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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】環境形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20241217BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B65G1/00 521A
B65G1/00 521C
G01N17/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021105160
(22)【出願日】2021-06-24
(65)【公開番号】P2023003842
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴生
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 翔平
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 準也
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151296(JP,A)
【文献】特開2003-302160(JP,A)
【文献】特開2012-153483(JP,A)
【文献】実公昭53-019472(JP,Y2)
【文献】特開2021-032601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00-1/20
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚配置領域を有する物品配置室と、棚と、送風口と、吸気口と、を有し、
前記送風口は前記物品配置室の特定の壁面側にあり、
前記吸気口は前記物品配置室の前記特定の壁面側であって、前記送風口よりも上の高さの位置及び/又は下の高さの位置にあり、
前記物品配置室内の空気を前記吸気口から吸引し前記送風口から前記物品配置室に送風する環境形成装置であって、
前記配置領域と前記特定の壁面の間に空隙があり、前記空隙内であって前記送風口と前記吸気口との間の位置に邪魔板部が設けられ、
前記棚の底面には、当該底面であって前記特定の壁面と対向する壁面側に位置する領域に通気開口があり、前記底面の他の領域は、実質的に封鎖されており、
前記物品配置室は、開口面を有する本体部と、前記開口面を覆う扉を有し、
前記開口面に内蓋部材が設けられ、当該内蓋部材に開口があり、当該開口から前記棚が出し入れされることを特徴とする環境形成装置。
【請求項2】
前記棚上の物品が前記通気開口側に寄ることを抑制する移動抑制手段が、前記棚に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の環境形成装置。
【請求項3】
棚受け部材を有し、前記棚受け部材には、延出領域と、前記棚が設置される載置領域があり、
前記載置領域と前記物品配置室の壁面との間に前記延出領域があり、前記延出領域は、実質的に封鎖されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境形成装置。
【請求項4】
前記棚が複数あって複数段に設置され、
前記送風口は前記特定の壁面の中央部にあり、前記送風口の上下に前記吸気口を有し、
前記邪魔板部として、最上段の棚の底以上の高さに設けられた上方邪魔板部と、最下段の棚の上端以下の高さに設けられた下方邪魔板部を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境形成装置。
【請求項5】
前記送風口は前記特定の壁面側の上下方向の一端側に設けられ、前記吸気口は前記特定の壁面側の上下方向の他端側に設けられ、前記邪魔板部は前記他端側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品配置室の内部に所望の環境を形成することができる環境形成装置に関するものであり、特に物品を載置する棚が内蔵された環境形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境形成装置は、温度環境(例えば、高温や低温)や湿度環境(例えば、高湿度や低湿度)等の所定の環境を物品配置室に人工的に作り出すことができるものである。
環境形成装置は、例えば物品を所定の環境下において保存する用途や、環境試験を行う用途に使用される場合がある。
環境形成装置には、内部に複数の棚が設置されたものがある。
従来技術の環境形成装置で採用される棚板等には、全面に開口が設けられているものがある。当該開口は、物品配置室内の温度ばらつきを小さくすることを目的として形成されたものである。
即ち従来技術においては、棚板等の開口によって、棚の上下方向に空気を通過させ、物品配置室内の温度等の均一化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-324089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境形成装置は、一般に送風機を有し、当該送風機が発生する送風によって、物品配置室内の空気を循環させている。一般に、物品配置室に送風する送風口は、一つ又は少数である。そして一つ又は少数の送風口から、物品配置室に温調等された空気が送風される場合がある。
一方、棚は、相当の載置面積を有するものであるから、送風口から近い領域と、送風口から遠い領域が存在する。そして棚の送風口から近い領域は、風の風速が速い。そのため、図9の様に、送風口から近い領域に設けられた棚板等の開口から、送風が棚板の上下方向に抜ける場合がある。
その結果、送風口から遠い領域に到達する風量が減少する場合がある。そのため、送風口に近い領域は、早期に所定の温度等に到達するが、送風口から遠い領域は、所定の温度等に到達するのが遅れる又は到達しない場合がある。
【0005】
また図9の様に、棚と送風口が設けられた壁面との隙間に送風が流れ、棚が設置された領域に至ることなく、送風が吸気口に流れてしまう場合もある。即ち、送風がショートサーキット状態となり物品に当たることなく戻ってしまう場合があった。
【0006】
本発明は、従来技術の上記した課題を解決するものであり、物品配置室内を流れる送風を、比較的均一にすることができる環境形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための態様は、棚配置領域を有する物品配置室と、棚と、送風口と、吸気口と、を有し、前記送風口は前記物品配置室の特定の壁面側にあり、前記吸気口は前記物品配置室の前記特定の壁面側であって、前記送風口よりも上の高さの位置及び/又は下の高さの位置にあり、前記物品配置室内の空気を前記吸気口から吸引し前記送風口から前記物品配置室に送風する環境形成装置であって、前記棚配置領域と前記特定の壁面の間に空隙があり、前記空隙内であって前記送風口と前記吸気口との間の位置に邪魔板部が設けられ、前記棚の底面には、当該底面であって前記特定の壁面と対向する壁面側に位置する領域に通気開口があり、前記底面の他の領域は、実質的に封鎖されていることを特徴とする環境形成装置である。
上記した課題を解決するための具体的態様は、棚配置領域を有する物品配置室と、棚と、送風口と、吸気口と、を有し、前記送風口は前記物品配置室の特定の壁面側にあり、前記吸気口は前記物品配置室の前記特定の壁面側であって、前記送風口よりも上の高さの位置及び/又は下の高さの位置にあり、前記物品配置室内の空気を前記吸気口から吸引し前記送風口から前記物品配置室に送風する環境形成装置であって、前記配置領域と前記特定の壁面の間に空隙があり、前記空隙内であって前記送風口と前記吸気口との間の位置に邪魔板部が設けられ、前記棚の底面には、当該底面であって前記特定の壁面と対向する壁面側に位置する領域に通気開口があり、前記底面の他の領域は、実質的に封鎖されており、前記物品配置室は、開口面を有する本体部と、前記開口面を覆う扉を有し、前記開口面に内蓋部材が設けられ、当該内蓋部材に開口があり、当該開口から前記棚が出し入れされることを特徴とする環境形成装置である
【0008】
ここで、「送風口が物品配置室の特定の壁面側にあり」とは、送風口が特定の壁面自体に設けられていてもよく、天井壁や底面壁等であって、特定の壁面の近傍に設けられていてもよいという意味である。同様に、「吸気口は前記物品配置室の前記特定の壁面側であって」とは、吸気口が特定の壁面自体に設けられていてもよく、天井壁や底面壁等であって、特定の壁面の近傍に設けられていてもよいという意味である。
「実質的に封鎖」とは、完全に封鎖されている場合のみを意味するものではない。「実質的に封鎖」には、積極的に風を流すために設けられたものでない未封鎖部分を有するものも含む。また、「実質的に封鎖」には、環境形成装置が使用される際に、底面の他の領域に設けられた開口が物又は板等で全部又は大部分が塞がれるものも含む。
本態様の環境形成装置は、棚の底面であって特定の壁面と対向する壁面側に位置する領域に通気開口がある。前記した様に、送風口は特定の壁面側にあるから、通気開口は送風口から遠い位置にある。棚の底面の他の領域は実質的に封鎖されているので、棚の送風口から近い領域では、棚の上下方向に送風が流れにくい。
そのため送風口からの風は、特定の壁面側から送風され、送風の多くが対向する壁面側にまで至る。
また本態様の環境形成装置では、棚配置領域と特定の壁面の間に空隙があり、空隙内であって送風口と吸気口との間の位置に邪魔板部が設けられている。そのため送風口からの送風が、直接的に吸気口に流れてしまうことが抑制される。
【0009】
上記した態様において、前記棚上の物品が前記通気開口側に寄ることを抑制する移動抑制手段が、前記棚に設けられていることが望ましい。
【0010】
本態様によると、物品がずれ動いて通気開口が塞がれてしまうことが抑制される。
【0011】
上記した各態様において、棚受け部材を有し、前記棚受け部材には、延出領域と、前記棚が設置される載置領域があり、前記載置領域と前記物品配置室の壁面との間に前記延出領域があり、前記延出領域は、実質的に封鎖されていることが望ましい。
【0012】
本態様の環境形成装置は、棚受け部材を有し、当該棚受け部材の載置領域に棚が設置される。ここで棚受け部材は、載置領域と物品配置室の壁面との間に延出領域があるので、棚の幅を比較的狭くし、棚を引き出すための開口を小さくすることができる。
その結果、棚を出し入れする際における物品配置室の空気の出入りを少なくすることができ、棚を出し入れすることによる物品配置室内の環境変化を比較的小さいものとすることができる。
【0013】
上記した各態様において、前記物品配置室は、開口面を有する本体部と、前記開口面を覆う扉を有し、前記開口面に内蓋部材が設けられ、当該内蓋部材に開口があり、当該開口から前記棚が出し入れされることが望ましい。
【0014】
本態様の環境形成装置によると、物品配置室内の空間が、実質的に内蓋部材と扉によって二重に封鎖されている。
また内蓋部材に開口があり、当該開口から前記棚が出し入れされる。そのため棚を出し入れする際の実質的な開口面積が小さく、棚を出し入れすることによる物品配置室内の環境変化が比較的小さい。
【0015】
上記した各態様において、前記棚が複数あって複数段に設置され、前記送風口は前記特定の壁面の中央部にあり、前記送風口の上下に前記吸気口を有し、前記邪魔板部として、最上段の棚の底以上の高さに設けられた上方邪魔板部と、最下段の棚の上端以下の高さに設けられた下方邪魔板部を有することが望ましい。
【0016】
本態様の環境形成装置によると、送風が物品に当たることなく戻ってしまうことが抑制される。
【0017】
上記した各態様において、前記送風口は前記特定の壁面側の上下方向の一端側に設けられ、前記吸気口は前記特定の壁面側の上下方向の他端側に設けられ、前記邪魔板部は前記他端側に設けられていることが望ましい。
【0018】
本態様の環境形成装置によると、送風が物品に当たることなく戻ってしまうことが抑制される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の環境形成装置は、物品配置室内の送風を比較的均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態の環境形成装置の斜視図である。
図2】本発明の実施形態の環境形成装置の分解斜視図である
図3図1の環境形成装置の扉を開いた状態の正面図である。
図4図1の環境形成装置の物品配置室周辺を概念的に示す断面図である。
図5】棚を棚受け部材に載置した状態を示し、(a)はその斜視図であり、(b)はその平面図である。
図6】(a)、(b)は、棚上の物品の挙動を示す説明図である。
図7】(a)、(b)は、本発明の他の実施形態の環境形成装置の物品配置室周辺を概念的に示す断面図である。
図8】本発明のさらに他の実施形態の環境形成装置の物品配置室周辺を概念的に示す断面図である。
図9】従来技術の環境形成装置の物品配置室周辺を概念的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の環境形成装置1は、例えばワクチン等の薬剤を極低温で保管する用途に使用することができるものである。
本実施形態の環境形成装置1は、図2の様に開口面2を有する本体部3と、当該開口面2を覆う扉5を有している。
本体部3は、断熱壁で構成された筐体である。本体部3は、図2図4の様に、天面壁10、底面壁11、右側面壁12、左側面壁13及び、裏面壁15を有している。
扉5は、図示しないヒンジで本体部3に接続されており、本体部3の開口面2を開閉するものである。
【0022】
図4のように、本実施形態では、本体部3及び扉5によって断熱槽が形成されている。断熱槽の内部には仕切りがあり、断熱槽の内部が大きく物品配置室20と、空調部21に分かれている。仕切りが、物品配置室20の奥面壁16となる。
本実施形態では、扉5と、本体部3の天面壁10、底面壁11、右側面壁12及び、左側面壁13と、奥面壁16とによって、物品配置室20が構成されている。
【0023】
奥面壁16には、中央に送風口22が設けられている。また奥面壁16の上下の端部に吸気口25、26が設けられている。送風口22と吸気口25、26によって、物品配置室20と空調部21が連通している。本実施形態では、送風口22が、物品配置室20の特定の壁面たる奥面壁16にあり、吸気口25は、特定の壁面たる奥面壁16であって、送風口22よりも上の高さの位置にある。また吸気口26は、特定の壁面たる奥面壁16であって、送風口22よりも下の高さの位置にある。
【0024】
空調部21内には空調機器30内蔵されている。また送風口22の近傍には送風機32が設けられている。
空調機器30は、冷却器31及び加熱器33によって構成されている。冷却器31は、冷却装置の蒸発器である。冷却装置は、摂氏マイナス70度未満に冷却する能力を有するものであることが望ましい。
これらの機器はいずれも公知であるから詳細な説明を省略する。
【0025】
送風機32を起動すると、物品配置室20内の空気が上下の吸気口25、26から空調部21内に導入される。そして空調部21が通風状態となり、空調機器30に空気が接触して熱交換がなされ、中央の送風口22から物品配置室20内に調整後の空気が吹き出される。
また送風口22の近傍に、図示しない温度センサーと湿度センサーが設けられている。
環境形成装置1を使用する際には、送風機32を運転し、温度センサー及び湿度センサーの検出値が設定環境の温度及び湿度に近づく様に、空調機器30を制御する。
【0026】
本実施形態の環境形成装置1では、物品配置室20内に複数の棚40a~40eが設置されている。また本体部3の開口面2に、内蓋部材41が設けられている。なお棚40の数は任意である。
内蓋部材41は、複数の開口43が設けられた板である。開口43は、いずれも横方向に長い長方形である。
【0027】
棚40は、引き出し状であり、図2図5の様に、トレイ部42に正面板45が設けられたものである。
トレイ部42は、底板46を有し、当該底板46の周部に高さの低い周壁38が設けられたものである。トレイ部42の幅Waは、物品配置室20の幅Wbよりも相当に小さい。トレイ部42の幅Waは、内蓋部材41の開口43に挿入可能な程度の幅である。
正面板45は、周壁38よりも高さが高く、トレイ部42よりも幅が広い板である。正面板45は、トレイ部42の前端に取り付けられている。正面板45の幅Wcは、物品配置室20の幅Wbに近く、トレイ部42の幅Waよりも大きい。また正面板45の高さ及び幅Wcは、内蓋部材41の開口43よりも大きい。
正面板45には取っ手35が設けられている。
【0028】
図5の様に、トレイ部42の底板46には、正面板45の近傍に通気領域47がある。通気領域47には多数の通気開口50が設けられている。底板46の他の領域は遮蔽領域48であり、実質的に開口はなく、実質的に封鎖されている。
通気領域47と遮蔽領域48の境界部には、移動抑制手段52が設けられている。
本実施形態で採用する移動抑制手段52は、トレイ部42から上方に立ち上がる壁であって、幅方向の長さがトレイ部42の幅Waよりも短い壁であり、ストッパとして機能するものである。移動抑制手段52は、底板46の幅方向の中央部にあり、正面板45と平行にのびている。
【0029】
本体部3内であって、その右側面壁12及び左側面壁13には、棚40を摺動可能に支持する棚受け部材55が設けられている。
棚受け部材55は、図5の様に、帯状部材58に、仕切壁67を設けたものである。
帯状部材58は、内蓋部材41の近傍から、奥面壁16の近傍に至る領域に取り付けられている。帯状部材58は、内蓋部材41の近傍から奥面壁16の近傍に向かってのびる。帯状部材58の上面は水平である。
仕切壁67は、帯状部材58の上面に対して交差する方向(垂直方向)に立ち上がる壁であり、内蓋部材41の近傍から、奥面壁16の近傍に向かってのびる。仕切壁67は、本体部3内に取り付けられた状態を基準として、右側面壁12、左側面壁13より物品配置室20の中心寄りの位置にある。帯状部材58の上面側は、仕切壁67によって延出領域56と載置領域57に区切られている。
【0030】
本実施形態では、図2の様に、棚受け部材55の載置領域57に、棚40の縁の部分が載置される。本実施形態では、載置領域57と右側面壁12及び左側面壁13との間に延出領域56があり、載置領域57は、物品配置室20の内壁面から張り出した位置にある。
【0031】
帯状部材58の載置領域57と延出領域56には実質的に開口はなく、実質的に封鎖されている。
【0032】
棚40が本体部3内に挿入された状態は図4の通りであり、棚40の後端部は、奥面壁16まで至らない。
本実施形態では、物品配置室20の大部分が棚配置領域100となるが、棚配置領域100は、物品配置室20の全領域ではない。即ち、物品配置室20の奥面壁16の近傍の領域には、棚40が存在しない空隙領域(空隙)101がある。
なお、図4は、棚配置領域100を明確にするために、左側面壁13の棚受け部材55の図示を省略している。
【0033】
本実施形態の環境形成装置1では、前記した空隙領域101に、上部邪魔板部材60と下部邪魔板部材61が設けられている。
上部邪魔板部材60及び下部邪魔板部材61は、断面形状が「L」字状の長尺部材であり、設置部63と、設置部63に対して略垂直方向に設けられた邪魔板部65を有している。
設置部63が図示しないネジ等によって、奥面壁16に取り付けられており、邪魔板部65は、奥面壁16の壁面の垂直方向に立ち上がり、奥面壁16の幅方向に水平にのびる。
【0034】
邪魔板部材60、61は、いずれも空隙領域101内であって送風口22と吸気口25、26間の位置に設けられている。
即ち上部邪魔板部材60は、邪魔板部65が最上段の棚40aの周壁38の上端と同等の高さとなる位置に取り付けられている。上部邪魔板部材60の取付け高さは、限定されるものではないが、最上段の棚40aの底板46以上の高さに取り付けられることが推奨される。
【0035】
本実施形態では、下部邪魔板部材61は、邪魔板部65が最下段の棚40eの底板46と同等の高さとなる位置に取り付けられている。下部邪魔板部材61の取付け高さは、限定されるものではないが、最下段の棚40eの上端以下の高さに取り付けられることが推奨される。
【0036】
次に、環境形成装置1の機能について説明する。
準備段階として、棚40に物200を置き、物品配置室20内に挿入する。具体的には、内蓋部材41の開口43から、棚40を差し入れる。棚40は、引き出しの如く、棚受け部材55の載置領域57に載り、仕切壁67にガイドされて奥面壁16側に進む。そして図3図4の様に、棚40の正面板45が、内蓋部材41の開口43の縁に当接し、棚40のトレイ部42の全部が、物品配置室20内に収容される。
また内蓋部材41の開口43は、図3図4の様に正面板45で封鎖される。なお作図の関係上、図3には開口43を示す破線を省略している。
【0037】
棚40は、引き出しの様に水平移動されて物品配置室20から出し入れされるものであるから、図6の様に、棚40を動かす際に、棚40の上に置かれた物200が正面板45側にずれ動いてしまう場合がある。
本実施形態で採用する棚40は、図6の様に、通気領域47と遮蔽領域48の境界部に壁状の移動抑制手段52が設けられている。そのため仮に物200が正面板45側にずれ動いても、図6(b)の様に物200が移動抑制手段52に衝突して止まる。
従って物200は遮蔽領域48に止まり、通気領域47に侵入することが少ない。そのため、物200が通気領域47の通気開口50を塞ぐ懸念は低い。
【0038】
前記した様に、送風機32を起動すると、物品配置室20内の空気が上下の吸気口25、26から空調部21内に導入され、温度等が調整された空気が、中央の送風口22から物品配置室20に吹き出される。物品配置室20内の物200を低温に保つ場合であれば、低温の空気が、中央の送風口22から物品配置室20に吹き出される。
本実施形態では、物品配置室20内に複数段に渡って棚40が設置されており、当該棚40は、いずれも水平姿勢となっている。そのため、上下の棚40の間に隙間がある。また、最上段の棚40と天面壁10の間及び最下段の棚40と底面壁11の間にも隙間がある。そして当該隙間によって、奥面壁16から対向する扉5又は内蓋部材41に至る、複数列の通風路70a~70fが形成される。本実施形態では、中間領域の通風路70b~70eが往き側流路として機能し、上端及び下端の通風路70a、70fは、戻り側流路として機能する。
本実施形態では、6列の通風路70a~70fが形成されているが、通風路の数は限定されるものではない。
【0039】
送風口22から吹き出された送風は、空隙領域101に入り、ある程度拡散される。空隙領域101の上下には邪魔板部材60、61があり、空隙領域101の上下端は、送風の抵抗になるように略閉塞されている。そのため、送風口22から吹き出された送風は、中間領域の通風路70b~70eに分配されて内蓋部材41に向かう。
【0040】
空隙領域101の上部近傍に注目すると、上部邪魔板部材60があり、当該上部邪魔板部材60の邪魔板部65は、最上段の棚40aの周壁38の上端と同等の高さにあって、奥面壁16から、棚40aの周壁38に向かって突出している。
そのため、空隙領域101と上端の通風路(戻り側流路)70aとの間は、上部邪魔板部材60によって実質的に封鎖されている。従って、送風口22から上端の通風路(戻り側流路)70aに至る流路は、実質的に、上部邪魔板部材60の邪魔板部65と、最上段の棚40aの周壁38とによって遮断されており、送風口22から吹き出された送風は、直接的には最上段の通風路70aに流れ込みにくい。
【0041】
空隙領域101の下部側も同様に、下部邪魔板部材61がある。当該下部邪魔板部材61の邪魔板部65は、最下段の棚40eの底板46と同等の高さにあって、奥面壁16から、棚40eの周壁38に向かって突出している。
そのため、空隙領域101と下端の通風路(戻り側流路)70fとの間は、下部邪魔板部材61によって実質的に封鎖されている。
従って、送風口22から下端の通風路(戻り側流路)70fに至る流路は、実質的に、下部邪魔板部材61の邪魔板部65と、最下段の棚40eの周壁38とによって遮断されており、送風口22から吹き出された送風は、直接的には最下端の通風路70fに流れ込みにくい。
【0042】
そのため送風口22から吹き出された送風は、中間部の通風路70b~70eを流れて内蓋部材41の近傍に至る。この間の通風路70b~70eは、上下に隣接する棚40の底板46の遮蔽領域48によって構成されている。前記した様に、底板46の遮蔽領域48には実質的に開口が無いので、送風は上下に拡散することなく、内蓋部材41の近傍に到達する。
【0043】
内蓋部材41の近傍に注目すると、内蓋部材41の開口43は、正面板45で封鎖されている。一方、内蓋部材41の近傍には、棚40の通気領域47が位置している。通気領域47には多数の通気開口50が設けられているため、中間部の通風路70b~70eを流れて内蓋部材41の近傍に至った送風は、図4の矢印の様に、通気開口50を通過して上下に流れる。そして、送風は上端の通風路(戻り側流路)70aまたは下端の通風路(戻り側流路)70fに入り、内蓋部材41側から奥面壁16側に向かって流れ、吸気口25、26に入る。
【0044】
本実施形態の環境形成装置1では、送風口22から吹き出された送風の大部分が、送風口22に対向する壁面の近傍まで至る。そのため、物品配置室20内に均一に空気が流れ、棚40周囲の各部の風速が均一化する。その結果、棚40に載置された物品の温度変化が均一化する。
【0045】
また本実施形態の環境形成装置1では、空隙領域101の上下には邪魔板部材60、61があり、空隙領域101の上下端は、送風の抵抗になるように略閉塞されている。そのため送風口22から吹き出された送風は、直接的に吸気口25、26に入ることが抑制され、ショートサーキットが発生しにくい。そのため、本実施形態の環境形成装置1では、物品の温調に寄与しない空気循環が抑制される。
【0046】
本実施形態の環境形成装置1では、物品を配置する空間が、扉5と内蓋部材41とによって、二重に遮蔽されている。扉5は断熱性を有しており、扉5によって、物品を配置する空間の断熱が確保されている。
内蓋部材41は、扉5を開いた際における外気の侵入や、環境形成装置1からの冷気の漏出等を抑制するものである。
環境形成装置1から内部に収容された物品を取り出す際には、扉5を開き、さらに棚40を引き出すこととなる。棚40が引き出されても、物200を配置する空間と外部との連通部分は、わずかに内蓋部材41の開口43だけであるから、空気の出入りが抑制され、庫内の温度変化が比較的小さいものとなる。また外気の侵入が少ないので、蒸発器(冷却器31)に霜が付くことが抑制され、比較的長時間にわたって連続運転をすることができる。
【0047】
以上説明した実施形態では、奥面壁16の中央に送風口22があり、奥面壁16の上端近傍及び下端近傍に、吸気口25、26がある。
本実施形態の送風口22及び吸気口25、26のレイアウトは推奨されるものであるが、本発明はこのレイアウトに限定されるものでない。
例えば、送風口22と吸気口25、26が逆の関係になってもよい。即ち、奥面壁16の中央に吸気口があり、奥面壁16の上端近傍及び下端近傍に、送風口があってもよい。
また、図7(a)に示す環境形成装置80の様に、奥面壁16の上部に送風口22があり、奥面壁16の下部に吸気口25を設けたレイアウトであってもよい。図7(a)に示す環境形成装置80では、奥面壁16の上部側に送風口22が設けられ、吸気口25は他端側たる奥面壁16の下部に設けられている。そして他端側たる下部に、下部邪魔板部材61が設けられている。
逆に、奥面壁16の上部に吸気口25があり、奥面壁16の下部に送風口22を設けたレイアウトであってもよい。
また図7(b)に示す環境形成装置81の様に、天面壁10と奥面壁16の境界部分に吸気口25があり、底面壁11と奥面壁16の境界部分に吸気口26があってもよい。
【0048】
以上説明した実施形態では、奥面壁16に邪魔板部材が設けられたが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
例えば図8に示す環境形成装置90の様に、邪魔板部65が、奥面壁16と一体であり、奥面壁16から張り出していてもよい。
【0049】
以上説明した実施形態で採用する移動抑制手段52は縦壁であるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。移動抑制手段52は、物200が通気開口50を塞ぐことを抑制することができるものであれば形状や構造に限定はない。
例えば移動抑制手段は、ピン状の突起であってもよい。移動抑制手段は、正面板45から突出する障害物であってもよい。移動抑制手段は、周壁38に設けられていてもよい。 移動抑制手段は、通気開口50が設けられた通気領域47自体を隆起させて、通気性を確保するものであってもよい。また、移動抑制手段は、例えばバーリング加工の様に、通気開口50の周りを隆起させるものであってもよい。底板46に摩擦付与部材を設けて移動抑制手段としてもよい。
なお移動抑制手段は必須ではなく、省略することもできる。
【0050】
邪魔板部材(邪魔板部)60,61の位置は、前記した実施形態の高さであることが望ましいが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば上部邪魔板部材60の邪魔板部65の位置が、最上段の棚40aの底より下の高さの位置であってもよい。また、下部邪魔板部材61の邪魔板部65の位置が、最下段の棚40eの上端より上の高さの位置であってもよい。
【0051】
送風口22の開口面は、奥面壁(特定の壁面)16と同一の平面であってもよい。また送風口22の開口面が棚板配置領域100側に張り出してもよい。逆に奥まった位置に送風口22の開口面があってもよい。
【0052】
上記した実施形態の環境形成装置1、80、81では、物品を配置する空間が、扉5と内蓋部材41とによって二重に遮蔽されている。しかしながら本発明はこの構成に限定されるものではなく、いずれか一方だけであってもよい。
例えば扉5に相当する部材がなく、内蓋部材41に相当する部材だけを有していてもよい。この場合、内蓋部材41は断熱壁で構成されていることが望ましい。逆に内蓋部材41に相当する部材がなくてもよい。
【0053】
棚受け部材55の延出領域56や仕切壁67は、必須ではない。
また上記した実施形態で採用する棚40は、引き出し状であるが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、固定状の棚であってもよい。
【0054】
棚受け部材55が内蓋部材41の近傍まで存在していなくてもよい。即ち、棚受け部材55と内蓋部材41との間に隙間があってもよい。
【0055】
上記した実施形態では、棚受け部材55の延出領域56は、原則的に封鎖されているが、扉5近くの領域に通気開口を設け、中間部の通風路70b~70eを流れて内蓋部材41の近傍に至った送風を、棚受け部材55の通気開口を通過させて上下に流してもよい。
【0056】
棚受け部材55の載置領域57は、通気可能な開口を有していてもよい。この場合、環境形成装置が使用される際に、棚40が載置されることで、当該開口の全部又は大部分が塞がれることが望ましい。これにより、載置領域57を実質的に封鎖することができる。
また、延出領域56は、通気可能な開口を有していてもよい。この場合、環境形成装置が使用される際に、板等が載置されることで、当該開口の全部又は大部分が塞がれることが望ましい。これにより、延出領域56を実質的に封鎖することができる。
【0057】
以上説明した実施形態では、棚40のトレイ部42に底板46があり、当該底板46の遮蔽領域48には開口はなく、底板46によって棚40の底面の遮蔽領域48が封鎖されている。
棚40の底面を封鎖するための構成は、上記した構成に限定されるものではなく、別途の部材で棚40の底面を実質的に封鎖してもよい。
例えば使用する際に物が置かれて封鎖される蓋然性が高い位置に開口があり、環境形成装置が使用される際に、物又は板等が置かれて当該開口が封鎖されるものであってもよい。また底板46の遮蔽領域48に通気可能な開口があり、環境形成装置が使用される際に、物又は板等が遮蔽領域48に載置されることで、当該開口の全部又は大部分が塞がれるものであってもよい。遮蔽領域48を封鎖する「板等」は、実質的に棚40の底面を構成するが、取り外し可能なものが考えられる。本構成によっても、棚40の底面の遮蔽領域48を実質的に封鎖することができる。
【符号の説明】
【0058】
1、80、81 環境形成装置
2 開口面
10 天面壁
11 底面壁
16 奥面壁(特定の壁面)
20 物品配置室
22 送風口
25 吸気口
26 吸気口
32 送風機
38 周壁
40a~40e 棚
41 内蓋部材
42 トレイ部
43 開口
45 正面板
46 底板
47 通気領域
48 遮蔽領域
50 通気開口
52 移動抑制手段
55 棚受け部材
56 延出領域
57 載置領域
60 上部邪魔板部材
61 下部邪魔板部材
65 邪魔板部
70a~70f 通風路
100 棚配置領域
101 空隙領域(空隙)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9