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特許7605664車両用灯具の制御装置、車両用灯具の制御方法、車両用灯具システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】車両用灯具の制御装置、車両用灯具の制御方法、車両用灯具システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20241217BHJP
   F21V 9/14 20060101ALI20241217BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20241217BHJP
   F21S 41/153 20180101ALN20241217BHJP
   F21S 41/151 20180101ALN20241217BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241217BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20241217BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20241217BHJP
   F21W 102/14 20180101ALN20241217BHJP
【FI】
B60Q1/14 A
F21V9/14
F21V9/40 400
F21S41/153
F21S41/151
F21Y115:10
F21Y115:30
F21Y101:00 100
F21Y101:00 300
F21W102:14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021040216
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139713
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 弘明
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-016773(JP,A)
【文献】特開2016-179779(JP,A)
【文献】特開2009-220649(JP,A)
【文献】特開2020-100398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
F21V 9/14
F21V 9/40
F21S 41/153
F21S 41/151
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21Y 101/00
F21W 102/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具と、
前方車両の位置に応じた配光パターンの照射光を前記車両用灯具に形成させるための制御装置と、
を含む車両用灯具システムであって、
前記制御装置は、前記前方車両の位置に対応して減光範囲と光照射範囲を設定するとともに、前記前方車両の車幅方向での移動方向に対応して前記減光範囲の左右何れかに拡張減光範囲を設定し、当該減光範囲、光照射範囲及び拡張減光範囲を含んだ配光パターンの照射光を前記車両用灯具に形成させる制御信号を生成するものであり、
前記光照射範囲、前記減光範囲及び前記拡張減光範囲の各々に対応する照射光の明るさは、前記車幅方向で分割された複数のセグメントの各々に対する照射光の明るさを増減することによって設定されており、
前記拡張減光範囲の幅は、前記前方車両の車幅方向での移動速度が相対的に大きい場合に当該幅が相対的に大きく設定され、当該移動速度が相対的に小さい場合に当該幅が相対的に小さく設定され、
前記拡張減光範囲の明るさは、前記減光範囲に近い部分が相対的に暗く、前記減光範囲から遠い部分が相対的に明るくなるように設定され
前記拡張減光範囲に対応する前記セグメントの明るさは、変化前の状態から設定された明るさへ変化させる際に要する時間である徐変時間を、前記移動速度が大きいほど相対的に短く当該移動速度が小さいほど相対的に長く設定され、
前記複数のセグメントは、相対的に幅の小さい1つ以上の第1セグメントと、当該第1セグメントより幅の大きい1つ以上の第2セグメントと、当該第2セグメントより幅の大きい1つ以上の第3セグメントを少なくとも含み、
前記第1セグメントに対応する前記徐変時間は、前記第2セグメントに対応する前記徐変時間よりも短くなるように補正され、前記第3セグメントに対応する前記徐変時間は、前記第2セグメントに対応する前記徐変時間よりも長くなるように補正される、
車両用灯具システム
【請求項2】
車両用灯具と、
前方車両の位置に応じた配光パターンの照射光を前記車両用灯具に形成させるための制御装置と、
を含む車両用灯具システムであって、
前記制御装置は、
前記前方車両の位置に対応して減光範囲と光照射範囲を設定するとともに、前記前方車両の車幅方向での移動方向に対応して前記減光範囲の左右何れかに拡張減光範囲を設定する配光パターン設定部と、
前記減光範囲、前記光照射範囲及び前記拡張減光範囲を含んだ配光パターンの照射光を前記車両用灯具に形成させる制御信号を生成する制御信号生成部と、
を含み、
前記光照射範囲、前記減光範囲及び前記拡張減光範囲の各々に対応する照射光の明るさは、前記車幅方向で分割された複数のセグメントの各々に対する照射光の明るさを増減することによって設定されており、
前記拡張減光範囲の幅は、前記前方車両の車幅方向での移動速度が相対的に大きい場合に当該幅が相対的に大きく設定され、当該移動速度が相対的に小さい場合に当該幅が相対的に小さく設定され、
前記拡張減光範囲の明るさは、前記減光範囲に近い部分が相対的に暗く、前記減光範囲から遠い部分が相対的に明るくなるように設定され、
前記拡張減光範囲に対応する前記セグメントの明るさは、変化前の状態から設定された明るさへ変化させる際に要する時間である徐変時間を、前記移動速度が大きいほど相対的に短く当該移動速度が小さいほど相対的に長く設定され、
前記複数のセグメントは、相対的に幅の小さい1つ以上の第1セグメントと、当該第1セグメントより幅の大きい1つ以上の第2セグメントと、当該第2セグメントより幅の大きい1つ以上の第3セグメントを少なくとも含み、
前記第1セグメントに対応する前記徐変時間は、前記第2セグメントに対応する前記徐変時間よりも短くなるように補正され、前記第3セグメントに対応する前記徐変時間は、前記第2セグメントに対応する前記徐変時間よりも長くなるように補正される、
車両用灯具システム
【請求項3】
前記車両用灯具は、前記制御装置から前記制御信号を受けて動作するADBユニットを含んで構成されており、
前記ADBユニットは、光源と液晶素子と偏光板と投影レンズを含んで構成されるユニット、選択的に点灯/消灯させることが可能な複数のLEDを含んで構成されるユニット、又はレーザー素子と当該レーザー素子からの光を走査する可動反射板を含んで構成されるユニットの何れかを含んで構成される、
請求項1又は2に記載の車両用灯具システム
【請求項4】
前記拡張減光範囲は、前記移動速度が基準値以下となった場合前記光照射範囲に変更される、
請求項1~の何れか1項に記載の車両用灯具システム
【請求項5】
前記移動速度は、前記前方車両の位置の変化を角速度で表したものである、
請求項1~の何れか1項に記載の車両用灯具システム
【請求項6】
前記移動速度は、前記前方車両の左右方向の単位時間当りの移動距離である、
請求項1~の何れか1項に記載の車両用灯具システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具の制御装置及び同制御方法、車両用灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の前方に存在する先行車や対向車の位置に応じて光照射範囲と減光範囲(ないし非照射範囲)を設定して自車両前方への光照射を行う配光制御技術が知られている(例えば、特開2020-26248号公報参照)。このような配光制御技術は、ADB(Adaptive Driving Beam)制御とも呼ばれ、自車両前方の視認性の向上に資するものである。
【0003】
ところで、例えば先行車の車線変更や対向車の接近などに伴って自車両から見た先行車等の左右方向の位置が変化する際に、その左右方向での移動速度が大きい場合には光照射範囲と減光範囲の制御が間に合わずに先行車等に対して一時的にグレア(幻惑)を与える可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-26248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示に係る具体的態様は、先行車や対向車に対するグレアを与える可能性をより低くすることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示に係る一態様の車両用灯具システムは、
車両用灯具と、
前方車両の位置に応じた配光パターンの照射光を前記車両用灯具に形成させるための制御装置と、
を含む車両用灯具システムであって、
前記制御装置は、前記前方車両の位置に対応して減光範囲と光照射範囲を設定するとともに、前記前方車両の車幅方向での移動方向に対応して前記減光範囲の左右何れかに拡張減光範囲を設定し、当該減光範囲、光照射範囲及び拡張減光範囲を含んだ配光パターンの照射光を前記車両用灯具に形成させる制御信号を生成するものであり、
前記光照射範囲、前記減光範囲及び前記拡張減光範囲の各々に対応する照射光の明るさは、前記車幅方向で分割された複数のセグメントの各々に対する照射光の明るさを増減することによって設定されており、
前記拡張減光範囲の幅は、前記前方車両の車幅方向での移動速度が相対的に大きい場合に当該幅が相対的に大きく設定され、当該移動速度が相対的に小さい場合に当該幅が相対的に小さく設定され、
前記拡張減光範囲の明るさは、前記減光範囲に近い部分が相対的に暗く、前記減光範囲から遠い部分が相対的に明るくなるように設定され
前記拡張減光範囲に対応する前記セグメントの明るさは、変化前の状態から設定された明るさへ変化させる際に要する時間である徐変時間を、前記移動速度が大きいほど相対的に短く当該移動速度が小さいほど相対的に長く設定され、
前記複数のセグメントは、相対的に幅の小さい1つ以上の第1セグメントと、当該第1セグメントより幅の大きい1つ以上の第2セグメントと、当該第2セグメントより幅の大きい1つ以上の第3セグメントを少なくとも含み、
前記第1セグメントに対応する前記徐変時間は、前記第2セグメントに対応する前記徐変時間よりも短くなるように補正され、前記第3セグメントに対応する前記徐変時間は、前記第2セグメントに対応する前記徐変時間よりも長くなるように補正される、
車両用灯具システムである。
【0007】
上記構成によれば、先行車や対向車に対するグレアを与える可能性をより低くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の車両用灯具システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、前方車両の左右方向への移動時の角速度について説明するための図である。
図3図3は、ADBユニットの構成例を示す図である。
図4図4は、コントローラを実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。
図5図5(A)~図5(C)は、車両用灯具システムの動作について概略的に説明するための図である。
図6図6は、角速度と拡張減光範囲の幅との関係及び角速度と徐変時間の関係を例示する図である。
図7図7は、配光パターンを形成するために個別に明るさを制御可能な領域であるセグメントの構成例を示す図である。
図8図8は、各領域におけるセグメント幅の条件と、各領域における徐変時間の補正値について説明するための図である。
図9図9は、車両用灯具システムの全体的な動作手順を示すフローチャートである。
図10図10は、図9に示すステップS14の詳細な動作手順を示すフローチャートである。
図11図11は、図10に示す動作に伴って実行されるタイマー監視の動作手順を示すフローチャートである。
図12図12(A)及び図12(B)は、車両用灯具システムによる配光制御の一例を説明するための図である。
図13図13(A)及び図13(B)は、車両用灯具システムによる配光制御の一例を説明するための図である。
図14図14(A)及び図14(B)は、車両用灯具システムによる配光制御の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、一実施形態の車両用灯具システムの構成を示すブロック図である。図示の車両用灯具システムは、撮像装置10、コントローラ11、一対の前照灯(車両用灯具)12L、12Rを含んで構成されている。
【0010】
撮像装置10は、自車両の前方空間を撮影してその画像を生成する。また、撮像装置10は、撮影して得られた画像に対して所定の画像認識処理を行うことによって、先行車両や対向車両の特徴点(例えば、前照灯や尾灯の位置)などを検出する。この撮像装置10は、例えば自車両のフロントガラス内側の上方に設置される。撮像装置10は、例えば画像を生成するカメラと、その画像に対して画像認識処理を行う画像処理プロセッサを含んで構成されている。
【0011】
コントローラ11は、一対の前照灯12L、12Rの動作を制御する。このコントローラ11は、機能ブロックとして、車両位置取得部20、角速度算出部21、配光パターン設定部22、制御信号生成部23を備える。コントローラ11は、後述の図4に示すように、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有するコンピュータシステムを用い、このコンピュータシステムにおいて所定の動作プログラムを実行させることによって実現される。このコントローラ11が「制御装置」に対応する。
【0012】
車両位置取得部20は、撮像装置10から前方車両の位置を表す信号ないしデータを取得する。ここでいう前方車両とは、例えば対向車両、先行車両などである。前方車両の位置は、例えば自車両位置(撮像装置10の位置)を基準にした相対的な角度によって表される。
【0013】
角速度算出部21は、前方車両の左右方向(車幅方向)における単位時間当たりの移動量である移動速度を示す物理量としての角速度を算出する。角速度の算出方法の詳細については後述する。
【0014】
配光パターン設定部22は、ハイビームの照射可能範囲について、車両位置取得部20によって取得される前方車両の位置に対応した範囲である減光範囲(ないし非照射範囲)としてそれ以外の範囲である光照射範囲を含んだ配光パターンを設定する。また、配光パターン設定部22は、前方車両の移動方向に応じて減光範囲の左右いずれかに拡張減光範囲を設定する。また、配光パターン設定部22は、前方車両の移動方向や移動時の角速度を加味して光照射範囲、減光範囲、拡張減光範囲を設定するとともに、各範囲に対応する照射光の明るさやその変化に要する時間を設定する。
【0015】
制御信号生成部23は、配光パターン設定部22によって設定される配光パターンに対応した制御信号を生成して各前照灯12L、12RのADBユニット31へ供給する。また、制御信号生成部23は、ロービームの明るさに対応した制御信号を生成して各前照灯12L、12Rのロービームユニット30へ供給する。
【0016】
各前照灯12L、12Rは、車両の前部の左右に1つずつ設けられ、車両の前方に光照射を行うためのものである。各前照灯12L、12Rは、それぞれロービームユニット30とADBユニット31を有する。
【0017】
ロービームユニット30は、例えば光源バルブとリフレクタを有しており、コントローラ11による制御信号を受けて動作し、光源バルブから出射する光をリフレクタによって反射させ、この反射光の一部を遮光板で遮光することにより、自車両から相対的に近い領域を主に照射するロービームを形成するための光を生成する。
【0018】
ADBユニット31は、コントローラ11から制御信号を受けて動作し、自車両から相対的に遠い領域を主に照射するハイビームを形成するための光を生成する。本実施形態のハイビームは、上記したADB制御が行われるものである。このようなADBユニット31としては、例えば後述の図3に例示するような液晶素子を用いるタイプのADBユニットを用いることができる。なお、ADBユニット31として、複数のLEDを配列してそれらLEDを選択的に点灯/消灯させることで配光パターンを形成するタイプのADBユニットや、レーザー素子からの光を可動反射板によって走査してその際にレーザー素子を高速に点消灯させることで配光パターンを形成するタイプのADBユニットなど、種々の形式のADBユニットを用いることもできる。
【0019】
図2は、前方車両の左右方向への移動時の角速度について説明するための図である。図2では、自車両100と前方車両102を上方から観察した様子が模式的に示されている。なお、ここでは前方車両102の例として先行車両を示しているが対向車両でも同様である。図示のように、前方車両102の相対的な位置は、例えば自車両100の所定位置101を基準とした角度によって表すことができる。ここで、所定位置101は、例えば本実施形態では撮像装置10の設置位置であり、概ね、自車両100の車幅方向の中心に対応している。また、前方車両102の位置は、例えば前方車両102の車幅方向の中心に対応して定めることができる。例えば、撮像装置10から得られる前方車両102に関する情報が前方車両102の左右の尾灯ないし前照灯の位置の相対的角度である場合には、それら左右の角度の平均値を前方車両102の位置に対応した角度としてもよい。あるいは、前方車両102の左右いずれかの尾灯ないし前照灯の位置の相対的角度をそのまま用いてもよいし、その他、前方車両102の特定位置(例えばナンバープレート位置)を示す角度を用いることもできる。そして、所定時間での前方車両102の位置の変化量である移動角度θcをその所定時間で除算することで、前方車両102の移動速度としての角速度を求めることができる。角速度算出部21は、上記のようにして前方車両102の左右方向における移動速度に対応する角速度を求める。
【0020】
図3は、ADBユニットの構成例を示す図である。図3に示すADBユニット31は、光源150、液晶素子151、一対の偏光板152a、152b、投影レンズ153を含んで構成されている。
【0021】
光源150は、例えば青色光を放出する発光素子(LED)に黄色蛍光体を組み合わせて構成された白色光LEDを含んで構成されている。光源150は、例えば、マトリクス状あるいはライン状に配列された複数の白色光LEDを備える。なお、光源150としてはLEDのほかに、レーザー、さらには電球や放電灯など車両用に一般的に使用されている光源が使用可能である。なお、光源150から液晶素子151へ至る経路上に他の光学系(例えば、レンズや反射鏡、さらにはそれらを組み合わせたもの)が存在してもよい。
【0022】
液晶素子151は、例えば、それぞれ個別に制御可能な複数の画素部(光変調領域)を有しており、コントローラ11からの制御信号に応じて動作するドライバ(図示省略)によって与えられる液晶層への印加電圧の大きさに応じて各画素部の透過率が可変に設定される。この液晶素子151に光源150からの光が入射し、透過することにより、上記した光照射範囲、減光範囲、拡張減光範囲に対応した明暗を有する像が形成される。また、各画素部での透過率を変化させる際の時間を可変に設定することにより、後述する徐変時間を制御することができる。
【0023】
一対の偏光板152a、152bは、例えば互いの偏光軸を略直交させており、液晶素子151を挟んで対向配置されている。各偏光板152a、152bとしては、例えば一般的な有機材料(ヨウ素系、染料系)からなる吸収型偏光板を用いることができる。また、耐熱性を重視したい場合には、ワイヤーグリッド型偏光板を用いることも好ましい。また、吸収型偏光板とワイヤーグリッド型偏光板を重ねて用いてもよい。
【0024】
投影レンズ153は、液晶素子151を透過する光によって形成される像(明暗を有する像)をヘッドライト用配光になるように広げて自車両の前方へ投影するものであり、適宜設計されたレンズが用いられる。本実施形態では、反転投影型のプロジェクターレンズが用いられる。
【0025】
図4は、コントローラを実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。図示のコンピュータシステムは、相互に通信可能に接続されたCPU201、ROM202、RAM203、記憶装置204、外部インタフェース(I/F)205を含んで構成されている。CPU201は、ROM202から読み出される基本制御プログラムをベースにして動作し、記憶装置204に格納されたプログラム(アプリケーションプログラム)206を読み出してこれを実行することにより、上記したコントローラ11の機能を実現する。RAM203は、CPU201の動作時に使用させるデータを一時的に記憶する。記憶装置204は、例えばハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性のデータ記憶装置であり、プログラム206など種々のデータを格納する。外部インタフェース205は、CPU201と外部装置を接続するインタフェースであり、例えば撮像装置10とCPU201との接続に用いられる。
【0026】
図5(A)~図5(C)は、車両用灯具システムの動作について概略的に説明するための図である。各図とも、自車両の前方空間の様子が模式的に示されている。なお、ここでは前方車両102の一例として先行車両を示すが前方車両102は対向車両であってもよい。
【0027】
図5(A)に示すように、車両用灯具システムは、その基本的な動作として、前方車両102の位置に対応した減光範囲250と、それ以外の光照射範囲251、252を含んだ配光パターンの照射光を形成する。減光範囲250は、前方車両102の位置に応じて少なくとも前方車両102の幅と同等かそれよりも広い幅に設定される。光照射範囲251、252は、減光範囲250の左右に設けられる。このような配光パターンの照射光は、コントローラ11によって動作制御されるADBユニット31によって形成される。
【0028】
また、図5(B)に示すように、前方車両102の左右方向(車幅方向)の位置が変化した際には、変化後の位置に応じて減光範囲250と光照射範囲251、252のそれぞれの位置と幅が変更される。このとき、前方車両102の左右方向での移動方向と移動速度(角速度)に応じて、減光範囲250の右側または左側(前方車両102の移動方向に対応した側)に、減光範囲253が追加される。以降の説明では、この追加される減光範囲を「拡張減光範囲」という。拡張減光範囲253は、前方車両102とは重ならない範囲であって前方車両102の移動方向に拡張的に設けられる減光範囲であり、その幅は、前方車両102の位置変化度合いである角速度の大きさに応じて可変に設定される。具体的には、角速度が大きいほど拡張減光範囲253の幅が大きく設定される。なお、前方車両102の移動が実質的になくなった際(角速度が一定値以下に安定した場合)には、図5(C)に示すように拡張減光範囲253は解除されて光照射範囲251(又は252)の一部に変更される。
【0029】
拡張減光範囲253は、前方車両102の左右方向での移動に対応して減光範囲250の設定(変更)が間に合わない場合を想定して設けられる予備的な減光範囲である。また、拡張減光範囲253は、前方車両102に近い側ほど暗く(すなわち減光度合いが大きく)、前方車両102から遠い側ほど明るい(すなわち減光度合いが小さい)というグラデーション状に形成される。このような明るさ(減光度合い)の調整は、上記した液晶素子151による領域ごとの光変調によって透過光の透過率を増減することで実現される。
【0030】
このようにグラデーション状の配光パターンとすることにより、例えば前方車両102が急激に移動した場合であっても前方車両102に与えるグレアを低減することができる。また、例えば前方車両102のふらつき等によってその位置の変化が頻繁に生じたような場合にも、遮光範囲250の一部が拡張減光範囲253の一部(相対的に暗い部分)に切り替わることになるので、遮光範囲250の一部が光照射範囲251(又は252)の一部に切り替わる場合に比べて光量(照度)の変化が少なくなる。それにより、自車両や前方車両102の運転者等に与える違和感を軽減できる。
【0031】
図6は、角速度と拡張減光範囲の幅との関係及び角速度と徐変時間の関係を例示する図である。上記したように、拡張減光範囲の幅(以下「グラデーション幅」という。)は、前方車両の左右方向での移動速度としての角速度に応じて、角速度が大きいほどグラデーション幅が大きく設定される。ここでは、グラデーション幅は、自車両の位置を基準とした角度で表す。例えば、角速度nが2.0rad/s以上である場合にはグラデーション幅Dを2.0degに設定することが好ましい。また、角速度nが1.5rad/s以上2.0rad/s未満である場合にはグラデーション幅Dを1.5degに設定することが好ましい。また、角速度nが1.5rad/s未満である場合にはグラデーション幅Dを1.0degに設定することが好ましい。
【0032】
なお、これらは一例であり数値条件は適宜調整できる。また、角速度に応じてグラデーション幅を連続的に変化させて設定してもよい。このように、角速度に応じてグラデーション幅を可変に設定することで、前方車両の左右への移動が大きい場合にはそれに備えてグラデーション幅を広めにしてグレアをより確実に防ぐことを可能とし、他方、前方車両の移動が小さい場合にはグラデーション幅を狭くして光照射範囲を増やすことができるので前方の視認性を向上させることができる。つまり、前方車両の挙動に応じた適切なグラデーション幅を設定することができる。
【0033】
また、徐変時間は、角速度が大きいほど短い時間に設定される。ここで「徐変時間」とは、拡張減光範囲に設定された部分の明るさ(照度)がそれ以前の状態から変化する際に要する時間をいう。多くの場合、拡張減光範囲に設定される以前の状態は減光範囲であり、その場合の徐変時間は、減光範囲に対応する状態(例えば照度0ないしそれに準じる状態)から拡張減光範囲に対応する状態へ変化する際に要する時間である。
【0034】
例えば、角速度nが2.0rad/s以上である場合には徐変時間を400msに設定することが好ましい。また、角速度nが1.5rad/s以上2.0rad/s未満である場合には徐変時間を600msに設定することが好ましい。また、角速度nが1.5rad/s未満である場合には徐変時間を800msに設定することが好ましい。なお、これは一例であり数値条件は適宜調整できる。また、角速度に応じて徐変時間を連続的に変化させて設定してもよい。
【0035】
このように、角速度に応じて徐変時間を可変に設定することで、前方車両の左右への移動が大きい場合にはそれに備えて拡張減光範囲を速やかに形成してグレアをより確実に防ぐことを可能となる。他方、前方車両の移動が小さい場合には拡張減光範囲をゆっくり形成することでこの範囲における照度の低下を遅めにすることができるので前方の視認性を向上させることができる。つまり、前方車両の挙動に応じた適切な徐変時間を設定することができる。
【0036】
図7は、配光パターンを形成するために個別に明るさを制御可能な領域であるセグメントの構成例を示す図である。ここでは、自車両前方の所定位置(例えば、数十m前方)においてスクリーンを想定した場合にそのスクリーン上に形成されるセグメントを示す。自車両前方の中心oを含んで左右に一定幅の領域(狭域)R1には、相対的に幅の小さい複数のセグメント(図示の例では20個のセグメント)301が含まれている。領域R1の左側と右側に設けられた一定幅の領域(中域)R2には、それぞれ、セグメント301よりは幅の大きい複数のセグメント(図示の例では各7個のセグメント)302が含まれている。なお、セグメント301が「第1セグメント」に対応し、セグメント302が「第2セグメント」に対応する。
【0037】
領域R2の左側と右側に設けられた一定幅の領域(広域)R3には、それぞれ、セグメント301、302より幅の大きい複数のセグメント(図示の例では各3個のセグメント)303、304が含まれている。各2個のセグメント303は、各セグメント304よりも幅が小さい。各セグメント301、302、303、304は、図中左右方向に配列されており、中心oに近い領域のセグメントほどその幅(セグメント幅)が小さくなるように設定されている。なお、セグメント303、304が「第3セグメント」に対応する。
【0038】
なお、領域R1内では各セグメント301のセグメント幅を等しく設定し、領域R2内では各セグメント302のセグメント幅を等しく設定しているがそれぞれ領域内でも各セグメントの幅を異なる大きさに設定してもよい。例えば、中心oに近いほどセグメント幅を小さくすることで、自車両正面ないしそれに近い領域における配光パターンの制御をより細やかに行うことができる。
【0039】
図8は、各領域におけるセグメント幅の条件と、各領域における徐変時間の補正値について説明するための図である。ここでは、セグメント幅Sは、自車両の位置を基準とした角度で表す。例えば、領域R1に含まれる各セグメント301は、セグメント幅を0.5degより小さく設定することが好ましい。また、領域R2に含まれる各セグメント302は、セグメント幅を0.5deg以上0.9deg未満に設定することが好ましい。また、領域R3に含まれる各セグメント303、304は、セグメント幅を0.9deg以上に設定することが好ましい。なお、これは一例であり数値条件は適宜調整できる。
【0040】
また、上記した角速度に応じて可変に設定される徐変時間は、さらに、各領域R1~R3に属する各セグメントごとにその長さを補正することが好ましい。例えば、領域R1に属する各セグメント301については、角速度に応じて設定された徐変時間Tを0.8倍する補正を行い、この補正後の徐変時間を用いることが好ましい。また、領域R2に属する各セグメント302については、角速度に応じて設定された徐変時間Tの1.0倍、つまりそのままの値を用いることが好ましい。また、領域R3に属する各セグメント303、304については、角速度に応じて設定された徐変時間Tを1.2倍する補正を行い、この補正後の徐変時間を用いることが好ましい。このような補正を行うことにより、領域R1に属する相対的に幅の小さい各セグメント301についてはより速やかに明るさを変更可能となり前方車両へグレアを与える可能性をより低減できるとともに、領域R3に属する相対的に幅の大きい各セグメント303、304については明るさの急激な変化を緩和し、自車両や前方車両の運転者へ違和感を与える可能性をより低減できる。
【0041】
図9は、車両用灯具システムの全体的な動作手順を示すフローチャートである。図10は、図9に示すステップS14の詳細な動作手順を示すフローチャートである。また図11は、図10に示す動作に伴って実行されるタイマー監視の動作手順を示すフローチャートである。なお、各動作手順については、結果に矛盾や不整合を生じない限りにおいて各処理ステップの順序を入れ替えることや他の処理ステップを追加することも可能であり、そのような態様も排除されない。
【0042】
まず、図9を参照しながら全体的な動作手順を説明する。
コントローラ11の車両位置取得部20は、撮像装置10から前方車両の位置を取得する(ステップS11)。この取得された前方車両の位置に応じて配光パターン設定部22により光照射範囲と減光範囲が設定され、それら光照射範囲と減光範囲に対応した制御信号が制御信号生成部23によって生成されて各前照灯12L、12RのADBユニット31へ供給される。それにより、前方車両の位置に応じた配光パターンによる照射光が自車両前方に形成される(ステップS12)。
【0043】
また、配光パターン設定部22は、ステップS12において、以前の状態が減光範囲であって光照射範囲に変更した部分について、その明るさ(照度)を光照射範囲に対応する明るさへ変化させるのに要する徐変時間を設定する。ここでは、領域R1~R3のいずれにおいても例えば1000msに設定される。制御信号生成部23は、この設定された徐変時間により照射光の明るさが変化するように制御信号を生成して各前照灯12L、12RのADBユニット31へ供給する。それにより、光照射範囲に変更された部分が徐変時間に応じた明るさの変化を生じる(ステップS13)。
【0044】
また、配光パターン設定部22は、角速度算出部21によって算出される角速度に応じて拡張減光範囲を設定するとともに、拡張減光範囲に含まれる各セグメントの徐変時間を設定する。制御信号生成部23は、この設定された徐変時間により照射光の明るさが変化するように制御信号を生成して各前照灯12L、12RのADBユニット31へ供給する。それにより、拡張減光範囲の各セグメントが徐変時間に応じた明るさの変化を生じる(ステップS14)
【0045】
上記したステップS14の詳細な動作手順について図10を参照しながら説明する。
角速度算出部21は、車両位置取得部20により取得される前方車両の位置に基づいて、前方車両の左右方向の移動速度としての角速度を算出する(ステップS21)。
【0046】
角速度が一定値より大きい場合、すなわち前方車両が左右方向へ移動中とみなせる場合に(ステップS22;NO)、配光パターン設定部22は、角速度に応じて拡張減光範囲の幅(グラデーション幅)と徐変時間を設定する(ステップS23)。また、配光パターン設定部22は、拡張減光範囲に含まれる各セグメントごとに、各セグメントの属する領域に応じて徐変時間を補正する(ステップS24)。なお、グラデーション幅、徐変時間の具体的な設定方法、補正方法については上記した通りである。
【0047】
また、配光パターン設定部22は、拡張減光範囲におけるグラデーション配光の終了時期を計時するための図示しないタイマーによるタイマー監視動作を停止させる(ステップS25)。
【0048】
制御信号生成部23は、配光パターン設定部22により設定され、補正された各セグメントごとの徐変時間に対応して制御信号を生成して各前照灯12L、12RのADBユニット31へ供給する。それにより、拡張減光範囲のグラデーション配光制御が実行される(ステップS26)。その後、ステップS21へ戻る。
【0049】
他方で、角速度が一定値以下である場合、すなわち前方車両の左右方向への移動がないとみなせる場合に(ステップS22;YES)、配光パターン設定部22は、グラデーション配光の終了時間を計時するためのタイマー監視動作を図示しないタイマーに実行させる(ステップS27)。なお、すでにタイマーが動作中であった場合にはそのまま実行させる
【0050】
グラデーション制御の終了時期が到来していない場合には(ステップS28;NO)、ステップS21へ戻る。また、グラデーション制御の終了時期が到来した場合には、配光パターン設定部22は、拡張減光範囲を光照射範囲に変更する。このときの明るさの徐変時間は例えば1000msに設定される。
【0051】
制御信号生成部23は、配光パターン設定部22により設定された各セグメントごとの徐変時間に対応して制御信号を生成して各前照灯12L、12RのADBユニット31へ供給する。それにより、拡張減光範囲のグラデーション配光制御が解除され、この範囲が光照射範囲に変更される(ステップS29)。その後、ステップS21へ戻る。つまり、前方車両の左右方向への移動がないとみなせる状態となってから一定期間が経過すると、拡張減光範囲が光照射範囲に変更されて照射光が形成される。
【0052】
図示しないタイマーによるタイマー監視動作について図11を参照しながら詳細に説明する。タイマーは、上記ステップS27を経ることにより現在が計時中である場合に(ステップS31)、カウントダウンを継続する(ステップS32)。そして、一定期間が経過してカウント満了となると(ステップS33;YES)、カウントを停止する(ステップS34)。他方、計時中でない場合(ステップS31;NO)またはカウント満了ではない場合(ステップS33;NO)にはステップS31へ戻る。これにより、上記ステップS25を経ないまま一定期間が経過すれば上記ステップS28からステップS29へ進むことになる。他方、上記ステップS25を経た場合には計時がストップすることになり、次に上記ステップS25を経るまではカウントダウンが進まないことになる。
【0053】
図12(A)及び図12(B)は、車両用灯具システムによる配光制御の一例を説明するための図である。ここでは、先行車両である前方車両102が自車両から比較的遠くに存在しており、この前方車両102が車線変更等で右方向へ移動する場合の配光制御例が示されている。図12(A)は前方車両102の移動前、図12(B)は前方車両102の移動後(ないし移動中)に対応している。移動前においては、前方車両102の位置に応じた減光範囲250が設けられ、その両側に光照射範囲251、252が設けられている。移動後においては、減光範囲250、各光照射範囲251、252の範囲が変更されているとともに、減光範囲250の右側に拡張減光範囲253が設けられている。
【0054】
前方車両102の位置が自車両から遠い場合には移動時の角速度が比較的小さい値となるので、拡張減光範囲253の幅(グラデーション幅)は比較的小さく設定される。図示の例では、拡張減光範囲253は、領域R1内の複数のセグメント301で形成されている。なお、図示は省略しているが明るさのグラデーション表現がなされているものとする。また、角速度が小さいので徐変時間が長く設定されることになり、明るさの変化も緩やかになる。ただし、本例では各セグメント301が領域R1に属するものであるので、その分だけ徐変時間が短く補正される。このような配光制御により、主に自車両の運転者への違和感が軽減される。
【0055】
例えば、グラデーション幅が1.0degに設定され、かつ拡張減光範囲253の設けられる位置が領域R1に含まれており各セグメント301の幅が0.3degであるとすると、4つのセグメント301を用いて拡張減光範囲253の照射光が形成される。そして、各セグメント301のうち、減光範囲250に近いものから順に、例えば各セグメント301の明るさが最大値(例えば光照射範囲での明るさ)の18%、37%、56%、75%の明るさに設定される。それにより、減光範囲250に近いほど暗く、遠ざかるほど明るいグラデーション配光が実現される。
【0056】
図13(A)及び図13(B)は、車両用灯具システムによる配光制御の一例を説明するための図である。ここでは、先行車両である前方車両102が自車両から比較的近くに存在しており、この前方車両102が車線変更等で右方向へ移動する場合の配光制御例が示されている。図13(A)は前方車両102の移動前、図13(B)は前方車両102の移動後(ないし移動中)に対応している。移動前においては、前方車両102の位置に応じた減光範囲250が設けられ、その両側に光照射範囲251、252が設けられている。移動後においては、減光範囲250、各光照射範囲251、252の範囲が変更されているとともに、減光範囲250の右側に拡張減光範囲253が設けられている。
【0057】
前方車両102の位置が自車両に近い場合には移動時の角速度が比較的大きい値となるので、拡張減光範囲253の幅(グラデーション幅)は比較的大きく設定される。図示の例では、拡張減光範囲253は、領域R2、R3の複数のセグメント302、303で形成されている。なお、図示は省略しているが明るさのグラデーション表現がなされているものとする。また、角速度が大きいので徐変時間が短く設定されることになり、明るさの変化も速くなる。さらに、領域R3の各セグメント303については徐変時間が長く補正される。それにより、自車両の運転者への違和感が軽減されるとともに前方車両102へグレアを与える可能性も低減する。
【0058】
図14(A)及び図14(B)は、車両用灯具システムによる配光制御の一例を説明するための図である。ここでは、対向車両である前方車両102と自車両がすれ違う場合の配光制御例が示されている。図14(A)は前方車両102の移動前、図14(B)は前方車両102の移動後(ないし移動中)に対応している。移動前においては、前方車両102の位置に応じた減光範囲250が設けられ、その両側に光照射範囲251、252が設けられている。移動後においては、減光範囲250、各光照射範囲251、252の範囲が変更されているとともに、減光範囲250の右側に拡張減光範囲253が設けられている。
【0059】
前方車両102の位置が自車両に近い場合には移動時の角速度が比較的大きい値となるので、拡張減光範囲253の幅(グラデーション幅)は比較的大きく設定される。図示の例では、拡張減光範囲253は、領域R3の複数のセグメント303、304で形成されている。なお、図示は省略しているが明るさのグラデーション表現がなされているものとする。また、角速度が大きいので徐変時間が短く設定されることになり、明るさの変化も速くなる。ただし、領域R3の各セグメント303、304については徐変時間が長く補正される。それにより、自車両の運転者への違和感が軽減されるとともに前方車両102へグレアを与える可能性も低減する。
【0060】
このように、本実施形態によれば先行車両や対向車両に対するグレアを与える可能性をより低くすることが可能になる。
【0061】
なお、本開示は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態では前方車両の左右方向での移動速度として角速度を用いていたが、左右方向の単位時間当たりの移動距離を用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10:撮像装置、11:コントローラ、12L、12R:前照灯、20:車両位置取得部、21:角速度演算部、22:配光パターン設定部、23:制御信号生成部、30:ロービームユニット、31:ADBユニット、100:自車両、102:前方車両、250:減光範囲、251、252:光照射範囲、253:拡張減光範囲、301、302、303、304:セグメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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