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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】熱デバイス
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20241217BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20241217BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F28D15/02 106F
F28D15/02 102G
F28D15/02 101H
F28D15/02 102A
H01L23/46 B
H05K7/20 Q
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021031011
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131842
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚也
(72)【発明者】
【氏名】平野 義宜
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕一
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-042973(JP,U)
【文献】特開2005-345045(JP,A)
【文献】特開2015-141002(JP,A)
【文献】特開昭51-067558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0163799(US,A1)
【文献】中国実用新案第212573382(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
H01L 23/427
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変態物質の潜熱を利用した熱デバイスであって、
前記相変態物質が封入された相変態領域と、前記相変態領域を外部と連通する連通路とを有する容器と、
前記連通路を塞ぐ封止部と
を有し、
前記相変態領域は、内部空間を有し、
前記封止部は、
前記容器の上に位置して前記連通路における前記外部側の開口を遮蔽するセラミック、樹脂、または、セラミックおよび樹脂の複合体からなる遮蔽板と、
前記容器の上において前記開口を全周に亘って囲むように位置し、前記容器と前記遮蔽板とを接合する樹脂からなる接合層と
を有し、
前記接合層の一部は、前記遮蔽板の側方に位置し、前記遮蔽板の側面に接触している、熱デバイス。
【請求項2】
前記接合層は、
前記遮蔽板と前記容器との間に位置し、前記遮蔽板の前記容器との対向面に接触する第1接合層と、
前記遮蔽板の側方に位置し、前記遮蔽板の側面に接触する第2接合層と
を有する、請求項1に記載の熱デバイス。
【請求項3】
前記接合層は、
前記遮蔽板と前記容器との間および前記遮蔽板の側方に位置し、前記遮蔽板の前記容器との対向面および前記遮蔽板の側面に接触する第1接合層と、
前記第1接合層のうち前記遮蔽板から露出した部分を覆う第2接合層と
を有する、請求項1に記載の熱デバイス。
【請求項4】
前記第1接合層は、紫外線硬化樹脂からなる、請求項またはに記載の熱デバイス。
【請求項5】
前記第2接合層は、エポキシ樹脂、シリコン樹脂およびアクリル樹脂の何れかである、請求項に記載の熱デバイス。
【請求項6】
前記第2接合層は、前記遮蔽板の前記対向面と反対側の面を覆う、請求項に記載の熱デバイス。
【請求項7】
前記容器は、セラミック製である、請求項1~のいずれか一つに記載の熱デバイス。
【請求項8】
前記容器は、
第1面と前記第1面の反対側に位置する第2面とを貫通する複数の還流孔を有する平板状の中間部材と、
前記中間部材の前記第1面と対向する第3面に第1溝部を有する第1部材と、
前記中間部材の前記第2面と対向する第4面に第2溝部を有する第2部材と
を有する、請求項1~のいずれか一つに記載の熱デバイス。
【請求項9】
前記内部空間は、常温において減圧状態である、請求項1~のいずれか一つに記載の熱デバイス。
【請求項10】
前記内部空間には、液体が位置している、請求項1~のいずれか一つに記載の熱デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相変態物質の潜熱を利用した熱デバイスが知られている。たとえば、熱デバイスの一種であるベーパーチャンバーは、内部に封入された作動液の蒸発および凝縮に伴う潜熱を利用して高温部から低温部へ熱を輸送することで、発熱部品から熱を放出する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭54-42973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、密閉性の向上を図ることができる熱デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による熱デバイスは、熱デバイスは、相変態物質の潜熱を利用した熱デバイスである。実施形態に係る熱デバイスは、容器と、封止部とを有する。容器は、相変態物質が封入された相変態領域と、相変態領域を外部と連通する連通路とを有する。封止部は、連通路を塞ぐ。また、封止部は、遮蔽板と、接合層とを有する。遮蔽板は、容器の上に位置して連通路における外部側の開口を遮蔽するセラミック、樹脂、または、セラミックおよび樹脂の複合体からなる。接合層は、容器の上において開口を全周に亘って囲むように位置し、容器と遮蔽板とを接合する樹脂からなる。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、密閉性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る放熱デバイスの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る第1部材をZ軸負方向側からZ軸正方向に見た図である。
図3図3は、実施形態に係る第2部材をZ軸正方向側からZ軸負方向に見た図である。
図4図4は、実施形態に係る中間部材をZ軸正方向側からZ軸負方向に見た図である。
図5図5は、図4に示す中間部材に対して図2に示す第1溝形成領域および図3に示す第2溝形成領域を重畳させた図である。
図6図6は、実施形態に係る放熱デバイスにおける作動液の流れを説明するための図である。
図7図7は、実施形態に係る放熱デバイスにおける作動液の流れを説明するための図である。
図8図8は、連通路の構成例を示す模式的な断面図である。
図9図9は、封止部の構成を示す模式的な断面図である。
図10図10は、放熱デバイス内の圧力が上昇した場合に封止部に加わる力を模式的に示した図である。
図11図11は、接合層の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。
図12図12は、接合層の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。
図13図13は、接合層の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。
図14図14は、接合層の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。
図15図15は、接合層の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。
図16図16は、接合層の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。
図17図17は、接合層の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。
図18図18は、接合層の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。
図19図19は、連通路の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。
図20図20は、封止工程の一例を説明するための図である。
図21図21は、封止工程の一例を説明するための図である。
図22図22は、封止工程の一例を説明するための図である。
図23図23は、封止工程の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示による熱デバイスを実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0009】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0010】
また、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。
【0011】
以下では、本開示による熱デバイスの一例として、作動液(相変態物質の一例)の蒸発および凝縮に伴う潜熱を利用して高温部から低温部へ効率良く熱を移動させる放熱デバイス、具体的には、ベーパーチャンバーを挙げて説明する。
【0012】
まず、実施形態に係る放熱デバイスの全体構成について図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係る放熱デバイスの斜視図である。
【0013】
図1に示すように、放熱デバイス1は、セラミック製の容器2を有する。容器2は、第1部材10、第2部材20および中間部材30を有する。第1部材10、第2部材20および中間部材30は、いずれも板状であり、第1部材10と第2部材20とで中間部材30を挟み込むように積層される。なお、容器2は、セラミック製に限定されない。容器2の材質としては、たとえば、金属、セラミック、ガラスおよび樹脂から選択された少なくとも1種からなるものであってもよい。特に、容器2の材質は、セラミック、ガラスおよび樹脂から選択された少なくとも1種からなることが好ましい。
【0014】
容器2は、作動領域100および枠領域200を有する。作動領域100は、内部空間を有しており、かかる内部空間には、相変態物質としての作動液が封入されている。作動液としては、たとえば、水、炭化水素系化合物、有機液体(たとえばエタノールおよびメタノール等)、アンモニアなどの液体が用いられ得る。
【0015】
枠領域200は、作動領域100を囲む領域である。言い換えれば、枠領域200は、放熱デバイス1のうち作動領域100よりも外側の領域である。作動領域100は概ね中空状であるのに対し、枠領域200は概ね中実状である。
【0016】
枠領域200は、たとえば、第1部材10と中間部材30との界面または第2部材20と中間部材30との界面から作動液や作動液の蒸気が漏れ出したり、あるいは、外部の雰囲気が上記界面から作動領域100の内部空間に入り込んだりすることを抑制する(すなわち、密閉性を確保する)ために敢えて幅広に形成された領域である。
【0017】
容器2は、作動領域100の内部空間を外部と連通する複数(ここでは、2つ)の連通路14,15を有している。連通路14,15のうち、たとえば連通路14は、作動液注入孔として用いられ、連通路15は気体排出孔として用いられる。この場合、放熱デバイス1の製造工程において、連通路14から作動領域100の内部空間に作動液が注入され、これに伴い、作動領域100の内部空間に存在する気体が連通路15から外部へ排出される。連通路14は、第1部材10の四隅のうち1つの角部の近傍に位置し、連通路15は、連通路14と対角線上に位置する角部の近傍に位置する。
【0018】
なお、放熱デバイス1は、必ずしも複数の連通路14,15を有することを要しない。たとえば、放熱デバイス1は、連通路14,15のうち一方のみを有する構成であってもよい。
【0019】
連通路14および連通路15は、封止部5によって閉塞される。封止部5によって連通路14および連通路15が閉塞されることにより、放熱デバイス1の内部空間が密閉されて作動液が作動領域100に封止された状態となる。このように、放熱デバイス1は、内部が密閉された密閉容器である。
【0020】
作動液は、たとえば作動領域100の内部空間の全体積に対して10体積%以上95体積%以下の割合で充填される。好ましくは、上記割合は、30体積%以上75体積%以下である。さらに好ましくは、上記割合は、40体積%以上65体積%以下である。また、作動領域100の内部空間のうち作動液以外の残部は、蒸気化した作動液を一部含む真空状態となっている。これにより、高温環境下においても気液平衡を保つことができるためドライアウトしにくく、また、低温環境下においても効率よく熱拡散するため、様々な温度域において熱拡散性を高くすることができる。
【0021】
第1部材10、第2部材20および中間部材30は、セラミックからなる。第1部材10、第2部材20および中間部材30を構成するセラミックとしては、たとえば、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、コージェライト(MgAl(AlSi18))、シリコン含浸炭化珪素(SiSiC)などが用いられ得る。また、第1部材10、第2部材20および中間部材30を構成するセラミックは、単結晶体であってもよい。
【0022】
金属製の放熱デバイスは、材質や工法上の理由から剛性が得られにくく、薄型化が困難であった。また、金属製の放熱デバイスは、作動液と接触する部分が金属であることから、耐腐食性の点で改善の余地があった。これに対し、実施形態に係る放熱デバイス1は、第1部材10、第2部材20および中間部材30が全てセラミックからなるため、金属製の放熱デバイスと比較して薄型化が容易であり、耐腐食性にも優れる。
【0023】
図1に示す例において、放熱デバイス1は、第1部材10を上向きにした姿勢で設置されているが、放熱デバイス1の姿勢は図1の例に限定されない。たとえば、放熱デバイス1は、第1部材10を下向きにした姿勢で設置されてもよい。また、放熱デバイス1は、図1に示すような横置きに限らず縦置きされてもよい。
【0024】
セラミック製の容器を有する放熱デバイスは、セラミックが脆性材料であることから、たとえば作動液の相変態によって発生する応力等への耐久性を如何にして確保するかが重要な課題となる。
【0025】
ここで、特許文献1に記載のベーパーチャンバーは、作動液を注入するための連通路が作動領域に設けられている。作動領域は、内部空間の分だけセラミックの厚さが薄くなっている。このため、作動領域に連通路が設けられた特許文献1に記載のべーバーチャンバーは、応力への耐久性が不足し易く、容器に割れ等が生じるおそれがある。また、容器に割れが生じることで、内部空間に封入されていた作動液のドライアウトが生じて放熱効率が悪化するおそれがある。
【0026】
これに対し、実施形態に係る放熱デバイス1は、枠領域200に連通路14,15が位置している。枠領域200は、作動領域100と異なり中実状である。かかる枠領域200に連通路14,15が位置していることで、作動領域100に連通路14,15が位置する場合と比較して耐久性を高めることができる。このように、実施形態に係る放熱デバイス1によれば、耐久性の向上を図ることができる。
【0027】
また、実施形態に係る放熱デバイス1によれば、作動領域100に連通路14,15が位置する場合と比較して、作動領域100の有効スペースを広く確保することができるため、放熱特性を向上させることができる。
【0028】
また、連通路14,15が位置する枠領域200は、作動領域100と同質のセラミック製であるため、熱膨張差による応力が発生し難い。このため、実施形態に係る放熱デバイス1は、信頼性が高い。
【0029】
次に、第1部材10の構成について図2を参照して説明する。図2は、実施形態に係る第1部材10をZ軸負方向側からZ軸正方向に見た図である。
【0030】
図2には、第1部材10の下面、具体的には、中間部材30の上面(第1面)と対向する面(第3面)を示している。図2に示すように、第1部材10は、第3面に格子状の第1溝部11を有する。
【0031】
第1溝部11は、第3面に対して凹んだ第1凹部11aと、第1凹部11a内に位置する複数の第1凸部11bとを有する。第1凹部11aは、第3面の中央部に位置しており、平面視における輪郭はたとえば四角形である。複数の第1凸部11bは、第1凹部11a内において互いに間隔を空けて縦方向および横方向に配列されている。これら第1凹部11aおよび複数の第1凸部11bにより、第1溝部11は格子状を有する。
【0032】
以下、第1部材10の第3面のうち、第1溝部11が位置する領域を「第1溝形成領域110」と記載する。第1溝形成領域110は、作動領域100の一部を構成する。また、第1部材10は、第1溝形成領域110を取り囲む矩形枠状の第1枠領域210を有する。第1枠領域210は、枠領域200の一部を構成する。
【0033】
第1枠領域210には、第1部材10を厚み方向(ここでは、Z軸方向)に貫通する複数(ここでは、2つ)の貫通孔141a,151aが位置している。貫通孔141aは、連通路14における第1部位141の一部を構成し、貫通孔151aは、連通路15における第1部位151の一部を構成する。
【0034】
第1部材10の下面(第3面)の反対側に位置する上面(第5面)の中央部には、熱源が配置される。
【0035】
次に、第2部材20の構成について図3を参照して説明する。図3は、実施形態に係る第2部材20をZ軸正方向側からZ軸負方向に見た図である。
【0036】
図3には、第2部材20の上面、具体的には、中間部材30の下面(第2面)と対向する面(第4面)を示している。図3に示すように、第2部材20は、第4面に格子状の第2溝部21を有する。
【0037】
第2溝部21は、第4面に対して凹んだ第2凹部21aと、第2凹部21a内に位置する複数の第2凸部21bとを有する。第2凹部21aは、第4面の中央部に位置しており、平面視における輪郭はたとえば四角形である。複数の第2凸部21bは、第2凹部21a内において互いに間隔を空けて縦方向および横方向に配列されている。これら第2凹部21aおよび複数の第2凸部21bにより、第2溝部21は格子状を有する。
【0038】
以下、第2部材20の第4面のうち、第2溝部21が位置する領域を「第2溝形成領域120」と記載する。第2溝形成領域120は、作動領域100の一部を構成する。また、第2部材20は、第2溝形成領域120を取り囲む矩形枠状の第2枠領域220を有する。第2枠領域220は、枠領域200の一部を構成する。
【0039】
第2部材20における第2溝形成領域120の大きさは、第1部材10における第1溝形成領域110の大きさと同一である。また、第2部材20の第4面における第2溝形成領域120の位置は、第1部材10の第3面における第1溝形成領域110の位置と同一である。
【0040】
このように、第1溝部11および第2溝部21の形状を格子状とすることで、放熱デバイス1の内部空間において作動液を効率よく循環させることができる。なお、第1溝部11および第2溝部21の形状は、必ずしも格子状であることを要しない。
【0041】
第2枠領域220には、第2部材20の上面(第4面)に対して凹んだ複数(ここでは、2つ)の凹部141b,151bが位置している。凹部141bは、連通路14における第1部位141の一部を構成し、凹部151bは、連通路15における第1部位151の一部を構成する。
【0042】
また、第2枠領域220には、溝部142b,152bが位置している。溝部142bは、連通路14における第1部位141の延在方向(第1方向、ここではZ軸方向)と交差する第2方向(ここでは、Y軸方向)に延在する通路であり、その一端は、第1部位141における凹部141bに開口し、他端は、第2溝形成領域120に開口している。溝部152bは、連通路15における第1部位151の延在方向(第1方向、ここではZ軸方向)と交差する第2方向(ここでは、Y軸方向)に延在する通路であり、その一端は、第1部位151における凹部151bに開口し、他端は、第2溝形成領域120に開口している。
【0043】
次に、中間部材30の構成について図4を参照して説明する。図4は、実施形態に係る中間部材30をZ軸正方向側からZ軸負方向に見た図である。
【0044】
図4に示すように、中間部材30は、矩形枠状の第3枠領域230を有する。第3枠領域230は、枠領域200の一部を構成する。また、中間部材30は、第3枠領域230の内方に位置する平面視円形の中央部32と、中央部32および第3枠領域230の間に位置し、中央部32および第3枠領域230を繋ぐ複数の接続部33とを有する。図4に示す例において、中央部32は、中間部材30の中央に位置する。また、複数の接続部33は、互いに間隔をあけて、中央部32から第3枠領域230に向かって拡幅しながら放射状に延びる。
【0045】
中間部材30は、さらに、複数の蒸気孔36と複数の還流孔37とを有する。複数の蒸気孔36および複数の還流孔37は、いずれも、中間部材30の上面(第1面)および下面(第2面)を貫通する。
【0046】
複数の蒸気孔36は、作動液の蒸気の流路の一部として機能する。複数の蒸気孔36は、隣り合う2つの接続部33の間に位置している。すなわち、複数の蒸気孔36と複数の接続部33とは周方向に交互に位置している。複数の蒸気孔36は、複数の接続部33と同様、互いに間隔をあけて、中央部32から第3枠領域230に向かって拡幅しながら放射状に延びる。
【0047】
複数の還流孔37は、作動液の流路の一部として機能する。還流孔37は、上述した蒸気孔36と比較して開口面積が小さい微細な孔である。具体的には、還流孔37は、還流孔37を通過する作動液に毛細管現象を発生させることができる程度に小さい。
【0048】
第3枠領域230には、中間部材30を厚み方向(ここでは、Z軸方向)に貫通する複数(ここでは、2つ)の貫通孔141c,151cが位置している。貫通孔141cは、連通路14における第1部位141の一部を構成し、貫通孔151cは、連通路15における第1部位151の一部を構成する。
【0049】
図5は、図4に示す中間部材30に対して図2に示す第1溝形成領域110および図3に示す第2溝形成領域120を重畳させた図である。なお、図5では、理解を容易にするため、連通路14,15を省略している。
【0050】
図5に示すように、第1溝形成領域110および第2溝形成領域120は、中間部材30の第3枠領域230と重複する。つまり、第1溝形成領域110および第2溝形成領域120は、中間部材30において複数の蒸気孔36および複数の還流孔37が形成される領域(以下、「孔形成領域」と記載する)よりも外方に広がっている。
【0051】
このように、第1部材10の第1溝形成領域110および第2部材20の第2溝形成領域120を中間部材30の孔形成領域よりも広くすることで、第1溝形成領域110および第2溝形成領域120を孔形成領域と同程度とした場合と比較して、放熱デバイス1の内部空間を外方に広げることができる。
【0052】
熱源は、放熱デバイス1の中央部に配置される。このため、放熱デバイス1の温度は、熱源から離れるほど、すなわち、放熱デバイス1の外周部に近くなるほど低くなる。また、作動液の蒸気は、低温領域に移動することによって凝縮して液体となる。したがって、放熱デバイス1の内部空間を外方に広げることで、作動液の凝縮がより生じ易くなる。このため、ドライアウトを生じ難くすることができる。
【0053】
なお、ここでは、第1溝形成領域110および第2溝形成領域120が中間部材30の孔形成領域よりも外方に広がっている場合の例を示したが、これに限らず、中間部材30の孔形成領域が第1溝形成領域110および第2溝形成領域120よりも外方に広がっていてもよい。
【0054】
放熱デバイス1の作動領域100は、第1溝形成領域110および第2溝形成領域120によって挟まれた内部空間を有しており、かかる内部空間には作動液が封入されている。また、内部空間のうち第1溝形成領域110と第2溝形成領域120との間には、中間部材30が介在しており、これにより、作動領域100は、第1溝形成領域110と中間部材30とによって挟まれる第1空間と、第2溝形成領域120と中間部材30とによって挟まれる第2空間とに仕切られる。これら第1空間と第2空間とは、中間部材30に形成された蒸気孔36および還流孔37によって繋がっている。
【0055】
次に、実施形態に係る放熱デバイス1における作動液の流れについて図6および図7を参照して説明する。図6および図7は、実施形態に係る放熱デバイス1における作動液の流れを説明するための図である。なお、図6は、図5に示す図から第3枠領域230を省略した図であり、図7は、図6におけるVII-VII矢視断面図である。また、図6および図7では、蒸気の流れを白抜きの矢印で示し、液体の流れを黒塗りの矢印で示している。
【0056】
作動液は、熱源により加熱されることで気化して蒸気となる。上述したように、熱源は、第1部材10(図1図2参照)の上面(第5面)の中央部に配置される。このため、作動液の蒸気は、第1空間(第1部材10と中間部材30とで挟まれた空間)の中央部において発生する。
【0057】
作動液の蒸気は、第1溝形成領域110の第1溝部11を通って放熱デバイス1の面内方向(XY平面方向)に拡散しつつ(図6に示す白抜きの矢印参照)、複数の蒸気孔36を通って第2空間(第2部材20と中間部材30とで挟まれた空間)へ移動する(図7に示す白塗りの矢印参照)。
【0058】
第2空間へ移動した蒸気は、温度の低下によって凝縮して液体となる。液体化した作動液は、第2溝部21の毛細管力により、第2溝形成領域120を放熱デバイス1の中央部へ向かって移動する(図6に示す黒塗りの矢印参照)。この過程において、作動液は、還流孔37に入り込み、還流孔37の毛細管力によって第1空間へ戻される(図7に示す黒塗りの矢印参照)。以上のサイクルが繰り返されることで、放熱デバイス1は、熱源から熱を移動させることができる。
【0059】
次に、連通路14,15の構成について図8を参照して説明する。図8は、連通路14の構成例を示す模式的な断面図である。図8では、一例として、連通路14を図示しているが、連通路15も、連通路14と同様の構成を有する。
【0060】
図8に示すように、連通路14は、作動領域100の内部空間を外部と連通する。連通路14は、容器2の厚み方向(ここでは、Z軸方向)に延在して外部に開口する第1部位141と、容器2の面方向(ここでは、Y軸方向)に延在して作動領域100の内部空間に開口する第2部位142とを有する。
【0061】
第1部位141は、第1部材10の貫通孔141a、第2部材20の凹部141bおよび中間部材30の貫通孔141cによって形成される。また、第2部位142は、第2部材20の溝部142bと中間部材30の下面302(第2面)とによって形成される。なお、図8では、連通路14の凹部141bが第2部位142の溝部142bよりも凹んでいる場合の例を示したが、凹部141bと溝部142bとは面一であってもよい。
【0062】
このように、連通路14は、第1方向(ここでは、Z軸方向)に延在する第1部位141と、第1方向と交差する方向(ここでは、Y軸方向)に延在する第2部位142とを有する。言い換えれば、連通路14は、屈曲している。したがって、実施形態に係る放熱デバイス1によれば、作動領域100において高い圧力が発生した場合であっても封止部5に高い圧力がかかりにくいことから信頼性が高い。
【0063】
第1部位141は、第1部材10の上面に開口しており、枠領域200において作動領域100の第1空間および第2空間に跨がって延在している。そして、第2部位142は、枠領域200において作動領域100の第2空間側に位置している。
【0064】
放熱デバイス1では、第1空間および第2空間のうち第1空間側が高圧になる。言い換えれば、第1空間および第2空間のうち第2空間側は相対的に圧力が低い。したがって、第2空間側に第2部位142が位置していることで、連通路14に高い圧力がかかることを抑制することができる。
【0065】
図1に示すように、連通路14は、連通路15との間で作動領域100を挟むように位置している。2つの連通路14,15をこのように配置することで、たとえば2つの連通路14,15が横並びで配置される場合と比較して、耐久性が局所的に低くなることを抑制することができる。
【0066】
なお、連通路14における第1部位141のうち、貫通孔141aは、外部に開口する第1通路に相当し、貫通孔141cは、貫通孔141aに連続し、前記第1通路よりも径が小さい第2通路に相当する。
【0067】
次に、封止部5の構成について説明する。図9は、封止部5の構成を示す模式的な断面図である。図9に示すように、封止部5は、遮蔽板51と、接合層52とを有する。
【0068】
遮蔽板51は、たとえば板状の部材であり、第1部材10、第2部材20および中間部材30からなる容器の上に位置する。具体的には、遮蔽板51は、第1部材10の上面(第5面)に位置する。そして、遮蔽板51は、連通路14における外部側の開口を遮蔽する。
【0069】
接合層52は、第1部材10の上において連通路14における外部側の開口を全周に亘って囲むように位置し、第1部材10と遮蔽板51とを接合する。
【0070】
このように、封止部5は、連通路14を遮蔽する遮蔽板51と第1部材10との隙間を樹脂からなる接合層52を用いて埋めている。かかる構成とすることにより、圧力変化に対する密閉性を好適に確保することができる。この点について、図10を参照して説明する。図10は、放熱デバイス1内の圧力が上昇した場合に封止部5に加わる力を模式的に示した図である。
【0071】
上述したように、実施形態に係る放熱デバイス1は、作動液が位置しており、かかる作動液の蒸発および凝縮のサイクルを利用することによって、熱源から熱を移動させる。ここで、熱源が配置されていない状態において、放熱デバイス1の内部空間は、真空状態である。一方、放熱デバイス1に熱源が配置されて作動液が蒸発すると、放熱デバイス1の内部空間は、加圧状態となる。このように、放熱デバイス1の内部空間は、温度変化に応じて作動液が液体から気体へあるいは気体から液体へ状態変化することにより、内部空間の圧力が変化する。一例として、内部空間の圧力は、100℃で1気圧、150℃で5気圧、200℃で15気圧に変化する。
【0072】
図10に示すように、放熱デバイス1の作動領域100における圧力は、連通路14を遮蔽する遮蔽板51に伝わる。そして、遮蔽板51は、圧力変化に応じて変形しようとする。遮蔽板51は、接合層52を介して第1部材10に接合されているため、少なくとも連通路14の開口部に対向する遮蔽板51の部分は、圧力変化に連動して微細に変形する。この微細な変形によって、樹脂からなる接合層52の変形が抑制されるため、放熱デバイス1の内部空間の圧力が変化しても、接合層52による封止状態が保持され易い。したがって、実施形態に係る放熱デバイス1によれば、内部空間の圧力変化に対する密閉性を好適に確保することができる。
【0073】
なお、内部空間の圧力変化に伴って遮蔽板51が微細に変形しない場合、代わりに接合層52が大きく変形することとなる。この場合、遮蔽板51と第1部材10との間にすき間が生じたり接合層52が破損したりすることで、接合層52による封止状態が解かれるおそれがある。接合層52のみで連通路14を塞いだ場合も同様であり、内部空間の圧力変化によって、接合層52が大きく変形して接合層52が破損するおそれがある。
【0074】
また、セラミックは金属に比べて熱伝導率が低い。このため、容器2がセラミック製である場合、樹脂からなる接合層52には比較的ゆっくり熱が伝わることとなる。言い換えれば、樹脂からなる接合層52の温度変化が緩やかになる。これにより、接合層52が容器から剥離しにくい。すなわち、放熱デバイス1の密閉性が長期間にわたって保持される。
【0075】
また、接合層52の一部(実施形態では、後述する第2接合層522)は、遮蔽板51の側方に位置し、遮蔽板51の側面に接触していてもよい。内部空間の圧力によって、遮蔽板51が図10に上向きの矢印で示す方向に押されると、遮蔽板51の側面は、図10に横向きの矢印で示す方向に変形する。これに対し、樹脂からなる接合層52は、弾性変形し易いため、遮蔽板51に追従して柔軟に変形することができる。したがって、放熱デバイス1の内部空間の圧力変化が繰り返された場合であっても、放熱デバイス1の内部空間の密閉性が確保され易い。
【0076】
図9に戻る。実施形態に係る接合層52は、第1接合層521と、第2接合層522とを有していてもよい。第1接合層521は、遮蔽板51と第1部材10との間に位置し、遮蔽板51の第1部材10との対向面51aに接触する。第1接合層521は、連通路14を全周に亘って囲むように位置している。第2接合層522は、遮蔽板51の側方に位置し、遮蔽板51の側面51bに接触する。第1接合層521と同様、第2接合層522も、連通路14を全周に亘って囲むように位置している。このように、遮蔽板51と第1部材10との間に第1接合層521を有することで、密閉性をさらに高めることができる。
【0077】
第1接合層521と第2接合層522とは、異なる種類の樹脂からなっていてもよい。この場合、第1接合層521は、紫外線硬化樹脂からなっていてもよい。かかる構成とすることで、放熱デバイス1を製造方法の一工程である封止工程を容易化することができる。この点については後述する。
【0078】
なお、紫外線硬化樹脂としては、たとえば、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、エポキシアクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。また、第1接合層521が紫外線硬化樹脂である場合、遮蔽板51は、紫外線を透過するセラミックが用いられることが好ましい。このようなセラミックとしては、たとえば、アルミナおよびサファイア等が挙げられる。
【0079】
なお、遮蔽板51は、セラミック、金属、樹脂またはこれらのうち2つ以上の複合体であってもよい。また、遮蔽板51は、セラミック、樹脂、または、セラミックおよび樹脂の複合体であることが好ましい。
【0080】
また、第2接合層522は、紫外線硬化樹脂以外の樹脂が用いられてもよい。たとえば、第2接合層522としては、たとえば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂およびアクリル樹脂の何れかであってもよい。これらのうちエポキシ樹脂は、他の樹脂と比較して耐熱性、耐圧性、耐水性に優れることから、第2接合層522の材質として好適である。
【0081】
図11は、接合層52の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。図11に示すように、第1接合層521は、遮蔽板51と第1部材10との間から遮蔽板51の側方に露出していてもよい。この場合、第2接合層522は、遮蔽板51の側面51bを覆うとともに、第1接合層521のうち遮蔽板51と第1部材10との間から露出した部分を覆っていてもよい。
【0082】
図12および図13は、接合層52の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。図12および図13に示すように、第1接合層521は、遮蔽板51の対向面51aおよび側面51bに位置していてもよい。
【0083】
この場合において、たとえば図12に示すように、第2接合層522も、遮蔽板51の側面51bに位置していてもよい。すなわち、遮蔽板51の側面51bに、第1接合層521および第2接合層522の両方が接触していてもよい。
【0084】
また、図13に示すように、第2接合層522は、遮蔽板51の側面51bに接することなく、第1接合層521に接していてもよい。すなわち、遮蔽板51の側面51bには、第1接合層521のみが接触していてもよい。
【0085】
図14および図15は、接合層52の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。図14に示すように、第2接合層522は、遮蔽板51の対向面51aとは反対側の面である露出面51cの一部をさらに覆っていてもよい。遮蔽板51の対向面51aだけでなく、露出面51cの一部も接合層52で覆うことで、圧力変化に対する密閉性をさらに向上させることができる。
【0086】
また、図15に示すように、第2接合層522は、露出面51cの一部ではなく全面を覆っていてもよい。これにより、圧力変化に対する密閉性をさらに向上させることができる。
【0087】
図16図18は、接合層52の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。図16図18に示すように、接合層52は、1種類の樹脂からなっていてもよい。この場合、接合層52は、たとえば紫外線硬化樹脂からなっていてもよい。
【0088】
具体的には、たとえば図16に示すように、接合層52は、遮蔽板51における対向面51aと第1部材10とに接触していてもよい。また、図17に示すように、接合層52は、遮蔽板51における側面51bと第1部材10とに接触していてもよい。なお、この場合、遮蔽板51の対向面51aは、第1部材10に接触していてもよい。
【0089】
また、図18に示すように、接合層52は、遮蔽板51における対向面51aおよび側面51bの両方に位置していてもよい。このように、接合層52は、1種類の樹脂からなっていてもよい。
【0090】
図19は、連通路14の構成の他の一例を示す模式的な断面図である。図19に示すように、連通路14は、作動領域100に位置していてもよい。この場合、連通路14は、上述した貫通孔141a(たとえば図8参照)に相当する部分のみからなっていてもよい。
【0091】
次に、実施形態に係る放熱デバイス1の製造方法の一例について説明する。まず、第1部材10、第2部材20および中間部材30の原料を用い、ドクターブレード法またはロールコンパクション法等にてグリーンシートを形成し、複数のグリーンシートを積層することによって積層体を得る。
【0092】
つづいて、得られた積層体に対してレーザ加工や金型による打ち抜きを施すことにより、第1部材10、第2部材20および中間部材30の各成形体を得る。たとえば、積層体に対してレーザ加工を施すことにより、貫通孔141c,151c、複数の蒸気孔36および複数の還流孔37が形成された中間部材30の成形体を得ることができる。また、得られた積層体に対してレーザ加工を施すことにより、貫通孔141a,151aおよび第1溝形成領域110が形成された第1部材10の成形体が得られる。また、得られた積層体に対してレーザ加工を施すことにより、凹部141b,151b、溝部142b,152bおよび第2溝形成領域120が形成された第2部材20の成形体が得られる。
【0093】
つづいて、第1部材10、第2部材20および中間部材30の各成形体を、第2部材20、中間部材30および第1部材10の順番で積層して焼成することにより、第1部材10、第2部材20および中間部材30が一体化した容器2の焼結体が得られる。このように、第1部材10、第2部材20および中間部材30は一体成形される。したがって、接着剤等が不要であることから、信頼性の高い放熱デバイス1を得ることができる。
【0094】
なお、第1部材10、第2部材20および中間部材30の各成形体を得る方法としては、上述した方法に限らず、たとえば、グリーンシートに加工を施した後、グリーンシートを積層することによって各成形体を得るものであってもよい。また、上述した例では、第1部材10、第2部材20および中間部材30の各成形体を個別に作製した後、これらを積層することによって容器2の成形体を得ることとしたが、たとえば加工されたグリーンシートを順次積層することによって容器2の成形体を得ることとしてもよい。
【0095】
つづいて、たとえば連通路14,15のうちの一方から焼結体の内部に作動液を注入する。焼結体の内部に存在する気体は、作動液の注入に伴って連通路14,15のうちの他方から外部へ排出される。
【0096】
つづいて、真空ポンプ等の減圧装置を用い、連通路14,15を介して焼結体の内部を真空引きする。なお、焼結体の内部は真空状態であることが望ましいが、厳密に真空状態であることを要さず、たとえば真空状態に近い減圧状態であってもよい。
【0097】
つづいて、焼結体の内部が真空引きされた状態で連通路14,15を封止する。この封止工程の一例について図20図23を参照して説明する。図20図23は、封止工程の一例を説明するための図である。ここでは、接合層52が、紫外線硬化樹脂からなる第1接合層521と、エポキシ樹脂からなる第2接合層522とを有する場合における封止工程の一例について説明する。
【0098】
まず、図20に示すように、第1部材10の上面(第5面)に紫外線硬化型樹脂521Xを塗布する。紫外線硬化型樹脂521Xは、連通路14の開口部を取り囲むように周状に塗布される。
【0099】
つづいて、図21に示すように、連通路14を遮蔽するように紫外線硬化型樹脂521Xの上に遮蔽板51を載置する。紫外線硬化型樹脂521Xを用いる場合、紫外線を透過する部材からなる遮蔽板51を用いることが好ましい。このような遮蔽板51としては、たとえば、アルミナ、サファイア等のセラミックからなる薄板が用いられ得る。
【0100】
つづいて、図22に示すように、遮蔽板51の上方から紫外線を照射する。これにより、紫外線硬化型樹脂521Xは、紫外線によって硬化して第1接合層521となる。また、第1接合層521により遮蔽板51と第1部材10とが接合されて、第1部材10、第2部材20および中間部材30からなる容器2の内部空間(作動領域100)が封止される。
【0101】
つづいて、図23に示すように、第1部材10の表面にエポキシ樹脂からなる第2接合層522を塗布する。具体的には、第2接合層522は、遮蔽板51の側面51bを覆うように周状に塗布される。エポキシ樹脂は、たとえば時間の経過によって硬化する。これにより、容器2の内部空間(作動領域100)がさらに強固に封止される。以上により、放熱デバイス1が得られる。
【0102】
(実施例)
第1部材、第2部材、第3部材および遮蔽板にアルミナ、第1接合層に紫外線硬化樹脂、第2接合層にエポキシ樹脂を用いて、上述した製造方法により放熱デバイスを製造した。製造した放熱デバイス(以下、「実施例に係る放熱デバイス」と記載する)の寸法は、以下の通りである。
外寸(幅×長さ×厚み):50mm×50mm×0.5mm
溝形成領域よりも外方に位置する枠領域の幅:10mm
連通路の開口径:1.7mm
遮蔽板の外寸(幅×長さ×厚み):8mm×8mm×0.2mm
第1接合層の厚み:0.1mm
第2接合層の厚み:1mm
【0103】
そして、実施例に係る放熱デバイスの密閉性について試験を行った。具体的には、実施例に係る放熱デバイスを真空中に所定時間(数日間)放置し、その前後における重量の変化の有無を確認した。この結果、実施例に係る放熱デバイスには、真空中に放置する前と放置した後とで重量の変化が見られなかった。これは、放熱デバイスの内部空間に位置する作動液が放熱デバイスの外部に漏洩しなかったことを意味している。この結果から、実施例に係る放熱デバイスの密閉性が確保されていることが確認された。
【0104】
上述した実施形態では、貫通孔141a,151aが、テーパ形状を有する場合の例について説明したが、貫通孔141a,151aの形状は、テーパ状に限定されない。たとえば、貫通孔141a,151aの形状は、径が略一定なストレート状であってもよい。
【0105】
上述してきたように、実施形態に係る熱デバイス(一例として、放熱デバイス1)は、相変態物質(一例として、作動液)の潜熱を利用した熱デバイスである。実施形態に係る熱デバイスは、容器(一例として、容器2)と、封止部(一例として、封止部5)とを有する。容器は、相変態物質が封入された相変態領域(一例として、作動領域100)と、相変態領域を外部と連通する連通路(一例として、連通路14,15)とを有する。封止部は、連通路を塞ぐ。また、封止部は、遮蔽板(一例として、遮蔽板51)と、接合層(一例として、接合層52)とを有する。遮蔽板は、容器の上に位置して連通路を遮蔽するセラミック、金属、または、これらおよび樹脂のうち2種以上を含む複合体からなる。接合層は、容器の上において連通路を全周に亘って囲むように位置し、容器と遮蔽板とを接合する樹脂からなる。
【0106】
したがって、実施形態に係る密閉容器によれば、密閉性を向上させることができる。
【0107】
本開示による熱デバイスは、放熱デバイスに限定されない。たとえば、本開示による熱デバイスは、蓄熱材(相変態物質の一例)の相変態に伴う潜熱を熱エネルギーとして蓄える蓄熱デバイスであってもよい。この場合、蓄熱材は固液相変態を行うものや固固相変態を行うものが用いられる。このように、相変態物質は、必ずしも気液相変態を行うものであることを要しない。言い換えれば、相変態物質は、必ずしも液体であることを要さず、固体であってもよい。
【0108】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 放熱デバイス
5 封止部
10 第1部材
11 第1溝部
11a 第1凹部
11b 第1凸部
14,15 連通路
20 第2部材
21 第2溝部
21a 第2凹部
21b 第2凸部
30 中間部材
36 蒸気孔
37 還流孔
51 遮蔽板
52 接合層
100 作動領域
141 第1部位
141a 貫通孔
141b 凹部
141c 貫通孔
142 第2部位
142a 個別通路
200 枠領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23