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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241217BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241217BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20241217BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02J7/00 302C
H02J7/02 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021083008
(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公開番号】P2022176524
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 宗世
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悠二
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 真人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和大
(72)【発明者】
【氏名】谷口 聡
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-023901(JP,A)
【文献】国際公開第2021/065222(WO,A1)
【文献】特開2019-062596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02J 7/02
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを直列に接続して構成された電源と、
複数相のコイル、および前記複数相のコイルの一方の端子が接続された中性点とを有する回転機と、
前記電源の正極と前記電源の負極との間に互いに直列に接続された複数のコンデンサと、
前記複数のコンデンサにおける正極側コンデンサと負極側コンデンサとの間の接続点と前記複数相のそれぞれのコイルとを接続する複数の中間スイッチ素子と、
前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の正極との間に設けられた複数の正極側スイッチ素子を有する上アーム素子と、
前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の負極との間に設けられた複数の負極側スイッチ素子を有する下アーム素子と、
前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御するコントローラと
を備えた電力変換装置であって
前記電源は、正極側の上部電池ブロックと負極側の下部電池ブロックとを備え、
前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの間の中間端子と、前記接続点とが接続され、
前記コントローラは、
前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの消費電力が同一となるように前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御し、または前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの充電残量が同一となるように前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御する均等化制御を実行するように構成され、
前記回転機を駆動する要求がない場合に、前記中間スイッチ素子のうちの少なくともいずれか一つのスイッチ素子を導通状態とするとともに、他のスイッチ素子を非導通状態とし、
前記非導通状態とされることにより前記中間スイッチ素子を介した前記電源からの電力の供給が遮断された前記複数相のコイルのうちの所定コイルに、前記中性点を介することなく接続された前記正極側スイッチと前記負極側スイッチとをスイッチング動作することにより、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとのうちの一方側から他方側に電力を通電するように構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
複数の電池セルを直列に接続して構成された電源と、
複数相のコイル、および前記複数相のコイルの一方の端子が接続された中性点とを有する回転機と、
前記電源の正極と前記電源の負極との間に互いに直列に接続された複数のコンデンサと、
前記複数のコンデンサにおける正極側コンデンサと負極側コンデンサとの間の接続点と前記複数相のそれぞれのコイルとを接続する複数の中間スイッチ素子と、
前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の正極との間に設けられた複数の正極側スイッチ素子を有する上アーム素子と、
前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の負極との間に設けられた複数の負極側スイッチ素子を有する下アーム素子と、
前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御するコントローラと
を備えた電力変換装置であって、
前記電源は、正極側の上部電池ブロックと負極側の下部電池ブロックとを備え、
前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの間の中間端子と、前記接続点とが接続され、
前記コントローラは、
前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの消費電力が同一となるように前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御し、または前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの充電残量が同一となるように前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御する均等化制御を実行するように構成され、
前記回転機に要求される電力に応じて前記複数相のコイルに印加する回転機電圧を求め、
前記均等化制御により定められる前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとから出力するSOC電圧値の差を、前記回転機電圧に加算し、
前記SOC電圧値の差を前記回転機電圧に加算した合計電圧に基づいた変調率を定め、
前記変調率に基づいて前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力変換装置であって
前記コントローラは、
前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとのうちの充電残量が多い方の消費電力が、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとのうちの充電残量が少ない方の消費電力よりも多くなるように、前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電力変換装置であって
前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの少なくともいずれか一方の電池ブロックに、高電圧補機が接続されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置であって
前記高電圧補機は、前記電源の出力電圧よりも低電圧で駆動するように構成されている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項4まは5に記載の電力変換装置であって
前記高電圧補機は、前記一方の電池ブロックの正極端子および負極端子に接続されたDC-DCコンバータと電動コンプレッサとを含む
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
複数の電池セルを直列に接続して構成された電源と、
複数相のコイル、および前記複数相のコイルの一方の端子が接続された中性点とを有する回転機と、
前記電源の正極と前記電源の負極との間に互いに直列に接続された複数のコンデンサと、
前記複数のコンデンサにおける正極側コンデンサと負極側コンデンサとの間の接続点と前記複数相のそれぞれのコイルとを接続する複数の中間スイッチ素子と、
前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の正極との間に設けられた複数の正極側スイッチ素子を有する上アーム素子と、
前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の負極との間に設けられた複数の負極側スイッチ素子を有する下アーム素子と、
前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御するコントローラと
を備えた電力変換装置であって、
前記電源は、正極側の上部電池ブロックと負極側の下部電池ブロックとを備え、
前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの間の中間端子と、前記接続点とが接続され、
前記コントローラは、
前記複数相のコイルに要求される電圧が所定電圧以上であり、または前記複数相のコイルに要求される電流値が所定電流値以上である場合に、前記複数相のコイルに印加される電圧が相対的に低い低電圧モードを設定し、前記複数相のコイルに要求される電圧が所定電圧未満であり、または前記複数相のコイルに要求される電流値が所定電流値未満である場合に、前記複数相のコイルに印加される電圧が相対的に高い高電圧モードを設定する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電力変換装置であって
前記所定電圧は、部分放電が生じる電圧を含む
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
複数の電池セルを直列に接続して構成された電源と、
複数相のコイル、および前記複数相のコイルの一方の端子が接続された中性点とを有する回転機と、
前記電源の正極と前記電源の負極との間に互いに直列に接続された複数のコンデンサと、
前記複数のコンデンサにおける正極側コンデンサと負極側コンデンサとの間の接続点と前記複数相のそれぞれのコイルとを接続する複数の中間スイッチ素子と、
前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の正極との間に設けられた複数の正極側スイッチ素子を有する上アーム素子と、
前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の負極との間に設けられた複数の負極側スイッチ素子を有する下アーム素子と、
前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御するコントローラと
を備えた電力変換装置であって、
前記電源は、正極側の上部電池ブロックと負極側の下部電池ブロックとを備え、
前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの間の中間端子と、前記接続点とが接続され、
前記コントローラは、
前記回転機の回転数が予め定められた所定回転数未満であり、または前記回転機の出力トルクが予め定められた所定トルク未満である場合に、前記複数相のコイルに印加される電圧を0Vと前記電源の出力電圧との2つの電圧レベルに制御する2レベルモードを設定し、前記回転機の回転数が前記所定回転数以上であり、または前記回転機の出力トルクが前記所定トルク以上である場合に、前記複数相のコイルに印加される電圧を前記電源の電圧の中点電圧を基準として、前記中点電圧および前記中点電圧に前記電源の電圧の1/2倍の電圧を加減した電圧の3つの電圧レベルに制御する3レベルモードを設定する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
複数の電池セルを直列に接続して構成された電源と、
複数相のコイル、および前記複数相のコイルの一方の端子が接続された中性点とを有する回転機と、
前記電源の正極と前記電源の負極との間に互いに直列に接続された複数のコンデンサと、
前記複数のコンデンサにおける正極側コンデンサと負極側コンデンサとの間の接続点と前記複数相のそれぞれのコイルとを接続する複数の中間スイッチ素子と、
前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の正極との間に設けられた複数の正極側スイッチ素子を有する上アーム素子と、
前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の負極との間に設けられた複数の負極側スイッチ素子を有する下アーム素子と、
前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御するコントローラと
を備えた電力変換装置であって、
前記電源は、正極側の上部電池ブロックと負極側の下部電池ブロックとを備え、
前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの間の中間端子と、前記接続点とが接続され、
前記コントローラは、
前記中間スイッチ素子の温度が予め定められた所定温度以上である場合に、前記複数相のコイルに印加される電圧を0Vと前記電源の出力電圧との2つの電圧レベルに制御する2レベルモードを設定し、前記中間スイッチ素子の温度が前記所定温度未満である場合に、前記複数相のコイルに印加される電圧を前記電源の電圧の中点電圧を基準として、前記中点電圧および前記中点電圧に前記電源の電圧の1/2倍の電圧を加減した電圧の3つの電圧レベルに制御する3レベルモードを設定する
ことを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源から出力された電力を変換する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の電池セルを直列に接続して構成された組電池を備え、その電池セル間または所定数の電池セルを一組とした電池ブロック間で電荷を移動させることにより、電池セルや電池ブロックの電圧を均等化することができる電圧均等化装置が記載されている。そのように電池セルや電池ブロックの間で電荷を移動させるために、隣り合う電池セル(電池ブロック)のうちの一方の電池セル(電池ブロック)の正極端子と他方の電池セル(電池ブロック)の負極端子とを接続するバランス回路を形成している。
【0003】
そのバランス回路には、二つのスイッチ素子が設けられていて、それらのスイッチ素子の中間点と、一方の電池セル(電池ブロック)の負極端子および他方の電池セル(電池ブロック)の正極端子の間の中間端子とをコイルを介して接続している。すなわち、電池セル間、または電池ブロック間に昇降圧コンバータを設けている。
【0004】
したがって、上記のように構成されたバランス回路のスイッチ素子をオンオフ制御することによって、一方の電圧を昇圧し、または降圧することにより、隣り合う電池セル(電池ブロック)間で電荷を移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-247690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された電圧均等化装置は、電池セルや電池ブロック間で電荷を移動させるためのバランス回路を形成している。言い換えると、電荷を移動させるためのコイルやスイッチ素子によって構成された電圧調整装置を備えている。そのため、電池セルを複数接続した組電池、およびその組電池から電力が供給されるモータ、ならびに組電池からモータに供給する電力を変換するインバータを含む電力変換装置が大型化する可能性がある。また、そのように電力変換装置が大型化することを抑制するために、コイルやスイッチ素子を小型化すると、コイルやスイッチ素子の電流定格が低くなるため、電池セルや電池ブロックの間で移動させることができる電荷が制限される可能性がある。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、昇圧コンバータや降圧コンバータなどの電圧調整装置を別途設けることなく、電池セル間または電池ブロック間で電荷を移動させて電圧の均等化を図ることができる電力変換装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は、複数の電池セルを直列に接続して構成された電源と、複数相のコイル、および前記複数相のコイルの一方の端子が接続された中性点とを有する回転機と、前記電源の正極と前記電源の負極との間に互いに直列に接続された複数のコンデンサと、前記複数のコンデンサにおける正極側コンデンサと負極側コンデンサとの間の接続点と前記複数相のそれぞれのコイルとを接続する複数の中間スイッチ素子と、前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の正極との間に設けられた複数の正極側スイッチ素子を有する上アーム素子と、前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の負極との間に設けられた複数の負極側スイッチ素子を有する下アーム素子と、前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御するコントローラとを備えた電力変換装置であって、前記電源は、正極側の上部電池ブロックと負極側の下部電池ブロックとを備え、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの間の中間端子と、前記接続点とが接続され、前記コントローラは、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの消費電力が同一となるように前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御し、または前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの充電残量が同一となるように前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御する均等化制御を実行するように構成され、前記回転機を駆動する要求がない場合に、前記中間スイッチ素子のうちの少なくともいずれか一つのスイッチ素子を導通状態とするとともに、他のスイッチ素子を非導通状態とし、前記非導通状態とされることにより前記中間スイッチ素子を介した前記電源からの電力の供給が遮断された前記複数相のコイルのうちの所定コイルに、前記中性点を介することなく接続された前記正極側スイッチと前記負極側スイッチとをスイッチング動作することにより、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとのうちの一方側から他方側に電力を通電するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、この発明は、複数の電池セルを直列に接続して構成された電源と、複数相のコイル、および前記複数相のコイルの一方の端子が接続された中性点とを有する回転機と、前記電源の正極と前記電源の負極との間に互いに直列に接続された複数のコンデンサと、前記複数のコンデンサにおける正極側コンデンサと負極側コンデンサとの間の接続点と前記複数相のそれぞれのコイルとを接続する複数の中間スイッチ素子と、前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の正極との間に設けられた複数の正極側スイッチ素子を有する上アーム素子と、前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の負極との間に設けられた複数の負極側スイッチ素子を有する下アーム素子と、前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御するコントローラとを備えた電力変換装置であって、前記電源は、正極側の上部電池ブロックと負極側の下部電池ブロックとを備え、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの間の中間端子と、前記接続点とが接続され、前記コントローラは、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの消費電力が同一となるように前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御し、または前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの充電残量が同一となるように前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御する均等化制御を実行するように構成され、前記回転機に要求される電力に応じて前記複数相のコイルに印加する回転機電圧を求め、前記均等化制御により定められる前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとから出力するSOC電圧値の差を、前記回転機電圧に加算し、前記SOC電圧値の差を前記回転機電圧に加算した合計電圧に基づいた変調率を定め、前記変調率に基づいて前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御することを特徴とするものである。
また、この発明は、前記コントローラは、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとのうちの充電残量が多い方の消費電力が、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとのうちの充電残量が少ない方の消費電力よりも多くなるように、前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御してよい。
また、この発明は、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの少なくともいずれか一方の電池ブロックに、高電圧補機が接続されていてよい。
【0010】
また、この発明は、前記高電圧補機は、前記電源の出力電圧よりも低電圧で駆動するように構成されていてよい。
【0011】
また、この発明は、前記高電圧補機は、前記一方の電池ブロックの正極端子および負極端子に接続されたDC-DCコンバータと電動コンプレッサとを含んでよい。
【0023】
また、この発明は、複数の電池セルを直列に接続して構成された電源と、複数相のコイル、および前記複数相のコイルの一方の端子が接続された中性点とを有する回転機と、前記電源の正極と前記電源の負極との間に互いに直列に接続された複数のコンデンサと、前記複数のコンデンサにおける正極側コンデンサと負極側コンデンサとの間の接続点と前記複数相のそれぞれのコイルとを接続する複数の中間スイッチ素子と、前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の正極との間に設けられた複数の正極側スイッチ素子を有する上アーム素子と、前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の負極との間に設けられた複数の負極側スイッチ素子を有する下アーム素子と、前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御するコントローラとを備えた電力変換装置であって、前記電源は、正極側の上部電池ブロックと負極側の下部電池ブロックとを備え、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの間の中間端子と、前記接続点とが接続され、前記コントローラは、前記複数相のコイルに要求される電圧が所定電圧以上であり、または前記複数相のコイルに要求される電流値が所定電流値以上である場合に、前記複数相のコイルに印加される電圧が相対的に低い低電圧モードを設定し、前記複数相のコイルに要求される電圧が所定電圧未満であり、または前記複数相のコイルに要求される電流値が所定電流値未満である場合に、前記複数相のコイルに印加される電圧が相対的に高い高電圧モードを設定することを特徴とするものである。
【0024】
また、この発明は、前記所定電圧は、部分放電が生じる電圧を含んでよい。
【0025】
また、この発明は、複数の電池セルを直列に接続して構成された電源と、複数相のコイル、および前記複数相のコイルの一方の端子が接続された中性点とを有する回転機と、前記電源の正極と前記電源の負極との間に互いに直列に接続された複数のコンデンサと、前記複数のコンデンサにおける正極側コンデンサと負極側コンデンサとの間の接続点と前記複数相のそれぞれのコイルとを接続する複数の中間スイッチ素子と、前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の正極との間に設けられた複数の正極側スイッチ素子を有する上アーム素子と、前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の負極との間に設けられた複数の負極側スイッチ素子を有する下アーム素子と、前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御するコントローラとを備えた電力変換装置であって、前記電源は、正極側の上部電池ブロックと負極側の下部電池ブロックとを備え、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの間の中間端子と、前記接続点とが接続され、前記コントローラは、前記回転機の回転数が予め定められた所定回転数未満であり、または前記回転機の出力トルクが予め定められた所定トルク未満である場合に、前記複数相のコイルに印加される電圧を0Vと前記電源の出力電圧との2つの電圧レベルに制御する2レベルモードを設定し、前記回転機の回転数が前記所定回転数以上であり、または前記回転機の出力トルクが前記所定トルク以上である場合に、前記複数相のコイルに印加される電圧を前記電源の電圧の中点電圧を基準として、前記中点電圧および前記中点電圧に前記電源の電圧の1/2倍の電圧を加減した電圧の3つの電圧レベルに制御する3レベルモードを設定することを特徴とするものである。
【0026】
そして、この発明は、複数の電池セルを直列に接続して構成された電源と、複数相のコイル、および前記複数相のコイルの一方の端子が接続された中性点とを有する回転機と、前記電源の正極と前記電源の負極との間に互いに直列に接続された複数のコンデンサと、前記複数のコンデンサにおける正極側コンデンサと負極側コンデンサとの間の接続点と前記複数相のそれぞれのコイルとを接続する複数の中間スイッチ素子と、前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の正極との間に設けられた複数の正極側スイッチ素子を有する上アーム素子と、前記複数相のそれぞれのコイルと前記電源の負極との間に設けられた複数の負極側スイッチ素子を有する下アーム素子と、前記上アーム素子、前記下アーム素子、および前記中間スイッチ素子を制御するコントローラとを備えた電力変換装置であって、前記電源は、正極側の上部電池ブロックと負極側の下部電池ブロックとを備え、前記上部電池ブロックと前記下部電池ブロックとの間の中間端子と、前記接続点とが接続され、前記コントローラは、前記中間スイッチ素子の温度が予め定められた所定温度以上である場合に、前記複数相のコイルに印加される電圧を0Vと前記電源の出力電圧との2つの電圧レベルに制御する2レベルモードを設定し、前記中間スイッチ素子の温度が前記所定温度未満である場合に、前記複数相のコイルに印加される電圧を前記電源の電圧の中点電圧を基準として、前記中点電圧および前記中点電圧に前記電源の電圧の1/2倍の電圧を加減した電圧の3つの電圧レベルに制御する3レベルモードを設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、直列に接続されたコンデンサを電源の正極と負極とに接続し、そのコンデンサの接続点と各相のコイルとを接続するように中間スイッチ素子が設けられている。したがって、中間スイッチ素子、正極側スイッチ素子、および負極側スイッチ素子を制御することにより、回転機に印加する電圧を多段階の電圧に制御して、回転機のトルクを制御することができる。また、コンデンサの接続点に電源の中間端子を接続することによって、回転機を停止した状態や駆動した状態に拘わらず、中間端子の一方側の上部電池ブロックと他方側の下部電池ブロックとのそれぞれの消費電力を独立して制御することができる。すなわち、一方の電池ブロックから他方の電池ブロックに電荷を移動させることや、上部電池ブロックと下部電池ブロックとの消費電力を同一とすることなどができる。つまり、上部電池ブロックと下部電池ブロックとの電力を均等化させることができる。言い換えると、互いの電池ブロックの間で電荷を移動させるためのリアクトルやコンデンサなどを別途設ける必要がないため、電力変換装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明の実施形態における電力変換装置の一例を説明するための構成図である。
図2】下部電池ブロックに高電圧補機を接続した構成を説明するための構成図である。
図3】上部電池ブロックおよび下部電池ブロックに高電圧補機を接続した構成を説明するための構成図である。
図4】上部電池ブロックに高電圧補機を接続した構成を説明するための構成図である。
図5】均等化制御により変調率を定める制御例を説明するためのフローチャートである。
図6】停止均等化モード時における回路状態を簡略して示す等価回路図である。
図7図6に示す回路状態を更に簡略して示す等価回路図である。
図8】停止均等化モード時のPMW制御によるスイッチ信号を定める制御の一例を説明するための制御ブロック図である。
図9】(a)は、上部電池ブロックから下部電池ブロック側に電力を作用させる場合に設定される変調率の一例を説明するための図であり、(b)は、下部電池ブロックから上部電池ブロック側に電力を作用させる場合に設定される変調率の一例を説明するための図である。
図10】上部電池ブロックと下部電池ブロックとから同一の電力を出力して、下部電池ブロックに接続された高電圧補機に電力を供給するように制御した場合における各コイルの電流値、および上部電池ブロックと下部電池ブロックとの消費電力を示す図である。
図11】(a)は、上部電池ブロックの電力のみでモータを駆動する場合の等価回路図であり、(b)は、下部電池ブロックの電力のみでモータを駆動する場合の等価回路図である。
図12】モータ駆動時に、SOCに応じて変調率を定める制御例を説明するための制御ブロック図である。
図13】(a)は、図12に示す制御例に基づいて変調率を定めた場合の相電流、変調率、および上部電池ブロックと下部電池ブロックとの消費電力を示す図であり、(b)は、モータに要求される電力のみに基づいて変調率を定めた場合の相電流、変調率、および上部電池ブロックと下部電池ブロックとの消費電力を示す図である。
図14】変調率をオフセットする制御例を説明するための制御ブロック図である。
図15】(a)は、図14に示す制御例に基づいて変調率を定めた場合の相電流、変調率、および上部電池ブロックと下部電池ブロックとの消費電力を示す図であり、(b)は、変調率をオフセットしない場合の相電流、変調率、および上部電池ブロックと下部電池ブロックとの消費電力を示す図であり、(c)は、変調率をオフセットすることによる電力損失の低減効果を示す図である。
図16】変調率を過変調領域に変更する制御例を説明するための制御ブロック図である。
図17】(a)は、図16に示す制御例に基づいて変調率を定めた場合の相電流、および変調率を示す図であり、(b)は、変調率をオフセットおよび過変調領域に変更しない場合の相電流、および変調率を示す図であり、(c)は、変調率をオフセットしまた過変調領域に変更することによる電力損失の低減効果を示す図である。
図18】大気圧と部分放電開始電圧との関係を示す図である。
図19】モータの絶縁部を保護する要求に応じて変調率の定め方を変更する制御例を説明するためのフローチャートである。
図20】(a)は、MG絶縁保護モードを設定した場合における相電流、変調率、およびモータの線間電圧を示す図であり、(b)は、モータ駆動モードを設定した場合における相電流、変調率、およびモータの線間電圧を示す図である。
図21】(a)は、変調率がオフセットされた場合の上部電池ブロックとモータとの接続状態を模式的に示す等価回路図であり、(b)は、変調率がオフセットしない場合の電源とモータとの接続状態を模式的に示す等価回路図である。
図22】モータの運転状態に応じて2レベルモードと3レベルモードとを切り替える制御例を説明するためのフローチャートである。
図23】(a)は、2レベルモードを設定した場合の相電流、および線間電圧を示す図であり、(b)は、3レベルモードを設定した場合の相電流、および線間電圧を示す図であり、(c)は、2レベルモードを設定することによる電力損失の低減効果を示す図である。
図24】5相の交流モータを制御する電力変換装置の一例を説明するための構成図である。
図25】電力変換装置の他の例を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の実施形態における電力変換装置の一例を説明するための構成を図1に示してある。図1に示す電力変換装置1は、電源2と、この発明の実施形態における「回転機」に相当するモータ3との間で通電する電力を変換するものである。
【0030】
電源2は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池によって構成された複数の電池セルBcを直列に配置して構成されている。すなわち、電源2は、組電池によって構成されている。また、図1に示す電源2は、図1における上側の上部電池ブロック2aと下側の下部電池ブロック2bとに区分されている。具体的には、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの間に中間端子4が設けられている。
【0031】
モータ3は、従来の電気自動車やハイブリッド車両の駆動力源として設けられたモータと同様に構成されている。このモータ3は、スター結線の交流モータであって、2相以上の複数相のコイルを備えている。図1に示す例では、U相、V相、W相の三相のコイル3u、3v、3wを備えた同期モータによって構成されている。
【0032】
電源2の正極端子には、正極母線5が接続され、電源2の負極端子には、負極母線6が接続されている。その正極母線5と負極母線6との間には、第1コンデンサ7と第2コンデンサ8とが接続されている。具体的には、第1コンデンサ7の正極側端子が正極母線5に接続され、負極側端子が第2コンデンサ8の正極側端子に接続され、第2コンデンサ8の負極側端子が負極母線6に接続されている。すなわち、第1コンデンサ7と第2コンデンサ8とは、直列に接続されている。また、第1コンデンサ7と第2コンデンサ8との接続点9には、上記中間端子4が接続されている。なお、第1コンデンサ7が、この発明の実施形態における「正極側コンデンサ」に相当し、第2コンデンサ8が、この発明の実施形態における「負極側コンデンサ」に相当する。
【0033】
上記の正極母線5と負極母線6との間には、更に、上アームスイッチ(素子)10と下アームスイッチ(素子)11とが設けられている。具体的には、上アームスイッチ10の高電位側端子であるコレクタが正極母線5に接続され、低電位側端子であるエミッタが、下アームスイッチ11の高電位側端子であるコレクタに接続され、下アームスイッチ11の低電位側端子であるエミッタが、負極母線6に接続されている。すなわち、上アームスイッチ10と下アームスイッチ11とは、直列に接続されている。
【0034】
上述したように図1に示すモータ3は、三相交流モータであるため、上アームスイッチ10と下アームスイッチ11とは、それぞれ三つのスイッチによって構成されている。具体的には、上アームスイッチ10は、U相コイル3uに接続された第1スイッチQ1、V相コイル3vに接続された第3スイッチQ3、およびW相コイル3wに接続された第5スイッチQ5によって構成されている。また、下アームスイッチ11は、U相コイル3uに接続された第2スイッチQ2、V相コイル3vに接続された第4スイッチQ4、およびW相コイル3wに接続された第6スイッチQ6によって構成されている。なお、上記第1スイッチQ1、第3スイッチQ3、および第5スイッチQ5が、この発明の実施形態における「正極側スイッチ素子」に相当し、第2スイッチQ2、第4スイッチQ4、および第6スイッチQ6が、この発明の実施形態における「負極側スイッチ素子」に相当する。
【0035】
これらの各スイッチQ1~Q6は、従来知られた絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)によって構成され、そのIGBTには、それぞれ、逆並列にフライホールダイオードD1~D6が接続されている。なお、各スイッチQ1~Q6は、IGBTに限らず、例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などの他のスイッチ素子によって構成されていてもよい。
【0036】
上記の第1スイッチQ1と第2スイッチQ2との接続点にU相コイル3uの一端が接続され、第3スイッチQ3と第4スイッチQ4との接続点にV相コイル3vの一端が接続され、第5スイッチQ5と第6スイッチQ6との接続点にW相コイル3wの一端が接続されている。そして、U相コイル3u、V相コイル3v、およびW相コイル3wの他端が接続され、その各コイル3u,3v,3wが接続された部分が中性点12となっている。
【0037】
また、電源2の中間端子4や第1コンデンサ7および第2コンデンサ8の接続点9と、各コイル3u,3v,3wとを接続するための中間スイッチ13が設けられている。この中間スイッチ13は、第7スイッチQ7~第12スイッチQ12によって構成され、第7スイッチQ7、第9スイッチQ9、および第11スイッチQ11のそれぞれのコレクタが、第1コンデンサ7と第2コンデンサ8との接続点9に接続されている。また、第7スイッチQ7のエミッタに第8スイッチQ8のエミッタが接続され、第8スイッチQ8のコレクタが第1スイッチQ1と第2スイッチQ2との接続点に接続されている。同様に、第9スイッチQ9のエミッタに第10スイッチQ10のエミッタが接続され、第10スイッチQ10のコレクタが第3スイッチQ3と第4スイッチQ4との接続点に接続されている。さらに、第11スイッチQ11のエミッタに第12スイッチQ12のエミッタが接続され、第12スイッチQ12のコレクタが第5スイッチQ5と第6スイッチQ6との接続点に接続されている。
【0038】
なお、第7スイッチQ7~第12スイッチQ12は、上述した第1スイッチQ1~第6スイッチQ6と同様にIGBTによって構成され、それぞれのスイッチQ7~Q12には、逆並列にフライホールダイオードD7~D12が接続されている。なお、各スイッチQ7~Q12は、IGBTに限らず、例えば、MOSFETや逆阻止IGBT(RBーIGBT)などの他のスイッチ素子によって構成されていてもよい。
【0039】
上述した電力変換装置1には、各コイル3u,3v,3wに通電される電流を検出する電流計14や、電源2の充電残量(SOC)、劣化状態(SOH)、温度、電圧などを監視するセル監視ユニット15が設けられている。さらに、上記の電流計14やセル監視ユニット15によって検出されたデータなどに基づいて、各スイッチQ1~Q12を制御するインバータ制御装置(コントローラ)16が設けられている。
【0040】
上述したように構成された電力変換装置1は、第1スイッチQ1~第12スイッチQ12を制御することにより、出力電圧を、電源2の電圧Vdcの中点電圧Vdc/2を基準として、その中点電圧Vdc/2、および中点電圧Vdc/2に電源2の電圧Vdcの1/2倍の電圧を加減した電圧の三つの電圧レベルに制御する3レベルインバータ(以下、単にインバータと記す)17として機能することができる。具体的には、上アームスイッチ10をオン状態に制御することにより出力可能な電圧が中点電圧Vdc/2を基準としてVdc/2(すなわち、0V基準では、電源2の電圧Vdc)となり、下アームスイッチ11をオン状態に制御することにより出力可能な電圧が中点電圧Vdc/2を基準として-Vdc/2(すなわち、0V基準では、0V)となり、中間スイッチ13をオン状態に制御することにより出力可能な電圧が中点電圧Vdc/2を基準として0(すなわち、0V基準では、Vdc/2)となる。
【0041】
なお、この発明の実施形態における電力変換装置1は、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの少なくともいずれか一方に、DC-DCコンバータを介して、電源2の出力電圧よりも低電圧で駆動する電動コンプレッサなどの高電圧補機を接続してもよい。
【0042】
図2は、下部電池ブロック2bに高電圧補機18が接続された例を示してあり、図2に示す例では、中間端子4(すなわち、下部電池ブロック2bの正極端子)と負極母線6とに電動コンプレッサ19およびDC-DCコンバータ20が並列に接続され、そのDC-DCコンバータ20に補機バッテリ21が接続されている。
【0043】
図3は、上部電池ブロック2aおよび下部電池ブロック2bに高電圧補機18が接続された例を示してあり、図3に示す例では、正極母線5と中間端子4とに電動コンプレッサ19が接続され、中間端子4と負極母線6とにDC-DCコンバータ20が接続され、そのDC-DCコンバータ20に補機バッテリ21が接続されている。
【0044】
図4は、上部電池ブロック2aに高電圧補機18が接続された例を示してあり、図2に示す例では、正極母線5と中間端子4(すなわち、上部電池ブロック2aの負極端子)とに電動コンプレッサ19およびDC-DCコンバータ20が並列に接続され、そのDC-DCコンバータ20に補機バッテリ21が接続されている。
【0045】
なお、図2ないし図4に示す例では、図1に示す例と同様に、電源2とモータ3とが接続されているため、電源2とモータ3とを接続する部材には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0046】
上述したように構成された電力変換装置1は、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの間で電荷を移動させ、また上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの消費電力を異ならせることができるように構成されている。その制御の一例を説明するためのフローチャートを図5に示してある。図5に示す制御例では、まず、均等化制御を実行する要求があるか否かを判断する(ステップS1)。この均等化制御は、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの充電残量(SOC)の差を低減し、またはSOCの差が増加することを抑制するように、各スイッチQ1~Q12を制御するものである。すなわち、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの充電残量が同一となるように、各スイッチQ1~Q12を制御する。したがって、例えば、上部電池ブロック2aの電圧と下部電池ブロック2bのSOCとをそれぞれ計測し、そのSOCの差が所定差以上である場合には、均等化制御を実行する要求があると判断される。また、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの消費電力を同一とする要求がある場合にも、同様に、均等化制御を実行する要求があると判断される。
【0047】
均等化制御を実行する要求がないことによりステップS1で否定的に判断された場合は、通常駆動モードまたは待機モードを設定して(ステップS2)、このルーチンを一旦終了する。この通常駆動モードは、従来の3レベルインバータを備えた電力変換装置と同様に、モータ3に要求される動力に応じて各スイッチQ1~Q12を制御するモードである。また、待機モードは、各スイッチQ1~Q12へのゲート信号を出力することなく、停止した状態とするモードである。すなわち、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの消費電力の関係を考慮することなく、従来と同様に電力制御を行う。
【0048】
それとは反対に、均等化制御を実行する要求があることによりステップS1で肯定的に判断された場合は、各スイッチQ1~Q12のゲート信号を定めるため、言い換えれば、各コイル3u,3v,3wに印加する電圧値を定めるために、モータ3を駆動する要求があるか否かを判断する(ステップS3)。
【0049】
モータ3を駆動する要求がないことによりステップS3で否定的に判断された場合は、停車中均等化モードを設定する(ステップS4)。この停車中均等化モードは、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの間で電荷を移動させて、SOCが多い一方の電池ブロック2a(2b)から、SOCの少ない他方の電池ブロック2b(2a)に電力を供給して他方の電池ブロック2b(2a)を充電し、または上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとから同一の電力を出力して、電力変換装置1に接続された高電圧補機18に電力を供給し、あるいはSOCが多い方の電池ブロック2a(2b)の消費電力を、他方の電池ブロック2b(2a)の消費電力よりも多くするモードである。
【0050】
したがって、ステップS4が実行されて停車中均等化モードが設定された場合には、いずれか一方の電池ブロック2a(2b)の電圧を昇圧または降圧して他方の電池ブロック2b(2a)の電圧に一致させて、他方の電池ブロック2b(2a)を充電し、または他方の電池ブロック2bに接続された高電圧補機18に、それぞれの電池ブロック2a,2bから電力を供給する。すなわち、インバータ17を昇圧コンバータや降圧コンバータとして機能させる。そのため、ステップS4に続いて、まず、接続点9とU相コイル3u、V相コイル3v、W相コイル3wとのうちの一つまたは二つのコイルとを導通状態とする。すなわち、いずれかの中間スイッチ13をオンに設定する(ステップS5)。なお、他の中間スイッチ13は、非導通状態とされる。
【0051】
図6には、第7スイッチQ7をオンした場合の等価回路図を簡略化して示してある。なお、図6では、説明の便宜上、U相コイル3uおよびV相コイル3vを一つのコイルとして示し、W相コイル3wを示していない。図6に示すように、第7スイッチQ7をオンすることにより、中間端子4とU相コイル3u、およびV相コイル3vとが直列に接続され、そのコイル3u,3vの他端に、第3スイッチQ3および第4スイッチQ4が接続された回路となる。同様に、中間端子4とU相コイル3u、およびW相コイル3wとが直列に接続され、そのコイル3u,3wの他端に、第5スイッチQ5および第6スイッチQ6が接続された回路となる。
【0052】
その回路を更に簡略して図7に示してあり、図7に示すようにコイル3u,3vをリアクトルとした昇圧コンバータまたは降圧コンバータ回路が形成される。したがって、第3スイッチQ3や第4スイッチQ4をオンオフ制御することによって、一方の電池ブロック2a(2b)の電圧を昇降圧することができ、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの間で電荷を移動させることができる。
【0053】
そのため、ステップS5に続いて、上部電池ブロック2aに要求される電力に応じた変調率(=電圧指令値/キャリア波の振幅)Mv,Mwを定め(ステップS6)、ついで、ステップS6で定められた変調率Mv,Mwに基づいて、第1スイッチQ1~第6スイッチQ6をPWM(オンオフ)制御して(ステップS7)、このルーチンを一旦終了する。具体的には、第1スイッチQ1~第6スイッチQ6のうちのステップS5によりオンされていないことにより中間スイッチ13を介した電源2からの電力の供給が遮断された所定コイル(ここでは、V相コイル3vおよびW相コイル3w)に、中性点12を介することなく接続された正極側スイッチ(ここでは、第3スイッチQ3および第5スイッチQ5)と負極側スイッチ(ここでは、第4スイッチQ4および第6スイッチQ6)とをPWM制御(スイッチング動作)する。
【0054】
図8には、停車中均等化モードを設定することによりPWM制御するスイッチのゲート信号を定めるための制御ブロック図を示してある。図8に示す例では、ステップS5で第7スイッチQ7をオンした場合について示してある。その場合、第8スイッチQ8は、オフするものの、第8ダイオードD8を介して導通状態となるため、図8では、第8スイッチQ8をオンとして示してある。
【0055】
図8に示すように第1スイッチQ1、第2スイッチQ2、第9スイッチQ9~第12スイッチQ12はオフされる。すなわち、それらのスイッチQ1,Q2,Q9~Q12の部分は、非導通状態となっている。
【0056】
それに対して、第3スイッチQ3~第6スイッチQ6は、PWM制御するために、まず、U相コイル3uに通電する要求電流値Iu_reqを求める。この要求電流値Iu_reqは、例えば、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとのSOCを比較し、そのSOCの差を低減させるために、一方の電池ブロック2a(2b)から他方の電池ブロック2b(2a)に通電する電力に基づいて求めることができる。また、図2に示すように下部電池ブロック2bに高電圧補機18が接続されている場合などのモータ3以外に電力を供給する場合には、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとのSOCを比較し、そのSOCの差に基づいてSOCが多い方の電池ブロック2a(2b)の消費電力が多くなるように要求電流値Iu_reqを求めることができる。
【0057】
続いて、U相コイル3uを通電している電流を電流計14で検出し、上記要求電流値Iu_reqと、検出された電流値であるフィードバック値Iu_feとの差をPI制御器22に入力する。そして、要求電流値Iu_reqとフィードバック値Iu_feとの差に基づいてU相コイル3uに通電する目標電流値を求め、その目標電流値の電流をU相コイル3uに通電するための目標電圧値V_tgtを求めて、PI制御器22から出力する。なお、目標電圧値V_tgtが、この発明の実施形態における「回転機電圧」に相当する。
【0058】
ここに示す制御例では、従来知られた三角波比較方式により各スイッチQ3~Q6のデューティー比を定めるように構成されている。したがって、図8に示す例では、まず、PI制御器22から出力された目標電圧値V_tgtを正規化する。すなわち、電源2の電圧値の1/2倍の値で、目標電圧値V_tgtを除算する。このように目標電圧値V_tgtを正規化することにより、その正規化された目標電圧値V_tgtと比較する搬送波(キャリア波)の最大電圧値および最小電圧値は、±1となる。すなわち、目標電圧値V_tgtを正規化した時点で、実質的に変調率(=電圧指令値/キャリア波の振幅)Mv,Mwを求めている。
【0059】
図9(a)には、上部電池ブロック2aから下部電池ブロック2bに電力を供給して下部電池ブロック2bを充電し、または下部電池ブロック2bに接続された高電圧補機18に、下部電池ブロック2bよりも多くの電力を上部電池ブロック2aから供給する場合に、上述したように定められたV相コイル3vおよびW相コイル3wに印加する電圧の指示値の変調率Mv,Mwを示している。また、図9(b)には、下部電池ブロック2bから上部電池ブロック2aに電力を供給して上部電池ブロック2aを充電し、または上部電池ブロック2aに接続された高電圧補機18に、上部電池ブロック2aよりも多くの電力を下部電池ブロック2bから供給する場合に、上述したように定められたV相コイル3vおよびW相コイル3wに印加する電圧の指示値の変調率Mv,Mwを示している。ここでは、中性点12側に向けてコイル3u,3v,3wを流れる電流値を正の値として示している。すなわち、図9(a)に示す例は、要求電流値Iu_reqを正の値に設定した場合の変調率Mv,Mwを示し、図9(b)に示す例は、要求電流値Iu_reqを負の値に設定した場合の変調率Mv,Mwを示している。
【0060】
図9(a)に示すように上部電池ブロック2aから下部電池ブロック2b側に電力を供給する場合には、PI制御器22から出力される電圧値が正の値を採るため、V相コイル3vおよびW相コイル3wの変調率Mv,Mwが0よりも大きくなるように定められる。すなわち、変調率Mv,Mwが正側にオフセットするように定められる。同様に、図9(b)に示すように下部電池ブロック2bから上部電池ブロック2a側に電力を供給する場合には、PI制御器22から出力される電圧値が負の値を採るため、V相コイル3vおよびW相コイル3wの変調率Mv,Mwが0よりも小さくなるように定められる。すなわち、変調率Mv,Mwが負側にオフセットするように定められる。
【0061】
そして、変調率Mv,Mwと、キャリア波とが比較器23に入力され、各スイッチQ3~Q6に出力するべき信号のデューティー比が求められる。そして、比較器23によって求められたデューティー比に基づいてPWM出力部24から各スイッチQ3~Q6に信号が出力される。
【0062】
図10は、図2に示すように下部電池ブロック2bに高電圧補機18が接続され、その高電圧補機18に要求される電力を、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとで均等に分担するように制御した場合における各コイル3u,3v,3wを通電する電流値および各電池ブロック2a,2bの消費電力を示してある。
【0063】
図10に示すようにU相コイル3uには正の電流が流れ、V相コイル3vおよびW相コイル3wには負の電流が流れている。また、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの消費電力は、同一である。すなわち、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの電力を均等に使用して、高電圧補機18に電力を供給することができる。
【0064】
一方、モータ3を駆動する要求があることによりステップS3で肯定的に判断された場合は、モータ駆動均等化モードを設定する(ステップS8)。このモータ駆動均等化モードは、モータ3や高電圧補機18に電力を供給する際における上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの消費電力が同一となるように各スイッチQ1~Q12を制御し、またはSOCが多い方の電池ブロック2a(2b)の消費電力が、他方の電池ブロック2b(2a)の消費電力よりも多くなるように各スイッチQ1~Q12を制御するモードである。
【0065】
したがって、ステップS7に続いて、モータ3に要求される電力に基づいて定められる変調率を、上部電池ブロック2aおよび下部電池ブロック2bに要求される消費電力に応じて変形(変更)する(ステップS9)。
【0066】
上述した電力変換装置1は、図11(a)および図11(b)に簡略して示す等価回路図のように、上部電池ブロック2aを電源としてモータ3を駆動することや、下部電池ブロック2bを電源としてモータ3を駆動することができる。具体的には、図11(a)に示すように第1スイッチQ1,第3スイッチQ3、第5スイッチQ5、および第7スイッチQ7~第12スイッチQ12を制御することにより、上部電池ブロック2aからモータ3に供給する電力を制御することができる。また、図11(b)に示すように第2スイッチQ2、第4スイッチQ4、第6スイッチQ6、および第7スイッチQ7~第12スイッチQ12を制御することにより、下部電池ブロック2bからモータ3に供給する電力を制御することができる。すなわち、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの消費電力が同一となるように制御することや、上部電池ブロック2aの消費電力と下部電池ブロック2bの消費電力とが異なるように制御することができる。
【0067】
したがって、ステップS9では、要求トルクに応じたモータ3に通電する電力と、高電圧補機18に通電する電力とに基づいてU相コイル3u、V相コイル3v、およびW相コイル3wの変調率Mu,Mv,Mwを定める。その変調率Mu,Mv,Mwを定めるための制御ブロックを図12に示してある。図12に示す例では、まず、モータ3の要求トルクに応じたd軸要求電流値Id_reqと、d軸のフィードバック電流値Id_feとの差をd軸PI制御器25に入力し、それらの値に基づいてd軸に通電するd軸目標電流値Id_tgtを求める。続いて、そのd軸目標電流値Id_tgtを通電するために要するd軸目標電圧値Vd_tgtを求めて、d軸PI制御器25から出力する。
【0068】
同様に、モータ3の要求トルクに応じたq軸要求電流値Iq_reqと、q軸のフィードバック電流値Iq_feとの差をq軸PI制御器26に入力し、それらの値に基づいてq軸に通電するq軸目標電流値Iq_tgtを求める。続いて、そのq軸目標電流値Iq_tgtを通電するために要するq軸目標電圧値Vq_tgtを求めて、q軸PI制御器26から出力する。
【0069】
上記のd軸PI制御器25およびq軸PI制御器26により求められた各目標電圧値Vd_tgt,Vq_tgtを、変換器27に入力する。この変換器27は、従来知られたベクトル制御によってd軸目標電圧値Vd_tgtとq軸目標電圧値Vq_tgtとからU相コイル3u、V相コイル3v、W相コイル3wに印加するモータ電圧値Vu,Vv,Vwを求める。すなわち、モータ3に要求される動力(つまり、通電する電力)に応じて、各コイル3u,3v,3wに印加する電圧を求める。
【0070】
また、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとのSOCの差を小さくするために要求される上部電池ブロック2aの出力電圧を求める。すなわち、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとのSOCを均等化するために要求される上部電池ブロック2aの出力電圧を求める。そのため、図11に示す例では、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとのSOCの差を充電残量PI制御器28に入力し、充電残量PI制御器28によってSOCの差を低減するために各コイル3u,3v,3wに印加するSOC電圧値Vsocを求め、そのSOC電圧値Vsocを出力する。
【0071】
そして、モータ電圧値Vu,Vv,VwにSOC電圧値Vsocを加算し、その加算された電圧値を正規化(電源2の電圧値Vdcの1/2倍で除算)して変調率Mu,Mv,Mwを求める。そのように求められた変調率Mu,Mv,Mwに基づいて図7に示す例と同様に各スイッチQ1~Q6のデューティー比を定める。なお、ここでは、インバータ17がマルチレベルインバータとして機能するものであるため、従来知られたマルチレベルインバータ制御と同様に、比較器23では、変調率Mu,Mv,Mwと二つのキャリア波とが比較されてデューティー比が定められる。
【0072】
上述したように定められた変調率Mu,Mv,Mw(より具体的には、各スイッチQ1~Q12のデューティー比)に基づいて、各スイッチQ1~Q12をPWM(オンオフ)制御して(ステップS10)、このルーチンを一旦終了する。
【0073】
図13(a)には、下部電池ブロック2bに接続された高電圧補機18と、モータ3とに要求される電力を、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとから均等に出力するように、上述した制御例に基づいて各スイッチQ1~Q12を制御した場合における各コイル3u,3v,3wを通電する電流値、各相の変調率Mu,Mv,Mw、および各電池ブロック2a,2bの消費電力を示してある。なお、図13(b)には、モータ3に要求される電流のみによって変調率Mu,Mv,Mwを定めた場合における各コイル3u,3v,3wを通電する電流値、各相の変調率Mu,Mv,Mw、および各電池ブロック2a,2bの消費電力を示してある。
【0074】
図13(a)に示すように上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの消費電力を均等にする制御を実行することにより、その制御を実行しない場合と比較して変調率Mu,Mv,Mwが高く設定される。その結果、各電池ブロック2a,2bの消費電力を同一とすることができる。なお、そのように変調率Mu,Mv,Mwを定めた場合であっても、図13(a)と図13(b)とに示すように各コイル3u,3v,3wに通電される電流値が変化することはない。
【0075】
上述したように3レベルインバータとして機能する電力変換装置における第1コンデンサ7および第2コンデンサ8の接続点9に電源2の中間端子4を接続することによって、モータ3を停止した状態や駆動した状態に拘わらず、中間端子4の一方側の上部電池ブロック2aと他方側の下部電池ブロック2bとのそれぞれの消費電力を独立して制御することができる。すなわち、一方の電池ブロック2a(2b)から他方の電池ブロック2b(2a)に電荷を移動させることや、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの消費電力を同一とすることなどができる。つまり、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとの電力を均等化させることができる。言い換えると、互いの電池ブロック2a,2bの間で電荷を移動させるためのリアクトルやコンデンサなどを別途設ける必要がないため、電力変換装置1の大型化を抑制することができる。
【0076】
また、上部電池ブロック2aや下部電池ブロック2bにDC-DCコンバータ20およびコンプレッサ19を接続することにより、高電圧システムである電力変換装置1の電源2を、その電源2の電圧よりも低電圧で駆動するコンプレッサ19などの電源として使用することができる。その結果、他の電源や電力変換装置を別途設ける必要がなく、装置を小型化することができる。
【0077】
また、上述したように構成された電力変換装置1は、モータ3が低回転数で回転している場合やモータ3の要求トルクが小さい場合などの各コイル3u,3v,3wに印加する電圧の変調率が低い領域では、中間スイッチ13と各コイル3u,3v,3wとの間を電流が還流するモードが生じる。このような還流モードでは、中間スイッチ13の導通損失が多くなるため、電力損失が大きくなる。
【0078】
そのため、この発明の実施形態における電力変換装置1は、上記の還流モードが生じるモータ3の運転領域において、変調率Mu,Mv,Mwを変更することにより、中間スイッチ13を電流が通電することを抑制するように構成されている。
【0079】
その制御の一例を説明するための制御ブロックを図14に示してある。図14に示す例では、図12に示す制御例と同様に、モータ3の要求トルクに応じて各コイル3u,3v,3wに印加するモータ電圧値Vu,Vv,Vwを求める。具体的には、まず、モータ3の要求トルクに応じたd軸要求電流値Id_reqと、d軸のフィードバック電流値Id_feとの差をd軸PI制御器25に入力し、それらの値に基づいてd軸に通電するd軸目標電流値Id_tgtを求める。続いて、そのd軸目標電流値Id_tgtを通電するためのd軸目標電圧値Vd_tgtを求めて、d軸PI制御器25から出力する。
【0080】
同様に、モータ3の要求トルクに応じたq軸要求電流値Iq_reqと、q軸のフィードバック電流値Iq_feとの差をq軸PI制御器26に入力し、それらの値に基づいてq軸に通電するq軸目標電流値Iq_tgtを求める。続いて、そのq軸目標電流値Iq_tgtを通電するためのq軸目標電圧値Vq_tgtを求めて、q軸PI制御器26から出力する。
【0081】
上記のd軸PI制御器25およびq軸PI制御器26により求められた各目標電圧値Vd_tgt,Vq_tgtを、変換器27に入力する。この変換器27は、従来知られたベクトル制御によってd軸目標電圧値Vd_tgtとq軸目標電圧値Vq_tgtとからU相コイル3u、V相コイル3v、W相コイル3wに印加するモータ電圧値Vu,Vv,Vwを求める。
【0082】
続いて、変調率Mu,Mv,Mwを変更(オフセット)するために、上述するように求められたモータ電圧値Vu,Vv,Vwに所定電圧を加算(または減算)する。ここでは、電源2の出力電圧Vdcの1/4倍の電圧を加算している。そして、所定電圧を加算した値を正規化するために、電源2の電圧Vdcの1/2倍の値で除算して、各コイル3u,3v,3wに印加する電圧の変調率Mu,Mv,Mwを求める。そのように求められた変調率Mu,Mv,Mwに基づいて図12に示す例と同様に、比較器23によって変調率Mu,Mv,Mwと二つのキャリア波とが比較されて、各スイッチQ1~Q12のデューティー比を定める。
【0083】
図15(a)には、図14に示す制御ブロックに基づいて変調率Mu,Mv,Mwを定めた場合における相電流、変調率Mu,Mv,Mw、および各電池ブロック2a,2bの消費電力を示してある。なお、図15(b)には、変調率を変更しない場合の相電流、変調率、および消費電力を示してある。さらに、図15(c)には、図15(a)に示すように変調率Mu,Mv,Mwを制御した場合の電力損失と、図15(b)に示すように変調率Mu,Mv,Mwを制御した場合の電力損失とを比較した結果を示してある。
【0084】
図15(a)に示す例では、所定の時間t1までの間は、下部電池ブロック2bの電力を使用してモータ3を駆動している。すなわち、図14に示す制御ブロックのうちの変調率Mu,Mv,Mwを変更するための電圧として負の値を加算して、変調率Mu,Mv,Mwを定めている。それに対して、所定時間t1以降は、上部電池ブロック2aの電力を使用してモータ3を駆動している。すなわち、図14に示す制御ブロックのうちの変調率を変更するための電圧として正の値を加算して、変調率Mu,Mv,Mwを定めている。
【0085】
図15(a)および図15(b)に示すように変調率Mu,Mv,Mwを変更した場合であっても相電流は変化しない。すなわち、モータ3に要求されるトルクを出力することができる。また、図15(a)では、所定時間t1以前は、モータ3に要求される電力の全てを下部電池ブロック2bから出力し、所定時間t1以降は、モータ3に要求される電力の全てを上部電池ブロック2aから出力している。それに対して、図15(b)では、各電池ブロック2a,2bから常時同一の電力を出力し、そのトータル電力が、モータ3に要求される電力となっている。つまり、いずれの制御を実行した場合であっても、モータ3を駆動することによる実質的な消費電力はほぼ同一となる。
【0086】
しかしながら、図15(c)に示すように、モータ3の駆動時における電力損失は、図15(a)に示すように変調率Mu,Mv,Mwを制御した場合の方が、図15(b)に示すように変調率Mu,Mv,Mwを制御した場合よりも10%程度低減することができる。これは、変調率Mu,Mv,Mwを正側または負側にオフセットすることにより、上アームスイッチ10や下アームスイッチ11がオンオフ制御され、その結果、上述したような還流モードが生じることを抑制することができるためである。
【0087】
また、変調率Mu,Mv,Mwが所定値(0.61)以上の過変調領域では、ゲート信号のオンオフの切り替え回数を低減することができ、スイッチでの損失を低減できることが知られている。したがって、図14に示すように変調率Mu,Mv,Mwをオフセットすることに加え、または変調率Mu,Mv,Mwをオフセットすることに代えて、変調率Mu,Mv,Mwを過変調領域に変更してもよい。その制御の一例を説明するための制御ブロックを図16に示してある。なお、図16に示す例では、図14に示す例と同様に、変調率Mu,Mv,Mwをオフセットすることに加えて、変調率を過変調領域に変更している。
【0088】
図16に示す例では、図14に示す制御例と同様に、モータ3の要求トルクに応じて各コイル3u,3v,3wに印加するモータ電圧値Vu,Vv,Vwを求め、そのモータ電圧値Vu,Vv,Vwに変調率Mu,Mv,Mwを変更するための所定電圧(Vdc/4)を加算(または減算)する。ついで、過変調領域とするために、モータ電圧値Vu,Vv,Vwに変調率Mu,Mv,Mwを変更するための所定電圧を加算した値に所定係数Kを乗算する。この所定係数Kは、モータ電圧値Vu,Vv,Vwを過変調領域に増加させるための係数であり、したがって、モータ電圧値Vu,Vv,Vwに基づいて定めることができる。
【0089】
そして、上記のように所定係数Kが乗算された値を、図14に示す例と同様に、正規化するために、電源2の電圧Vdcの1/2倍の値で除算して、各コイル3u,3v,3wに印加する電圧の変調率Mu,Mv,Mwを求める。そのように求められた変調率Mu,Mv,Mwに基づいて図12図14に示す例と同様に、比較器23によって変調率Mu,Mv,Mwと二つのキャリア波とが比較されて、各スイッチQ1~Q12のデューティー比を定める。
【0090】
図17(a)には、図16に示す制御ブロックに基づいて変調率Mu,Mv,Mwを定めた場合における相電流、および変調率Mu,Mv,Mwを示してある。なお、図17(b)には、変調率Mu,Mv,Mwをオフセットせず、また過変調領域に変更しない場合の相電流、および変調率Mu,Mv,Mwを示してある。さらに、図17(c)には、図17(a)に示すように変調率Mu,Mv,Mwを制御した場合の電力損失と、図17(b)に示すように変調率Mu,Mv,Mwを制御した場合の電力損失とを比較した結果を示してある。
【0091】
図16の制御ブロックに基づいて変調率Mu,Mv,Mwを定めることにより、図17(a)に示すように変調率Mu,Mv,Mwの振幅が大きくなる。一方、変調率をオフセットしたことにより上部電池ブロック2aからモータ3に通電する電力の割合が大きくなるものの、各コイル3u,3v,3wに印加される電圧は要求値に基づいた大きさとなる。そのため、図17(a)および図17(b)に示すように各コイル3u,3v,3wの相電流は同一となっている。しかしながら、変調率Mu,Mv,Mwを変更して過変調領域を増加させることにより、各スイッチQ1~Q12がオンされる期間を長くすること、言い換えると、オンとオフとの切り替え回数を低減することができ、その結果、図17(c)に示すように各スイッチQ1~Q12によるオンオフ切り替えに伴う電力損失を25%程度、低減することができる。
【0092】
なお、上述した例では、変調率Mu,Mv,Mwをオフセットした後に、更に、過変調領域とするために、所定係数Kを乗算しているが、変調率Mu,Mv,Mwをオフセットせずに、所定係数Kを乗算して、変調率Mu,Mv,Mwを変更するように構成してもよい。
【0093】
また、図1に示すように構成された電力変換装置1は、モータ3(具体的には、各コイル3u,3v,3w)を絶縁している。それに対して、大気圧やコイル(巻き線)温度などに応じてその電気回路で部分放電が生じる。図18には、大気圧に応じて部分放電が生じる電圧(PDIV:部分放電開始電圧)が変化する例を示してあり、図18に破線で示すように大気圧が低いほど、PDIVが低下する。そのため、PDIVが低い状況下では、モータ3に印加する電圧を低下させることが好ましい。その制御の一例を説明するためのフローチャートを図19に示してある。
【0094】
図19に示す制御例では、まず、モータ3を駆動する要求があるか否かを判断する(ステップS11)。このステップS11は、運転者によるアクセル開度などに基づいて判断することができる。
【0095】
モータ3を駆動する要求がないことによりステップS11で否定的に判断された場合は、待機モードを設定して(ステップS12)、このルーチンを一旦終了する。この待機モードは、各スイッチQ1~Q12へのゲート信号を出力することなく、停止した状態とするモードである。
【0096】
それとは反対に、モータ3を駆動する要求があることによりステップS11で肯定的に判断された場合は、モータ(MG)3の絶縁部を保護する要求があるか否かを判断する(ステップS13)。このステップS13は、PDIVが所定値以下であって部分放電が生じやすい条件の場合に肯定的に判断される。すなわち、モータ3に印加する電圧を低下させるべき要求があるか否かを判断する。
【0097】
具体的には、大気圧センサなどによって検出される大気圧が所定圧以下である場合や、温度センサなどによって検出される巻き線の温度が所定温度以上である場合など、PDIVの変化に影響(関連)する所定のパラメータに基づいて、ステップS13を判断する。同様に、巻き線に印加される電圧がPDIV以上となることにより部分放電が生じる。そのため、電源2の端子電圧が所定電圧である場合や、各コイル3u,3v,3wの相電流が所定電流以上である場合など、巻き線に印加される電圧が高くなる要因となるパラメータに基づいて、ステップS13を判断する。すなわち、ステップS13は、部分放電が生じる可能性がある環境下であるか否かや、運転状態であるか否かなどに基づいて判断することができる。
【0098】
より具体的には、図18に示すように上部電池ブロック2aおよび下部電池ブロック2bから最大電圧を出力した場合に、各コイル3u,3v,3wに印加される電圧値がPDIV以下となる大気圧を所定圧Pthとして定め、大気圧が所定圧Pth未満の場合に、ステップS13で肯定的に判断される。
【0099】
モータ3の絶縁部を保護する要求がないことにより、言い換えると、部分放電が生じる可能性が低い条件下であることにより、ステップS13で否定的に判断された場合は、モータ駆動モードを設定する(ステップS14)。このステップS14は、通常にモータ3を駆動するモードであって、例えば、図5に示す制御例に基づいて均等化制御要求がある場合には、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとのSOCなどに基づいて変調率Mu,Mv,Mwを定め、均等化制御要求がない場合には、従来の3レベルインバータを備えた電力変換装置と同様に、モータ3に要求される動力に応じて各スイッチQ1~Q12を制御する。つまり、コイル3u,3v,3wに印加する電圧は、電源2の出力電圧に基づく大きさに制御され、後述するMG絶縁保護モードが設定された場合よりも高電圧が印加されるモードを設定する。
【0100】
続いて、アクセル操作量などに基づいて変調率Mu,Mv,Mwを定め、その定められた変調率Mu,Mv,Mwに基づいて各スイッチQ1~Q12をPWM制御して(ステップS15)、このルーチンを一旦終了する。
【0101】
一方、モータ3の絶縁部を保護する要求があることにより、ステップS13で肯定的に判断された場合は、MG絶縁保護モードを設定する(ステップS16)。このMG絶縁保護モードは、巻き線の被膜などの絶縁部を保護するモードであって、その巻き線に印加されるピーク電圧を低下させ、または制限するモードである。したがって、ステップS16が実行されてMG絶縁保護モードが設定されると、まず、上部電池ブロック2aと下部電池ブロック2bとのいずれか一方の電力を使用してモータ3を駆動する。すなわち、変調率Mu,Mv,Mwをオフセットし、または変調率Mu,Mv,Mwを制限する(ステップS17)。具体的には、要求されるd軸電流とq軸電流とに基づいて定められる電圧値に±Vdc/2を加算した後に変調率Mu,Mv,Mwを求める。このように変調率Mu,Mv,Mwを定めることにより、モータ3には、一方の電池ブロック2a(2b)の電圧が印加されるため、上述したモータ駆動モードを設定した場合よりも、コイル3u,3v,3wに印加される電圧が小さい低電圧モードとなる。すなわち、上記モータ駆動モードが、この発明の実施形態における「高電圧モード」に相当し、MG絶縁保護モードが、この発明の実施形態における「低電圧モード」に相当する。
【0102】
そして、ステップS17によってオフセットされ、または制限された変調率Mu,Mv,Mwに基づいて各スイッチQ1~Q12をPWM制御して(ステップS15)、このルーチンを一旦終了する。
【0103】
図20(a)には、MG絶縁保護モードを設定した場合における相電流、変調率Mu,Mv,Mw、およびモータ3の線間電圧を示し、図20(b)には、モータ駆動モードを設定した場合における相電流、変調率Mu,Mv,Mw、およびモータ3の線間電圧を示している。
【0104】
気圧が所定圧Pth未満であり、モータ3の絶縁部を保護することが要求されていることによってMG絶縁保護モードが設定されることにより、図20(a)に示すように変調率Mu,Mv,Mwが正側にオフセットされている。ここで示す例では、モータ駆動モードが設定されている場合の変調率Mu,Mv,Mwに0.5加算した変調率Mu,Mv,Mwとなっている。そのようにモータ駆動モードが設定されている場合の変調率Mu,Mv,Mwに0.5加算することにより、下アームスイッチ11はオフ(停止)状態に制御される。
【0105】
そのように変調率Mu,Mv,Mwがオフセットされることにより、図21(a)に模式的に示すように上部電池ブロック2aとモータ3とを接続した電気回路となる。すなわち、各コイル3u,3v,3wに印加される電圧の最大値は、上部電池ブロック2aの出力電圧の最大値に基づいた値に制限される。
【0106】
それに対して、気圧が所定圧Pth以上であることによってモータ駆動モードが設定されることにより、図20(b)に示すように変調率Mu,Mv,Mwがオフセットされていない場合には、図21(b)に模式的に示すように電源2とモータ3とを接続した電気回路となる。すなわち、各コイル3u,3v,3wに印加される電圧の最大値は、電源2の出力電圧の最大値に基づいた値になる。
【0107】
その結果、変調率Mu,Mv,Mwをオフセットしていない場合には、図20(b)に示すようにモータ3の線間電圧が瞬時的に大きくなっているのに対して、変調率Mu,Mv,Mwをオフセットした場合には、図20(a)に示すようにモータ3の線間電圧が過剰に高くなることを抑制することができる。言い換えると、部分放電が生じることを抑制することができ、モータ3の耐久性が低下することを抑制できる。
【0108】
また、上述したように中間スイッチ13を備えた電力変換装置1は、モータ3の回転数が低回転数の場合には、上記のように中間スイッチ13と各コイル3u,3v,3wとの間で電流が還流し、またモータ3の出力トルクが高トルクの場合には、中間スイッチ13の銅損が大きくなり電力損失が増加する可能性がある。そのため、この発明の実施形態における電力変換装置1は、モータ3の運転点に応じて各コイル3u,3v,3wに印加される電圧を、2レベルモードと、3レベルモードとから選択して制御するように構成されている。同様に、上記のように電力損失が増加することに伴って中間スイッチ13の耐久性が低下する可能性があるため、中間スイッチ13の温度に応じて2レベルモードと、3レベルモードとから選択して制御するように構成されている。
【0109】
その制御の一例を説明するためのフローチャートを図22に示してある。図22に示す制御例では、まず、モータ3を駆動する要求があるか否かを判断する(ステップS21)。このステップS21は、上記のステップS11と同様のステップであって、運転者によるアクセル開度などに基づいて判断することができる。
【0110】
モータ3を駆動する要求がないことによりステップS21で否定的に判断された場合は、待機モードを設定して(ステップS22)、このルーチンを一旦終了する。このステップS22は、上記のステップS12と同様のステップであって、各スイッチQ1~Q12へのゲート信号を出力することなく、停止した状態とする。
【0111】
それとは反対に、モータ3を駆動する要求があることによりステップS21で肯定的に判断された場合は、モータ(MG)3の回転数Nmが所定回転数Nth以上であり、またはモータ3の出力トルクTmが所定トルクTth未満であるか否かを判断する(ステップS23)。このステップS23は、例えば、モータ3の回転数を検出するレゾルバなどの回転数センサの検出値や、アクセル開度に基づく要求駆動力などに応じて判断することができる。
【0112】
モータ3の回転数Nmが所定回転数Nth以上であり、またはモータ3の出力トルクTmが所定トルクTth未満であることによりステップS23で肯定的に判断された場合は、中間スイッチ13の温度TEが所定温度TEth未満であるか否かを判断する(ステップS24)。この所定温度TEthは、中間スイッチ13の耐久性が低下しないように予め定められた温度である。
【0113】
中間スイッチ13の温度TEが所定温度TEth未満であることによりステップS24で肯定的に判断された場合は、3レベルモードを設定して(ステップS25)、このルーチンを一旦終了する。すなわち、要求されるトルクや回転数に応じた変調波に基づいて各スイッチQ1~Q12をPWM制御する。
【0114】
一方、モータ3の回転数Nmが所定回転数未満であり、またモータ3の出力トルクTmが所定トルクTth以上であることによりステップS23で否定的に判断された場合や、中間スイッチ13の温度TEが所定温度TEth以上であることによりステップS24で否定的に判断された場合は、電力損失を低下させ、また中間スイッチ13が過剰に昇温して耐久性が低下することを抑制する。具体的には、中間スイッチ13をオフに設定する(ステップS26)。そのように中間スイッチ13をオフに設定することにより、電力変換装置1は、2レベルインバータとしてのみ機能できるため、制御モードとして2レベルモードを設定して(ステップS27)、このルーチンを一旦終了する。すなわち、要求されるトルクや回転数に応じた変調波に基づいて、第1スイッチQ1~第6スイッチQ6をPWM制御する。
【0115】
図23(a)には、2レベルモードを設定した場合の相電流、および線間電圧を示してあり、図23(b)には、3レベルモードを設定した場合の相電流、および線間電圧を示してある。図23(a)および図23(b)に示すように2レベルモードを設定することにより線間電圧が大きくなっている。
【0116】
また、モータ3の回転数Nmが所定回転数Nth未満であり、かつモータ3の出力トルクが所定トルクTth以上である場合に、2レベルモードを設定してモータ3を制御した場合と、3レベルモードを設定してモータ3を制御した場合との電力損失を比較した結果を図23(c)に示してある。図23(c)に示すように2レベルモードを設定してモータ3を制御した場合の方が、3レベルモードを設定してモータ3を制御した場合よりも、電力損失が10%程度低下させることができる。
【0117】
なお、この発明の実施形態の電力変換装置は、3相の交流モータを制御するものに限らず、5相の交流モータなどの多相の交流モータを制御するように構成されていてもよい。図24には、5相の交流モータを制御する電力変換装置1の一例を示してあり、図1に示す電力変換装置1に、第13スイッチQ13~第20スイッチQ20、X相コイル3x、およびY相コイル3yが追加して設けられている。
【0118】
具体的には、第13スイッチQ13のコレクタが正極母線5に接続され、そのエミッタが第14スイッチQ14のコレクタに接続され、第14スイッチQ14のエミッタが負極母線6に接続されている。同様に、第15スイッチQ15のコレクタが正極母線5に接続され、そのエミッタが第16スイッチQ16のコレクタに接続され、第16スイッチQ16のエミッタが負極母線6に接続されている。そして、第13スイッチQ13と第14スイッチQ14との接続点にX相コイル3xの一端が接続され、第15スイッチQ15と第16スイッチQ16との接続点にY相コイル3yの一端が接続され、それらのコイル3x,3yの他端が中性点12に接続されている。
【0119】
また、第17スイッチQ17のコレクタが、第1コンデンサ7と第2コンデンサ8との接続点9に接続され、第17スイッチQ17のエミッタに第18スイッチQ18のエミッタが接続され、第18スイッチQ18のコレクタが第13スイッチQ13と第14スイッチQ14との接続点に接続されている。同様に、第19スイッチQ19のエミッタに第20スイッチQ20のエミッタが接続され、第20スイッチQ20のコレクタが第15スイッチQ15と第16スイッチQ16との接続点に接続されている。
【0120】
なお、各スイッチQ13~Q20はIGBTによって構成され、それぞれのスイッチQ13~Q20には、逆並列にフライホールダイオードD13~D20が接続されている。
【0121】
またさらに、この発明の実施形態における電力変換装置は、いわゆるA-NPC形態のマルチレベルインバータ回路に限らない。図25には、他の構成の電力変換装置1を示してある。なお、図1と同様の構成についてはその説明を省略する。図25に示す電力変換装置1は、第1スイッチQ1のエミッタに第21スイッチQ21のコレクタが接続され、その第21スイッチQ21のエミッタに第22スイッチQ22のコレクタが接続され、更に第22スイッチQ22のエミッタに第2スイッチQ2のコレクタが接続されている。
【0122】
同様に第3スイッチQ3のエミッタに第23スイッチQ23のコレクタが接続され、その第23スイッチQ23のエミッタに第24スイッチQ24のコレクタが接続され、更に第24スイッチQ24のエミッタに第4スイッチQ4のコレクタが接続されている。またさらに、第5スイッチQ5のエミッタに第25スイッチQ25のコレクタが接続され、その第25スイッチQ25のエミッタに第26スイッチQ26のコレクタが接続され、更に第26スイッチQ26のエミッタに第6スイッチQ6のコレクタが接続されている。
【0123】
これらの各スイッチQ21~Q26は、上述した第1スイッチQ1~第6スイッチQ6などと同様にIGBTによって構成され、それぞれのスイッチQ21~Q26には、逆並列にフライホールダイオードD21~D26が接続されている。
【0124】
また、第1コンデンサ7および第2コンデンサ8の接続点9と、第1スイッチQ1および第21スイッチQ21の接続点とが、第27ダイオードD27を介して接続され、第1コンデンサ7および第2コンデンサ8の接続点9と、第22スイッチQ22および第2スイッチQ2の接続点とが、第28ダイオードD28を介して接続されている。同様に、第1コンデンサ7および第2コンデンサ8の接続点9と、第3スイッチQ3および第23スイッチQ23の接続点とが、第29ダイオードD29を介して接続され、第1コンデンサ7および第2コンデンサ8の接続点9と、第24スイッチQ24および第4スイッチQ4の接続点とが、第30ダイオードD30を介して接続されている。またさらに、第1コンデンサ7および第2コンデンサ8の接続点9と、第5スイッチQ5および第25スイッチQ25の接続点とが、第31ダイオードD31を介して接続され、第1コンデンサ7および第2コンデンサ8の接続点9と、第26スイッチQ26および第6スイッチQ6の接続点とが、第32ダイオードD32を介して接続されている。
【0125】
そして、第21スイッチQ21と第22スイッチQ22との接続点にU相コイル3uの一端が接続され、第23スイッチQ23と第24スイッチQ24との接続点にV相コイル3vの一端が接続され、第25スイッチQ25と第26スイッチQ26との接続点にW相コイル3wの一端が接続されている。
【0126】
また、上述した図22に示す制御例で対象とすることができる電力変換装置1は、図1図24図25に示す構成に限らず、中間端子4と接続点9とが接続されていなくてもよい。すなわち、中間スイッチを備え、2レベルインバータとしての機能と3レベルインバータとしての機能とを備えた電力変換装置であればよい。
【符号の説明】
【0127】
1 電力変換装置
2 電源
2a 上部電池ブロック
2b 下部電池ブロック
3 モータ
3u,3v,3w,3x,3y コイル
4 中間端子
5 正極母線
6 負極母線
7,8 コンデンサ
9 接続点
10 上アームスイッチ
11 下アームスイッチ
12 中性点
13 中間スイッチ
16 インバータ制御装置
17 インバータ
18 高電圧補機
19 電動コンプレッサ
20 コンバータ
22,25,26,28 PI制御器
23 比較器
24 出力部
27 変換器
Bc 電池セル
D1~D32 ダイオード
Q1~Q26 スイッチ
図1
図2
図3
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