(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】空調吹出口の風向調整装置及びその空気浄化シート
(51)【国際特許分類】
F24F 1/008 20190101AFI20241217BHJP
F24F 13/20 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F24F1/008
F24F1/0007 401D
(21)【出願番号】P 2021066409
(22)【出願日】2021-04-09
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】598112279
【氏名又は名称】佐伯 午郎
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 午郎
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3228268(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107642893(CN,A)
【文献】特開2002-213805(JP,A)
【文献】実開平03-072219(JP,U)
【文献】特開2006-247348(JP,A)
【文献】特開2016-158966(JP,A)
【文献】特開2016-002085(JP,A)
【文献】実開平05-017437(JP,U)
【文献】国際公開第2016/060124(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/157338(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/061033(WO,A1)
【文献】特開2020-197330(JP,A)
【文献】特開2003-002050(JP,A)
【文献】実開昭56-080244(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/008
F24F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機に空気調和された空気が吹き出る空調吹出口の前方に配置され、前記空調吹出口から吹き出される空気を受ける面板部と、
前記面板部を前記空調吹出口の前方に取り付ける取付部と、
前記面板部の前記空調吹出口側において、空気浄化成分を担持した多孔シートを複数層にした浄化層部と、を備え
、
前記浄化層部は、前記多孔シートが少なくとも前記面板部の前記空調吹出口側において2層以上となるように1枚のシートを前記面板部に巻き付けて形成されたものである、
空調吹出口の風向調整装置。
【請求項2】
前記多孔シートは、前記空気浄化成分を担持した紙製のシートである、
請求項
1に空調吹出口の風向調整装置。
【請求項3】
前記多孔シートは、孔を規則的に配列したシートであり、
前記浄化層部は、積層方向において隣り合うシート同士の各孔が、前記積層方向に沿って見た場合に異なる位置に配置されている、
請求項1
又は2に記載の空調吹出口の風向調整装置。
【請求項4】
請求項1から
3の何れか一項に記載の空調吹出口の風向調整装置が備える前記浄化層部形成用の、前記空気浄化成分を担持した前記多孔シートである、
空調吹出口の風向調整装置の空気浄化シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、空調吹出口の風向調整装置及びその空気浄化シートを開示する。
【背景技術】
【0002】
ビルや店舗、病院、家屋等の各種建物には、室内の空気調和を行う空調機が設置されている。空調機には、天井や壁等に埋め込むタイプや、天井から吊り下げるタイプ、壁面に据え付けるタイプがあるが、何れも空気調和された空気を室内へ吹き出す空調吹出口が備わっている点で共通する。
【0003】
ところで、空気の比重が温度に反比例するため、暖かい空気は室内の上部に溜まる。また、冷たい空気は室内の下部に溜まる。よって、空調機は、例えば、冷房運転を行う場合には室内の上部に溜まる暖かい空気を効率的に吸い込んで空気調和できるように、空調吹出口から室内の下部へ向けて冷気を吹き出す。したがって、空調吹出口から吹き出る冷気が室内の人へ当たるのを避けるために、例えば、特許文献1に示すような、空調吹出口の風向を調整する器具が市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、空気中を漂うウイルスの感染予防策や、その他各種の空気浄化手段への関心が高まっている。しかし、例えば、ウイルスは、花粉や微小粒子状物質(PM:Particulate Matter)よりも微細である。よって、空気調和機のフィルタでウイルスを捕集することはできない。また、ウイルスを捕集可能な性能のフィルタを空気調和機の吸込口あるいは吹出口に取り付けると、通気性が著しく低下するため、空気調和機の性能が大きく低下する。
【0006】
そこで、本願は、空気調和機の性能低下を抑制しながら、空気を浄化することが可能な空調吹出口の風向調整装置及びその空気浄化シートを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、空調吹出口から吹き出される空気を受ける風向調整装置の面板部の空調吹出口側に、空気浄化成分を担持した多孔シートを複数層にした浄化層部を設けることにした。
【0008】
詳細には、本発明は、空調吹出口の風向調整装置であって、空調機に空気調和された空気が吹き出る空調吹出口の前方に配置され、空調吹出口から吹き出される空気を受ける面板部と、面板部を空調吹出口の前方に取り付ける取付部と、面板部の空調吹出口側において、空気浄化成分を担持した多孔シートを複数層にした浄化層部と、を備える。
【0009】
このような風向調整装置であれば、空調吹出口から吹き出た空気は、風向を調整する面板部の空調吹出口側の面に沿うように流れる際、浄化層部に接触しながら流れるため、空調吹出口から吹き出る空気の流れが阻害されにくい。よって、空調機の性能低下を抑制しながら、空気を浄化することが可能である
【0010】
なお、浄化層部は、多孔シートが少なくとも面板部の空調吹出口側において2層以上と
なるように1枚のシートを面板部に巻き付けて形成されたものであってもよい。これによれば、浄化層部を容易に設けることができる。
【0011】
また、多孔シートは、空気浄化成分を担持した紙製のシートであってもよい。これによれば、使用済みのものを可燃物として廃棄することができる。
【0012】
また、多孔シートは、孔を規則的に配列したシートであり、浄化層部は、積層方向において隣り合うシート同士の各孔が、積層方向に沿って見た場合に異なる位置に配置されていてもよい。これによれば、多孔シートに担持されている空気浄化成分が空気と触れ合い、空気浄化成分が空気により確実に作用する。
【0013】
また、本発明は、例えば、上記何れかに記載の空調吹出口の風向調整装置が備える浄化層部形成用の、空気浄化成分を担持した多孔シートである、空調吹出口の風向調整装置の空気浄化シートであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記の空調吹出口の風向調整装置及びその空気浄化シートであれば、空気調和機の性能低下を抑制しながら、空気を浄化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、空調機の空調吹出口から吹き出された空気の風向を調整する風向調整装置の取付状態の一例である。
【
図3】
図3は、風向調整装置に装着される空気浄化シートの一例を示した図である。
【
図4】
図4は、空気浄化シートをウィングプレートに装着した状態の風向調整装置を示した図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す符号A-Aの線における風向調整装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の一形態であり、本発明の技術的範囲を下記の実施形態に限定するものではない。
【0017】
図1は、空調機1の空調吹出口2から吹き出された空気の風向を調整する風向調整装置3の取付状態の一例である。風向調整装置3は、
図1に示すように、空調機に空気調和された空気が吹き出る空調吹出口2の前方に配置され、空調吹出口2から吹き出される空気を受けるウィングプレート4(本願でいう「面板部」の一例である)と、ウィングプレート4を空調吹出口2の前方に取り付けるためのアーム5(本願でいう「取付部」の一例である)とを備える。
【0018】
図2は、風向調整装置3の斜視図である。ウィングプレート4は、プラスチックその他の合成樹脂で形成されており、その全体形状は、ほぼ長方形で浅底の容器のような形状をしている。また、ウィングプレート4は、その主面部6の一側縁を除き、長手方向両端縁及び残りの一側縁が、主面部6に対し直角に立設された壁部7L,7S,7Sを有する。壁部7Lは、全体的に長方形のウィングプレート4の長辺に沿って延在する壁部である。また、壁部7S,7Sは、ウィングプレート4の短辺に沿って延在する壁部である。ウィングプレート4は、当該壁部7L,7S,7Sが形成されていない一側縁に、主面部6に連続しかつ緩やかに湾曲する湾曲部8を有する。
【0019】
主面部6の上面には、主面部6の長手方向に沿って等間隔で立設される補強リブ9,9
が設けられており、浅底の容器状の全体形状を呈するウィングプレート4を3つの区画10L,10C,10Rに仕切っている。そして、各補強リブ9,9には、アーム5を1軸で回動自在にウィングプレート4へ取り付けるためのヒンジ11が設けられている。
図2では、アーム5の上側が省略されているが、アーム5は、
図1に示したように天井と空調機1との境界付近に取り付けられている。壁部7S,7Sと補強リブ9,9には、断熱用マットを主面部6との間に挟むようにして断熱用マットを固定する爪13F,13Rが各々設けられている。断熱マットは、ウィングプレート4の下面が結露するのを防止したい場合に装着される。
【0020】
図3は、風向調整装置3に装着される空気浄化シート20の一例を示した図である。空気浄化シート20は、矩形のシート本体21と、シート本体21に縦横に配列される通気孔22とを有する多孔シートである。シート本体21は、空気浄化成分を担持したシートである。シート本体21が担持する空気浄化成分としては、例えば、消臭や抗菌、抗ウイルス性を有する金属イオン、消臭能力や大気汚染物質の二酸化窒素(NO
2)を除去する能力があるとされているトドマツの成分、その他各種の成分が挙げられる。これらの空気浄化成分を担持するシート本体21としては、各種の素材のものを適用できる。シート本体21としては、例えば、金属イオンを変性セルロースの表面に担持させた紙製のシートが好適である。紙製のシートであれば、使用済みのものを可燃物として廃棄することができるため、自然環境への影響を抑制できる。
【0021】
シート本体21に縦横に配列される通気孔22は、直径が3~5mm程度の円形の孔である。通気孔22は、
図3に示されるように、縦横に規則的に配列されている。そして、各通気孔22同士の間は、1~3mm程度となっている。通気孔22は、縦横に規則的に配列される形態に限定されるものでなく、例えば、特定の行に対して列が斜めに交差するように配列される形態であってもよい。
【0022】
図4は、空気浄化シート20をウィングプレート4に装着した状態の風向調整装置3を示した図である。空気浄化シート20は、例えば、
図4に示すように、風向調整装置3のウィングプレート4に巻き付けられる。風向調整装置3にはアーム5が2つ設けられているため、空気浄化シート20をウィングプレート4に巻き付ける際は、
図4に示すように、アーム5に干渉しないように空気浄化シート20を3分割にする。そして、ウィングプレート4のうち区画10L,10C,10Rのそれぞれに対応する位置に空気浄化シート20を巻き付ける。ウィングプレート4に巻き付けた空気浄化シート20の端部は、例えば、粘着テープ等で固定される。
【0023】
図5は、
図4に示す符号A-Aの線における風向調整装置3の断面図である。
図5に示すブロック矢印と、部分拡大図の破線枠内に示す破線の矢印線は、空調機1の空調吹出口2から吹き出される空気の流れを示した図である。上述したように、風向調整装置3は、空調吹出口2の前方に配置され、空調吹出口2から吹き出される空気をウィングプレート4が受ける。そして、ウィングプレート4は、主要部分を形成する平坦な板状の主面部6と、主面部6の縁から立設される壁部7Lと、主面部6に連続しかつ緩やかに湾曲する湾曲部8を有しているため、ウィングプレート4に巻き付けられた空気浄化シート20の内側に内側空間4Sを形成する。そして、空気浄化シート20は、
図5に示されるように、少なくともウィングプレート4の空調吹出口2側において二重になるようにウィングプレート4へ巻き付けられる。よって、空気浄化シート20は、ウィングプレート4の空調吹出口2側において2層構造になっている。そして、空気浄化シート20は、ウィングプレート4の空調吹出口2側において、壁部7Lの頂部と湾曲部8の頂部との間に掛け渡された状態となっている。よって、空気浄化シート20は、ウィングプレート4の空調吹出口2側においては、二重になっている空気浄化シート20同士がやや隙間を空けた状態になっており、
図5の部分拡大図に示すように、二重構造の空気浄化シート20の間を、通気
孔22を通過した空気が通る。このため、空気浄化シート20のうちウィングプレート4の空調吹出口2側は、通気孔22を通過する空気を、シート本体21に担持されている空気浄化成分で浄化する浄化層部4Jを形成している。また、
図5の部分拡大図に示すように、積層方向において隣り合う空気浄化シート20同士の各通気孔22が、積層方向に沿って見た場合に異なる位置に配置されている。したがって、
図5の部分拡大図が示すように、空調吹出口2から風向調整装置3へ吹き付けられた空気は、二重になっている空気浄化シート20の各通気孔22を通って内側空間4Sを出入りする際、各通気孔22を直線状に通過するのではなく、各通気孔22を蛇行しながら通過する。このため、通気孔22を通過する空気は、空気浄化成分が担持されているシート本体21の表面に確実に接触しながら内側空間4Sを出入りする。これにより、シート本体21に担持されている空気浄化成分が空気と触れ合い、空気浄化成分が空気により確実に作用する。
【0024】
空調機1は、ウィングプレート4の空調吹出口2側にこのような浄化層部4Jを有しているため、空調吹出口2から吹き出される空気を浄化可能である。また、空調機1は、浄化層部4Jを、空調吹出口2から吹き出される空気を整流する板状の主面部6とほぼ同様な形態で形成しているので、空調吹出口2や吸込口をシート状のフィルタで覆うような形態に比べて、空調吹出口2から吹き出る空気の流れを阻害しない。よって、空調機1の性能低下を抑制しながら、空気を浄化することが可能である。また、例えば、消臭や抗菌、抗ウイルス性を有する金属イオンをシート本体21に空気浄化成分として担持させた空気浄化シート20であれば、空調機1の性能低下を抑制しながら、空気中のウイルスを不活化可能である。
【0025】
なお、風向調整装置3は、上述した実施形態に限定されるものではない。風向調整装置3は、例えば、空気浄化シート20をフレーム状のものに2層以上で固定し、ウィングプレート4の空調吹出口2側に装着したものであってもよい。また、風向調整装置3は、例えば、空気浄化シート20がウィングプレート4の空調吹出口2側で3層以上になるようにウィングプレート4へ空気浄化シート20を巻き付けたものであってもよい。また、風向調整装置3は、積層方向において隣り合う空気浄化シート20同士の各通気孔22が、積層方向に沿って見た場合に同じ位置に配置されていてもよい。また、風向調整装置3は、ウィングプレート4の空調吹出口2側において、空気浄化シート20を複数層にしたその他各種の形態へ変更可能である。また、風向調整装置3は、ウィングプレート4が
図2に示す形状に限定されるものでなく、空調吹出口2から吹き出される空気を板状の面で受けることが可能な如何なる形態であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1・・空調機
2・・空調吹出口
3・・風向調整装置
4・・ウィングプレート
5・・アーム
6・・主面部
7L,7S・・壁部
8・・湾曲部
9・・補強リブ
10L,10C,10R・・区画
11・・ヒンジ
13F,13R・・爪
20・・空気浄化シート
21・・シート本体
22・・通気孔
4S・・内側空間
4J・・浄化層部