(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】支持浮体
(51)【国際特許分類】
B63B 77/00 20200101AFI20241217BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20241217BHJP
A01K 61/60 20170101ALI20241217BHJP
【FI】
B63B77/00
B63B35/00 Z
A01K61/60 321
(21)【出願番号】P 2021066895
(22)【出願日】2021-04-12
【審査請求日】2023-11-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、平成30年度、平成31年度(令和元年度)、令和2年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター、「知」の集積と活用の場による研究開発モデル事業、「大規模沖合養殖システム実用化」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 亮二
(72)【発明者】
【氏名】田熊 靖史
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 康文
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-49587(JP,A)
【文献】特開昭63-207788(JP,A)
【文献】特開平1-231828(JP,A)
【文献】特開2016-159887(JP,A)
【文献】特開昭52-5175(JP,A)
【文献】米国特許第6347909(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 27/00,35/00,75/00,77/00,
A01K 61/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海面よりも上方に位置する浮体構造物に対して前記海面側から取り付けられるフレーム構造体と、
前記海面に浮かびつつ前記フレーム構造体を介して前記浮体構造物を支持可能な浮力を有する浮力体と、を備え、
前記フレーム構造体は、前記浮力体の前記浮力が減少する、または、前記浮力体が前記フレーム構造体から取り外されることにより、前記浮体構造物が前記海面に着水するまで沈下し、
前記フレーム構造体は、上方が開放された断面矩形の溝を形成しており、前記溝には、前記浮体構造物を構成する枠体の一部が嵌合可能である、支持浮体。
【請求項2】
前記フレーム構造体は、前記溝を形成する接続部と、前記浮力体を保持する保持部と、前記接続部と前記保持部との間に配置される柱フレームとを備え、
前記柱フレームは、鉛直方向に隣り合う複数のフレーム部材と、前記フレーム部材同士を連結する継手とを含む、請求項1に記載の支持浮体。
【請求項3】
海面よりも上方に位置する浮体構造物に対して前記海面側から取り付けられるフレーム構造体と、
前記海面に浮かびつつ前記フレーム構造体を介して前記浮体構造物を支持可能な浮力を有する浮力体と、を備え、
前記フレーム構造体は、前記浮力体の前記浮力が減少する、または、前記浮力体が前記フレーム構造体から取り外されることにより、前記浮体構造物が前記海面に着水するまで沈下し、
前記フレーム構造体は、前記浮体構造物に接続される接続部と、前記浮力体を保持する保持部と、前記接続部と前記保持部との間に配置される柱フレームとを備え、
前記柱フレームは、鉛直方向に隣り合う複数のフレーム部材と、前記フレーム部材同士を連結する継手とを含む、支持浮体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体構造物の浜出し方法に利用される支持浮体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、陸上で組み立てた生簀を海面上に移送する浜出し方法において、岸壁上に置かれた生簀をクレーンで吊り上げ、海面に移動させた後、海面に吊り下ろす作業を行うことが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の浜出し方法では、生簀が大型化することに伴ってリーチの長い大型のクレーンを利用する必要があり、クレーンの準備にかかる費用や手間が大きくなってしまう。
このような問題は、生簀だけに限らず、陸上での組み立て後に海面上に移送される浮体構造物全体に共通する。
【0005】
本発明は、浮体構造物が大型化した場合であっても浜出しにかかる費用や手間を抑制できる浜出し方法に利用される支持浮体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の浜出し方法は、岸壁上に置かれた浮体構造物を前記岸壁から海面に向かう進行方向に移動させ、前記進行方向における前記浮体構造物の前方部分を前記岸壁から前記海面の上方に張り出させる張り出し工程と、前記浮体構造物の前記岸壁から張り出される前記前方部分に支持浮体を取り付け、前記海面に浮かぶ前記支持浮体に前記浮体構造物の前記前方部分を支持させる前方支持工程と、前記支持浮体に前記浮体構造物の前記前方部分を支持させたまま、前記浮体構造物の前記前方部分よりも前記進行方向の後側である後方部分を支持する後方支持工程と、前記前方部分および前記後方部分を支持された前記浮体構造物の全部を前記海面の上方に移動させる移動工程と、前記移動工程後、前記浮体構造物の前記前方部分および前記後方部分を降下させることで、前記浮体構造物を前記海面に着水させる着水工程と、を含む。
このような方法では、浮体構造物の前方部分が支持浮体に支持されるため、浮体構造物の全部をクレーンで吊り上げる必要がなく、浮体構造物の前方部分よりも後側の後方部分を小型クレーンなどにより支持すればよい。よって、浮体構造物が大型化した場合であっても、浮体構造物の浜出しにかかる費用や手間を抑制できる。
なお、浮体構造物としては、例えば生簀が挙げられる。
【0007】
本発明の浜出し方法において、前記着水工程は、前記支持浮体に充填された空気を抜くことにより、前記支持浮体を沈下させる工程を含むことが好ましい。これにより、空気を抜くという簡単な作業で浮体構造物を着水させることができる。
【0008】
本発明の浜出し方法は、前記着水工程後、前記浮体構造物から前記支持浮体を取り外し、前記支持浮体を回収する回収工程をさらに含むことが好ましい。このような回収工程によれば、支持浮体の再利用が可能である。
【0009】
本発明の浜出し方法では、前記前方支持工程において、前記支持浮体は、前記進行方向または前記進行方向に対する直交方向に並列配置される複数の浮力体を有することが好ましい。
複数の浮力体が進行方向に並列配置される場合、支持浮体は、支持浮体が海面上を進行方向に移動する際に作用するモーメントに対抗することができる。また、複数の浮力体が直交方向に並列配置される場合、支持浮体は、岸壁の縁に沿った方向(すなわち直交方向)に沿って流れる潮流から浮力体に作用するモーメントに対抗することができる。これにより、浮体構造物の姿勢が意図せずに傾斜することを抑制できる。
【0010】
本発明の浜出し方法において、前記前方支持工程は、前記浮体構造物の前記前方部分に対して、前記進行方向に対する直交方向に並列配置される複数の前記支持浮体を取り付ける工程を含むことが好ましい。
複数の支持浮体を直交方向に並列配置させることで、浮体構造物は、岸壁の縁に沿った方向(すなわち直交方向)に沿って流れる潮流から浮力体に作用するモーメントに対抗することができる。これにより、浮体構造物の姿勢が意図せずに傾斜することを抑制できる。
【0011】
本発明の浜出し方法において、前記後方支持工程は、前記海面に浮かぶ他の支持浮体に前記浮体構造物の前記後方部分を支持させる工程を含むことが好ましい。これにより、浮体構造物の後方部分についてもクレーンを用いずに支持することができ、クレーンを準備する必要がなくなる。よって、浮体構造物の浜出しにかかる費用や手間をより低減できる。
【0012】
本発明の支持浮体は、海面よりも上方に位置する浮体構造物に対して、前記海面側から取り付けられるフレーム構造体と、前記海面に浮かびつつ前記フレーム構造体を介して前記浮体構造物を支持可能な浮力を有する浮力体と、を備え、前記フレーム構造体は、前記浮力体の前記浮力が減少する、または、前記浮力体が前記フレーム構造体から取り外されることにより、前記浮体構造物が前記海面に着水するまで沈下する。
本発明の支持浮体によれば、前述した本発明の浜出し方法を好適に実施できる。
【0013】
本発明の支持浮体において、前記フレーム構造体は、上方が開放された断面矩形の溝を形成しており、前記溝には、前記浮体構造物を構成する枠体の一部が嵌合可能であることが好ましい。
このような構成では、支持浮体が浮体構造物を支持している間、海面から受ける力によって支持浮体が意図せずに回転移動することを防止できる。また、支持浮体のフレーム構造体を沈下させた際、フレーム構造体からフレーム部材を自然と離脱させることができる。これにより、支持浮体を浮体構造物から取り外すことが容易になる。
【0014】
本発明の支持浮体において、前記フレーム構造体は、前記浮体構造物に接続される接続部と、前記浮力体を保持する保持部と、前記接続部と前記保持部との間に配置される柱フレームとを備え、前記柱フレームは、鉛直方向に隣り合う複数のフレーム部材と、前記フレーム部材同士を連結する継手とを含むことが好ましい。
このような構成では、継手の部分に調整部材を入れることにより、接続部と保持部との間の鉛直方向の距離を変更することができ、様々な海面高さにおいて支持浮体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態の浜出し方法を行う対象である生簀を示す斜視図。
【
図2】前記第1実施形態の浜出し方法に利用される支持浮体を示す側面図。
【
図3】
図2の支持浮体を矢印III方向から見たときの側面図。
【
図4】前記第1実施形態の浜出し方法の設置工程を示す図。
【
図6】前記第1実施形態の浜出し方法の張り出し工程を示す図。
【
図7】前記第1実施形態の浜出し方法の取付工程を示す図。
【
図8】前記第1実施形態の浜出し方法の取付工程~移動工程における生簀を上方から見たときの図。
【
図9】前記第1実施形態の浜出し方法の空気充填工程を示す図。
【
図10】前記第1実施形態の浜出し方法の後方支持工程を示す図。
【
図11】前記第1実施形態の浜出し方法の移動工程を示す図。
【
図12】前記第1実施形態の浜出し方法の着水工程を示す図。
【
図13】前記第1実施形態の浜出し方法の回収工程を示す図。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る浜出し方法の後方支持工程を示す図。
【
図15】前記第2実施形態の浜出し方法の移動工程を示す図。
【
図16】前記第2実施形態の浜出し方法の着水工程を示す図。
【
図17】前記第2実施形態の浜出し方法の回収工程を示す図。
【
図18】前記第2実施形態の浜出し方法の後方支持工程における生簀を上方から見たときの図。
【
図19】本発明の第3実施形態に係る浜出し方法の前方取付工程を示す図。
【
図20】前記第3実施形態の浜出し方法の着水工程を示す図。
【
図21】前記第1実施形態の取付工程の変形例を示す図。
【
図22】前記第1実施形態の取付工程の他の変形例を示す図。
【
図23】前記第1実施形態の支持浮体の変形例を示す側面図。
【
図24】前記第1実施形態の支持浮体の他の変形例を示す側面図。
【
図25】前記第1実施形態の支持浮体の他の変形例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
本実施形態の浜出し方法は、浮体構造物を陸上から海面上に移送する方法であり、以下では、
図1に示されるような生簀10を浮体構造物として説明を行う。
【0017】
(生簀10)
図1における生簀10は、海洋上の所定位置に定置されるものであり、飼育する魚介類を囲い込むための網11と、網11の形状を箱状に保つための枠体12とを備える。枠体12は、海面付近に配置されて網11を吊り下げる。また、枠体12は、矩形の枠形状を形成する複数のフレーム部材121と、枠形状の角部を補強する複数の補強部材122とを有する。
なお、生簀10の具体的な形状は特に限定されない。また、生簀10は、ブイなどに浮力を与えられるタイプでもよいし、枠体12に空気を出し入れさせる空気タンクが設置された浮沈式タイプでもよい。
【0018】
(支持浮体20)
本実施形態の浜出し方法は、
図2および
図3に示されるような支持浮体20を利用して行われる。
図2および
図3における支持浮体20は、後述するように、岸壁Qから突き出した生簀10の一部を海面側から支持するものであり(例えば
図7参照)、生簀10に取り付け可能なフレーム構造体21と、海面Sに浮かびつつフレーム構造体21を介して生簀10を支持可能な浮力を有する一対の浮力体25とを備える。なお、支持浮体20の説明では、支持浮体20使用時の鉛直方向に沿った方向をZ軸とし、Z軸に直交する任意の方向をX軸とし、Z軸およびX軸にそれぞれ直交する方向をY軸とする。
【0019】
フレーム構造体21は、生簀10の枠体12のフレーム部材121に接続される接続部22と、浮力体25を保持する保持部23と、接続部22と保持部23との間に配置される複数の柱フレーム24とを有する。
【0020】
接続部22は、複数の溝ユニット22Aを有する。溝ユニット22Aは、X軸に沿って配置された梁部221と、X軸に沿って並列配置されかつ梁部221からZ軸上側に突出する一対の突起部222とを有し、一対の突起部222の間には上方が開放された矩形断面の溝223が形成される。溝223内には、生簀10の枠体12のフレーム部材121が嵌合可能である。
【0021】
保持部23は、水平方向に沿って配置される梁部231と、梁部231からZ軸下側に突出する複数の突起部232とを有する。本実施形態には2対の突起部232が設けられており、対となる突起部232の間にそれぞれ浮力体25が挟持される。
【0022】
柱フレーム24は、接続部22の梁部221と保持部23の梁部231との間を接続する。この柱フレーム24は、鉛直方向に隣り合う2つのフレーム部材241と、これらフレーム部材241同士を連結する継手242と、を含む。
柱フレーム24は、継手242の部分に調整部材を追加することで、Z軸方向の寸法を調整することができる。継手242や調整部材の具体的な種類は特に限定されない。例えば、フレーム部材241の端部に設けられたフランジ継手同士が接合した構造を継手242とする場合、調整部材として、両端にフランジ継手を設けられた追加フレーム部材が2つのフレーム部材241の間に追加されてもよい。
なお、本実施形態の各柱フレーム24は、Z軸に平行に配置されるため、柱フレーム24の寸法変更に合わせて、フレーム構造体21における他のフレーム(例えば梁部221など)の寸法を変更する必要はない。仮に、柱フレーム24がZ軸に対して傾斜して配置されている等、柱フレーム24の寸法変更に合わせて他のフレームの寸法を変更する必要がある場合、当該他のフレームは、柱フレーム24と同様に、調整部材を追加可能な継手を含んでもよい。
【0023】
浮力体25は、例えばエアバッグなど、空気を出し入れ可能な容器である。本実施形態の浮力体25は、空気を充填された状態で円筒形状を有し、Y軸に沿って配置される。また、浮力体25は、保持部23における一対の突起部232間に保持される。なお、ロープや金具等を用いて保持部23に取り付けられてもよい。
【0024】
(浜出し方法)
本実施形態の浜出し方法は、前述した支持浮体20を用いて生簀10を陸上(岸壁Q)から海面上に移送する。本実施形態の浜出し方法の手順について、
図4~
図13を参照して説明する。
【0025】
先ず、
図4および
図5のように、生簀10を岸壁Q上で組み立て、移動機構30に設置する(設置工程)。
ここで、移動機構30は、岸壁Q上に設置された一対のレール31(軌条敷鉄板)と、各レール31上に設置された複数の移動体32A,32Bとを有する。各レール31は、岸壁Qから海面Sに向かう方向(進行方向D1)に沿って延びている。移動体32A,32Bは、生簀10の負荷を受けた状態でレール31上を移動可能な手段であり、例えばローラー台車などである。各レール31において、進行方向D1の前方に配置される移動体32Aは、生簀10のうち、後述にて岸壁Qから海面S上に張り出される前方部分10A(
図6参照)よりも進行方向D1の後側を支持する。また、各レール31において移動体32Aよりも後側に配置される移動体32Bは、生簀10の後端部を支持する。
なお、生簀10は、進行方向D1の前方におけるフレーム部材121が進行方向D1に直交するように配置される。
また、設置工程では、生簀10の枠体12が移動体32A,32Bに支持されればよく、網11は、ロープなどで枠体12にまとめられればよい。仮に、生簀10が網11の下部に接続される下側枠体を備える場合、枠体12と下側枠体との間に複数の角材を配置し、枠体12および下側枠体を互いに干渉しないように重ね合わせた状態で移動機構30に設置すればよい。
【0026】
次に、
図6のように、生簀10をレール31に沿って進行方向D1に移動させ、生簀10の前方部分10Aを岸壁Qから海面Sの上方に張り出させる(張り出し工程)。
このとき、
図5に示すような牽引ワイヤー41、滑車42および牽引手段43(例えばウィンチ)の組み合わせを利用することで、生簀10を進行方向D1に牽引する。なお、牽引ワイヤー41、滑車42および牽引手段43の組み合わせは、進行方向D1に直交する直交方向D2における生簀10の両側に設置されることが好ましい。
また、生簀10における前方部分10Aの範囲、すなわち、岸壁Qから海面Sの上方に張り出される生簀10の範囲は、特に限定されないが、少なくとも後述の取付工程で支持浮体20を取り付け可能な範囲であって、岸壁Qから張り出された際に生簀10が海面Sに落下しない範囲内であることが好ましい。例えば、生簀10における前方部分10Aは、進行方向D1において、生簀10の重心よりも前方の部分である。
【0027】
次に、
図7のように、生簀10の前方部分10Aに対して支持浮体20を取り付ける(取付工程)。この取付工程では、
図8に示すように、生簀10の前方部分10Aに対して、直交方向D2に並列配置される2つの支持浮体20が取り付けられる。また、支持浮体20は、前述した支持浮体20のX軸が進行方向D1に沿うように配置され、支持浮体20における2つの浮力体25は、進行方向D1に並列配置される。
ここで、支持浮体20の各浮力体25は空気が抜かれた状態であり、支持浮体20は、生簀10の前方部分10Aに対して海面S側から近づく。そして、生簀10の前方部分10Aに含まれるフレーム部材121は、支持浮体20の各溝ユニット22Aの溝223に嵌合する(
図2参照)。
【0028】
その後、
図9のように、支持浮体20の各浮力体25に対して空気を充填する(空気充填工程)。なお、浮力体25へ空気を充填する際、岸壁Qに設置されたエアコンプレッサ(図示省略)と浮力体25の空気充填口とをホースなどで接続し、エアコンプレッサを駆動すればよい。
前述の取付工程および空気充填工程は、本発明の前方支持工程に対応しており、この前方支持工程によれば、支持浮体20は、海面Sに浮かびつつ生簀10の前方部分10Aを支持する。
【0029】
次に、支持浮体20が生簀10の前方部分10Aを支持した状態のまま、生簀10をレール31に沿って進行方向D1に移動させる。
生簀10の移動時、前述の張り出し工程と同様、牽引ワイヤー41、滑車42および牽引手段43の組み合わせを利用することで、生簀10を進行方向D1に牽引する(
図5参照)。このとき、生簀10の移動に合わせて各レール31の移動体32Aを取り除き、移動体32Bが各レール31における岸壁Qの端部に到達するまで生簀10を移動させる。これにより、
図10のように、生簀10の後方部分10Bが岸壁Qの端部に配置される。
そして、クレーン50のフック51を岸壁Q上にある生簀10の後方部分10Bに取り付け、このクレーン50を用いて生簀10の後方部分10Bを吊り上げることで、後方部分10Bを支持する(後方支持工程)。
【0030】
その後、
図11のように、生簀10の水平姿勢を保ったままフック51の位置を海面S上に移動させることで、生簀10を完全に海面Sの上方に移動させる(移動工程)。このとき、支持浮体20は、生簀10の前方部分10Aを支持した状態のままである。
【0031】
なお、前方支持工程後における生簀10の移動時には、
図8に示すような牽引ワイヤー44、滑車45および牽引手段46の組み合わせを、直交方向D2における生簀10の両側にそれぞれ設置し、生簀10に対して直交方向D2の引張力を両側から加えることが好ましい。これにより、生簀10が潮流方向に流されることを抑制でき、進行方向D1に進む生簀10の姿勢を保持できる。
【0032】
次に、
図12のように、生簀10の前方部分10Aおよび後方部分10Bを降下させることで、生簀10を海面Sに着水させる(着水工程)。このとき、浮力体25の空気を抜くことで、浮力体25の浮力を減少させ、支持浮体20を自重で沈下させる。また、クレーン50は、支持浮体20の沈下に合わせてフック51の位置を下げる。これにより、生簀10は、水平姿勢を保ったまま海面Sに近づき、着水する。
【0033】
次に、
図13のように、支持浮体20を生簀10から取り外し、取り外された支持浮体20を回収する(回収工程)。
この回収工程では、前述の着水工程から引き続き、浮力体25の空気を抜き、支持浮体20を自重で沈下させる。
また、支持浮体20を回収する際には、小型クレーン56が設置された船舶55を利用できる。例えば、小型クレーン56が設置された船舶55を生簀10付近に停泊させ、小型クレーン56のフック57を支持浮体20に取り付けた状態で浮力体25の空気を抜くことで、支持浮体20を沈下させる。そして、小型クレーン56がフック57を引き上げることで、支持浮体20を船舶55に回収することができる。
【0034】
以上によれば、生簀10を岸壁Qから海面S上に移送することができる。その後、生簀10を所望の海域に牽引し、網11および枠体12をまとめていたロープなどを取り外すことで、生簀10の設置が完了する。
【0035】
(本実施形態の効果)
本実施形態の浜出し方法は、前述したように、生簀10の前方部分10Aを岸壁Qから海面Sの上方に張り出させる張り出し工程と、支持浮体20に生簀10の前方部分10Aを支持させる前方支持工程と、支持浮体20に前方部分10Aを支持させたまま、生簀10の後方部分10Bを支持する後方支持工程と、生簀10の全部を海面S上に移動させる移動工程と、移動工程後、生簀10を海面Sに着水させる着水工程と、を含む。このような方法では、生簀10の前方部分10Aが支持浮体20に支持されるため、生簀10の全部をクレーンで吊り上げる必要がなく、生簀10の前方部分10Aよりも後側の後方部分10Bを小型のクレーン50により支持すればよい。よって、生簀10が大型化した場合であっても、生簀10の浜出しにかかる費用や手間を抑制できる。
【0036】
本実施形態の浜出し方法において、着水工程は、支持浮体20の浮力体25に充填された空気を抜くことにより、支持浮体20を沈下させる。これにより、空気を抜くという簡単な作業で生簀10を容易に着水させることができる。
【0037】
本実施形態の浜出し方法は、着水工程後、生簀10から支持浮体20を取り外し、支持浮体20を回収する回収工程をさらに含む。この回収工程によれば、支持浮体20の再利用が可能である。
また、本実施形態では、浮力体25の空気をさらに抜き、支持浮体20をさらに沈下させることで、生簀10から支持浮体20を取り外している。これにより、生簀10から支持浮体20を取り外す作業が容易である。
【0038】
本実施形態の浜出し方法において、支持浮体20は、生簀10の進行方向D1に並列配置される複数の浮力体25を有する。これにより、支持浮体20が海面S上を進行方向D1に移動する際に作用するモーメントに対抗することができ、生簀10の姿勢が意図せずに傾斜することを抑制できる。
【0039】
本実施形態の浜出し方法では、生簀10の前方部分10Aに対して、進行方向D1に直交する直交方向D2に並列配置される複数の支持浮体20を取り付ける。
一般に、岸壁Q付近の海面Sには、岸壁Qの縁に沿った方向、すなわち直交方向D2に沿って流れる潮流が存在する(例えば
図8参照)。直交方向D2に複数の支持浮体20を並列配置させることで、潮流から浮力体25に作用するモーメントに対抗することができ、生簀10の姿勢が意図せずに傾斜することを抑制できる。
【0040】
本実施形態の支持浮体20は、フレーム構造体21および浮力体25を有するものであり、前述した本実施形態の浜出し方法を好適に実施することができる。
例えば、フレーム構造体21は、上方が開放された断面矩形の溝223を形成する接続部22を有している。このため、生簀10の前方部分10Aにおけるフレーム部材121を接続部22の溝223内に嵌合させることで、フレーム構造体21を生簀10に取り付けることができる。このような構成では、支持浮体20が生簀10を支持している間、海面Sから受ける力によって支持浮体20が意図せずに回転することを防止できる。また、支持浮体20のフレーム構造体21を沈下させた際、フレーム構造体21の接続部22をフレーム部材121から自然と離脱させることができる。これにより、支持浮体20を生簀10から取り外すことが容易になる。
【0041】
また、フレーム構造体21の柱フレーム24は、鉛直方向に隣り合うフレーム部材241を連結する継手242を含む。このような構成では、継手242の部分に調整部材を追加することにより、柱フレーム24の鉛直方向の長さを変更することができ、様々な海面高さにおいて支持浮体20を利用することができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態について、
図14~
図18に基づいて説明する。
第2実施形態の浜出し方法は、第1実施形態と同様の支持浮体20を利用して生簀10を陸上から海面S上に移送する方法であり、前述の空気充填工程(
図9参照)まで第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態の空気充填工程の後の工程から説明を行う。
【0043】
空気充填工程後、
図14のように、支持浮体20が生簀10の前方部分10Aを支持した状態のまま、生簀10を進行方向D1に移動させ、生簀10の後端部を岸壁Qの端部に位置させる。そして、新たな支持浮体20を、生簀10の前方部分10Aよりも進行方向D1の後側である後方部分10Cに取り付ける(第2取付工程)。以下、第2取付工程よりも前の取付工程で取り付けられる支持浮体20を支持浮体20Aと称し、第2取付工程で取り付けられる支持浮体20(本発明の「他の支持浮体」に対応)を支持浮体20Bと称する。
【0044】
本実施形態の第2取付工程では、
図18に示すように、生簀10の後方部分10Cに対して2つの支持浮体20Bが取り付けられる。これら支持浮体20Bは、直交方向D2に沿って並列配置される。このとき、支持浮体20BのY軸は、進行方向D1に沿うように配置される。
ここで、支持浮体20Bの各浮力体25は空気が抜かれた状態であり、支持浮体20Bは、生簀10の後方部分10Cに対して海面S側から近づく。そして、生簀10の後方部分10Cに含まれるフレーム部材121は、支持浮体20Bの各溝ユニット22Aの溝223に嵌合する(
図2および
図3参照)。
なお、生簀10の後方部分10Cは、生簀10の前方部分10Aよりも進行方向D1の後側であればよく、岸壁Qに配置される生簀10の後端部を除く範囲内であることが好ましい。また、生簀10の後方部分10Cは、後方部分10Cに取り付けられる支持浮体20Bが岸壁Qに干渉しない程度に岸壁Qの近傍に配置される範囲内であることが好ましい。
【0045】
次いで、
図15のように、支持浮体20Bの各浮力体25に対して空気を充填し、支持浮体20A,20Bによって生簀10を支持させる。そして、支持浮体20A,20Bが生簀10を支持した状態のまま、生簀10の全部を海面Sの上方に移動させる(移動工程)。
なお、生簀10の移動には、前述の第2取付工程から引き続き、牽引ワイヤー41等を利用できる。また、生簀10の移動時には、第1実施形態と同様、
図18に示すような牽引ワイヤー44、滑車45および牽引手段46の組み合わせを、直交方向D2における生簀10の両側にそれぞれ設置し、生簀10に対して直交方向D2の引っ張り力を両側から加えることが好ましい。これにより、生簀10が潮流方向に流されることを抑制でき、進行方向D1に進む生簀10の姿勢を保持できる。
【0046】
次に、
図16のように、生簀10の前方部分10Aおよび後方部分10Cを降下させることで、生簀10を海面Sに着水させる(着水工程)。このとき、支持浮体20A,20Bの各浮力体25の空気を同時に抜くことで、各浮力体25の浮力を減少させ、支持浮体20A,20Bを自重で沈下させる。これにより、生簀10は、水平姿勢を保ったまま、海面Sに近づき、着水する。
【0047】
次に、
図17のように、支持浮体20A,20Bを生簀10から取り外し、取り外された支持浮体20を回収する(回収工程)。
この回収工程では、前述の着水工程から引き続き、支持浮体20A,20Bの各浮力体25の空気を抜き、支持浮体20A,20Bを自重で沈下させる。これにより、フレーム部材121が各溝ユニット22Aの溝223から抜け出し、支持浮体20A,20Bを生簀10から自然と取り外すことができる。
また、
図17では図示を省略するが、第1実施形態と同様、支持浮体20A,20Bの回収には、小型クレーンが設置された船舶を利用できる。
【0048】
以上によれば、生簀10を岸壁Qから海面S上に移送することができる。
本実施形態の浜出し方法は、第1実施形態の効果と同様の効果を奏する。また、本実施形態の浜出し方法は、第1実施形態で使用するクレーン50の替わりに、支持浮体20Bを利用するため、生簀10の浜出しにかかる費用や手間をより低減することができる。
また、本実施形態の浜出し方法において、支持浮体20Bは、生簀10の進行方向D1に直交する直交方向D2に並列配置される複数の浮力体25を有する。この支持浮体20Bは、岸壁Qの縁に沿った方向(すなわち直交方向D2)に沿って流れる潮流から浮力体25に作用するモーメントに対抗することができ、生簀10の姿勢傾斜を抑制できる。
【0049】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について、
図19~
図20に基づいて説明する。
第3実施形態の浜出し方法は、第1実施形態の浜出し方法とほぼ同様の工程を有するが、第1実施形態とは異なる構成の支持浮体60を利用する。
【0050】
図19において、支持浮体60は、生簀10に取り付けられるフレーム構造体61と、海面Sに浮かびつつフレーム構造体61を介して生簀10を支持する一対の浮力体65と、を備える。
フレーム構造体61は、生簀10の枠体12に接続される接続部62と、浮力体65を保持する保持部63と、接続部62と保持部63との間に配置される柱フレーム64と、柱フレーム64に設けられたガイド67とを有する。
接続部62は、第1実施形態の溝ユニット22Aと同様に構成された1以上の溝ユニット62Aを有する。この溝ユニット62Aに形成された溝623には、生簀10の枠体12のフレーム部材121が嵌合可能である。
【0051】
保持部63は、2本のワイヤー66が掛け回される滑車631と、滑車631を回転可能に支持する軸部632とを有する。ワイヤー66の一端部が浮力体65に接続され、ワイヤー66が浮力体65から滑車631を経由して岸壁Qにまで延び、ワイヤー66の他端部が牽引手段(図示省略)に接続されている。本実施形態では、一対の浮力体65のそれぞれに対してワイヤー66が接続されている。
柱フレーム64は、鉛直方向に沿って配置され、柱フレーム64の周囲にはガイド67が配置される。ガイド67は、柱フレーム64が沈下するときに浮力体65が接続部62に干渉することを防止可能な構成であればよい。
浮力体65は、例えばエアバッグなどである。本実施形態の浮力体65は、空気の出し入れができないタイプであってもよい。
【0052】
本実施形態の浜出し方法は、第1実施形態の張り出し工程(
図6参照)まで、第1実施形態と同様に実施する。その後、
図19のように、生簀10の前方部分10Aに対して支持浮体60を取り付ける(取付工程)。
本実施形態の取付工程では、支持浮体60の取付時、生簀10の前方部分10Aに対してフレーム構造体61を海面S側から取り付ける。このとき、保持部63と支持浮体60との間のワイヤー66の長さに余裕をとることで、フレーム構造体61の扱いを容易にできる。
その後、岸壁Q側にワイヤー66を牽引することにより、保持部63と浮力体65との間のワイヤー66の長さが短くなる。そして、浮力体65の浮力を受けたフレーム構造体61の海面高さが上昇し、支持浮体60が生簀10の前方部分10Aを支持する(前方支持工程)。
【0053】
次に、第1実施形態と同様に、クレーン等を利用し、生簀10の全部を海面Sの上方に移動させる(移動工程)。
そして、
図20のように、ワイヤー66に対する牽引力を弱め、保持部63と浮力体65との間のワイヤー66の長さを伸ばす。これにより、浮力体65がフレーム構造体61から取り外された状態に等しくなり、フレーム構造体61が沈下する。また、フレーム構造体61の沈下と同時に、生簀10の後方部分を支持するクレーンのフックの位置を下げる。これにより、生簀10は、水平姿勢を保ったまま、海面Sに着水する(着水工程)。
その後、フレーム構造体61をさらに沈下させることで支持浮体60を生簀10から取り外し、支持浮体60を回収する(回収工程)。
【0054】
以上によれば、生簀10を岸壁Qから海面S上に移送することができる。
本実施形態の浜出し方法は、第1実施形態の効果と同様の効果を奏する。また、本実施形態の浜出し方法は、第1実施形態で使用する支持浮体20の替わりに、支持浮体60を利用することで、フレーム構造体61の海面高さを自在に調整できる。このため、柱フレーム64に対する調整部材の追加を行わずに、様々な海面高さにおいて支持浮体60を利用することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、第1実施形態と同様にクレーンを用いる第2移動工程について説明しているが、他の手法を利用できる。例えば、第2実施形態と同様、他の支持浮体60を生簀10の後方部分に取り付けることで、クレーンを用いずに第2移動工程を行ってもよい。
【0056】
〔変形例〕
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
【0057】
生簀10に取り付けられる支持浮体20、60の数および配置は、生簀10の形状や大きさに合わせて任意に変更可能である。支持浮体20、60が有する浮力体25,65の数および配置もまた任意に変更可能である。
例えば、前記第1実施形態の取付工程において、支持浮体20は、それぞれ、進行方向D1に並列配置される複数の浮力体25を有する(
図8参照)。この変形例として、
図21または
図22に示すように、支持浮体20は、それぞれ、進行方向D1に対する直交方向D2に並列配置される複数の浮力体25を有してもよい。
【0058】
また、前記実施形態の取付工程において、支持浮体20は、生簀10の前方部分10Aのうち、岸壁Qの縁に平行配置されるフレーム部材121に取り付けられる(
図8参照)。この変形例として、
図21に示すように、支持浮体20は、岸壁Qの縁に交差するように配置されるフレーム部材121に対して取り付けられてもよい。
図21では、岸壁Qの縁に交差するように配置される2本のフレーム部材121のそれぞれに対して、支持浮体20が取り付けられている。
【0059】
また、前記実施形態の取付工程において、支持浮体20は、浮力体25の軸方向(Y軸方向)が取付対象であるフレーム部材121の延伸方向に沿うように配置される。この変形例として、
図22に示すように、支持浮体20は、浮力体25の軸方向(Y軸方向)が取付対象であるフレーム部材121の延伸方向に交差(例えば直交)するように配置されてもよい。なお、
図22に示すように、生簀10の前方部分10Aに対して1つの支持浮体20が取り付けられてもよい。
【0060】
支持浮体20、60の構成や支持浮体20、60を用いた各工程は、前記各実施形態に限られない。例えば、
図23に示すように、支持浮体20Cは、生簀10のフレーム部材121を支持浮体20Cのフレーム構造体21に保持させる留め具26を備えてもよい。この留め具26は、支持浮体20Cのフレーム構造体21における溝223を覆うことが可能な板状部材であり、突起部222の上部に形成された台座224に対して、ボルト等によって固定可能である。
このような留め具26を用いる場合、取付工程では、生簀10のフレーム部材121を支持浮体20Cのフレーム構造体21における溝223に嵌合させた後、留め具26を台座224に対して固定すればよい。これにより、支持浮体20Cが生簀10に取り付けられる。
着水工程後、海面Sで浮力を得た生簀10のフレーム部材121は、留め具26を介して支持浮体20Cを支持することができる。このため、生簀10の着水直後にそのまま支持浮体20Cが沈下開始することを防止でき、生簀10の着水に異常がないことを確認するための時間を確保できる。
回収工程では、留め具26を取り外すことで、生簀10のフレーム部材121が支持浮体20Cのフレーム構造体21における溝223から抜け出すことを可能にする。そして、支持浮体20Cを沈下させることで、生簀10のフレーム部材121が支持浮体20Cのフレーム構造体21における溝223から抜け出し、支持浮体20Cが生簀10から取り外される。
【0061】
また、
図24に示すように、支持浮体20Dは、前記第1実施形態の突起部222を有さず、生簀10のフレーム部材121をフレーム構造体21に保持させる留め具27を備えてもよい。この留め具27は、U字状の溝枠部272と、溝枠部272のU字の両端部に設けられたフランジ部273とを備える。溝枠部272は、一方向(Y軸方向)に延びる断面矩形の溝271を形成する。
このような留め具27を用いる場合、取付工程では、生簀10のフレーム部材121を溝枠部272の溝271に収容し、フランジ部273をフレーム構造体21の梁部221に対してボルト等によって固定すればよい。これにより、支持浮体20Dが生簀10に取り付けられる。
この留め具27によれば、前述の留め具26と同様、着水工程直後にそのまま支持浮体20Dが沈下開始することを防止できる。
また、回収工程では、留め具27を取り外し、支持浮体20Dを水平方向へ引っ張ることで、支持浮体20Dを生簀10から取り外すことができる。
【0062】
また、
図25に示すように、支持浮体20Eは、前記第1実施形態の突起部222を有さず、梁部221においてY軸方向に沿って延びるスリット225が形成されてもよい。また、生簀10のフレーム部材121は、フレーム部材121の側面から突出しかつフレーム部材121の長さ方向に沿って延びる突起部123を有してもよい。このような変形例では、フレーム部材121の突起部123が梁部221のスリット225に嵌合することで、支持浮体20Eが生簀10に取り付けられる。また、このような変形例において、生簀10のフレーム部材121は、例えばパイプ部材であってもよい。
なお、
図23~
図25では、支持浮体20の変形例について説明しているが、支持浮体60においても同様の変形が可能である。
また、第1実施形態における支持浮体20の柱フレーム24は、継手242を含まずに構成されてもよい。
【0063】
前記各実施形態では、生簀10の前方部分10Aを岸壁Qから張り出させる張り出し工程の後に、支持浮体20,60を生簀10の前方部分10Aに取り付けるが、本発明はこれに限られない。すなわち、張り出し工程前において、支持浮体20,60を生簀10の前方部分10Aに取り付けてもよい。この場合、支持浮体20,60は、張り出し工程前に岸壁Qに干渉しない構成、例えば鉛直方向に伸縮可能な構成やフレーム部材121周りに回転可能な構成などを有することが好ましい。
【0064】
前記各実施形態では、本発明の浮体構造物として生簀10を用いて説明を行っているが、本発明の浜出し方法を実施する対象は、生簀10に限られず、水面に浮かぶことが可能な任意の浮体構造物であればよい。また、本発明の浜出し方法は、従来の浜出し方法では大型のクレーンを利用している大型の浮体構造物に対して、より好適に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
10…生簀、10A…前方部分、10B,10C…後方部分、11…網、12…枠体、121…フレーム部材、122…補強部材、20,20A~20E…支持浮体、21…フレーム構造体、22…接続部、221…梁部、222…突起部、223…溝、22A…溝ユニット、23…保持部、231…梁部、232…突起部、24…柱フレーム、241…フレーム部材、242…継手、25…浮力体、26,27…留め具、30…移動機構、31…レール、32A,32B…移動体、41,44…牽引ワイヤー、42,45…滑車、43,46…牽引手段、50…クレーン、51…フック、55…船舶、56…小型クレーン、57…フック、60…支持浮体、61…フレーム構造体、62…接続部、623…溝、62A…溝ユニット、63…保持部、631…滑車、632…軸部、64…柱フレーム、65…浮力体、66…ワイヤー、67…ガイド、D1…進行方向、D2…直交方向、Q…岸壁、S…海面。