IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

特許7605688シール部材及びシール部材を備えた防水コネクタ
<>
  • 特許-シール部材及びシール部材を備えた防水コネクタ 図1
  • 特許-シール部材及びシール部材を備えた防水コネクタ 図2
  • 特許-シール部材及びシール部材を備えた防水コネクタ 図3
  • 特許-シール部材及びシール部材を備えた防水コネクタ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】シール部材及びシール部材を備えた防水コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
H01R13/52 301G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021082105
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022175579
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】手塚 優太
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-004877(JP,A)
【文献】特開2012-243739(JP,A)
【文献】特開2016-100295(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3142197(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
F16J15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末部に電気的に接続された端子が挿入され、前記電線が挿通して配置される孔が形成された本体と、
前記孔の内面から前記孔の内部に向けて弾性変形可能に突出され、前記電線の外面に密着されるリップと、
を備え、
前記リップは、少なくとも前記端子の挿入方向前側に配置された前方リップと、前記端子の挿入方向後側に配置された後方リップとを有し、
前記後方リップの挿入方向後側の面には、前記端子を挿入していない状態において、前記孔の軸心側の一端が前記孔の内面側の一端より挿入方向前側に位置するように傾斜された傾斜面が設けられ、かつ、前記後方リップの挿入方向前側の面は、前記端子を挿入していない状態において、前記孔の軸心側の一端が前記孔の内面側の一端より挿入方向前側に位置するように傾斜しており、
前記後方リップは、前記端子が前記孔に挿入され、前記後方リップの前記傾斜面が前記端子の外面に当接したときに、弾性変形して前記前方リップと当接し、前記前方リップを弾性変形させて前記端子の外面から離間させるシール部材。
【請求項2】
前記リップは、前記後方リップより前記端子の挿入方向後側に配置された少なくとも1つの補助リップを有し、
前記補助リップの挿入方向後側の面には、前記端子を挿入していない状態において、前記孔の軸心側の一端が前記孔の内面側の一端より挿入方向前側に位置するように傾斜された補助傾斜面が設けられ、かつ、前記補助リップの挿入方向前側の面は、前記端子を挿入していない状態において、前記孔の軸心側の一端が前記孔の内面側の一端より挿入方向前側に位置するように傾斜している、
請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記端子が収容され、前記電線が外部に引き出されるハウジングを備え、
前記ハウジングには、請求項1又は2に記載されたシール部材が密着して収容され、前記シール部材の前記孔を通過して前記端子が収容される防水コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材及びシール部材を備えた防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シール部材としては、電線の端末部に電気的に接続された端子が挿入され、電線が挿通して配置される孔としての電線挿通孔が形成された本体を備えている。また、電線挿通孔の内面から電線挿通孔の内部に向けて弾性変形可能に突出され、電線の外面に密着されるリップを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
リップは、電線挿通孔に対する端子の挿入方向に沿って複数配置されている。複数のリップは、電線挿通孔に端子を挿入することにより、端子の外面と当接、摺動して拡径するように弾性変形される。弾性変形された複数のリップは、電線挿通孔に電線が配置されたときに、復元して電線の外面に密着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-24825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のようなシール部材では、孔に端子を挿入したときに、全てのリップが端子の外面と当接、摺動して弾性変形されている。このため、端子の外面との当接、摺動によって、リップが傷付く虞があり、シール性が低下する可能性があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、シール性を保持することができるシール部材及びシール部材を備えた防水コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係るシール部材は、電線の端末部に電気的に接続された端子が挿入され、前記電線が挿通して配置される孔が形成された本体と、前記孔の内面から前記孔の内部に向けて弾性変形可能に突出され、前記電線の外面に密着されるリップと、を備え、前記リップは、少なくとも前記端子の挿入方向前側に配置された前方リップと、前記端子の挿入方向後側に配置された後方リップとを有し、前記後方リップは、前記端子が前記孔に挿入され、前記端子の外面に当接したときに、弾性変形して前記前方リップと当接し、前記前方リップを弾性変形させて前記端子の外面から離間させる。
【0008】
前記後方リップには、先端側が前記孔の内面側より前記端子の挿入方向前側に位置するように傾斜された傾斜面が設けられていることが好ましい。
【0009】
前記リップは、前記後方リップより前記端子の挿入方向後側に配置された少なくとも1つの補助リップを有することが好ましい。
【0010】
前記補助リップには、先端側が前記孔の内面側より前記端子の挿入方向前側に位置するように傾斜された補助傾斜面が設けられていることが好ましい。
【0011】
本実施形態に係る防水コネクタは、前記端子が収容され、前記電線が外部に引き出されるハウジングを備え、前記ハウジングには、前記シール部材が密着して収容され、前記シール部材の前記孔を通過して前記端子が収容される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シール性を保持することができるシール部材及びシール部材を備えた防水コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る防水コネクタの断面図である。
図2】本実施形態に係るシール部材に端子を挿入する前の断面図である。
図3】本実施形態に係るシール部材に端子を挿入しているときの断面図である。
図4】本実施形態に係るシール部材に端子を挿入した後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本実施形態に係るシール部材及び防水コネクタについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るシール部材1は、防水コネクタ101に適用されている。本実施形態に係る防水コネクタ101は、相手コネクタ(不図示)と嵌合可能となっている。防水コネクタ101は、ハウジング103と、スペーサ105と、リヤホルダ107と、シール部材1とを備えている。ハウジング103には、端子109が収容され、電線111が外部に引き出されている。
【0016】
ハウジング103は、例えば、合成樹脂などの絶縁性材料からなる。ハウジング103には、防水コネクタ101と相手コネクタとの嵌合状態を保持、或いは解除するロックアーム113が弾性変形可能に設けられている。ロックアーム113には、防水コネクタ101と相手コネクタとが嵌合したときに、相手コネクタの被ロック部(不図示)に係合されるロック部115が設けられている。被ロック部とロック部115との係合により、防水コネクタ101と相手コネクタとの嵌合状態を保持することができる。ロックアーム113には、ロックアーム113を弾性変形させる操作部117が設けられている。操作部117でロックアーム113を弾性変形させることにより、被ロック部とロック部115との係合を解除する。被ロック部とロック部115との係合解除により、防水コネクタ101と相手コネクタとの嵌合状態を解除することができる。
【0017】
ハウジング103には、フード部119が形成されている。フード部119は、防水コネクタ101と相手コネクタとの嵌合方向に延出され、内部に相手コネクタが嵌合可能な筐体状に形成されている。フード部119の内部には、端子109を収容可能な端子収容室122が形成された端子収容部121が設けられている。
【0018】
端子収容部121は、防水コネクタ101と相手コネクタとの嵌合方向に沿って延出されている。端子収容部121の内部には、弾性変形可能な係止ランス123が端子収容室122に突出するように設けられている。係止ランス123は、端子109と係合し、端子109を端子収容室122から抜け止めする。端子収容部121の外面には、例えば、ゴムなどの弾性材料からなるパッキン125が密着して装着されている。パッキン125は、防水コネクタ101と相手コネクタとが嵌合した状態で、相手コネクタと密着し、防水コネクタ101と相手コネクタとの間をシールする。端子収容室122には、フード部119と反対側の開口から端子109が収容される。
【0019】
端子109は、導電性材料からなる。端子109は、例えば、防水コネクタ101と相手コネクタとの嵌合方向に沿って延出された箱状の接続部を有する雌型端子からなる。端子109を収容する端子収容部121には、スペーサ収容部127が形成されている。スペーサ収容部127は、端子収容部121の下面側が開口され、フード部119に形成された開口と連通されている。スペーサ収容部127には、フード部119の開口からスペーサ105が組付けられる。
【0020】
スペーサ105は、例えば、合成樹脂などの絶縁性材料からなる。スペーサ105は、スペーサ収容部127に対して、仮係止位置と本係止位置との間を移動可能に組付けられる。スペーサ105には、端子109に係合される係止部129が設けられている。なお、不図示であるが、スペーサ105とハウジング103との間には、スペーサ105を仮係止位置で保持する仮係止保持部と、スペーサ105を本係止位置で保持する本係止保持部とが設けられている。
【0021】
スペーサ105の仮係止位置(図1参照)では、係止部129が端子収容室122内に配置されない。このため、係止部129が干渉することなく、端子109を端子収容室122に収容することができる。スペーサ105の本係止位置(不図示)では、係止部129が端子収容室122内に配置され、端子109に係合される。このため、端子109は、係止ランス123と共に端子収容室122に対して二重に抜け止めされ、端子109を安定して端子収容室122に保持することができる。
【0022】
スペーサ105によって抜け止めされる端子109は、端子収容室122の外部に引き出される電線111の端末部に電気的に接続されている。電線111は、例えば、電源、機器などに電気的に接続されている。電線111の端末部には、端子109の加締め片の加締めによる圧着によって、端子109が電気的に接続されている。ハウジング103の電線111が引き出される側には、ホルダ収容部131が形成されている。ホルダ収容部131は、電線111の長さ方向に沿って筒状に延出されている。ホルダ収容部131には、電線111の引き出し側からリヤホルダ107が組付けられる。
【0023】
リヤホルダ107は、例えば、合成樹脂などの絶縁性材料からなる。リヤホルダ107は、ホルダ収容部131に対して、仮係止位置と本係止位置との間を移動可能に組付けられる。リヤホルダ107には、端子収容室122と連通され、端子109を挿入可能な貫通孔133が設けられている。リヤホルダ107の端子収容室122側には、シール部材1を収容するシール収容部135が設けられている。なお、不図示であるが、リヤホルダ107とハウジング103との間には、リヤホルダ107を仮係止位置で保持する仮係止保持部と、リヤホルダ107を本係止位置で保持する本係止保持部とが設けられている。
【0024】
リヤホルダ107の仮係止位置(図1参照)では、シール収容部135にシール部材1が収容されていない。シール収容部135にシール部材1が収容されていない状態では、シール部材1が内側に向けて圧縮されず、シール部材1に端子109を挿通することができる。このため、貫通孔133に端子109を挿入することにより、端子109がシール部材1を挿通することができ、端子109を端子収容室122に収容することができる。
【0025】
リヤホルダ107の本係止位置(不図示)では、シール収容部135にシール部材1が収容される。シール収容部135にシール部材1が収容された状態では、シール収容部135の内面にシール部材1の外面が密着し、シール部材1が内側に向けて圧縮される。このため、圧縮されたシール部材1は、挿通された電線111の外面に密着して当接され、シール部材1と電線111とのシール性を向上することができる。以下、図1図4を用いてシール部材1について説明する。
【0026】
図1図4に示すように、シール部材1は、例えば、ゴムなどの弾性材料からなる。シール部材1は、周方向に連続する環状に形成され、ハウジング103のホルダ収容部131に収容される。シール部材1は、本体3と、リップ5とを備えている。本体3は、大径部7と、小径部9とを備えている。
【0027】
大径部7は、ハウジング103のホルダ収容部131において、内面が端子収容部121の外面に密着する。大径部7の外面には、周方向に連続する外周リップ11が、シール部材1のホルダ収容部131への挿入方向に沿って複数(ここでは2つ)設けられている。大径部7の外周リップ11は、ホルダ収容部131の内面に密着する。
【0028】
小径部9は、大径部7と連続する一部材で大径部7より小径に形成されている。小径部9の外面には、周方向に連続する外周リップ13が、シール部材1のホルダ収容部131への挿入方向に沿って複数(ここでは2つ)設けられている。小径部9の外周リップ13は、リヤホルダ107のシール収容部135の内面に密着する。
【0029】
本体3の大径部7と小径部9とは、シール部材1がハウジング103のホルダ収容部131に収容され、リヤホルダ107がホルダ収容部131の本係止位置に配置されたとき、ハウジング103とリヤホルダ107との間をシールする。本体3の軸心部分には、端子109の端子収容室122への挿入方向に沿って本体3を貫通する孔15が形成されている。孔15の内径は、端子109の外径より大きく設定され、端子109が挿入可能となっている。孔15の内面には、リップ5が設けられている。
【0030】
リップ5は、前方リップ17と、後方リップ19と、補助リップ21とを備えている。前方リップ17は、孔15に対する端子109の挿入方向前側に配置されている。前方リップ17は、孔15の内面から孔15の軸心に向けて突出され、周方向に連続して形成されている。前方リップ17の内径は、電線111の外径より小さく設定されている。このため、孔15に電線111が配置された状態では、前方リップ17が電線111の外面に密着し、シール部材1と電線111との間をシールする。
【0031】
後方リップ19は、前方リップ17より孔15に対する端子109の挿入方向後側に配置されている。後方リップ19は、孔15の内面から孔15の軸心に向けて突出され、周方向に連続して形成されている。後方リップ19の内径は、電線111の外径より小さく設定されている。このため、孔15に電線111が配置された状態では、後方リップ19が電線111の外面に密着し、シール部材1と電線111との間をシールする。
【0032】
図3に示すように、後方リップ19は、孔15に端子109が挿入されたとき、端子109と当接、摺動して、拡径するように前方リップ17側に向けて弾性変形される。弾性変形された後方リップ19は、前方リップ17と当接し、前方リップ17を拡径させ、端子109の外面から離間するように弾性変形させる。このため、前方リップ17は、孔15に端子109が挿入されたときに、端子109の外面と当接、摺動することがない。
【0033】
図4に示すように、後方リップ19は、端子109が前方リップ17を通過した後、縮径するように復元される。このとき、前方リップ17も、後方リップ19の復元に追随して縮径するように復元される。復元された前方リップ17と後方リップ19とは、孔15に配置された電線111の外面に密着する。このような前方リップ17と後方リップ19とを有することにより、前方リップ17が端子109の外面と当接、摺動することがなく、前方リップ17が傷付くことがない。このため、少なくとも前方リップ17と電線111との密着性を確保でき、シール部材1と電線111との間のシール性を保持することができる。
【0034】
後方リップ19には、端子109と当接する側の面に、傾斜面23が設けられている。傾斜面23は、後方リップ19の先端側が孔15の内面側より端子109の挿入方向前側に位置するように傾斜されている。傾斜面23は、例えば、端子109が孔15に対して斜めに挿入されたとき、端子109と摺動し、端子109を傾斜面23に沿って移動させ、端子109を後方リップ19の先端側に導く。このような傾斜面23を設けることにより、端子109との当接、摺動による後方リップ19の弾性変形を安定化させ、後方リップ19による前方リップ17の弾性変形を安定化することができる。
【0035】
補助リップ21は、後方リップ19より孔15に対する端子109の挿入方向後側に配置されている。補助リップ21は、孔15の内面から孔15の軸心に向けて突出され、周方向に連続して形成されている。補助リップ21の内径は、電線111の外径より小さく設定されている。このため、孔15に電線111が配置された状態では、補助リップ21が電線111の外面に密着し、シール部材1と電線111との間をシールする。このような補助リップ21を設けることにより、シール部材1と電線111との間のシール性を向上することができる。
【0036】
補助リップ21には、端子109と当接する側の面に、補助傾斜面25が設けられている。補助傾斜面25は、補助リップ21の先端側が孔15の内面側より端子109の挿入方向前側に位置するように傾斜されている。補助傾斜面25は、例えば、端子109が孔15に対して斜めに挿入されたとき、端子109と摺動し、端子109を補助傾斜面25に沿って移動させ、端子109を補助リップ21の先端側に導く。補助リップ21に補助傾斜面25を設けることにより、後方リップ19より前に端子109の挿入姿勢を補正することができ、後方リップ19の端子109との当接、摺動による傷付きを抑制することができる。
【0037】
このようなシール部材1では、リップ5が、少なくとも端子109の挿入方向前側に配置された前方リップ17と、端子109の挿入方向後側に配置された後方リップ19とを有する。そして、後方リップ19は、端子109が孔15に挿入され、端子109の外面に当接したときに、弾性変形して前方リップ17と当接し、前方リップ17を弾性変形させて端子109の外面から離間させる。
【0038】
このため、前方リップ17は、端子109が孔15を通過するときに、端子109の外面と当接、摺動することがない。従って、このようなシール部材1では、端子109との当接、摺動による前方リップ17の傷付きを防止でき、シール性を保持することができる。
【0039】
また、後方リップ19には、先端側が孔15の内面側より端子109の挿入方向前側に位置するように傾斜された傾斜面23が設けられている。このため、傾斜面23によって孔15に対する端子109の挿入姿勢を補正することができる。従って、端子109との当接、摺動による後方リップ19の弾性変形を安定化させ、後方リップ19による前方リップ17の弾性変形を安定化することができる。
【0040】
さらに、リップ5は、後方リップ19より端子109の挿入方向後側に配置された少なくとも1つの補助リップ21を有する。このため、電線111の外面に対する密着箇所を増大させることができ、シール性を向上することができる。
【0041】
また、補助リップ21には、先端側が孔15の内面側より端子109の挿入方向前側に位置するように傾斜された補助傾斜面25が設けられている。このため、後方リップ19より前に端子109の挿入姿勢を補正することができ、後方リップ19の端子109との当接、摺動による傷付きを抑制することができる。
【0042】
さらに、防水コネクタ101は、端子109が収容され、電線111が外部に引き出されるハウジング103を備えている。そして、ハウジング103には、シール部材1が密着して収容され、シール部材1の孔15を通過して端子109が収容される。
【0043】
このため、ハウジング103に端子109を収容するときに、シール部材1の前方リップ17は、端子109の外面と当接、摺動することがない。従って、このような防水コネクタ101では、端子109との当接、摺動によるシール部材1の前方リップ17の傷付きを防止でき、シール性を保持することができる。
【0044】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0045】
例えば、補助リップは、後方リップの端子の挿入方向後側に1つ配置されているが、これに限らず、補助リップを、後方リップの端子の挿入方向後側に2つ以上配置してもよい。
【0046】
また、前方リップの端子の挿入方向前側には、何も配置されていないが、例えば、前方リップの端子の挿入方向前側に、前方リップ、後方リップ、或いは補助リップなど、他のリップを配置してもよい。この場合には、端子の挿入方向後側に位置するリップが、端子の挿入方向前側に位置するリップを弾性変形させて、端子の外面から離間させればよい。
【符号の説明】
【0047】
1 シール部材
3 本体
5 リップ
15 孔
17 前方リップ
19 後方リップ
21 補助リップ
23 傾斜面
25 補助傾斜面
101 防水コネクタ
103 ハウジング
109 端子
111 電線
図1
図2
図3
図4