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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】コンクリート充填鋼管の耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20241217BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
E04B1/94 D
B27M3/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021083127
(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公開番号】P2022176613
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2023-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蛇石 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】花井 厚周
(72)【発明者】
【氏名】藤村 雅彦
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-079553(JP,A)
【文献】特開2013-011063(JP,A)
【文献】特開2021-011743(JP,A)
【文献】特開平02-120438(JP,A)
【文献】特開2014-080834(JP,A)
【文献】特開2013-087520(JP,A)
【文献】特開2011-058202(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104775566(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
B27M 1/00-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にコンクリートが充填された鋼管と、
前記鋼管を取り囲む複数の木質耐火被覆材と、
複数の前記木質耐火被覆材の全内面にそれぞれ取り付けられて複数の前記木質耐火被覆材とそれぞれあらかじめ一体化され、隙間を介して前記鋼管の外面を環状に取り囲んで耐火被覆する複数の金属板と、
を備えるコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造。
【請求項2】
内部にコンクリートが充填された鋼管に取り付けられ、断熱層を介して前記鋼管の外面を耐火被覆する木質耐火被覆材と、
前記鋼管の前記外面から突出するネジ部材と、
を備え、
前記木質耐火被覆材は、前記鋼管の前記外面との間に前記断熱層としての隙間を空けた状態で前記ネジ部材を用いて前記鋼管に取り付けられている、
コンクリート充填鋼管の耐火被覆構造。
【請求項3】
内部にコンクリートが充填された鋼管に取り付けられ、断熱層を介して前記鋼管の外面を耐火被覆する木質耐火被覆材と、
前記木質耐火被覆材に設けられ、該木質耐火被覆材の外面側を向く被係合部と、
前記鋼管の外面に設けられ、前記被係合部に係合している係合部と、
を備えるコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造。
【請求項4】
内部にコンクリートが充填された鋼管に取り付けられ、断熱層を介して前記鋼管の外面を耐火被覆する木質耐火被覆材と、
前記鋼管の外面から突出し、前記木質耐火被覆材の内面に形成された位置決め穴に挿入される位置決め突起と、
を備えるコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造。
【請求項5】
内部にコンクリートが充填された丸形鋼管に取り付けられ、断熱層を介して前記丸形鋼管の外周面を耐火被覆する円筒状の木質耐火被覆材を製造する木質耐火被覆材の製造方法
であって、
前記木質耐火被覆材を周方向に分割した複数の分割ピースが外周面に取り付けられた回転軸体を回転させながら、前記木質耐火被覆材の外周面を断面円形状に切削する切削工程と、
前記回転軸体から複数の前記分割ピースを取り外し、前記丸形鋼管に取り付ける取付工程と、
を備える木質耐火被覆材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート充填鋼管の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管の外面が木質材で覆われた構造部材が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-089329号公報
【文献】特開2019-056202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示された技術では、木質材によって鋼管を覆うことにより、鋼管の意匠性を高めることができるものの、耐火性能の観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、コンクリート充填鋼管の意匠性を高めつつ、耐火性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造は、内部にコンクリートが充填された鋼管に取り付けられ、断熱層を介して前記鋼管の外面を耐火被覆する木質耐火被覆材を備える。
【0007】
請求項1に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造によれば、鋼管の内部には、コンクリートが充填されている。このコンクリートの熱容量によって、鋼管の耐火性が高められる。
【0008】
また、鋼管には、木質耐火被覆材が取り付けられている。木質耐火被覆材は、鋼管の外面を耐火被覆している。これにより、鋼管の意匠性を高めつつ、鋼管の耐火性能を高めることができる。
【0009】
さらに、木質耐火被覆材は、断熱層を介して鋼管の外面を耐火被覆している。この断熱層によって、鋼管の耐火性能をさらに高めることができる。
【0010】
第2態様に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造は、第1態様に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造において、前記鋼管の前記外面から突出するネジ部材を備え、前記木質耐火被覆材は、前記鋼管の前記外面との間に前記断熱層としての隙間を空けた状態で前記ネジ部材を用いて前記鋼管に取り付けられている。
【0011】
第2態様に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造によれば、木質耐火被覆材は、鋼管の外面との間に断熱層としての隙間を空けた状態で、鋼管の外面から突出するネジ部材を用いて鋼管に取り付けられている。
【0012】
このように木質耐火被覆材と鋼管の外面との間に断熱層としての隙間を空けることにより、隙間によって木質耐火被覆材の施工誤差等を吸収しつつ、鋼管の耐火性能を高めることができる。
【0013】
第3態様に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造は、第1態様に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造において、前記木質耐火被覆材に設けられ、該木質耐火被覆材の外面側を向く被係合部と、前記鋼管の外面に設けられ、前記被係合部に係合している係合部と、を備える。
【0014】
第3態様に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造によれば、木質耐火被覆材には、木質耐火被覆材の外面側を向く被係合部が設けられている。また、鋼管の外面には、係合部が設けられている。この係合部を木質耐火被覆材の被係合部に係合させることにより、鋼管に木質耐火被覆材を容易に取り付けることができる。
【0015】
第4態様に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造は、第1態様第3態様の何れか1つに係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造において、前記鋼管の外面から突出し、前記木質耐火被覆材の内面に形成された位置決め穴に挿入される位置決め突起を備える。
【0016】
第4態様に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造によれば、鋼管の外面から位置決め突起が突出されている。この位置決め突起を木質耐火被覆材の内面に形成された位置決め穴に挿入することにより、鋼管に対して木質耐火被覆材を容易に位置決めすることができる。
【0017】
第5態様に係る木質耐火被覆材の製造方法は、内部にコンクリートが充填された丸形鋼管に取り付けられ、断熱層を介して前記丸形鋼管の外周面を耐火被覆する円筒状の木質耐火被覆材を製造する木質耐火被覆材の製造方法であって、前記木質耐火被覆材を周方向に分割した複数の分割ピースが外周面に取り付けられた回転軸体を回転させながら、前記木質耐火被覆材の外周面を断面円形状に切削する切削工程と、前記回転軸体から複数の前記分割ピースを取り外し、前記丸形鋼管に取り付ける取付工程と、を備える。
【0018】
第5態様に係る木質耐火被覆材の製造方法によれば、先ず、切削工程において、木質耐火被覆材を周方向に分割した複数の分割ピースが外周面に取り付けられた回転軸体を回転させながら、木質耐火被覆材の外周面を断面円形状に切削する。これにより、木質耐火被覆材の外周面を容易に断面円形状に加工することができる。
【0019】
次に、取付工程において、回転軸体から複数の前記分割ピースを取り外し、丸形鋼管に取り付ける。これにより、丸形鋼管の意匠性を高めつつ、耐火性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、コンクリート充填鋼管の意匠性を高めつつ、耐火性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第一実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造が適用されたコンクリート充填鋼管柱が示す横断面図である。
図2】第一実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造の変形例が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す図1に対応する横断面図である。
図3】第一実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造の変形例が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す図1に対応する横断面図である。
図4図3の一部拡大横断面図である。
図5図3に示されるコンクリート充填鋼管及び木質耐火被覆材の分解横断面図である。
図6】第一実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造の変形例が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す図4に対応する一部拡大横断面図である。
図7】第一実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造の変形例が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す図4に対応する一部拡大横断面図である。
図8】第一実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造の変形例が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す図4に対応する一部拡大横断面図である。
図9】第二実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す横断面図である。
図10】第二実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造の変形例が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す一部拡大横断面図である。
図11】第二実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造の変形例が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す一部拡大横断面図である。
図12】第三実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す横断面図である。
図13図12に示されるコンクリート充填鋼管及び木質耐火被覆材の分解横断面図である。
図14】第三実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造の変形例が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す縦断面図である。
図15】第四実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す横断面図である。
図16】第四実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造の変形例が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す横断面図である。
図17】第四実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造の変形例が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す横断面図である。
図18図17に示される木質耐火被覆材の製造過程を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
【0023】
(コンクリート充填鋼管柱)
図1には、第一実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造が適用されたコンクリート充填鋼管柱(以下、「CFT柱」という)10が示されている。CFT柱10は、鋼管12と、鋼管12の内部に充填されたコンクリート14とを備えている。
【0024】
鋼管12は、一例として、角形鋼管とされている。このCFT柱10は、複数の木質耐火被覆材20によって耐火被覆されている。なお、鋼管12は、角形鋼管に限らず、丸形鋼管でも良い。
【0025】
(木質耐火被覆材)
複数の木質耐火被覆材20は、CFT柱10を取り囲むように配置されている。また、木質耐火被覆材20は、CFT柱10の鋼管12の外面12Aを、断熱層としての隙間22を介して耐火被覆している。
【0026】
各木質耐火被覆材20は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber)、LVL(Laminated Veneer Lumber)、集成材、又は合板等の木質板によって形成されている。なお、集成材等に用いる接着剤は、耐火性能の観点から熱硬化性樹脂系の接着剤が好ましい。
【0027】
木質耐火被覆材20は、耐火被覆材として機能する。具体的には、木質耐火被覆材20は、CFT柱10を耐火被覆する燃え代層として機能する。燃え代層は、火災時に燃焼して炭化層(断熱層)を形成することにより、CFT柱10側への火災熱の浸入を抑制する層とされる。
【0028】
木質耐火被覆材20の板厚(厚み)tは、要求される耐火性能に応じて適宜設定される。より具体的には、木材(木質材)は、1面加熱の場合、1時間加熱で40mm~60mm、2時間加熱で70mm~90mm、3時間加熱で100mm~120mm炭化する。また、木材(木質材)は、2面加熱になると、板厚に10%~20%の余裕が必要となり、柱・梁等の木材厚(木質耐火被覆材20の板厚t)としては、1時間加熱で44mm~72mm、2時間加熱で77mm~108mm、3時間加熱で110mm~144mmに設定される。
【0029】
また、木質耐火被覆材20に使用する樹種(木材)としては、例えば、カラマツ、ベイマツ、又はスギが挙げられる。ここで、樹種によって、加熱後に、木質耐火被覆材20の外面(見つけ面)の燃焼状態が異なる場合がある。例えば、スギの場合、木質耐火被覆材20の外面の全面において、燃焼が継続され易い。
【0030】
一方、カラマツ、及びベイマツの場合、木質耐火被覆材20の外面20Aにおいて、部分的に燃焼が継続されるが、全体としては燃え止まり易い。したがって、木質耐火被覆材20に使用する樹種(木材)としては、カラマツ、及びベイマツが好ましい。
【0031】
また、CFT柱10の鋼管12は、熱伝導率が高い。そのため、火災時に、木質耐火被覆材20の外面20Aにおいて部分的に燃焼が継続しても、火災熱が鋼管12全体に拡散されるため、鋼管12の局所的な温度上昇が抑制される。さらに、鋼管12の内部のコンクリート14は、熱容量が大きいため、鋼管12の温度上昇がさらに抑制される。
【0032】
したがって、木質耐火被覆材20にカラマツ、又はベイマツを使用した場合であって、火災時に、木質耐火被覆材20の外面20Aにおいて部分的に燃焼が継続しても、CFT柱10の耐火性能は確保される。
【0033】
(作用)
次に、第一実施形態の作用について説明する。
【0034】
図1に示されるように、CFT柱10の鋼管12の内部には、コンクリート14が充填されている。このコンクリート14の熱容量によって、CFT柱10の耐火性が高められる。
【0035】
また、鋼管12には、木質耐火被覆材20が取り付けられている。木質耐火被覆材20は、意匠性に優れる木材(木質材)によって形成されるとともに、鋼管12の外面12Aを耐火被覆する燃え代層として機能する。これにより、意匠性を高めつつ、CFT柱10の耐火性能を高めることができる。
【0036】
さらに、木質耐火被覆材20は、隙間22を介して鋼管12の外面12Aを耐火被覆している。この隙間22によって、鋼管12の外面12Aと木質耐火被覆材20の外面20Aとの間に断熱層(空気層)が形成されるため、CFT柱10の耐火性能をさらに高めることができる。
【0037】
また、鋼管12の外面12Aと木質耐火被覆材20の内面20Bとの間に隙間22を形成することにより、当該隙間22によって木質耐火被覆材20の施工誤差等を吸収することができる。したがって、木質耐火被覆材20の施工性が向上する。
【0038】
このように本実施形態では、木質耐火被覆材20の施工性を向上しつつ、CFT柱10の耐火性能を高めることができる。
【0039】
(第一実施形態の変形例)
次に、第一実施形態の変形例について説明する。
【0040】
図2に示される変形例では、木質耐火被覆材20が、CFT柱10の鋼管12の外面12Aを、断熱層としての隙間22及び金属板28を介して耐火被覆している。
【0041】
具体的には、金属板28は、熱伝導率が高い鋼板や鉄板等によって形成されている。この金属板28は、木質耐火被覆材20の内面20Bに重ねられた状態で接着剤によって予め接着されている。つまり、木質耐火被覆材20及び金属板28は、予め一体化されたユニットとされている。また、金属板28と鋼管12の外面12Aとの間には、隙間22が形成されている。
【0042】
このように木質耐火被覆材20は、CFT柱10の鋼管12の外面12Aを、断熱層としての隙間22及び金属板28を介して耐火被覆している。これにより、例えば火災時に、木質耐火被覆材20の外面20Aにおいて、部分的に燃焼が継続した場合に、金属板28によって火災熱が拡散され、火災熱が鋼管12の全体に分散して伝達される。この結果、鋼管12の局所的な温度上昇が抑制される。したがって、CFT柱10の耐火性能が向上する。
【0043】
また、隙間22によって、鋼管12の外面12Aと木質耐火被覆材20の外面20Aとの間に断熱層(空気層)が形成されるため、CFT柱10の耐火性能をさらに高めることができる。
【0044】
さらに、木質耐火被覆材20及び金属板28を予め一体化したユニットとすることにより、施工性が向上する。
【0045】
次に、図3に示される変形例では、木質耐火被覆材20は、CFT柱10の鋼管12の外面12Aを、断熱層としての隙間22を介して耐火被覆している。この木質耐火被覆材20は、鋼管12の外面12Aから突出する複数のネジ部材30及びナット32によって、鋼管12に取り付けられている。具体的には、ネジ部材30は、鋼管12の各外面12Aの角部付近に取り付けられている。
【0046】
図4及び図5に示されるように、ネジ部材30は、段付きボルトとされている。このネジ部材30は、ネジ部30Aと、ネジ部30Aよりも直径が大きい段部30Bとを有している。段部30Bの下面は、鋼管12の外面12Aに突き当てられた状態で溶接等によって接合されている。これにより、ネジ部材30が、鋼管12の外面12Aから突出した状態で、鋼管12の外面12Aに取り付けられている。
【0047】
鋼管12の外面12Aと対向する木質耐火被覆材20の内面20Bには、複数の取付孔24が形成されている。取付孔24は、木質耐火被覆材20における横幅方向の両側の端部を、板厚方向に貫通する円形状の貫通孔とされている。
【0048】
取付孔24の直径は、ネジ部材30のネジ部30Aの直径よりも大きく、かつ、段部30Bの直径よりも小さくされている。これにより、取付孔24にネジ部材30のネジ部30Aを挿入すると、取付孔24の周縁部が段部30Bに係合され、鋼管12の外面12Aと木質耐火被覆材20の内面20Bとの間に隙間22が形成される。つまり、ネジ部材30の段部30Bは、鋼管12の外面12Aと木質耐火被覆材20の内面20Bとの間に、断熱層としての隙間22を形成するスペーサとして機能する。
【0049】
木質耐火被覆材20の外面20Aには、取付孔24に通じる円形状のザグリ26が形成されている。ザグリ26の直径は、取付孔24の直径よりも大きくされている。また、ザグリ26には、ナット32が収容されている。このナット32をネジ部材30のネジ部30Aに締め込むことにより、鋼管12の外面12Aに対して木質耐火被覆材20が着脱可能に取り付けられている。
【0050】
ザグリ26には、ナット32を覆い隠す木栓34が嵌め込まれている。この木栓34によって、ネジ部材30及びナット32が断熱されるとともに、木質耐火被覆材20の外面20Aの意匠性が高められている。
【0051】
なお、ネジ部材30の本数や配置等は、適宜変更可能である。また、ザグリ26及び木栓34は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0052】
また、ネジ部材30として、段付きボルトを用いることにより、鋼管12の外面12Aと木質耐火被覆材20の内面20Bとの間に、所定の隙間22を容易に形成することができる。
【0053】
さらに、ネジ部材30及びナット32によって、鋼管12の外面12Aに木質耐火被覆材20を取り付けることにより、木質耐火被覆材20の交換や解体を容易に行うことができる。
【0054】
次に、図6に示される変形例では、ネジ部材30の段部30Bが、断熱層としての断熱材40によって耐火被覆されている。断熱材40には、例えば、けい酸カルシウム板、石膏ボード、ロックウール、セラミックウール、又は木材等が用いられる。これにより、火災時に、ネジ部材30の温度上昇が抑制される結果、CFT柱10の耐火性能がさらに高められる。
【0055】
次に、図7に示される変形例では、隣り合う木質耐火被覆材20の一方の端部に凹部50が形成され、他方の端部に凸部52が形成されている。そして、凹部50に凸部52が嵌め込まれた状態で、凹部50及び凸部52がビス54によって接合されている。このビス54によって、隣り合う木質耐火被覆材20の端部間の隙間が低減されるため、CFT柱10の耐火性能が高められる。
【0056】
また、ビス54は、木質耐火被覆材20の端面に形成されたザグリ56から凹部50及び凸部52に打ち込まれている。このザグリ56に、ビス54を覆い隠す木栓58を嵌め込むことにより、ビス54を断熱しつつ、木質耐火被覆材20の外面20Aの意匠性を高めることができる。
【0057】
次に、図8に示される変形例では、木質耐火被覆材20が、ブラケット60、及び断熱層としての断熱材62を介して鋼管12の角部に取り付けられている。ブラケット60は、例えば、鋼管12の角部に沿って屈曲されたL型金物が用いられる。このブラケット60の外面には、木質耐火被覆材20の端部が接着剤等によって接合されている。一方、ブラケット60の内面には、断熱材62が接着剤等によって接合されている。なお、接着剤は、耐火性能の観点から熱硬化性樹脂系の接着剤が好ましい。
【0058】
断熱材62は、鋼管12の角部の外面12Aに接着剤等によって接合されている。この断熱材62には、例えば、けい酸カルシウム板、石膏ボード、又はロックウール等が用いられる。これにより、ブラケット60から鋼管12の角部に伝達される火災熱が低減される。
【0059】
また、ブラケット60の外面に木質耐火被覆材20の端部を接着剤等によって接合することにより、木質耐火被覆材20の取付孔24(図4参照)等を省略することができる。したがって、木質耐火被覆材20の製作コストを削減することができる。
【0060】
また、鋼管12の角部に、ブラケット60及び断熱材62を介して木質耐火被覆材20を取り付けることにより、鋼管12の外面12Aと木質耐火被覆材20の内面20Bとの間に、断熱層としての隙間22が形成される。したがって、CFT柱10の耐火性能がさらに向上する。
【0061】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0062】
図9に示されるように、第二実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造では、鋼管12の外面12Aに、断熱層としての金属板28を介して木質耐火被覆材20が接着されている。
【0063】
具体的には、金属板28は、熱伝導率が高い鋼板や鉄板等によって形成されている。この金属板28は、木質耐火被覆材20の内面20Bに重ねられた状態で接着剤によって予め接着されている。つまり、木質耐火被覆材20及び金属板28は、予め一体化されたユニットとされている。
【0064】
金属板28は、鋼管12の外面12Aに重ねられた状態で接着剤によって接着されている。これにより、木質耐火被覆材20が、断熱層としての金属板28を介して鋼管12の外面12Aに取り付けられている。
【0065】
鋼管12の外面12Aにおける横幅方向の両側の端部には、位置決め突起70がそれぞれ設けられている。位置決め突起70は、例えば、鋼板等によって板状に形成されており、鋼管12の材軸方向に沿って配置されている。また、位置決め突起70は、鋼管12の外面12Aにリブ状に突出した状態で溶接されている。
【0066】
位置決め突起70は、木質耐火被覆材20及び金属板28に形成された溝状の位置決め穴72に挿入されている(嵌め込まれている)。これにより、鋼管12の外面12Aに対して木質耐火被覆材20及び金属板28が、鋼管12の横幅方向及び材軸方向に位置決められている。
【0067】
なお、位置決め突起70は、リブ状に限らず、ピン状でも良い。また、位置決め突起70の数や配置は、適宜変更可能である。また、位置決め穴72は、位置決め突起70の形状や配置に応じて、適宜変更可能である。また、位置決め突起70及び位置決め穴72は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0068】
(作用)
次に、第二実施形態の作用について説明する。
【0069】
図9に示されるように、木質耐火被覆材20は、CFT柱10の鋼管12の外面12Aを、断熱層としての金属板28を介して耐火被覆している。これにより、例えば火災時に、木質耐火被覆材20の外面20Aにおいて、部分的に燃焼が継続した場合に、金属板28によって火災熱が拡散され、火災熱が鋼管12の全体に分散して伝達される。この結果、鋼管12の局所的な温度上昇が抑制される。したがって、CFT柱10の耐火性能が向上する。
【0070】
また、鋼管12の外面12Aに、金属板28を介して木質耐火被覆材20を接着することにより、鋼管12の外面12Aに木質耐火被覆材20の内面20Bを接着し易くなる。したがって、鋼管12の外面12Aに対する木質耐火被覆材20の接着強度を高めることができる。
【0071】
さらに、木質耐火被覆材20及び金属板28を予め一体化したユニットとすることにより、施工性が向上する。
【0072】
また、鋼管12の外面12Aには、位置決め突起70が設けられている。この位置決め突起70を木質耐火被覆材20及び金属板28に形成された位置決め穴72に挿入することにより、鋼管12の外面12Aに対して木質耐火被覆材20及び金属板28を容易に位置決めすることができる。
【0073】
さらに、鋼管12の外面12Aに、金属板28を介して木質耐火被覆材20を接着(加圧接着)する際に、鋼管12の外面12Aに対する金属板28及び木質耐火被覆材20の位置ずれが抑制される。
【0074】
(第二実施形態の変形例)
次に、第二実施形態の変形例について説明する。
【0075】
図10に示される変形例では、隣り合う木質耐火被覆材20の端部間に隙間Gが形成されている。この隙間Gによって、隣り合う木質耐火被覆材20の施工誤差を吸収することができる。したがって、木質耐火被覆材20の施工性が向上する。
【0076】
また、隙間Gには、当該隙間Gを埋めるパテ(耐火パテ)80を介して埋木82が嵌め込まれている。これにより、意匠性を高めつつ、CFT柱10の耐火性能を高めることができる。
【0077】
次に、図11に示される変形例では、鋼管12の角部にコーナー部材84が設けられている。コーナー部材84は、一例として、角形鋼管によって形成されており、鋼管12の材軸方向に沿って配置されている。また、コーナー部材84は、隣り合う木質耐火被覆材20の端部の間に配置されている。このコーナー部材84は、隣り合う木質耐火被覆材20の端面に、接着剤や、図示しないビス等によって取り付けられている。
【0078】
このように鋼管12の角部にコーナー部材84を設けることにより、鋼管12の外面12Aに木質耐火被覆材20を取り付ける際に、隣り合う木質耐火被覆材20の端部同士の干渉が抑制される。したがって、木質耐火被覆材20の施工性が向上する。
【0079】
なお、コーナー部材84は、角形鋼管に限らず、例えば、角柱状のコンクリート部材等でも良い。
【0080】
次に、上記実施形態では、鋼管12の外面12Aに、断熱層としての金属板28を介して木質耐火被覆材20が取り付けられている。しかし、断熱層は、金属板28に限らず、例えば、けい酸カルシウム板、石膏ボード、ロックウール、又はセラミックウール等の断熱材でも良いし、接着剤(熱硬化性樹脂系等の耐熱性のある接着剤)等でも良い。また、鋼管12の外面12Aには、断熱層としての空気層(隙間)及び金属板28を介して、木質耐火被覆材20が取り付けられても良い。
【0081】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について説明する。なお、第三実施形態において、第一、第二実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0082】
図12及び図13に示されるように、第三実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造では、鋼管12に、一対のスナップフィット90を介して木質耐火被覆材20及び金属板28が着脱可能に取り付けられている。
【0083】
具体的には、鋼管12の外面12Aには、一対のスナップフィット90が設けられている。一対のスナップフィット90は、鋼管12の外面12Aの横幅方向に間隔を空けて配置されており、鋼管12の各角部に溶接等によって接合されている。また、一対のスナップフィット90は、例えば、鋼管12の材軸方向(上下方向)に間隔を空けて複数組設けられている。
【0084】
スナップフィット90は、鋼管12の外面12Aから突出するとともに、鋼管12の横幅方向に弾性変形可能な爪片90Aを有している。この爪片90Aは、木質耐火被覆材20及び金属板28に形成された挿入孔92に、弾性変形しながら挿入(圧入)されるとともに、木質耐火被覆材20に形成された被係合面94Lに係合されている。
【0085】
被係合面94Lは、木質耐火被覆材20の外面20Aに形成されるとともに、挿入孔92に通じる取付穴94の底面とされている。また、被係合面94Lは、木質耐火被覆材20の外面20A側を向いている。この被係合面94Lに爪片90Aを係合させる(引っ掛ける)ことにより、鋼管12の外面12Aに木質耐火被覆材20及び金属板28が着脱可能に取り付けられている。また、取付穴94には、爪片90Aを覆い隠す木栓96が嵌め込まれている。
【0086】
なお、爪片90Aは、係合部の一例であり、被係合面94Lは、被係合部の一例である。
【0087】
ここで、本実施形態では、一対の爪片90Aによって、鋼管12の外面12Aに対する木質耐火被覆材20及び金属板28が横幅方向の移動が制限される。これに対して、一対の爪片90Aでは、鋼管12の外面12Aに対する木質耐火被覆材20及び金属板28の縦幅方向(鋼管12の材軸方向)の移動を制限することが難しい。
【0088】
この対策として本実施形態では、鋼管12の外面12Aに位置決め突起100が設けられている。位置決め突起100は、鋼管12の外面12Aがピン状に突出している。この位置決め突起100は、木質耐火被覆材20及び金属板28に形成された位置決め穴102に挿入されている(嵌め込まれている)。
【0089】
これにより、鋼管12の外面12Aに対する木質耐火被覆材20及び金属板28の縦幅方向(鋼管12の材軸方向)及び横幅方向の移動が制限されるとともに、位置決め突起100によって、木質耐火被覆材20及び金属板28が支持される。
【0090】
なお、位置決め突起100及び位置決め穴102の形状や、配置、数は、適宜変更可能である。
【0091】
(作用)
次に、第三実施形態の作用について説明する。
【0092】
図12に示されるように、木質耐火被覆材20は、CFT柱10の鋼管12の外面12Aを、断熱層としての金属板28を介して耐火被覆している。これにより、例えば火災時に、木質耐火被覆材20の外面20Aにおいて、部分的に燃焼が継続した場合に、金属板28によって火災熱が拡散され、火災熱が鋼管12の全体に分散して伝達される。この結果、鋼管12の局所的な温度上昇が抑制される。したがって、CFT柱10の耐火性能が向上する。
【0093】
また、図12及び図13に示されるように、鋼管12の外面12Aには、一対のスナップフィット90を介して、木質耐火被覆材20及び金属板28が着脱可能に取り付けられている。これにより、鋼管12の外面12Aに、木質耐火被覆材20及び金属板28を容易に取り付けることができる。また、木質耐火被覆材20及び金属板28の交換や解体を容易に行うことができる。
【0094】
さらに、鋼管12の外面12Aから突出する位置決め突起100を、木質耐火被覆材20及び金属板28に形成された位置決め穴102に挿入することにより、鋼管12の外面12Aに対する木質耐火被覆材20及び金属板28の縦幅方向の位置ずれを抑制することができるとともに、木質耐火被覆材20及び金属板28をより確実に支持することができる。
【0095】
(第三実施形態の変形例)
次に、第三実施形態の変形例について説明する。
【0096】
図14に示される変形例では、一対のスナップフィット110が、鋼管12の外面12Aに、鋼管12の材軸方向に間隔を空けて設けられている。各スナップフィット110の爪片110Aは、鋼管12の材軸方向に弾性変形可能とされている。
【0097】
また、各爪片110Aは、木質耐火被覆材20に形成され、木質耐火被覆材20の外面20A側を向く被係合面112に係合されている。これにより、鋼管12の外面12Aに、一対のスナップフィット110を介して、木質耐火被覆材20及び金属板28が着脱可能に取り付けられている。なお、爪片110Aは、係合部の一例であり、被係合面112は、被係合部の一例である。
【0098】
また、鋼管12の外面12Aには、ピン状の位置決め突起120が設けられている。この位置決め突起120を木質耐火被覆材20及び金属板28に形成された位置決め穴122に挿入する(嵌め込む)ことにより、鋼管12の外面12Aに対する木質耐火被覆材20及び金属板28の横幅方向及び縦幅方向(上下方向)の位置ずれが抑制されるとともに、位置決め突起120によって木質耐火被覆材20及び金属板28が支持されている。
【0099】
このように鋼管12の外面12Aには、鋼管12の材軸方向に間隔を空けて配置された一対のスナップフィット110を設けても良い。また、鋼管12の外面12Aには、鋼管12の材軸方向に間隔を空けて配置された一対のスナップフィット110、及び鋼管12の横幅方向に間隔を空けて配置された一対のスナップフィット90(図12参照)の両方を設けても良い。
【0100】
(第四実施形態)
次に、第四実施形態について説明する。なお、第四実施形態において、第一~第三実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0101】
図15に示されるように、第四実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造では、円形状の丸形鋼管132の外周面132Aに、断熱層としての隙間144を介して木質耐火被覆材140が取り付けられている。
【0102】
具体的には、CFT柱130は、丸形鋼管132と、丸形鋼管132の内部に充填されたコンクリート134とを備えている。木質耐火被覆材140は、丸形鋼管132を取り囲むように、全体として円筒状に形成されている。この木質耐火被覆材140は、周方向に分割された複数の分割ピース142を有している。
【0103】
分割ピース142は、木質耐火被覆材140の軸方向から見て、台形状に形成されている。この分割ピース142の内面は、丸形鋼管132側に凸状に湾曲しており、丸形鋼管132の外周面132Aに線接触している。これにより、丸形鋼管132の外周面132Aと木質耐火被覆材140(分割ピース142)の内周面140Bとの間に、断熱層としての隙間144が形成されている。つまり、木質耐火被覆材140は、隙間144を介して丸形鋼管132の外周面132Aを耐火被覆している。
【0104】
分割ピース142は、丸形鋼管132の外周面132Aから突出するネジ部材150及びナット152によって、丸形鋼管132に着脱可能に取り付けられている。ネジ部材150は、一例として、スタッドボルトとされており、その一端部が丸形鋼管132の外周面132Aに突き当てられた状態で溶接等によって接合されている。このネジ部材150は、木質耐火被覆材140(分割ピース142)の内周面(内面)140Bに形成された円形状の取付孔146に挿入されている。
【0105】
木質耐火被覆材140(分割ピース142)の外周面(外面)140Aには、取付孔146に通じる円形状のザグリ148が形成されている。ザグリ148の直径は、取付孔146の直径よりも大きくされている。また、ザグリ148には、ナット152が収容されている。このナット152をネジ部材150に締め込むことにより、丸形鋼管132の外周面132Aに対して木質耐火被覆材140が着脱可能に取り付けられている。
【0106】
ザグリ148には、ナット152を覆い隠す木栓149が嵌め込まれている。この木栓149によって、ネジ部材150及びナット152が断熱されるとともに、木質耐火被覆材140の外周面140Aの意匠性が高められている。
【0107】
(作用)
次に、第四実施形態の作用について説明する。
【0108】
木質耐火被覆材140は、隙間144を介して丸形鋼管132の外周面132Aを耐火被覆している。この隙間144によって、丸形鋼管132の外周面132Aと木質耐火被覆材140の内周面140Bとの間に断熱層(空気層)が形成されるため、CFT柱130の耐火性能を高めることができる。
【0109】
また、円筒状の木質耐火被覆材140を周方向に複数の分割ピース142に分割することにより、分割ピース142の運搬性や取付性が向上する。
【0110】
さらに、ネジ部材150及びナット152によって、丸形鋼管132の外周面132Aに分割ピース142を取り付けることにより、分割ピース142の交換や解体を容易に行うことができる。
【0111】
(第四実施形態の変形例)
次に、第四実施形態の変形例について説明する。
【0112】
図16に示される変形例では、丸形鋼管132の外周面132Aに、一対のスナップフィット160を介して分割ピース142が着脱可能に取り付けられている。各スナップフィット160は、丸形鋼管132の周方向に弾性変形可能な爪片160Aを有している。この爪片160Aは、分割ピース142の端面に形成され、木質耐火被覆材140の外周面140A側を向く被係合面162に係合される。なお、爪片160Aは、係合部の一例であり、被係合面162は、被係合部の一例である。
【0113】
また、丸形鋼管132の外周面132Aには、位置決め突起170が設けられている。この位置決め突起170は、分割ピース142に形成された位置決め穴172に挿入されている(嵌め込まれている)。
【0114】
このように一対のスナップフィット160によって、丸形鋼管132に分割ピース142を着脱可能に取り付けても良い。
【0115】
次に、図17に示される変形例では、円筒状の木質耐火被覆材180の外周面(外面)180Aが、断面円形状に切削されている。これにより、木質耐火被覆材180の意匠性を高めることができる。なお、木質耐火被覆材180の内周面(内面)180Bと丸形鋼管132の外周面132Aとの間には、隙間144が形成されている。
【0116】
(木質耐火被覆材の製造方法)
ここで、木質耐火被覆材180の製造方法の一例について説明する。
【0117】
(切削工程)
先ず、切削工程について説明する。図18に示されるように、木質耐火被覆材180は、周方向に分割された複数の分割ピース182を有している。切削工程では、回転軸体190の外周面190Aに、切削対象となる複数の分割ピース182を着脱可能に取り付ける。
【0118】
回転軸体190は、一例として、円筒状に形成されている。なお、回転軸体190は、円筒状に限らず、円柱状でも良い。
【0119】
分割ピース182の外面182Aは、平坦面とされている。この分割ピース182は、回転軸体190の外周面190Aから突出するネジ部材150及びナット152によって、回転軸体190の外周面190Aに着脱可能に取り付けられている。
【0120】
この状態で、図示しない回転装置によって、中心軸Oを中心として回転軸体190を回転させながら、分割ピース182(木質耐火被覆材180)の外面182Aに切削加工用の刃物192を突き当て、木質耐火被覆材180の外周面180A(図17参照)を切削する。これにより、木質耐火被覆材180の外周面180Aを断面円形状に容易に加工することができる。
【0121】
(取付工程)
次に、取付工程について説明する。取付工程では、回転軸体190から複数の分割ピース182を取り外す。そして、取り外した分割ピース182を丸形鋼管132に取り付ける。
【0122】
具体的には、丸形鋼管132の外周面132Aから突出するネジ部材150及びナット152によって、丸形鋼管132に分割ピース182を取り付ける。これにより、丸形鋼管132を取り囲む円筒状の木質耐火被覆材140が形成される。この木質耐火被覆材140は、断熱層としての隙間144を介して丸形鋼管132の外周面132Aを耐火被覆する。したがって、CFT柱130の意匠性を高めつつ、耐火性能を高めることができる。
【0123】
(第一~第四実施形態の変形例)
次に、第一~第四実施形態の変形例について説明する。
【0124】
上記第一~第四実施形態に係るコンクリート充填鋼管の耐火被覆構造は、柱に限らず、例えば、梁等の構造部材にも適用可能である。
【0125】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0126】
10 コンクリート充填鋼管柱
12 鋼管
12A 外面(鋼管の外面)
14 コンクリート
20 木質耐火被覆材
22 隙間(断熱層)
28 金属板(断熱層)
30 ネジ部材
40 断熱材(断熱層)
62 断熱材(断熱層)
70 位置決め突起
72 位置決め穴
90A 爪片(係合部)
94L 被係合面(被係合部)
100 位置決め突起
102 位置決め穴
110A 爪片(係合部)
112 被係合面(被係合部)
120 位置決め突起
122 位置決め穴
130 コンクリート充填鋼管柱
132 丸形鋼管
132A 外周面(丸形鋼管の外周面)
134 コンクリート
140 木質耐火被覆材
140A 外面
140B 内面
142 分割ピース
144 隙間(断熱層)
150 ネジ部材
160A 爪片(係合部)
162 被係合面(被係合部)
170 位置決め突起
172 位置決め穴
180 木質耐火被覆材
180A 外周面(木質耐火被覆材の外周面)
182 分割ピース
190 回転軸体
190A 外周面(回転軸体の外周面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18