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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】鉄道車両用トラバーサ
(51)【国際特許分類】
   B61J 1/10 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B61J1/10 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021041401
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141195
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 佑一
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-106681(JP,A)
【文献】特開2008-279888(JP,A)
【文献】特開平04-153474(JP,A)
【文献】特開2011-235828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0086576(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両または車両台車を搭載するための基台を備え、前記基台が備える複数の横行用車輪により、地上に複数本が平行に敷設された横行用レールを走行して、前記基台に搭載した鉄道車両または車両台車を移送する鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記横行用レールは、3本以上が敷設されていること、
前記基台は、複数の分割基台が、前記横行用レールの枕木方向に隣接して並ぶことにより構成されていること、
前記分割基台は、前記横行用レールの枕木方向に隣接する前記分割基台と、前記横行用レールの軌道方向と平行な方向に回転軸を有するヒンジ部材を介して接続されていること、
前記複数の分割基台には、前記横行用車輪を備える分割基台である第1分割基台と、前記横行用車輪を備えない分割基台である第2分割基台と、が含まれ、
前記第2分割基台は、前記第1分割基台に前記ヒンジ部材を介して支持され、宙に浮いた状態であること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記分割基台のそれぞれは、複数本が平行に敷設された前記横行用レールのうち、枕木方向の一番外側の2本に挟まれて敷設されている前記横行用レールの近傍において、前記横行用レールの枕木方向に隣接する前記分割基台と接続されていること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記分割基台は、前記横行用レールの本数よりも1つ少ない数が、前記横行用レールの枕木方向に隣接して並ぶことにより、前記基台を構成していること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記回転軸を中心として前記分割基台が回動することで、前記基台が、複数敷設される前記横行用レールの走行面の高低差に追従し、前記横行用車輪の全てが、前記走行面に接地すること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両または車両台車を搭載するための基台を備え、基台が備える複数の横行用車輪により、地上に複数本が平行に敷設された横行用レールを走行して、基台に搭載した鉄道車両または車両台車を移送する鉄道車両用トラバーサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の点検、整備等(以下、単に検修と言う)を行う検修庫においては、検修庫の床面に複数の検修用レールが平行に敷設されている。そして、複数の検修用レールの内の1つの検修用レールに載置された鉄道車両を、他の検修用レールにトラバースさせる場合がある。
【0003】
このトラバースを行うために、例えば特許文献1に開示されるような鉄道車両用トラバーサが用いられる。この鉄道車両用トラバーサは、鉄道車両を搭載するための基台を備え、基台には鉄道車両が走行可能なレールが設けられている。さらに、基台は横行用車輪を備えている。鉄道車両用トラバーサは、この横行用車輪によって、検修用レールに対して直交する方向に敷設された横行用レールを走行することが可能である。すなわち、鉄道車両用トラバーサは、検修用レールに対して直交する方向に移動可能である。なお、横行用車輪としては、駆動輪と従動輪とが用いられることが一般的である。駆動輪は、駆動源を有しており、鉄道車両用トラバーサを自走させるためのものである。従動輪は、駆動源を有しておらず、基台に搭載された鉄道車両や車両台車の荷重を支えるためのものである。
【0004】
このような鉄道車両用トラバーサを用いて、以下のように鉄道車両をトラバースすることが出来る。例えば、鉄道車両を、第1の検修用レールから、第1の検修用レールと平行に敷設される第2の検修用レールへのトラバースを行うとすれば、まず、鉄道車両用トラバーサの基台のレールと第1の検修用レールとの枕木方向の位置を一致させた上で、鉄道車両を第1の検修用レールから基台に引き込む。基台に引き込まれた鉄道車両は、基台のレールに沿って走行させ、基台の所定の位置に停止させることで、基台への搭載が完了される。鉄道車両の基台への搭載が完了した後、鉄道車両用トラバーサを、レールに対して直交する方向に、鉄道車両用トラバーサのレールと第2の検修用レールとの枕木方向の位置が一致する位置まで横行用レールを走行させる。最後に、鉄道車両を基台から第2の検修用レールに降ろすことで、トラバースが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-185905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
横行用レールは、3本以上が平行に敷設されることがある。このような場合に重要となるのは、それぞれの横行用レールの走行面の高さの管理である。 なぜならば、それぞれの横行用レールの走行面の高さに高低差が生じると、鉄道車両用トラバーサが備える横行用車輪の全てが、横行用レールに接地しないおそれがあるからである。
【0007】
例えば、3本以上の横行用レールが平行に敷設された場合に、横行用レールの枕木方向(横行用レールのレール直角方向を、説明の便宜上、検修用レールと同様「枕木方向」と記す)の一番外側の2本(以下、外側横行用レールと言う)に挟まれて敷設される横行用レール(以下、内側横行用レールと言う)の走行面の高さが、外側横行用レールの走行面の高さよりも低くなっていると、外側横行用レールの走行面に接地する横行用車輪によって基台が支えられることとなり、内側横行用レールを走行するための横行用車輪が、内側横行用レールの走行面に接地しないおそれがある(逆に、内側横行用レールの走行面の高さが、外側横行用レールの走行面の高さよりも高くなると、外側横行用レールを走行するための横行用車輪が、外側横行用レールの走行面に接地しないおそれがある)。よって、基台が備える横行用車輪の全てが横行用レールの走行面に接地させるためには、それぞれの横行用レールの走行面の高さが可能な限り一致されていることが望ましい。
【0008】
そのような中、複数敷設される横行用レールの、それぞれの走行面の高低差が、±5mmの範囲内に収まるように管理されるのが一般的である。なぜならば、それぞれの横行用レールの走行面の高低差が±5mmの範囲内に収まっていれば、鉄道車両用トラバーサの機能に問題が生じない範囲で基台がしなり、高低差を吸収することが出来るからである。高低差を吸収することが出来れば、横行用車輪の全てを走行面に接地させることが出来る。
【0009】
しかし、横行用レールの老朽化が進むと、それぞれの横行用レールの走行面の高さに、数十mm程度の高低差が生じる場合がある。このような高低差が生じると、上記した基台のしなりでは高低差を吸収することが出来ず、複数ある横行用車輪の内、横行用レールの走行面に接地しない横行用車輪が出てくる。 接地していない横行用車輪があると、基台に搭載した鉄道車両や車両台車の質量を支えることが出来ず、基台に過度な応力が負荷されるおそれがある。そうすると、基台に、鉄道車両用トラバーサの機能に有害な変形が生じるおそれがある。また、接地していない横行用車輪が駆動輪であれば、駆動輪が空回りするため、鉄道車両用トラバーサの走行に支障をきたし、効率良く鉄道車両や車両台車の移送を行うことが出来なくなる。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、複数敷設される横行用レールの走行面の高低差を吸収し、横行用車輪の全てを横行用レールの走行面に接地させることが可能な鉄道車両用トラバーサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両用トラバーサは、次のような構成を有している。
(1)鉄道車両または車両台車を搭載するための基台を備え、前記基台が備える複数の横行用車輪により、地上に複数本が平行に敷設された横行用レールを走行して、前記基台に搭載した鉄道車両または車両台車を移送する鉄道車両用トラバーサにおいて、前記横行用レールは、3本以上が敷設されていること、前記基台は、複数の分割基台が、前記横行用レールの枕木方向に隣接して並ぶことにより構成されていること、前記分割基台は、前記横行用レールの枕木方向に隣接する前記分割基台と、前記横行用レールの軌道方向と平行な方向に回転軸を有するヒンジ部材を介して接続されていること、前記複数の分割基台には、前記横行用車輪を備える分割基台である第1分割基台と、前記横行用車輪を備えない分割基台である第2分割基台と、が含まれ、前記第2分割基台は、前記第1分割基台に前記ヒンジ部材を介して支持され、宙に浮いた状態であること、を特徴とする。
【0012】
(2)(1)に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、前記分割基台のそれぞれは、複数本が平行に敷設された前記横行用レールのうち、枕木方向の一番外側の2本に挟まれて敷設されている前記横行用レールの近傍において、前記横行用レールの枕木方向に隣接する前記分割基台と接続されていること、を特徴とする。
【0013】
(3)(1)または(2)に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、前記分割基台は、前記横行用レールの本数よりも1つ少ない数が、前記横行用レールの枕木方向に隣接して並ぶことにより、前記基台を構成していること、を特徴とする。
【0014】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、前記回転軸を中心として前記分割基台が回動することで、前記基台が複数敷設される前記横行用レールの走行面の高低差に追従し、前記横行用車輪の全てが、前記走行面に接地すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の鉄道車両用トラバーサは、基台が、複数の分割基台が横行用レールの枕木方向に隣接して並ぶことにより構成されている。さらに、分割基台は、横行用レールの枕木方向に隣接する分割基台と、横行用レールの軌道方向と平行な方向に回転軸を有するヒンジ部材を介して接続されている。つまり、複数ある分割基台のそれぞれが、隣接する分割基台に対して、回転軸を中心に回動可能に連結されている。よって、複数本敷設される横行用レールの、それぞれの走行面に高低差が生じたとしても、基台は、回転軸を中心として分割基台が回動することで機械的に変形し、横行用車輪の全てが走行面に接地するように、走行面の高低差に追従することが出来る。具体的には、例えば、内側横行用レールの走行面の高さが、外側横行用レールの走行面の高さよりも低くなった場合には、分割基台が回転軸を中心として回動して、基台が、横行用レールの軌道方向から見たときに横行用レール側に膨出した弓なり状に変形することで、横行用レールの走行面の高低差を吸収する。一方で、例えば、内側横行用レールの走行面の高さが、外側横行用レールの走行面の高さよりも高くなった場合には、基台が、横行用レールの軌道方向から見たときに横行用レールとは反対側に膨出した弓なり状に変形することで、横行用レールの走行面の高低差を吸収するのである。
【0016】
よって、本発明の鉄道車両用トラバーサによれば、複数敷設される横行用レールの走行面の高低差を吸収し、横行用車輪の全てを横行用レールの走行面に接地させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサの正面図である。
図2】本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサの側面図である。
図3図1のA‐A断面図であり、基台を屋根部側から見た図である。
図4図3中の部分Bの部分拡大図であり、ヒンジ部材の一部を部分断面図で表したものである。
図5図4のE‐E断面図である。
図6図3中の部分Cの部分拡大図であり、駆動輪の構成を示す部分断面図である。
図7図6のF‐F断面図である。
図8図3中の部分Dの部分拡大図であり、従動輪の構成を示す部分断面図である。
図9図8のG‐G断面図である。
図10】両ツバ車輪型の従動輪の断面図である。
図11】複数敷設される横行用レールの走行面の高さに高低差が生じた場合の、鉄道車両用トラバーサの状態を図示したものである。
図12】複数敷設される横行用レールの走行面の高さに高低差が生じた場合の、鉄道車両用トラバーサの状態を図示したものである。
図13】複数敷設される横行用レールの走行面の高さに高低差が生じた場合の、鉄道車両用トラバーサの状態を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る鉄道車両用トラバーサの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサ100の正面図である。図2は、本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサ100の側面図である。図3は、図1のA‐A断面図であり、基台101を屋根部103側から見た図である。図4は、図3中の部分Bの部分拡大図であり、ヒンジ部材180の一部を部分断面図で表したものである。図5は、図4のE‐E断面図である。図6は、図3中の部分Cの部分拡大図であり、駆動輪160Dの構成を示す部分断面図である。図7は、図6のF‐F断面図である。図8は、図3中の部分Dの部分拡大図であり、従動輪170Bの構成を示す部分断面図である。図9は、図8のG‐G断面図である。図10は、両ツバ車輪型の従動輪170Dの断面図である。
【0019】
本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサ100は、鉄道車両10(図2参照)の検修を行う検修庫内の地面20(地上の一例)に、平行にかつ等間隔に敷設された4本の横行用レール150A,150B,150C,150D(図1参照)を走行するものである。横行用レール150A,150B,150C,150Dは、検修庫の床面に複数敷設された検修用レール(不図示)に対して直交する方向に敷設されている。これにより、鉄道車両用トラバーサ100は、複数の検修用レールの内の1つの検修用レールに載置された鉄道車両10を搭載した後、横行用レール150A,150B,150C,150Dを走行することで、鉄道車両10を他の検修用レールにトラバースさせることが出来る。なお、以下の説明においては、4本の横行用レール150A,150B,150C,150Dの個別の事項を説明する場合を除き、単に横行用レール150という。
【0020】
鉄道車両用トラバーサ100は、図1および図2に示すように、基台101と、基台101の短手方向(図2の左右方向)の両端部から垂直に立ち上げられた一対の側壁部102と、一対の側壁部102の上部端に横架された屋根部103とからなる。また、鉄道車両用トラバーサ100は、短手方向の一方の端部(図2の右側の端部)に、運転室114を有している。運転室114内には制御装置115(図3参照)が設けられており、この制御装置115を操作することで、鉄道車両用トラバーサ100を、横行用レール150上で走行させることが可能となっている。さらにまた、鉄道車両用トラバーサ100の長手方向(図1中の左右方向)の両端部には、端部開口105A,105Bが設けられており、端部開口105A,105Bのどちら側からでも鉄道車両用トラバーサ100に鉄道車両10を搬入し、基台101に搭載することが出来る。
【0021】
基台101は、横行用レール150の本数よりも1つ少ない3台の分割基台111A,111B,111Cにより構成されている。さらに、基台101は、横行用レール150を走行するための8つの横行用車輪を備えている。この横行用車輪とは、4個の駆動輪160A,160B,160C,160D(図3参照)および4個の従動輪170A,170B,170C,170D(図3参照)を指す。なお、以下の説明においては、3台の分割基台111A,111B,111Cの個別の事項を説明する場合を除き、単に分割基台111と言い、4個の駆動輪160A,160B,160C,160Dの個別の事項を説明する場合を除き、単に駆動輪160と言い、4個の従動輪170A,170B,170C,170Dの個別の事項を説明する場合を除き、単に従動輪170と言う。
【0022】
分割基台111A,111B,111Cのそれぞれは、図3に示すように、略矩形状に形成された枠体に床面112A,112B,112Cを構成する床板が接合されることで構成されている。そして、分割基台111A,111B,111Cが横行用レール150の枕木方向(以下、単に枕木方向という)に隣接して並び、後述するヒンジ部材180により接続されている。これにより、基台101が矩形状に構成されている。
【0023】
3台の分割基台111の、それぞれの枕木方向の長さは、基台101を枕木方向におおよそ3等分する長さに設定されている。具体的には、分割基台111Aと分割基台111Cとは、枕木方向の長さが同一であり、分割基台111Aは、横行用レール150Aと横行用レール150Bとを横架するような長さに設定され、分割基台111Cは、横行用レール150Cと横行用レール150Dとを横架するような長さに設定されている。分割基台111Aと分割基台111Cとに挟まれる分割基台111Bは、枕木方向の長さが、分割基台111A,111Cよりも短く、横行用レール150Bと横行用レール150Cとの間に収まるような長さに設定されている。
【0024】
分割基台111は、枕木方向に隣接する分割基台111とヒンジ部材180を介して接続されている。具体的には、分割基台111Aと分割基台111Bとが枕木方向に隣接しており、分割基台111Aの分割基台111B側の端面1131と、分割基台111Bの分割基台111A側の端面1132とが、横行用レール150の軌道方向(以下、単に軌道方向という)に2つ並ぶヒンジ部材180により接続されている。また、分割基台111Bと分割基台111Cとが枕木方向に隣接しており、分割基台111Bの分割基台111C側の端面1133と、分割基台111Cの分割基台111B側の端面1134とが、軌道方向に2つ並ぶヒンジ部材180により接続されている。なお、隣接する分割基台111同士がヒンジ部材180によって接続されている箇所は、横行用レール150B,150Cの上側近傍であって、横行用レール150B,150Cの分割基台111B側に位置するようにされている。
【0025】
ヒンジ部材180は、図4に示すように、第1回動部材181と、第2回動部材184と、回転軸188と、からなる。
【0026】
第1回動部材181は、平板状のベース体182を有している。ベース体182の、分割基台111に接する面(図4中の端面1133に接する面)とは反対側の面には、当該面に対して直角に、一対の第1結合部183A,183Bが立設されている。第1結合部183A,183Bのそれぞれは、軌道方向に第1結合部183A,183Bを貫通する挿通孔183aを有している。そして、挿通孔183aには、ブッシュ部材187が取り付けられている。ブッシュ部材187の内周面187aは、挿通孔183aと同軸上に位置している。
【0027】
第2回動部材184は、平板状のベース体185を有している。ベース体185の分割基台111に接する面(図4中の端面1134に接する面)とは反対側の面には、当該面に対して直角に、4つの第2結合部186A,186B,186C,186Dが立設されている。第2結合部186A,186B,186C,186Dのそれぞれは、軌道方向に第2結合部186A,186B,186C,186Dを貫通する挿通孔1861を有している。
【0028】
第1結合部183Aは、の第2結合部186Aと第2結合部186Bとの間に位置し、第1結合部183Bは、第2結合部186Cと第2結合部186Dとの間に位置している。加えて、ブッシュ部材187の内周面187aと第2結合部186A,186B,186C,186Dの挿通孔1861が同軸上に位置している。これにより、ブッシュ部材187の内周面187aと挿通孔1861に、軌道方向と平行な方向に回転軸188を挿通することが可能となっている。
【0029】
回転軸188は、軸方向の両端部の内の一方の端部(図4中の上側の端部)に切欠き部188aを備えている。切欠き部188aは、図5に示すように、回転軸188の軸心に対して対称に2つ設けられており、この2つの切欠き部188aのそれぞれには、平板状の抜け止め部材189がはめ合わされている。そして、抜け止め部材189は第2結合部186Aにボルト190により固定されている。これにより、回転軸188は、ブッシュ部材187の内周面187aと挿通孔1861に挿通された状態で固定されている。回転軸188が、ブッシュ部材187の内周面187aと挿通孔1861に挿通されていることで、第1回動部材181と第2回動部材184とは、一方に対して他方が回動可能に結合された状態となっている。
【0030】
以上のようなヒンジ部材180は、第1回動部材181が、隣接して並ぶ分割基台111のうちの一方の分割基台111に結合され、第2回動部材184が、他方の分割基台111に結合される。これにより、分割基台111は、隣接する分割基台111に対して、回転軸188を中心に回動可能に連結されている。具体的には、例えば、図4に示すように、隣接して並ぶ分割基台111Bと分割基台111Cのうちの一方の分割基台111Bの端面1133に、第1回動部材181のベース体182が、ボルト191により結合される。そして、他方の分割基台111Cの端面1134に、第2回動部材184のベース体185が、ボルト191により結合されている。これにより、分割基台111Bと分割基台111Cとが、一方に対して他方が、回転軸188を中心に回動可能に結合されている。また、隣接して並ぶ分割基台111Aと分割基台111Bも、ヒンジ部材180によって同様に結合されているため、一方に対して他方が、回転軸188を中心に回動可能である。このように、分割基台111が回転軸188を中心として回動可能となることで、基台101は機械的に変形することが可能となっている。
【0031】
また、分割基台111Aと分割基台111Cとは、図3に示すように、それぞれ四隅に横行用車輪(駆動輪160A,160B,160C,160Dおよび従動輪170A,170B,170C,170D)を備えている。具体的には、分割基台111Aは、枕木方向の両端部のうち、端部開口105A側の端部に、運転室114の側から順に、駆動輪160A、従動輪170Aが、軌道方向に並んで設けられている。この駆動輪160Aと従動輪170Aとは、横行用レール150Aの走行面151に接地するものである。さらに、分割基台111Aは、枕木方向の両端部のうち、分割基台111B側の端部に、運転室114の側から順に、駆動輪160B、従動輪170Bが、軌道方向に並んで設けられている。この駆動輪160Bと従動輪170Bとは、横行用レール150Bの走行面151に接地するものである。また、分割基台111Cは、枕木方向の両端部のうち、分割基台111B側の端部に、運転室114の側から順に、駆動輪160C、従動輪170Cが、軌道方向に並んで設けられている。この駆動輪160Cと従動輪170Cとは、横行用レール150Cの走行面151に接地するものである。さらに、分割基台111Cは、枕木方向の両端部のうち、端部開口105B側の端部に、運転室114の側から順に、駆動輪160D、従動輪170Dが、軌道方向に並んで設けられている。この駆動輪160Dと従動輪170Dとは、横行用レール150Dの走行面151に接地するものである。
【0032】
上記の通り分割基台111Aと分割基台111Cが横行用車輪を有する一方で、分割基台111Bは横行用車輪を有していない。つまり、分割基台111Bは横行用レール150に接地しておらず、枕木方向の両端部が隣接する分割基台111A,111Cと結合されることで、宙に浮いた状態となっている。鉄道車両10が基台101に搭載された際、鉄道車両10の車両台車が位置するのは、分割基台111Aおよび分割基台111C上であるため、鉄道車両10の質量は、横行用車輪を有する分割基台111Aと分割基台111Cとが横行用レール150に接地することで支える。よって、分割基台111Bが宙に浮いた状態であっても、基台101が鉄道車両10の質量を支える上で問題は無い。
【0033】
駆動輪160は、それぞれ駆動源162を有している。具体的には、例えば、図6に示す駆動輪160Dを例に説明をすると、駆動源162の回転軸163には、カップリング164を介して第1ギヤ165が接続されている。この第1ギヤ165は、駆動輪160Dと回転軸161を同一とする第2ギヤ166とかみ合っている。このため、駆動源162の回転軸163が回転することで、その回転力が回転軸161に伝わり、駆動輪160Dが回転する。駆動輪160Dは、図7に示すように、横行用レール150Dの走行面151に接地しているため、駆動源162により回転されることで、横行用レール150D上を走行することが可能である。駆動輪160A,160B,160Cも、駆動輪160Dと同様に、それぞれ駆動源162により回転可能となっているため、それぞれ横行用レール150A,150B,150C上を走行可能である。以上のように、駆動輪160A,160B,160C,160Dが、横行用レール150A,150B,150C,150D上を走行可能であるため、鉄道車両用トラバーサ100は、横行用レール150上で自走することが出来る。なお、基台101に鉄道車両10を搭載した状態での鉄道車両用トラバーサ100の走行速度は、30m~50m/minである。
【0034】
4個の従動輪170は、駆動輪160によって鉄道車両用トラバーサ100が横行用レール150上を走行するに従って、横行用レール150上で回転する。これにより、鉄道車両用トラバーサ100の横行用レール150上の走行を滑らかにしている。また、4個の従動輪170のそれぞれは、横行用レール150に接地することで、鉄道車両用トラバーサ100の質量および基台101に搭載される鉄道車両10の質量を支えている。
【0035】
この4個の従動輪170A,170B,170C,170Dのうち、従動輪170B,170Cは、従動輪170B,170Cのそれぞれに隣接して配設されるロータリーエンコーダ171を用いて鉄道車両用トラバーサ100の走行距離を検出することが可能となっている。図8および図9に示す従動輪170Bを例に説明すると、従動輪170Bは、回転軸を同じくする滑車174を有している。滑車174には、チェーン172が巻回されており、当該チェーン172は、ロータリーエンコーダ171のディスク173にも巻回されている。よって、鉄道車両用トラバーサ100が走行するに従って従動輪170Bが回転されると、その回転力が滑車174、チェーン172によって、ロータリーエンコーダ171のディスク173に伝えられ、ディスク173が回転する。そのディスク173の回転量に基づき、ロータリーエンコーダ171は、鉄道車両用トラバーサ100の走行距離を検出することが可能となっている。従動輪170Cも、従動輪170Bと同様に、隣接して配設されるロータリーエンコーダ171によって鉄道車両用トラバーサ100の走行距離を検出することが可能となっている。
【0036】
4個の従動輪170A,170B,170C,170Dのうち、従動輪170A,170Dは、鉄道車両用トラバーサ100が脱線することを防止している。図10に示す従動輪170Dを例に説明すると、従動輪170Dは、枕木方向の両端部にフランジ部175を有する両ツバ車輪型となっている。従動輪170Dが横行用レール150Dに接地されると、フランジ部175により走行面151を挟む形となるため、従動輪170Dが横行用レール150Dから脱輪してしまうことを防止している。そして、従動輪170Aも、従動輪170Dと同様に両ツバ車輪となっているため、従動輪170Aが横行用レール150Aから脱輪してしまうことを防止している。従動輪170A,170Dが横行用レール150A,150Dから脱輪してしまうことを防止することで、鉄道車両用トラバーサ100の脱線が防止される。
【0037】
また、分割基台111A,111B,111Cのそれぞれの床面112A,112B,112Cには、図3に示すように、一対のレール107A,107B,107Cが、枕木方向の両端部のうちの一方の端部から他方の端部まで敷設されている。このレール107Aとレール107Bとレール107Cとは、レール107A,107B,107Cの枕木方向で位置が一致しているとともに、軌間が同一であるため、分割基台111Aと分割基台111Bと分割基台111Cとが接続されることによって、端部開口105Aから端部開口105Bまでの一連のレールを形成している。
【0038】
また、レール107A,107B,107Cは、横行用レール150の軌道方向と直角に敷設されている。つまり、レール107A,107B,107Cは、不図示の検修用レールと平行である。さらに、レール107A,107B,107Cの軌間は検修用レールと同一とされている。よって、検修用レールから鉄道車両用トラバーサ100に引き込まれた鉄道車両10は、レール107A,107B,107C上を走行し、基台101上の所定位置まで移動することが出来る。
【0039】
分割基台111A,111B,111Cは、短手方向(図2の左右方向)の両端部には、床面112A,112B,112Cに対して垂直に立ち上げられた一対の分割側壁202A,202B,202Cを備える。分割側壁202Aと、分割側壁202Bと、分割側壁202Cとは、基台101の短手方向で位置が一致しており、分割基台111Aと、分割基台111Bと、分割基台111Cとが接続されることによって、鉄道車両用トラバーサ100の側壁部102を構成している。
【0040】
分割基台111A,111B,111Cは、一対の分割側壁202A,202B,202Cの上部端に横架された分割屋根203A,203B,203Cを備える。分割屋根203Aと、分割屋根203Bと、分割屋根203Cとは、図1に示すように、基台101からの高さ寸法D11が一致しており、分割基台111Aと、分割基台111Bと、分割基台111Cとが接続されることによって、鉄道車両用トラバーサ100の屋根部103を構成している。
【0041】
以上のような構成を有する鉄道車両用トラバーサ100は、基台101が、複数の分割基台111が横行用レール150の枕木方向に隣接して並ぶことにより構成されている。さらに、分割基台111は、横行用レール150の枕木方向に隣接する分割基台111と、横行用レール150の軌道方向と平行な方向に回転軸188を有するヒンジ部材180を介して接続されている。つまり、複数ある分割基台111のそれぞれが、隣接する分割基台111に対して、回転軸188を中心に回動可能に連結されている。よって、複数本敷設される横行用レール150の、それぞれの走行面151に高低差が生じたとしても、基台101は、回転軸188を中心として分割基台111が回動することで機械的に変形し、横行用車輪の全てが走行面151に接地するように、走行面151の高低差に追従することが出来る。図11から図13を用いて、具体的に説明する。図11から図13は、複数敷設される横行用レール150の走行面151の高さに高低差が生じた場合の、鉄道車両用トラバーサ100の状態を図示したものである。以下に図11から図13の各状態についてより詳細に説明する。
【0042】
図11は、4本の横行用レール150の内、枕木方向の一番外側の横行用レール150Aと横行用レール150D(この2本の横行用レール150を総称して外側横行用レールと言う)に挟まれて敷設される横行用レール150Bと横行用レール150C(この2本の横行用レール150を総称して内側横行用レールと言う)の走行面151の高さが、外側横行用レールの走行面151の高さよりも、例えば50mm低くなった場合の、鉄道車両用トラバーサ100の状態を図示したものである。なお、図11では、横行用レール150Bと横行用レール150Cの走行面151の高さが低くなっていることが分かりやすいよう、横行用レール150Bと横行用レール150Cが地面20に沈み込んだ状態で図示している。
【0043】
図11に示すように内側横行用レールの走行面151の高さが、外側横行用レールの走行面151の高さよりも低くなると、分割基台111Aが、重力により、駆動輪160Aおよび従動輪170Aを横行用レール150Aに接地させるとともに、駆動輪160Bおよび従動輪170Bを横行用レール150Bに接地させようと、基台101の枕木方向の中央部に向かって下り坂となるように傾斜する。加えて、分割基台111Cが、重力により、駆動輪160Dおよび従動輪170Dを横行用レール150Dに接地させるとともに、駆動輪160Cおよび従動輪170Cを横行用レール150Cに接地させようと、基台101の枕木方向の中央部に向かって下り坂となるように傾斜する。分割基台111Aおよび分割基台111Cの傾斜は、分割基台111Aおよび分割基台111Cが、ヒンジ部材180の回転軸188を中心に、分割基台111Bに対して回動することで実現されるものである。このとき、2本の内側横行用レールの走行面151の高さは同一であるため、分割基台111Aの分割基台111B側の端部と、分割基台111Cの分割基台111B側の端部は同一の高さにある。よって、それぞれの端部に接続されている分割基台111Bは水平状態が保たれている。
【0044】
以上のように、内側横行用レールの走行面151の高さが、外側横行用レールの走行面151の高さよりも低くなった場合でも、基台101は、分割基台111Aおよび分割基台111Cが分割基台111Bに対して回動して傾斜することで、横行用レール150の軌道方向から見て、横行用レール150側(図11において下側)に膨出した弓なり状となり、横行用レール150の高低差に追従することが出来る。なお、基台101に搭載される鉄道車両10は、車体と台車の間に介在する枕ばねにより、分割基台111A,111Cの傾斜を吸収可能である。
【0045】
次に、図12は、内側横行用レールの走行面151の高さが、外側横行用レールの走行面151の高さよりも、例えば50mm高くなった場合の鉄道車両用トラバーサ100の状態を図示したものである。なお、図12では、横行用レール150Bと横行用レール150Cの走行面151の高さが高くなっていることが分かりやすいよう、横行用レール150Bと横行用レール150Cが地面20から浮いた状態で図示している。
【0046】
図12に示すように内側横行用レールの走行面151の高さが、外側横行用レールの走行面151の高さよりも高くなると、分割基台111Aが、重力により、駆動輪160Aおよび従動輪170Aを横行用レール150Aに接地させるとともに、駆動輪160Bおよび従動輪170Bを横行用レール150Bに接地させようと、基台101の枕木方向の中央部に向かって上り坂となるように傾斜する。加えて、分割基台111Cが、重力により、駆動輪160Dおよび従動輪170Dを横行用レール150Dに接地させるとともに、駆動輪160Cおよび従動輪170Cを横行用レール150Cに接地させようと、基台101の枕木方向の中央部に向かって上り坂となるように傾斜する。分割基台111Aおよび分割基台111Cの傾斜は、図11に示した場合と同様に、分割基台111Aおよび分割基台111Cが、ヒンジ部材180の回転軸188を中心に、分割基台111Bに対して回動することで実現されるものである。このとき、2本の内側横行用レールの走行面151の高さは同一であるため、分割基台111Aの分割基台111B側の端部と、分割基台111Aの分割基台111B側の端部は同一の高さにある。よって、それぞれの端部に接続されている分割基台111Bは水平状態が保たれている。
【0047】
以上のように、内側横行用レールの走行面151の高さが、外側横行用レールの走行面151の高さよりも高くなった場合でも、基台101は、分割基台111Aおよび分割基台111Cが分割基台111Bに対して回動して傾斜することで、横行用レール150の軌道方向から見て、横行用レール150とは反対側(図12において上側)に膨出した弓なり状となり、横行用レール150の高低差に追従することが出来る。なお、基台101に搭載される鉄道車両10は、車体と台車の間に介在する枕ばねにより、分割基台111A,111Cの傾斜を吸収可能である。
【0048】
次に、図13は、横行用レール150Bの走行面151の高さが、外側横行用レールの走行面151の高さよりも、例えば50mm高くなり、かつ、横行用レール150Cの走行面151の高さが、外側横行用レールの走行面151の高さよりも、例えば50mm低くなった場合、すなわち、横行用レール150Bの走行面151の高さが、横行用レール150Cの走行面151の高さよりも100mm高くなった場合(内側横行用レール同士で走行面151の高さに高低差が生じた場合)の、鉄道車両用トラバーサ100の状態を図示したものである。なお、図13では、横行用レール150Bの走行面151の高さが高くなっていることが分かりやすいよう、横行用レール150Bが地面20から浮いた状態で図示し、横行用レール150Cの走行面151の高さが低くなっていることが分かりやすいよう、横行用レール150Cが地面20に沈み込んだ状態で図示している。
【0049】
図13に示すように、横行用レール150Bの走行面151の高さが外側横行用レールの走行面151の高さよりも高くなり、かつ、横行用レール150Cの走行面151の高さが外側横行用レールの走行面151の高さよりも低くなると、分割基台111Aは、重力により、駆動輪160Aおよび従動輪170Aを横行用レール150Aに接地させるとともに、駆動輪160Bおよび従動輪170Bを横行用レール150Bに接地させようと、基台101の枕木方向の中央部に向かって上り坂となるように傾斜する。また、横行用レール150Cの走行面151の高さが、外側横行用レールの走行面151の高さよりも低くなると、分割基台111Cは、重力により、駆動輪160Dおよび従動輪170Dを横行用レール150Dに接地させるとともに、駆動輪160Cおよび従動輪170Cを横行用レール150Cに接地させようと、基台101の枕木方向の中央部に向かって下り坂となるように傾斜する。分割基台111Aおよび分割基台111Cの傾斜は、図11および図12に示した場合と同様に、分割基台111Aおよび分割基台111Cが、ヒンジ部材180の回転軸188を中心に、分割基台111Bに対して回動することで実現されるものである。このとき、横行用レール150Bの走行面151の高さが横行用レール150Cの走行面151の高さよりも高い状態であるため、分割基台111Aの分割基台111B側の端部は、分割基台111Cの分割基台111B側の端部よりも高い位置にある。よって、それぞれの端部に接続されている分割基台111Bは、分割基台111Aから分割基台111Cに向かって下り坂となるように傾斜した状態となる。
【0050】
以上のように、横行用レール150Bの走行面151の高さが外側横行用レールの走行面151の高さよりも高くなり、かつ、横行用レール150Cの走行面151の高さが外側横行用レールの走行面151の高さよりも低くなった場合でも、基台101は、分割基台111A,111B,111Cが傾斜することで、横行用レール150の軌道方向から見て略N字形状となり、横行用レール150の高低差に追従することが出来る。なお、基台101に搭載される鉄道車両10は、車体と台車の間に介在する枕ばねにより、分割基台111A,111Cの傾斜を吸収可能である。
【0051】
以上、図11から図13を以って説明したように、複数本敷設される横行用レール150のそれぞれの走行面151に高低差が生じたとしても、基台101が、弓なり状や略N字状に機械的に変形することで、駆動輪160A,160B,160C,160Dおよび従動輪170A,170B,170C,170Dの全てが走行面151に接地するように、走行面151の高低差に追従することが出来る。
【0052】
全ての横行用車輪を横行用レール150に接地させることが出来れば、基台101に搭載した鉄道車両10の質量を確実に支えることが出来る。よって、基台101に鉄道車両用トラバーサ100の機能に有害な変形が生じることを防止することが出来る。また、全ての横行用車輪を横行用レール150に接地させることが出来れば、駆動輪160A,160B,160C,160Dの空回りを防止することも出来る。よって、鉄道車両用トラバーサ100を、確実に横行用レール150上で走行させることが出来る。
【0053】
鉄道車両用トラバーサ100の、横行用レール150の走行面151の高低差への追従性を確保するためには、ヒンジ部材180の回転軸188が、横行用レール150の上側近傍に位置することが最も望ましい。この点、鉄道車両用トラバーサ100は、基台101が、横行用レールの本数よりも1つ少ない数である3台の分割基台111からなり、さらに、それら3台の分割基台111が、隣接する分割基台111と、横行用レール150B,150Cの上側近傍において、ヒンジ部材180により接続されているため、上記追従性が確保されている。
【0054】
ここで、図1に示す分割屋根203A,203B,203Cの、それぞれの高さ寸法D11(図1参照)と、隣接する分割屋根203Aと分割屋根203Bとの距離D12および隣接する分割屋根203Bと分割屋根203Cとの距離D13(図1参照)とについて付言する。分割屋根203A,203B,203Cの、それぞれの高さ寸法D11および距離D12,D13は、分割基台111が回転軸188を中心に回動した際に、分割屋根203A,203B,203Cのそれぞれが、隣接する分割屋根203A,203B,203Cと干渉しない寸法に設定されている。例えば、図11に示すように、内側横行用レールの走行面151の高さが、外側横行用レールの走行面151の高さよりも低くなった場合では、隣接する分割屋根203Aと分割屋根203Bとの距離D21および隣接する分割屋根203Bと分割屋根203Cとの距離D22が、図1に示す距離D12,D13に比べて小さくなる。さらに、図13に示すように、横行用レール150Bの走行面151の高さが外側横行用レールの走行面151の高さよりも高くなり、かつ、横行用レール150Cの走行面151の高さが外側横行用レールの走行面151の高さよりも低くなると、隣接する分割屋根203Bと分割屋根203Cとの距離D23が、図11の距離D22よりもさらに小さくなる。つまり、回動した分割基台111が隣接する分割基台111と略V字形状を形成するような場合には、分割屋根203A,203B,203C同士の距離が小さくなるため、そのような場合でも、分割屋根203A,203B,203C同士が干渉しないように、高さ寸法D11および隣接する分割屋根203A,203B,203Cとの距離D12,D13を設定しなければならない。
【0055】
具体的には以下のように設定される。距離D21,D22,23が、距離D12,D13よりもどの程度小さくなるのかは、分割基台111の回動する量に左右される。そして、分割基台111の回動する量は、横行用レール150の走行面151の高さのバラツキに左右される。したがって、鉄道車両用トラバーサ100が用いられる検修庫の横行用レール150の走行面151の高さがどの程度の公差で管理されているかにより、高さ寸法D11および距離D12,D13が設定される。なお、分割屋根203A,203B,203Cが、図2に示すように、基台101に引き込まれた鉄道車両10を覆うことが出来るような高さでなければならない点は言うまでもない。
【0056】
また、以上の説明においては、鉄道車両用トラバーサ100は、基台101に鉄道車両10を搭載し、鉄道車両10をトラバースするものとして説明しているが、鉄道車両10から切り離した車両台車のみを基台101に搭載し、該車両台車をトラバースすることも可能である。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の鉄道車両用トラバーサ100は、
(1)鉄道車両10または車両台車を搭載するための基台101を備え、基台101が備える複数の横行用車輪(例えば、4個の駆動輪160および4個の従動輪170)により、地上(地面20)に複数本が平行に敷設された横行用レール150を走行して、基台101に搭載した鉄道車両10または車両台車を移送する鉄道車両用トラバーサ100において、横行用レール150は、3本以上(例えば4本)が敷設されていること、基台101は、複数の分割基台111が、横行用レール150の枕木方向に隣接して並ぶことにより構成されていること、分割基台111は、横行用レール150の枕木方向に隣接する分割基台111と、横行用レール150の軌道方向と平行な方向に回転軸188を有するヒンジ部材180を介して接続されていること、を特徴とする。
【0058】
(2)(1)に記載の鉄道車両用トラバーサ100において、分割基台111のそれぞれは、複数本が平行に敷設された横行用レール150のうち、枕木方向の一番外側の2本に挟まれて敷設されている内側横行用レール(本実施例では横行用レール150B,150C)の近傍において、横行用レール150の枕木方向に隣接する分割基台111と接続されていること、を特徴とする。
【0059】
(3)(1)または(2)に記載の鉄道車両用トラバーサ100において、分割基台111は、横行用レール150の本数よりも1つ少ない数が、横行用レール150の枕木方向に隣接して並ぶことにより、基台101を構成していること、を特徴とする。
【0060】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の鉄道車両用トラバーサ100において、回転軸188を中心として分割基台111が回動することで、基台101が、複数敷設される横行用レール150の走行面151の高低差に追従し、横行用車輪(駆動輪160および従動輪170)の全てが、走行面151に接地すること、を特徴とする。
【0061】
上記鉄道車両用トラバーサ100は、基台101が、複数の分割基台111が横行用レール150の枕木方向に隣接して並ぶことにより構成されている。さらに、分割基台111は、横行用レール150の枕木方向に隣接する分割基台111と、横行用レール150の軌道方向と平行な方向に回転軸188を有するヒンジ部材180を介して接続されている。つまり、複数ある分割基台111のそれぞれが、隣接する分割基台111に対して、回転軸188を中心に回動可能に連結されている。よって、複数本敷設される横行用レール150の、それぞれの走行面151に高低差が生じたとしても、基台101は、回転軸188を中心として分割基台111が回動することで機械的に変形し、横行用車輪の全てが走行面151に接地するように、走行面151の高低差に追従することが出来る。
【0062】
よって、鉄道車両用トラバーサ100によれば、複数敷設される横行用レール150の走行面151の高低差を吸収し、横行用車輪の全てを横行用レール150の走行面151に接地させることが可能である。
【0063】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって、本発明は当然にその要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、横行用レール150の本数や、分割基台111の台数は、上記実施例に挙げた数に限られず、横行用レールを3本とし、基台を2台の分割基台により構成することとしても良い。
【符号の説明】
【0064】
10 鉄道車両
20 地面(地上の一例)
101 基台
111 分割基台
150 横行用レール
160 駆動輪(横行用車輪の一例)
170 従動輪(横行用車輪の一例)
180 ヒンジ部材
188 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13