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特許7605682塗工液の塗工装置、塗工方法および塗膜生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】塗工液の塗工装置、塗工方法および塗膜生産方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20241217BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241217BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20241217BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20241217BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B05C1/08
B05C11/10
B05D1/28
B05D3/00 B
B05D7/00 A
B05D3/00 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021059208
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022155802
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 信広
(72)【発明者】
【氏名】長野 元紀
【審査官】竹中 辰利
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/08
B05C 11/10
B05D 1/28
B05D 3/00
B05D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工液を塗工ロールを介してシート状の基材に塗工する塗工装置において、
塗工液パンの一端側に設けられた塗工液供給部であって、前記塗工ロールの長手方向に沿って配置された複数の配管から供給される塗工液を一時的に液貯まり部に貯め、前記液貯まり部から溢れだした塗工液を前記液貯まり部の長手方向に沿って設けられたスリットを介して排出する塗工液供給部と、
当該排出された塗工液を貯める前記塗工液パンであって、前記塗工ロールの長手方向に垂直な断面において全体にU字状であって、前記塗工ロールに対向する底部が下方に湾曲した形状を有する前記塗工液パンと、
前記塗工液パンの一端側と前記塗工ロールを介して対向する前記塗工液パンの他端側において、前記塗工液供給部より低い位置に設けられ、前記塗工液パンから溢れた塗工液を排出する塗工液排出部と、
前記塗工ロールの長手方向に垂直な断面において、前記塗工液パンの底部から前記塗工液排出部に至る斜面の水平面に対する角度を調整可能な塗工液パン角度調整部、とを備える塗工装置。
【請求項2】
前記塗工液は粒状物を含む塗工液であって、前記塗工液パン角度調整部は、前記塗工液の粘度、前記粒状物の種類、比重、前記塗工液に対する前記粒状物の含有割合、重量比、前記塗工ロールの溝の深さ、前記基材への塗膜厚さ、ラインスピードのファクターの少なくとも一つに応じて調整可能である、請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記塗工液供給部において、前記液貯まり部は前記塗工ロールの長手方向に沿って設けられ、前記液貯まり部は前記長手方向に沿って設けられた開口を備え、前記開口は前記長手方向に沿って設けられたテーパー状の通路を介して前記スリットに連通する、請求項1または2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記スリットの前記塗工ロールの長手方向に垂直な方向の幅は0.6mm~2.5mmの範囲であり、前記スリットの前記塗工ロールの長手方向の長さは前記塗工ロールの長手方向の長さ以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の塗工装置。
【請求項5】
前記塗工液パンの底部から前記塗工液排出部までの鉛直方向の距離(h1)は10~30mmの範囲である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塗工装置。
【請求項6】
前記塗工液パンの底部から前記塗工液排出部に至る前記斜面は、前記断面において直線状であり、前記塗工液パンを水平に設置した初期状態における水平面に対する角度は3~30度の範囲である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の塗工装置。
【請求項7】
前記塗工液パンの底部の曲率は前記塗工ロールの曲率より小さい、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の塗工装置。
【請求項8】
前記塗工液供給部から前記塗工液パンの底部に至る第1の斜面、および前記塗工液パンの底部から前記塗工液排出部に至る第2の斜面は、前記断面においていずれも円弧状であり、前記第1の斜面および前記第2の斜面の曲率は前記塗工液パンの底部の曲率より小さい、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の塗工装置。
【請求項9】
前記塗工液パンの底部から前記塗工ロールの底部までの鉛直方向の距離(h2)は8~20mmの範囲である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の塗工装置。
【請求項10】
前記塗工ロールの底部が前記塗工液パンの前記塗工液の液溜まりに浸っている鉛直方向の長さ(h3)は1~20mmの範囲である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の塗工装置。
【請求項11】
塗工液を塗工ロールを介してシート状の基材に塗工する塗工方法において、
塗工液パンの一端側において、前記塗工ロールの長手方向に沿って配置された複数の配管から供給される塗工液を一時的に液貯まり部に貯め、前記液貯まり部から溢れだした塗工液を前記液貯まり部の長手方向に沿って設けられたスリットを介して排出し、
当該排出された塗工液を、前記塗工ロールの長手方向に垂直な断面において全体にU字状であって、前記塗工ロールに対向する底部が下方に湾曲した形状を有する前記塗工液パンに貯め、
前記塗工液パンの一端側と前記塗工ロールを介して対向する前記塗工液パンの他端側において、前記塗工液パンから溢れた塗工液を排出し、
前記塗工ロールの長手方向に垂直な断面において、前記塗工液パンの底部から前記他端側に至る斜面の水平面に対する角度を調整可能とし、
それにより、前記塗工液パンに貯められた前記塗工液の液貯まりの容積、および前記塗工液パンの底部から前記他端側に至る鉛直方向の距離を可変可能とした塗工方法。
【請求項12】
塗膜を生産する方法であって、
塗工液を用い、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の塗工装置を使用してシート状の基材の面の上に上記塗工液のウェット塗膜を形成する工程を含む方法。
【請求項13】
塗膜を生産する方法であって、
塗工液を用い、請求項11に記載の塗工方法を使用してシート状の基材の面の上に上記塗工液のウェット塗膜を形成する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工液の塗工装置、塗工方法および塗膜生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗工液をグラビアロール等の塗工ロールを介してシート状の基材に塗工する塗工装置においては、一般的に、塗工液パンの上流側に位置する塗工液供給部から塗工液を塗工液パンの中央に向けて排出して塗工液パンに貯め、塗工液パンの液貯まりに塗工ロールを浸漬させ、回転する塗工ロールを介して塗工液を基材に転写させて塗膜を形成している。通常、塗工液の供給は過剰になされ、塗工液パンから溢れた過剰分の塗工液を回収し、再び塗工液パンへ供給されるようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、塗工ロールの長手方向に沿って配置された複数の配管から供給される塗工液を一時的に容器に貯め、容器から溢れだした塗工液を当該長手方向に沿った開口を介して塗工液パンに供給する塗工液供給部を備えるようにしている。
【0004】
ここで、塗工液中に沈降しやすい粒状物等が含まれている場合には、塗工液パン内の塗工液の液貯まり中に経時で粒状物等が沈降し蓄積すると、基材に転写された塗膜中の粒状物等の濃度が減少するなどの問題が発生する。
【0005】
そこで、塗工液パンの底部から塗工液流出口(排出口)にかけて塗工液パンに傾斜を付け、塗工液パンの液貯まりから円滑に塗工液が流出口に流れ出るようにし、塗工液パン内に粒状物等が沈降、蓄積しないようにする等の対策が図られている。
例えば、特許文献2においては、塗工液中の沈降・分離しやすい顔料の沈降・蓄積を防止すべく、塗工液パン内における塗工液の流れの淀みをより一層少なくするために、塗工液パンの底面の形状を、塗工ロールの外形に沿った形状とするようにしている。
【0006】
さらに、例えば、特許文献3においては、塗工ロールと内面形状が円弧形状をした塗工液パンとの間の塗工液の存在する空間において、塗工液の供給側の端部における塗工液パンと塗工ロールとの間の最短距離長と、塗工液の排出側の端部における塗工液パンと塗工ロールとの間の最短距離長とを異ならせることによって、これら両端部における塗工液の移動速度を異ならせ、塗工液パンに塗工成分が沈降及び/又は凝集するのを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5454044号公報
【文献】特許第5315985号公報
【文献】特許第6292750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
塗工液パンの液貯まりにおける粒状物等の濃度が塗工ロールの長手方向に亘って均一でないと、塗工ロールを介して基材に転写された塗膜中の粒状物等の濃度が長手方向に不均一となり、延いては塗工品の品質が不均一となる。
上記特許文献1から特許文献3の塗工装置においては、塗工液パン内の塗工液の液貯まりの粒状物等の濃度を塗工ロールの長手方向に沿って均一にすると共に、塗工液パンの底部に粒状物等が沈降・蓄積するのを防止するという観点からは対策が十分ではなかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、上記課題を解決するようにした塗工装置、塗工方法および塗膜生産方法を提供すること目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の態様に係る塗工装置は、以下の構成を備える。
塗工液を塗工ロールを介してフィルム等のシート状の基材に塗工する塗工装置において、
塗工液パンの一端側に設けられた塗工液供給部であって、前記塗工ロールの長手方向に沿って配置された複数の配管から供給される塗工液を一時的に液貯まり部に貯め、前記液貯まり部から溢れだした塗工液を前記液貯まり部の長手方向に沿って設けられたスリットを介して排出する塗工液供給部と、
当該排出された塗工液を貯める前記塗工液パンであって、前記塗工ロールの長手方向に垂直な断面において全体にU字状であって、前記塗工ロールに対向する底部が下方に湾曲した形状を有する前記塗工液パンと、
前記塗工液パンの一端側と前記塗工ロールを介して対向する前記塗工液パンの他端側において、前記塗工液供給部より低い位置に設けられ、前記塗工液パンから溢れた塗工液を排出する塗工液排出部と、
前記塗工ロールの長手方向に垂直な断面において、前記塗工液パンの前記底部から前記塗工液排出部に至る斜面の水平面に対する角度を調整可能な塗工液パン角度調整部、とを備える塗工装置。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明による塗工装置においては、塗工液供給部から塗工ロールの長手方向に沿って塗工液を均一な流量で塗工液パンに供給し、更に、塗工液中に沈降しやすい粒状物等が含まれている場合に、塗工液パン内の塗工液の粒状物等の濃度を塗工ロールの長手方向に沿って均一にすると共に、塗工液パンの底部に粒状物等が経時で沈降・蓄積するのを効果的に防止できるものである。
【0012】
本発明の他の目的、特徴及び利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る塗工装置の全体構成を示す概略断面図である。
図2図1に示す塗工装置の要部の斜視図である。
図3図1に示す塗工装置の要部の平面図である。
図4図1に示す塗工装置の要部の斜視図である。
図5】(a)は塗工液供給部の図2の線I-I‘に沿った側断面図、(b)は塗工液供給部の斜視図、(c)は塗工液供給部の変形例を示す斜視図である。
図6】(a)は塗工液供給部の図2の線I-I‘に沿った側断面図であって傾斜した状態を示す図、(b)は塗工液供給部および塗工液供給部傾斜装置の概略斜視図である。
図7】(a)、(b)はそれぞれ塗工液パンの典型例の要部の図2の線I-I‘に沿った側断面図である。
図8】(a)、(b)、(c)は塗工液パンおよび塗工液パン角度調整部等の要部構成を示す、図2の線I-I‘に沿った側断面図である。
図9】塗工液パン角度調整部の変形例の要部構成を示す、図2の線I-I‘に沿った側断面図である。
図10】塗工液パン角度調整部の変形例を図1に示す塗工装置に適用した場合の塗工装置の要部平面図である。
図11】塗工液パン角度自動設定装置の一例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る塗工装置、塗工方法および塗膜生産方法について図面を用いて例示的に詳しく説明する。
以下で説明される個別の実施形態は、本発明の上位概念、中位概念及び下位概念など種々の概念を理解するために役立つであろう。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確立されるものであり、以下の個別の実施形態によって限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る塗工装置の全体構成を示す概略断面図であり、図2は、図1に示す塗工装置の要部の斜視図であり、図3図1に示す塗工装置の要部の上方から見た平面図である。図4図1に示す塗工装置の要部の斜視図であり、塗工液の流れを示す。なお、図1図2の線I-I‘に沿った側断面図である。
塗工装置1は、塗料などの塗工液をグラビアロール等の塗工ロール3を介してウェブまたはフィルム等のシート状の基材4に塗工、即ち、基材4の面の上に塗工液のウェット塗膜を形成するものである。塗工ロール3が基材4の走行方向に対して同じ方向に進むものをダイレクト方式、逆方向に進むものをリバース方式という。また、図示しないバックアップロールが塗工ロール3に対して押し付ける位置に設置される方式やバックアップロールがないキス方式などあるが、本発明はこれらいずれの方式にも有効である。
【0016】
塗工装置1は、塗工液パン2の一端側に設けられ、塗工ロール3の回転軸3aに沿った方向、即ち、塗工ロール3の長手方向に沿って設けられたスリット7を介して塗工液10を排出する塗工液供給部5と、排出された塗工液10を貯める塗工液パン2と、塗工液パン2の一端側と塗工ロール3を介して対向する塗工液パンの他端側において、塗工液供給部5より鉛直方向において低い位置に設けられ、塗工液パン2から溢れた塗工液を排出する塗工液流出部14と、図1に示すような塗工ロール3の長手方向に垂直な断面において、塗工液パン2の塗工ロール3に対向する底部12から塗工液排出部14に至る斜面の水平面に対する角度を調整可能な塗工液パン角度調整部20、とを備える。
【0017】
図4に示す様に、塗工液供給部5から排出された塗工液は塗工液パン2に流れて塗工液パン2に貯まり、塗工ロール3の下部を浸漬させる。塗工液パン2から溢れた塗工液は、平板状のガイド板14a、14bから構成された塗工液流出部14を流れて液受け槽16に貯められる。ガイド板14aは、塗工液パン2の他端側から液受け槽16に向かって緩やかに下向きに傾斜しており、ガイド板14bは、ガイド板14aの液受け槽16側端部から液受け槽16に向かってほぼ垂直に下向きに傾斜している。
【0018】
液受け槽16に貯められた塗工液は液受け槽16の底部に設けられた開口16aからパイプ31を介してフィルタ32に供給されて濾過され、パイプ33を介してポンプ36に送られ、そこからパイプ37を介して塗工液供給部5に再度供給される。なお、フィルタ32とポンプ36との間に、フィルタ32から供給された塗工液の撹拌、粘度調整、塗工液に含まれる粒状物等の濃度調整等を行う装置を設けてもよい。
【0019】
塗工液10には艶消し剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤等の粒子等の、塗工液に対して比較的比重の高い粒状物を含ませる場合がある。そのような場合には、経時で粒状物が塗工液パンの底部に沈降し蓄積すると、塗工ロールを介して基材に転写された塗工液の塗膜中の粒状物の濃度が減少する等の問題が発生する。さらに、塗工液パンの液貯まりにおける粒状物濃度が塗工ロールの長手方向に亘って均一でないと、塗工ロールを介して基材に転写された塗膜中の粒状物の濃度が長手方向に不均一となり、延いては塗工品の品質が不均一となる。
【0020】
このような問題の発生を防止すべく構成された塗工装置1の塗工液供給部5、塗工液パン2、塗工液パン角度調整部20について以下に詳細に説明する。
塗工液供給部5の構成例について図5を参照して説明する。図5の(a)は塗工液供給部5の図2の線I-I‘に沿った側断面図、(b)は塗工液供給部5の斜視図、(c)は塗工液供給部5の変形例を示す斜視図である。
【0021】
塗工液供給部5は、塗工ロール3の長手方向(Y方向)に沿って長辺が配置された、例えば、四角柱(直方体)形状の筐体6で構成され、その中に同じくY方向に沿って長辺が配置された、例えば四角柱(直方体)形状の液貯まり部(タンク)39が設けられている。ポンプ36に結合されたパイプ37は、Y方向に沿って等間隔に配置された複数の、好ましくは、4つ以上(ここでは4つ)の配管37a~37dに分岐されている。これら分岐配管37a~37dは筐体6の側板6aを貫通し、その排出口38a~38dは液貯まり部39の上板39aを貫通して液貯まり部39内に開口している。
【0022】
液貯まり部39の側板39bのX方向半ばの位置にはY方向に沿って延在する開口39cが設けられ、開口39cからはY方向に沿って延在すると共にZ方向に筐体6の側板6aまで達する通路40が形成されている。ここで、開口39cから通路40のZ方向途中に至る、通路40の下側部分はテーパー状となっておりテーパー部40aが形成されている。
こうして、液貯まり部39はテーパー部40aを有する通路40に連通し、さらに側板6bに形成されたスリット7に連通する。スリット7は、側板6bの長手方向(Y方向)に沿った両端側を除いた部分に塗工ロール3に対向するように形成され、スリット7のY方向の長さは塗工ロール3のY方向の長さ以上とされている。即ち、スリット7の長手方向の両端部は、それぞれ塗工ロール3の長手方向の両端部より外側まで延在するように構成されている。
【0023】
このような構成により、分岐配管37a~37dの開口38a~38dから供給された塗工液は液貯まり部39に貯められ、液貯まり部39から溢れた塗工液はテーパー部40aおよび通路40を介してスリット7から排出され、塗工液パン2に流入する。
塗工液は、Y方向に沿って等間隔に配置された複数の配管37a~37dから排出されて液貯まり部39に貯められるため、スリット7からは塗工ロール3の長手方向に亘って連続的に均一な流量で塗工液が排出されると共に、その塗工液中の粒状物の濃度も長手方向に均一となる。
【0024】
ここで、テーパー部40aの水平面Hに対する傾斜角度δ(図5の(a)参照)は約10~60度の範囲であり、好ましくは約15~25度、より好ましくは20度程度である。このように通路40の入口付近(開口39c付近)をテーパー状とすることで、塗工液およびその中の粒状物が液貯まり部39内からスムーズに通路40に流出しやすくなる。一方、傾斜角度δを約10度未満または約60度を超える値とすると、塗工液が液貯まり部39内で滞留し粒状物が経時で沈降しやすくなる。特に、テーパー部40aを設けない場合、即ち、テーパー部40aの水平面に対する傾斜角度δをほぼ0度とすると、液貯まり部39内で塗工液がより一層滞留しやすく、経時で粒状物が沈降してしまう。
【0025】
スリット7のX方向(塗工ロールの長手方向に垂直な方向)の幅は約0.6mm~2.5mmの範囲であり、好ましくは約0.8mm~1.5mm、より好ましくは1mm程度である。この範囲とすることで、塗工液がスリット7から吐出される際の、X方向における塗工液の流量のムラが抑制され均一となる。一方、約0.6mm未満とすると通路40、スリット7において塗工液の目詰まりが発生しやすくなり、約2.5mmを超えるとX、Y方向における塗工液の流量のムラが発生しやすくなる。
【0026】
次に、塗工液供給部5の水平面Hに対する傾斜角度について図6を参照して説明する。図6の(a)は塗工液供給部5の図2の線I-I‘に沿った側断面図であって水平面Hに対してやや傾斜した状態を示す図、(b)は塗工液供給部5および塗工液供給部傾斜装置50の概略斜視図である。
塗工液供給部5は、塗工作業に際しては、図5の(a)に示す水平に置かれた状態から、図6の(a)に示すように矢印(時計回り)方向に回転され、水平面Hに対する塗工液供給部5の底板6cの傾斜角φを適切に設定された状態にされるのが好ましい。
【0027】
塗工液供給部5の傾斜角φは約70~100度の範囲であり、好ましくは約85~90度の範囲である。このような角度範囲に設定することで、開口39cからスリット7に至る通路40がほぼ鉛直方向下向きとなるため、液貯まり部39に流入した塗工液が液貯まり部39内で滞留することなくよりスムーズに排出され、延いては粒状物が液貯まり部39内に滞留、沈降するのをより効果的に防止できる。従って、粒状物が長手方向(Y方向)に沿って均一に分散した塗工液をスリット7から塗工液パン2に供給でき、塗工液パン2内の塗工液中の粒状物濃度を長手方向(Y方向)により一層均一とし、塗工液を均質化できるものである。
なお、塗工液供給部5の傾斜角φをこのように設定した場合でも、テーパー部40aの傾斜角度δを上記の範囲に設定するのが、塗工液の滞留、粒状物の沈降、蓄積の効果的防止の観点から好ましい。
【0028】
塗工液中の粒状物が液貯まり部39に沈降、蓄積するのをより効果的に防止すべく、液貯まり部39の図5の(a)、図6の(a)等に示す形状を、四角柱(直方体)形状に替えて、例えば、上板(底板)6dのY方向から見た形状が円形で、全体として円筒(円柱)形状となるようにしてよい。もしくは、図5の(a)、図6の(a)等に示す液貯まり部39の少なくとも角部39tの形状を、図5の(c)の斜視図に示すようにY方向から見て円弧状としてもよい。それにより、傾斜角φを90度未満の小さい値とした場合でも、角部39tに塗工液が滞留し粒状物が沈降するのをより効果的に防止することができる。
【0029】
塗工液供給部5の傾斜角φを調整する塗工液供給部傾斜装置50の構成としては、例えば、ステップモーター等のモーターを内蔵し、モーターによりその駆動軸51を所望角度回転させ、駆動軸51に固定された塗工液供給部5を駆動軸51の回転と共に回転させて傾斜角φを調整するようにしてよい。または、塗工液供給部傾斜装置50をラチェットを用いた公知の機構とし、ラチェットによりその中心軸51を所望角度回転させ、中心軸51に固定された塗工液供給部5を回転させて傾斜角φを調整するようにしてもよい。
【0030】
テーパー部40aの水平面に対する傾斜角度δ、スリット7のX方向の幅、塗工液供給部5の傾斜角φ等は、塗工液の粘度、粒状物の種類、比重、塗工液における粒状物の含有割合(重量比)などのファクターの少なくとも一つに応じて適宜設定されるのが好ましい。即ち、例えば、塗工液の粘度が高い程、粒状物の比重が大きい程、塗工液に対する粒状物の含有割合(重量比)が高い程、テーパー部40aの水平面に対する傾斜角度δ、スリット7のX方向の幅、塗工液供給部5の傾斜角φを大きく設定する。
【0031】
次に、塗工液パン2の構成例について図1図2図7等を参照して説明する。塗工液パン2は、図2図3に示す様に平面視において矩形状であり、また、図1に示すような塗工ロール3の長手方向に垂直な断面において、全体としてU字状であって、塗工ロール3に対向する底部12が塗工ロールの下側で下方に湾曲した形状を有する。塗工液パン2は、塗工液供給部5から底部12の塗工液供給部5側上端12a(図7の(b)参照)に至る第1傾斜面11と、底部12と、底部12の塗工液流出部14側上端12b(図7の(b)参照)から塗工液流出部14に至る第2傾斜面13とで構成される。また、第1傾斜面11と塗工液供給部5との境界部11aの位置は、第2傾斜面13と塗工液流出部14との境界部13bの位置より低く構成されている。図2に示すように、塗工液パン2には、液受け槽16側端部を除いて三方向に側壁2a、2b、2cが設けられて塗工液の漏れを防いでいる。
【0032】
塗工液パン2の形状例を、図7の(a)、(b)に示す塗工液パン2の要部の、図2の線I-I‘に沿った側断面図を用いて説明する。
図7の(a)に示す例は、塗工ロール3の長手方向に垂直な断面において、塗工液パン2は全体として円弧状であり、底部12の曲率は塗工ロール3の曲率とほぼ同じか小さい。また、第1傾斜面11の曲率および第2傾斜面13の曲率はほぼ同じでかつ底部12の曲率とほぼ同じか小さく、さらに、塗工ロール3の曲率より小さいものとする。一例として、塗工ロール3の直径が約200mmの場合、塗工液パン2の液貯まり(図7の(a)において塗工液10が溜まっている部分)30の直径は約250mmである。一方、塗工液パン2の全体の曲率、特に第1傾斜面11および第2傾斜面13の曲率を大きくすると、液貯まり30の容積が大きくなり、液貯まり30において塗工液の停滞、延いては経時で粒状物の沈降、蓄積(図7の(a)における部分30a)が生じるので好ましくない。
【0033】
図7の(b)に示す例は、塗工ロール3の長手方向に垂直な断面において、塗工液パン2の第1傾斜面11と、第2傾斜面13を直線状としたものであり、底部12の形状は図7の(a)と同様である。塗工装置の塗工動作待機時(初期時)、即ち、塗工液パン2単体を水平に設置した状態(初期状態)での第1傾斜面11の水平面Hに対する傾斜角度α1および第2傾斜面13の水平面Hに対する傾斜角度α2の許容範囲は約3~30度であり、好ましくは約12~20度、より好ましくは16度程度である。
第2傾斜面13の水平面Hに対する傾斜角度α2は、塗工液の粘度、粒状物の種類(比重)、塗工液に対する粒状物の含有割合(重量比)、塗工ロール3の溝の深さ、基材への塗膜厚さ、ラインスピード(ライン速度)、などのファクターの少なくとも一つに応じて適宜設定されるのが好ましい。即ち、例えば、塗工液の粘度が高い程、粒状物の比重が大きい程、塗工液に対する粒状物の含有割合(重量比)が高い程、塗工ロール3の溝の深さが浅い程、基材への塗膜厚さが薄い程、ラインスピードが遅い程、第2傾斜面13の水平面に対する傾斜角度α2は小さくなるよう設定される。
【0034】
図7の(a)、(b)の塗工液パン2のいずれにおいても、塗工液供給部5から排出された塗工液を円滑に塗工液パン2の液貯まり30に供給でき、さらに液貯まり30の塗工液を順次円滑に塗工液流出部14を介して排出でき、液貯まり30における塗工液の滞留、延いては経時での粒状物の沈降、蓄積を防止できる。
なお、底部12での塗工液の滞留、粒状物の沈降、蓄積防止の観点から、流出側の第2傾斜面13を図7の(b)に示すように直線状とする構成がより好ましい。従って、流入側の第1傾斜面11を湾曲形状とし、流出側の第2傾斜面13を直線状とする構成であってもよい。
【0035】
塗工装置の塗工動作待機時(初期時)、即ち、塗工液パン2単体を水平に設置した状態における塗工液パン2の底部12から、第2傾斜面13の塗工液流出部14との境界部13bまでの鉛直方向の距離(高さ)h1(図7の(a)参照)は約10~30mmの範囲であり、好ましくは約12mm~20mm、より好ましくは15mm程度である。約10mm未満であると塗工ロール3を十分に浸漬させることができず、満足な塗工液を基材に転写させて塗膜を形成することができない。一方、約30mmを超える距離とすると、液溜まりの容積が大きくなり、結果的に塗工液の滞留、粒状物の沈降が生じやすくなり、さらには塗工動作終了後の塗工液パン2内の廃液の量が増えることとなる。
距離h1は、塗工液の粘度、粒状物の種類(比重)、塗工液に対する粒状物の含有割合(重量比)、塗工ロール3の溝の深さ、基材への塗膜厚さ、ラインスピード、などのファクターの少なくとも一つに応じて適宜設定されるのが好ましい。即ち、例えば、塗工液の粘度が高い程、粒状物の比重が大きい程、塗工液に対する粒状物の含有割合(重量比)が高い程、塗工ロール3の溝の深さが浅い程、基材への塗膜厚さが薄い程、ラインスピードが遅い程、距離h1は小さくなるよう設定される。
【0036】
塗工液パン2の底部12と塗工ロール3の底部との鉛直方向の距離h2(図7の(b)参照)は、約8~20mmの範囲であり、好ましくは約10mm~15mm、より好ましくは13mm程度である。約8mm未満の場合には塗工液の流出側への流れが悪く、塗工液が底部12において滞留しやすい。一方、約20mmを超えると、液溜まり30の容積を大きくすることとなり、塗工液の滞留、延いては粒状物の経時での沈降、蓄積が発生しやすくなる。
距離h2は、塗工液の粘度、粒状物の種類(比重)、塗工液に対する粒状物の含有割合(重量比)、などのファクターの少なくとも一つに応じて適宜設定されるのが好ましい。即ち、例えば、塗工液の粘度が高い程、粒状物の比重が大きい程、塗工液に対する粒状物の含有割合(重量比)が高い程、距離h2は小さくなるよう設定される。
【0037】
また、塗工ロール3の底部の液溜まり30への浸漬深さ(浸っている鉛直方向の長さ)h3(図7の(b)参照)は約1~20mmであり、好ましくは約1mm~5mm、より好ましくは2mm程度である。約1mm未満であると、塗工ロール3の浸漬が不十分で満足な量の塗工液を基材に転写させて塗膜を形成することができず、塗膜抜け等が発生する恐れがある。一方、約20mmを超える距離とすると、液溜まり30の容積を大きくする必要があり、塗工液の滞留、延いては粒状物の経時での沈降、蓄積が発生しやすくなる。
浸漬深さh3は、塗工液の粘度、粒状物の種類(比重)、塗工液に対する粒状物の含有割合(重量比)、ラインスピードなどのファクターの少なくとも一つに応じて適宜設定されるのが好ましい。即ち、例えば、塗工液の粘度が高い程、粒状物の比重が大きい程、塗工液に対する粒状物の含有割合(重量比)が高い程、ラインスピードが速い程、浸漬深さh3は大きくなるよう設定され、塗膜抜け等を防止する。
【0038】
次に、塗工液パン2の傾斜角を調整する塗工液パン角度調整部20の一例の概略構成について図1および図3を参照して説明する。
塗工液パン角度調整部20は、図1に示すように、塗工液パン2を支持する支持台26、回転操作を行うためのハンドル21、ハンドル21の回転操作を+Z、-Z方向への直進移動に変換する公知の回転/直進機構22、回転/直進機構22のハンドル21の回転操作に応答した直進移動に応じて+Z、-Z方向へ直進移動するリンク24、リンク24に一端が枢動可能に軸支され他端が支持台26に結合されたアーム25とで構成されている。支持台26は、塗工ロール3の長手方向(Y方向)に沿った回転軸27を回転中心として揺動可能である。
【0039】
塗工液パン角度調整部20の動作について図1図3および図8を参照して説明する。図8の(a)、(b)、(c)は塗工液パン2および塗工液パン角度調整部20等の要部構成を示す、図2の線I-I‘に沿った側断面図である。
操作者がハンドル21の回転操作を行うと、回転/直進機構22を介してリンク24は+Zまたは-Z方向へ直進移動し、それに応じて塗工液パン2は図1図8において時計回りまたは反時計回りに揺動する。例えば、塗工装置の塗工動作待機時(初期時)、即ち、塗工液パン2単体を水平に設置した状態においては、ハンドル21は初期位置にあり、図8の(a)に示すようにアーム25はその長手方向が鉛直方向Vと一致する位置にあり、従って、アーム25の長手方向と鉛直方向Vとの成す角度θは0度である。
【0040】
ハンドル21を初期位置から時計回りに回転すると、図8の(b)に示すように、リンク24は、例えば-Z方向へ直進移動し、それに応じてアーム25は時計回りに角度θ=θ1だけ回動する。それにより、塗工液パン2も時計回りに角度θ=θ1だけ回動するため、第2傾斜面13も時計回りに同一角度θ=θ1だけ回動する。
逆にハンドル21を反時計回りに回転すると、図8の(c)に示すように、リンク24は、+Z方向へ直進移動し、それに応じてアーム25は反時計回りに角度θ=θ2だけ回動するため、第2傾斜面13も反時計回りにアーム25と同一角度θ=θ2だけ回動する。
なお、図8に示す塗工液パン2は、図7の(b)示すように塗工液パン2の第1傾斜面11と、第2傾斜面13を直線状とした例を示す。
【0041】
このように、ハンドル21の回転操作に応じてアーム25の鉛直方向Vに対する傾斜角度θ、延いては塗工液パン2の第1傾斜面11、第2傾斜面13の傾斜角度を任意に調整可能である。なお、ハンドル21の回転操作位置と塗工液パン2の傾斜角度θとの対応関係を明確にすべく、一例として、ハンドル21の回転操作位置に塗工液パン2の傾斜角度θを示す目盛りを表示して、操作者が容易に塗工液パン2の傾斜角度を調整可能としてよい。
【0042】
初期時の状態から、塗工液パン角度調整部20により調整(変更)される塗工液パン2の傾斜角度θは塗工装置の塗工動作待機時(初期時)には通常0度とし、塗工動作時においては、例えば、約2~14度の範囲内とする。従って、塗工動作時において、塗工液パン2の第2傾斜面13の水平面に対する傾斜角はα2+θとなり、通常、約5~44度の範囲内に設定される。
初期時の状態から、塗工液パン角度調整部20により調整(変更)される塗工液パン2の傾斜角度θは、塗工動作の際に、塗工液の粘度、粒状物の種類(比重)、塗工液に対する粒状物の含有割合(重量比)、塗工ロール3の溝の深さ、基材への塗膜厚さ、ラインスピード、などのファクターの少なくとも一つに応じて適宜設定されるのが好ましい。即ち、例えば、塗工液の粘度が高い程、粒状物の比重が大きい程、塗工液に対する粒状物の含有割合(重量比)が高い程、塗工ロール3の溝の深さが浅い程、基材への塗膜厚さが薄い程、ラインスピードが遅い程、塗工液パン2の第2傾斜面13の水平面に対する傾斜角度α2+θは小さくなるよう設定される。
【0043】
このように塗工液パン角度調整部20により塗工液パン2の傾斜角度θを初期時の状態から調整(変更)可能とすることにより、塗工液パン2の第2傾斜面13の水平面に対する傾斜角度α2+θを調整でき、延いては塗工液パン2の液貯まり30の容積、および底部12から第2傾斜面13の塗工液流出部14との境界部13bまでの鉛直方向の距個(高さ)h1等を、上記ファクターの少なくとも一つに応じて適切に上記した範囲に調整できるのである。即ち、例えば距離h1は、上記ファクターの少なくとも一つに応じて上記した約10~30mmの範囲等になるよう、傾斜角度α2+θが調整される。
【0044】
塗工液パン角度調整部20の構成は上記に限られるのものではない。塗工液パン角度調整部の変形例の概略構成について図9および図10を参照して説明する。図9は塗工液パン角度調整部の変形例20Aの要部構成を示す、図2の線I-I‘に沿った側断面図であり、図10は、塗工液パン角度調整部の変形例20Aを図1に示す塗工装置に適用した場合の塗工装置の、上方から見た要部平面図である。
塗工液パン角度調整部20Aは、図9図10に示すように、塗工液パン2を支持する支持台26と、支持台26を回動可能に支持する回転軸27と、1対のボルト(押しボルト)29a、29bと、ボルト29a、29bを貫通させると共にそれらとそれぞれ螺合する1対の貫通孔を有するボルト保持台28とを有する。ボルト29a、29bの各上端は支持台26の下面に当接している。
【0045】
このように構成された塗工液パン角度調整部20Aにおいては、ボルトを回すことでそれを+X、-X方向に移動(上下)させて塗工液パン2の傾斜角を調整できる。例えば、図9において、ボルト29aを回して+X方向に移動させることで支持台26を回転軸27を回転中心として時計回りに回動させ、塗工液パン2を同様に時計回りに回動させることができる。ボルト29bを回して-X方向に移動させることでも同様である。このように、ボルト29aまたは29bの高さ位置を調整することで塗工液パン2の第2傾斜面13の水平面に対する傾斜角(α2+θ)を適切に調整できる。
なお、ボルトは1対としたが、2対以上としてもよい。
【0046】
塗工液パン角度調整部20、20Aにおいては、上記のようにハンドル21またはボルト29a、29bを操作者が手動操作して塗工液パン2の角度調整を行うようにしたが、塗工液の粘度、粒状物の種類(比重)、塗工液に対する粒状物の含有割合(重量比)、塗工ロール3の溝の深さ、基材への塗膜厚さ、ラインスピード、などのファクターの少なくとも一つに応じて自動的に塗工液パン2の角度設定をおこなうようにしてもよい。
【0047】
図11はそのような塗工液パン角度自動設定部70の一例の概略構成図である。塗工液パン角度自動設定部70は、図1等に示す塗工液パン角度調整部20において、回転/直進機構22にモータ、例えば、ステップモータ73を接続し、モータ73の回転を、設定部71および制御部72により制御する。制御部72は、例えば、上記の各ファクターと塗工液パン2の傾斜角度θ(もしくは、モータの回転軸74の回転角度)との関係を示すデータを予め設定したテーブル等のメモリを内蔵している。
操作者が、設定部71に上記のファクターを選択的に設定入力すると、制御部72は入力されたファクターに対応するデータをメモリから読み出し、読みだしたデータに応じてモータ73を制御する。それにより、設定入力されたファクターに応じて、上記のように適切な角度となるよう傾斜角θが制御されるものである。
【0048】
今まで述べてきたような塗工装置、塗工方法を用いて、フィルム等のシート状の基材の面の上に塗料を塗工し、ウェット塗膜を形成し、当該塗膜を熱、紫外線、電子線等の手段により硬化させ、硬化塗膜を生産する事ができる。
硬化塗膜は厚さ約0.1~20μmの範囲で生産され、好ましくは約1~15μm、より好ましくは約1~10μmである。
【0049】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0050】
1 塗工装置
2 塗工液パン
3 塗工ロール
5 塗工液供給部
7 スリット
10 塗工液
14 塗工液排出部
20 塗工液パン角度調整部
39 液貯まり部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図11