能となっている。スマートフォン17は、無線通信を利用して施錠装置13を施錠及び解錠操作する機能を有している。なお、施錠装置13は、屋内側から施解錠操作が可能なサムターン(図示略)を有している。
【0030】
屋外において玄関口11の周辺には、照明装置14が設けられている。照明装置14は、LEDを有して構成され、玄関口11周辺の外壁19に設けられている。これにより、夜間においては、照明装置14からの光により玄関口11周辺が照らされるようになっている。また、照明装置14は、DC12Vの直流電力により作動するものとなっている。
【0031】
屋外において玄関口11の周辺には、USBコンセント15が設けられている。USBコンセント15は、玄関口11周辺の外壁19に設けられている。USBコンセント15には、居住者のスマートフォン17等をUSBケーブル18を介して接続可能となっている。USBコンセント15からはDC12Vの直流電力が出力されるようになっている。そのため、出力される電力によりスマートフォン17の充電等を行うことが可能となっている。なお、USBコンセント15が充電部に相当する。
【0032】
次に、建物10に設けられた給電システムの構成について説明する。
【0033】
建物10には、分電盤21が設けられている。分電盤21には、商用電源(系統電源)から送られるAC100Vの商用電力が引き込み線22を介して供給される。分電盤21には、複数の分岐回路23が接続されている。これら複数の分岐回路23には、リビング用の回路や、キッチン用の回路、玄関用の回路等が含まれている。各分岐回路23には、照明や家電機器、コンセント等の電気機器Eが接続されている。分電盤21に供給される商用電力は、これら分岐回路23を通じて電気機器Eに供給される。
【0034】
本給電システムは、建物10の停電時に、車両25から玄関口11周辺に設けられた施錠装置13、照明装置14及びUSBコンセント15(以下、各電気機器13~15ともいう)に給電を行うための外部給電経路を有している。以下、かかる外部給電経路について説明する。
【0035】
車両25は、車載バッテリ26を搭載したプラグインハイブリッド自動車(PHV)からなる。車載バッテリ26は、その電圧(公称電圧)がDC12V(所定電圧に相当)に設定されている。そのため、車載バッテリ26には、DC12Vの直流電力が蓄えられている。車載バッテリ26は、車両25に設けられたランプや空調装置、音響装置等の機器と電気的に接続されている。これらの機器は、車載バッテリ26から供給される電力によって作動する。また、車両25には、その車内にシガーソケット27が設けられている。シガーソケット27は、車載バッテリ26と電気的に接続され、車載バッテリ26の電力を取り出し可能となっている。
【0036】
車両25は、給電ケーブル29を介して建物10に接続可能となっている。給電ケーブル29は、その両端部に一対のコネクタ29a,29bを有している。各コネクタ29a,29bのうち、一方のコネクタ29aは車両25のシガーソケット27に接続可能とされ、他方のコネクタ29bは建物10の外壁19に設けられたインレット31に接続可能とされている。これにより、給電ケーブル29のコネクタ29aが車両25のシガーソケット27に接続され、かつコネクタ29bが建物10のインレット31に接続されることで、車両25の車載バッテリ26と建物10側のインレット31とが給電ケーブル29を介して電気的に接続される。なお、屋外には、建物10に隣接して車両25の駐車スペース33が設けられ、その駐車スペース33に面した外壁19にインレット31が取り付けられている。また、インレット31が接続部に相当する。
【0037】
建物10には、インレット31と玄関口11周辺の各電気機器13~15とを接続する給電経路が設けられている。この給電経路は、DC12Vの直流電力が流れる直流給電経路35となっている。直流給電経路35の途中には、後述する切替スイッチ36が設けられている。直流給電経路35は、インレット31と切替スイッチ36とを接続する給電経路部37と、切替スイッチ36と各電気機器13~15とを接続する給電経路部38とを有している。給電経路部38は、その途中で分岐され、それら分岐された各分岐経路38a~38cがそれぞれ各電気機器13~15に接続されている。
【0038】
上記の構成では、車両25が給電ケーブル29を介してインレット31に接続された状態で、車載バッテリ26からDC12Vの直流電力が給電ケーブル29を通じてインレット31に供給される。そして、その供給された直流電力がインレット31から直流給電経路35を通じて各電気機器13~15に供給される。これにより、供給された直流電力により施錠装置13と照明装置14とが作動するとともに、USBコンセント15が使用可能(充電可能)な状態となる。このため、停電時においても、施錠装置13を施解錠することが可能となり、またUSBコンセント15を用いてスマートフォン17を充電することが可能となる。
【0039】
続いて、分電盤21から各電気機器13~15に商用電力を供給するための構成について説明する。
【0040】
分電盤21に接続された各分岐回路23のうち、玄関用の回路である玄関用回路23Aには、各電気機器13~15が接続されている。分電盤21から各電気機器13~15には玄関用回路23Aを通じて商用電力が供給される。
【0041】
玄関用回路23Aは、分電盤21と切替スイッチ36とを接続する接続経路39と、切替スイッチ36と各電気機器13~15とを接続する上述の給電経路部38とを有して構成されている。したがって、玄関用回路23Aは、直流給電経路35の一部を含んで構成されている。
【0042】
接続経路39には、電力変換部41が設けられている。電力変換部41は、分電盤21から切替スイッチ36(ひいては直流給電経路35)へ向けて接続経路39を流れる商用電力をAC100Vの交流電力からDC12Vの直流電力に変換するものである。電力変換部41により変換された直流電力は切替スイッチ36に供給される。
【0043】
切替スイッチ36は、上述したように、直流給電経路35の途中に設けられている。この場合、切替スイッチ36は、直流給電経路35と接続経路39とが接続する接続部分に設けられている。切替スイッチ36は、接続経路39と給電経路部38とを接続する第1位置と、各給電経路部37,38を接続する第2位置との間で位置切替可能となっている。なお、切替スイッチ36が切替部に相当する。
【0044】
切替スイッチ36が第1位置にある場合には、分電盤21から接続経路39及び給電経路部38を介して各電気機器13~15に商用電力が供給される。この場合、商用電力は電力変換部41においてDC12Vの直流電力に変換され、その変換された直流電力が各電気機器13~15に供給される。なお、切替スイッチ36は、通常、第1位置に設定されている。また、この場合、第1位置を商用給電位置ということもできる。
【0045】
一方、車両25が給電ケーブル29を介してインレット31に接続された状態で、切替スイッチ36が第1位置から第2位置に切り替えられると、車載バッテリ26からDC12Vの直流電力が給電ケーブル29を介してインレット31に供給される。そして、その供給された直流電力がインレット31から各給電経路部37,38を介して各電気機器13~15に供給される。なお、この場合、第2位置を車両給電位置ということもできる。
【0046】
給電経路部37には、車両25(詳しくはシガーソケット27)とインレット31とが給電ケーブル29を介して接続されたことを検知する接続検知センサ43が設けられている。接続検知センサ43は、切替スイッチ36の切替駆動を行う駆動回路45と接続されている。接続検知センサ43により車両25とインレット31との接続が検知されると、その検知に基づき駆動回路45が切替スイッチ36を第1位置(商用給電位置)から第2位置(車両給電位置)に切り替える。これにより、車両25とインレット31とが給電ケーブル29を介して接続されると、車載バッテリ26から各電気機器13~15への給電が自動で開始されるようになっている。
【0047】
なお、駆動回路45は内蔵バッテリの電力により切替スイッチ36を切替駆動する。また、切替スイッチ36は、手動操作も可能となっており、停電が復旧した後は手動操作により切替スイッチ36を第2位置(車両給電位置)から第1位置(商用給電位置)に戻すことが可能となっている。
【0048】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0049】
車両25に搭載された車載バッテリ26は、その電圧(バッテリ電圧)が100Vよりも十分に小さい12Vに設定されている。そこで、上記の実施形態では、建物10側のインレット31に車両25を給電ケーブル29を介して接続した状態で、車載バッテリ26からDC12Vの直流電力を給電ケーブル29を通じてインレット31に供給するようにした。つまり、車載バッテリ26の直流電力を車両25側でAC100V等に電力変換することなく、そのままインレット31に供給するようにした。この場合、車両25から建物10側にAC100Vの電力を供給する場合のように、給電異常を検出するための高価な検出装置を設ける必要がない。そのため、給電システムを導入する上で、コストの増大を抑制することができる。
【0050】
また、車載バッテリ26からインレット31に供給された直流電力を施錠装置13に供給する直流給電経路35を設けた。これにより、建物10で停電が発生した場合には、直流給電経路35を通じて施錠装置13に供給される直流電力により当該施錠装置13を作動させることができる。これにより、帰宅した居住者は施錠装置13を解錠して建物10内に入ることができるため、停電時に、居住者が屋外に締め出されてしまうのを回避できる。
【0051】
直流給電経路35を、施錠装置13に加え、屋外において玄関口11周辺に設けた照明装置14に接続し、車載バッテリ26からの直流電力をインレット31から直流給電経路35を通じて照明装置14にも供給可能とした。この場合、その供給される直流電力により照明装置14を作動させることができる。これにより、夜間に停電になった場合には、照明装置14から照射される光により玄関口11周辺を照らすことができるため、施錠装置13の解錠操作を好適に行うことができる。
【0052】
直流給電経路35を、施錠装置13及び照明装置14に加え、屋外において玄関口11周辺に設けたUSBコンセント15に接続した。そして、車載バッテリ26からの直流電力をインレット31から直流給電経路35を通じてUSBコンセント15にも供給可能とした。この場合、停電時に、USBコンセント15にスマートフォン17を接続することで、USBコンセント15に供給される直流電力によりスマートフォン17を充電することができる。これにより、停電時に、スマートフォン17が充電切れとなって、スマートフォン17を用いて施錠装置13を解錠できなくなる事態を回避でき、つまりは屋外への締め出しを回避できる。
【0053】
分電盤21と直流給電経路35とを接続経路39を介して接続し、分電盤21から直流給電経路35へ向けて接続経路39を流れる商用電力を電力変換部41により直流電力に変換するようにした。また、接続経路39と直流給電経路35との接続部分に切替スイッチ36を設け、その切替スイッチ36により、電力変換部41において直流電力に変換された商用電力及び車載バッテリ26からの直流電力のうちいずれを施錠装置13に供給するか切り替えるようにした。
【0054】
かかる構成では、切替スイッチ36の第1位置(商用給電位置)への切替により商用電力が施錠装置13に供給される際、商用電力が電力変換部41により直流電力に変換され、直流電力として車両25からの給電経路である直流給電経路35(詳しくは給電経路部38)を通じて施錠装置13に供給される。この場合、施錠装置13に通じる給電経路として、AC100Vの商用電力を施錠装置13に供給する商用給電経路を設ける必要がなく、直流給電経路35のみ設ければよい。そのため、構成の簡素化を図ることが可能となる。
【0055】
施錠装置13として、車載バッテリ26の電圧と同じ12Vで作動するものを用いた。この場合、直流給電経路35上にDC-DCコンバータ等の電圧変換装置を設ける必要がないため、その分、導入コストの低減を図ることができる。
【0056】
車両25に設けられたシガーソケット27と、建物10側のインレット31とを給電ケーブル29を介して接続するようにした。シガーソケット27は、通常、車両25に設けられ、車載バッテリ26の電力を取出可能となっている。このため、かかる構成によれば、上述の給電システムを実施する上で、汎用性を高めることができる。
【0057】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0058】
(1)例えば、
図2に示すように、電力変換部41によりDC12Vの直流電力に変換された商用電力を蓄える蓄電池51(バッテリ)を設けてもよい。
図2の例では、蓄電池51が直流給電経路35の給電経路部38に設けられている。かかる構成では、通常時(商用電力の供給時)に商用電力を用いて蓄電池51を充電し、停電時に蓄電池51に充電した直流電力を各電気機器13~15に供給することが可能となる。このため、停電時には、蓄電池51と車載バッテリ26との双方から電気機器13~15に給電を行うことができ、停電時において長期に亘り給電を行うことが可能となる。例えば、停電が長期に亘る場合、外出して外出先から帰るたびに施錠装置13を解錠する必要があるが、そのような場合にも施錠装置13を都度解錠することができ、屋外への締め出しを回避することができる。
【0059】
(2)例えば、
図3に示すように、建物10にソーラパネル55を設置し、停電時に、ソーラパネル55の発電電力を各電気機器13~15に供給可能としてもよい。
図3の例では、ソーラパネル55が図示しないパワーコンディショナを介して切替スイッチ56と接続されている。切替スイッチ56は、第1位置~第3位置の間で位置切替可能な3位置切替式のスイッチとなっている。切替スイッチ56が第1位置にある場合には、分電盤21からの商用電力が電力変換部41にて直流電力に変換され、変換された直流電力が各電気機器13~15に供給される。また、切替スイッチ56が第2位置にある場合には、ソーラパネル55の発電電力(直流電力)が各電気機器13~15に供給される。また、切替スイッチ56が第3位置にある場合には、車載バッテリ26からの直流電力が各電気機器13~15に供給される。かかる構成では、停電時に、蓄電池51及び車載バッテリ26に加え、ソーラパネル55からも給電を行うことができる。そのため、より長期に亘って各電気機器13~15に給電を行うことができ、屋外への締め出しをより長期に亘って回避することができる。
【0060】
(3)上記実施形態では、玄関口11周辺において、照明装置14を屋外に設けたが、これに加えて、屋内(例えば玄関)に設けてもよい。この場合にも、直流給電経路35を屋内の照明装置に接続することで、車載バッテリ26からの直流電力を屋内の照明装置に供給することができる。これにより、夜間における停電時に玄関内を照らすことができるため、施錠装置13を解錠して建物10内に入った後の行動がし易くなる。
【0061】
(4)上記実施形態では、玄関口11周辺において、USBコンセント15を屋外に設けたが、これに加えて、屋内(例えば玄関)に設けてもよい。この場合にも、直流給電経路35を屋内のUSBコンセントに接続することで、車載バッテリ26からの直流電力によりスマートフォン17を充電することが可能となる。これにより、施錠装置13を解錠して建物10内に入った後は、屋内で充電することが可能となる。
【0062】
(5)上記実施形態では、電気機器13~15として、車載バッテリ26の電圧と同じ12V用のものを用いたが、これを変更して、12V用以外のものを用いてもよい。例えば、施錠装置13として、DC24V用のものを用いてもよい。その場合、直流給電経路35のうち、施錠装置13に通じる分岐経路38a上にDC-DCコンバータを設け、そのコンバータにより分岐経路38aを流れる直流電力をDC12VからDC24Vに変換するようにすればよい。
【0063】
(6)一般に、車両が大型車である場合には、車載バッテリの電圧が24Vに設定されている。そこで、かかる車載バッテリから施錠装置13に給電を行うようにしてもよい。この場合、直流給電経路35として、DC24V用の給電経路を構成し、施錠装置13として、DC24Vで作動するものを用いるようにすればよい。
【0064】
(7)給電ケーブルとしては、その一端部が外壁に設けられたケーブル接続部(接続部に相当)に着脱不能に接続されている(取り付けられている)ものがある。かかる給電ケーブルでは、その他端部を車両25に接続することにより、車両25と建物10側(ケーブル接続部)とが給電ケーブルを介して接続される。本発明の給電システムは、かかる給電ケーブルを用いて車両25から建物10内の電気機器13~15に給電を行う際にも適用が可能である。
【0065】
(8)上記実施形態では、給電ケーブル29を車両25のシガーソケット27(車両側接続部)に接続したが、給電ケーブル29の車両側接続部は必ずしもシガーソケット27である必要はない。例えば、車両25の側面部や後面部等に、車両側接続部を設けてもよい。
【0066】
(9)上記実施形態では、車両としてプラグインハイブリッド自動車(PHV)を用いたが、電気自動車(EV)や燃料電池複合型自動車(FCHV)等、PHV以外の車両(電動車)を用いてもよい。また、車両としては、必ずしも電動車を用いる必要はなく、ガソリン車等を用いてもよい。要するに、車載バッテリを搭載する車両であれば、本発明の給電システムを適用することが可能である。
【0067】
(10)上記実施形態では、玄関ドア12の施錠装置13に本発明の給電システムを適用したが、例えば勝手口のドア等、他の出入口ドアを施解錠する施錠装置に本発明の給電システムを適用してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…建物、11…出入口としての玄関口、12…ドアとしての玄関ドア、13…施錠装置、14…照明装置、15…充電部としてのUSBポート、17…携帯機器としてのスマートフォン、21…分電盤、25…車両、26…車載バッテリ、29…給電ケーブル、31…接続部としてのインレット、35…直流給電経路、36…切替部としての切替スイッチ、39…接続経路、41…電力変換部。