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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】演算装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 9/03 20060101AFI20241217BHJP
   G06F 11/16 20060101ALI20241217BHJP
   B61L 19/06 20060101ALN20241217BHJP
   B61L 27/00 20220101ALN20241217BHJP
   B61L 7/08 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
G05B9/03
G06F11/16 629
B61L19/06
B61L27/00
B61L7/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021092236
(22)【出願日】2021-06-01
(65)【公開番号】P2022184410
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 尉久
【審査官】田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-161798(JP,A)
【文献】特開昭58-225432(JP,A)
【文献】特開2015-185054(JP,A)
【文献】米国特許第06263452(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 9/02 - 9/03
G06F 11/16 - 11/20
B61L 19/06
B61L 27/00
B61L 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の系の回路と、比較器とを備え、
前記複数の系の回路は、それぞれ、入力データを受信する入力部と、前記入力部からの入力データに対して信号処理を行う処理部と、メモリとを有し、
前記比較器は、それぞれの系の回路における前記処理部の処理が互いに一致しているか否かを比較し、いずれかの系の回路における処理部の処理が遅れている場合は、それ以外の系の処理部の処理を遅らせることで各系の処理部の処理のタイミングを合わせ
前記比較器は、それぞれの系の回路における前記メモリからアクセス不可能な状態を示すビジー状態とアクセス可能な状態を示すレディー状態の情報を含むメモリステータス信号を入力し、前記メモリステータス信号が回路ごとでビジー状態とレディー状態が異なる場合は、レディー状態の方の回路の処理部を停止するためのウエイト信号を送り、前記メモリステータス信号の状態がいずれもレディー状態になった場合は、前記ウエイト信号の送信を停止することを特徴とする演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の演算装置において、
前記比較器は、前記入力部からの入力部ステータス信号に基づき、前記処理部の処理が遅れているか否かを判定することを特徴とする演算装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の演算装置において、
前記複数の系の回路は、それぞれ、レジスタを有し、
前記比較器は、前記レジスタからのレジスタステータス信号に基づき、前記処理部の処理が遅れているか否かを判定することを特徴とする演算装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の演算装置において、
複数の系は2つの系で構成され、前記比較器は、前記2つの系の処理部を比較することを特徴とする演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算装置に関し、特に、鉄道保安装置のような、安全に現場機器を制御する保安装置等に用いる演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
信号灯や転てつ機を制御する鉄道保安装置では、装置の故障が重大事故につながる可能性がある。従って、鉄道保安装置では装置が故障した場合においても、装置全体を安全側に制御するフェールセーフによる構成が不可欠となる。ここで、「フェールセーフ」とは、部品等の故障により、重大事故を招くような危険側制御とならないことをいう。危険側制御にならないようにするため、故障を確実に検出する回路を付加することにより、安全側制御となるような構成としている。
【0003】
フェールセーフによく用いられる構成としては、複数のプロセッサで同一処理を行い各プロセッサの処理結果を比較照合する多重系に構成とするものである。このことで1つの系で回路や部品に異常が起きた場合、別な系との違いにより故障を検知する。
【0004】
例えば、特許文献1には、複数のプロセッサで同一処理を行い、すべてのプロセッサの処理結果を比較照合し、比較照合結果が同一の場合に処理は正当と診断する動作比較装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-234144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的なマイコン回路ではプログラムを保存したり演算動作させたりするためのワーク領域として使用するメモリや外部との通信などデータ入出力を行うためのIO等いろいろなインターフェースを持つものが殆どである。
【0007】
しかし、これらについて、特許文献1のように診断する場合、電子部品の特性に固有のばらつきがあると、正常時の処理においても、処理のタイミングがずれる可能性が生じる。この場合は、異常と判断されて、システムが停止等して処理の効率が悪くなる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて、複数の系の処理の比較を的確に行いつつ効率化を図ることができる演算装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、代表的な本発明の演算装置の一つは、複数の系の回路と、比較器とを備え、前記複数の系の回路は、それぞれ、入力データを受信する入力部と、前記入力部からの入力データに対して信号処理を行う処理部と、メモリとを有し、前記比較器は、それぞれの系の回路における前記処理部の処理が互いに一致しているか否かを比較し、いずれかの系の回路における処理部の処理が遅れている場合は、それ以外の系の処理部の処理を遅らせることで各系の処理部の処理のタイミングを合わせ、前記比較器は、それぞれの系の回路における前記メモリからアクセス不可能な状態を示すビジー状態とアクセス可能な状態を示すレディー状態の情報を含むメモリステータス信号を入力し、前記メモリステータス信号が回路ごとでビジー状態とレディー状態が異なる場合は、レディー状態の方の回路の処理部を停止するためのウエイト信号を送り、前記メモリステータス信号の状態がいずれもレディー状態になった場合は、前記ウエイト信号の送信を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、演算装置において、複数の系の処理の比較を的確に行いつつ効率化を図ることができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施例1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施例1の動作例を説明する図である。
図3図3は、本発明の実施例2のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の実施例2の動作例を説明する図である。
図5図5は、本発明の実施例3のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を説明する。本発明は、信号灯や転てつ機等を制御する鉄道保安装置等の安全に現場機器を制御する保安装置等に用いることができる。
【0013】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0014】
図1では、同一回路や同一部品を多重系に構成とすることで1つの系で回路や部品に異常が起きた場合、別な系との違いにより故障を検知する方式を適用している。図1は、2つのマイコン1、2で冗長構成を取る方式である。これをフェールセーフCPUと呼ぶ。これは2つのマイコン1、2がそれぞれ同一周波数、同一プログラムで且つ同一ステップで動作し、比較器17によりこれら2つのマイコン動作を常時監視する。このことで一方のマイコンに異常が起きたかどうかを比較器17で検知するというものである。図1は実施例1のフェールセーフCPUの基本的構成を示したブロック図であり。A系回路9とB系回路10と比較器17で構成されている。
【0015】
A系回路9には、A系マイコン1、A系データ15の入出力を行うA系IO5、A系メモリ3を備えている。A系マイコン1は、A系マイコンバス信号線7で接続され、A系メモリ3とA系IO5もA系マイコンバス信号線7と接続されている。A系メモリ3は自身の状態をA系マイコン1へ報告するA系メモリステータス信号13が出力可能な構成である。
【0016】
A系マイコン1は、A系IO5からの入力データに対して信号処理を行う処理部である。A系メモリ3は、A系マイコン1の処理に必要な情報を一時的に記憶する。これらは、これらの機能を達成するための電子部品で構成される。
【0017】
B系回路10には、B系マイコン2、B系データ16の入出力を行うB系IO6、B系メモリ4を備えている。B系マイコン2は、B系マイコンバス信号線8で接続され、B系メモリ4とB系IO6もB系マイコンバス信号線8と接続されている。B系メモリ4は自身の状態をB系マイコン2へ報告するB系メモリステータス信号14が出力可能な構成である。
【0018】
B系マイコン2は、B系IO6からの入力データに対して信号処理を行う処理部である。B系メモリ4は、B系マイコン2の処理に必要な情報を一時的に記憶する。これらは、これらの機能を達成するための電子部品で構成される。
【0019】
比較器17は、A系マイコンバス信号線7とB系マイコンバス信号線8とそれぞれ接続され、情報を取得可能である。そして、比較器17は、これらの信号線からの情報の比較を行う。このときの比較はA系回路9とB系回路10がそれぞれ同一周波数、同一プログラムで且つ同一ステップで動作する事を前提として行う。そして、それぞれのマイコンバス信号線7、8からのマイコンバス信号の状態を比較する。具体的にマイコンバス信号にはアドレス信号、データ信号、制御信号がある。これら信号の電圧レベルをある時間単位で比較し、1本でも異なる状態を検出すると一方が故障したと判断し比較不一致として異常動作報告をする。これらの構成により、比較器17によりA系回路9とB系回路10の的確な比較を行うことができる。
【0020】
A系メモリ3は、A系マイコン1がA系メモリ3に対して書込や読込を行う時にA系メモリ3自身の状態を示すA系メモリステータス信号13を出力する。これはA系マイコン1が書込や読込を行った際にA系メモリ3内部処理によってビジー状態かレディー状態かを示すものである。このA系メモリステータス信号13がビジー状態ではアクセス不可能な状態を示し、レディー状態ではアクセス可能な状態を示す。すなわちアクセス可能とするためにはレディー状態になるのを待つことになる。
【0021】
同様にB系メモリ4は、B系マイコン2がB系メモリ4に対して書込や読込を行う時にB系メモリ4自身の状態を示すステータス信号14を出力する。これはB系マイコン2が書込や読込を行った際にB系メモリ4内部処理によってビジー状態かレディー状態かを示すものである。このB系メモリステータス信号14がビジー状態ではアクセス不可能な状態を示し、レディー状態ではアクセス可能な状態を示す。すなわちアクセス可能とするためにはレディー状態になるのを待つことになる。
【0022】
図2は、本発明の実施例1の動作例を説明する図である。ここでは各マイコン1、2のステップごとの処理について説明する。
【0023】
A系マイコン1の処理A1において、A系メモリ3に対して書込や読込を行う場合、A系メモリ3がレディー状態の場合に処理A1応答を行う。これによりA系マイコン1では、A系メモリ3からの情報に基づいた処理A1を行う。同時にB系マイコン2の処理B1において、書込や読込を行う場合、B系メモリ4はレディー状態の場合に処理B1応答を行う。これによりB系マイコン2では、B系メモリ4からの情報に基づいた処理B1を行う。
【0024】
比較器17では、A系マイコン1の処理A1とB系マイコン2の処理B1のタイミングが同じである場合、一致しているとして当該処理は正当と判定される。また、A系マイコン1の処理A2とB系マイコン2の処理B2でも同様である。
【0025】
一方、B系マイコン2の処理B3では、B系メモリ4に対して書込や読込を行う場合、B系メモリ4がビジー状態の場合を示す。この場合、B系メモリステータス信号14がビジー状態を示し、B系マイコン2は処理を待機(ウエイト)する。そして、ビジー状態が終了し、レディー状態になったときに処理B3応答を行う。このためビジー状態で待機していた分だけ処理が遅くなる。一方で、A系メモリ3がビジー状態でない場合は、A系マイコン1は処理A3を終えて、処理A4へ移行する。そうすると、A系マイコン1の処理A4のタイミングで、B系マイコン2の処理B3が継続しており、比較器17は不一致を検出する。
【0026】
比較器17が不一致を検知するとA系マイコン1、B系マイコン2のいずれも停止する処理を行う。このため、以降はシステムを再起動して使用する必要がある。
【0027】
実施例1では、比較器17で2つの系のA系マイコン1とB系マイコン2の一致と不一致を検知することで、的確な比較を行うことができる。しかしながら、上記したB系マイコン2の処理B3における不一致は不具合によらない場合が想定される。
【0028】
例えば、マイコン回路に使用しているメモリやIOは電子部品であり同一メーカ、同一型式品であって、不良品でないとしても特性のある程度のばらつきがある。ばらつき度合いは、個々の部品の製造プロセスや経年劣化も影響する。このような場合は、マイコン回路が必ずしも同一動作をすることが保証されない。特に、マイコンに入力される信号の場合である。具体的には入力データや割り込み信号が最も代表的であるが、その他の外部のステータス信号なども考えられる。
【0029】
このような場合、それぞれの系の同一信号が部品のバラツキによって異なるタイミングで入力される。場合によっては故障でないのに、クロックを跨いでしまうような差が出ることもある。そうすると、比較不一致として故障でもないのにかかわらず異常を検出してしまう。また、個々の部品ばらつきは、製造プロセスや経年劣化による影響で時間的な長さが変わる。このような問題を解決する例を実施例2、3に示す。
【0030】
(実施例2)
図3は、本発明の実施例2のハードウェア構成例を示すブロック図である。実施例2では、実施例1と異なる点について主に説明し、同一の箇所には同一の符号を付してあり、特に説明がない部分は同じ説明を省略している。
【0031】
実施例2では、実施例1の構成に対してメモリ3、4のステータス信号13、14を比較器17経由で送信し、マイコン1、2へはウエイト信号18、19を送信する構成である。
【0032】
A系回路9’には、A系マイコン1、データの入出力を行うA系IO5、A系メモリ3を備えている。A系マイコン1はA系マイコンバス信号線7で接続され、A系メモリ3、A系IO5もA系マイコンバス信号線7と接続されている。A系メモリ3は自身の状態を比較器17経由でA系マイコン1へ報告するA系メモリステータス信号13が出力可能な構成である。
【0033】
実施例2もフェールセーフCPUであり、A系回路9’に加え同一構成のB系回路10’がもう1系統存在する。B系回路10’には、B系マイコン2、B系メモリ4、データの入出力を行うB系IO6を備えている。B系マイコン2は、B系マイコンバス信号線8で接続され、B系メモリ4、B系IO6もB系マイコンバス信号線8と接続されている。B系メモリ4は自身の状態を比較器17経由でB系マイコン2へ報告するB系メモリステータス信号14が出力可能な構成である。
【0034】
比較器17は、A系マイコンバス信号線7とB系マイコンバス信号線8にそれぞれ接続され、情報を取得可能である。そして、比較器17は、これらの信号線からの情報の比較を行う。図1の実施例1と異なるのはA系メモリステータス信号13とB系メモリステータス信号14が直接A系マイコン1、B系マイコン2へ送信されていない点である。実施例2の構成ではA系メモリステータス信号13とB系メモリステータス信号14は、どちらも1度比較器17に入力する。そして、A系ウエイト信号18はA系マイコン1へ出力する。B系ウエイト信号19はB系マイコン2へ出力する。
【0035】
ここで比較器17を経由する理由は、それぞれのアクセスに対するメモリ3、4の状態をチェックし、どちらの系もレディー状態かビジー状態かをチェックするためである。仮にそれぞれの系がメモリアクセスをした際に、A系メモリ3がレディー状態、B系メモリ4がビジー状態になる場合について考える。この場合は、A系メモリ3へのアクセスが終了しているのに対してB系メモリ4へのアクセスは待機(ウエイト)させられる。このため、この処理でB系マイコン2が停滞する事になる。
【0036】
このため上述した実施例1の場合は、この差によって比較不一致が発生し異常と判断してしまう。実施例2では、これを回避するため、ビジー状態の方の処理にウエイトされるB系メモリ4へのアクセスに合わせて、A系メモリ3へのアクセスを意図的に遅らせる方式を取る。つまり、ビジー状態となるB系に合わせてA系をウエイトさせる。そして、B系メモリのビジー状態が終了してレディー状態となった場合に、これに合わせてA系メモリ3へのアクセスを再開する。そうする事によって処理が遅れた系のアクセスに合わせることになり不要な比較不一致を回避することが可能となる。
【0037】
次に、同期方法について説明する。例として、マイコン1、2がメモリ3、4へアクセスする際の動作を説明する。
【0038】
A系回路9’のA系マイコン1がA系メモリ3にアクセスするとB系回路10’でもB系マイコン2がB系メモリ4へのアクセス動作が行われる。例えばA系メモリ3へのアクセスは完了したが、B系メモリ4へのアクセスは部品ばらつきにより1サイクル遅れて完了した場合、比較器17ではこの1サイクルずれたタイミングで比較不一致となる。
【0039】
実施例2では、B系メモリ4へのアクセスは部品ばらつきにより1サイクル遅れて完了したとしてもA系メモリ3へのアクセスを意図的に1サイクル遅らせることで同期を合わせるという構成である。具体的にはA系マイコン1、B系マイコン2のそれぞれからA系メモリ3、B系メモリ4へアクセスした時に、A系メモリ3、B系メモリ4がそれぞれ出力するA系メモリステータス信号13、B系メモリステータス信号14を比較器17で監視する。比較器17は、この信号に違いがあった場合に、A系マイコン1とB系マイコン2が、A系メモリ3とB系メモリ4へのそれぞれのアクセスした時にずれが生じたと判断する。このずれが発生した時にA系回路9’とB系回路10’のどちらの系が遅れたのかを判断し、遅れの無い系に対してウエイト信号を発行する。これによりウエイトを発行された系のマイコンはウエイト期間中マイコンの動作を停止させて、遅れている系の動作を待ち、同期が合うまで待つという構成である。
【0040】
図4は、本発明の実施例2の動作例を説明する図である。ここでは各マイコン1、2のステップごとの処理について説明する。
【0041】
ここで、処理A1と処理B1、処理A2と処理B2は実施例1と同様であり、比較器17は一致していると判定する。
【0042】
B系マイコン2の処理B3では、書込や読込を行う場合、B系メモリ4がビジー状態の場合を示す。この場合、B系メモリステータス信号14がビジー状態を示し、B系マイコン2は処理を待機(ウエイト)する。そして、ビジー状態が終了し、レディー状態になったときに処理B3応答を行う。
【0043】
一方、A系マイコン1の処理A3では、A系メモリ3はビジー状態ではなくレディー状態であるため、A系メモリ3へアクセスして処理を進めることができる。しかし、実施例1で示したように、A系マイコン1の処理A3とB系マイコン2の処理B3のタイミングが異なってきて、比較器17が不一致を検出する可能性がある。これを防止するため、A系マイコン1をウエイト状態として処理A3応答を遅らせる。
【0044】
具体的には、比較器17は、A系メモリステータス信号13がレディー状態で、B系メモリステータス信号14がビジー状態であることを受信した場合、比較器17からA系マイコン1に対してA系ウエイト信号18を送る。A系マイコン1はそれに応じて処理を一時停止し、処理A3の応答を遅らせる。また、B系メモリステータス信号14がレディー状態になったら、比較器17はA系マイコン1に対してA系ウエイト信号18の送信を停止する(もしくはウエイトをキャンセルする信号を送信する)。このことで、A系マイコン1の処理A3が再開して、B系マイコン2の処理B3とタイミングの終了のタイミングを合わせることができる。
【0045】
上記の構成により、A系マイコン1の処理A3とB系マイコン2の処理B3のタイミングは同じになり、比較器17は一致を判定して、処理が継続することになる。このため、次の処理A4と処理B4においても、比較器17は一致と判定する。
【0046】
このように実施例2の構成では、ビジー状態の方のメモリに合わせて、ビジー状態でない方(レディ状態)のメモリからの応答を遅らせることにより、各系の処理のタイミングを合わせる。このことで、部品のばらつきなどによる異常を防止し、不必要なシステムの停止を防止する。一方で、ビジー状態以外を起因する場合の異常は検知する。このことで、作動効率を上げながらより的確な故障の検知が可能となる。
【0047】
(実施例3)
図5は、本発明の実施例3のハードウェア構成例を示すブロック図である。実施例3では、実施例2と異なる点について主に説明し、同一の箇所には同一の符号を付してあり、特に説明がない部分は同じ説明を省略している。
【0048】
A系回路9’’には、A系マイコン1、データの入出力を行うA系IO5、A系メモリ3、A系レジスタ11を備えている。A系マイコン1は、A系マイコンバス信号線7で接続され、A系メモリ3、A系IO5、A系レジスタ11もA系マイコンバス信号線7と接続されている。A系メモリ3、A系IO5、A系レジスタ11のそれぞれは、自身の状態(例えば、「レディー状態」か「ビジー状態」)を示すA系メモリステータス信号13、A系IOステータス信号21、A系レジスタステータス信号23として比較器17へ出力可能な構成である。A系レジスタ11は、A系マイコン1に用いるデータを一時的に記憶させる電子部品である。
【0049】
実施例3もフェールセーフCPUであり、A系回路9’’に加え同一構成のB系回路10’’がもう1系統存在する。B系回路10’’には、B系マイコン2、B系メモリ4、データの入出力を行うB系IO6、B系レジスタ12を備えている。B系マイコン2は、B系マイコンバス信号線8で接続され、B系メモリ4、B系IO6、B系レジスタ12もB系マイコンバス信号線8と接続されている。B系メモリ4、B系IO6、B系レジスタ12のそれぞれは、自身の状態(例えば、「レディー状態」か「ビジー状態」)を示すB系メモリステータス信号14、B系IOステータス信号22、B系レジスタステータス信号24として比較器17へ出力可能な構成である。B系レジスタ12は、B系マイコン2に用いるデータを一時的に記憶させる電子部品である。
【0050】
実施例3の構成では、A系メモリステータス信号13、A系IOステータス信号21、A系レジスタステータス信号23、B系メモリステータス信号14、B系IOステータス信号22、B系レジスタステータス信号24を、1度比較器17に入力する。比較器17からは、A系ウエイト信号18をA系マイコン1へ、B系ウエイト信号19をB系マイコン2へ出力可能な構成である。
【0051】
比較器17は、A系マイコンバス信号線7とB系マイコンバス信号線8にそれぞれ接続され、情報を取得可能である。そして、比較器17は、これらの信号線からの情報の比較を行う。比較器17はA系回路9’’とB系回路10’’がそれぞれ同一周波数、同一プログラムで且つ同一ステップで動作する事を前提に、それぞれのマイコンバスの状態を比較する。具体的にマイコンバスにはアドレス信号、データ信号、制御信号があり、これら信号の電圧レベルをある時間単位で比較し、1本でも異なる状態を検出すると一方が故障したと判断し比較不一致として異常動作報告をする。
【0052】
比較器17ではこの動作と共に、A系メモリステータス信号13、A系IOステータス信号21、A系レジスタステータス信号23を監視し、A系マイコン1に対してウエイトを発行するA系ウエイト信号18をA系マイコン1へ出力する。同様にB系メモリステータス信号14、B系IOステータス信号22、B系レジスタステータス信号24を監視し、B系マイコン2に対してウエイトを発行するB系ウエイト信号19をB系マイコン2へ出力する。
【0053】
同期方法については、実施例2と同様である。A系IO5、A系レジスタ11、B系IO6、B系レジスタ12においても、実施例2で説明したA系メモリ3、B系メモリ4と同様に同期を行うことができる。このときのステータス信号は、A系メモリステータス信号13、B系メモリステータス信号14に代えて、A系IOステータス信号21、B系IOステータス信号22、A系レジスタステータス信号23、B系レジスタステータス信号を使用する。これらには、「レディー状態」か「ビジー状態」の情報を含む。A系ウエイト信号18、B系ウエイト信号19も実施例2とA系メモリ3、B系メモリ4の場合と同様の方法で送信できる。
【0054】
このように実施例3の構成では、メモリだけでなく、IO、レジスタからの信号も考慮した構成を構築できる。これにより、より精度の高い比較が可能であるとともに、部品のばらつきなどによる異常を防止し、不必要なシステムの停止を防止する。このことで、作動効率を上げながらより的確な故障の検知が可能となる。
【0055】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態では、A系とB系の2つの系による構成について示したが、複数の系であれば適用でき、例えば、三重系や四重系等、3つ以上の系でもよい。この場合も、比較器で各信号を比較して、比較が不一致の場合は異常を検知する。さらに、処理のタイミングが異なる場合は、上記実施形態で示した方法で遅れていない方のマイコンにウエイト信号を送信して、待機をさせることで、部品のばらつきによる不必要なシステムの停止を防止する。
【符号の説明】
【0057】
1…A系マイコン、2…B系マイコン、3…A系メモリ、4…B系メモリ、5…A系IO、6…B系IO、7…A系マイコンバス信号線、8…B系マイコンバス信号線、9、9’、9’’…A系回路、10、10’、10’’…B系回路、11…A系レジスタ、12…B系レジスタ、13…A系メモリステータス信号、14…B系メモリステータス信号、15…A系データ、16…B系データ、17…比較器、18…A系ウエイト信号、19…B系ウエイト信号、21…A系IOステータス信号、22…B系IOステータス信号、23…A系レジスタステータス信号、24…B系レジスタステータス信号
図1
図2
図3
図4
図5