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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】防水板装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020216088
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101788
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000252034
【氏名又は名称】株式会社鈴木シャッター
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】深川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】真野 慎吾
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/031294(WO,A1)
【文献】特開平04-047093(JP,A)
【文献】特許第6092585(JP,B2)
【文献】特開2009-091736(JP,A)
【文献】特開2014-098253(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104294799(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00 - 5/20
E02B 7/20 - 7/36
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入り口等の開口部の地下に形成される地下空間部と、
該地下空間部に収納される開放姿勢から上動して開口部を閉鎖する閉鎖姿勢に変姿して開口部外に溢れた水の浸入を防止する防水板と、
前記地下空間部に上下動自在に配される状態で防水板に作動チエンを介して連動連結され、開口部外に溢れた水が集水されることに基づく重量増加を受けて下動して開放姿勢の防水板を閉鎖姿勢に上動せしめる集水バケットとを備えて構成される防水板装置において、
前記作動チエンの作動経路に、閉鎖姿勢側に上動した防水板の下動を規制する下動規制手段が設けられた構成にするにあたり、
前記下動規制手段を、
作動チエンに噛合可能な規制用スプロケットと、
規制用スプロケットを回動自在に軸支する規制用支軸と、
規制用支軸の回動を、防水板の下動方向の回動は規制するが、上動方向の回動は許容する一方向回転クラッチ部と、
前記一方向回転クラッチ部により防水板の下動方向の規制用支軸の回動が規制された状態で、防水板の下動方向の負荷が予め設定される所定負荷より小さい場合は、規制用スプロケットを規制用支軸と一体化させて防水板の下動方向の規制用スプロケットの回動を規制する一方、防水板の下動方向の負荷が所定負荷より大きい場合には、防水板の下動方向の規制用スプロケットのみの回動を許容するトルクリミッタとを備えて構成するとともに、
前記下動規制手段を構成する規制用スプロケット、一方向回転クラッチ部およびトルクリミッタは、前記規制用支軸に同軸上に組み付けられていることを特徴とする防水板装置。
【請求項2】
作動チエンの作動経路には、防水板の上下動の速度を減速する減速手段が設けられたものであり、トルクリミッタが設けられた下動規制手段は、減速手段に対して防水板が下動する側の作動経路に配されていることを特徴とする請求項1記載の防水板装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出入り口等の開口部から建物内等に浸水することを防止するための防水板装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、大雨や洪水時等に発生する溢水時において出入り口等の開口部の外に溢れ出た水が、該開口部を通して建物内や駐車場内に浸入してしまうことを防止するために、出入り口等の開口部を防水板により止水(防水)するようにした防水板装置が知られている。
このような防水板装置として、防水板を、開口部部位に形成の地下空間部に収納される開放姿勢から上動して開口部を閉鎖する閉鎖姿勢に変姿せしめることで水の浸入を防止するように構成したものがあるが、この場合に防水板を、前記地下空間部に上下動自在に配した集水バケットに作動チエンを介して連動連結し、そして開口部の外に溢れた水が集水バケットに集水されることに基づく重量増加を受けて開放姿勢の防水板を閉鎖姿勢に自動的に上動(上昇)せしめるように構成したものが提唱されている(例えば、特許文献1参照。)。
そしてこのものは、平常時では防水板の重量が空の集水バケットの重量に勝っているため、防水板は地下空間内に収納されて開口部を開放した開放姿勢になっているが、大雨時等になって溢れ出た水が集水バケットに溜まることで重量増加をして防水板の重量に勝ると、自動的に集水バケットが下動すると共に防水板が上動して止水するように構成されている。
ところで、前記特許文献1のような構成の防水板装置において、集水バケットが配設される地下空間部内に水か浸入しそして滞留することが想定され、この場合に、集水バケットが滞留した水に浮いた場合は勿論のこと、沈んだ場合においても集水バケット内の水の重量が反映されないことになって防水板の重量が勝り、溢水時において上動した防水板が不用意に下動(下降)してしまうという問題がある。
そこでこのようなことがないよう地下空間部に滞留した水を排出するための排水手段が設けているが、想定される以上の水が地下空間部に浸入した場合、排水手段による排水が間に合わないことになって地下空間部に水が滞留し、このように地下空間部に水が滞留した場合、前述したように集水バケットに集水されることに基づく下動力が働かなくなって閉鎖姿勢の防水板、あるいは上動中の防水板が下降してしまう惧れがある。
そこで前記特許文献1のものでは、防水板のこのような不用意な下動を規制するための下動規制手段が設けられている。この下動規制手段は、作動チェーンが懸回されるスプロケットと一体回動する規制スプロケットと、該規制スプロケットに係脱自在に噛合するロック爪(係止突起)を有した規制アームとを備え、ロック爪を、規制スプロケットの防水板上動側の回動は許容するが、下動側の回動は規制する所謂ワンウエイ方向の噛合をする構成にし、これによって上動した防水板の不用意な下動を規制するようしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6092585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記下動規制手段は、不意な溢水に備えて常時においても規制状態にセットされるが、このようなセット状態において、例えば防水板が路面から僅かに(例えば1~数センチメートル)上動した状態で下降規制手段による防水板の下降規制がなされることが想定され、このようになった場合、前記上動状態の防水板の上を、例えばトラック等の重量物が通過して防水板に過大な下動力が働くことで作動チエン等の作動系に無理な負荷が働くことになってこれらが変形したり破損したりする惧れがある。
また前記従来のものは、ロック爪が規制スプロケットに噛合することで防水板の下動規制をするものであるため、該ロック爪が規制スプロケットの歯に深く食い込むことがあり、このような場合に、規制アームを操作して下動規制を解除しようとしたとき、前記歯に深く食い込んだロック爪を外すことが困難になるという問題の発生が想定され、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、出入り口等の開口部の地下に形成される地下空間部と、該地下空間部に収納される開放姿勢から上動して開口部を閉鎖する閉鎖姿勢に変姿して開口部外に溢れた水の浸入を防止する防水板と、前記地下空間部に上下動自在に配される状態で防水板に作動チエンを介して連動連結され、開口部外に溢れた水が集水されることに基づく重量増加を受けて下動して開放姿勢の防水板を閉鎖姿勢に上動せしめる集水バケットとを備えて構成される防水板装置において、前記作動チエンの作動経路に、閉鎖姿勢側に上動した防水板の下動を規制する下動規制手段が設けられた構成にするにあたり、前記下動規制手段を、作動チエンに噛合可能な規制用スプロケットと、規制用スプロケットを回動自在に軸支する規制用支軸と、規制用支軸の回動を、防水板の下動方向の回動は規制するが、上動方向の回動は許容する一方向回転クラッチ部と、前記一方向回転クラッチ部により防水板の下動方向の規制用支軸の回動が規制された状態で、防水板の下動方向の負荷が予め設定される所定負荷より小さい場合は、規制用スプロケットを規制用支軸と一体化させて防水板の下動方向の規制用スプロケットの回動を規制する一方、防水板の下動方向の負荷が所定負荷より大きい場合には、防水板の下動方向の規制用スプロケットのみの回動を許容するトルクリミッタとを備えて構成するとともに、前記下動規制手段を構成する規制用スプロケット、一方向回転クラッチ部およびトルクリミッタは、前記規制用支軸に同軸上に組み付けられていることを特徴とする防水板装置である。
請求項の発明は、作動チエンの作動経路には、防水板の上下動の速度を減速する減速手段が設けられたものであり、トルクリミッタが設けられた下動規制手段は、減速手段に対して防水板が下動する側の作動経路に配されていることを特徴とする請求項1記載の防水板装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、地下空間部に収容される開放姿勢の防水板を、溢れ出た水が集水されることにより重くなった集水バケットの自重下動を受けて閉鎖姿勢に自動的に上動させて開口部の閉鎖ができ、そして上動した防水板の不用意な下動を、下動規制手段によって規制できるものでありながら、防水板に過度な下動方向の負荷が働いた場合に、規制されていた下動がトルクリミッタにより許容されることになって、作動チエン等の作動系が変形したり破損したりすることを防止できることになる。また、トルクリミッタにより構成されるため、構造の簡略化が図れ、下動規制手段に簡単に取り付けたものとすることができる。さらに、下動規制手段が、作動チエンに噛合する規制用スプロケットが設けられたものとなる結果、下動規制時において従来の様にロック爪が深く食い込んだりする不具合を回避できることになる。
請求項の発明とすることにより、トルクリミッタが設けられた下動規制手段が、防水板の上下動速度を減速して円滑な防水板の変姿作動をするための減速手段に対して防水板が下動する側の作動経路に配されたものになる結果、防水板を下動しようと過大な負荷が働いた場合に、該過大な負荷が減速手段に直接働くことが回避されて減速手段側の保護が図れることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】防水板装置の正面図である。
図2】防水板が開放姿勢の状態を示す防水板装置の概略斜視図である。
図3】防水板装置の防水板が開放姿勢の状態を示す側面断面図である。
図4】防水板装置の防水板が閉鎖姿勢の状態を示す側面断面図である。
図5】減速手段の正面図である。
図6】減速手段の縦断面図である。
図7】下動規制手段の正面図である。
図8】下動規制手段の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図において、1は、塀や建物の壁等の水の浸入を防止するよう設けられた防水体Xによって左右が挟まれた門状となった出入り口等の開口部Eに設置される防水板装置であって、該防水板装置1は、開口部E部位の地下に形成される地下空間部Sに開放姿勢の防水板2が収納されるものであって、該地下空間部Sは、底面板3、左右側面板4、前後側面板5によって囲繞形成されるが、左右側面板4間に支架される仕切り面板6によって第一、第二の仕切り室S1、S2が前後に仕切り形成されたものになっており、そして建物内側の第一仕切り室S1は開放姿勢の防水板5が収容される防水板ピットに構成され、建物外側の第二仕切り室S2は防水板5の自動的な開閉をするための錐体となる集水バケット7が収容されるバケットピットに構成されている。
【0009】
一方、開口部Eの左右両側には、前記左右側面板4から続く状態で路面から上方に突出する門柱部8が設けられているが、該門柱部8には防水板2の上下動をするための作動手段が内装されるが、該作動手段を構成する一対の第一、第二作動スプロケット9、10が、門柱部8の上端部位に回動自在に軸支されている。そして防水板2の上端部に一端部が連結された作動チエン12は、防水板2から上方に延びたものが建物内側の第一作動スプロケット9、建物外側の第二作動スプロケット10に懸回(巻回)されて下方に延び、集水バケット7の左右両端縁部に回転自在に設けた遊動スプロケット11に懸回されて上方に延びたものになっており、この様に懸回された作動チエン12の他端部が門柱部8に設けた係止部8aに連結されている。
【0010】
さらに前記開口部Eの屋外側部位には取水溝13が形成されており、大雨によって開口部Eの外に溢れた水が取水溝13に取水されることになり、そして該取水された水が取水溝13内において適当水位に達すると、取水された水は、取水溝13と第二空間部S2とを連通する連通路14を経由して第二空間部S2に配された集水バケット7に供給されるようになっている。尚、13aは取水溝13上端縁部を覆蓋するグレーチング材である。
【0011】
前記集水バケット7は、空となった平常時では、第二空間部S2の上端部部位に位置しており、この状態で防水板2は、上端縁部2aが路面と面一状になる状態で第一空間部S1に収納されていて開口部Eを開放した開放姿勢に位置している。そしてこの開放姿勢の状態において、大雨等があって開口部E外において溢水があった場合に、前述したように溢れ出た水が取水溝13に取水され、そして連通路14を経由して集水バケット7に供給されることになって集水バケット7に水が集水されることになって、該集水バケット7が、集水された水の重量を受けて防水板2の重量を上回ると、防水板2は、集水バケット7を錐体とした上動をすることになって開口部Eを閉鎖(封止)した閉鎖姿勢になって自動的に防水をするものであり、このような防水板装置1の構成等については何れも従来通りである。
尚、図中、15、16は第二仕切り室S2に滞留した水を排水するための排水手段を構成する排水路、該排水路15に設けた排水モータである。
【0012】
17、18は作動チエン12の作動経路、本実施の形態においては防水板2が下動する場合において作動チエン12が上動する経路、つまり第二作動スプロケット10から垂下する側の経路に配された減速手段、下動規制手段であって、減速手段17が該経路の下側に位置し、下動規制手段18が経路の上側に位置するよう上下に配されている。
そして減速手段17は、作動チエン12の上下動速度を減速(制動を与える、調速)することで、防水板2の上下動速度を緩和して、該防水板2が開放姿勢、閉鎖姿勢に衝撃的に上下動変位することを回避するため設けられるものであって、該減速手段17は、門柱部8に取り付けられるケース体19に組み付けられる。該ケース体19のボルト19lを介して門柱部8側に固定される基板19kには、間隙を存する状態で第一、第二の揺動板19a、19bが揺動支軸19cを介して一体揺動自在に軸支され、該第一、第二揺動板19a、19b間には減速手段17を構成する減速用支軸17aが回動自在に軸支されているが、さらに該減速用支軸17aには、第一、第二揺動板19a、19b間に配される状態で減速用スプロケット17bが一体回動する状態で軸支されている。
一方、第二揺動板19bには減速機構(図示しない)が内装された減速部17cが設けられており、該減速部17cに前記減速用支軸17aが軸支されている。そして減速用スプロケット17bの回動に制動力を与えることで減速するよう構成されている。
因みに前記減速機構は、例えば摩擦抵抗により制動を与えるもの、油等の流体抵抗により制動を与えるもの等、通常知られた減速機構を備えたものを採用することができるものである。
【0013】
さらに前記基板19kには、カムアーム19dが回動自在に軸支されるカム軸19eが立設されるが、該カムアーム19と一体回動するよう設けられる施錠用ロッド19fの先端部は、ケース体19の表面板19gに止着されている。前記カムアーム19dの先端部にはカムピン19hが突設され、該カムピン19hは、第二揺動板19dに設けたカム溝19iに移動自在に貫通している。
前記施錠ロッド19fには施錠機構(図示しない)が内装されたものであって、施錠ロッド19fの表面板19gから露出する先端面部には錠孔19jが形成され、該錠孔19jに錠(鍵、キー)20を差し込むことで施錠機構の解錠がなされ、該錠20の差し込み状態で錠21を回動操作することに連動してカムアーム19dが揺動支軸19cを軸心として揺動することになり、このカムアーム19dの揺動に連動して第一揺動板19a、19bが、減速用スプロケット17bが作動チエン12に噛合する噛合位置と該噛合が解除される解除位置とに揺動変姿するように構成されており、減速用スプロケット17bが作動チエン12に噛合した状態にすることで、作動チエン12の上下移動に制動を与えることになり、これによって防水板2の上下動の減速ができるように構成されている。
尚、図中、21は減速用スプロケット17cが作動チエン12に噛合している部位において、作動チエン12が減速用スプロケット17bとの噛合が外れないよう設けられる当て部材である。
【0014】
一方、下動規制手段18は、前記減速手段17が組込まれると同様のケース体19に組み込まれるものであるが、該下動規制手段18が組込まれるケース体19は、減速手段17が組込まれるケース体19に対して、第一揺動板19aの取り付け位置を、後述する規制用スプロケット18bを作動チエン12の配設位置に合わせるため、基板19kに近接したものになっている点が相違するだけであって、他の構成は同一であるため、図面において対応する各部について同一の引き出し符号を付すだけとしてその詳細構成についての説明は省略する。
【0015】
そして下動規制手段18は、第二揺動板19bを貫通する状態で規制用支軸18aが第一、第二揺動板19a、19bに回動自在に軸支されたものであって、該規制用支軸18aの第一、第二揺動板19a、19bのあいだには、作動チエン12に噛合可能な規制用スプロケット18bが回動自在に軸支されている。
さらに前記規制用支軸18aの第二揺動板19bから突出した先端部18cは、一方向回転クラッチ(ワンウエイクラッチ)機構が内装されたクラッチ部18dを構成するためのインナー軸となっており、該クラッチ部18dの第二揺動板19bに取り付けられたアウター部18eに嵌入組み込みされることで前記クラッチ部18dが構成されている。
因みに前記一方向回転クラッチ機構は、規制用支軸18aの回動方向を、規制用スプロケット18bが防水板2を上動する側の回動については許容するが、逆の防水板2が下動する側の回動については規制するように設定されて組み付けられるものであって、一方向回転クラッチ機構としては、例えば爪クラッチ機構、軸クラッチ機構等、通常知られた構成のものを採用することができ、その詳細については省略する。
【0016】
一方、前記規制用支軸18aには、前記下動規制手段18の下動規制を許容するためトルクリミッタとして構成される下動許容機構Yが第一、第二揺動板19a、19bのあいだに設けられている。そして該下動許容機構Yを構成する筒軸18fは、規制用支軸18aに一体回動する状態で外嵌しているが、該筒軸18fの第一揺動板19a側の端縁部にはフランジ部18gが形成され、該フランジ部18gに摺接支持される状態で前記規制用スプロケット18bが回動自在に軸支されている。そして筒軸18fには、規制用スプロケット18bから順次先端部18c側に向けて隣接する状態で、第一摩擦板18h、第二摩擦板18i、弾機18j、調節用のナット18kが設けられるが、第一摩擦板18hは、筒軸18fに対して回動自在で、規制用スプロケット18bとは一体回動するように構成され、第二摩擦板18iは、筒軸18fに対して一体回動する状態で軸心方向に移動自在で、かつ第一摩擦板18hに摺接するよう構成され、弾機18jは、第二摩擦板18iとナット18kとのあいだに挟持され、ナット18kの軸周り方向の回動操作による軸心方向の移動に基づいて弾圧力が調節されるものであって、該調節された弾圧力によって第一、第二摩擦板18h、18i同士の摺動面に所定の摩擦抵抗を付与する構成になっている。
【0017】
そして規制用スプロケット18bが作動チエン12に噛合する状態で、防水板2が上動しているとき、つまり第二空間部S2側に配される作動チエン12が下動しているときには、下動規制手段18のクラッチ部18dにおいて規制用支軸18aの該側の回動が、規制用スプロケット18b、下動許容機構Yと共に行われることになって前記作動チエン12の下動が支障なく行われる。
これに対して作動チエン12が、防水板2が下動する方向である上動側に移動しようとしたときには、下動規制手段18のクラッチ部18dにおいて規制用支軸18aの該側(防水板2の下動側)の回動が規制されることになる。そしてこの場合の回動力(回動負荷)が、下動許容機構Yの第一、第二摩擦板18h、18i同士の摩擦抵抗よりも小さい場合には、第一、第二摩擦板18h、18i同士は摺動することなく一体化し、これによって規制用支軸18aのクラッチ部18dにおける回動規制は、下動許容機構Yを介して規制用スプロケット18bにもそのまま反映されることになって、作動チエン12の下動、つまり防水板2の下動規制がなされることになる。
【0018】
一方、前記下動規制手段18のクラッチ部18dにおいて規制用支軸18aの防水板2の下動側の回動が規制された状態で、該回動力(回動負荷)が、下動許容機構Yの第一、第二摩擦板18h、18i同士の摩擦抵抗よりも大きい場合には、第一摩擦板18hが第二摩擦板18iに対して摺動することになり、これによって規制用支軸18aのクラッチ部18dにおける回動規制は、第二摩擦板18iまでとなって、規制用スプロケット18bは第一摩擦板18hと共に回動して作動チエン12の上動、つまり防水板2の下動が許容されるように設定される。
【0019】
叙述の如く構成された本実施の形態において、防水板装置1は、出入り口Eの外において溢れ出た水が、取水溝13を経由して集水バケット7に集水されることで該集水バケット7が重くなり、そして該重くなった集水バケットの自重下動を受けて、地下の第一仕切り室S1に収容される開放姿勢の防水板2が自動的に閉鎖姿勢に上動することになって開口部Eの閉鎖がなされて開口部Eからの水の浸入を防止することができる。
そしてこのように上動した防水板2は、下動規制手段18によって下動規制がなされることになり、この結果、集水バケット7が配される第二仕切り室S2に水が浸入することに基づいて集水バケット7が浮いたり沈んだりして集水バケット7の集水による重量増加効果が低下しあるいは消失したとしても、前記上動状態に維持されることになって、溢水時において不用意に防水板2が下動して防水性が損なわれしまうことを防止できることになる。
【0020】
このように防水板装置1は、溢水時において上動した防水板2による防水効果が発揮されることになるが、例えば水が引いたことに伴い、上動した防水板2を開放姿勢に下動させて平常状態にするたときに、完全に開放姿勢に戻らず、僅かに上動した中途状態で防水板2が下動停止したような場合に、防水板2上をトラックの様な重量物が通過することで該防水板2には過度な下動負荷が働くことになり、この場合に、下動規制手段18による下動規制が、該下動許容機構18に設けた下動許容手段Yによって許容されることになって防水板2が下動することになる。
この結果、作動チエン12等の作動系に対して無理な負荷が作用することが回避され、これら作動系が変形したり破損したりすることを防止できることになる。
【0021】
しかもこの場合に、下動許容機構Yはトルクリミッタにより構成されるものであるから、下動規制手段18の構造の簡略化が図れ、取り付けも簡単になる。
そのうえ下動規制手段18は、作動チエン12に噛合して防水板2の下動規制をする規制用スプロケット18bを備えて構成されるものであるから、下動規制時において従来の様にロック爪が深く食い込んだりする不具合を回避できることになる。
【0022】
さらにこのものでは、作動チエン12の作動経路には、下動規制手段18だけでなく、防水板2の上下動の速度を減速する減速手段17が設けられていることで、防水板2の上下動速度を減速することで、防水板2の変姿作動を、衝撃的なものを回避して円滑なものにできるものであるが、前記下動許容機構Yが設けられた下動規制手段18が、減速手段17に対して防水板2が下動する側の作動経路に配されている結果、防水板2を下動しようと過大な負荷が働いた場合に、該過大な負荷が減速手段17に直接働くことが回避されて減速手段17側の保護が図れることになる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、出入り口等の開口部から建物内等に浸水することを防止するための防水板装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 防水板装置
2 防水板
7 集水バケット
12 作動チエン
17 減速手段
18 下動規制手段
18b 規制用スプロケット
E 開口部
S 地下空間部
Y 下動許容機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8