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▶ ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲーの特許一覧

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  • 特許-トルクを伝達する装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】トルクを伝達する装置
(51)【国際特許分類】
   D01H 1/20 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
D01H1/20
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021036051
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2021139096
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】10 2020 106 278.8
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト シュティッツ
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-008250(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19519959(DE,A1)
【文献】特開2017-040030(JP,A)
【文献】特開2019-131947(JP,A)
【文献】特開2019-148045(JP,A)
【文献】特開2002-105775(JP,A)
【文献】特公昭46-012682(JP,B1)
【文献】中国実用新案第202032004(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H1/20
D01H5/82
F16D1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ユニットと紡績機の回転する構成部材との間でトルクを伝達する装置(1)であって、
記駆動ユニットからのトルクを受ける歯列(3)を備えた歯車構成部材(2)と、
れぞれ1つの回転する構成部材に前記トルクを伝達する2本の軸(4a,4b)と
を備え、
前記歯車構成部材(2)が、前記歯列(3)の両側に、前記2本の軸(4a,4b)のうちの1本の軸に前記トルクを伝達する円錐形のプレス面(6a,6b)を備えたそれぞれ1つの軸方向の延長部(5a,5b)を有していて、
前記円錐形のプレス面(6a,6b)のそれぞれが、前記2本の軸(4a,4b)のうちの1本の軸の収容部(7a,7b)内に配置されていて、前記歯車構成部材(2)と前記軸(4a,4b)との間でトルクを伝達するプレス結合部を形成する、トルクを伝達する装置(1)。
【請求項2】
前記2本の軸(4a,4b)において前記歯車構成部材(2)を軸方向で位置固定するために、タイロッド(8)が設けられていて、該タイロッド(8)が、両端部においてねじ山(9)を有していて、該ねじ山(9)が、前記軸(4a,4b)のタイロッド収容部(11)内の対応するねじ山(10)内でそれぞれ位置固定可能である、請求項1記載のトルクを伝達する装置。
【請求項3】
前記タイロッド収容部(11)が、前記軸(4a,4b)内において、前記歯車構成部材(2)の1つの軸方向の延長部(5a,5b)のための前記収容部(7a,7b)に対して同軸的に配置されている、請求項記載のトルクを伝達する装置。
【請求項4】
前記タイロッド(8)が、前記歯車構成部材(2)のタイロッド孔(12)内に配置されており、前記タイロッド孔(12)が、前記歯車構成部材(2)の中心長手方向軸線および/または回転軸線に沿って延びる孔として形成されている、請求項2または3記載のトルクを伝達する装置。
【請求項5】
前記タイロッド(8)が、前記歯車構成部材(2)の前記タイロッド孔(12)内で軸方向に移動可能に配置されている、かつ/または自由に回転可能である、請求項記載のトルクを伝達する装置。
【請求項6】
前記歯車構成部材(2)を前記紡績機に配置するために、前記歯車構成部材(2)に2つの軸受(13)が配置されており、各軸受(13)が、部分的に前記歯列(3)の下に配置されている、請求項1から5までの少なくともいずれか1項記載のトルクを伝達する装置。
【請求項7】
前記軸受(13)が、それぞれ1つのラジアル-スラスト軸受であり、前記歯車構成部材(2)を前記軸(4a,4b)のうちの1本の軸に対して軸方向で支持し、かつ前記歯車構成部材(2)を半径方向で前記紡績機の1つの構成部材に対して位置固定する、請求項記載のトルクを伝達する装置。
【請求項8】
前記歯車構成部材(2)の2つの記円錐形のプレス面(6a,6b)が、互いに対して同一に形成されている、かつ/または全長にわたって同一の角度を有している、請求項1から7までの少なくともいずれか1項記載のトルクを伝達する装置。
【請求項9】
前記装置(1)全体が、装置の中心長手方向軸線に対して中心かつ垂直に配置されている平面に対して鏡像対称的な構造を有している、請求項1から8までの少なくともいずれか1項記載のトルクを伝達する装置。
【請求項10】
前記タイロッド(8)および/または前記歯車構成部材(2)が、それぞれ一体的に形成されている、請求項からまでの少なくともいずれか1項記載のトルクを伝達する装置。
【請求項11】
モータ式の駆動ユニットと、該駆動ユニットと紡績機の回転する構成部材との間でトルクを伝達する請求項1から10までの少なくともいずれか1項記載の装置(1)とを備えた、紡績機用の駆動装置。
【請求項12】
互いに対して同一に形成された複数の作業ユニットと、請求項1から10までの少なくともいずれか1項記載の、駆動ユニットと紡績機の回転する構成部材との間でトルクを伝達する少なくとも1つの装置(1)とを備えた紡績機であって、トルク伝達が、2つの作業ユニットの間の中央の1つの駆動箇所で行われる、紡績機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットと紡績機の回転する構成部材との間でトルクを伝達する装置と、紡績機用の駆動装置と、トルクを伝達する装置を備えた紡績機とに関する。
【0002】
紡績機および特にリング紡績機は、それぞれ1つの紡績ユニットを備えた、互いに同一かつ互いに隣合って配置された多数の作業ユニットを有していることが多い。紡績ユニットおよび/またはこの紡績ユニットの結合された構成部材は、紡績機の1つの共通の駆動装置によって駆動されることが多い。このような駆動装置は、一般的には1つまたは複数の駆動ユニットを有している。各駆動ユニットは、駆動すべき構成部材、たとえば紡績ユニットの上流側に配置されたドラフト装置のローラに直接に、または軸を介して少なくとも間接的に結合されている。たとえば1つの伝動装置ユニットが駆動ユニットと軸との間に配置されていてよい。特に長い軸の場合、軸の安定的な回転を保証するために、少なくとも軸の延在長さに沿って、複数の駆動ユニットおよび/または補助駆動ユニットが配置されている。このために、各駆動ユニットのトルクが軸に伝達される。このために一般的には、紡績機の2つの作業ユニットの間の領域において、軸に歯車が位置固定されており、この歯車に駆動ユニットが作用する。
【0003】
しかし、特に、軸の延在長さに沿って配置され、それぞれ1つの補助駆動ユニットにより駆動される複数の歯車を備えた極めて長い軸の場合、過度の引張応力および/または圧縮応力が軸内と、ドラフト装置のローラのような、この軸に配置された構成部材とにおいてしばしば生じる。これにより、構成部材の摩耗が増大し、構成部材、特に軸に位置固定された歯車の損傷が生じる。さらに、一般的には、少なくとも軸の比較的に長い区分、時には軸全体を取り出さなければならないので、長い軸内に位置固定された歯車をメンテナンスまたは修理のために交換することは面倒かつ時間を消耗し、このことは紡績機の長期にわたる運転中断をもたらす。
【0004】
したがって、本発明の根底にある課題は、駆動ユニットと紡績機の回転する構成部材との間でトルクを伝達する装置と、紡績機用の駆動装置と、紡績機とを改良して、軸の駆動を、特に小さな望ましくない引張応力および/または圧縮応力で、ひいては構成部材の特に小さな摩耗で可能にし、装置および紡績機を特に確実に運転することができ、かつ特に容易かつ迅速にメンテナンスおよび修理することができるようにすることである。
【0005】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載のトルクを伝達する装置と、請求項11に記載の紡績機用の駆動装置と、請求項12に記載の紡績機とにより解決される。本発明の有利な変化形は従属請求項に記載されている。
【0006】
駆動ユニットと紡績機または紡績機に配置された構成部材、特にドラフト装置の回転する構成部材との間でトルクを伝達する本発明に係る装置は、駆動ユニットからのトルクを受ける歯列を備えた歯車構成部材と、それぞれ1つの回転する構成部材にトルクを伝達する2本の軸を有している。歯車構成部材は、歯列の両側に、2本の軸のうちの1本の軸にトルクを伝達する円錐形のプレス面を備えたそれぞれ1つの軸方向の延長部を有していて、円錐形のプレス面のそれぞれが、2本の軸のうちの1本の軸の収容部内に配置されていて、歯車構成部材と軸との間でトルクを伝達するプレス結合部を形成している。
【0007】
さらに、本発明は、紡績機、特に紡績機の、特に好適にはリング精紡機のドラフト装置用の駆動装置であって、モータ式の駆動ユニットと、駆動ユニットと紡績機または紡績機に配置された構成部材、特にドラフト装置の回転する構成部材との間でトルクを伝達する本発明に係る装置とを備えている紡績機用の駆動装置に関する。
【0008】
最終的に本発明は紡績機、特に紡績機、特に好適にはリング紡績機のドラフト装置であって、互いに対して同一に形成された複数の作業ユニットと、駆動ユニットと紡績機、または紡績機に配置された構成部材、特にドラフト装置の回転する構成部材との間でトルクを伝達する本発明に係る少なくとも1つの装置とを備え、1つの駆動箇所、特にトルクを伝達する装置の歯車構成部材へのトルク伝達が、2つの作業ユニットの間の中央で行われる紡績機に関する。
【0009】
歯車構成部材を両側でそれぞれ1本の軸と結合し、これにより紡績機の軸全体が個別の軸区分と、個別の軸区分の間に配置された少なくとも1つの歯車構成部材とにより形成されていて、複数の構成部材をプレス結合により互いに対して位置固定することは、一方では確実なトルク伝達を可能にし、他方では軸からの歯車構成部材の容易かつ迅速な分離も可能にするので、メンテナンスまたは修理を、迅速かつ長期にわたる運転中断なしに実施することができる。さらに、個別の構成部材を望ましくない引張応力および圧縮応力なしに互いに接して配置するプレス結合が可能であるので、装置ならびに全紡績機を特に少ない摩耗で運転することができる。
【0010】
トルクを伝達する装置は、基本的には、1つの箇所で回転もしくはトルクを受ける構成部材と、別の1つの箇所で回転もしくはトルクを引き渡す構成部材を有している任意のユニットであってよい。この場合、装置はトルクを変化させずに伝達することもできるし、トルクを変化させて伝達することもでき、このためにたとえば少なくとも1つの伝動装置段または変速を引き起こす別の構成部材を有していてよい。しかし好適には、トルクを伝達する装置は、トルクを変化させずに伝達するが、装置の上流側および/または下流側に少なくとも1つの伝動装置が配置されていてよい。さらに、トルクを伝達する装置は、任意の別の機能を有していてよく、トルクを伝達する装置は、たとえば同時に少なくとも軸の一方の側における軸の支承部を形成することができる。
【0011】
本発明によれば、トルクを伝達する装置は、駆動ユニット、特に駆動装置の1つの駆動ユニットのトルクを回転する構成部材に伝達するために形成されている。駆動装置の駆動ユニットは、第1には、回転駆動もしくはトルクを提供する装置であり、駆動ユニットとして電動モータが好まれる。駆動ユニットからのトルク伝達は、基本的には直接に、またはたとえば少なくとも1つの伝動装置および/または少なくとも1本の軸を介して間接的にも行うことができる。特に好適には、駆動ユニットと、トルクを伝達する装置との間のトルク伝達は、特に歯車または小歯車軸(Wellenritzel)を介して形状結合式に行われる。
【0012】
少なくとも1つの駆動ユニットを有する駆動装置は、基本的に、1つの共通の軸を介して紡績機の少なくとも1つの構成部材、好適には紡績機の複数の構成部材を駆動するために設けられている。極めて特に好適には、駆動装置は、1本の軸を介して、紡績機の各作業ユニットに配置された1つの構成部材を駆動する。駆動装置は、好適には駆動すべき軸の一方の端部に配置された1つの駆動ユニットおよび/または軸の延在長さに沿って配置された複数の駆動ユニットを有しているメイン駆動装置であってよい。代替的には、駆動装置は、特に軸の中央の領域に配置されている紡績機の好適には少なくとも1つのドラフト装置ローラ、特にドラフト装置ボトムローラ用の補助駆動装置であってよい。補助駆動装置は、特に好適には、メイン駆動装置を支援し、かつ/または極めて長い軸の捩れを阻止するために設けられている。しかし、メイン駆動装置を有しない、専ら補助駆動装置を備えた構成も考えられる。好適には、駆動装置は、少なくとも1つの伝動装置ユニット、特にメイン伝動装置および/または少なくとも1つの分配伝動装置も有している。特に好適には、駆動装置の各駆動ユニットに、1つのメイン伝動装置および2つの分配伝動装置が配置されている。
【0013】
紡績機は、基本的に、紡織繊維または紡織繊維から成る1本の糸を製造および/または加工する任意の機械であってよい。好適には、紡績機は、リング紡績機であり、特に好適には、紡績機またはドラフト装置または巻取り装置のような紡績機の構成部材には、本発明に係るトルクを伝達する少なくとも1つの装置、特に好適には、特に互いに対して同一である本発明に係るトルクを伝達する複数の装置が配置されている。紡績機は、好適にはそれぞれ1つの紡績ユニットを備えた複数の作業ユニットを有している。各作業ユニットは、特に好適には、固有のドラフト装置を有しているか、もしくは各紡績ユニットにそれぞれ1つのドラフト装置が前置されている。
【0014】
トルクを伝達する本発明に係る装置は、紡績機の任意の箇所に配置されていてよいが、好適には、回転する構成部材へのトルク伝達は、専ら2つの作業ユニットの間の中央で行われ、特に好適には、回転する構成部材に端部側の駆動装置が配置されていない。同様に特に好適には、本発明に係るトルクを伝達するそれぞれ1つの装置が配置されている複数の駆動箇所が、紡績機の複数の作業ユニットのうちの2つの作業ユニットの間にそれぞれ設けられている。しかし、基本的には、それぞれ隣合う作業ユニットの間に1つの駆動箇所が位置している必要はない。しかしこのことは、少なくともそれぞれ、2つ毎の作業ユニットの間の中央もしくは隣合う作業ユニットの2つ毎の結合部にこのような駆動箇所が設けられていないことが特に好適である場合にも該当し得る。
【0015】
本発明によれば、トルクを伝達する装置は、駆動ユニットからのトルクを受ける歯列を備えた歯車構成部材を有している。駆動ユニットからトルクを受けることは、駆動ユニット、特に駆動ユニットの出力軸から直接に行うことができるか、または1つまたは複数の構成部材、たとえば少なくとも1つの伝動装置ユニットおよび/または別の軸を介して間接的に行うことができる。概して、歯車構成部材は、基本的に、形状結合式にトルクを伝達する構成部材であり、このために好適には歯列、特に外側歯列を有している。特に好適には、歯車構成部材の歯列は、歯車構成部材の全周にわたって延びている。特に好適には、歯車構成部材は、歯車および/または小歯車軸を有していてよい。同様に好適には、歯列は、歯車構成部材の中央に、特に好適には歯車構成部材の中心長手方向軸線もしくは軸方向に関して中央に配置されている。本発明によれば、歯車構成部材は、2本の軸の間に配置されている。歯車構成部材の中心長手方向軸線と軸とは、特に好適には互いに平行に、極めて特に好適には一致して配置されている。
【0016】
両方の軸のうちのそれぞれ1本の軸に歯車構成部材からトルクを伝達するために、歯車構成部材は、本発明によれば、2つの軸方向の延長部を有している。軸方向の延長部は、歯車構成部材の中心長手方向軸線に沿って、かつ/または歯列の回転軸線に沿って延びている。好適には、各軸方向の延長部は、直接に、歯車構成部材の歯列を有する部分に続いている。同様に好適には、各軸方向の延長部は、円筒形の区分と、円錐形の区分とを有している。円筒形の区分は、特に好適には、歯列を有する部分に直接に接している。
【0017】
両方の軸方向の区分のそれぞれは、本発明によれば、円錐形のプレス面を有している。プレス面は、好適には、円錐形の区分の歯車構成部材の外面により形成される。さらに好適には、円錐形のプレス面は、歯車構成部材の全周にわたって延びている、かつ/または回転対称的な形状を有している。円錐形のプレス面は、好適にはそれぞれ軸方向の延長部の端部もしくは端部領域に配置されている。円錐形のプレス面の直径は、軸方向の延長部の端部に向かって減少する。
【0018】
本発明によれば、トルクを伝達する装置は、2本の軸を有している。第1の軸は、歯車構成部材の第1の側に配置されていて、第2の軸は、歯車構成部材の第2の側に配置されている。両方の側は、好適には互いに反対の側に位置している、かつ/または歯車構成部材の1つの端部の領域に配置されている。軸は、基本的に、第1には、駆動ユニットに基づく回転もしくはトルクを、トルクを伝達する装置を介して紡績機の別の構成部材に伝達する任意の構成部材または任意の構成群であってよく、任意の別の装置、特に伝動装置がその間に配置されていてよい。両方の軸のそれぞれは、好適には、ドラフト装置ローラ、特にドラフト装置ボトムローラもしくはドラフト装置シリンダを駆動するために設けられている。このためには、ドラフト装置ローラは、特に好適には直接に、かつ/または相対回動不能に軸に配置されている。極めて特に好適には、軸は回転する構成部材、特にドラフト装置ローラと一体的に形成されている。しかし同時に、軸は、トルクを伝達するか、もしくは回転する構成部材を駆動する、紡績機の任意の別の構成部材であってよい。
【0019】
本発明によれば、円錐形のプレス面を備えたそれぞれ1つの軸方向の延長部が、トルクを伝達するために対応する円錐形の形状を備えた軸の収容部内に位置固定されている。第1の円錐形のプレス面が、第1の軸の収容部内に配置されていて、第2の円錐形のプレス面が、第2の軸の収容部内に配置されている。収容部は、好適には、軸の一方の端部面に配置されている、かつ/または軸の軸方向に、もしくは回転軸線に沿って延びている。収容部は、円錐形の形状を有している。収容部は、好適には、歯車構成部材の円錐形のプレス面よりも長い。特に、各収容部は、プレス結合部を形成するために、円錐形のプレス面に対応する形状を有しているので、歯車構成部材から軸へのトルク伝達を行うことができる。
【0020】
本発明によれば、それぞれ1つの軸方向の延長部が、1本の軸の1つの収容部内に配置されていて、好適には、軸方向の延長部の、円錐形のプレス面を有する部分全体が収容部内に配置されている。歯車構成部材から軸にトルクを伝達するために、円錐形のプレス面と、収容部の対応する表面との間にプレス結合部が形成される。プレス結合部は、基本的に、少なくとも部分的に、好適には完全に力結合式の結合部であり、この力結合式の結合部では、円錐形のプレス面が、軸の収容部に摩擦力を介して結合されている。これは、たとえばテーパ結合部(Kegelverbindung)であってよい。特に好適には、力結合式の結合部を補う形状結合式および/または材料結合式の結合部は存在していない。さらに、歯車構成部材と、それぞれ1本の軸との間の結合は、好適には専ら円錐形のプレス面の領域において達成される。
【0021】
トルクを伝達する本発明に係る装置の好適な構成では、両方の軸において歯車構成部材を軸方向で位置固定するためにタイロッドが設けられている。タイロッドは、両端部にねじ山を有している。ねじ山は、軸のタイロッド収容部内の対応するねじ山内にそれぞれ位置固定可能であるか、もしくは位置固定されていて、これにより、それぞれの軸における歯車構成部材の確実かつ遊びのない位置固定が可能であると同時に、トルクの確実な伝達が確保される。タイロッドは、好適には両端部にねじ山を備えたロッド状の構成部材である。タイロッドのねじ山は、特に好適には雄ねじ山であり、極めて特に好適には、タイロッドの両方のねじ山は逆向きに形成されている。少なくともタイロッドのねじ山を有する端部は、同様に好適には同一のままの、つまり一定の直径もしくは円筒形の形状を有している。タイロッドは、基本的に任意の多数の構成部材から構成群として形成されていてよいが、一体的に形成されたタイロッドが好まれる。タイロッド収容部は、好適には、軸の軸方向で、タイロッドの端部もしくはタイロッドのねじ山を有する領域の長さよりも深い。軸のタイロッド収容部は、特に好適には孔であり、特に好適には同一のままの、つまり一定の直径を備えている。同様に好適には、タイロッド収容部は、タイロッドのねじ山に対応する雌ねじ山を有している。
【0022】
トルクを伝達する本発明に係る装置の好適な構成では、タイロッド収容部が、軸内で、軸方向の延長部のための収容部に対して同軸的に、かつ特に歯車構成部材の円錐形のプレス面の領域に配置されている。これにより、特に確実に位置調整された遊びのない配置を達成することができる。同様に好適には、タイロッド収容部は、中心に、かつ/または回転軸線に沿って延び、かつ/または軸の中心長手方向軸線に沿って配置されている。
【0023】
トルクを伝達する本発明に係る装置の有利な変化形によれば、タイロッドは、歯車構成部材のタイロッド孔内に配置されている。タイロッド孔は、好適には、歯車構成部材の中心長手方向軸線および/または回転軸線に沿って延びる孔として形成されていて、これにより、タイロッドに対する歯車構成部材の特に簡単にかつ同時に遊びのない配置を達成することができる。概して、タイロッドは、好適には歯車構成部材を貫通して配置されている。タイロッド孔は、第1には、任意の形状を有していてよく、長さにわたって同一の直径を備えた円筒形の形状が好まれる。タイロッドの容易なねじ込みおよび/または緊締のために、好適には軸の少なくとも1つの表面、特に好適には各軸の表面が、特に収容部の上側の表面区分において、もしくは収容部上の外側に、粗い表面構造を有している。
【0024】
歯車構成部材と、タイロッドとは、特に好適には2つの別個の構成部材である。両方の軸における歯車構成部材のできるだけ遊びのない配置を達成するために、タイロッドは、好適には、歯車構成部材のタイロッド孔内で軸方向に移動可能に配置されていて、かつ/または自由に回転可能であり、これにより構成部材間での応力の発生および/または伝達が効率的に回避される。特に好適には、タイロッドおよび/または歯車構成部材および/または両方の軸のうちの少なくとも1本の軸、特に好適には両方の軸が、1つの共通の中心長手方向軸線に沿って配置されている。さらに、タイロッドの直径は、ねじ山を有する端部において、好適にはタイロッド孔の直径よりも小さい。特に好適には、タイロッドの直径は、少なくとも、タイロッド孔内に配置されている領域において、場合によっては1つまたは複数の支持区分を除いて、タイロッド収容部の直径よりも小さい。極めて特に好適には、タイロッドは、歯車構成部材のタイロッド孔内に配置すべき領域において、少なくとも2つの、特に好適にはまさに2つの支持区分を有している。各支持区分は、好適には円筒形の形状を有しているか、もしくは特に好適にはタイロッド孔と同一の直径を有しているタイロッドの円筒形の区分であるので、タイロッド孔内におけるタイロッドの半径方向の位置固定が達成されると同時に、半径方向の可動性および/または回転可能性は維持されたままである。
【0025】
本発明の有利な1つの変化形によれば、歯車構成部材に、歯車構成部材、特にトルクを伝達する装置全体を紡績機に配置するために少なくとも1つの、好適には2つの軸受が配置されている。各軸受は、特に好適には部分的に歯車構成部材内に埋め込まれていて、極めて特に好適には、部分的に歯列の下に配置されている。これにより、スムーズかつ遊びのない構成および運転と同時に軸受の保護を達成することができる。好適には、軸受は両側で歯車構成部材に、特に歯車構成部材の両側かつ/または中心に対して対称的に、特に中心長手方向軸線に沿って配置されている。代替的または付加的には、軸受は、好適には完全にまたは少なくとも部分的に歯列の両側に配置されてもいる。さらに好適には、軸受は、歯車構成部材の表面上、好適には円筒形の表面区分上、特に好適には軸方向の延長部のそれぞれに位置固定されている。各軸受は、さらに、好適には歯車構成部材内で軸受の幅の10%~90%、特に好適には25%~75%、極めて特に好適には40%~60%、特に好適には50%だけ歯列内もしくは歯列の下に埋め込まれている。
【0026】
軸受のそれぞれは任意に構成されていてよいが、軸受がそれぞれ1つのラジアル軸受、特に好適にはラジアル-スラスト軸受であり、極めて特に好適には、軸のうちの1本の軸に対しても、紡績機の1つの構成部材に対しても支持されていると好適であり、これにより、紡績機における、かつ/または軸に対する歯車構成部材の遊びおよび応力のない配置を達成することができる。ラジアル軸受は、基本的に任意に構成されていてよい。ラジアル軸受、特にラジアル-スラスト軸受のラジアル軸受部分は、好適には転がり軸受、特に好適にはころ軸受である。ラジアル-スラスト軸受として形成された軸受は、特に好適には軸方向で軸に、特に軸の端面に当て付けられている。ラジアル-スラスト軸受のラジアル軸受は、好適には滑り軸受として形成されている。
【0027】
さらに、歯車構成部材の両方の円錐形のプレス面が互いに対して同一に形成されている、かつ/または特に歯車構成部材の軸方向で全長にわたって、特に歯車構成部材の中心長手方向軸線に対して同一の角度を有していると有利であり、これにより、特に簡単な製造ならびに両方の軸に対する歯車構成部材の方向に依存しない配置が可能になっているので、誤った組込みにより不都合な応力が発生することはない。好適には、両方の円錐形のプレス面は、互いに対して同一の長さ、幅を有していて、かつ/または互いに対して同一の直径を、円錐形のプレス面の始端部および/または終端部において有している。さらに、少なくともタイロッドおよび/または歯車構成部材および好適には装置全体が、鏡像対称的な構造を有していると特に好適である。構成部材または装置全体の構造は、特に好適には、構成部材または装置の中心長手方向軸線に対して中心かつ/または垂直に配置されている平面に対して鏡像対称的である。
【0028】
両方の軸の互いに対してできるだけ応力のない結合を達成することができるように、トルクを伝達する装置内でできるだけ少ない構成部材が互いに接して配置されていて、特に互いに対して運動可能であると有利であり、これにより、応力が発生してしまう結合箇所はできるだけ僅かにしか存在しない。したがって、タイロッドまたは歯車構成部材が一体的に形成されていると特に好適である。タイロッドおよび歯車構成部材がそれぞれ一体的に形成されていると特に好適である。
【0029】
トルクを伝達する本発明に係る装置の実施例を以下に図面に関連して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】トルクを伝達する装置の概略図である。
【0031】
トルクを伝達する装置1の図1に図示された構成は、歯車構成部材2と、2本の軸4a,4bとを有している。歯車構成部材2は、一体的かつ中心長手方向軸線を中心として回転対称的に形成されている。歯車構成部材2は、中間の区分に、別の構成部材、特に電動モータのような駆動ユニットからのトルクを受ける歯列3を有している。
【0032】
歯列3の両側には、軸方向の延長部5a,5bが直接に続いている。これらの延長部5a,5bは、中空円筒形の形状を有している。両方の軸方向の延長部5a,5bのそれぞれの端部には、端部に向かって減少する外径を備えた円錐形の領域が設けられているので、軸方向の延長部5a,5bの表面は、この領域において円錐形のプレス面6a,6bを形成する。歯車構成部材2全体は、両方の軸方向の延長部5a,5bの間の中心に対して鏡像対称的に形成されている。
【0033】
両方の軸4a,4bのそれぞれは、歯車構成部材2の軸方向の延長部5a,5bの端部のための収容部7a,7bを有している。収容部7a,7bは、円錐形の形状を有している。この円錐の形状は、歯車構成部材2の円錐形のプレス面6a,6bに適合されているので、それぞれ1つの軸方向の延長部5a,5bを、収容部7a,7b内に圧入することができ、これらの収容部7a,7bにおいて、歯車構成部材2と軸4a,4bとの間で直接にトルクを伝達するための摩擦結合式の相対回動不能な結合部を形成することができる。
【0034】
歯車構成部材2に軸4a,4bを軸方向で位置固定し、歯車構成部材2の円錐形のプレス面6a,6bと軸4,4bの収容部7a、7bの内部の表面との間のプレス結合のための圧力を形成するために、タイロッド8が設けられている。タイロッド8は、両端部の領域において雄ねじ山9を有していて、軸4a,4bは、雌ねじ山10を備えたタイロッド収容部11を有しているので、タイロッド8を、軸4a,4bのそれぞれにねじ締結することができる。
【0035】
タイロッド8は、雄ねじ山9の間の中央の領域において、歯車構成部材2のタイロッド孔12内に配置されていて、タイロッド8は、歯車構成部材2に対して軸方向で可動であり、かつタイロッド孔12の内部で回転することができる。タイロッド孔12内でのタイロッド8の遊びのない位置固定のために、タイロッド8は、2つの支持区分14を有している。これらの支持区分14は、円筒形の形状を有していて、支持区分14の外径は、タイロッド孔12の内径にほぼ一致する。
【0036】
一方では歯車構成部材2を軸4a,4bに対して軸方向で支持し、他方では歯車構成部材2を半径方向で紡績機の別の構成部材に対して位置固定することができるように、2つのラジアル-スラスト軸受13が軸方向の延長部5a,5b上に配置されている。この場合、ラジアル-スラスト軸受13のそれぞれは、その幅のほぼ半分だけ歯列3の下で歯車構成部材2内に埋め込まれて配置されている。さらに、ラジアル-スラスト軸受13のそれぞれは、この軸受が軸方向の一方の側で歯車構成部材2に対して支持されていて、他方の側で軸4a,4bの外面に対して支持されているように、配置されている。
【符号の説明】
【0037】
1 トルクを伝達する装置
2 歯車構成部材
3 歯列
4a,4b 軸
5a,5b 軸方向の延長部
6a,6b 円錐形のプレス面
7a,7b 収容部
8 タイロッド
9 タイロッドのねじ山
10 タイロッド収容部のねじ山
11 タイロッド収容部
12 タイロッド孔
13 軸受
14 支持区分
図1