(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04537 20160101AFI20241217BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241217BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20241217BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20241217BHJP
B60L 58/40 20190101ALI20241217BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241217BHJP
【FI】
H01M8/04537
H01M8/00 A
H01M8/04 Z
B60L50/75
B60L58/12
B60L58/40
B60L3/00 S
(21)【出願番号】P 2021017642
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】富本 尚也
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-123555(JP,A)
【文献】特開2010-95100(JP,A)
【文献】特開2018-74887(JP,A)
【文献】特開2011-86392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックの発電電力により充電される蓄電装置と、
前記蓄電装置の電力により駆動される負荷と、
前記負荷を駆動するための電子制御ユニットと、
を備え、
前記電子制御ユニットは、
前記蓄電装置からの電力を入力して前記負荷を駆動させる駆動回路と、
前記駆動回路と共に前記蓄電装置に接続され、前記駆動回路の上流側の前記蓄電装置の電圧を検出する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記蓄電装置の電圧を、前記負荷の駆動周期を分割した周期でサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段によりサンプリングした前記蓄電装置の電圧を平均化する平均化手段と、を備え
、
前記平均化手段は、前記サンプリング手段によりサンプリングした前記蓄電装置の電圧を降順又は昇順に並べ、降順又は昇順に並べられた前記蓄電装置の電圧のうちの前記負荷の動作に応じた電圧降下が除去された一定の連続する順序範囲の前記蓄電装置の電圧を抽出して当該抽出した前記蓄電装置の電圧を平均化することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記蓄電装置は、キャパシタであることを特徴とする請求項
1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
変動する電源電圧を詳細に検出することが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電圧の変動が起きやすい回路構成となっている場合において、変動する原因を考慮して電圧の検出精度の向上を図りたいという要求がある。特に燃料電池システムにおいては、ポンプ等の補機を駆動するための駆動回路を搭載するが、補機の負荷によって駆動回路にはたらく負荷も変化することで検出する電圧が変動してしまう場合があり、解決が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための燃料電池システムは、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックの発電電力により充電される蓄電装置と、前記蓄電装置の電力により駆動される負荷と、前記負荷を駆動するための電子制御ユニットと、を備え、前記電子制御ユニットは、前記蓄電装置からの電力を入力して前記負荷を駆動させる駆動回路と、前記駆動回路と共に前記蓄電装置に接続され、前記駆動回路の上流側の前記蓄電装置の電圧を検出する制御部と、を有し、前記制御部は、前記蓄電装置の電圧を、前記負荷の駆動周期を分割した周期でサンプリングするサンプリング手段と、前記サンプリング手段によりサンプリングした前記蓄電装置の電圧を平均化する平均化手段と、を備えることを要旨とする。
【0006】
これによれば、電子制御ユニットの制御部は駆動回路と共に蓄電装置に接続されており、駆動回路の上流側の蓄電装置の電圧を検出する際に、サンプリング手段において、蓄電装置の電圧が、負荷の駆動周期を分割した周期でサンプリングされる。平均化手段において、サンプリング手段によりサンプリングした蓄電装置の電圧が平均化される。よって、負荷の駆動による電圧の変動の影響を受けにくくして蓄電装置の電圧を高精度に検出することができる。
【0007】
また、燃料電池システムにおいて、前記平均化手段は、前記サンプリング手段によりサンプリングした前記蓄電装置の電圧を降順又は昇順に並べ、降順又は昇順に並べられた前記蓄電装置の電圧のうちの一定の連続する順序範囲の前記蓄電装置の電圧を抽出して当該抽出した前記蓄電装置の電圧を平均化するとよい。
【0008】
また、燃料電池システムにおいて、前記蓄電装置は、キャパシタであるとよい。この場合、蓄電装置は電圧変動が大きいキャパシタであるので、電圧検出結果によってSOCの推定値に影響するが、本発明を適用することでSOCの精度向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蓄電装置の電圧を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における燃料電池フォークリフトの概略側面図。
【
図5】サンプリング値についての格納順、降順、抽出、平均化を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、燃料電池フォークリフト10の車体11の前側下部には駆動輪(前輪)12aが設けられ、車体11の後側下部には操舵輪(後輪)12bが設けられている。マスト13が車体11の前部に立設されている。マスト13は車体11に対して前後に傾動可能に支持された左右一対のアウタマスト13aと、これにスライドして昇降するインナマスト13bとからなる。各アウタマスト13aの後部にはリフトシリンダ14が配設されている。インナマスト13bの内側にはフォーク15を備えたリフトブラケット16が昇降可能に支持されている。そして、リフトシリンダ14の伸縮作動によりフォーク15がリフトブラケット16とともに昇降される。
【0012】
左右一対のティルトシリンダ17は、その基端側が車体11に対して回動可能に連結されるとともに、先端側がアウタマスト13aの側面に回動可能に連結されている。マスト13はティルトシリンダ17が伸縮駆動されることで前後に傾動する。
【0013】
運転室18の前側にリフトレバー19及びティルトレバー20が装備されている。リフトレバー19はフォーク15を昇降させるためのレバーであり、ティルトレバー20はマスト13を前後方向に傾動させるためのレバーである。運転室18の下部にはアクセルペダル21が設けられ、アクセルペダル21の操作量に応じた車速にされる。
【0014】
車体11には燃料電池システム22、走行モータ23及び荷役モータ24が搭載されている。燃料電池システム22により走行モータ23を駆動させ、駆動輪12aが駆動されるようになっている。詳しくは、走行モータ23の出力軸が駆動輪12aの回転軸と減速機(図示略)を介して連結されており、走行モータ23の駆動により出力軸が回転するとその回転に伴って駆動輪12aの回転軸が回転して駆動輪12aが駆動される。
【0015】
また、燃料電池システム22により荷役モータ24が駆動され、この荷役モータ24の駆動により荷役ポンプ(図示略)が駆動される。この荷役ポンプの駆動に基づいてリフトシリンダ14やティルトシリンダ17を伸縮動作してフォーク15の上下動やティルト動作を行うことができるようになっている。
【0016】
このように、燃料電池システム22は、リフトシリンダ14及びティルトシリンダ17の油圧源となる荷役モータ24及び走行モータ23の電源として使用される。
次に、
図2を用いて燃料電池システム22について説明する。
【0017】
図2に示すように、燃料電池システム22は、燃料電池スタック31と、水素タンク32と、電磁弁33と、インジェクタ34と、コンプレッサ35と、水素循環ポンプ36と、DC/DCコンバータ37と、蓄電装置38と、メインコンタクタ39と、インバータ40と、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)41を備える。蓄電装置38としてのキャパシタを用いている。
【0018】
燃料電池システム22における燃料電池スタック31は、複数のセルを積層して構成されており、各セルは電気的に直列接続されている。水素タンク32は、電磁弁33及びインジェクタ34を介して燃料電池スタック31に水素ガスを供給可能である。コンプレッサ35は燃料電池スタック31に酸素を含む空気を供給可能である。そして、水素タンク32から供給される水素とコンプレッサ35から供給される空気中の酸素とが燃料電池スタック31内で化学反応を起こすことによって、電気エネルギーが生成される。
【0019】
燃料電池スタック31と水素タンク32を繋ぐ配管に電磁弁33及びインジェクタ34が設けられている。電磁弁33により燃料電池スタック31に供給される水素ガス量が調整される。電磁弁33及びコンプレッサ35は電子制御ユニット41によって制御される。
【0020】
燃料電池スタック31における水素循環経路には水素循環ポンプ36が設けられている。燃料電池スタック31から排出されるガスには未反応の水素が含まれる。この未反応の水素を再度、燃料電池スタック31に供給するため、水素循環ポンプ36により、燃料電池スタック31から排出されたガスが燃料電池スタック31に戻される。また、水素循環ポンプ36により水素が燃料電池スタック31の水素供給圧力まで昇圧される。
【0021】
水素循環ポンプ36は、電磁式ダイヤフラムポンプが用いられている。電磁式ダイヤフラムポンプは、例えば50Hzでの電磁ソレノイドコイルの通電及び遮断により振動子に周期的に電流が流れて振動子が往復運動する。この往復運動に伴いポンプ室に水素ガスが吸入され、吸入されたガスが昇圧されて吐き出される。水素循環ポンプ36は、蓄電装置38の電力により駆動される。
【0022】
図2に示すように、燃料電池スタック31の正極出力端子にはDC/DCコンバータ37及びメインコンタクタ39を介して蓄電装置(キャパシタ)38が接続されている。メインコンタクタ39は、車両のキースイッチのオン操作に伴う起動時に閉じられ、キースイッチのオフ操作に伴う駆動停止時に開かれる。蓄電装置(キャパシタ)38には車両負荷が接続されている。つまり、燃料電池スタック31は、DC/DCコンバータ37、蓄電装置38を介して車両負荷に電気的に接続されている。そして、燃料電池スタック31で発電された直流電力は、DC/DCコンバータ37によって所定の電圧まで降圧された後、蓄電装置(キャパシタ)38を介して車両負荷に出力される。車両負荷は、操作部材としてのアクセルペダル21、リフトレバー19及びティルトレバー20の操作に基づいて駆動する走行モータ23及び荷役モータ24を含んでいる。即ち、車両負荷は、荷役モータ24や車軸を駆動するための走行モータ23等であり、燃料電池システム22から供給される電力によって荷役モータ24や走行モータ23が駆動されることによって、車両の荷役動作や走行動作が行われる。
【0023】
蓄電装置(キャパシタ)38は、車両負荷(走行モータ23、荷役モータ24等)と並列に燃料電池スタック31に電気的に接続されている。蓄電装置(キャパシタ)38においては、燃料電池スタック31の発電電力が車両負荷(走行モータ23、荷役モータ24等)の要求電力を上回る場合には、余剰の電力が蓄電装置(キャパシタ)38に充電される。一方、発電電力が要求電力を下回る場合には、不足分の電力が蓄電装置(キャパシタ)38から放電される。
【0024】
DC/DCコンバータ37と蓄電装置(キャパシタ)38との間における正極ラインにはインバータ40が接続されている。インバータ40により直流電力が交流電力に変換されてコンプレッサ35における交流モータに供給される。この交流電力によりコンプレッサ35が駆動される。水素循環ポンプ36は、電子制御ユニット41により駆動される。
【0025】
電子制御ユニット41は、マイコン42と、アクチュエータ駆動回路43と、分圧抵抗44,45、及び分圧抵抗46,47を有する。マイコン42は、命令を解読しデータ処理を実行するCPU(Central Processing Unit)48と、プログラムやデータを保持するメモリ49を備える。メモリ49は、ROM(Read Only Memory)50と、RAM(Random Access Memory)51で構成されている。RAM51は、データを一時保存するバッファを有する。
【0026】
アクチュエータ駆動回路43は、入力端子が蓄電装置38の正極端子に接続されている。アクチュエータ駆動回路43の出力端子が水素循環ポンプ36に接続されている。アクチュエータ駆動回路43は、蓄電装置38からの電力を入力して水素循環ポンプ36を駆動させる。
【0027】
マイコン42は、第1電圧検出ポートP1と第2電圧検出ポートP2を有する。DC/DCコンバータ37と蓄電装置38との間の正極ラインにおけるメインコンタクタ39よりもDC/DCコンバータ37側の接続点α1は、分圧抵抗44と分圧抵抗45よりなる直列回路を介してグランドに接続されている。当該直列回路における分圧抵抗44と分圧抵抗45との間の接続点α2に対し第1電圧検出ポートP1が電気的に接続されている。これにより、第1電圧検出ポートP1は分圧抵抗44,45を介してメインコンタクタ39におけるDC/DCコンバータ37側と接続されている。
【0028】
このように、メインコンタクタ39よりもDC/DCコンバータ37側の接続点α1の電圧が電子制御ユニット(ECU)41に入力される。メインコンタクタ39よりもDC/DCコンバータ37側の接続点α1の電圧が電子制御ユニット(ECU)41に入力された後に、抵抗44,45により分圧され、マイコン42で検出可能な電圧に変換される。メインコンタクタ39よりもDC/DCコンバータ37側の接続点α1の電圧が分圧(変換)された後に第1電圧検出ポートP1で、マイコン42により検出できる。
【0029】
DC/DCコンバータ37と蓄電装置38との間の正極ラインにおけるメインコンタクタ39よりも蓄電装置38側の接続点β1は、分圧抵抗46と分圧抵抗46よりなる直列回路を介してグランドに接続されている。当該直列回路における分圧抵抗46と分圧抵抗47との間の接続点β2に対し第2電圧検出ポートP2が電気的に接続されている。これにより、第2電圧検出ポートP2は分圧抵抗46,47を介してメインコンタクタ39における蓄電装置38側と接続されている。マイコン42は、アクチュエータ駆動回路43と共に蓄電装置38に接続され、第2電圧検出ポートP2を用いてアクチュエータ駆動回路43の上流側の蓄電装置38の電圧を検出することができる。
【0030】
このように、メインコンタクタ39よりも蓄電装置38側の接続点β1での電圧である蓄電装置38の電圧がアクチュエータ駆動回路43での電源電圧として使用される一方で、電子制御ユニット(ECU)41に蓄電装置38の電圧が入力される。蓄電装置38の電圧が電子制御ユニット(ECU)41に入力された後に、抵抗46,47により分圧され、マイコン42で検出可能な電圧に変換される。蓄電装置38の電圧が分圧(変換)された後に第2電圧検出ポートP2で、マイコン42により検出できる。
【0031】
マイコン42は、第1電圧検出ポートP1の電圧をA/D(アナログ/デジタル)変換してメモリ49のRAM51のバッファに格納することができる。マイコン42は、第2電圧検出ポートP2の電圧をA/D変換してメモリ49のRAM51のバッファに格納することができる。
【0032】
電子制御ユニット41は、計測される蓄電装置(キャパシタ)38の端子電圧と蓄電装置38の内部抵抗等に基づいて蓄電装置(キャパシタ)38のSOC(充電状態)を推定する。そして、電子制御ユニット41は、推定される蓄電装置(キャパシタ)38のSOCに基づいて、電磁弁33の開度とコンプレッサ35の吐出量を制御することによって、燃料電池スタック31に供給される水素と酸素の量を調整し、燃料電池スタック31の発電電力を制御する。
【0033】
次に、このように構成した燃料電池フォークリフト10の作用について説明する。
マイコン42はメインコンタクタ39の故障診断を行う。メインコンタクタ39の故障診断時に、マイコン42は、メインコンタクタ39が閉じられたときにおいて、水素循環ポンプ(電磁式ダイヤフラムポンプ)36の駆動中に、第1電圧検出ポートP1での電圧と第2電圧検出ポートP2での電圧の差が閾値未満か否か判定する。つまり、マイコン42は、メインコンタクタ39よりもDC/DCコンバータ37側の接続点α1の電圧に応じた電圧とメインコンタクタ39よりも蓄電装置38側の接続点β1の電圧に応じた電圧の差が閾値未満か否か判定する。マイコン42は、第1電圧検出ポートP1での電圧と第2電圧検出ポートP2での電圧の差が閾値未満であればメインコンタクタ39が正常動作しており正常と判定する。また、マイコン42は、第1電圧検出ポートP1での電圧と第2電圧検出ポートP2での電圧の差が閾値以上であればメインコンタクタ39が正常動作しておらず異常であると判定する。
【0034】
水素循環ポンプ36である電磁式ダイヤフラムポンプは、例えば50Hzの低い周波数で駆動される。このとき、
図3に実線で示すように、マイコン42における第2電圧検出ポートP2での電圧が上下に変動する。特に、所定の駆動周期Tdにおいて、大きく下降した後に元の電圧レベルに戻る。これが繰り返されて
図3に実線で示すように変動波形となる。
【0035】
アクチュエータ駆動回路43における水素循環ポンプ(電磁式ダイヤフラムポンプ)36の駆動周期TdをX(msec)とした場合、マイコン42における第2電圧検出ポートP2での電圧のA/D変換がX/20以下の速度で実施される。
【0036】
マイコン42は、
図4に示すように、アクチュエータ駆動回路43の上流側の蓄電装置38の電圧を分圧した第2電圧検出ポートP2の電圧をサンプリングする。このとき、水素循環ポンプ(電磁式ダイヤフラムポンプ)36の駆動周波数が50Hzである場合、アクチュエータとしての水素循環ポンプ(電磁式ダイヤフラムポンプ)36の駆動周期Tdである20msecを、20分割した周期(=Td/20)である1msecでサンプリングする。
図4においては、t1のタイミングで電圧V1をサンプリングし、t2のタイミングで電圧V2をサンプリングし、t3のタイミングで電圧V3をサンプリングし、以下同様にして、t20のタイミングで電圧V20をサンプリングする。このようにして、駆動周期Tdを20分割してTd/20毎に電圧V1~V20がサンプリングされる。
【0037】
A/D変換の結果は、メモリ49のRAM51のバッファに格納される。これを、
図5のNo(番号)の欄に対応する格納順の欄において、V1,V2,V3,…,V19,V20で示す。
【0038】
マイコン42は、サンプリングした第2電圧検出ポートP2の電圧、即ち、アクチュエータ駆動回路43の上流側の蓄電装置38の電圧(詳しくは、分圧した電圧)を平均化する。
【0039】
詳しくは、まず、マイコン42は、
図5に降順の欄で示すように、サンプリングした第2電圧検出ポートP2の電圧、即ち、分圧したアクチュエータ駆動回路43の上流側の蓄電装置38の電圧(サンプリングした電圧V1~V20)を降順に並べる。
図5においては、降順に並べると、V5、V4、V6、V1、V2、V3、V20、V7、V8、V9、V10、V19、V11、V12、V13、V18、V14、V15、V16、V17となる。
【0040】
そして、マイコン42は、駆動周期Xに対しX/20でA/D変換した電圧値に対し、上位X/5~2X/5を抽出する。
図5においては、抽出の欄に示すように、Noの欄での4,5,6,7,8に対応するV1,V2,V3,V20,V7が相当する。つまり、マイコン42は、降順に並べられた第2電圧検出ポートP2の電圧、即ち、分圧したアクチュエータ駆動回路43の上流側の蓄電装置38の電圧のうちの一定の連続する順序範囲の蓄電装置38の電圧(V1値、V2値、V3値、V20値、V7値)を抽出する。
【0041】
マイコン42は、抽出した電圧(V1値、V2値、V3値、V20値、V7値)に対し、
図5に平均化の欄に示すように、相加平均値を平均値とする平均化を行う。即ち、平均値として、(V1+V2+V3+V20+V7)/5を求める。
【0042】
よって、マイコン42はメインコンタクタ39の故障診断の際に、メインコンタクタ39が正常であるにも関わらず第1電圧検出ポートP1での電圧と第2電圧検出ポートP2での電圧の差が大きいと判断されて異常と判定されることが防止されて誤検知を防止できる。
【0043】
従来、電子制御ユニット(ECU)へ入力された電源電圧を他のアクチュエータの電源として使用する場合、アクチュエータの駆動力・周期等によって電源電圧に電圧降下が生じ、適切な電圧を計測することができない。
【0044】
これに対し、本実施形態では、水素循環ポンプ36の駆動周期TdであるX(msec)を分割して電圧をサンプリングしバッファに格納した後にバッファ内において降順に整列し、上位X/5~2X/5の平均を算出し、電圧フィルタ値とする。これによりアクチュエータとしての水素循環ポンプ(電磁式ダイヤフラムポンプ)36の動作によらず適切に電圧を計測することができる。また、部品等の追加をせずに,適切な電圧計測をすることができる。
【0045】
よって、負荷としてのアクチュエータである水素循環ポンプ36の動作に応じたソフトウェアフィルタを介すことで電圧降下をフィルタ除去することができる。その結果、アクチュエータ駆動回路43の入力側における蓄電装置38の電圧について精度向上を図ることができる。
【0046】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)燃料電池システム22の構成として、燃料電池スタック31と、燃料電池スタック31の発電電力により充電される蓄電装置38と、蓄電装置38の電力により駆動される負荷としての水素循環ポンプ36と、水素循環ポンプ36を駆動するための電子制御ユニット41と、を備える。電子制御ユニット41は、蓄電装置38からの電力を入力して水素循環ポンプ36を駆動させる駆動回路としてのアクチュエータ駆動回路43と、アクチュエータ駆動回路43と共に蓄電装置38に接続され、アクチュエータ駆動回路43の上流側の蓄電装置38の電圧を検出する制御部としてのマイコン42と、を有する。制御部としてのマイコン42は、サンプリング手段と、平均化手段と、を備え、サンプリング手段としてのマイコン42は、蓄電装置38の電圧を、水素循環ポンプ36の駆動周期を分割した周期でサンプリングする。平均化手段としてのマイコン42は、サンプリングした蓄電装置38の電圧を平均化する。
【0047】
これにより、電子制御ユニット41のマイコン42はアクチュエータ駆動回路43と共に蓄電装置38に接続されており、アクチュエータ駆動回路43の上流側の蓄電装置38の電圧を検出する。この際に、マイコン42において蓄電装置38の電圧が、水素循環ポンプ36の駆動周期を分割した周期でサンプリングされ、サンプリングした蓄電装置38の電圧が平均化される。よって、水素循環ポンプ36の駆動による電圧の変動の影響を受けにくくして蓄電装置38の電圧を高精度に検出することができる。
【0048】
(2)平均化手段としてのマイコン42は、サンプリングした蓄電装置38の電圧を降順に並べ、降順に並べられた蓄電装置38の電圧のうちの一定の連続する順序範囲の蓄電装置38の電圧を抽出して当該抽出した蓄電装置38の電圧を平均化する。よって、蓄電装置38の電圧をより高精度に検出することができる。
【0049】
(3)蓄電装置38はキャパシタである。よって、蓄電装置は電圧変動が大きいキャパシタであるので、電圧検出結果によってSOCの推定値に影響するが、SOCの精度向上を図ることができる。
【0050】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
〇マイコン42に蓄電装置の電圧を分圧して入力したが、これに限るものではない。マイコン42に直接、蓄電装置の電圧を入力する場合に適用してもよい。
【0051】
〇サンプリングした蓄電装置38の電圧についてX/5~2X/5を抽出したのは波形が下振れしているからであり、波形によってはX/5~2X/5を抽出するのではなく、他の一定の連続する順序範囲の蓄電装置38の電圧を抽出してもよい。
【0052】
〇上記実施形態ではサンプリングした蓄電装置38の電圧を降順に並べたが、サンプリングした蓄電装置38の電圧を昇順に並べてもよい。そして、平均化手段は、サンプリング手段によりサンプリングした蓄電装置の電圧を昇順に並べ、昇順に並べられた蓄電装置の電圧のうちの一定の連続する順序範囲の蓄電装置の電圧を抽出して当該抽出した蓄電装置の電圧を平均化する。
【0053】
〇サンプリングした蓄電装置38の電圧について全ての値に対して平均化してもよい。
〇負荷としてのアクチュエータは電磁式ダイヤフラムポンプ(36)に限らない。電磁式ダイヤフラムポンプにおいては駆動周波数が例えば50Hzであり、低い周波数であり、電圧降下が電圧測定で現れる。
【0054】
〇負荷はアクチュエータであったが、アクチュエータ以外にも動作周波数で影響を及ぼしやすい負荷であればよい。このとき、負荷はセンサであってもよい。
○ 燃料電池システムは燃料電池フォークリフトに適用したが、フォークリフト以外の産業車両に適用してもよいし、さらに、産業車両以外の車両に適用してもよい。
【0055】
また、燃料電池システムは燃料電池車両以外にも、地上載置型の燃料電池機器、即ち、定位置発電機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
22…燃料電池システム、31…燃料電池スタック、36…水素循環ポンプ、38…蓄電装置、41…電子制御ユニット、42…マイコン、43…アクチュエータ駆動回路。