(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】オレフィン系重合体組成物およびフィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20241217BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20241217BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20241217BHJP
C08L 23/18 20060101ALI20241217BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L23/04
C08L23/10
C08L23/18
C08F10/00
(21)【出願番号】P 2021009868
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三川 展久
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝太郎
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-206616(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097791(WO,A1)
【文献】特開平08-012771(JP,A)
【文献】国際公開第01/045595(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00
C08L 23/04
C08L 23/10
C08L 23/18
C08F 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系重合体(A)と、下記要件(I)~(III)を満たす樹脂微粒子(B)とを含有する、オレフィン系重合体組成物
であり、
前記樹脂微粒子(B)の含有量が、前記オレフィン系重合体(A)と前記樹脂微粒子(B)との合計100質量部に対して、0.1~20質量部の範囲にあり、
前記樹脂微粒子(B)がポリエチレンである、オレフィン系重合体組成物。
(I)平均粒子径d50が、1.0~35.0μmの範囲にある。
(II)累積重量分率が90%となる粒子径d90が、5.0~40.0μmの範囲にある。
(III)ゲル分率が60~90%の範囲にある。
【請求項2】
前記要件(I)において、d50が3.0~15.0μmの範囲にあり、かつ、前記要件(II)において、d90が6.0~20.0μmの範囲にある、請求項1に記載のオレフィン系重合体組成物。
【請求項3】
前記オレフィン系重合体(A)が、エチレン系重合体、プロピレン系重合体および4-メチル-1-ペンテン系重合体から選ばれる少なくとも1種である、請求項1
または2に記載のオレフィン系重合体組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体組成物から形成されるフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体組成物およびフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系重合体からなるフィルムは透明性、機械的特性に優れるので、各種包装材料として広く用いられている。しかし、オレフィン系重合体からなるフィルムはそれ同士を重ねると(例えば積層状、ロール状等)、フィルム相互が密着する、いわゆるブロッキング現象が生じる。そこで従来、オレフィン系重合体フィルムの耐ブロッキング性を、アンチブロッキング剤を配合して向上させることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
オレフィン系重合体フィルムのアンチブロッキング剤としては、微粉状のシリカ、ゼオライト、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土類といった無機物質が使用されることが知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらの無機物質は硬度が高く、不定形のため、無機物質を表面に配したフィルム同士が擦れ合った際に、フィルム表面が傷つきやすくなるという問題がある。
【0004】
また、アクリル系樹脂粒子をアンチブロッキング剤に使用する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、アクリル系樹脂粒子は、オレフィン系重合体との親和性が不十分であることから、成膜時または二次加工時にアクリル系樹脂粒子からなるアンチブロッキング剤が脱落してしまう問題がある。
【0005】
上記問題を解決するために、オレフィン系重合体と親和性の良いオレフィン系重合体粒子をアンチブロッキング剤に用いる方法も提案されている。オレフィン系重合体粒子は上記の無機物質より柔軟性があり、また他の重合体粒子と比べてベースとなるオレフィン系重合体との親和性が高いため、フィルムの耐傷付き性を改良すると共に耐ブロッキング性を向上させることができる。このような重合体粒子として、超高分子量オレフィン重合体粒子が知られており、超高分子量オレフィン重合体の放射線架橋物である樹脂微粒子を用いることで耐ブロッキング性とアンチブロッキング剤の耐脱落性とを改善させることができる(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-073202号公報
【文献】特開昭49-023245号公報
【文献】国際公開2009/044925号
【文献】特開2019-206616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に開示されたオレフィン系重合体組成物では、フィルムとしたときに、フィルムと接触した物体表面の傷付き、あるいはフィルム同士が擦れ合った際のフィルム表面の傷付きを抑制すること(耐傷付き性)について改善の余地があった。
本発明者らは、オレフィン系重合体フィルムにおいて、さらに優れた耐ブロッキング性を有し、フィルムと接触する物体表面の傷付き、あるいはフィルム同士が擦れ合った際のフィルム表面の傷付きを抑制できるフィルムの提供を目指した。すなわち本発明の課題は、フィルムとしたときの耐ブロッキング性に優れ、かつ、滑り性がよく、接触する物体表面の傷付き、あるいはフィルム同士が擦れ合った際のフィルム表面の傷付きを抑制することができるオレフィン系重合体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、下記構成を有するオレフィン系重合体組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を解決するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の[1]~[5]に関する。
[1]オレフィン系重合体(A)と、下記要件(I)~(III)を満たす樹脂微粒子(B)とを含有する、オレフィン系重合体組成物。
(I)平均粒子径d50が、1.0~35.0μmの範囲にある。
(II)累積重量分率が90%となる粒子径d90が、5.0~40.0μmの範囲にある。
(III)ゲル分率が60~90%の範囲にある。
【0010】
[2]前記要件(I)において、d50が3.0~15.0μmの範囲にあり、かつ、前記要件(II)において、d90が6.0~20.0μmの範囲にある、前記[1]に記載のオレフィン系重合体組成物。
【0011】
[3]前記樹脂微粒子(B)の含有量が、前記オレフィン系重合体(A)と前記樹脂微粒子(B)との合計100質量部に対して、0.1~20質量部の範囲にある、前記[1]または[2]に記載のオレフィン系重合体組成物。
【0012】
[4]前記オレフィン系重合体(A)が、エチレン系重合体、プロピレン系重合体および4-メチル-1-ペンテン系重合体から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のオレフィン系重合体組成物。
【0013】
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載のオレフィン系重合体組成物から形成されるフィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐ブロッキング性に優れ、かつ、滑り性がよく、フィルムと接触する物体表面の傷付き、あるいはフィルム同士が擦れ合った際のフィルム表面の傷付きを抑制することができるフィルム、およびそれを提供し得るオレフィン系重合体組成物を提供できる。特にフィルム表面の傷付きが抑制されることで、フィルム表面に印刷を施した場合にインクの剥がれが生じにくく、また、運搬等で生じる傷によるフィルム自体の不良を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例の耐ブロッキング性評価試験においてフィルムを重ね合わせる様子の概略図である((a)重ね合わせ前、(b)重ね合わせ後、(c)金属板で挟んだ後)。
【
図2】実施例の耐ブロッキング性評価試験においてアルミ棒を重ね合わせたフィルムで挟む様子の概略図である((a)挟む前、(b)挟み込む時、(c)試験機の端部で2枚のフィルムを綴じた後)。
【
図3】実施例の耐ブロッキング性評価試験において試験機にフィルムを固定させた様子の概略図である。
【
図4】実施例の耐ブロッキング性評価試験においてアルミ棒により重ね合わせたフィルムを引き剥がす様子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るオレフィン系重合体組成物およびそれから形成されるフィルムについて具体的に説明する。
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1.0~35.0μm」とは「1.0μm以上35.0μm以下」を意味する。
【0017】
[オレフィン系重合体組成物]
本発明のオレフィン系重合体組成物は、オレフィン系重合体(A)と、樹脂微粒子(B)とを含有する。前記樹脂微粒子(B)の含有量は、オレフィン系重合体(A)と樹脂微粒子(B)との合計100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.3~5.0質量部、特に好ましくは0.3~1.5質量部の範囲にある。上記下限値以上にあることは、得られるフィルムの耐ブロッキング性において好ましく、上記上限値以下にあることは、得られるフィルムの機械物性と、アンチブロッキング剤として含まれる樹脂微粒子(B)の滑り性および耐傷付き性において好ましい。
【0018】
<樹脂微粒子(B)>
樹脂微粒子(B)は、下記要件(I)~(III)を満たす。
要件(I):平均粒子径d50が、1.0~35.0μmの範囲にある。
本発明において平均粒子径d50とは、コールターカウンター法による重量基準粒度分布の測定によって、粒形分布の積算値が50重量%となる値である。好ましくはd50が3.0~15.0μmの範囲にある。上記範囲にあることで耐ブロッキング性において好ましい。また、後述する製造方法において触媒種を調節することにより上記範囲に調節可能である。
【0019】
要件(II):累積重量分率が90%となる粒子径d90が、5.0~40.0μmの範囲にある。
好ましくはd90が6.0~20.0μmの範囲にある。d90が上記範囲にあることは、すなわち粒径分布が比較的狭いことを示し、耐ブロッキング性、滑り性において好ましい。d90は、後述する製造方法において触媒種を調節することにより上記範囲に調節可能である。
【0020】
要件(III):ゲル分率が60~90%の範囲にある。
好ましくはゲル分率が65~85質量%の範囲にある。ゲル分率が上記範囲にあることで樹脂微粒子(B)が適度な硬度とクッション性を有するため、重合体組成物の滑り性がよく、かつ重合体組成物から得られるフィルムと接触する物体表面の傷付き、あるいはフィルム同士が擦れ合った際のフィルム表面の傷付きを抑制することができる。また、ゲル分率は、後述する製造方法において放射線の照射線量によって適宜調整することが可能である。
【0021】
なお、前記ゲル分率は、樹脂微粒子(B)100mgを温度145℃の40mLのn-デカン中に40分静置し、次に、恒温振盪器を用いて、温度:145℃、振盪方式:振動法の条件下で、1.5時間振盪しながら樹脂微粒子(B)を溶解させた後、孔径3μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルターで熱時濾過した濾液をエバポレーターで乾固させ、100℃で8時間真空乾燥後の質量(以下「不溶分質量」という。)を測定し、下記式[1]より求められる。
ゲル分率(%)=(不溶分質量(mg)/100(mg))×100 ・・・[1]
また、樹脂微粒子(B)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1.0g/10分未満であり、より好ましくは0.01g/10分以上1.0g/10分未満であり、さらに好ましくは0.01~0.5g/10分である。MFRは、JIS K7210に従って、190℃、試験荷重21.6kgの条件で測定される。
【0022】
<樹脂微粒子(B)の製造方法>
樹脂微粒子(B)は、超高分子量オレフィン系重合体の放射線架橋物であることが好ましい。以下、超高分子量オレフィン系重合体の放射線架橋物を、架橋超高分子量オレフィン系重合体ともいう。
樹脂微粒子(B)が、架橋超高分子量オレフィン系重合体である場合について、その製造方法を次に説明する。
架橋超高分子量オレフィン系重合体の原料として用いられる超高分子量オレフィン系重合体は樹脂微粒子(B)と同様に要件(I)および要件(II)を満たすことが好ましく、さらに、下記要件(i)を満たすことが好ましい。
【0023】
要件(i):135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が5~50dl/g、好ましくは5~40dl/g、より好ましくは5~30dl/gの範囲にある。極限粘度が上記範囲内にあると、得られる樹脂微粒子(B)を含むオレフィン系重合体組成物の耐摩耗性において好ましい。
【0024】
本発明において超高分子量オレフィン系重合体とは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテンなどの単独重合体や、エチレンと少量の他のα-オレフィン、たとえば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび4-メチル-1-ペンテンなどとの共重合体であるが、好ましくはエチレン系のポリマーであり、特に好ましくはエチレンの単独重合体である。
【0025】
本発明において超高分子量オレフィン系重合体は、例えば、以下の文献に開示された方法により製造することができる。
(1)国際公開2006/054696号
(2)国際公開2008/013144号
(3)国際公開2009/011231号
(4)国際公開2010/074073号
【0026】
架橋超高分子量オレフィン系重合体からなる樹脂微粒子(B)は、上述した超高分子量オレフィン系重合体に放射線を照射することにより得られる。
超高分子量オレフィン系重合体に放射線を照射することによって、分子鎖の切断と架橋が生じ、その結果、分子鎖が架橋点で結び合わされる。これより、ガラス転移温度あるいは融点以上でも分子鎖が勝手に流動することができなくなり、高温特性が改善される。さらに応力を受けても形態を保つことができ、機械的特性を保持できるようになる。
【0027】
放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、重イオン線などがあり、いずれも使用可能であるが、電子線あるいはγ線が適している。
放射線の照射線量は、使用する超高分子量オレフィン系重合体を構成するモノマー種によっても異なるが、通常20~700kGy、好ましくは100~500kGy、より好ましくは200~500kGy、さらに好ましくは250~500kGyであることが望まれる。
【0028】
照射線量が上記範囲内にある場合、超高分子量オレフィン系重合体の架橋反応が効率よく進行し、このようにして得られた架橋超高分子量オレフィン系重合体からなる樹脂微粒子(B)をオレフィン系重合体組成物に使用すると、粒子同士の再凝集を抑制することができる。
【0029】
一方、照射線量が700kGyを超えると、ポリマーの劣化が激しくなることがあり、また、照射線量が20kGy未満であると、ポリマー鎖の架橋が進まない若しくは遅くなってしまうことがある。
【0030】
<オレフィン系重合体(A)>
本発明においてオレフィン系重合体(A)として用いることのできるオレフィン系重合体としては、エチレンおよび炭素原子数3~20の直鎖状または分岐状のα-オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合して得られるものが挙げられる。
【0031】
炭素原子数3~20の直鎖状または分岐状のα-オレフィンとして具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンが好ましい。
【0032】
なお、本発明においてオレフィン系重合体を構成するモノマー成分としては、上述したα-オレフィンの他、本発明の目的を損なわない範囲で環状オレフィン、官能化ビニル化合物、極性基(例えばカルボニル基、水酸基、エーテル結合基など)および重合性の炭素-炭素二重結合を分子中に有するモノマー(以下、極性基含有モノマーとも記す。)、共役ジエン、非共役ポリエンなどを含んでもよい。
【0033】
環状オレフィンとしては、炭素原子数が3~30、好ましくは3~20の環状オレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0034】
官能化ビニル化合物としては、芳香族ビニル化合物や脂環族ビニル化合物が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン;メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレンなどの官能基含有スチレン誘導体;および3-フェニルプロピレン、4-フェニルプロピレン、α-メチルスチレンなどが挙げられ、脂環族ビニル化合物としては、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタンなどが挙げられる。
【0035】
上述したオレフィン系重合体のうち、好ましくは、エチレン系重合体、プロピレン系重合体または4-メチル-1-ペンテン系重合体が用いられる。
エチレン系重合体としては、エチレンを主たる構成モノマー成分として含み、通常はエチレンを50モル%以上、好ましくは80モル%以上含む。エチレン系重合体として具体的には、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)などが挙げられる。
【0036】
より具体的にエチレン系重合体としては、密度940kg/m3以上980kg/m3未満の範囲である高密度ポリエチレン、密度900kg/m3以上940kg/m3未満の範囲である低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、あるいはこれらのブレンドなどが挙げられる。これらのうちいずれを採用するかについては、特に限定されないが、透明性、加工性のバランスに優れるという観点から、低密度ポリエチレンや、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。なお、エチレン系重合体の密度は、JIS K7112の密度勾配管法に従って測定される。
【0037】
エチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、通常0.01~100g/10分、好ましくは0.02~50g/10分、より好ましくは0.02~30g/10分の範囲にある。MFRは、JIS K7210に従って、190℃、試験荷重2.16kgの条件で測定される。
【0038】
上記エチレン系重合体は、エチレン単独重合体、またはエチレンと少量のα-オレフィンとの共重合体、またはそれらのブレンドをいう。共重合体の共重合成分は、全モノマー単位の50モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。共重合体の共重合成分の例として、好ましくは炭素原子数3~20のオレフィンであり、炭素原子数3~20のオレフィンには、直鎖状または分岐状のα-オレフィン、環状オレフィン、官能化ビニル化合物、極性基含有モノマー、共役ジエン、非共役ポリエンなどが含まれる。
【0039】
プロピレン系重合体としては、プロピレンを主たる構成モノマーとして含み、通常はプロピレンを50モル%以上含み、好ましくは80モル%以上含む。プロピレン系重合体として具体的には、プロピレンホモポリマー、プロピレンとプロピレン以外の上述したα-オレフィンとのブロックコポリマーもしくはランダムコポリマー、あるいはそれらのブレンド物をいう。これらのうちいずれを採用するかについては、特に限定されないが、オレフィン系重合体組成物のベタツキ感の抑制の観点から、融点と剛性が高いホモポリマーが好ましい。
【0040】
プロピレン系重合体の密度は、通常895~930kg/m3の範囲にある。ポリプロピレン系重合体の密度は、JIS K7112の密度勾配管法に従って測定される。
プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、通常0.01~200g/10分、好ましくは1~100g/10分、より好ましくは1~50g/10分の範囲にある。MFRは、JIS K7210に従って、230℃、試験荷重2.16kgの条件で測定される。
【0041】
4-メチル-1-ペンテン系重合体としては、4-メチル-1-ペンテンを主たる構成モノマーとして含み、通常は4-メチル-1-ペンテンを50モル%以上含み、好ましくは80モル%以上含む。4-メチル-1-ペンテン系重合体として具体的には、4-メチル-1-ペンテンホモポリマー、4-メチル-1-ペンテンとエチレンおよび炭素原子数3~20の直鎖状または分岐状のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種とのブロックコポリマーもしくはランダムコポリマー、あるいはそれらのブレンド物をいう。
【0042】
4-メチル-1-ペンテン系重合体の密度は、通常820~850kg/m3の範囲にある。4-メチル-1-ペンテン系重合体の密度は、JIS K7112の密度勾配管法に従って測定される。
【0043】
4-メチル-1-ペンテン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、通常0.01~200g/10分、好ましくは1~100g/10分、より好ましくは1~50g/10分の範囲にある。MFRは、JIS K7210に従って、260℃、試験荷重5.0kgの条件で測定される。MFRが上記範囲内にあると、4-メチル-1-ペンテン系重合体は成形性に優れ、機械的強度特性に優れる。
【0044】
オレフィン系重合体(A)のゲル分率は、好ましくは0~5%であり、より好ましくは0~1%である。ゲル分率が上記範囲にあることで、フィッシュアイが少なくなるためオレフィン系重合体組成物をフィルム等の形状に成形しやすい。オレフィン系重合体(A)のゲル分率は、上記樹脂微粒子(B)のゲル分率の算出方法と同様の方法で求めることができる。
【0045】
<オレフィン系重合体組成物の製造方法>
本発明のオレフィン系重合体組成物は、上述の樹脂微粒子(B)およびオレフィン系重合体(A)の各成分、さらに必要に応じて、後述する添加剤を混合することにより得ることができる。
【0046】
各成分の混合方法については、種々公知の方法、例えば、多段重合法、プラストミル、ヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラー、ブレンダー、ニーダールーダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用することができる。当該方法により、各成分および添加剤が均一に分散混合された高品質のオレフィン系重合体組成物を得ることができる。
【0047】
<添加剤>
本発明のオレフィン系重合体組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じて、核剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤、架橋超高分子量オレフィン系重合体以外のアンチブロッキング剤などを配合することができる。
【0048】
核剤としては、ジベンジリデンソルビトール系核剤、リン酸エステル塩系核剤、ロジン系核剤、安息香酸金属塩系核剤、フッ素化ポリエチレン、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ピメリン酸やその塩、2,6-ナフタレン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド等が使用できる。核剤の配合量は特に制限はないが、オレフィン系重合体組成物100質量部に対して0.1~1質量部程度があることが好ましい。配合タイミングに特に制限は無く、重合中、重合後、あるいは成形加工時での添加が可能である。
【0049】
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、イオウ系酸化防止剤、ラクトーン系酸化防止剤、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物、あるいはこれらを数種類組み合わせたものが使用できる。
【0050】
滑剤としては、例えばラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。またかかる滑剤の配合量は、オレフィン系重合体組成物100質量部に対して通常0.1~3質量部、好ましくは0.1~2質量部程度であることが望ましい。
【0051】
スリップ剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のアミド、あるいはこれらの飽和または不飽和脂肪酸のビスアマイドを用いることが好ましい。これらのうちでは、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアロアマイドが特に好ましい。これらの脂肪酸アミドは、オレフィン系重合体組成物100質量部に対して0.01~5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0052】
[オレフィン系重合体組成物から形成されるフィルム]
本発明のフィルムは、例えば、上述したオレフィン系重合体組成物を通常は160~320℃の範囲で溶融押出して得ることができる。本発明のフィルムは、Tダイ押出成形法などによりフィルム、シート状に成形して得た成形品を、さらに一軸延伸あるいは二軸延伸して得たものであってもよい。本発明のフィルムの成形方法については、従来用いられている方法が使用でき、特に限定されないが、得られるフィルムの動摩擦係数を小さくする観点からは、キャスト成形法が好ましい。
【0053】
なお、本発明において「フィルム」とは、オレフィン系重合体の外観構造を示すための便宜上の名称であって、「フィルム」とは平面上の成形物の総称であり、これにはフィルムの他、シート、膜(メンブレン)、テープなども含む概念である。
【0054】
本発明のフィルムは、その材料として上述した架橋超高分子量オレフィン系重合体である樹脂微粒子(B)をアンチブロッキング剤成分として含有していることから、耐ブロッキング性の向上およびフィルムと接触する物体表面の傷付き、あるいはフィルム同士が擦れ合った際のフィルム表面の傷付きを抑制することができる。この理由としては、樹脂微粒子(B)が、要件(III)のゲル分率が60~90%の範囲にあることで、樹脂微粒子が適度な硬度とクッション性を有するため、重合体組成物からなるフィルムの滑り性が良くなることが考えられる。その結果、フィルムの表面の樹脂微粒子(B)由来の突起が変形し難くなり、フィルムの耐ブロッキング性と耐傷つき性を改善することができると考えられる。
【0055】
このようなフィルムの具体的な用途の例としては、食品包装用フィルム(外層、内層、シーラント、単層)、医療包装フィルム、医薬包装フィルム、工業包装フィルム、ストレッチフィルム、ラップフィルム、延伸フィルム、通気性フィルム、防湿シート、滑り止めシート、遮光フィルム、ラミネート基材用フィルム、発泡フィルム、建材表皮材、離形フィルム、例えばフレキシブルプリント基板用離型フィルム、リジット基板用離型フィルム、リジットフレキシブル基板用離型フィルム、先端複合材料用離型フィルム、炭素繊維複合材硬化用離型フィルム、ガラス繊維複合材硬化用離型フィルム、アラミド繊維複合材硬化用離型フィルム、ナノ複合材硬化用離型フィルム、フィラー充填材硬化用離型フィルム、半導体封止用離型フィルム、離型フィルム用クッションフィルム、燃料電池用離型フィルム、各種ゴムシート用離型フィルム、ウレタン硬化用離型フィルム、エポキシ硬化用離型フィルム、表面保護フィルム、例えば樹脂板用保護フィルム、偏光板用保護フィルム、液晶パネル用保護フィルム、光学部品用保護フィルム、レンズ用保護フィルム、電気部品・電化製品用保護フィルム、携帯電話用保護フィルム、パソコン用保護フィルム、鏡面板用保護フィルム、シート用保護フィルム、オフィス用品、サニタリー用品、ゴミ袋を挙げることができる。
上述した、フィルムと接触する物体の例としては、フィルムの具体的な用途にもよるが、段ボール、紙製の容器、プラスチック製のフィルムや容器、木製の容器、金属製の容器が挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により説明するが、以下に示す実施例は本発明をこれに限定することを意図するものではない。
[オレフィン系重合体(A)]
実施例および比較例において、オレフィン系重合体(A)として、以下のものを使用した。
・LLDPE・・・プライムポリマー株式会社製 エボリュー(商標)SP2040(密度918kg/m3、MFR(190℃、2.16kg荷重)3.8g/10分)
・LDPE・・・三井・ダウポリケミカル株式会社製 ミラソン(商標)12(密度927kg/m3、MFR(190℃、2.16kg荷重)3.0g/10分)
オレフィン系重合体(A)のゲル分率を、後述する樹脂微粒子のゲル分率と同じ方法で求めたところ、LLDPE、LDPE共に0%であった。
【0057】
[樹脂微粒子(B)]
[製造例1]粒子(X)の製造
[固体成分(S-1)の調製]
充分に窒素置換した撹拌機付き2Lガラス容器に、無水塩化マグネシウム95.2g(1.0mol)、脱水デカン442mL、2-エチルヘキシルアルコール260.4g(2.0mol)、および2-オクチルドデシルアルコール298.5g(1.0mol)を装入し、155℃で4時間反応を行い、均一透明溶液とした。次いで、別の充分に窒素置換した撹拌機付き1Lガラス容器に、前記均一透明溶液をMg原子換算で100mmol相当、脱水デカン610mLを装入し、ホモジナイザー(エムテクニック社製クレアミックスCLM-1.5S、回転数15000rpm)による強撹拌下、液温を0℃に維持しながら、トリエチルアルミニウム109mmolをゆっくりと滴下装入した。その後、液温を4時間かけて80℃に昇温し、80℃を維持しながら、再びトリエチルアルミニウム188mmolをゆっくりと滴下装入し、さらに1時間反応した。反応終了後、濾過にて固体部を採取し、脱水トルエンにて充分洗浄し、200mLの脱水トルエンを加えて固体成分(S-1)のトルエンスラリーとした。このトルエンスラリーの一部を採取し、動的光散乱法により固体成分(S-1)の粒径を測定したところ、750nmであった。
【0058】
[固体触媒成分(S’-1)の調製]
充分に窒素置換した撹拌機付き300mLガラス容器に脱水トルエン100mLを装入し、上記で調製した固体成分(S-1)のトルエンスラリーをMg原子換算で5.0mmol装入した。次いで、下記式[1]で表される遷移金属化合物のトルエン溶液(Zr原子換算で0.001mmol/mL)16.7mLを滴下装入し、室温で1時間反応させた。その後、デカンテーションにより上澄み液を除去し、脱水トルエンで3回、脱水デカンで2回洗浄し、固体触媒成分(S’-1)のデカンスラリーを調製した。得られた固体触媒成分(S’-1)のデカンスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.000578mmol/mLであった。
【0059】
【0060】
[エチレン重合]
充分に窒素置換した撹拌機付き1Lオートクレーブに、脱水ヘプタン500mLを装入し、室温でエチレン100L/hrを15分間流通させ、液相および気相をエチレンで飽和させた。続いて70℃に昇温した後、エチレンを12L/hrで流通させたまま、トリイソブチルアルミニウムをAl原子換算で1.00mmol、固体触媒成分(S’-1)をZr原子換算で0.0037mmol装入し、温度を維持したまま3分間撹拌し、エマルゲンE-108(花王株式会社製)60mgを加えてすぐ、エチレン圧の昇圧を開始した。全圧が0.3MPa・Gになったあと、水素3.5mLを挿入し、圧を維持するようにエチレンを供給しながら、70℃で2時間重合を行った。重合終了後、得られたポリマーをヘキサンで洗浄した後、80℃で1時間減圧予備乾燥を行い、更に110℃にて10時間減圧乾燥した。得られたポリエチレンは37.0gであり、触媒活性は50.0kg/mmol-Zr・h、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は13.0dl/g(超高分子量エチレン重合体)であった。
上記で得られた超高分子量エチレン重合体に対して、照射線量300kGyの電子線を照射することによって、架橋超高分子量エチレン重合体からなる粒子(X)を得た。
【0061】
[その他の微粒子]
樹脂微粒子(B)に該当しない微粒子として、以下の条件で製造した微粒子を使用した。
[製造例2]粒子(Y)の製造
電子線の照射線量を200kGyに変更したこと以外は製造例1と同様にして、粒子(Y)を得た。
[製造例3]粒子(Z)の製造
電子線の照射線量を100kGyに変更したこと以外は製造例1と同様にして、粒子(Z)を得た。
[ゼオライト]
プライムポリマー株式会社製、EAZ-10(アンチブロッキング剤として合成ゼオライトを10質量%、低密度ポリエチレンを90質量%配合した組成物)を用いた。
[シリカ]
東邦株式会社製、TME172AB(アンチブロッキング剤として球状シリカを20質量%、低密度ポリエチレンを80質量%配合した組成物)を用いた。
【0062】
[樹脂微粒子の評価]
樹脂微粒子は、次の方法で評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0063】
<平均粒子径d50、累積重量分率が90%となる粒子径d90>
粒子(X)、(Y)、(Z)の平均粒子径d50、および累積重量分率が90%となる粒子径d90は、ベックマン社製マルチサイザー・スリーを用いて、コールターカウンター法による重量基準粒度分布から算出した。
【0064】
<ゲル分率>
粒子(X)、(Y)、(Z)それぞれ100mgを温度145℃の40mLのn-デカン中に、40分静置した後、恒温振盪器(センシュー科学社製SSC-9300)を用いて、145℃、振盪方式:振動法の条件下で1.5時間振盪しながら粒子を溶解させた。得られた溶液を孔径3μmのPTFEフィルターで熱時濾過し、次いで濾液をエバポレーターで乾固させ100℃、8時間真空乾燥後の質量(不溶分質量)を測定し、下記式[1]で定義されたゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(不溶分質量(mg)/100(mg))×100 ・・・[1]
【0065】
【0066】
[実施例1-1]
LDPEを90質量部、製造例1で得た樹脂微粒子(X)を10質量部添加し、二軸押出機(テクノベル社製、KZW15-30MG)を用いて、190℃で溶融混練し重合体混合物を得た。
【0067】
得られた重合体混合物と、LLDPEとを質量比2.5:97.5の割合で、キャストフィルム成形機(東洋精機株式会社製、D2028)に投入して、シリンダ、ダイス温度ともに190℃とし、引取速度2.0m/分で押出成形し、オレフィン系重合体組成物からなる厚さ40μmのキャストフィルムを得た。得られたフィルムは、後述する方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0068】
[実施例1-2、1-3]
重合体混合物の各成分の配合量およびLLDPEの配合量を表2に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1-1と同様にして、キャストフィルムを得た。
【0069】
[比較例1および2]
樹脂微粒子(X)を樹脂微粒子(Y)または樹脂微粒子(Z)に変更したこと以外は実施例1-3と同様にしてキャストフィルムを得た。
【0070】
[比較例3-1~3-3]
各成分の配合量が表2に記載の割合となるようにLDPEおよび粒子(X)をEAZ-10に変更したこと以外は実施例1-1と同様にしてキャストフィルムを得た。
【0071】
[比較例4-1~4-3]
各成分の配合量が表2に記載の割合となるようにLDPEおよび粒子(X)をTME172ABに変更したこと以外は実施例1-1と同様にしてキャストフィルムを得た。
【0072】
[比較例5]
LLDPEをキャストフィルム成形機(D2028)に投入して、シリンダ、ダイス温度190℃として、引取速度2.0m/分で押出成形し、厚さ40μmのキャストフィルムを得た。
【0073】
[フィルムの評価]
得られたフィルムは、次の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0074】
<動摩擦係数>
JIS K7125「プラスチック-フィルムおよびシート摩擦係数試験方法」にてフィルム同士の動摩擦係数を測定した。試験条件は、試験速度:100mm/分、試験片幅:63.5mm、荷重:200g、測定環境温度:23℃とした。
【0075】
<耐ブロッキング性の評価>
得られたキャストフィルムから切り出したフィルム2枚を重ね合わせ(
図1(a)(b))、重ね合わせたフィルムのうち縦幅20cm×横幅20cmの表面を鏡面処理した2枚の金属板でフィルムを挟み(
図1(c))、温度50℃で、10kgの荷重をかけて3日間静置した。その後、室温まで冷却し、測定用サンプルを作製した。測定用サンプルの重ね合わせた2枚のフィルムの間に、アルミ棒の位置から重ね合わせたフィルムの下端までの距離が20cmとなるように、6mmφのアルミ棒を挟み(
図2(a)-(c))、フィルムをインテスコ社製万能材料試験機2001に固定した(
図3)。速度20cm/分の条件で重ね合わせた2枚のフィルムを上方へ引き上げながら固定されたアルミ棒で重ね合わせた2枚のフィルムを引き剥がし(
図4(a)-(c))、フィルムが剪断剥離するときの平均荷重(ブロッキング力(mN)を測定した。平均荷重を20cmで割った値を、ブロッキング係数(mN/cm)(以下「ブロッキング係数(mN/cm)」という。)とした。
なお、表2において「ブロッキングしない」とは、ブロッキング係数が0、すなわちフィルム同士が密着することなく接している状態をいう。
【0076】
<引張試験>
JIS K7127-2に準拠して、試験片形状15mm幅および引張速度を200mm/分とし、引張強度(TS:MPa)及び破断点伸び(EL:%)を求めた。フィルムのTD方向、MD方向それぞれについて評価した。
【0077】
<傷付き性の評価>
学振摩耗試験機(新東科学株式会社製)を使用し、実施例及び比較例で得られたフィルムから切り出した20mm×20mmのフィルム2枚同士について、一方は摩擦子の先端を覆い、フィルムで覆われた摩耗子で他方のフィルム表面を擦って摩耗試験を行った。試験条件は荷重:50g、ステンレス製摩擦子:R45、速度:50mm/秒、ストローク50mmとした。摩擦子の往復回数を25回、50回、及び100回としたときのフィルム表面を実体顕微鏡で観察した。実体顕微鏡としてSTZ-171(株式会社島津理化製)を用いて、フィルム20mm×20mmの範囲内における傷の本数を数えた。表2において「-」は、評価未実施であることを意味する。
【0078】
【0079】
[実施例と比較例の対比]
ゲル分率が60~90%の範囲にない微粒子を使用した比較例1および比較例2に比べて、実施例1-3は学振摩耗試験後の傷付き数が少ないことがわかる。さらに、実施例1-1および実施例1-2は、実施例1-3よりも粒子(X)の含有量が少ないことから、実施例1-3と同様に傷付き性を評価したならば、傷付き数が実施例1-3と同等またはさらに少ないであろうと考えられる。また、実施例はオレフィン系樹脂微粒子(B)を用いていることから、ゼオライトまたは球状シリカを使用した比較例3-1~比較例4-3に比べてブロッキングが少なく、または学振摩耗試験後の傷つき数が少ない。
【符号の説明】
【0080】
10:万能材料試験機
14:アルミ棒
16:把持手段
18:端部
20:フィルム
30:フレーム
32:天面
34:引き上げ手段
36:底面
38:固定手段
40:金属板