(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】レンジフード用消火装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/02 20060101AFI20241217BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A62C35/02 B
A62C3/00 A
(21)【出願番号】P 2021101560
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】沖野 洋平
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-129161(JP,U)
【文献】特開平9-236291(JP,A)
【文献】特開平7-328140(JP,A)
【文献】特開2004-242993(JP,A)
【文献】実公昭50-12610(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 3/00
35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンおよび整流板を備えたレンジフードの前記整流板に、消火剤を充填した消火剤容器を消火剤の噴出口を下向きにした状態で1又は2以上取り付けてなるレンジフード用消火装置であって、
前記消火剤容器は、前記噴出口を有する口金と、前記口金の根本に当該口金を囲繞するように形成された上面視で円形でない形状を有する凸部と、を備え、
前記整流板の所定位置には、前記凸部に対応した形状を有し前記口金を挿入可能な開孔が形成されており、
前記消火剤容器は前記整流板のレンジフードの内側になる面に配置されて前記凸部が前記開孔に嵌合され、当該口金の前記整流板より突出した部位が係止手段によって係止されることで、前記消火剤容器が前記整流板に固定されていることを特徴とするレンジフード用消火装置。
【請求項2】
前記口金の外周には雄ネジが形成され、前記係止手段は前記雄ネジに螺合可能なナットであることを特徴とする請求項1に記載のレンジフード用消火装置。
【請求項3】
前記開孔は、前記凸部の最小幅と同一の幅を有する長孔として形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンジフード用消火装置。
【請求項4】
前記消火剤容器の、ファンの回転により生じる整流板上部の気流の上流側に、前記消火剤容器へ向かう空気の流れを遮断して迂回させる遮蔽板が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のレンジフード用消火装置。
【請求項5】
前記消火剤容器は放熱構造を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のレンジフード用消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、厨房のレンジフードに設けられコンロによる火災に対応して消火剤を散布する消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンロを備えたレンジで火災が発生した際に消火剤を散布する消火装置が知られている。また、レンジ用の消火装置に関する発明としては、例えば特許文献1や2、3に記載されているものがある。
このうち、特許文献1には、レンジフード内に消火剤を封入した消火器(消火剤容器)と消火剤噴出部および両者を接続する管路を設けるとともに、レンジフードの外周に蛇腹状の耐火伸縮体を縮小状態で且つロック状態で配設し、消火剤の噴射に伴って耐火伸縮体のロック状態を解除して伸張させるための消火剤噴き出し手段を設けるようにした発明が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、レンジフード内に消火剤容器と消火剤噴射口および接続管を設けるとともに、ガスコンロの天板に消火剤が満遍なく降りかかるように、噴射口としてスリット状の拡散ノズルを採用した発明が記載されている。
特許文献3には、液状の消火剤を無加圧で貯留すると共に当該消火剤を滴下する吐出口を備える貯留容器と、貯留容器を建造物内に設置するための設置手段と、火気発生源の所定の温度上昇により吐出口を火気発生源の上方からの消火剤滴下状態に切り替える作動手段とを備える自動消火装置に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-246482号公報
【文献】特開2018-146492号公報
【文献】特開2006-325952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1と2に記載されている消火装置は、いずれも消火剤容器と噴射口とを管(パイプ)で接続するようにしているとともに、レンジフードの外周に耐火伸縮体を備えたり、制御部に通信部を備えたりするなど構造が複雑である。
そのため、レンジフード内に消火装置を組み付ける際あるいは消火剤容器の交換やメンテナンス、作動後の復旧を行う際に、専門知識を有する者が作業を行う必要があるとともに、作業が大掛かりになる。また、消火剤容器の配置を工夫していないため、レンジフードが大型化してしまうという課題がある。
【0006】
また、特許文献3に記載されている消火装置は、貯留容器を設置する設置手段として、コンロの上方に位置する構造物に固定可能な取り付け土台と、取り付け土台により片持ち状態で支持されたガイドと、ガイドに沿ってスライド移動可能に支持されると共に貯留容器を保持する移動体とを備えた複雑な構成を有しているため、メンテナンス作業が煩雑であるとともに、作業装置が大型化してしまうという課題がある。
【0007】
本発明は上記のような背景の下になされたもので、その目的とするところは、専門知識を有していない者であっても、レンジフードへの消火剤容器の取付けや交換、メンテナンス、復旧等を簡単に行うことができるレンジフード用消火装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、レンジフードの大型化を回避しつつレンジフード内へ消火剤容器を配置することができるレンジフード用消火装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本出願に係る発明は、
ファンおよび整流板を備えたレンジフードの前記整流板に、消火剤を充填した消火剤容器を消火剤の噴出口を下向きにした状態で1又は2以上取り付けてなるレンジフード用消火装置において、
前記消火剤容器は、前記噴出口を有する口金と、前記口金の根本に当該口金を囲繞するように形成された上面視で円形でない形状を有する凸部と、を備え、
前記整流板の所定位置には、前記凸部に対応した形状を有し前記口金を挿入可能な開孔が形成されており、
前記消火剤容器は前記整流板のレンジフードの内側になる面に配置されて前記凸部が前記開孔に嵌合され、当該口金の前記整流板より突出した部位が係止手段によって係止されることで、前記消火剤容器が前記整流板に固定されるように構成したものである。
ここで、「円形でない形状」の代表的な例は四角形その他の多角形である。
【0009】
上記のような構成によれば、専門知識を有していない者であっても、レンジフードへの消火剤容器の取付けや交換、メンテナンス、復旧等を簡単に行うことができる消火装置を実現することができる。また、整流板の所定位置に予め開孔が形成されているため、消火剤容器を容易かつ正確に整流板の所定位置に取り付けることができる。
さらに、消火剤容器と噴出口を接続する管が不要であるため、レンジフードの大型化を回避しつつレンジフード内へ消火剤容器を配置することができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記口金の外周には雄ネジが形成され、前記係止手段は前記雄ネジに螺合可能なナットであるようにする。
かかる構成によれば、スパナやレンチなどの一般的な工具によって容易に消火剤容器をレンジフードの整流板に結合して取り付けることができる。
【0011】
さらに、望ましくは、前記開孔は、前記凸部の最小幅と同一の幅を有する長孔として形成されているように構成する。
かかる構成によれば、開孔に沿って凸部を移動させてから係止手段で係止することによって、消火剤容器の噴出口の位置を調整することができ、それによって噴出される消火剤の噴出位置を最適に調整することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記消火剤容器の、ファンの回転により生じる整流板上部の気流の上流側に、前記消火剤容器へ向かう空気の流れを遮断して迂回させる遮蔽板が設けられているようにする。
かかる構成によれば、消火剤容器にコンロからの熱気流が直接当たって消火剤容器の温度が過度に上昇するのを防止することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記消火剤容器は放熱構造を備えるように構成する。
上記のような構成によれば、整流板からの熱伝達によって消火剤容器の温度が上昇したとしても容器外周から放熱することで、消火剤容器の温度が過度に上昇するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレンジフード用消火装置によれば、専門知識を有していない者であっても、レンジフードへの消火剤容器の取付けや交換、メンテナンス、復旧を簡単に行うことができる。また、レンジフードの大型化を回避しつつレンジフード内へ消火剤容器を配置することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るレンジフード用消火装置の一実施形態を示す正面図である。
【
図2】
図1の実施形態の消火装置の構成を示す側面図である。
【
図3】(A)は実施形態の消火装置を構成する消火剤容器の詳細を示す側面図、(B)はレンジフードを構成する整流板の詳細を示す底面図である。
【
図4】(A)は整流板の開口形状の第1の変形例を示す底面図であり、(B)は整流板の開口形状の第2の変形例を示す底面図である。
【
図5】(A)は消火剤容器の第1の変形例を示す底面図であり、(B)は消火剤容器の第2の変形例を示す側面図である。
【
図6】実施形態の消火装置の変形例を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1および
図2は、本発明に係るレンジフード用消火装置を適用したレンジ台およびレンジフードの一実施形態が示されている。
図1および
図2のうち、
図1は正面図、
図2は側面図である。本実施形態の消火装置は、厨房などに設置されているレンジ台10の上方にあるレンジフード20内に設けたものである。
【0017】
図1および
図2に示すように、レンジ台10は、上部に3個のガスコンロ11A,11B,11Cが設けられ、その上方に該レンジ台10全体を覆うようにひと回り大きなレンジフード20が設けられている。
レンジフード20は、ステンレス鋼板等で形成された上面視で矩形状をなすフード部21Aおよび機器収納部21Bとからなる筐体21を備え、筐体21の上部に排気ダクト22が設けられ、機器収納部21Bの内部には排気用のファン23および回転用モータ24が配設されている。また、フード部21Aの前面枠には、換気や照明のオン、オフを指示するスイッチ押しボタンを有する操作部25が設けられているとともに、操作部25の背部の前面枠内側には照明用ランプ26(
図2参照)が配設されている。そして、この照明用ランプ26の下方は半透明なカバーにより覆われている。
【0018】
さらに、フード部21Aは下面全体が開口されており、筐体21の下部には、フード部21Aの開口を覆うように、該開口よりもひと回り小さな平板状の整流板27が配設されている。整流板27は厚さが約1mmの金属板等の不燃性材料で形成されており、ファン23が回転されると、整流板27の外縁とフード部21Aの枠体との間に形成されている幅数cmの隙間より空気が吸入され、整流板27の背面領域(レンジフードの内側の面)から排気ダクト22を通って排出されるように構成されている。また、レンジフード内側の整流板27とファン23との間にはフィルタ28が設けられている。排気ダクト22は水平面内で90度向きを変えて取り付けることができる。
【0019】
整流板27は、前後4箇所に設けられている係止部がフード部21Aの上壁下面に設けられている吊り金具29A,29B(
図2参照)により、フード部21Aの上壁と所定の間隔をおいて水平となるように吊下され、取り外すことができる構成されている。なお、整流板27の位置は、フード部21Aの下端とほぼ同一の高さ位置である。また、図示しないが、整流板27は、周縁部を上方へ折り曲げることで、周縁部に沿って上方へ突出する高さが10mm程度のリブが形成され、変形を起こしにくいように構成されている。
【0020】
吊り金具29A,29Bのうち、後側の吊り金具29Bは引っ掛け式であり、前側の吊り金具29Aはバネを内蔵したスットパボタンを備え、スットパボタンを指で押し込むとロックが外れて整流板27を上下に移動させることができ、スットパボタンから指を離すと整流板27の側部のフランジをストッパで挟み込んでロックし、整流板27の上下動を阻止し固定するように構成されている。
【0021】
本実施形態においては、上記整流板27のガスコンロ11A,11B,11Cの真上に相当する部位に、消火剤を充填した消火剤容器30A,30B,30Cが、噴出口を下向きにした状態でそれぞれ取り付けられている。消火剤容器30A,30B,30Cは、例えば円筒状をなす金属製の容器の一方の円板部に、外周に雄ネジが形成された噴出口となる口金を設けたもので、整流板27の所定位置(コンロの真上)には消火剤容器30A,30B,30Cの口金が挿通される開孔が形成されている。
【0022】
図3(A)には実施形態の消火装置を構成する上記消火剤容器30A,30B,30Cの具体例として消火剤容器の詳細を示す側面図が、また
図3(B)にはレンジフードを構成する整流板27の詳細を示す底面図が示されている。
図3(A)に示すように、消火剤容器30A,30B,30Cは、底壁中央に消火剤の噴出口となる口金31が設けられ、この口金31の外周に雄ネジが形成されているとともに、口金31の根本(基部)には、整流板27の厚みとほぼ同じ高さを有し上面視で四角形をなす回り止め用の凸部32(
図5参照)が形成されている。
また、本実施形態の消火装置は、上記消火剤容器30A,30B,30Cの口金31外周の雄ネジに螺合するリングナット33を備えている。
【0023】
また、図示しないが、口金31内には、常温において固化し噴出口を密閉する低溶融金属もしくは接着剤で閉塞された密栓構造が設けられており、口金の温度が高くなると低溶融金属もしくは接着剤が溶融して噴出口が解放されて容器内部の消火剤を噴出するように構成されている。開口部を塞いでいたハンダなどのヒューズメタルが火炎を受けて溶融落下することで、その開口部から消火剤が放出される仕組みの消火装置に関しては、例えば前述の特許文献3や特開平7-328140号公報、特開2004-242993号公報等に記載されており、それらの発明と同様に構成することができる。
【0024】
なお、低溶融金属もしくは接着剤の好ましい溶融温度は例えば80℃~100℃である。この溶融温度は、通常使用時の実測の結果として導き出したものであり、コンロで油を加熱し油温が180℃のとき整流板の温度が約60℃であったため、通常使用時の実測値より充分高い温度80℃~100℃を溶融温度とした。コンロとレンジフードの組み合わせにより温度の観測データが変わる可能性があるため、密栓構造は、溶融金属もしくは接着剤の好ましい溶融温度が何段階に分かれているものを事前に準備しておいて、装着するレンジフードとコンロの組み合わせに応じて使い分けるようにしても良い。
消火剤容器30A,30B,30Cは、ガス系、粉末系、水・泡系のいずれであっても良く、容器内部に充填される消火剤としては、例えばガス系の場合は二酸化炭素やハロン1301、粉末系の場合は炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムなど、水・泡系の場合は強化液、潤滑剤、機械泡(界面活性剤)や化学泡等がある。
【0025】
一方、整流板27の所定位置(実施例では3箇所)には、
図3(B)に示すように、上記凸部32が嵌合可能な矩形状の開孔27aが形成されており、この開孔27aに消火剤容器30A,30B,30Cの口金31基部の凸部32を嵌合させた後、リングナット33を口金31外周の雄ネジに螺合させて、リングナット33と凸部31aとの間に整流板27を挟み込むことによって消火剤容器30A,30B,30Cが整流板27に固定するようになっている。
【0026】
なお、凸部32の高さを整流板27の厚みよりも大きく形成して、リングナット33の接合側の面に、凸部32の対角線よりも大きな径を有する凹部を形成するようにしても良いし、リングナット33と凸部32との間に、凸部32の対角線よりも大きな径の開口を有するワッシャーを介挿して、整流板27の厚みと凸部32の高さの差を吸収して確実に整流板27を挟み込んで消火剤容器30A,30B,30Cを整流板27に取り付けるように構成しても良い。
【0027】
上記のように、消火剤容器30A,30B,30Cの口金31の基部に凸部32を設け、整流板27には凸部32が嵌合可能な矩形状の開孔27aを設けることによって、リングナット33を口金31外周の雄ネジに螺合させる際に、容器が連れ回りするのを防止して取付け作業性を向上させることができる。消火剤容器30A,30B,30Cの形状は円筒状に限定されるものでなく、角が丸みを有する矩形筒状あるいは全体が球をなす形状であっても良い。
【0028】
なお、上記実施例では、整流板27の開孔27aを矩形状としたものを示したが、
図4に整流板27の開口形状の変形例を示している。
このうち、
図4(A)は開口形状の第1の変形例として、凸部32の最小幅よりも僅かに大きい幅を有し整流板27に前後方向(図では上下方向)に細長い長方形の開孔(スリット)27bを形成したもの、
図4(B)は開口形状の第2の変形例として、凸部32の最小幅よりも僅かに大きい幅を有する十字形の開孔(スリット)27cを形成したものである。
【0029】
上のように構成することにより、整流板27に対する消火剤容器30A,30B,30Cの取り付け位置を前後方向または前後および左右方向に調整し、消火剤の噴出口の位置をコンロの中心に正確に合致させることができる。ただし、消火剤の噴射は広がるため、通常は調整しなくてもよく、調整機構は特にコンロとレンジフードの距離が大きいような場合に設けると良い。また、整流板27にスリット27bを形成した場合、凸部32の係合部分以外は穴が開いたまま残るので、耐熱性樹脂等の材料で形成された返しのついた長尺なカバー部材を用意しておいて、スリットの穴にはめ込むことで穴を塞ぐようにすると良い。スリット27cについても同様である。
【0030】
図5には上記消火剤容器30A,30B,30Cの変形例が示されている。
このうち、
図5(A)は消火剤容器の第1の変形例として上記消火剤容器30A,30B,30Cの外周面に放射状に広がる複数枚の冷却フィン34Aを設けたもの、
図5(B)は消火剤容器の第2の変形例として消火剤容器30A,30B,30Cの外周面に水平方向に広がる互いに平行な複数枚の円板状の冷却フィン34Bを設けたものである。なお、変形例の形状特徴を分かりやすく表すため、(A)の消火剤容器の第1の変形例は上記消火剤容器30A,30B,30Cの底面図、(B)の消火剤容器の第2の変形例は側面図で表した。
このように、消火剤容器30A,30B,30Cの外周面に冷却フィン34Aまたは34Bを設けることにより、口金及び整流板27からの熱の伝達によって容器の温度が上昇したとしても、冷却フィン34A,34Bからの放熱により容器を冷却して容器の温度が高くなり過ぎないようにすることができる。
この点は、上記でも説明した通り、平常時にコンロで油を加熱し油温が180℃のとき整流板の温度が約60℃であったことから、消火剤タンクの周囲を通過する気流の温度も60℃程度となる。消火剤タンクは整流板よりコンロに近い口金を介して熱源から60℃以上の熱を輻射熱で吸収し蓄えることがあるため、その際は消火剤タンクに設けた冷却フィンを介して放熱することで、消火剤タンクの温度が高くなりすぎないようにすることができる。この作用により、通常時は口金の低溶融金属もしくは接着剤の温度が溶融温度に達しない。
【0031】
図6には上記実施形態の消火装置の変形例として要部平面図が示されている。
この変形例は、整流板27に取り付けられた消火剤容器30A,30B,30Cに、整流板27とレンジフードの枠体との隙間から流入した熱い空気が消火剤容器30A,30B,30Cに触れることで消火剤容器の温度が大きく上昇しないように工夫したもので、各消火剤容器30A,30B,30Cの気流上流側に、消火剤容器へ向かう空気の流れを遮断して迂回させる遮蔽板35A,35B,35Cを設けたものである。
【0032】
また、遮蔽板35A~35Cは、空気抵抗を減らすため、
図6のように半円形状もしくは流線型とするのが望ましい。なお、遮蔽板35A~35Cはビス等によって整流板27に直接取り付けても良いが、遮蔽板35A~35Cの端部に中央に開口を有するフランジ部を設けて縦断面形状がL字状をなすように形成して、遮蔽板35A~35Cをリングナット33によって整流板27に取り付ける際に、消火剤容器と整流板27との間にこのフランジ部を挟み込むことで固定するように構成しても良い。遮蔽板35A~35Cの高さは、消火剤容器の高さと同一もしくは若干大きくする。
【0033】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、消火剤容器30A,30B,30Cの口金基部の凸部32の形状を上面視で矩形状としているが、矩形状に限定されるものでなく、六角形その他の多角形あるいは星形等の形状であっても良い。
また、前記実施形態では、レンジ台に3個のコンロが設置されているレンジフードに適用したものについて説明したが、コンロや消火剤容器は3個に限定されず、幾つであっても良い。
【0034】
さらに、消火剤の量を多くしたい場合、または、レンジフード20の整流板27の裏側の空間が狭い場合は、整流板27の消火剤設置位置にコンロ側に膨らんだ膨出部を形成し、整流板の裏側に消火剤容器を収納する空間を広く確保するように構成してもよい。
また、前記実施形態では、消火剤容器30A,30B,30Cの口金31に、リングナット33を螺合させることで容器を整流板27に結合しているが、口金31の外周にリング状の溝を設けて、この溝にクリップリングのような抜け止め用の止め輪を着脱可能に係合させることによって容器を整流板27に結合できるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0035】
10 レンジ台
11A,11B,11C ガスコンロ
17a~17g 送水用のパイプ
20 レンジフード
21 筐体
21A フード部
21B 収納部
22 排気ダクト
23 ファン
24 回転用モータ
25 操作部
26 照明用ランプ
27 整流板
27a 開孔
27b 開孔(スリット)
28 フィルタ
29A,29B 吊り金具
30A,30B,30C 消火剤容器
31 口金
32 凸部
33 リングナット
34A,34B 冷却フィン
35A,35B,35C 遮蔽板