(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 3/04 20060101AFI20241217BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20241217BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B60C3/04 Z
B60C9/18 G
B60C11/03 Z
(21)【出願番号】P 2020559344
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2019049003
(87)【国際公開番号】W WO2020122240
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018233637
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中田 良樹
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 啓介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩平
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-058903(JP,U)
【文献】特開昭56-112303(JP,A)
【文献】特開2003-118313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に接するトレッドと、
前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる
複数のベルトによって構成されるベルト層とを備え、
車両に装着される
トラック・バス用の空気入りタイヤであって、
前記空気入りタイヤの外径は、350mm以上、600mm以下であり、
前記空気入りタイヤに組み付けられるリムホイールのリム幅をRW、
前記空気入りタイヤのタイヤ幅をSWとした場合、
0.78≦RW/SW≦0.99の関係を満たし、
前記トレッドには、タイヤ周方向に延びる2本の周方向主溝が少なくとも形成され、
前記周方向主溝は、前記ベルト層のタイヤ幅方向外側端よりもタイヤ赤道線寄りに形成され、
前記空気入りタイヤの外径をOD、
前記空気入りタイヤのリム径をRDとした場合、
0.56≦RD/OD≦0.75
の関係を満たし、
前記RDは、12インチ以上、17.5インチ以下であり、
前記空気入りタイヤは、20,000cm
3以上、80,000cm
3以下のエアボリュームを有し、
前記空気入りタイヤの設定内圧は、400~1,100kPaである空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記周方向主溝は、前記タイヤ赤道線から前記ベルト層のタイヤ幅方向外側端までの幅を100%とした場合、25%以上、95%以下の範囲に形成される請求項
1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐荷重能力を高めた小径の空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐荷重能力(最大負荷能力)を高めつつ小径化された空気入りタイヤが知られている(特許文献1参照)。このような空気入りタイヤによれば、特に、小型車両の省スペース化が図れ、広い乗車スペースが確保できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上述したような小径の空気入りタイヤは、支持しなければならない荷重に対して接地長が短く接地面積も小さいため、接地圧が不均一になり易い問題がある。このような接地圧の不均一は偏摩耗の原因となり得る。
【0005】
また、近年、都市内での人や物などの輸送に主眼を置いた新たな小型シャトルバスが提案されている。このような小型シャトルバスは、全長5m、全幅2m程度であり、車両総重量も3tを超える場合も想定されている。このような小型シャトルバスに装着される空気入りタイヤに対しても、省スペース化が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、高い耐荷重能力と省スペース化とを達成しつつ、偏摩耗を効果的に抑制し得る空気入りタイヤの提供を目的とする。
【0007】
本発明の一態様は、路面に接するトレッド(トレッド20)と、前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられるベルト層(ベルト層50)とを備え、車両(車両1)に装着される空気入りタイヤ(空気入りタイヤ10)であって、前記空気入りタイヤの外径は、350mm以上、600mm以下であり、前記空気入りタイヤに組み付けられるリムホイール(リムホイール100)のリム幅をRW、前記空気入りタイヤのタイヤ幅をSWとした場合、0.78≦RW/SW≦0.99の関係を満たし、前記トレッドには、タイヤ周方向に延びる2本の周方向主溝(周方向主溝21, 22)が少なくとも形成され、前記周方向主溝は、前記ベルト層のタイヤ幅方向外側端よりもタイヤ赤道線(タイヤ赤道線CL)寄りに形成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、空気入りタイヤ10が装着される車両1の全体概略側面図である。
【
図2】
図2は、空気入りタイヤ10及びリムホイール100の断面図である。
【
図3】
図3は、空気入りタイヤ10の単体断面図である。
【
図4】
図4は、トレッド20の一部展開平面図である。
【
図5】
図5は、タイヤ形状(タイヤ外径OD及びタイヤ幅SW)と、リムホイール形状(リム径RD及びリム幅RW)との組合せに基づく典型的なタイヤサイズのポジショニングを示す図である。
【
図6】
図6は、変更例に係る空気入りタイヤ10Aの断面図である。
【
図7】
図7は、他の変更例に係る空気入りタイヤ10Bの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0010】
(1)空気入りタイヤが装着される車両の概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10が装着される車両1の全体概略側面図である。
図1に示すように、本実施形態では、車両1は、4輪自動車である。なお、車両1は、4輪に限定されず、6輪構成或いは8輪構成などであってもよい。
【0011】
車両1は、車輪構成に応じて、所定数の空気入りタイヤ10が装着される。具体的には、車両1には、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10が所定位置に装着される。
【0012】
車両1は、都市内での人や物などの輸送に主眼を置いた新たな小型シャトルバスに属する。本実施形態では、新たな小型シャトルバスとは、全長が4m~7m、全幅2m程度であり、車両総重量が3t前後である車両を想定する。但し、サイズ及び車両総重量は、必ずしも当該範囲に限定されず、多少であれば、当該範囲から外れても構わない。
【0013】
また、小型シャトルバスは、必ずしも人の輸送に限らず、物の輸送、移動店舗、移動オフィスなどとして用いられてもよい。
【0014】
さらに、小型シャトルバスは、都市内での人や物などの輸送に主眼が置かれているため、比較的低い走行速度レンジ(最高速度70km/h以下、平均速度50km/h程度)を想定する。
このため、ハイドロプレーニング対策は重視されなくても構わない。
【0015】
本実施形態では、車両1は、自動運転機能(レベル4以上を想定)を備えた電気自動車であることを前提とするが、自動運転機能は必須ではなく、また、電気自動車でなくても構わない。
【0016】
車両1が電気自動車である場合、インホイールモーター(不図示)をパワーユニットとして用いられることが好ましい。インホイールモーターは、ユニット全体がリムホイール100の内側空間に設けられてもよいし、ユニットの一部がリムホイール100の内側空間に設けられてもよい。
【0017】
また、インホイールモーターを用いる場合、車両1は、各車輪が独立して操舵が可能な独立操舵機能を備えることが好ましい。これにより、その場での転回、及び横方向への移動が可能となるとともに、動力伝達機構が不要となるため、車両1のスペース効率を向上し得る。
【0018】
このように、車両1では、高いスペース効率が要求される。このため、空気入りタイヤ10は、極力小径であることが好ましい。
【0019】
一方、車両サイズ及び用途に応じた相応の車両総重量となる車両1に装着されるため、高い耐荷重能力(最大負荷能力)が要求される。
【0020】
空気入りタイヤ10は、このような要件を満たすべく、タイヤ外径OD(
図1において不図示、
図2参照)を小さくしつつ、車両1の車両総重量に対応した耐荷重能力を有する。
【0021】
また、車両1がインホイールモーター及び独立操舵機能を備える場合、応答性向上の観点からは空気入りタイヤ10の偏平率は低いことが好ましく、インホイールモーターなどの収容スペースを考慮すると、空気入りタイヤ10のリム径RD(
図1において不図示、
図2参照)は、大きいことが好ましい。
【0022】
(2)空気入りタイヤの構成
図2は、空気入りタイヤ10及びリムホイール100の断面図である。具体的には、
図2は、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。なお、
図2では、断面のハッチング表示は、省略されている(
図3以降も同様)。
【0023】
空気入りタイヤ10は、比較的小径である一方、幅広である。具体的には、リムホイール100の径であるリム径RDは、12インチ以上、17.5インチ以下であることが好ましい。但し、リム径RDは、他の数値範囲を満たすのであれば、10インチ以上、22インチ以下であってもよい。
【0024】
図2に示すように、リム径RDは、リムホイール100のリム本体部分の外径であり、リムフランジ110の部分は含まない。
【0025】
また、空気入りタイヤ10のタイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下であることが好ましい。
図2に示すように、タイヤ幅SWは、空気入りタイヤ10の断面幅を意味し、空気入りタイヤ10がリムガード(不図示)を備える場合、リムガード部分は含まれない。
【0026】
さらに、空気入りタイヤ10の偏平率は、35%以上、75%以下であることが好ましい。なお、偏平率は、式1を用いて算出される。
【0027】
偏平率(%)=タイヤ断面高さH/タイヤ幅SW(断面幅)×100 …(式1)
空気入りタイヤ10の外径であるタイヤ外径ODは、350mm以上、600mm以下である。なお、タイヤ外径ODは、500mm以下であることが好ましい。
【0028】
タイヤ外径ODがこのようなサイズであって、空気入りタイヤ10に組み付けられるリムホイール100のリム幅をリム幅RWとした場合、空気入りタイヤ10は、(式2)及び(式3)の関係を満たす。
【0029】
0.78≦RW/SW≦0.99 …(式2)
0.56≦RD/OD≦0.75 …(式3)
なお、空気入りタイヤ10は、0.78≦RW/SW≦0.98を満たすことが好ましく、0.78≦RW/SW≦0.95を満たすことがより好ましい。また、空気入りタイヤ10は、0.56≦RD/OD≦0.72を満たすことが好ましく、0.56≦RD/OD≦0.71を満たすことがより好ましい。
【0030】
このような関係を満たす空気入りタイヤ10は、小径でありながら、車両1の車両総重量を支持するために必要なエアボリュームを確保し得る。具体的には、エアボリュームは、荷重支持性能を考慮すると20,000cm3以上必要である。また、省スペース化を考慮すると80,000cm3以下であることが必要である。
【0031】
なお、上述の関係を満たすのであれば、リム幅RWは、特に限定されないが、エアボリュームを確保する観点からは、なるべく広いことが好ましい。例えば、リム幅は、3.8~7.8Jとすることができる。
【0032】
また、同じくエアボリュームを確保する観点からは、タイヤ外径ODに対するリム径RDの比率が小さい、つまり、偏平率が高いことが好ましい。但し、上述したように、応答性の観点からは偏平率が低いことが好ましく、また、インホイールモーターなどの収容スペースを考慮すると、リム径RDは大きいことが好ましいため、偏平率及びリム径RDは、エアボリュームと、応答性及びインホイールモーターなどの収容スペースとにおいてトレードオフの関係となる。
【0033】
空気入りタイヤ10としての好適なサイズの一例としては、205/40R15が挙げられる。また適合リム幅は、7.5J程度である。なお、好適なサイズの他の例としては、215/45R12が挙げられる。この場合、適合リム幅は、7.0J程度である。
【0034】
さらに、特に限定されないが、空気入りタイヤ10の設定内圧(正規内圧)は、400~1,100kPa、現実的には、500~900kPaを想定する。なお、正規内圧とは、例えば、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYearBookにおける最大負荷能力に対応する空気圧であり、欧州ではETRTO、米国ではTRA、その他各国のタイヤ規格が対応する。
【0035】
また、空気入りタイヤ10が負担する荷重は、500~1,500kgf、現実的には、900kgf程度を想定する。
【0036】
図3は、空気入りタイヤ10の単体断面図である。具体的には、
図3は、空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
【0037】
図3に示すように、空気入りタイヤ10は、トレッド20、タイヤサイド部30、カーカス40、ベルト層50及びビード部60を備える。
【0038】
トレッド20は、路面と接する部分である。トレッド20には、空気入りタイヤ10の使用環境や装着される車両の種別に応じたパターン(
図4参照)が形成される。
【0039】
本実施形態では、トレッド20には、タイヤ周方向に延びる2本の周方向主溝が形成される。なお、トレッド20には、さらに多くの周方向溝が形成されてもよく、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝が形成されてもよい。また、当該周方向溝と、当該幅方向溝とによって、路面と接するブロックが形成されてもよい。トレッド面視における当該ブロックの形状も特に限定されない。
【0040】
具体的には、トレッド20には、周方向主溝21及び周方向主溝22が形成される。周方向主溝21及び周方向主溝22は、ベルト層50のタイヤ幅方向外側端50eよりもタイヤ赤道線CL寄りに形成される。
【0041】
また、周方向主溝21のタイヤ幅方向内側端と、周方向主溝22のタイヤ幅方向外側端との距離をWとし、タイヤ赤道線CLの位置におけるトレッド20の厚さ(ゴムゲージ)をHとした場合、1.5≦W/H≦6.0を満たすことが好ましく、2.0≦W/H≦4.0を満たすことがより好ましい。
【0042】
タイヤサイド部30は、トレッド20に連なり、トレッド20のタイヤ径方向内側に位置する。タイヤサイド部30は、トレッド20のタイヤ幅方向外側端からビード部60の上端までの領域である。タイヤサイド部30は、サイドウォールなどと呼ばれることもある。
【0043】
カーカス40は、空気入りタイヤ10の骨格を形成する。カーカス40は、タイヤ径方向に沿って放射状に配置されたカーカスコード(不図示)がゴム材料によって被覆されたラジアル構造である。但し、ラジアル構造に限定されず、カーカスコードがタイヤ径方向に交錯するように配置されたバイアス構造でも構わない。
【0044】
ベルト層50は、トレッド20のタイヤ径方向内側に設けられる。本実施形態では、ベルト層50は、3ベルト構成であるが、4ベルト構成でもよい。具体的には、ベルト層50は、コードが交錯する一対の交錯ベルト含む。このようなベルト層50の構成は、一般的なトラック・バス用タイヤのベルト層の構成と概ね同様である。
【0045】
ビード部60は、タイヤサイド部30に連なり、タイヤサイド部30のタイヤ径方向内側に位置する。ビード部60は、タイヤ周方向に延びる円環状であり、ビード部60を介してカーカス40がタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されている。
【0046】
なお、ビード部60には、ビードコアのタイヤ径方向外側にビードフィラーが設けられてもよいし、ビード部60で折り返されているカーカス40などがリムホイール100と擦れて摩耗することを防止するチェーファーが設けられてもよい。
【0047】
(3)周方向主溝の位置及び形状
図4は、トレッド20の一部展開平面図である。
図4に示すように、トレッド20には、周方向主溝21及び周方向主溝22によって、複数のブロックが形成される。
【0048】
具体的には、トレッド20には、中央ブロック23、ショルダーブロック24及びショルダーブロック25が形成される。
【0049】
中央ブロック23は、タイヤ赤道線CLを含む領域に形成される。中央ブロック23のタイヤ幅方向における端部には、周方向主溝21及び周方向主溝22が形成される。
【0050】
周方向主溝21のタイヤ幅方向外側には、ショルダーブロック24が形成される。周方向主溝22のタイヤ幅方向外側には、ショルダーブロック25が形成される。
【0051】
本実施形態では、周方向主溝21及び周方向主溝22は、タイヤ赤道線CLからベルト層50のタイヤ幅方向外側端50eまでの幅を100%とした場合、25%以上、95%以下の範囲に形成される。なお、周方向主溝21及び周方向主溝22は、35%以上、85%以下の範囲に形成されることが好ましく、40%以上、70%以下の範囲に形成されることがより好ましい。
【0052】
周方向主溝21及び周方向主溝22は、タイヤ周方向に延びていれば、ストレート溝、ジグザグ溝、或いはカーブしている溝など、具体的な形状は問われない。
【0053】
また、車両1の走行速度レンジが低いため、ハイドロプレーニング対策として溝面積を増やす必要はなく、一方で摩耗性能を向上する必要があるため、トレッド20のネガティブ率は、5%以上、25%以下であることが好ましい。なお、トレッド20のネガティブ率は、7%以上、20%以下であることがより好ましく、9%以上、15%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
また、ウェット路面での制動性能と摩耗性能とを両立させるため、周方向主溝21及び周方向主溝22によって区画される中央ブロック23には、サイプを形成することが好ましい。
タイヤ周方向におけるサイプの間隔は、サイプ深さの1.5倍以上、5.0倍以下であることが好ましく、2.0倍以上、4.0倍以下であることがより好ましい。
【0055】
さらに、ウェット路面での制動性能と摩耗性能を両立させるため、周方向主溝は、2本以上、4本以下であることが好ましい。また、周方向主溝の溝幅は、2mm以上、20mm以下であることが好ましく、3mm以上、15mm以下であることが好ましい。
【0056】
(4)作用・効果
次に、上述した空気入りタイヤ10の作用・効果について説明する。
図5は、タイヤ形状(タイヤ外径OD及びタイヤ幅SW)と、リムホイール形状(リム径RD及びリム幅RW)との組合せに基づく典型的なタイヤサイズのポジショニングを示す図である。
【0057】
具体的には、
図5に示すグラフの横軸は、リム幅RWとタイヤ幅SWとの比率(RW/SW)を示し、縦軸は、リム径RDとタイヤ外径ODとの比率(RD/OD)を示す。
図5では、RW/SW及びRD/ODの値に従って、典型的なタイヤサイズのポジションがプロットされている。
【0058】
図5に示すように、トラック・バス用タイヤの領域は、RW/SW及びRD/OD共に低い。乗用車または小型トラック用タイヤの領域は、RW/SW及びRD/OD共に、トラック・バス用タイヤよりも高い。
【0059】
上述した空気入りタイヤ10としての好適なサイズの一例である215/45R12は、領域A1に含まれる。領域A1は、上述したように、0.78≦RW/SW≦0.99であり、0.56≦RD/OD≦0.75の範囲である。このような領域A1は、上述した車両1のように、都市内での人や物などの輸送に主眼を置いた新小型シャトルバス用タイヤの領域と位置付けられる。
【0060】
新小型シャトルバス用タイヤの領域のRD/ODは、乗用車または小型トラック用タイヤの領域のRD/ODと大きく変わらず、一部は重複している。一方、新小型シャトルバス用タイヤの領域のRW/SWは、乗用車または小型トラック用タイヤの領域のRW/SWよりも高い。
【0061】
上述したように、空気入りタイヤ10のタイヤ外径ODは、350mm以上、600mm以下である。このため、車両1のサイズと比較して十分に小径であり、車両1の省スペース化に貢献し得る。
【0062】
また、領域A1に含まれるサイズの空気入りタイヤ10によれば、0.78≦RW/SW≦0.99の関係を満たすため、タイヤ幅SWに対するリム幅RWが広く、つまり、幅広のタイヤを構成でき、高い耐荷重能力を発揮するために必要なエアボリュームを確保し易い。なお、リム幅RWが広くなり過ぎると、タイヤ幅SWも広がりスペース効率が低下するとともに、ビード部60がリムホイール100から外れやすくなる。
【0063】
さらに、領域A1に含まれるサイズの空気入りタイヤ10によれば、0.56≦RD/OD≦0.75の関係を満たすため、タイヤ外径ODに対するリム径RDが大きく、インホイールモーターなどの収容スペースを確保し易い。なお、リム径RDが小さくなり過ぎると、ディスクブレーキまたはドラムブレーキの径サイズが小さくなる。このため、有効なブレーキの接触面積が小さくなり、必要な制動性能の確保が難しくなる。
【0064】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、新たな小型シャトルバスなどに装着される場合において、さらに高い耐荷重能力を有しつつ、高いスペース効率を達成し得る。
【0065】
空気入りタイヤ10のリム径RDは、12インチ以上、17.5インチ以下であることが好ましい。これにより、小径を維持しつつ、必要十分なエアボリューム及びインホイールモーターなどの収容スペースを確保し得る。また、制動性能及び駆動性能も確保できる。
【0066】
また、空気入りタイヤ10のタイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下であることが好ましい。さらに、空気入りタイヤ10の偏平率は、35%以上、75%以下であることが好ましい。これにより、必要十分なエアボリューム及びインホイールモーターなどの収容スペースを確保し得る。
【0067】
さらに、本実施形態では、上述したように、タイヤ周方向に延びる周方向主溝21及び周方向主溝22が形成され、周方向主溝21及び周方向主溝22は、ベルト層50のタイヤ幅方向外側端50eよりもタイヤ赤道線CL寄りに形成される。
【0068】
つまり、周方向主溝21及び周方向主溝22は、小径かつ幅広の空気入りタイヤ10において、特に接地圧が高くなる領域に形成される。このため、接地圧が高くなる領域において、トレッド20を形成するゴムの「逃げ場」を確保できる。これにより、当該領域での偏摩耗を効果的に抑制し得る。
【0069】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、高い耐荷重能力と省スペース化とを達成しつつ、偏摩耗を効果的に抑制し得る。
【0070】
本実施形態では、周方向主溝21及び周方向主溝22は、タイヤ赤道線CLからベルト層50のタイヤ幅方向外側端50eまでの幅を100%とした場合、25%以上、95%以下の範囲に形成される。このため、特に接地圧が高くなる領域に周方向主溝21及び周方向主溝22がされる。これにより、当該領域での偏摩耗をさらに効果的に抑制し得る。
【0071】
(5)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0072】
例えば、空気入りタイヤ10の構成は、次のように変更してもよい。
図6は、変更例に係る空気入りタイヤ10Aの断面図である。
【0073】
図6に示すように、空気入りタイヤ10Aは、ベルト層50Aを備える。ベルト層50Aは、コアベルト51及びシースベスト52によって構成される。
【0074】
コアベルト51は、タイヤ幅方向に対して低角度で傾斜したコード(不図示)をゴム被覆したベルトである。シースベスト52は、コードを含むテープ状のベルトであり、コアベルト51の全周に亘って巻き付けられる。ベルト層50Aは、交錯ベルト層と同様の機能を提供する。
【0075】
なお、シースベスト52の具体的な構成は、例えば、特開2016-215943号公報に記載されている。
【0076】
また、空気入りタイヤ10Aは、ビード部60において折り返されたカーカス40の折り返し端部41は、ビードコア61に沿って巻き付けられるように設けられている。折り返し端部41は、ビードコア61のタイヤ径方向外側端に接している。なお、
図6では図示されていないが、ビード部60には、ビードフィラーが設けられてもよい。
【0077】
図7は、他の変更例に係る空気入りタイヤ10Bの断面図である。
図7に示すように、空気入りタイヤ10Bは、ベルト層50Bを備える。ベルト層50Bは、樹脂材料によって被覆された樹脂被覆コードをタイヤ周方向に沿って巻き回すことによって形成されたスパイラルベルトである。
【0078】
空気入りタイヤ10A及び空気入りタイヤ10Bにも、空気入りタイヤ10と同様な周方向主溝21及び周方向主溝22が形成される。
【0079】
空気入りタイヤ10A及び空気入りタイヤ10Bのように、ベルト層の構成及びカーカス40の折り返し端部41の形状は、車両1の特性などに応じて適宜変更されても構わない。
【0080】
また、上述した実施形態では、空気入りタイヤ10が、0.56≦RD/OD≦0.75の関係を満たすとしたが、当該関係は、必ずしも満たしていなくても構わない。
【0081】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0082】
1 車両
10, 10A, 10B 空気入りタイヤ
20 トレッド
21, 22 周方向主溝
23 中央ブロック
24, 25 ショルダーブロック
30 タイヤサイド部
40 カーカス
41 折り返し端部
50, 50A, 50B ベルト層
50e タイヤ幅方向外側端
51 コアベルト
52 シースベスト
60 ビード部
61 ビードコア
100 リムホイール
110 リムフランジ