(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】保護リング、および保護リングを備えた駆動装置
(51)【国際特許分類】
D01H 11/00 20060101AFI20241217BHJP
D01H 5/60 20060101ALI20241217BHJP
D01H 1/16 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
D01H11/00 C
D01H5/60
D01H1/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021027082
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】10 2020 104 883.1
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト シュティッツ
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10050983(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0006563(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106523712(CN,A)
【文献】特開2019-131947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H1/00-17/02
F16J15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績機用の駆動装置であって、1つのモータ式の駆動ユニット(9)と少なくとも1つの伝動ユニットとを備えており、前記駆動ユニット(9)および/または前記伝動ユニットは、軸(3)を用いて別の伝動ユニットに結合されている、紡績機用の駆動装置において、
前記軸(3)と、前記駆動ユニット(9)のハウジング構成部材(4)および/または前記伝動ユニットのハウジング構成部材(4)と、の間の結合領域(2)を糸巻付きまたは汚染物に対して保護するための保護リング(1)が、前記軸(3)に相対回動不能に配置され、
前記保護リング(1)
は、
当該保護リング(1)を前記軸(3)に相対回動不能に配置するための円筒形の基体(5)と、該円筒形の基体(5)に隣接した、前記結合領域(2)をカバーしかつ該結合領域(2)から汚染粒子および糸を遠ざけるための円錐形の端区分(6)とを備えている
、紡績機用の駆動装置。
【請求項2】
前記円錐形の端区分(6)は、前記保護リング(1)の外側の端部に当付け面(7)を有しており、該当付け面(7)は前記円筒形の基体(5)の中心長手方向軸線(M)に対して直角に配置されていて、前記保護リング(1)が前記ハウジング構成部材(4)に接して摺動すると同時に前記結合領域(2)をカバーするように、前記保護リング(1)を配置できるようになっている、請求項1記載の
紡績機用の駆動装置。
【請求項3】
前記円錐形の端区分(6)の長さは、前記保護リング(1)の長さの3%~20%である、請求項1または2記載の
紡績機用の駆動装置。
【請求項4】
前記円錐形の端区分(6)は、前記結合領域(2)において前記ハウジング構成部材(4)から糸を遠ざけるために、
前記保護リング(1)の中心長手方向軸線を含む断面において直線状の表面、および/または前記保護リング(1)の中心長手方向軸線に対して角度付けられた表面を備えた円錐形の外面(8)を有している、請求項1から3まで
のいずれか1項記載の
紡績機用の駆動装置。
【請求項5】
前記円筒形の基体(5)
の中心長手方向軸線(M)に対する前記円錐形の端区分(6)の角
度は、45°~65°である、請求項1から4まで
のいずれか1項記載の
紡績機用の駆動装置。
【請求項6】
前記円錐形の端区分(6)の最大の外径は、前記円筒形の基体(5)の外径よりも20%~50%大きい、請求項1から5まで
のいずれか1項記載の
紡績機用の駆動装置。
【請求項7】
前記円筒形の基体(5
)は、一体にかつ回転対称に形成されている、請求項1から6まで
のいずれか1項記載の
紡績機用の駆動装置。
【請求項8】
前記保護リング(1)の肉厚は、少なくとも前記円筒形の基体(5)の領域において一定であり、1mm~3mmである、請求項1から7まで
のいずれか1項記載の
紡績機用の駆動装置。
【請求項9】
前記保護リング(1)の前記円筒形の基体(5)は、前記軸(3)にプレス嵌めによって相対回動不能に固定するために設けられており、このために、前記円筒形の基体(5)は、その全長にわたって不変の、前記軸(3)の外径よりも小さい内径を有している、請求項
1~8のいずれか1項記載の紡績機用の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機の軸とハウジング構成部材との間の結合領域を糸巻付きまたは汚染物に対して保護するための保護リングに関する。さらに本発明は、紡績機用の駆動装置であって、1つのモータ式の駆動ユニットと少なくとも1つの伝動ユニットとを備えており、駆動ユニットおよび/または伝動ユニットは、軸を用いて別の構成部材、特に別の伝動ユニットに結合されている、紡績機用の駆動装置に関する。
【0002】
紡績機、特にリング精紡機は、しばしば互いに同一でかつ互いに並んで配置された多数の作業ユニットを有していて、これらの作業ユニットはそれぞれ1つの紡績ユニットを有しており、紡績ユニット、および/または紡績ユニットに結合されたまたは紡績ユニットの上流もしくは下流に配置された構成部材は、しばしば紡績機の1つの共通の駆動装置を介して駆動される。このような駆動装置は、しばしば、駆動すべき構成部材、例えば紡績ユニットの上流に配置されたドラフト装置のローラに、または伝動ユニットに、軸を介して結合されている。駆動装置は、基本的に、このような軸の一端における主駆動装置であってよい。特に長い軸では、多くの場合、軸の延在長さに沿ってさらに複数の補助駆動ユニットが配置されており、それぞれの補助駆動ユニットは、特に好ましくは、少なくとも1つの主伝動装置を介して、かつ特に好ましくはさらに下流に配置された分配伝動装置を介して、紡績機もしくは紡績機に配置された構成部材の軸に結合されている。
【0003】
しかしながら、この場合、紡績工程中に多数の個々の繊維および繊維粒子が、さらにまたルーズな糸端部が発生し、これらの繊維、繊維粒子、および糸端部が、駆動ユニットと軸との間の結合領域に達することがあり、そこで堆積してしまうという問題が発生する。このことは、長い時間の経過後に、駆動ユニット、および駆動ユニットに結合された構成部材の機能を損ない、これによって、すべての紡績ユニットを備えた紡績機全体を停止し、該当する結合部をクリーニングする、またはそれどころか構成部材を交換する必要がある。
【0004】
独国特許出願公開第102018102232号明細書に基づいて、それぞれの機械側にドラフト装置を備えた両側式のリング精紡機が既に公知であり、これらのドラフト装置は、スライバの走行方向において相前後して配置されていて互いに異なった回転数で回転する複数のドラフト装置ボトムローラを有しており、これらのドラフト装置ボトムローラには、機械側に配置された駆動装置と少なくとも1つの追加的な補助駆動装置によって力を加えることができ、それぞれの機械側には複数の作業ユニットが互いに並んで配置されていて、ドラフト装置はそれぞれ1つの作業ユニットの一部である。補助駆動装置は、1つの電動機式の駆動装置、1つの主伝動装置、および2つの分配伝動装置を有しており、これらの構成部材はそれぞれ、ユニバーサルジョイントを備えた軸を介して互いに結合されている。保護のためにこの軸は、構成部材の間において完全にハウジングの内部に配置されていてよい。これによって、軸は、特に結合領域において汚染物に対して保護されている。多くの場合、軸が、閉鎖されたハウジングの内部に配置されていることは、良好な解決策でもあるが、しかしながら、場合によっては軸を開放状態で案内することも望まれており、このことは、一方では構成部材の特に容易な監視および保守、ならびに簡単な交換を可能にし、かつ他方では比較的フレキシブルな構造および比較的好適な製造を可能にする。
【0005】
ゆえに、本発明の根底にある課題は、紡績機の軸の構成部材の特に容易な監視および保守ならびに簡単な交換を可能にし、特にハウジングなしの軸の構成にもかかわらず、繊維、繊維粒子および糸による特に軸および/または駆動装置の支持部の汚染を効果的に阻止する保護リングおよび紡績機用の駆動装置を提供することである。
【0006】
この課題は、本発明によれば請求項1記載の保護リングおよび請求項9記載の駆動装置によって解決される。本発明の好適な発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
特に紡績機のまたは紡績機に配置された構成部材の軸とハウジング構成部材との間の結合領域を糸巻付きまたは汚染物に対して保護するための本発明に係る保護リングは、保護リングを軸に相対回動不能に配置するための円筒形の基体と、円筒形の基体に隣接した、結合領域をカバーしかつ結合領域から汚染粒子および糸を遠ざけるための円錐形の端区分とを有している。このとき、カバーは、特に好ましくは間隙なしに行われる。
【0008】
紡績機用の本発明に係る駆動装置、特に紡績機のドラフト装置用の、特に好ましくはリング精紡機のドラフト装置用の本発明に係る駆動装置は、1つのモータ式の駆動ユニットと、好ましくは少なくとも1つの伝動ユニットとを備えており、駆動ユニットおよび/または伝動ユニットは、軸を用いて別の構成部材、特に別の伝動ユニットに結合されており、軸と駆動ユニットおよび/または伝動ユニット、特に駆動ユニットのハウジング構成部材および/または伝動ユニットのハウジング構成部材との間の結合領域を糸巻付きまたは汚染物に対して保護するための本発明に係る保護リングが、軸に相対回動不能に配置されている。
【0009】
本発明に係る保護リングによって、軸に実質的に以前と同様に自由に接近が可能となり、ひいては軸を容易に保守すること、潤滑すること、場合によっては交換することができるという利点が得られ、しかも軸とハウジング構成部材との間の結合領域において、繊維、繊維粒子、および糸による汚染に対する保護が達成され、これによって、装置、特に紡績機を長時間中断なしに、かつこの領域における頻繁な保守およびクリーニングなしに作動させることができる。さらに保護リングは安価に製造可能であり、かつ容易に組付け可能であるので、特に好適な製造を達成することができる。
【0010】
紡績機は、基本的に、織編用繊維または織編用繊維から成る糸を製造しかつ/または処理する任意の機械であってよい。好ましくは、紡績機はリング精紡機であり、特に好ましくは、本発明に係る保護リングは、紡績機または、例えばドラフト装置または巻取り装置のような紡績機の構成部材に配置されている。紡績機は、好ましくはそれぞれ1つの紡績ユニットを備えた複数の作業ユニットを有しており、それぞれの作業ユニットは、特に好ましくは1つの固有のドラフト装置を有している、もしくはそれぞれの紡績ユニットの上流にそれぞれ1つのドラフト装置が配置されている。
【0011】
駆動装置は、基本的に、1つの共通の軸を介して紡績機の少なくとも1つの構成部材を、好ましくは1つの紡績機の複数の構成部材を駆動するように設けられている。極めて特に好ましくは、駆動装置は軸を介して、紡績機のそれぞれの作業ユニットに配置された構成部材を駆動する。このとき、駆動装置は、好ましくは駆動すべき軸の一端に配置された駆動ユニットを有している主駆動装置であってよい。択一的に駆動装置は、好ましくは紡績機の少なくとも1つのドラフト装置ローラ、特にドラフト装置ボトムローラのための補助駆動装置であってもよく、この補助駆動装置は、主駆動装置に補足的に、軸の延在方向に沿って、特に軸の中央領域に配置されている。補助駆動装置は、特に好ましくは、主駆動装置をサポートするように、かつ/または極めて長い軸のねじれを阻止するように設けられている。
【0012】
駆動装置は、好ましくは1つの主伝動装置と、特に好ましくはさらに少なくとも1つの分配伝動装置とを有している。しかしながら、極めて特に好ましくは、駆動装置は、両側式の紡績機のそれぞれの側のためにそれぞれ1つの分配伝動装置を含んでいる。特に好ましくは、駆動装置は1つの主伝動装置と正確に2つの分配伝動装置とを備えて構成されており、両分配伝動装置は、さらに好ましくは互いに直ぐ近くに配置されている。相応に伝動ユニットは、主伝動装置であってもまたは分配伝動装置であってもよい。
【0013】
駆動装置の駆動ユニットは、まず、回転駆動を提供する装置であり、駆動ユニットとしては電動機が好適である。特に好ましくは、駆動ユニットは、軸を直接駆動するように、かつ/または紡績機の構成部材を軸を用いて駆動するように設けられている。軸に回転を伝達するために、駆動ユニットは、出力軸、出力ブシュ、または軸を相対回動不能に固定するためのその他の可能性を有している。駆動ユニットは、好ましくは少なくとも1つの伝動ユニットに結合されている。択一的にまたは追加的に、1つの駆動装置の2つの伝動ユニットが1つの軸を用いて互いに結合されていてもよく、この構成において第1の伝動ユニットは、好ましくは主伝動装置であり、第1の伝動ユニットに軸を介して結合された第2の伝動ユニットは、特に好ましくは分配伝動装置である。
【0014】
軸は、基本的にまず、紡績機の別の構成部材に駆動ユニットまたは伝動ユニットの回転を伝達するための、任意の構成部材または任意の構成グループであってよい。紡績機の軸、特に駆動ユニットおよび/または伝動ユニットを結合するための軸は、好ましくは屈曲運動可能な連結要素であり、もしくはこのような連結器を有している。特に好ましくは、軸はカルダン軸であり、かつ/または少なくとも1つのユニバーサルジョイントおよび/または等速ジョイントを有している。
【0015】
保護リングは、基本的に、紡績機の軸とハウジング構成部材との間の結合領域を保護するために設けられている構成部材である。ハウジング構成部材は、紡績機の、軸と一緒に回転しない任意の構成ユニットの一部であってよく、好ましくは駆動ユニットおよび/または伝動ユニットのハウジングの一部である。相応にハウジング構成部材は、好ましくは駆動装置ハウジング、軸受ハウジング、または伝動装置ハウジングである。さらにハウジング構成部材は、好ましくは軸の領域に、もしくは軸と結合するためにかつ/または軸を収容するために設けられた領域に、平らな表面を有しており、この表面に保護リングの円錐形の端区分は接触して、特に滑るように配置されることができる。紡績機のハウジング構成部材における円錐形の端区分の、好ましくは滑る配置形態は、特に、回転数が低い場合に問題がなく、このような低い回転数は、例えば紡績機、特にリング精紡機のドラフト装置シリンダおよびドラフト装置ローラの駆動装置において生ぜしめられ、このようなドラフト装置シリンダおよびドラフト装置ローラにおける回転数は、特に好ましくは毎分20回転未満である。
【0016】
結合領域は、基本的に、駆動ユニットおよび/または伝動ユニットに隣接する領域であり、この領域には、少なくとも部分的に、駆動ユニットおよび/または伝動ユニットと協働する軸が、特にこのような軸の一端が配置されている。結合領域は、同様に好ましくは直接、ハウジング構成部材の、軸の中心長手方向軸線に対して、好ましくは直角に延在している表面と、軸の表面との間において延在している。特に好ましくは、保護リングは、特に円錐形の端区分は、保護された結合領域において、少なくとも1つの軸受要素、特に伝動装置軸受、および/または少なくとも1つの軸シール構成部材を覆っている。
【0017】
保護リングは、基本的に、保護リングを用いて軸とハウジング構成部材との間の結合領域が、繊維、繊維粒子、塵埃粒子、および糸による汚染に対して保護されるように、かつ/または外部から結合領域に達する汚染物、特に糸が結合領域内に達し得ないように配置されていて、かつ/または形成されている。好ましくは、結合領域の外側に達する汚染物は、結合領域から遠ざけられる。特に好ましくは、保護リングは、特に好ましくは伝動装置出力軸に配置されているカルダン軸に配置されるように形成されている。
【0018】
保護リングは、基本的に任意の材料から形成されていてよく、好ましくは保護リングの少なくとも一部、特に基体は、特に好ましくは、保護リング全体は、プラスチック、好ましくは熱可塑性プラスチック、特に好ましくはポリオキシメチレン(POM)から形成されている。
【0019】
保護リングを軸に相対回動不能に配置するために、保護リングは円筒形の基体を有している。円筒形の基体は、好ましくは全長にわたってその中心長手方向軸線に沿って、不変の内径および/または外径を有している。さらに好ましくは、円筒形の基体は、全周にわたって閉鎖された壁を有している。円筒形の基体の内壁は、完全に円形の横断面を有していても、または軸の形状に合わせられていてもよい。特に好ましくは、円筒形の基体は、保護リングの全長にわたって円錐形の端区分に至るまで延在しており、極めて特に好ましくは、保護リングはもっぱら円筒形の基体と円錐形の端区分とから形成されている。相応に円筒形の基体は、好ましくは保護リングの一方の側もしくは一端を形成していて、円錐形の端区分は、保護リングの他方の側もしくは他端を形成している。同様に好ましくは、円筒形の基体は円筒形の端部を、特に基体の、円錐形の端区分とは反対側に位置している端部に有しており、特に好ましくは、円筒形の端部は、残りの円筒形の基体と同一の内径および/または外径を有している。
【0020】
結合領域を覆うために、かつ結合領域から汚染粒子および糸を遠ざけるために、保護リングは円錐形の端区分を有している。円錐形の端区分は、好ましくは外側に向かってかつ/または円筒形の基体から離反する方向に拡大するもしくは増大する直径を有している。円錐形の端区分は、円錐形の領域全体にわたって一定の肉厚さをもって形成されていても、端部に向かってまたは連続的に円錐形の領域全体にわたって低減する肉厚をもって形成されていてもよい。さらに好ましくは、円錐形の端区分における少なくとも外側の表面、特に好ましくは内側の表面も、円錐形状を有している。特に好ましくは、保護リングは最も外側の領域に、もしくは円錐形の端区分を有している端部に、その最大の内径および/または外径を有している。円錐形の端区分は、円筒形の基体に固定された別体の構成部材の一部であっても、または相応の構成グループの一部であってもよいが、しかしながら、好ましくは、円錐形の端区分は、円筒形の基体と一体に形成されているか、少なくとも素材結合式に基体に結合されている。
【0021】
保護リングの好適な構成では、円錐形の端区分は、保護リングの外側の端部に当付け面を有しており、当付け面は、ハウジング構成部材に接触して摺動すると同時に結合領域を間隙なしにカバーするように保護リングを配置できるようにするために、円筒形の基体もしくは保護リング全体の中心長手方向軸線に対して直角に、かつ/または軸の回転軸線に対して直角に配置されており、このように構成することによって、結合領域の特に良好かつ完全なカバーが、かつ相応に広範囲にわたる保護が達成される。好ましくは、結合領域は保護リングおよびハウジング構成部材によって完全に閉鎖されている。全般的に好ましくは、保護リングは一方では軸に相対回動不能に配置されていて、他方ではハウジング構成部材に対して滑るように配置されている。
【0022】
保護リングの別の好適な構成では、円錐形の端区分の長さは、保護リングの長さの1%~75%、好ましくは2%~50%、特に好ましくは3%~20%、極めて特に好ましくは5%~15%であることが提案されており、このように構成されていると、一方では軸における保護リングの良好な保持が達成され、他方では軸の、直接ハウジング構成部材に隣接する領域から、汚染粒子および糸が十分に遠ざけられる。円錐形の端区分の長さは、好ましくは端区分の下においてカバーすべき構成部材にも関連しており、特に好ましくは、軸を接続するかつ/または固定するための構成部材全体が、円錐形の端区分の内部に配置されている。保護リングの長さは、特に保護リングおよび/または円筒形の基体の中心長手方向軸線に沿った方向である。
【0023】
結合領域から糸および他の汚染物を特に効果的に遠ざけるために、かつ保護リングの外表面の周囲における糸巻付きの形成を阻止するために、保護リングの好適な構成の円錐形の端区分は、滑らかな表面、真っ直ぐな表面、および/または軸に配置された保護リングの回転軸線に対して、もしくは保護リングの中心長手方向軸線に対して角度付けられた、特に保護リングおよび/または軸の中心長手方向軸線に関して角度付けられた表面を備えた円錐形の外面を有している。円錐形の外面は特に、軸の端部領域の周囲に堆積する糸巻付きを軸受ハウジングまたは伝動装置ハウジングから遠ざけるように設けられている。特に好ましくは、保護リングの表面全体は、滑らかに、真っ直ぐに、かつ/または縁部なしに形成されており、基体は、円錐形の端区分と円筒形の基体との間に、単に1つの屈曲された領域だけを有していてよい。
【0024】
保護リングの円錐形の外面は、まず、任意に曲げられた、かつ/または角度付けられた経過を有していてよく、しかしながら、このとき、角度は、好ましくは円錐形の端区分全体にわたって、特に円錐形の外面全体にわたって不変、もしくは一定である。特に好ましくは、保護リング、円筒形の基体、および/または軸の中心長手方向軸線に対する円錐形の端区分の角度、特に円錐形の外面の角度は、20°~85°、好ましくは40°~75°、特に好ましくは45°~65°であり、このように構成されていると、円錐形の外面に達する粒子に、円筒形の基体の方向への、ひいては結合領域から離反する方向への十分に大きな力が作用する。
【0025】
本発明に係る保護リングの好適な発展形態によれば、円錐形の端区分の外径、特に最大の外径は、円筒形の基体の外径よりも5%~100%、好ましくは10%~75%、特に好ましくは20%~50%大きく、このように構成されていると、円錐形の端区分において糸および汚染物を確実に滑り落とすことが同様に保証される。さらに、基体に隣接する区分における円錐形の端区分の外径は、特に好ましくは基体の外径に相当しており、このようになっていると、両領域の間の移行部に段差がなくなる。円錐形の端区分の最大の外径は、好ましくは当付け面の領域に位置している。
【0026】
軸に保護リングを特に簡単かつ安定的に相対回動不能に配置できるようにするために、好ましくは、基体は、特に好ましくは保護リング全体は、一体にかつ/または回転対称に、特に保護リングの中心長手方向軸線に対してかつ/または軸の回転軸線に対して回転対称に形成されている。このことによってさらに、保護リングの特に簡単かつ安価な製造が可能になる。
【0027】
基本的に、軸における保護リングの任意の固定が可能であるが、好適な構成では、保護リングの基体は、プレス嵌めによって軸における相対回動不能な固定が行われるようにかつ/または形成されているように提案されており、そのために基体は、好ましくは完全に円筒形の形状を、かつ/または全長にわたって不変の内径を有しており、この内径は、特に好ましくは軸の外径よりも小さい。内径は、好ましくは0.01%~5%、特に好ましくは0.05%~3%、極めて特に好ましくは0.1%~2%、保護リングを相対回動不能に固定したい軸の外径よりも小さい。基本的に好ましくは、保護リングは軸に力結合式に相対回動不能に固定される。択一的に内径は、場合によっては許容誤差をもって軸の外径に相当していてもよく、このように構成されていると相対回動不能な固定は、他の形式で、例えば形状結合式にかつ/または素材結合式に行われねばならない。
【0028】
軸における保護リングの安定的な固定を特にプレス嵌めによって達成するために、保護リングの肉厚は、少なくとも円筒形の基体の領域において、好ましくは保護リング全体の領域において不変である。さらに好ましくは、保護リングの肉厚は、少なくとも円筒形の基体の領域において、好ましくは保護リング全体の領域において、0.5mm~5mm、特に好ましくは1mm~3mm、極めて特に好ましくは1.5mm~2.5mmであり、このように構成されていると、十分に高い安定性および応力を得ることができる。
【0029】
次に図面を参照しながら、本発明に係る保護リングの1実施例について詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】軸とハウジング構成部材との間の結合領域に配置された保護リングを概略的に示す図である。
【0031】
図1に概略的に示された保護リング1は、カルダン軸3の一端に配置されており、これによって、カルダン軸3とモータハウジング4との間の結合領域2を汚染物に対して保護することができる。カルダン軸3は、リング精紡機の一部であり、より正確にはこのようなリング精紡機のドラフト装置のための補助駆動装置の一部である。リング精紡機には、互いに同一の多数の作業ユニットが互いに並んで配置されており、これらの作業ユニットはそれぞれ、複数のドラフト装置ローラを備えたドラフト装置と、後続の紡績装置とを有している。すべてのドラフト装置ローラは、1つの共通の軸を用いて駆動され、この軸は、1つの主駆動装置および少なくとも1つの補助駆動装置に結合されている。それぞれの補助駆動装置は、駆動ユニット9の一部としての1つの電動機、ならびに1つの主伝動装置および2つの分配伝動装置を有しており、駆動ユニット9は主伝動装置に、かつ主伝動装置はそれぞれの分配伝動装置に、それぞれカルダン軸3を介して結合されている。駆動ユニット9は、モータハウジング4の内部に配置されている。
【0032】
保護リング1は、結合領域2内への繊維粒子および糸の侵入を阻止するように設けられており、これによって、モータ出力軸10の、結合領域2に配置された支持部の汚染が防止される。そのために保護リング1は、カルダン軸3の一端において、駆動ユニット9の出力軸10の領域に相対回動不能に固定されている。カルダン軸3における保護リング1の固定は、保護リング1の円筒形の基体5を介して行われる。
【0033】
結合領域2を保護できるようにするために、保護リング1は、円筒形の基体5に隣接する円錐形の端区分6を有しており、この円錐形の端区分6において、保護リング1の内径および外径は均一に拡大している。円錐形の端区分6は外側に、滑らかな表面を備えた円錐形の外面8を有しており、これによって、円錐形の外面8の領域に達する糸を結合領域2から滑り落とすことができ、これによって、糸巻付きの形成を阻止することができる。
【0034】
カルダン軸3と一緒に回転する保護リング1と、モータハウジング4の、保護リング1に接触している表面との間の、可能な限り密な接合を達成するために、保護リング1は円錐形の端区分6の端部に当付け面7を有しており、この当付け面7は、カルダン軸3もしくは保護リング1の中心長手方向軸線Mに対して直角に、かつモータハウジング4の表面に平行に方向付けられており、これによって、保護リング1を当付け面7によって、モータハウジング4に接して滑るように案内することができる。これによって、間隙のないカバーが得られる。カルダン軸3の、毎分20回転未満の低回転数に基づいて、保護リング1の強い摩耗もまた心配する必要がない。
【0035】
保護リング1を特に簡単かつ安価に製造できるようにするために、保護リング1は、ポリオキシメチレンから一体に形成されている。保護リング1は、回転対称の形状、ならびに閉鎖された、つまり連続的な表面、および一定の肉厚を有している。
【符号の説明】
【0036】
1 保護リング
2 結合領域
3 軸
4 ハウジング構成部材
5 円筒形の基体
6 円錐形の端区分
7 当付け面
8 円錐形の外面
9 モータ式の駆動ユニット
10 出力軸
M 中心長手方向軸線