(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】熱交換器用試験装置および熱交換器の試験方法
(51)【国際特許分類】
F28F 27/00 20060101AFI20241217BHJP
F25B 49/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F28F27/00 511G
F25B49/00 A
(21)【出願番号】P 2021057906
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】植村 匠
(72)【発明者】
【氏名】垣尾 源明
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1471456(KR,B1)
【文献】特開2008-232974(JP,A)
【文献】特開平07-012300(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0003495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00
F25B 49/00
F28D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側流路と二次側流路を有する熱交換器の試験を行うための試験装置であって、
前記一次側流路につながるように構成された高温流路と、
前記一次側流路につながるように構成された低温流路と、
前記高温流路から分岐する高温分岐路と、
前記低温流路から分岐する低温分岐路と、
前記一次側流路に主として前記高温流路からの流体が一次側流体として導入される一方で前記低温流路の流体は前記低温分岐路に導入される高温試験状態と、前記一次側流路に主として前記低温流路からの流体が一次側流体として導入される一方で前記高温流路の流体は前記高温分岐路に導入される低温試験状態との間で、試験状態を切り換える切換手段と、を備え
、
前記低温流路には、流体を冷却する冷却器と、流体を加熱する加熱器とが設けられている、熱交換器用試験装置。
【請求項2】
一次側流路と二次側流路を有する熱交換器の試験を行うための試験装置であって、
前記一次側流路につながるように構成された高温流路と、
前記一次側流路につながるように構成された低温流路と、
前記高温流路から分岐する高温分岐路と、
前記低温流路から分岐する低温分岐路と、
前記一次側流路に主として前記高温流路からの流体が一次側流体として導入される一方で前記低温流路の流体は前記低温分岐路に導入される高温試験状態と、前記一次側流路に主として前記低温流路からの流体が一次側流体として導入される一方で前記高温流路の流体は前記高温分岐路に導入される低温試験状態との間で、試験状態を切り換える切換手段と、
前記二次側流路に導入される二次側流体を循環させる循環回路と、
前記循環回路に設けられるとともに前記高温分岐路および前記低温分岐路に接続された熱利用器と、を備え、
前記熱利用器には、前記切換手段が高温試験状態に切り換えられている場合において、前記低温分岐路から流体が導入されることがあり、前記切換手段が低温試験状態に切り換えられている場合において、前記高温分岐路から流体が導入されることがある
、熱交換器用試験装置。
【請求項3】
前記循環回路を循環する二次側流体の温度調整を行う加熱冷却ユニットを備え、
前記熱利用器は、前記循環回路において、二次側流体の流れる方向において前記加熱冷却ユニットの上流側に配置されている、請求項2に記載の熱交換器用試験装置。
【請求項4】
前記高温分岐路は、前記高温流路から前記熱利用器につながるように構成された高温連絡路と、前記高温流路から流体を排出する高温排出路と、を含み、
前記低温分岐路は、前記低温流路から前記熱利用器につながるように構成された低温連絡路と、前記低温流路から流体を排出する低温排出路と、を含み、
前記切換手段は、前記高温試験状態において、前記低温連絡路と前記低温排出路との間における前記低温流路の流体の流入先の選択または前記低温流路の流体の分配を行うとともに、前記低温試験状態において、前記高温連絡路と前記高温排出路との間における前記高温流路の流体の流入先の選択または前記高温流路の流体の分配を行うように構成されている、請求項2または請求項3に記載の熱交換器用試験装置。
【請求項5】
前記高温流路または前記高温分岐路に設けられた高温側温度センサと、
前記低温流路または前記低温分岐路に設けられた低温側温度センサと、
前記循環回路を流れる二次側流体の温度を検出する二次側温度センサとをさらに備え、
前記切換手段は、前記高温側温度センサと、前記低温側温度センサと、前記二次側温度センサとによって検出された流体の温度に基づいて、前記高温試験状態において、前記低温連絡路と前記低温排出路との間で前記低温流路の流体の流入先の選択または前記低温流路の流体の分配を行うとともに、前記低温試験状態において、前記高温連絡路と前記高温排出路との間で前記高温流路の流体の流入先の選択または前記高温流路の流体の分配を行うように構成されている、請求項4に記載の熱交換器用試験装置。
【請求項6】
一次側流路と二次側流路を有する熱交換器の試験を行うための試験装置であって、
前記一次側流路につながるように構成された高温流路と、
前記一次側流路につながるように構成された低温流路と、
前記高温流路から分岐する高温分岐路と、
前記低温流路から分岐する低温分岐路と、
前記一次側流路に主として前記高温流路からの流体が一次側流体として導入される一方で前記低温流路の流体は前記低温分岐路に導入される高温試験状態と、前記一次側流路に主として前記低温流路からの流体が一次側流体として導入される一方で前記高温流路の流体は前記高温分岐路に導入される低温試験状態との間で、試験状態を切り換える切換手段と、
前記高温分岐路に接続され、前記高温分岐路を流れる流体によって前記高温流路における前記高温分岐路の分岐点より下流側を加熱する高温側熱利用器と、
前記低温分岐路に接続され、前記低温分岐路を流れる流体によって前記低温流路における前記低温分岐路の分岐点より下流側を冷却する低温側熱利用器と、を備えている
、熱交換器用試験装置。
【請求項7】
高温流路と低温流路と前記高温流路から分岐する高温分
岐路と前記低温流路から分岐する低温分
岐路とを備え
、前記低温流路には、流体を冷却する冷却器と、流体を加熱する加熱器とが設けられている試験装置を用いて、一次側流路と二次側流路を有する熱交換器の試験を行うための試験方法であって、
前記熱交換器の前記一次側流路に、前記高温流路と前記低温流路とを接続するステップと、
前記熱交換器の前記一次側流路に、主として前記高温流路からの流体を一次側流体として導入するとともに、前記低温流路の流体を前記低温分岐路に導入して前記熱交換器の試験を行う高温試験ステップと、
前記熱交換器の前記一次側流路に、主として前記低温流路からの流体を一次側流体として導入するとともに、前記高温流路の流体を前記高温分岐路に導入して前記熱交換器の試験を行う低温試験ステップと、を含み、
前記高温試験ステップと前記低温試験ステップとの間の切り換えは、前記高温流路からの流体を主として前記熱交換器の前記一次側流路に導入する状態と、前記低温流路からの流体を主として前記熱交換器の前記一次側流路に導入する状態との間で切り換えることによって行われる、熱交換器の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器用試験装置および熱交換器の試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の産業分野において、一次側(熱源側)の流体と二次側(利用側)の流体との間で熱交換を行わせる種々の熱交換器が知られている。熱交換器は、例えば、一次側に流入される流体が、短時間のうちに高温から低温または低温から高温へと変化するような環境で使用されることもある。このような熱交換器では、高温流体と低温流体との温度差に伴う熱応力が、熱交換器の各部の変形や劣化の原因となるため、このような熱交換器を評価する試験装置が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような試験装置を作成する場合には、供試体である熱交換器の一次側に流入される流体を、高温に調節された流体と低温に調節された流体との間で、交互に切り換えて流入させるように構成することが考えられる。しかしながら、切り換えの際に、加熱器および冷却器を用いて流体の温度を調節する時間、すなわち流体を昇温および降温させるための時間が必要になるため、高温に調節された流体と低温に調節された流体を短時間に切り換えて熱交換器の一次側に流入させることは難しい。
【0004】
そこで本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱交換器の一次側に高温に調節された流体が流入する状態と、熱交換器の一次側に低温に調節された流体が流入する状態とを、短時間に切り換えられる熱交換器用試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明に係る熱交換器用試験装置は、一次側流路と二次側流路を有する熱交換器の試験を行うための試験装置であって、前記一次側流路につながるように構成された高温流路と、前記一次側流路につながるように構成された低温流路と、前記高温流路から分岐する高温分岐路と、前記低温流路から分岐する低温分岐路と、前記一次側流路に主として前記高温流路からの流体が一次側流体として導入される一方で前記低温流路の流体は前記低温分岐路に導入される高温試験状態と、前記一次側流路に主として前記低温流路からの流体が一次側流体として導入される一方で前記高温流路の流体は前記高温分岐路に導入される低温試験状態との間で、試験状態を切り換える切換手段とを備え、前記低温流路には、流体を冷却する冷却器と、流体を加熱する加熱器とが設けられている。
【0006】
本発明に係る熱交換器用試験装置では、切換手段によって、試験装置の試験状態が高温試験状態に切り換えられている場合に、熱交換器の一次側流路には主として高温流路の流体が一次側流体として流入する一方で、低温流路の流体は低温分岐路に流入する。そして、高温試験状態から低温試験状態に切り換えられると、一次側流路には主として、それまで低温分岐路に向けて流れていた低温流路の流体が流入する一方で、高温分岐路には、それまで一次側流路に向けて流れていた高温流路の流体が流入する。すなわち、試験状態を切り換えるときに、それまで分岐路に流れていた流体の流入先を熱交換器に切り換えるため、試験状態を短時間に切り換えることができる。
【0007】
しかも、試験状態を切り換える前に、予め、高温流路または低温流路から分岐路に導入される流体の温度を調節しておくことが可能となるため、試験状態を切り換えたときに、温調された流体を一次側流体としてすぐに熱交換器の一次側流路に流入させることができる。
【0008】
このようにして、熱交換器の一次側において、高温に調節された一次側流体を導入する状態と、低温に調節された一次側流体を導入する状態とを、短時間に切り換えることが可能となる。さらに、低温流路に冷却器と加熱器とが設けられるため、低温試験状態において、一次側流路に流す流体の設定温度によらずに、低温流路の流体を温度調節して一次側流路に導入できる。この結果、この熱交換器用試験装置を、一次側流路に流入する流体の温度が変化する環境下で使用される熱交換器を評価する試験に使用することができる。
【0009】
本発明に係る熱交換器用試験装置は、一次側流路と二次側流路を有する熱交換器の試験を行うための試験装置であって、前記一次側流路につながるように構成された高温流路と、前記一次側流路につながるように構成された低温流路と、前記高温流路から分岐する高温分岐路と、前記低温流路から分岐する低温分岐路と、前記一次側流路に主として前記高温流路からの流体が一次側流体として導入される一方で前記低温流路の流体は前記低温分岐路に導入される高温試験状態と、前記一次側流路に主として前記低温流路からの流体が一次側流体として導入される一方で前記高温流路の流体は前記高温分岐路に導入される低温試験状態との間で、試験状態を切り換える切換手段と、前記二次側流路に導入される二次側流体を循環させる循環回路と、前記循環回路に設けられるとともに前記高温分岐路および前記低温分岐路に接続された熱利用器とを備え、前記熱利用器には、前記切換手段が高温試験状態に切り換えられている場合において、前記低温分岐路から流体が導入されることがあり、前記切換手段が低温試験状態に切り換えられている場合において、前記高温分岐路から流体が導入されることがある。
【0010】
本発明に係る熱交換器用試験装置では、切換手段によって、試験装置の試験状態が高温試験状態に切り換えられている場合に、熱交換器の一次側流路には主として高温流路の流体が一次側流体として流入する一方で、低温流路の流体は低温分岐路に流入する。そして、高温試験状態から低温試験状態に切り換えられると、一次側流路には主として、それまで低温分岐路に向けて流れていた低温流路の流体が流入する一方で、高温分岐路には、それまで一次側流路に向けて流れていた高温流路の流体が流入する。すなわち、試験状態を切り換えるときに、それまで分岐路に流れていた流体の流入先を熱交換器に切り換えるため、試験状態を短時間に切り換えることができる。
しかも、試験状態を切り換える前に、予め、高温流路または低温流路から分岐路に導入される流体の温度を調節しておくことが可能となるため、試験状態を切り換えたときに、温調された流体を一次側流体としてすぐに熱交換器の一次側流路に流入させることができる。
このようにして、熱交換器の一次側において、高温に調節された一次側流体を導入する状態と、低温に調節された一次側流体を導入する状態とを、短時間に切り換えることが可能となる。この結果、この熱交換器用試験装置を、一次側流路に流入する流体の温度が変化する環境下で使用される熱交換器を評価する試験に使用することができる。
さらに、高温試験状態において、高温流路の流体が熱交換器の一次側流路に導入される一方で、低温流路の流体が低温分岐路を通じて熱利用器に導入されることがある。この場合、一次側流体によって加熱された二次側流体を、熱利用器において、低温分岐路からの流体によって冷却することができる。同様に、低温試験状態において、低温流路の流体が熱交換器の一次側流路に導入される一方で、高温流路の流体が高温分岐路を通じて熱利用器に導入されることがある。この場合、一次側流体によって冷却された二次側流体を、熱利用器において、高温分岐路からの流体によって加熱することができる。したがって、高温分岐路および低温分岐路に流れる流体を、循環回路を流れる流体の温度調節に活用することが可能となる。
【0011】
前記熱交換器用試験装置は、前記循環回路を循環する二次側流体の温度調整を行う加熱冷却ユニットを備えていてもよく、前記熱利用器は、前記循環回路において、二次側流体の流れる方向において前記加熱冷却ユニットの上流側に配置されていてもよい。
【0012】
この態様では、二次側流体は、熱利用器において低温流路または高温流路から導入された流体によって補助的に冷却または加熱された上で、加熱冷却ユニットに導入される。このため、加熱冷却ユニットにおいて二次側流体の加熱または冷却に必要となる熱量を節減させることができ、加熱冷却能力が抑えられた加熱冷却ユニットを用いることができる。
【0013】
前記高温分岐路は、前記高温流路から前記熱利用器につながるように構成された高温連絡路と、前記高温流路から流体を排出する高温排出路とを含んでいてもよく、前記切換手段は、前記高温試験状態において、前記低温連絡路と前記低温排出路との間において、前記低温流路の流体の流入先の選択または前記低温流路の流体の分配を行うとともに、前記低温試験状態において、前記高温連絡路と前記高温排出路との間において、前記高温流路の流体の流入先の選択または前記高温流路の流体の分配を行うように構成されていてもよい。
【0014】
この態様では、高温試験状態において、高温流路の流体を熱交換器の一次側流路に導入する一方で、低温流路の流体については、低温連絡路に導入するか低温排出路に導入するかの選択が可能となっている。または低温流路の流体を低温連絡路と低温排出路との間で分配して導入することができる。同様に、低温試験状態においては、低温流路の流体を熱交換器の一次側流路に導入する一方で、高温流路の流体については、高温連絡路に導入するか高温排出路に導入するかの選択が可能となっている。または、高温流路の流体を高温連絡路と高温排出路との間で分配して導入することができる。すなわち、熱利用器を利用するかしないかの選択が可能であり、高温流路および低温流路の流体の熱を必要に応じて熱利用器で利用できる。または、必要に応じて流量を調節して熱利用器に分配することができる。
【0015】
前記熱交換器用試験装置はさらに、前記高温流路または前記高温分岐路に設けられた高温側温度センサと、前記低温流路または前記低温分岐路に設けられた低温側温度センサと、前記循環回路を流れる二次側流体の温度を検出する二次側温度センサとを備えていてもよく、前記切換手段はさらに、前記高温側温度センサと、前記低温側温度センサと、前記二次側温度センサとによって検出された流体の温度に基づいて、前記高温試験状態において、前記低温連絡路と前記低温排出路との間で前記低温流路の流体の流入先の選択または前記低温流路の流体の分配を行うとともに、前記低温試験状態において、前記高温連絡路と前記高温排出路との間で前記高温流路の流体の流入先の選択または前記高温流路の流体の分配を行うように構成されていてもよい。
【0016】
この態様では、高温流路の流体、低温流路の流体および二次側流体それぞれの温度に合わせて、熱利用器の利用・非利用を切り換えることができる。または、それぞれの流体が分配して導入されるため、必要に応じて流量を調節して熱利用器へ分配することができる。
【0017】
本発明に係る熱交換器用試験装置は、一次側流路と二次側流路を有する熱交換器の試験を行うための試験装置であって、前記一次側流路につながるように構成された高温流路と、前記一次側流路につながるように構成された低温流路と、前記高温流路から分岐する高温分岐路と、前記低温流路から分岐する低温分岐路と、前記一次側流路に主として前記高温流路からの流体が一次側流体として導入される一方で前記低温流路の流体は前記低温分岐路に導入される高温試験状態と、前記一次側流路に主として前記低温流路からの流体が一次側流体として導入される一方で前記高温流路の流体は前記高温分岐路に導入される低温試験状態との間で、試験状態を切り換える切換手段と、前記高温分岐路に接続され、前記高温分岐路を流れる流体によって前記高温流路における前記高温分岐路の分岐点より下流側の部位を加熱する高温側熱利用器と、前記低温分岐路に接続され、前記低温分岐路を流れる流体によって前記低温流路における前記低温分岐路の分岐点より下流側の部位を冷却する低温側熱利用器とを備えている。
【0018】
本発明に係る熱交換器用試験装置では、切換手段によって、試験装置の試験状態が高温試験状態に切り換えられている場合に、熱交換器の一次側流路には主として高温流路の流体が一次側流体として流入する一方で、低温流路の流体は低温分岐路に流入する。そして、高温試験状態から低温試験状態に切り換えられると、一次側流路には主として、それまで低温分岐路に向けて流れていた低温流路の流体が流入する一方で、高温分岐路には、それまで一次側流路に向けて流れていた高温流路の流体が流入する。すなわち、試験状態を切り換えるときに、それまで分岐路に流れていた流体の流入先を熱交換器に切り換えるため、試験状態を短時間に切り換えることができる。
しかも、試験状態を切り換える前に、予め、高温流路または低温流路から分岐路に導入される流体の温度を調節しておくことが可能となるため、試験状態を切り換えたときに、温調された流体を一次側流体としてすぐに熱交換器の一次側流路に流入させることができる。
このようにして、熱交換器の一次側において、高温に調節された一次側流体を導入する状態と、低温に調節された一次側流体を導入する状態とを、短時間に切り換えることが可能となる。この結果、この熱交換器用試験装置を、一次側流路に流入する流体の温度が変化する環境下で使用される熱交換器を評価する試験に使用することができる。
低温試験状態において、高温流路における高温分岐路よりも下流側は、高温流体が流れない状態になっているため温度が低下し易い。しかし、高温側熱利用器によって、高温流路における高温分岐路よりも下流側の部位が加熱されるため、当該部位の温度が低下することが抑制される。同様に、高温試験状態において、低温流路における低温分岐路よりも下流側の部位は、低温流体が流れない状態になっているため、当該部位の温度が上昇し易い。しかし、低温側熱利用器によって、低温流路における低温分岐路よりも下流側の部位が冷却されるため、当該部位の温度が上昇することが抑制される。
【0020】
本発明に係る熱交換器の試験方法は、高温流路と低温流路と前記高温流路から分岐する高温分岐路と前記低温流路から分岐する低温分岐路とを備え、前記低温流路には、流体を冷却する冷却器と、流体を加熱する加熱器とが設けられている試験装置を用いて、一次側流路と二次側流路を有する熱交換器の試験を行うための試験方法であって、前記熱交換器の前記一次側流路に、前記高温流路と、前記低温流路とを接続するステップと、前記熱交換器の前記一次側流路に、主として前記高温流路からの流体を一次側流体として導入するとともに、前記低温流路の流体を前記低温分岐路に導入して前記熱交換器の試験を行う高温試験ステップと、前記熱交換器の前記一次側流路に、主として前記低温流路からの流体を一次側流体として導入するとともに、前記高温流路の流体を前記高温分岐路に導入して前記熱交換器の試験を行う低温試験ステップと、を含み、前記高温試験ステップと前記低温試験ステップとの間の切り換えは、前記高温流路からの流体を主として前記熱交換器の前記一次側流路に導入する状態と、前記低温流路からの流体を主として前記熱交換器の前記一次側流路に導入する状態との間で切り換えることによって行われる。
【0021】
本発明に係る熱交換器の試験方法では、高温試験ステップにおいて、熱交換器の一次側流路には主として高温流路の流体が一次側流体として流入する一方で、低温流路の流体は低温分岐路に流入する。そして、高温試験ステップから低温試験ステップに移ると、一次側流路には主として、それまで低温分岐路に向けて流れていた低温流路の流体が流入する一方で、高温分岐路には、それまで一次側流路に向けて流れていた高温流路の流体が流入する。すなわち、試験状態を切り換えるときに、それまで分岐路に流れていた流体の流入先を切り換えるため、試験状態を短時間に切り換えることができる。
【0022】
しかも、試験状態を切り換える前に、予め、高温流路または低温流路の流体の温度を調節しておくことができるため、試験状態を切り換えたときに、すぐに熱交換器の一次側流体として一次側流路に流入させることができる。
【0023】
したがって、この試験方法によれば、熱交換器の一次側において、高温に調節された一次側流体を導入する状態と、低温に調節された一次側流体を導入する状態とを、短時間に切り換えることが可能となる。さらに、低温流路に冷却器と加熱器とが設けられるため、低温試験ステップにおいて、一次側流路に流す流体の設定温度によらずに、低温流路の流体を温度調節して一次側流路に導入できる。この結果、一次側流路に流入する流体の温度が変化する環境下で使用される熱交換器を評価する試験を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、熱交換器の一次側に高温に調節された流体が流入する状態と、熱交換器の一次側に低温に調節された流体が流入する状態とを、短時間に切り換えられる熱交換器用試験装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態に係る熱交換器用試験装置の概略を示す回路図である。
【
図2】第1実施形態の試験方法の処理を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態に係る一次側回路の一部を示す回路図である。
【
図4】第1実施形態に係る一次側回路の一部を示す回路図である。
【
図5】第2実施形態に係る熱交換器用試験装置の概略を示す回路図である。
【
図6】第2実施形態の試験方法の処理の一部を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態の試験方法の処理の一部を示すフローチャートである。
【
図8】第3実施形態に係る熱交換器用試験装置の概略を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態に係る試験装置100は、供試体である熱交換器10の試験を行うための試験装置である。このような試験装置100によって行われる試験として、例えば、熱交換器の一次側流路に高温流体と低温流体とを繰り返し流入させて製品を評価する試験や、耐久性を評価する試験等が挙げられる。このような試験は、一次側流体が高温と低温で変わる環境で使用される車載用熱交換器等の試験に利用できる。
【0027】
試験装置100は、熱交換器10の一次側流路11に一次側流体を流す一次側回路13と、熱交換器10の二次側流路12に二次側流体を流す二次側回路14と、一次側流路11に流入させる流体を切り換える切換手段15とを備えている。一次側流体として、例えば、空気等の気体が用いられ、二次側流体として、例えば、水や不凍液等の液体が用いられる。なお、一次側流体は気体に限られず、例えば、水や不凍液等の液体であってもよく、二次側流体は液体に限られず、例えば空気等の気体であってもよい。
【0028】
一次側回路13は、導入路21と、加熱器35が設けられた高温流路22と、冷却器36および加熱器37が設けられた低温流路23と、合流路24と、高温分岐路25と、低温分岐路26と、と排出路27とを備えている。導入路21には、外部から供給された流体を、一次側流路11において生じる圧損よりも大きい圧力に加圧する圧縮機31と、加圧によって温度の高くなった流体を冷却する冷却器32とが設けられている。また、導入路21には、導入路21から外部に余剰な流体を排出して高温流路22および低温流路23の流量を調節する排出手段33が設けられている。
【0029】
高温流路22と低温流路23はそれぞれ、導入路21の下流端および合流路24の上流端に接続されている。合流路24の下流端は、供試体としての熱交換器10の一次側流路11の一方の端部を接続可能に構成されている。高温分岐路25は、高温流路22における加熱器35の下流側から分岐しており、試験装置100の外部につながる。低温分岐路26は、低温流路23における冷却器36および加熱器37の下流側から分岐しており試験装置100の外部につながる。排出路27は、供試体としての熱交換器10の一次側流路11の他方の端部を接続可能に構成されている。
【0030】
二次側回路14は、熱交換器10の二次側流路12を接続可能に構成されており、二次側回路14には図示省略のポンプおよび加熱冷却ユニットが設けられている。二次側回路14は、外部から流体が供給されるように構成された開回路でもよいし、二次側回路14内で流体を循環させるように構成された閉回路でもよい。
【0031】
切換手段15は、高温流路22から一次側流路11に流体を流入される状態と低温流路23から一次側流路11に流体を流入される状態との間で、流入状態を切り換え可能に構成された切換機構42と、切換機構42を制御する制御部43とを備えている。
【0032】
切換機構42は、高温流路22上の高温流路弁46と、低温流路23上の低温流路弁47と、高温分岐路25上の高温分岐路弁48と、低温分岐路26上の低温分岐路弁49とを有している。高温流路弁46は、高温流路22における高温分岐路25の分岐点よりも下流側に配置されており、低温流路弁47は、低温流路23における低温分岐路26の分岐点よりも下流側に配置されている。4つの弁46~49は、開状態と閉状態の切り換えが可能な開閉弁によって構成されている。
【0033】
高温流路弁46と低温分岐路弁49が開き、且つ、低温流路弁47と高温分岐路弁48が閉じている場合には、高温流路22は熱交換器10の一次側流路11に通じており、試験装置100は高温試験状態となっている。このとき、低温流路23の流体は低温分岐路26に流れるようになっているため、次の低温試験状態への切り換え前に、冷却器36および加熱器37によって低温流路23の流体の温度調節ができる。同様に、低温流路弁47と高温分岐路弁48が開き、且つ、高温流路弁46と低温分岐路弁49が閉じている場合には、低温流路23は熱交換器10の一次側流路11に通じており、試験装置100は低温試験状態となっている。このとき、高温流路22の流体は高温分岐路25に流れるようになっているため、次の高温試験状態への切り換え前に、加熱器35によって高温流路22の流体の温度調節ができる。このようにして、試験装置100は、4つの弁46~49の開閉の切り換えによって、高温試験状態と低温試験状態との間で短時間に試験状態が切り換わるように構成されている。
【0034】
上記のように構成された試験装置100の試験方法について、
図2に従って説明する。ここでは、供試体である熱交換器10に対して、高温試験と低温試験とを所定の回数だけ繰り返して行うような試験の試験方法について説明する。
【0035】
まず、合流路24および排出路27に熱交換器10の一次側流路11を接続し、二次側回路14に熱交換器10の二次側流路12を接続する(ステップST1)。
【0036】
熱交換器10が一次側回路13と二次側回路14に接続された状態で試験者がスタート指令を出すと、制御部43は、高温流路弁46および低温流路弁47を閉じた状態にするとともに、高温分岐路弁48および低温分岐路弁49を開いた状態にする。制御部43はさらに、圧縮機31、冷却器32、加熱器35、冷却器36および加熱器37を作動させて、導入路21から高温流路22を通して高温分岐路25に流体が流れるとともに低温流路23を通して低温分岐路26に流体が流れる状態にする。制御部43はさらに、熱交換器10の二次側流路12に、所定の温度を有する流体を流入させる。これにより、試験装置100は、高温流路22が高温分岐路25につながるとともに低温流路23が低温分岐路26につながっている準備運転状態となる(ステップST2)。
【0037】
準備運転状態において、高温分岐路25を流れる流体の温度が所定の温度に達するとともに低温分岐路26を流れる流体の温度が所定の温度に達すると、制御部43は、高温流路弁46を開いた状態に切り換えるとともに高温分岐路弁48を閉じた状態に切り換える(ステップST3)。すなわち、高温流体の流入先が、高温分岐路25から熱交換器10の一次側流路11に切り換わり、試験装置100は高温試験状態となる。
【0038】
試験装置100が高温試験状態に切り換えられてから所定の時間が経過すると、制御部43は切換機構42を、高温流路22からの高温流体が一次側流路11に流入する状態から、低温流路23からの低温流体が一次側流路11に流入する状態に切り換える。すなわち、高温分岐路弁48を開いた状態に切り換え、高温流路弁46を閉じた状態に切り換え、低温流路弁47を開いた状態に切り換え、低温分岐路弁49を閉じた状態に切り換える(ステップST4)。これにより、高温流体の流入先が一次側流路11から高温分岐路25に切り換わるとともに、低温流体の流入先が低温分岐路26から一次側流路11に切り換わり、試験装置100は高温試験状態から低温試験状態に切り換わる。
【0039】
試験装置100が低温試験状態に切り換えられてから所定の時間が経過すると、制御部43は、試験回数の条件判定を行う(ステップST5)。すなわち、高温試験および低温試験の実施回数が所定の回数に到達していなければ、試験装置100は前述の高温試験ステップ(ステップST3)および低温試験ステップ(ステップST4)を繰り返す。一方、実施回数が所定の回数に達した場合には、試験装置100は前述の準備運転状態に戻る(ステップST6)。
【0040】
試験装置100が準備運転状態に戻った後、制御部43は、試験装置100の各機器31、32、35、36、37の作動を停止し、熱交換器10の一次側流路11および二次側流路12への流体の流入を停止させて、試験を終了する。
【0041】
上記のように構成された試験装置100では、高温試験状態に切り換えられたとき、高温流路22から一次側流路11に、一次側流体として高温流体が流入する。このとき、低温流路23から低温分岐路26には低温流体が流入している。このため、次に行う低温試験状態に切り換えられる前に、予め低温流路23の流体を目的の温度に調節することができる。
【0042】
高温試験状態から低温試験状態に切り換えられたとき、低温流路23から一次側流路11に、それまで低温分岐路26に流れていた低温流体が流入する一方で、高温流路22から高温分岐路25に、それまで一次側流路11に流れていた高温流体が流入する。すなわち、高温流路22の高温流体と低温流路23の低温流体について、これら流体の流入先が切り換えられるときに、それまで分岐路25,26に流れていた流体の流入先が熱交換器10に切り換えられるため、試験状態を短時間に切り換えることができる。
【0043】
しかも、試験状態を切り換える前に、高温流路22または低温流路23から分岐路25,26に導入される流体の温度を調節しておくことができるため、試験状態を切り換えたときに、温調された流体を一次側流体として直ぐに熱交換器10の一次側流路11に流入させることができる。
【0044】
このようにして、熱交換器10の一次側流路11に、高温流体と低温流体とを、短時間に切り換えて流入させることができる。この結果、試験装置100は、一次側流路11に流入する流体の温度が変化する環境下において使用される熱交換器の評価試験に使用することができる。
【0045】
なお、第1実施形態では、一次側回路13は、排出路27から流出した流体を試験装置100の外部に排出する開回路として形成されているが、排出路27から導入路21に流体を戻す閉回路として構成されていてもよい。
【0046】
また、高温流路22と低温流路23とは合流路24に接続されて、熱交換器10につながるように構成されているが、これに限られない。例えば、
図3に示すように、合流路24が省略されるとともに、高温流路22と低温流路23は互いに合流せずに、一次側流路11のヘッダ28にそれぞれ直接つながるように構成されてもよい。
【0047】
また、切換機構42は、高温流路弁46と、低温流路弁47と、高温分岐路弁48と、低温分岐路弁49とを有しているが、これに限られない。例えば、
図4(a)に示すように、切換機構42は、高温流路22における高温分岐路25の接続点に配置された高温側三方弁51と、低温流路23における低温分岐路26の接続点に配置された低温側三方弁52とを有していてもよい。この場合、4つの弁46~49は省略される。制御部43は、高温側三方弁51および低温側三方弁52の流れ方向の制御によって高温流体および低温流体の流入先を切り換えて、試験装置100の試験状態を切り換えるように構成される。
【0048】
また、切換機構42は、高温側三方弁51と、低温流路弁47と、低温分岐路弁49とを有するように構成されていてもよいし、切換機構42は、低温側三方弁52と、高温流路弁46と、高温分岐路弁48とを有するように構成されていてもよい。
【0049】
また、
図4(b)に示すように、切換機構42は、高温流路22と低温流路23と合流路24の接続点に配置された共通三方弁53を有していてもよい。この場合、高温流路弁46と低温流路弁47は省略される。制御部43は、共通三方弁53の流れ方向の制御によって、一次側流路11へ接続される流路を切り換えて、試験装置100の試験状態を切り換えるように構成される。
【0050】
また、試験装置100は、いずれの試験状態においても、高温流体と低温流体のうち、いずれか一方の流体が熱交換器10の一次側流路11に導入されるように構成されているが、これに限られない。例えば、高温流路弁46および低温流路弁47は、制御部43によって開度調節される調節弁によって構成されていてもよい。この場合、高温試験状態において、一次側流路11には、主として高温流路22の高温流体が流入するとともに、低温流路弁47の開度調節によって流量を調節された低温流路23の低温流体が同時に流入するように構成されている。同様に、低温試験状態において、一次側流路11には、主として低温流路23の低温流体が流入するとともに、高温流路弁46の開度調節によって流量を調節された高温流路22の高温流体が同時に流入するように構成されている。
【0051】
また、準備運転(ステップST2)の後に、高温試験が低温試験よりも先行するが、これに限られない。例えば、低温試験が高温試験よりも先行してもよい。この場合、低温試験から高温試験に切り換わり所定の時間が経過した後に、試験装置100は、低温試験に切り換わるのではなく、試験回数の条件判定(ステップST5)を行うように構成されている。すなわち、準備運転(ステップST2)、低温試験(ステップST4)、高温試験(ステップST3)、試験回数の条件判定(ステップST5)の順序で試験が行われる。
【0052】
また、試験装置100は、高温分岐路25を流れる流体が所定の温度に達するとともに低温分岐路26を流れる流体が所定の温度に達すると、高温試験状態に切り換えるように構成されているが(ステップST3)、これに限られない。例えば、試験装置100は、高温分岐路25を流れる流体の温度が所定の温度に達している場合において、低温分岐路26の流体が所定の温度に達していなくても高温試験状態に切り換えるように構成されてもよい。
【0053】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る試験装置100について、
図5を参照しながら説明する。ここでは、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。第2実施形態の試験装置100は、二次側回路14が二次側流体を循環させる閉回路として形成される一方で、高温分岐路25と低温分岐路26の流体により二次側流体を加熱・冷却する熱利用器55を備えている点において、第1実施形態とは異なっている。
【0054】
熱利用器55は、高温分岐路25と低温分岐路26の流体を流す放熱流路56と、二次側回路14を循環する循環流体を流す受熱流路57とを有しており、放熱流路56と受熱流路57との間で熱交換が行われるように構成されている。放熱流路56の上流端には、高温流路22と低温流路23とにつながっている合流路64が接続されている。
【0055】
高温分岐路25は、高温流路22と合流路64とをつなぐ高温連絡路60と、高温流路22と外部とをつなぐ高温排出路62とを有している。低温分岐路26は、低温流路23と合流路64とをつなぐ低温連絡路61と、低温流路23と外部とをつなぐ低温排出路63とを有している。つまり、高温流路22は、高温連絡路60と合流路64を介して放熱流路56につながっており、低温流路23は、低温連絡路61と合流路64を介して放熱流路56につながっている。
【0056】
二次側回路14は、二次側流体を循環させる閉回路であり、熱交換器10の二次側流路12の一端部に接続可能な一端部と、二次側流路12の他端部に接続可能な他端部とを有している。二次側回路14には、熱利用器55と、ポンプ73と、加熱冷却ユニット74とが設けられており、迂回路75が接続されている。迂回路75の一端は、熱利用器55とポンプ73の間に接続され、他端は加熱冷却ユニット74と熱交換器10の間に接続されている。つまり、迂回路75は、熱交換器10の上流側の部位と熱利用器55の下流側の部位とをつなぐように形成されており、二次側回路14において熱交換器10と熱利用器55を迂回させる流路である。なお、二次側回路14には、熱交換器10の上流側または下流側に図略の開閉弁が設けられており、準備運転(ステップST2)においては、循環流体を熱交換器10を通過させることなく迂回路75を介して循環させるよう構成されている。このため、準備運転(ステップST2)において、循環流体は、加熱冷却ユニット74によって所定の温度に調節される。
【0057】
切換機構42はさらに、高温連絡路60上の高温連絡路弁66と、低温連絡路61上の低温連絡路弁67とを備えている。高温分岐路弁48は高温排出路62上に配置されており、低温分岐路弁49は低温排出路63上に配置されている。6つの弁46、47、48、49、66、67は、制御部43によって開閉制御される開閉弁である。試験装置100は、切換機構42の制御によって、高温流路22の流体と低温流路23の流体の流入先が、熱交換器10の一次側流路11と、熱利用器55の放熱流路56と、高温排出路62と、低温排出路63との間で切り換わるように構成されている。つまり、試験装置100は、高温試験と低温試験との間で試験状態が切り換えられるだけでなく、一次側回路13から熱利用器55への流体の流入状態を切り換えられるように構成されている。
【0058】
試験装置100はさらに、高温流路22上に設けられた高温側温度センサ77と、低温流路23上に設けられた低温側温度センサ78と、二次側回路14上に設けられた二次側温度センサ79とを備えている。高温側温度センサ77は、高温流路22における加熱器35の下流側に配置されており、高温流路22を流れる流体の温度T3(高温側温度)を検出する。低温側温度センサ78は、低温流路23における加熱器37の下流側に配置されており、低温流路を流れる流体の温度T4(低温側温度)を検出する。二次側温度センサ79は、二次側回路14における熱交換器10の上流側に配置されている第1温度センサ81と、熱利用器55の下流側に配置されている第2温度センサ82を含む。第1温度センサ81は、二次側回路14における熱交換器10に流入する直前の流体の温度T1(上流側温度)を検出する。第2温度センサ82は、二次側回路14における熱利用器55から流出した直後の流体の温度T2(下流側温度)を検出する。各温度センサ77、78、81、82は、検出した各温度T1~T4を示す信号を制御部43に伝達する。切換機構42の6つの弁46~49、66、67は、制御部43によって、各温度T1~T4に基づいて開閉状態が制御されるように構成されている。
【0059】
ここで、第2実施形態の試験装置100による試験方法を説明する。第2実施形態における準備運転(ステップST1、2、6)および試験回数の条件判定(ステップST5)は、第1実施形態と同様なので説明を省略し、ここでは高温試験および低温試験の試験方法の詳細についてのみ説明する。
【0060】
高温試験において、
図6に示すように、まず、制御部43は、高温流路弁46を開いた状態に切り換えるとともに、高温分岐路弁48および高温連絡路弁66を閉じた状態に切り換える。これにより、高温流路22の高温流体の流入先は、熱交換器10の一次側流路11に切り換わる(ステップST10)。この際、低温流路弁47および低温連絡路弁67を閉じた状態に切り換えるとともに、低温分岐路弁49を開いた状態に切り換える。
【0061】
高温試験時において、制御部43は、上流側温度T1、下流側温度T2および低温側温度T4を参照して条件判定を行う(ステップST11)。
【0062】
下流側温度T2が上流側温度T1より高く、且つ、下流側温度T2が低温側温度T4より高い場合には、制御部43は、低温連絡路弁67を開いた状態に切り換えるとともに、低温分岐路弁49を閉じた状態に切り換える(ステップST12)。つまり、低温流体の温度が熱利用器55出口における循環流体の温度よりも低い場合には、低温流路23の低温流体を熱利用器55の放熱流路56に流入させて、受熱流路57を流れる循環流体を冷却する。
【0063】
一方、上流側温度T1が下流側温度T2以上の場合、または、低温側温度T4が下流側温度T2以上の場合には、制御部43は、低温連絡路弁67を閉じた状態に切り換え、低温分岐路弁49を開いた状態に切り換える(ステップST13)。つまり、低温流体の温度が熱利用器55出口での循環流体の温度以上の場合には、低温流路23の低温流体を低温排出路63から試験装置100の外部に排出し、二次側回路14の循環流体を冷却しない。また、上流側温度T1が下流側温度T2以上の場合にも熱利用器55を利用しない。
【0064】
その後、制御部43は、高温試験の経過時間について条件判定を行う(ステップST14)。経過時間が所定の時間に達していなければ、試験装置100は前述の温度の条件判定(ステップST11)および制御動作(ステップST12~13)を繰り返す。一方、経過時間が所定の時間に達した場合は、高温試験を終了して、低温試験(ステップST4)または試験回数の条件判定(ステップST5)に移る。
【0065】
低温試験を行うとき、
図7に示すように、まず、制御部43は、低温流路弁47を開いた状態に切り換え、低温分岐路弁49および低温連絡路弁67を閉じた状態に切り換える。これにより、低温流路23の低温流体の流入先は、熱交換器10の一次側流路11に切り換わる(ステップST15)。
【0066】
低温試験において、制御部43は、上流側温度T1と、下流側温度T2、高温側温度T3を参照して条件判定を行う(ステップST16)。
【0067】
高温側温度T3が下流側温度T2より高く、且つ、上流側温度T1が下流側温度T2より高い場合には、制御部43は、高温連絡路弁66を開いた状態に切り換えるとともに、高温分岐路弁48を閉じた状態に切り換える(ステップST17)。つまり、高温流体の温度が、熱利用器55出口での循環流体の温度よりも高い場合には、高温流路22の高温流体を熱利用器55の放熱流路56に流入させて、受熱流路57を流れる循環流体を加熱する。
【0068】
一方、高温側温度T3が下流側温度T2以下の場合、または、上流側温度T1が下流側温度T2以下の場合には、制御部43は、高温連絡路弁66を閉じた状態に切り換えるとともに、高温分岐路弁48を開いた状態に切り換える(ステップST18)。つまり、高温流体の温度が、熱利用器55出口での循環流体の温度以下の場合には、高温流路22の高温流体を高温排出路62から試験装置100の外部に排出し、二次側回路14の循環流体を加熱しない。つまり熱利用器55を利用しない。また、上流側温度T1が下流側温度T2以下の場合にも熱利用器55を利用しない。
【0069】
その後、制御部43は、低温試験の経過時間について条件判定を行う(ステップST19)。経過時間が所定の時間に達していなければ、試験装置100は前述の温度の条件判定(ステップST16)および制御動作(ステップST17~18)を繰り返す。一方、経過時間が所定の時間に達した場合は、低温試験を終了し、高温試験(ステップST3)または試験回数の条件判定(ステップST5)に移る。
【0070】
本実施形態では、高温試験状態において、高温流路22の流体が熱交換器10の一次側流路11に導入される一方で、低温流路23の流体は低温連絡路61を通じて熱利用器55の放熱流路56に導入される。このとき、熱交換器10において一次側流路11の高温流体と熱交換を行った後の二次側流体が、熱利用器55の受熱流路57に流入する。このため、熱利用器55によって、一次側流体によって加熱された二次側流体を、加熱冷却ユニット74に導入される前の前段として補助的に冷却させることができる。
【0071】
同様に、低温試験状態においても、低温流路23の流体が熱交換器10の一次側流路11に導入される一方で、高温流路22の流体は高温連絡路60を通じて熱利用器55の放熱流路56に導入される。このとき、熱交換器10において一次側流路11の低温流体と熱交換を行った後の二次側流体が、熱利用器55の受熱流路57に流入する。このため、熱利用器55によって、一次側流体によって冷却された二次側流体を、加熱冷却ユニット74に導入される前の前段として補助的に加熱させることができる。
【0072】
したがって、高温流路22および低温流路23を流れる流体を、二次側回路14を流れる流体の温度調節に活用できる。このため、一次側回路13の流体を切り換えた際に熱交換器10の二次側流路12で生じる急激な温度変化を緩和することができ、切り換え時における加熱冷却ユニット74の温度制御を容易にすることができる。しかも、試験状態を切り換えるタイミングに応じて、熱利用器に流入する流体を低温流路23からの流体と高温流路22からの流体との間で切り換えることができため、切り換えタイミングを制御するための制御手段は不要となる。
【0073】
熱利用器55によって、二次側流体を補助的に加熱・冷却した上で、加熱冷却ユニット74に導入することができる。このため、加熱冷却ユニット74において二次側流体の加熱または冷却に必要となる熱量を節減させることができ、加熱冷却能力が抑えられた加熱冷却ユニット74を用いることができる。
【0074】
試験装置100が高温試験状態または低温試験状態にある場合に、切換機構42の6つの弁46~49、66、67は、制御部43によって、4つの温度センサ77、78、81、82によって検出された温度T1~T4に応じて開閉制御されるように構成されている。このため、制御部43は必要に応じて、高温流路22および低温流路23から熱利用器55に高温流体および低温流体を導入させて、二次側流体を補助的に加熱・冷却させることができる。
【0075】
試験装置100では、高温試験状態において、高温流路22の流体を熱交換器10の一次側流路11に導入する一方で、低温流路23の流体については、低温連絡路61に導入するか低温排出路63に導入するかの選択が可能となっている。同様に、低温試験状態においては、低温流路23の流体を熱交換器10の一次側流路11に導入する一方で、高温流路22の流体を高温連絡路60に導入するか、高温排出路62に導入するかの選択が可能となっている。すなわち、熱利用器55を利用するかしないかの選択が可能であり、高温流路22および低温流路23の流体の熱を必要に応じて熱利用器55で利用できる。
【0076】
なお、二次側回路14は、二次側流体を循環させる閉回路として形成されているが、これに限らない。二次側回路14は、第1実施形態と同様に、一方の端部から供給された二次側流体を、熱交換器10の二次側流路12を通過させて、他方の端部から排出させる開回路として形成されていてもよい。
【0077】
また、二次側回路14において迂回路75は省略されてもよい。
【0078】
また、制御部43は、二次側温度センサ79の第1温度センサ81および第2温度センサ82のうち、一方のセンサから検出された温度に基づいて切換機構42の制御が可能である。この場合、他方のセンサは省略される。
【0079】
また、制御部43は、流体の温度に基づかない切換機構42の制御が行われてもよい。この場合、4つの温度センサ77、78、81、82は省略され、制御部43は、高温試験において低温流路23の低温流体を熱利用器55に流入させ、低温試験時において高温流路22の高温流体を熱利用器55に流入させるように、切換機構42を制御する。
【0080】
また、高温試験時の温度条件判定(ステップST11)および低温試験時の温度条件判定(ステップST16)において、制御部43は、判定要素の1つとして上流側温度T1を用いているが、これに限られない。例えば、制御部43は、検知温度である上流側温度T1の代わりに、熱交換器10上流側での目標温度を用いてもよい。また、高温試験時の温度条件判定(ステップST11)および低温試験時の温度条件判定(ステップST16)において、下流側温度T2と上流側温度T1(または目標温度)との比較を行わないようにしてもよい。
【0081】
また、高温分岐路弁48と、低温分岐路弁49と、高温連絡路弁66と、低温連絡路弁67とは、制御部43によって開度調節される調節弁によって構成されていてもよい。この場合、高温試験状態では、一次側流路11には主として高温流路22の流体が流入するとともに、低温分岐路弁49および低温連絡路弁67の開度を調節して低温流路23の流体を分配することにより、熱利用器55に必要に応じた流量の低温流体を導入できる。同様に、低温試験状態では、一次側流路11には主として低温流路23の流体が流入するとともに、高温分岐路弁48および高温連絡路弁66の開度を調節して高温流路22の流体を分配することにより、熱利用器55に必要に応じた流量の高温流体を導入できる。
【0082】
また、一次側回路13の導入路21には、圧縮機31に代わって、外部から供給された流体を加圧するポンプが設けられていてもよい。
【0083】
また、二次側回路14には、ポンプ73に代わって、循環流体を加圧する圧縮機が設けられていてもよい。
【0084】
なお、その他の構成、作用および効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0085】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る試験装置100について、
図8を参照しながら説明する。ここでは、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。第3実施形態では、試験装置100に高温熱利用器85と低温熱利用器86とが設けられている点において、第1実施形態とは異なっている。
【0086】
高温熱利用器85は、低温試験の時に、高温流路22の温度が低下することを抑制するために設けられ、高温流路22における高温分岐路25の分岐部よりも下流側で且つ高温流路弁46よりも上流側の部位に接続されている。高温熱利用器85は、高温分岐路25を流れる流体によって、高温流路22における高温分岐路25の分岐部よりも下流側の部位を加熱する。なお、高温熱利用器85は、合流路24よりも上流側で且つ高温流路弁46よりも下流側に接続されてもよい。
【0087】
高温流路22には、高温熱利用器85と高温流路弁46との間に熱抵抗部材87が設けられている。熱抵抗部材87は、低温試験のときに、高温流路22において高温流路弁46よりも下流側の熱(冷熱)が高温熱利用器85側に伝わることを抑制する。
【0088】
低温熱利用器86は、高温試験の時に、低温流路23の温度が上昇することを抑制するために設けられ、低温流路23における低温分岐路26の分岐部よりも下流側で且つ低温流路弁47よりも上流側に接続されている。低温熱利用器86は、低温分岐路26を流れる流体によって、低温流路23における低温分岐路26の分岐部よりも下流側の部位を冷却する。なお、低温熱利用器86は、合流路24よりも上流側で且つ低温流路弁47よりも下流側に接続されてもよい。
【0089】
低温流路23には、低温熱利用器86と低温流路弁47との間に熱抵抗部材88が設けられている。熱抵抗部材88は、高温試験のときに、低温流路23において低温流路弁47よりも下流側の熱が低温熱利用器86側に伝わることを抑制する。
【0090】
なお、本実施形態では、熱抵抗部材87,88が設けられているが、熱抵抗部材87,88を省略することもできる。
【0091】
その他の構成、作用および効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態および第3実施形態に援用することができる。例えば、
図3および
図4に示した機構について第2実施形態および第3実施形態に援用することができる。
【0092】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上述した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
100 試験装置
10 熱交換器
11 一次側流路
12 二次側流路
15 切換手段
22 高温流路
23 低温流路
25 高温分岐路
26 低温分岐路
36 冷却器
37 加熱器
44 加熱冷却ユニット
55 熱利用器
60 高温連絡路
61 低温連絡路
62 高温排出路
63 低温排出路
77 高温側温度センサ
78 低温側温度センサ
79 二次側温度センサ
85 高温側熱利用器
86 低温側熱利用器