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特許7605696疾病リスク予測システム、および疾病リスク予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】疾病リスク予測システム、および疾病リスク予測方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20241217BHJP
   G16H 10/60 20180101ALI20241217BHJP
【FI】
G16H50/30
G16H10/60
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021089818
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182316
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 奏音
(72)【発明者】
【氏名】田浦 善弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 祐介
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0015301(KR,A)
【文献】国際公開第2018/221027(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサおよび記憶素子を有する情報処理装置を用いて構成され、
複数の者について行われた歯科健診または歯科問診の結果に関する情報を含む歯科健診データと、
前記複数の者について行われた診療の結果に関する情報を含む医科レセプトデータと、
を取得し、
前記歯科健診データおよび前記医科レセプトデータに基づき、前記歯科健診データの内容を説明変数とし前記医科レセプトデータから把握される特定の疾病に関する情報を目的変数とするモデルである、リスク予測モデルを生成し、
前記特定の疾病についてのリスクを予測しようとする対象者について行われた前記歯科健診データの内容を説明変数として前記リスク予測モデルに適用することにより前記目的変数を取得し、
取得した前記目的変数に基づく情報を出力する、
前記リスク予測モデルは、重回帰分析によって生成される統計モデルであり、
前記リスク予測モデルに用いる前記説明変数を、前記重回帰分析によって取得されるt値または信頼区間に基づき選択する、
疾病リスク予測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の疾病リスク予測システムであって、
前記目的変数は、前記特定の疾病に将来罹患するリスクを示す情報、または、前記特定の疾病が重症化するリスクを示す情報である、
疾病リスク予測システム。
【請求項3】
請求項1に記載の疾病リスク予測システムであって、
前記説明変数は、前記歯科健診データにおける歯科健診または歯科問診の結果を数値化した値を含む、
疾病リスク予測システム。
【請求項4】
請求項1に記載の疾病リスク予測システムであって、
前記医科レセプトデータから把握される前記特定の疾病に関する情報は、前記特定の疾病について行われた診療の点数を示す情報を含む、
疾病リスク予測システム。
【請求項5】
請求項1に記載の疾病リスク予測システムであって、
前記特定の疾病のリスクを予測しようとする対象者についての前記説明変数の値を受け付ける設定欄と、前記設定欄に設定された値を前記リスク予測モデルに適用して得られた前記目的変数に基づく情報を提示する提示欄とを有する画面を提示する、
疾病リスク予測システム。
【請求項6】
プロセッサおよび記憶素子を有する情報処理装置が、
複数の者について行われた歯科健診または歯科問診の結果に関する情報を含む歯科健診データと、
前記複数の者について行われた診療の結果に関する情報を含む医科レセプトデータと、
を取得するステップと、
前記歯科健診データおよび前記医科レセプトデータに基づき、前記歯科健診データの内容を説明変数とし前記医科レセプトデータから把握される特定の疾病に関する情報を目的変数とするモデルである、リスク予測モデルを生成するステップと、
前記特定の疾病についてのリスクを予測しようとする対象者について行われた前記歯科健診データの内容を説明変数として前記リスク予測モデルに適用することにより前記目的変数を取得するステップと、
取得した前記目的変数に基づく情報を出力するステップと、
重回帰分析によって生成される統計モデルであるリスク予測モデルに用いる前記説明変数を、前記重回帰分析によって取得されるt値または信頼区間に基づき選択するステップ、
を更に実行する、疾病リスク予測方法。
【請求項7】
請求項に記載の疾病リスク予測方法であって、
前記目的変数は、前記特定の疾病に将来罹患するリスクを示す情報、または、前記特定の疾病が重症化するリスクを示す情報である、
疾病リスク予測方法。
【請求項8】
請求項に記載の疾病リスク予測方法であって、
前記説明変数は、前記歯科健診データにおける歯科健診または歯科問診の結果を数値化した値を含む、
疾病リスク予測方法。
【請求項9】
請求項に記載の疾病リスク予測方法であって、
前記医科レセプトデータから把握される前記特定の疾病に関する情報は、前記特定の疾病について行われた診療の点数を示す情報を含む、
疾病リスク予測方法。
【請求項10】
請求項に記載の疾病リスク予測方法であって、
前記情報処理装置が、前記特定の疾病のリスクを予測しようとする対象者についての前記説明変数の値を受け付ける設定欄と、前記設定欄に設定された値を前記リスク予測モデルに適用して得られた前記目的変数に基づく情報を提示する提示欄とを有する画面を提示するステップ、
を更に実行する、疾病リスク予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾病リスク予測システム、および疾病リスク予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、我が国においては、年々増大する医療費の抑制が課題となっており、医療保険者には、被保険者の健康を維持しつつ医療費の適正化を図ることが求められている。こうした背景のもと、医療保険者は、データヘルス計画に基づく施策の一つとして、医療機関から収集される医科レセプトデータ等の医療情報データベースを活用した保険事業を推進している。
【0003】
医療情報データベースの活用事例として、例えば、特許文献1には、医療保険者による被保険者に対する健康管理介入を支援するための各種の健康管理介入支援情報を生成することを目的として構成された基盤システムについて記載されている。基盤システムは、被保険者の医療情報を記録した保険者データベース、被保険者が使用するIoT体重計、ウェアラブル端末、情報通信端末の少なくともいずれか1つと、医療情報とIoT体重計、ウェアラブル端末、情報通信端末の少なくともいずれか1つから送信される情報に基づき、健康管理介入支援情報を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-116395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今、歯科健診データと特定の疾病との関連性の明確化という視点において、歯周病と糖尿病との関連性についての報告が数多くなされている。例えば、炎症に起因する化学物質が歯周ポケットから体中に放出されることによりインスリンを効きにくくする「インスリン抵抗性」を引き起こし、それにより糖尿病を発症するリスクが高まることが報告されている。そのため、歯科健診データと医科レセプトデータとの関連性を統計的に分析することにより疾病リスクを予測し、予測により得られた情報を、医療保険者や医療従事者、被保険者等に提供することで、歯科健診の受診率の向上や歯科疾患の予防が促され、人の健康寿命の延伸に繋げることができると考えられる。
【0006】
ここで上記の特許文献1には、被保険者の医療情報を記録した保険者データベース、被保険者が使用するIoT体重計、ウェアラブル端末、情報通信端末から取得した情報に基づき健康管理介入支援情報を生成して保険者に提供し、被保険者が健康管理介入支援情報に基づく指導やアドバイスを受けることが記載されている。しかし同文献には、歯科健診データと医科レセプトデータから把握される特定の疾病との関連性に着目して分析を行うことについては記載されていない。
【0007】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、歯科健診データと医科レセプトデータから把握される疾病との関連性に基づく疾病リスクに関する情報を提供することが可能な、疾病リスク予測システム、および疾病リスク予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一つは、疾病リスク予測システムであって、プロセッサおよび記憶素子を有する情報処理装置を用いて構成され、複数の者について行われた歯科健診または歯科問診の結果に関する情報を含む歯科健診データと、前記複数の者について行われた診療の結果に関する情報を含む医科レセプトデータと、を取得し、前記歯科健診データおよび前記医科レセプトデータに基づき、前記歯科健診データの内容を説明変数とし前記医科レセプトデータから把握される特定の疾病に関する情報を目的変数とするモデルである、リスク予測モデルを生成し、前記特定の疾病についてのリスクを予測しようとする対象者について行われた前記歯科健診データの内容を説明変数として前記リスク予測モデルに適用することにより前記目的変数を取得し、取得した前記目的変数に基づく情報を出力する、前記リスク予測モデルは、重回帰分析によって生成される統計モデルであり、前記リスク予測モデルに用いる前記説明変数を、前記重回帰分析によって取得されるt値または信頼区間に基づき選択する
【0009】
尚、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、歯科健診データと医科レセプトデータから把握される疾病との関連性に基づく疾病リスクに関する情報を提供することができ、ひいては人の健康寿命の延伸を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】疾病リスク予測システムの概略的な構成を示す図である。
図2】疾病リスク予測システムを構成する情報処理装置のハードウェア構成の一例である。
図3】疾病リスク予測装置が備える主な機能を示す図である。
図4】歯科健診データのテーブルの一例である。
図5】レセプトデータのテーブルの一例である。
図6】特定疾病マスタのテーブルの一例である。
図7】診療点数マスタのテーブルの一例である。
図8】歯科健診数値化データのテーブルの一例である。
図9】特定疾病点数データのテーブルの一例である。
図10】管理者装置が備える主な機能を示す図である。
図11】利用者装置が備える主な機能を示す図である。
図12】リスク予測モデル生成処理を説明するフローチャートである。
図13】歯科健診データ数値化処理を説明するフローチャートである。
図14】特定疾病点数データ生成処理を説明するフローチャートである。
図15】重回帰分析に用いる説明変数と目的変数の一例である。
図16】重回帰分析の結果の例である。
図17】リスク予測処理を説明するフローチャートである。
図18】疾病リスク提示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示に過ぎず、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。以下に説明する各構成要素は、とくに限定しない限り単数でも複数でも構わない。
【0013】
以下の説明では、「情報」、「データ」、「表」、「テーブル」等の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、これら以外のデータ構造で表現されていてもよい。識別情報について説明する際に、「識別子」、「ID」等の表現を用いるが、これらはお互いに置換可能である。
【0014】
以下の説明において、符号の前に付した「S」の文字は処理ステップの意味である。以下の説明において、同一のまたは類似する構成について同一の符号を付して重複した説明を省略することがある。
【0015】
図1に、本発明の一実施形態として説明する情報処理システム(以下、「疾病リスク予測システム1」と称する。)の概略的な構成を示している。同図に示すように、疾病リスク予測システム1は、疾病リスク予測装置100、管理者装置200、および利用者装置300を含む。これらはいずれも情報処理装置(コンピュータ)を用いて構成されており、通信ネットワーク5を介して互いに双方向通信が可能な状態で接続されている。通信ネットワーク5は、情報処理装置の間で行われる有線通信または無線通信を実現するための通信基盤であり、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network
)、インターネット、各種公衆通信網、専用線、シリアル通信媒体(USB通信機器(USB:Universal Serial Bus)等)等である。
【0016】
疾病リスク予測装置100は、歯科医療機関や企業や官公庁、学校等の組織において実施された歯科健診や歯科問診において取得された情報(以下、「歯科健診データ」と称する。)と、病院や医院等の医療機関(歯科を除く)や組織において行われた診療や健康診断により取得された医科レセプトデータ(以下、「レセプトデータ」と称する。)から把握される特定の疾病との関係性に基づき、被保険者等の対象者について、特定の疾病についてのリスクを予測する。
【0017】
ここで上記の特定の疾病は、例えば、糖尿病、高血圧症、脂質異常症等の生活習慣病等である。また、上記のリスク(以下、「疾病リスク」とも称する。)は、例えば、対象者が特定の疾病に将来罹患するリスク、対象者が現在患っている疾病が重傷化するリスクや将来の進行度合い等である。疾病リスク予測装置100は、予測した疾病リスクを、医療従事者(医師、歯科医師、看護師、歯科衛生士等)、医療保険者(医療保険事業を運営するために保険料の徴収や保険給付を行う実施団体)、被保険者等(以下、これらの者を「利用者」と総称する。)に提供する。尚、以下では、特定の疾病が糖尿病である場合を例として説明する。
【0018】
管理者装置200は、疾病リスク予測装置100の管理者が、管理者装置200の管理に際して操作する情報処理装置である。上記管理とは、例えば、疾病リスク予測装置100に対する各種情報の設定(登録、編集、削除等)、疾病リスク予測装置100の動作の監視や制御である。尚、管理者装置200の機能は、疾病リスク予測装置100の機能として実現してもよい。
【0019】
利用者装置300は、利用者が、疾病リスク予測装置100から情報提供を受けるために必要となる各種情報の入力や設定(登録、編集、削除等)、疾病リスク予測装置100から提供される各種情報の閲覧等を行う際に操作する情報処理装置である。利用者装置300は、例えば、歯科医院や病院等の医療機関、企業や官公庁等の組織、健康診断の実施会場等において利用される。利用者装置300の操作主体は必ずしも限定されないが、例えば、医師や看護師等の医療従事者、医療保険者、対象者に健康に関するアドバイスを行う者等である。利用者装置300の機能は、疾病リスク予測装置100の機能として実現してもよい。
【0020】
図2に、疾病リスク予測システム1を構成する情報処理装置(疾病リスク予測装置100、管理者装置200、利用者装置300)のハードウェア構成の一例を示す。例示する情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、および通信装置16を備える。情報処理装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット、サーバ装置、汎用機等である。
【0021】
各情報処理装置(疾病リスク予測装置100、管理者装置200、利用者装置300)は、例えば、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて実現してもよい。
【0022】
また、情報処理装置10は、その全部または一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術やプロセス空間分離技術等を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。また、情報処理装置10によって提供される機能の全部または一部は、例えば、クラウドシステムがAPI(Application Programming Interface)等を介して提供するサービスによって実現しても
よい。
【0023】
また、情報処理装置10によって提供される機能の全部または一部は、例えば、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)等を利用して実現されるものであってもよい。
【0024】
同図に示すプロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU
(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、
AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0025】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read
Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等の記憶素子を用いて構成される。
【0026】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライ
ブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0027】
尚、情報処理装置10の機能を実現するプログラムやデータの全部または一部は、予め主記憶装置12や補助記憶装置13に格納されていてもよいし、必要に応じて、非一時的な記録媒体や他の装置に備えられている非一時的な記憶装置から、記録媒体の読取装置や通信装置を介して主記憶装置12や補助記憶装置13に読み込むようにしてもよい。
【0028】
入力装置14は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0029】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(液晶モニタ、LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0030】
入力装置14と出力装置15は、ユーザ(利用者や管理者)との間での対話処理(情報の入力受付、情報の提示等)を実現するユーザインタフェースを構成する。
【0031】
通信装置16は、他の装置との間の通信を実現する装置である。通信装置16は、通信ネットワーク5を介して他の装置との間の通信を実現する、有線方式または無線方式の通信インタフェースであり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等である。
【0032】
情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0033】
疾病リスク予測装置100、管理者装置200、および利用者装置300の夫々が備える各種の機能は、夫々が備えるプロセッサ11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、夫々を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体によって実現される。
【0034】
疾病リスク予測装置100、管理者装置200、および利用者装置300は、各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0035】
図3に、疾病リスク予測装置100が備える主な機能を示す。同図に示すように、疾病リスク予測装置100は、主な機能として、記憶部110、情報取得管理部120、学習データ生成部130、モデル生成部140、およびリスク予測部150を備える。
【0036】
上記機能のうち、記憶部110は、歯科健診データ101、レセプトデータ102、特定疾病マスタ103、診療点数マスタ104、歯科健診数値化データ105、特定疾病点数データ106、重回帰分析結果107、リスク予測モデル111、リスク予測結果112、および疾病リスク提示画面113の各情報(データ)を管理(記憶)する。
【0037】
上記情報のうち、歯科健診データ101は、歯科医療機関や企業や官公庁、学校等の組織において実施された歯科健診や歯科問診において取得された、健診情報や問診情報を含む。上記の健診情報は、例えば、歯科医師の所見、残歯数、歯周ポケットの有無等の情報を含む。また、上記の問診情報は、例えば、歯についての悩み、歯磨きの習慣、痛み等の情報を含む。尚、歯科健診データ101は、個人情報保護のために匿名化処理が施されている。
【0038】
図4に、歯科健診データ101のテーブルの一例を示す。例示するテーブルは、歯科健診や歯科問診の対象者の一人に対応する。即ち、歯科健診データ101は、対象者毎の複数の上記テーブルを含む。
【0039】
同図に示すように、例示するテーブルは、項目名1011と当該項目に対する回答1012とを対応づけた複数のレコードで構成される。項目名1011には、当該対象者の属性の種別(「被保連番」(被保険者証の番号を匿名化したもの)、「性別」、「年齢」)や歯科健診や歯科問診に際し対象者に対して行った質問の内容(以下、「質問内容」と称する。)が格納される。回答1012には、対象者の属性や質問内容が格納される。
【0040】
図3に戻り、レセプトデータ102は、病院や医院等の医療機関(歯科を除く)や企業や官公庁、学校等の組織において行われた診療(診察や診断を含む)に際して取得された医科レセプトデータである。レセプトデータ102は、例えば、国の当局等が提供するレセプト情報データベース(例えば、NDBオープンデータ)から取得したものである。尚、レセプトデータ102は、個人情報保護のために匿名化処理が施されている。
【0041】
図5に、レセプトデータ102のテーブルの一例を示す。例示するテーブルは、診療の対象者の一人に対応する。即ち、レセプトデータ102は、対象者毎の複数の上記テーブルを含む。
【0042】
同図に示すように、例示するテーブルは、項目名1021と当該項目に対する値1022とを対応づけた複数のレコードで構成される。項目名1021には、当該対象者の属性の種別(被保連番)や当該対象者について行われた診療の内容(「医療機関コード」、「診療年月」、「入院年月」、「決定点数」、「負担者負担」、「患者負担割合」、「疾病コード」等。以下、これらを「診療情報」と総称する。)が格納される。値1022には、当該対象者の属性や診療情報が格納される。
【0043】
図3に戻り、特定疾病マスタ103は、疾病名称(傷病名称)の一覧を含む。特定疾病マスタ103は、後述する特定疾病点数データ106の生成に際し、学習データ生成部130の特定疾病点数データ生成部132が、レセプトデータ102から、特定の疾病に関する情報を抽出する目的で参照される。特定疾病マスタ103は、例えば、国の当局等が提供する傷病名マスタに基づき生成される。
【0044】
図6に、特定疾病マスタ103のテーブルの一例を示す。特定疾病マスタ103には、特定の疾病(本例では糖尿病)に関する疾病の名称の一覧が管理される。
【0045】
図3に戻り、診療点数マスタ104は、診療(診療行為名称)毎の点数(診療点数)の情報を含む。診療点数マスタ104は、レセプトデータ102から抽出した特定の疾病について行われた診療の点数を取得する目的で用いられる。診療点数マスタ104は、例えば、国の当局等が提供する医科診療行為マスタに基づき生成される。
【0046】
図7に、診療点数マスタ104のテーブルの一例を示す。診療点数マスタ104には、特定の疾病(本例では糖尿病)についての診療や診断の点数(診療点数)が管理される。同図に示すように、診療点数マスタ104には、診療行為名称1041と、当該診療行為についての点数1042とを対応づけた情報が管理される。診療行為名称1041には診療行為名称が格納される。点数1042には当該診療行為の診療点数が格納される。
【0047】
図3に戻り、歯科健診数値化データ105は、歯科健診データ101の回答1012の内容を数値化した情報である。歯科健診数値化データ105の内容は、モデル生成部140がリスク予測モデルの生成に際し説明変数として用いる。
【0048】
図8に、歯科健診数値化データ105のテーブルの一例を示す。例示するテーブルの一つは歯科健診または歯科問診の対象者の一人に対応する。即ち、歯科健診数値化データ105は、対象者毎の複数の上記テーブルを含む。
【0049】
同図に示すように、例示するテーブルは、項目名1051と値1052とを対応づけた情報を含む。項目名1051には、歯科健診データ101の項目名1011と同じ内容が格納される。値1052には、歯科健診データ101の回答1012の内容を数値化した値が格納される。例えば、項目名1011が属性である場合は当該属性の内容を数値化した値が、また、項目名1011が質問内容である場合は当該質問内容に対する当該対象者の回答をランクや種類に応じて数値化した値が、夫々値1052に格納される。尚、歯科健診数値化データ105には、歯科健診データ101にはない説明変数(項目名1051)が必要に応じて追加される。本例では、項目名1051に対象者の属性である「年代」が追加されている。このように、歯科健診データ101を適切に数値化することで、後述する重回帰分析等の統計処理を効率よく行うことができる。
【0050】
図3に戻り、特定疾病点数データ106は、レセプトデータ102、特定疾病マスタ103、および診療点数マスタ104に基づき生成される。特定疾病点数データ106の内容は、モデル生成部140が、リスク予測モデルの生成に際し目的変数として用いる。
【0051】
図9に、特定疾病点数データ106のテーブルの一例を示す。例示するテーブルは、診療や診断の対象者の一人に対応する。即ち、特定疾病点数データ106は、対象者毎の複数の上記テーブルを含む。
【0052】
同図に示すように、例示するテーブルは、項目名1061と当該項目に対する値1062とを対応づけた複数のレコードで構成される。項目名1061には、「被保連番」、「疾病名称」、「点数合計」が格納される。値1062には、項目名1061に対応する内容が設定される。例えば、項目名1061が「被保連番」である場合は当該対象者の被保連番が、項目名1061が「疾病名称」である場合は当該対象者の疾病名称(疾病コードでもよい)が、項目名1061が「点数合計」である場合は、当該対象者について行われた各診療の点数の合計値が、夫々値1062に格納される。
【0053】
図3に戻り、重回帰分析結果107は、モデル生成部140がリスク予測モデル111の生成に際して行う重回帰分析の結果に関する情報を含む。上記情報の詳細については後述する。
【0054】
同図に示すリスク予測モデル111は、モデル生成部140により生成されたリスク予測モデルに関する情報(後述する係数等)を含む。リスク予測モデルの詳細については後述する。
【0055】
同図に示すリスク予測結果112は、リスク予測部150がリスク予測モデルを用いて予測した結果(疾病リスク)に関する情報を含む。
【0056】
同図に示す疾病リスク提示画面113は、リスク予測部150が利用者装置300を介して提示する、リスク予測結果112の内容を記載した画面の情報を含む。疾病リスク提示画面113は、例えば、HTML(Hypertext Markup Language)やXML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語で記述された情報や画像データを含む。
【0057】
図3に示す機能のうち、情報取得管理部120は、リスク予測モデルの生成に必要な情報である、歯科健診データ101、レセプトデータ102、特定疾病マスタ103、および診療点数マスタ104を取得して管理する。情報取得管理部120は、例えば、通信ネットワーク5を介して、インターネット上のサーバ装置や管理者装置200から上記情報を取得する。
【0058】
図3に示す機能のうち、学習データ生成部130は、リスク予測モデルの生成において学習データとして用いる、歯科健診数値化データ105および特定疾病点数データ106を生成する。同図に示すように、学習データ生成部130は、歯科健診データ数値化部131と特定疾病点数データ生成部132とを含む。このうち歯科健診データ数値化部131は、歯科健診データ101に基づき、リスク予測モデルの生成に用いる歯科健診数値化データ105を生成する。一方、特定疾病点数データ生成部132は、レセプトデータ102、特定疾病マスタ103、および診療点数マスタ104に基づき、特定疾病点数データ106を生成する。
【0059】
図3に示す機能のうち、モデル生成部140は、学習データ(歯科健診数値化データ105、特定疾病点数データ106)を用いてリスク予測モデルを生成する。同図に示すように、モデル生成部140は、重回帰分析部141、説明変数選択部142、およびモデ
ル登録部143を含む。このうち重回帰分析部141は、歯科健診数値化データ105の内容を説明変数とし、特定疾病点数データ106の内容を目的変数として重回帰分析を行う。説明変数選択部142は、重回帰分析部141が行った重回帰分析の結果に基づき、目的変数に与える影響が大きい説明変数を選択する。モデル登録部143は、説明変数選択部142が選択した説明変数を用いてリスク予測モデルを生成し、生成したリスク予測モデルをリスク予測モデル111として登録する。
【0060】
図3に示す機能のうち、リスク予測部150は、モデル生成部140によって生成されたリスク予測モデル111を用い、被保険者等の対象者について、特定の疾病についての疾病リスクを予測し、予測した結果を記載した疾病リスク提示画面113を生成して利用者装置300に送信する。
【0061】
同図に示すように、リスク予測部150は、説明変数受付部151、モデル適用部152、および予測結果提示部153を含む。このうち説明変数受付部151は、利用者装置300を介して利用者から説明変数の入力を受け付ける。モデル適用部152は、利用者から受け付けた説明変数をリスク予測モデル111に与えてその結果(目的変数)を取得する。予測結果提示部153は、リスク予測モデル111による予測結果に基づく情報を記載した画面を生成し、利用者装置300に送信する。
【0062】
図10に、管理者装置200が備える主な機能を示す。同図に示すように、管理者装置200は、記憶部210、通信部220、および情報設定部230を備える。記憶部210は、管理者から受け付けた情報、疾病リスク予測装置100から送られてくる情報、疾病リスク予測装置100に送信する情報等を記憶する。通信部220は、通信ネットワーク5を介して疾病リスク予測装置100と通信する。情報設定部230は、疾病リスク予測装置100において管理される各種の情報を設定(登録、編集、削除、検索等)するためのユーザインタフェースを管理者に提供する。
【0063】
図11に、利用者装置300が備える主な機能を示す。同図に示すように、利用者装置300は、記憶部310、通信部320、および説明変数受付部330を備える。このうち記憶部310は、利用者から受け付けた情報、疾病リスク予測装置100から送られてくる情報、疾病リスク予測装置100に送信する情報等を記憶する。通信部320は、通信ネットワーク5を介して疾病リスク予測装置100と通信する。説明変数受付部330は、説明変数を入力するためのユーザインタフェースを利用者に提供する。説明変数受付部330は、利用者が入力した説明変数を疾病リスク予測装置100に送信する。
【0064】
続いて、疾病リスク予測システム1において行われる処理について説明する。
【0065】
図12は、疾病リスク予測装置100が、リスク予測モデルの生成に際して行う処理(以下、「リスク予測モデル生成処理S1200」と称する)を説明するフローチャートである。リスク予測モデル生成処理S1200は、例えば、情報取得管理部120によって新たな情報(例えば、歯科健診データ101やレセプトデータ102)が提供されたことや、管理者装置200を介して管理者から実行指示がされたことを契機として実行される。以下、同図とともにリスク予測モデル生成処理S1200について説明する。
【0066】
まず疾病リスク予測装置100の情報取得管理部120が、リスク予測モデルの生成に用いる情報である、歯科健診データ101、レセプトデータ102、特定疾病マスタ103、および診療点数マスタ104を取得する(S1211)。
【0067】
続いて、疾病リスク予測装置100の学習データ生成部130が、歯科健診データ101に基づき歯科健診数値化データ105を生成する処理(以下、「歯科健診データ数値化
処理S1212」と称する。)を行う。
【0068】
図13は、歯科健診データ数値化処理S1212を説明するフローチャートである。歯科健診データ数値化処理S1212は、歯科健診データ101のテーブル毎に行われる。同図に示すように、歯科健診データ数値化処理S1212では、学習データ生成部130の歯科健診データ数値化部131が、歯科健診データ101の回答1012の内容を数値化し(S1311)、数値化したテーブルを歯科健診数値化データ105に登録する。
【0069】
図12戻り、続いて、学習データ生成部130が、レセプトデータ102に基づき特定疾病点数データ106を生成する処理(以下、「特定疾病点数データ生成処理S1213」と称する。)を行う。
【0070】
図14は、特定疾病点数データ生成処理S1213を説明するフローチャートである。尚、同図に示す特定疾病点数データ生成処理S1213は、レセプトデータ102のテーブル毎に行われる。
【0071】
同図に示すように、まず学習データ生成部130の特定疾病点数データ生成部132が、特定疾病マスタ103を参照し、レセプトデータ102から特定の疾病に関する情報を抽出する(S1411)。
【0072】
続いて、特定疾病点数データ生成部132は、抽出した上記情報に対応する診療行為名称1041を診療点数マスタ104から特定し、特定した診療行為名称1041と当該診療行為名称に対応する点数1042とを取得する(S1412)。
【0073】
続いて、特定疾病点数データ生成部132は、抽出した診療行為名称1041、当該診療行為名称に対応する点数1042、およびレセプトデータ102の属性(被保連番)を対応づけたレコードからなるテーブルを特定疾病点数データ106に登録する(S1413)。
【0074】
図12戻り、続いて、モデル生成部140が、歯科健診数値化データ105と特定疾病点数データ106に基づきリスク予測モデルを生成する(S1214~S1216)。
【0075】
まずモデル生成部140の重回帰分析部141が、歯科健診数値化データ105の内容を説明変数とし、特定疾病点数データ106の内容を目的変数として重回帰分析を行う(S1214)。本実施形態では、次式(以下、「式1」と称する。)を回帰式として重回帰分析を行う。式1において、X,X,X,X,・・・は説明変数、Yは目的変数、a,a,a,a,a,・・・は係数(定数)である。尚、説明変数として用いる歯科健診数値化データ105の対象期間、および目的変数として用いる特定疾病点数データ106の対象期間は、リスク予測モデルを用いて予測しようとするリスクの内容に応じて適切な範囲に設定する。
[数1]
(式1) Y=a+a+a+a+a+・・・
【0076】
図15に、上式に適用する説明変数X(歯科健診数値化データ105から取得される値)と目的変数Y(特定疾病点数データ106から取得される値)の一例を示す。同図の括弧内は数値化の方法を示す。特定疾病点数データ106の点数の値1062にはある程度幅がある(3から6桁程度)ので、本実施形態では点数の値1062を自然対数(ln)に変換したものを上式に代入している。
【0077】
重回帰分析部141は、上記の重回帰分析において、各対象者の歯科健診数値化データ
105の内容を上式の説明変数Xに代入して目的変数Yを求め、求めた目的変数Yと当該説明変数に対応する各対象者の特定疾病点数データ106の内容との差が最小になるように係数a、a、a、a3、4、・・・の値を決定する。
【0078】
図12に戻り、続いて、モデル生成部140の説明変数選択部142が、重回帰分析の結果に基づき、目的変数に与える影響の大きい説明変数(例えば、目的変数である特定の疾病の重症化リスクに大きく寄与する説明変数)を、リスク予測モデルの構成に用いる説明変数として選択する(S1215)。
【0079】
図16に重回帰分析の結果の一例を示す。同図における表1600には、歯科健診数値化データ105から取得される説明変数のうち、重回帰分析により糖尿病と相関が強いと判定された説明変数に関する情報(係数a1612標準偏差1613、t値1614、および信頼区間1615)を示している。同表におけるt値1614は、当該説明変数が疾病(糖尿病)の点数(診療点数)にどの程度影響を与えているか(相関の強さ)を示す値である。例えば、説明変数選択部142は、説明変数のt値1614が1.5以上、もしくは-1.5以下であれば相関が強いと判定し、当該説明変数は選択に値すると判定する。同表における信頼区間1615は、その値が小さいほど偶然性が低いことを示す。例えば、説明変数選択部142は、説明変数の信頼区間1615の値が0.05より小さければ偶然性が低いと判定し、当該説明変数は選択に値すると判定する。
【0080】
このように重回帰分析の結果として得られる情報(t値や信頼区間)に基づき、目的変数への寄与が大きい説明変数を選択してリスク予測モデルを構成することで、簡素で精度の高いリスク予測モデルを生成することができ、効率よく疾病リスクを予測することができる。
【0081】
同図における1650の自由度修正済み決定係数1651は、表1600に基づくリスク予測モデルがどの程度母集団を表現しているかを示す。本例では、自由度修正済み決定係数1651が0.8854となっているが、これは上記リスク予測モデルが母集団を9%弱程度表現していることを示す。また、表1650におけるF検定のp値1652は、上記リスク予測モデルが偶然であるものとして棄却できないことを示す。本例では、F検定のp値1652が0に近い値となっているが、これは上記リスク予測モデルが偶然として棄却できるものではないことを示す。
【0082】
図12に戻り、続いて、モデル生成部140のモデル登録部143が、S1215で選択された説明変数に基づきリスク予測モデルを生成し、生成したリスク予測モデルをリスク予測モデル111として登録する(S1216)。尚、リスク予測モデル111は、少なくとも、選択された説明変数を示す情報と、係数a(i=0,1,2,3,・・・)の値とを含む。モデル登録部143によって登録されるリスク予測モデル111の一例を次式(以下、「式2」と称する。)に示す。
[数2]
(式2) Y=a+a+a+a+a+a
【0083】
図17は、疾病リスク予測装置100のリスク予測部150が、利用者装置300を介して利用者から受け付けた説明変数の値をリスク予測モデル111に適用することにより疾病リスクを予測し、予測した疾病リスクを利用者に提示する処理(以下、「リスク予測処理S1700」と称する)を説明するフローチャートである。リスク予測処理S1700は、例えば、利用者装置300を介して、利用者から疾病リスクの提供要求を受け付けたことを契機として実行される。以下、同図とともにリスク予測処理S1700について説明する。
【0084】
まずリスク予測部150の説明変数受付部151が、利用者装置300を介して利用者から説明変数の値(疾病リスクを予測しようとする対象者の説明変数の値)を受け付ける。具体的には、説明変数受付部151が、疾病リスク提示画面113を生成して利用者装置300に送信し、利用者装置300が疾病リスク提示画面113を提示して利用者から説明変数の値を受け付ける(S1711)。
【0085】
図18に、疾病リスク提示画面113の一例を示す。同図に示すように、例示する疾病リスク提示画面113は、説明変数の設定欄1810、目的変数の表示欄1820、および予測実行ボタン1830を有する。利用者が、説明変数の設定欄1810に説明変数の値(本例では5つの説明変数の値)を設定し、予測実行ボタン1830を操作すると、説明変数の設定欄1810に設定した内容が疾病リスク予測装置100に送信される。尚、説明変数の設定欄1810の各説明変数の設定欄にはプルダウンメニューの表示ボタン1811が設けられており、利用者が表示ボタン1811を操作すると各説明変数について選択可能な値が自動表示され、利用者は表示された値をマウス操作等で選択することで簡便に説明変数を設定することができる。
【0086】
図17に戻り、続いて、リスク予測部150のモデル適用部152が、利用者から受け付けた説明変数の値をリスク予測モデル111に適用し、その結果である目的変数(疾病リスク)の値を取得する(S1712)。例えば、リスク予測モデル111が式2で表される場合、モデル適用部152は、同式における説明変数X、X、X、X、Xに、利用者から受け付けた説明変数の値を代入することにより目的変数Yの値を取得する。
【0087】
続いて、リスク予測部150の予測結果提示部153が、取得した目的変数(疾病リスク)の値を利用者装置300に送信し、利用者装置300がこれを受信し、疾病リスク提示画面113を介して利用者に提示する(S1713)。
【0088】
図18に示すように、利用者装置300は、疾病リスク提示画面113の目的変数の表示欄1820に、疾病リスク予測装置100から受信した目的変数(疾病リスク)の値を表示する。本例では、利用者装置300は、目的変数の表示欄1820に、5年後と10年後における被保険者(対象者)の疾病(糖尿病)のリスクを示す値(本例では、目的変数の値)を表示している。尚、この例では5年後と10年後の疾病リスクを表示しているが、この場合、モデル生成部140は、例えば、5年後と10年後における疾病リスクを予測するのに必要な学習データを生成し、夫々について個別にリスク予測モデルを生成する。また、本例では、5年後と10年後の2つの目的変数を提示しているが、例えば、利用者から何年後を提示するかについての指定を受け付け、指定された時期に対応するリスク予測モデルを用いて目的変数の値(疾病リスク)を取得し、取得した目的変数の値を利用者に提示するようにしてもよい。
【0089】
図17に戻り、続いて、リスク予測部150は、利用者が疾病リスク提示画面1800の説明変数の値を変更したか否か(再実行指示の有無)を判定する(S1714)。利用者が説明変数の値を変更した場合(S1714:YES)、処理はS1711に戻り、変更後の説明変数の値について以上と同様の処理を繰り返す。このように、利用者は、疾病リスク提示画面1800を利用して説明変数の値を簡単な操作で変更することができる。そのため、説明変数の値の様々な組合せについての疾病リスクの予測結果を確認することができ、例えば、どのような因子が将来的な疾病リスクにどのように影響するかを確認することができる。
【0090】
一方、利用者が説明変数の値を変更していない場合(S1714:NO)、リスク予測部150は、利用者が疾病リスク提示画面1800の戻るボタン1840を操作した否か
(終了指示の有無)を判定する(S1715)。利用者が戻るボタン1840を操作していなければ(S1715:NO)、処理はS1714に戻る。利用者が戻るボタン1840を操作すると(S1715:YES)、疾病リスク提示画面1800の呼び出し元の画面に制御が移り、リスク予測処理S1700は終了する。
【0091】
以上に説明したように、本実施形態の疾病リスク予測システムによれば、歯科健診データと医科レセプトデータから把握される疾病との関連性に基づく疾病リスクに関する情報を、医療保険者や医療従事者、被保険者等に提供することができる。そのため、歯科健診の受診率の向上や歯科疾患の予防を促すことができ、人の健康寿命の延伸に繋げることができる。またその結果、被保険者の健康維持と医療費の適正化の両立に貢献することが期待できる。
【0092】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加や削除、置換をすることが可能である。
【0093】
例えば、以上の実施形態では、リスク予測モデルを線形回帰モデルにより構成したが、リスク予測モデルは、例えば、他の種類の統計モデルや機械学習モデル(例えば、DNN(Deep Neural Network))等により構成してもよい。
【0094】
上記の各構成、機能部、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、ICカ
ード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0095】
以上に説明した各情報処理装置の各種機能部、各種処理部、各種データベースの配置形態は一例に過ぎない。各種機能部、各種処理部、各種データベースの配置形態は、これらの装置が備えるハードウェアやソフトウェアの性能、処理効率、通信効率等の観点から最適な配置形態に変更し得る。
【0096】
前述した各種のデータを格納するデータベースの構成(スキーマ(Schema)等)は、リソースの効率的な利用、処理効率向上、アクセス効率向上、検索効率向上等の観点から柔軟に変更し得る。
【符号の説明】
【0097】
1 疾病リスク予測システム、5 通信ネットワーク、10 情報処理装置、100 疾病リスク予測装置、101 歯科健診データ、102 レセプトデータ、103 特定疾病マスタ、104 診療点数マスタ、105 歯科健診数値化データ、106 特定疾病点数データ、107 重回帰分析結果、110 記憶部、111 リスク予測モデル、112 リスク予測結果、113 疾病リスク提示画面、120 情報取得管理部、130
学習データ生成部、131 歯科健診データ数値化部、132 特定疾病点数データ生成部、140 モデル生成部、141 重回帰分析部、142 説明変数選択部、143
モデル登録部、150 リスク予測部、151 説明変数受付部、152 モデル適用部、153 予測結果提示部、200 管理者装置、300 利用者装置、S1200 リスク予測モデル生成処理、S1212 歯科健診データ数値化処理、S1213 特定疾病点数データ生成処理、S1700 リスク予測処理、1800 疾病リスク提示画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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