(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】鉄道車両の内装部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
B61D 17/18 20060101AFI20241217BHJP
B61D 17/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B61D17/18
B61D17/00 C
(21)【出願番号】P 2021083731
(22)【出願日】2021-05-18
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞野 優太
【審査官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-321257(JP,A)
【文献】実開平02-027968(JP,U)
【文献】米国特許第04319528(US,A)
【文献】国際公開第2013/077192(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/18
B61D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構体と、前記車両構体の内部に形成される車内空間と、前記車内空間の内面を形成するとともに隣接して配置される第1内装部材および第2内装部材と、を備える鉄道車両の、前記第1内装部材を前記車両構体に取り付けるための、鉄道車両の内装部材の取付構造において、
前記車両構体は、前記第1内装部材と前記第2内装部材の境界において、少なくとも前記第1内装部材を、前記第1内装部材の前記車内空間側の表面とは反対側の裏面の側から支持するための内骨部材を備えること、
前記内骨部材は、前記裏面の側で前記第1内装部材と結合する結合部を備えること、
前記第1内装部材は、前記裏面の、前記第2内装部材の側の端部に、固定部材を備えること、
前記固定部材は、
前記表面側から前記内装部材に挿通される複数のねじにより、前記裏面に対して近接離間可能であり、
前記裏面から離間することで、前記固定部材と前記裏面との間に、前記表面と平行な方向から前記結合部を挿し込み可能な間隙を生じさせる第1位置と、
前記第1位置よりも前記裏面に近接することで、前記固定部材と前記裏面とが、前記間隙に挿し込まれた前記結合部を挟持し、前記結合を行うための第2位置と、
の間を移動可能であること、
を特徴とする鉄道車両の内装部材の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両の内装部材の取付構造において、
前記第1内装部材と前記第2内装部材との境界部分を前記車内空間側から覆い隠すため
の化粧部材を備えること、
前記固定部材は、前記表面に対して平行な方向に所定の遊動量を有する遊動部材を備えていること、
前記第1内装部材が前記内骨部材に結合された状態で、前記車内空間側から、前記第1内装部材、前記結合部、前記固定部材、前記遊動部材の順に位置すること、
前記第1内装部材と、前記結合部、前記固定部材と、のそれぞれは、前記遊動部材に対応する位置に、前記遊動量に対応する大きさの貫通孔を備えること、
前記化粧部材は、前記車内空間側から前記貫通孔に挿通されて前記遊動部材に結合される固定具により固定されること、
を特徴とする鉄道車両の内装部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両構体と、前記車両構体の内部に形成される車内空間と、を備える鉄道車両において、前記車内空間の内面を形成するとともに隣接して配置される鉄道車両の内装部材の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通勤電車や特急電車等の鉄道車両は、車両構体の内部に、客室や乗務員室等の車内空間が形成されている。そして、車内空間の内面(天井面や、床面、壁面)は、内装部材により形成されている。内装部材としては、例えば、床面を形成する床敷物(塩ビシートや、ゴムシート、絨毯等)や、床敷物に対して略直角に配設され、壁面を形成する内装パネル等が挙げられる。
【0003】
また、床面と壁面の境界部分、即ち床敷物と内装パネルとが隣接することで形成される境界部分は、製造誤差により床敷物と内装パネルとを密着させることが困難であるため、隙間を設けるのが一般的である。そして、この隙間を覆い隠すために、床敷物と内装パネルの境界部分には、車内空間側から巾木が取り付けられる。
【0004】
特許文献1には、構体101(上記した車両構体に相当)が有する骨部材125にねじ止めされる壁面パネル2A(上記した内装パネルに相当)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した内装パネルや巾木は、表面から裏面に貫通する貫通孔を有しており、当該貫通孔にねじを挿通させ、挿通させたねじを車両構体に締結することで、取り付けが行われることが一般的である。内装パネルや巾木を車両構体にねじ止めするに当たり、予め車両構体にねじ穴をあけておくと、製造誤差のために、内装パネルや巾木の貫通孔と車両構体のねじ穴の位置が、壁面の上下方向や幅方向において合わないおそれがある。このため、内装パネルや巾木を取り付ける際には、取り付ける内装パネルや巾木ごとに、取り付け位置の調整をし、取り付け位置を決定した後に、車両構体の取り付け位置に対応する箇所に、ねじ穴の穴あけ作業を行うことが一般的に行われている。
【0007】
しかし、この穴あけを行う際、切り粉が発生し、飛散する。そうすると、切り粉の除去作業に時間がかかり、鉄道車両の製造効率が低下する。また、飛散した切り粉を完全に除去することは困難であり、切り粉が機器類や配線の障害となるおそれがある他、車内空間に残留すると、乗客の怪我に繋がるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、切り粉の発生原因である穴あけ作業を要することなく内装部材を車両構体に取り付け可能な、鉄道車両の内装部材の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両の内装部材の取付構造は、次のような構成を有している。
(1)車両構体と、前記車両構体の内部に形成される車内空間と、前記車内空間の内面を形成するとともに隣接して配置される第1内装部材および第2内装部材と、を備える鉄道車両の、前記第1内装部材を前記車両構体に取り付けるための、鉄道車両の内装部材の取付構造において、前記車両構体は、前記第1内装部材と前記第2内装部材の境界において、少なくとも前記第1内装部材を、前記第1内装部材の前記車内空間側の表面とは反対側の裏面の側から支持するための内骨部材を備えること、前記内骨部材は、前記裏面の側で前記第1内装部材と結合する結合部を備えること、前記第1内装部材は、前記裏面の、前記第2内装部材の側の端部に、固定部材を備えること、前記固定部材は、前記表面側から前記内装部材に挿通される複数のねじにより、前記裏面に対して近接離間可能であり、前記裏面から離間することで、前記固定部材と前記裏面との間に、前記表面と平行な方向から、前記結合部を挿し込み可能な間隙を生じさせる第1位置と、前記第1位置よりも前記裏面に近接することで、前記固定部材と前記裏面とが、前記間隙に挿し込まれた前記結合部を挟持し、前記結合を行うための第2位置と、の間を移動可能であること、を特徴とする。
【0010】
(1)に記載の鉄道車両の内装部材の取付構造によれば、第1内装部材(例えば車内空間の内面のうち壁面を形成する内装パネル)は、第2内装部材(例えば車内空間の内面のうち床面を形成する床敷物)との境界に位置する内骨部材に結合されることで、裏面側から支持され、第2内装部材と隣接した状態で車両構体に取り付けられる。
【0011】
ここで、第1内装部材は、第2内装部材の側の端部に、第1内装部材の裏面(以下単に裏面という)に対して近接離間可能な固定部材を備えている。固定部材を裏面に対して離間させた第1位置に位置させた状態では、固定部材と裏面との間に、内骨部材の結合部を第2内装部材の側から挿し込み可能な間隙が生じる。つまり、固定部材を第1位置に位置させた状態では、内骨部材の結合部を挿し込む方向に対して平行な方向に(例えば、第1内装部材が上記内装パネルであり、第2内装パネルが上記床敷物であれば、壁面の上下方向や幅方向に)、第1内装部材の取り付け位置の調整を行うことが可能である。そして、固定部材を裏面に対して近接させた第2位置に位置させた状態では、固定部材と裏面とが、上記間隙に挿し込まれた結合部を挟持するため、第1内装部材と内骨部材との結合が行われる。つまり、固定部材を第1位置に位置させた状態で取り付け位置の調整をし、取り付け位置を決定した後に、固定部材を第2位置に位置させれば、その決定した取り付け位置において、第1内装部材と内骨部材との結合が行われる(つまり第1内装部材の車両構体への取り付けが行われる)。このように、固定部材の近接離間動作により第1内装部材の取り付け位置の調整や、車両構体への取り付けを行うことが可能であるため、切り粉の発生原因である穴あけ作業を要することなく第1内装部材を車両構体に取り付け可能である。よって、切り粉の除去作業による鉄道車両の製造効率の低下を防止することが出来る。また、切り粉の残留によって、機器類や配線に障害が発生するおそれや、乗客の怪我に繋がるおそれがない。
【0012】
(2)(1)に記載の鉄道車両の内装部材の取付構造において、前記第1内装部材と前記第2内装部材との境界部分を前記車内空間側から覆い隠すための化粧部材を備えること、前記固定部材は、前記表面に対して平行な方向に所定の遊動量を有する遊動部材を備えていること、前記第1内装部材が前記内骨部材に結合された状態で、前記車内空間側から、前記第1内装部材、前記結合部、前記固定部材、前記遊動部材の順に位置すること、前記第1内装部材と、前記結合部、前記固定部材と、のそれぞれは、前記遊動部材に対応する位置に、前記遊動量に対応する大きさの貫通孔を備えること、前記化粧部材は、前記車内空間側から前記貫通孔に挿通されて前記遊動部材に結合される固定具により固定されること、を特徴とする。
【0013】
(2)に記載の鉄道車両の内装部材の取付構造によれば、第1内装部材と第2内装部材との境界部分を車内空間側から覆い隠すための化粧部材(例えば巾木)を備える。そして、当該化粧部材は、第1内装部材と、結合部、固定部材と、のそれぞれが備える貫通孔に挿通された固定具が遊動部材に結合されることで固定される。遊動部材は、第1内装部材の表面に対して平行な方向に所定の遊動量を有するとともに、上記貫通孔は遊動部材の遊動量に対応する大きさを有している。したがって、当該遊動量の範囲内で、巾木の取り付け位置の調整を行うことが可能である。このように、切り粉の発生原因である穴あけ作業を要することなく、巾木の取り付け位置の調整や取り付けを行うことが可能であるため、切り粉の除去作業による鉄道車両の製造効率の低下を防止することが出来る。また、切り粉の残留によって、機器類や配線に障害が発生するおそれや、乗客の怪我に繋がるおそれがない。なお、遊動部材の所定の遊動量とは、化粧部材が上記境界部分を覆い隠すことが出来る範囲内で定められる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鉄道車両の内装部材の取付構造によれば、切り粉の発生原因である穴あけ作業を要することなく内装部材を車両構体に取り付け可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る鉄道車両の内装部材の取付構造を用いた鉄道車両の側面図である。
【
図5】内装パネルの取り付け工程を説明するための、
図3と同一位置で切断した断面図である。
【
図6】内装パネルの取り付け工程を説明するための、
図3と同一位置で切断した断面図である。
【
図7】内装パネルの取り付け工程を説明するための、
図3と同一位置で切断した断面図である。
【
図8】巾木の取り付け工程を説明するための、
図4と同一位置で切断した断面図である。
【
図9】巾木の取り付け工程を説明するための、
図4と同一位置で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る鉄道車両の内装部材の取付構造の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る鉄道車両の内装部材の取付構造を用いた鉄道車両1の側面図である。なお、
図1においては、一部を部分断面図とし、客室12内を図示している。また、連妻構体115側の台車および車両構体11の一部を省略している。
【0017】
鉄道車両1は、軌道(不図示)を走行することが可能な、例えば通勤車両であり、
図1に示すように、車両構体11と、枕ばね24を介して車両構体11を支持する台車22と、により構成される。なお、鉄道車両としては、通勤車両に限定されるものではなく、特急車両等でも良い。
【0018】
車両構体11は、床部を構成する台枠111と、台枠111の軌道方向の一方の端部に立設されることで車両構体11の先頭部をなす先頭構体114と、台枠111の他方の端部に立設されることで車両構体11の連結部をなす連妻構体115と、台枠111の枕木方向の両端部に立設されることで車両構体11の側面をなす側構体112と、先頭構体114,連妻構体115および側構体112の上端部に配置されることで車両構体11の屋根をなす屋根構体113とにより6面体をなすように構成される。車両構体11の内部は客室12(内部空間の一例)となっている。車両構体11には、客室12に通じる乗客乗降口26および窓28、乗務員室に通じる乗務員昇降口27が設けられている。
【0019】
客室12の内面は、床面121と、床面121の枕木方向の両端部において床面121に対して略直角に位置する側壁面122と、床面121の軌道方向の両端部において床面121に対して略直角に位置する端壁面(不図示)と、天井123と、側壁面122と天井を接続する側天井124と、により構成される。
【0020】
次に、
図2は、
図1のX部分の部分拡大図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。
図4は、
図2のB-B断面図である。なお、
図3および
図4においては、鉄道車両1の枕木方向の両端部の内、一方の端部のみを図示したものであるが、他方の端部においても同様の構成である。
【0021】
客室12の内面は内装部材により形成されている。例えば、
図2乃至
図4に示すように、床面121は床敷物13(第2内装部材の一例)により形成される。また例えば、側壁面122は、
図1に示すように、軌道方向に複数が隣接して並ぶ内装パネル(第1内装部材の一例:例えば内装パネル14A,14B)により形成されている。なお、側壁面122にはロングシート29が取り付けられているため、
図1において、内装パネル14A,14Bのロングシート29が取り付けられている箇所は、隠れて見えないようになっている。よって、内装パネル14Aは、ロングシート29が取り付けられている箇所においても、ロングシート29の下方側とロングシート29の上方側とで連続した表面141(
図3参照)を有している。また、内装パネル14Bも同様に、床面121から窓28までの間で、連続した表面141を有している。
【0022】
床敷物13は、例えばポリ塩化ビニル製の長尺シート部材である。なお、床敷物13の材質は、ポリ塩化ビニルに限定されず、難燃性または不燃性を有するゴムシートや、絨毯でも良い。床敷物13は、
図3および
図4に示すように、台枠111の天井123(
図1参照)の側(
図3および
図4中の上側)の端面111a上で床受(不図示)に支持される床板パネル15上または床敷物材(不図示)上に敷かれており、床板パネル15に対して、接着材により固定されている。また、床敷物13の側壁面122近傍の端部131は、側壁面122に沿って、床面121に対して略直角に曲げられた状態である。
【0023】
床敷物13の枕木方向の外側には、台枠111の端面111aに内骨部材19が立設されている。内骨部材19は鉄等による金属製である。なお、内骨部材19に鉄を用いる場合には、錆が発生することを防ぐために、内骨部材19の表面に防錆塗装を行うものとしても良い。
【0024】
内骨部材19は、平板状の材料を曲げることで断面が略L字状に成形されている。具体的には、台枠111と結合する固定片191と、内装パネル14を支持する支持片192とにより略L字状をなしている。内骨部材19は、支持片192が台枠111の端面111aに対して略垂直に位置するよう、固定片191が台枠111の端面111aに固定されている。この固定は、溶接により行われている。支持片192の、天井123(
図1参照)の側(
図3および
図4中の上側)の先端部は、内装パネル14と結合する結合部193である。この結合部193が、内装パネル14の客室12に面する表面141とは反対側の裏面142に結合することで、内骨部材19が、内装パネル14を裏面142側から支持している。
【0025】
次に内装パネル14A,14Bについて説明する。なお、以下の説明においては、内装パネル14A,14Bは、個別の事項について説明する場合を除き、全て内装パネル14と記す。
【0026】
内装パネル14は、床面121に対して垂直に配設されている。材質は、例えばアルミニウム合金製であり、矩形平板状に形成されている。内装パネル14の高さ寸法(
図3上下方向の寸法)は、側壁面122のどの部分を構成するかにより適宜変更される。例えば、
図1に示すように、乗客乗降口26脇で側壁面122を構成する内装パネル14Aであれば、高さ寸法が、床面121から側天井124までの高さに対応する大きさとなっている。なお、側天井124の少なくとも一部を内装パネル14Aによって構成することとしても良い。また例えば、
図1に示すように、窓28の下方で側壁面122を構成する内装パネル14Bであれば、高さ寸法が、床面121から窓28までの高さに対応する大きさとなっている。さらに、内装パネル14の幅寸法(軌道方向の寸法)も、側壁面122のどの部分を構成するかにより適宜変更される。例えば、
図1に示すように、乗客乗降口26脇で側壁面122を構成する内装パネル14Aであれば、幅寸法が、乗客乗降口26から窓28までの距離に対応する大きさとなっている。また例えば、
図1に示すように、窓28の下方で側壁面122を構成する内装パネル14Bであれば、幅寸法が、窓28の幅寸法に対応する大きさとなっている。ただし、上記した内装パネル14の高さ寸法および幅寸法はあくまで例示であり、上記した内容に限定されるものではない。例えば、内装パネル14Aは、乗客乗降口26から窓28までの距離に対応する幅寸法を有するものとしているが、窓28の部分も含めた幅寸法を有するものとし、窓28の部分をくり抜いた内装パネルを用いることも考えられる。
【0027】
内装パネル14は、矩形平板状の固定部材16を有している。固定部材16は、内装パネル14の幅方向(軌道方向)に沿って長手方向を有しており、この長手方向の長さは内装パネル14の幅寸法と同一である。固定部材16は、内装パネル14の裏面142の床敷物13側の端部(
図3および
図4中の下端部)において、裏面142に対向するように、かつ、内骨部材19の結合部193を裏面142とともに挟むように位置している。また、固定部材16は、長手方向に沿って等間隔に、複数のねじ穴161を備えている。ねじ穴161は、
図3に示すように、固定部材16の内装パネル14側の面とその反対側の面とを貫通しており、内周面には雌ねじが切られてる。
【0028】
内装パネル14は、固定部材16のねじ穴161に対応する位置に通し孔143を備えている。通し孔143は、
図3に示すように、内装パネル14の表面141と裏面142とを貫通しており、これにより、客室12側から通し孔143に挿通されたパネル固定ねじ17を、ねじ穴161に螺合させることが可能となっている。
【0029】
パネル固定ねじ17を締め付け方向に回転させると、固定部材16は、内装パネル14の裏面142に対して近接する。一方で、パネル固定ねじ17を締め付け方向とは逆に回転させると、固定部材16は、内装パネル14の裏面142に対して離間する。以上のように、固定部材16が裏面142に対して近接離間可能なことにより、固定部材16と裏面142との間の間隙G11の大きさを調整可能となっている。
【0030】
固定部材16を内装パネル14の裏面142に対して近接させ、間隙G11を結合部193の厚み以下とすると、固定部材と裏面142とが、間隙G11に挿し込まれた結合部193を挟持する。この挟持により、内骨部材19と内装パネル14が結合される。つまり、内装パネル14が車両構体11に取り付けられた状態となる。一方で、固定部材16を内装パネル14の裏面142に対して離間させ、間隙G11を結合部193の厚みよりも大きくすると、内骨部材19と内装パネル14との結合が解かれ、間隙G11に対し、内骨部材19の結合部193を、床面121側から抜き差し可能となる。なお、固定部材16を内装パネル14の裏面142に対して離間させて、間隙G11に対して内骨部材19の結合部193を抜き差し可能となる固定部材16の位置を離隔位置(第1位置の一例)とする。また、離隔位置よりも固定部材16を内装パネル14の裏面142に対して近接させて、固定部材と裏面142とが、間隙G11に挿し込まれた結合部193を挟持する固定部材16の位置を近接位置(第2位置の一例)とする。
【0031】
内骨部材19は、パネル固定ねじ17に対応する位置に、U字溝195を備えている。このU字溝195は、内骨部材19の内装パネル14側の面からその反対側の面まで貫通している。これにより、客室12側から内装パネル14の通し孔143に挿通されたパネル固定ねじ17は、U字溝195を通って、ねじ穴161に螺合される。さらに、U字溝195は、天井123(
図1参照)の側(
図2乃至
図4中の上側)に向かって開口している。さらに、U字溝195の幅寸法(軌道方向の寸法)は、パネル固定ねじ17の直径よりも大きい。よって、内骨部材19に対して直角の姿勢とされたパネル固定ねじ17を、U字溝195に対して天井123の側から抜き差し可能となっている。
【0032】
固定部材16は、裏面142に対抗する面とは反対側の面に、複数のフローティングナット18(遊動部材の一例)が結合されている。フローティングナット18が結合されている位置は、
図2に示すように、複数設けられるねじ穴161の間である。ここで、
図10は、
図2のC-C断面図である。
【0033】
フローティングナット18は、
図10に示すように、ナットケース181と、ナットケース181に遊動可能に保持されている遊動ナット182と、から構成されている。遊動ナット182の遊動可能な方向は、側壁面122(内装パネル14の表面141)と平行な方向である。
【0034】
ナットケース181は、固定部材16の表面に平行な平坦部181aを備えており、その中央部には平坦部181aを貫通する円形の開口181bが設けられている。また、平坦部181aの両端部には壁部181cが固定部材16に向けて立設されている。この壁部181cには、平坦部181aと平行にナットケース181の外方へ延伸するフランジ部181dが設けられている。このフランジ部181dが、内装パネル14側から挿通される皿リベット183によって固定部材16に結合されることで、ナットケース181が固定部材16に固定されている。
【0035】
遊動ナット182は、プレート部182aと、軸部182bと、からなる。プレート部182aは、例えば矩形状に形成されている。その外形寸法は、ナットケース181の開口181bの直径よりも大きくされており、遊動ナット182が、ナットケース181から抜け落ちないようにされている。軸部182bは円筒状に形成されており、内周面は、後述する巾木固定ねじ21(固定具の一例)と螺合可能な雌ねじ部182cとなっている。また、軸部182bは、ナットケース181の開口181bに挿通されている。軸部182bの直径は、開口181bの直径よりも小さくされており、軸部182bの直径と開口181bの直径との寸法差により、遊動ナット182の遊動量が定まる。例えば、本実施形態においては、寸法差が10mmとされており、遊動量は片側5mmとなっている。つまり、軸部182b(雌ねじ部182c)の軸心が、開口181bの軸心を中心とした半径5mmの円の範囲内で偏心することが可能である。なお、遊動量を5mmとしているのは、あくまで例示であり、これに限定されるものではない。遊動量は、巾木20の大きさや隙間G21の大きさに基づき、巾木20が隙間G21を十分に覆い隠すことが出来る範囲内で定められる。
【0036】
図3および
図4に示すように、車両構体11に取り付けられた内装パネル14の下端部145と、床敷物13の端部131との間には、隙間G21が設けられている。この隙間G21は、製造誤差により内装パネル14と床敷物13とを密着させることが困難であるため、意図的に設けられたものである。しかし、隙間G21が客室12から目視可能であると、外観上好ましくない。また、客室12で飲料水等の液体がこぼれると、隙間G21から液体が入り込み、内骨部材19等に腐食が発生する原因となり得る。そのため、隙間G21は、巾木20(化粧部材の一例)によって、客室12側から覆い隠されている。
【0037】
巾木20は、ステンレスやアルミニウム合金等の矩形状の板材である。内装パネル14の幅方向(軌道方向)に沿って、長手方向を有している。長手方向の寸法は、内装パネル14の幅寸法に対応する長さとしても良いし、隣接して並ぶ複数の内装パネルにまたがった長さ(例えば内装パネル14Aと内装パネル14Bにまたがった長さ)としても良いし、側壁面122の幅寸法(先頭構体114側の乗客乗降口26と連妻構体115側の乗客乗降口26との間の距離に相当)に対応する長さとしても良い。また、短手方向の寸法は、隙間G21を十分に覆い隠すことが出来る程度の大きさであれば良く、適宜調整される。
【0038】
巾木20は、フローティングナット18に対応する位置に、通し孔201を備えている。通し孔201は、巾木20の客室12側の面とその反対側の面とを貫通しているため、客室12側から巾木固定ねじ21を挿通させることができる。そして、通し孔201に挿通された巾木固定ねじ21が、フローティングナット18に螺合されることで、巾木20は、側壁面122に固定される。側壁面122に固定された巾木20は、内骨部材19とにより、床敷物13の端部131を挟持固定しており、床敷物13が端部131からめくれてしまうことを防いでいる。
【0039】
側壁面122の、巾木20が固定される箇所においては、客室12側から、内装パネル14、内骨部材19の結合部193、固定部材16、フローティングナット18の順に位置している。内装パネル14と、結合部193と、固定部材16とのそれぞれは、フローティングナット18に対応する位置に、客室12側の面とその反対側の面とを貫通する貫通孔144,194,162を有している。貫通孔144,194,162は同軸上に位置するため、客室12側から巾木20の通し孔201に挿通された巾木固定ねじ21は、内装パネル14に設けられた貫通孔144と、結合部193に設けられた貫通孔194と、固定部材16に設けられた貫通孔162とを通り、フローティングナット18に螺合される。
【0040】
貫通孔144,194,162は、フローティングナット18の遊動ナット182の遊動量に対応する直径を有している。つまり、遊動ナット182の軸部182b(雌ねじ部182c)の軸心が、ナットケース181の開口181bの軸心に対して、遊動量の最大で偏心した場合でも、貫通孔144,194,162に挿通した状態の巾木固定ねじ21を、フローティングナット18の雌ねじ部182cに螺合することが可能なほどに、貫通孔144,194,162の直径が設定されている。
【0041】
図4においては、フローティングナット18に螺合された巾木固定ねじ21が完全に締め付けられた状態である。巾木固定ねじ21を完全に締め付けると、巾木固定ねじ21の頭部211と遊動ナット182のプレート部182a(
図10参照)とが、
図4中の左右方向から、巾木20と内装パネル14と結合部193と固定部材16とを押圧するため、摩擦力により遊動ナット182が遊動不可能となる。これにより、巾木20が側壁面122に固定されている。
【0042】
一方で、雌ねじ部182cに螺合された巾木固定ねじ21を完全に締め付けずに、弛めた状態(例えば
図9に示す状態)としておけば、巾木20と内装パネル14と内骨部材19と固定部材16とが、巾木固定ねじ21の頭部211と遊動ナット182のプレート部182aとにより圧縮されない状態となるため、遊動ナット182は側壁面122と平行な方向に遊動可能な状態となる。この状態においては、遊動ナット182の遊動量の範囲内で、遊動ナット182に螺合されている巾木固定ねじ21を、側壁面122と平行な方向に動かすことが可能である。これは、巾木固定ねじ21が挿通されている巾木20の取り付け位置を、側壁面122と平行な方向において、遊動量の範囲内で調整することが可能であることを意味する。
【0043】
以上に説明した鉄道車両の内装部材の取付構造を有する内装パネル14を、車両構体11に取り付ける手順を以下に説明する。
図5乃至
図7は、内装パネル14の取り付け工程を説明するための、
図3と同一位置で切断した断面図である。また、
図8および
図9は、巾木20の取り付け工程を説明するための、
図4と同一位置で切断した断面図である。なお、
図5乃至
図9においては、鉄道車両1の枕木方向の両端部の内、一方の端部のみを図示したものであるが、他方の端部においても同様の構成である。
【0044】
内装パネル14を車両構体11に取り付ける前においては、車両構体11の内部には、床敷物13が床板パネル15に敷かれ、客室12の床面121が形成された状態である。まず、取り付けを行う内装パネル14を車両構体11の内部に搬入し、固定部材16を離隔位置としておく。そして、内装パネル14を、床面121に対して略垂直で、かつ、固定部材16が床面121側に位置するような姿勢とする。この姿勢をとった状態で、まずは、内装パネル14の天井124側の端部を車両構体11に組み付ける。天井123側の端部を組付けた後は、
図5に示すように、内装パネル14を、天井123側から図中矢印に示す方向に、床面121に向けて降ろしていく。このとき、内骨部材19の結合部193が、間隙G11に挿し込まれるようにするとともに、パネル固定ねじ17が内骨部材19のU字溝195に挿し込まれるようにする。
【0045】
次に、
図6に示すように、結合部195が間隙G11に挿し込まれた状態、かつ、パネル固定ねじ17が内骨部材19のU字溝193に挿し込まれた状態で、内装パネル14の取り付け位置の調整を行う。このとき、固定部材16を離隔位置に位置させておくことで、間隙G11が内骨部材19の結合部193の厚み以上に確保されている。よって、内装パネル14は車両構体11に固定されておらず、高さ方向および幅方向において、取り付け位置の調整を行うことが可能である。なお、
図6においては、固定部材16が内骨部材19の結合部193から完全に離間した状態となっているが、パネル固定ねじ17を軽く締め付けて、内装パネル14を動かすことが可能な程度に固定部材16と内装パネル14とが結合部193を挟持した状態で、内装パネル14の取り付け位置の調整を行うこととしても良い。また、内装パネル14の裏面142と内骨部材19との間に、任意の厚みを有するスペーサ等を挟むことで、枕木方向においても、内装パネル14の取り付け位置の調整を行うことが可能である。
【0046】
内装パネル14の取り付け位置の調整を行い、取り付け位置を決定した後は、パネル固定ねじ17を完全に締め付けた状態とし、
図7に示すように、固定部材16を近接位置に位置させる。これにより、内骨部材19の結合部193が、固定部材16と内装パネル14の裏面142に挟持され、内装パネル14と内骨部材19の結合がなされる。すなわち、内装パネル14の車両構体11への取り付けが完了となる。これにより、客室12の側壁面122が形成される。
【0047】
次に、巾木20を、
図8に示すように、客室12の側から、側壁面122に取り付けていく。巾木20には、通し孔201に巾木固定ねじ21を挿通させた状態であり、巾木固定ねじ21を、客室12側から、内装パネル14の貫通孔144、内骨部材19の貫通孔194、固定部材16の貫通孔162の順に、挿通させていく。なお、巾木固定ねじ21は、巾木20を側壁面122にあてがった後に、通し孔201、貫通孔144,194,162に挿通させるものとしても良い。
【0048】
次に、
図9に示すように、貫通孔144,194,162に挿通させた巾木固定ねじ21をフローティングナット18の遊動ナット182に螺合する。このとき、巾木固定ねじ21は締め付けずに緩めた状態である。この状態においては、上記した通り遊動ナット182は側壁面122と平行な方向に遊動可能であるため、巾木20の取り付け位置を、側壁面122と平行な方向において、遊動量の範囲内で調整することが可能である。なお、
図9においては、巾木固定ねじ21の頭部211が、巾木20から離間しており、巾木20と内装パネル14と内骨部材19と固定部材16とは、頭部211と遊動ナット182とにより全く圧縮されていない状態である。しかし、巾木固定ねじ21を軽く締め付けて、遊動ナット182が遊動可能な程度に、頭部211と遊動ナット182とが、巾木20と内装パネル14と内骨部材19と固定部材16とを圧縮した状態として、巾木20の取り付け位置の調整を行うこととしても良い。
【0049】
巾木20の取り付け位置の調整を行い、取り付け位置を決定した後は、
図4に示すように、巾木固定ねじ21を完全に締め付ける。巾木固定ねじ21を完全に締め付けると、巾木固定ねじ21の頭部211と遊動ナット182のプレート部182aとが、
図4中の左右方向から、巾木20と、内装パネル14と、内骨部材19と、固定部材16とを圧縮するため、摩擦力により遊動ナット182が遊動不可能となる。これにより、巾木20が側壁面122に固定される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る鉄道車両の内装部材の取付構造は、
(1)車両構体11と、車両構体11の内部に形成される車内空間(客室12)と、車内空間(客室12)の内面(側壁面122や床面121)を形成するとともに隣接して配置される第1内装部材(内装パネル14)および第2内装部材(床敷物13)と、を備える鉄道車両1の、第1内装部材(内装パネル14)を車両構体11に取り付けるための、鉄道車両の内装部材の取付構造において、車両構体11は、第1内装部材(内装パネル14)と第2内装部材(床敷物13)の境界において、少なくとも第1内装部材(内装パネル14)を、第1内装部材(内装パネル14)の車内空間(客室12)側の表面141とは反対側の裏面142の側から支持するための内骨部材19を備えること、内骨部材19は、裏面142の側で第1内装部材(内装パネル14)と結合する結合部193を備えること、第1内装部材(内装パネル14)は、裏面142の、第2内装部材(床敷物13)の側の端部に、固定部材16を備えること、固定部材16は、裏面142に対して近接離間可能であり、裏面142から離間することで、固定部材16と裏面142との間に、表面141と平行な方向から結合部193を挿し込み可能な間隙G11を生じさせる第1位置(離隔位置)と、第1位置(離隔位置)よりも裏面142に近接することで、固定部材16と裏面142とが、間隙G11に挿し込まれた結合部193を挟持し、前記結合を行うための第2位置(近接位置)と、の間を移動可能であること、を特徴とする。
【0051】
(1)に記載の鉄道車両の内装部材の取付構造によれば、第1内装部材(内装パネル14)は、第2内装部材(床敷物13)との境界に位置する内骨部材19に結合されることで、裏面142側から支持され、第2内装部材(床敷物13)と隣接した状態で車両構体11に取り付けられる。
【0052】
ここで、第1内装部材(内装パネル14)は、第2内装部材(床敷物13)の側の端部に、第1内装部材(内装パネル14)の裏面142に対して近接離間可能な固定部材16を備えている。固定部材16を裏面に対して離間させた第1位置(離隔位置)に位置させた状態では、固定部材16と裏面142との間に、内骨部材19の結合部193を挿し込み可能な間隙G11が生じる。つまり、固定部材16を第1位置(離隔位置)に位置させた状態では、内骨部材19の結合部193を挿し込む方向に対して平行な方向に(側壁面122の上下方向や幅方向に)、第1内装部材(内装パネル14)の取り付け位置の調整を行うことが可能である。そして、固定部材16を裏面142に対して近接させた第2位置(近接位置)に位置させた状態では、固定部材16と裏面142とが、間隙G11に挿し込まれた結合部193を挟持するため、第1内装部材(内装パネル14)と内骨部材19との結合が行われる。つまり、固定部材16を第1位置(離隔位置)に位置させた状態で取り付け位置の調整をし、取り付け位置を決定した後に、固定部材16を第2位置(近接位置)に位置させれば、その決定した取り付け位置において、第1内装部材(内装パネル14)と内骨部材19との結合が行われる(つまり第1内装部材(内装パネル14)の車両構体11への取り付けが行われる)。このように、固定部材16の近接離間動作により第1内装部材(内装パネル14)の取り付け位置の調整や、車両構体11への取り付けを行うことが可能であるため、切り粉の発生原因である穴あけ作業を要することなく第1内装部材(内装パネル14)を車両構体に取り付け可能である。よって、切り粉の除去作業による鉄道車両1の製造効率の低下を防止することが出来る。また、切り粉の残留によって、機器類や配線に障害が発生するおそれや、乗客の怪我に繋がるおそれがない。
【0053】
(2)(1)に記載の鉄道車両の内装部材の取付構造において、第1内装部材(内装パネル14)と第2内装部材(床敷物13)との境界部分を車内空間(客室12)側から覆い隠すための化粧部材(巾木20)を備えること、固定部材16は、表面141に対して平行な方向に所定の遊動量を有する遊動部材(フローティングナット18)を備えていること、第1内装部材(内装パネル14)が内骨部材19に結合された状態で、車内空間(客室12)側から、第1内装部材(内装パネル14)、結合部193、固定部材16、遊動部材(フローティングナット18)の順に位置すること、第1内装部材(内装パネル14)と、結合部193、固定部材16と、のそれぞれは、遊動部材(フローティングナット18)に対応する位置に、遊動量に対応する大きさの貫通孔144,194,162を備えること、化粧部材(巾木20)は、車内空間(客室12)側から貫通孔144,194,162に挿通されて遊動部材(フローティングナット18)に結合される固定具(巾木固定ねじ21)により固定されること、を特徴とする。
【0054】
(2)に記載の鉄道車両の内装部材の取付構造によれば、第1内装部材(内装パネル14)と第2内装部材(床敷物13)との境界部分(隙間G21)を車内空間(客室12)側から覆い隠すための化粧部材(巾木20)を備える。そして、当該化粧部材(巾木20)は、第1内装部材(内装パネル14)と、結合部193、固定部材16と、のそれぞれが備える貫通孔144,194,162に挿通された固定具(巾木固定ねじ21)が遊動部材(フローティングナット18)に結合されることで固定される。遊動部材(フローティングナット18)は、第1内装部材(内装パネル14)の表面141に対して平行な方向に所定の遊動量を有するとともに、上記貫通孔144,194,162は遊動部材(フローティングナット18)の遊動量に対応する大きさを有している。したがって、当該遊動量の範囲内で、巾木20の取り付け位置の調整を行うことが可能である。このように、切り粉の発生原因である穴あけ作業を要することなく、巾木20の取り付け位置の調整や取り付けを行うことが可能であるため、切り粉の除去作業による鉄道車両1の製造効率の低下を防止することが出来る。また、切り粉の残留によって、機器類や配線に障害が発生するおそれや、乗客の怪我に繋がるおそれがない。なお、遊動部材(フローティングナット18)の所定の遊動量とは、化粧部材(巾木20)が上記境界部分(隙間G21)を覆い隠すことが出来る範囲内で定められる。
【0055】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、上記の実施形態においては、車内空間として客室12を例に説明しているが、車内空間は、乗務員室や、車内デッキ等であっても良い。
【0056】
また、上記の実施形態においては、側壁面122における内装パネル14および巾木20の、取り付け位置の調整と取り付けについて説明しているが、本発明は、端壁面(客室12の軌道方向両端部の壁面)における内装パネルおよび押え面の、取り付け位置の調整と取り付けにも適用可能である。
【0057】
さらにまた、上記の実施形態においては、第2内装部材として床敷物13を例に説明をしているが、第2内装部材としては、第1内装パネル(内装パネル14)に隣接して並ぶ内装パネルであっても良い。この場合、内骨部材は、第1内装パネルと第2内装パネルの双方を支持するものになる。
【符号の説明】
【0058】
1 鉄道車両
11 車両構体
12 客室(車内空間の一例)
13 床敷物(第2内装部材の一例)
14 内装パネル(第1内装部材の一例)
16 固定部材
19 内骨部材
121 床面(車内空間の内面の一例)
122 側壁面(車内空間の内面の一例)
141 内装パネルの表面
142 内装パネルの裏面
193 結合部
G11 間隙