(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】鋼板固定方法及び鋼板固定構造
(51)【国際特許分類】
E02D 5/24 20060101AFI20241217BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20241217BHJP
B23K 9/02 20060101ALI20241217BHJP
E02D 27/00 20060101ALI20241217BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20241217BHJP
E02D 27/44 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
E02D5/24 102
B23K9/00 501B
B23K9/02 M
E02D27/00 Z
E04B1/58 600F
E02D27/44 B
(21)【出願番号】P 2021179563
(22)【出願日】2021-11-02
【審査請求日】2024-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】井原 啓知
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-045723(JP,A)
【文献】特開2005-180061(JP,A)
【文献】特開2004-284503(JP,A)
【文献】特開昭57-137076(JP,A)
【文献】特開平07-227670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0047137(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1481076(KR,B1)
【文献】特開2002-161532(JP,A)
【文献】特開2004-278230(JP,A)
【文献】特開2006-188862(JP,A)
【文献】特開2016-044495(JP,A)
【文献】特開2018-096042(JP,A)
【文献】特表2010-501047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22-5/80
E02D 7/00-13/10
E02D 29/045-29/05
E02D 17/00-17/20
E02D 27/00-27/52
B23K 9/00
B23K 9/02
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設のH鋼杭の上端に平滑な面を形成するために鋼板を固定する鋼板固定方法であって、
前記H鋼杭の上端面において、前記鋼板の板厚より小さい突出量で他の部分から上方に突出する突出部分が前記H鋼杭のウエブの上端に形成され、
前記鋼板には、前記突出部分が挿入される貫通穴が板厚方向に貫通するように形成され、
前記貫通穴に挿入された前記突出部分の上端面の周縁部と、前記貫通穴の内側面と、の角部に隅肉溶接が施される、鋼板固定方法。
【請求項2】
前記H鋼杭は一対のフランジを有しており、
前記鋼板は一対の平行な側周面を有しており、
前記フランジ同士の対向方向における前記H鋼杭の幅よりも小さい間隔で前記鋼板の前記測周面同士が離れて位置しており、
各々の前記測周面が、各前記フランジの各上端面に沿って配置され、
各々の前記側周面において、前記フランジの
前記上端面と前記側周面との角部に隅肉溶接が施される、請求項1に記載の鋼板固定方法。
【請求項3】
既設のH鋼杭の上端に平滑な面を形成するために鋼板を固定する鋼板固定構造であって、
前記H鋼杭の上端面において、前記鋼板の板厚より小さい突出量で他の部分から上方に突出する突出部分が前記H鋼杭のウエブの上端に形成されており、
前記鋼板には、前記突出部分が挿入される貫通穴が板厚方向に貫通するように形成されており、
前記貫通穴に挿入された前記突出部分の上端面の周縁部と、前記貫通穴の内側面と、の角部に隅肉溶接が施されている、鋼板固定構造。
【請求項4】
前記H鋼杭は一対のフランジを有しており、
前記鋼板は一対の平行な側周面を有しており、
前記フランジ同士の対向方向における前記H鋼杭の幅よりも小さい間隔で前記鋼板の前記測周面同士が離れて位置しており、
各々の前記測周面が、各前記フランジの各上端面に沿って配置されており、
各々の前記側周面において、前記フランジの
前記上端面と前記側周面との角部に隅肉溶接が施されている、請求項3に記載の鋼板固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板固定方法及び鋼板固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、杭の上に構造物を構築する際には、まず杭の上端面に水平な鋼板が固定される。鋼板の上面は平滑な面であり、平滑な上面で構造物が支持されることで、構造物の重量が杭に対して均等に作用することになる。例えば、下記の特許文献1では、地盤に打ち込んだ鋼管杭に建物の鋼製柱を接続する際に、鋼管杭の上端面に溶接でベースプレートを固定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、杭の上端に鋼板を溶接する際には、例えば作業者が鋼板の下に入り鋼板の下面と杭の上端面とを上向きで溶接することになる。このような上向きの溶接は施工性が悪く、また、下向きの溶接等に比べれば溶接品質が劣る場合がある。そこで本発明は、H鋼杭の上端に鋼板を固定する際に上向き溶接を回避する鋼板固定方法及び鋼板固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の鋼板固定方法は、既設のH鋼杭の上端に平滑な面を形成するために鋼板を固定する鋼板固定方法であって、H鋼杭の上端面において、鋼板の板厚より小さい突出量で他の部分から上方に突出する突出部分がH鋼杭のウエブの上端に形成され、鋼板には、突出部分が挿入される貫通穴が板厚方向に貫通するように形成され、貫通穴に挿入された突出部分の上端面の周縁部と、貫通穴の内側面と、の角部に隅肉溶接が施される。
【0006】
鋼板は、H鋼杭のフランジの対向方向の幅よりも小さい間隔で離れて位置し、各々のフランジの上端面に沿って配置される一対の平行な側周面を有し、各々の側周面において、フランジの上端面と側周面との角部に隅肉溶接が施される、こととしてもよい。
【0007】
本発明の鋼板固定構造は、既設のH鋼杭の上端に平滑な面を形成するために鋼板を固定する鋼板固定構造であって、H鋼杭の上端面において、鋼板の板厚より小さい突出量で他の部分から上方に突出する突出部分がH鋼杭のウエブの上端に形成されており、鋼板には、突出部分が挿入される貫通穴が板厚方向に貫通するように形成されており、貫通穴に挿入された突出部分の上端面の周縁部と、貫通穴の内側面と、の角部に隅肉溶接が施されている。
【0008】
鋼板は、H鋼杭のフランジの対向方向の幅よりも小さい間隔で離れて位置し、各々のフランジの上端面に沿って配置される一対の平行な側周面を有し、各々の側周面において、フランジの上端面と側周面との角部に隅肉溶接が施されている、こととしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、H鋼杭の上端に鋼板を固定する際に上向き溶接を回避する鋼板固定方法及び鋼板固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a),(b)は、本実施形態の鋼板固定方法及び鋼板固定構造が適用される工事の手順を示す断面図である。
【
図2】(a),(b)は、
図1に続いて工事の手順を示す断面図である。
【
図3】(a)は、本実施形態の鋼板固定構造の分解斜視図であり、(b)は、その斜視図である。
【
図4】(a)は、
図3に示される鋼板固定構造のIVa-IVa断面図であり、(b)は、そのIVb-IVb断面図である。
【
図5】(a),(b)は、参考形態に係る鋼板固定構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明に係る鋼板固定方法及び鋼板固定構造の実施形態について詳細に説明する。本実施形態の鋼板固定方法及び鋼板固定構造は
図1及び
図2に示される鉄道周辺の工事において使用される。
図1及び
図2に示される軌道1は、図の紙面に直交する方向に延在している。この工事では、
図1(a)に示されるように、軌道1の側方で地盤G中に土留杭が打設され軌道1と平行に延びる土留壁3,3が形成される。なお、このような土留壁3,3及び土留壁3,3同士の間に構築される後述の構造物は、軌道1の左右両側に同じ構造で設けられるので、
図1及び
図2ではその一方のみを図示する。
【0012】
更に、土留壁3,3同士の間には、複数のH鋼杭5が打設される。H鋼杭5は、軌道1に平行な方向に配列される。そして、
図1(b)に示されるように、土留壁3,3同士の間の空間が掘削され、掘削空間Jに各H鋼杭5の上端部が露出した状態となる。その後、
図2(a)に示されるように、掘削空間J内で各H鋼杭5の上端部が適切な長さに切断され、切断後の各H鋼杭5の上端面に水平な鋼板7がそれぞれ固定される。更に複数のH鋼杭5上の鋼板7の上面に架け渡すように桁受け梁9が設置される。桁受け梁9は、軌道1と平行に延びるH鋼で構成される。
【0013】
更に、桁受け梁9上にはかんざし桁11が設置される。かんざし桁11は、軌道1の左右にそれぞれ設置された桁受け梁9同士の間に架け渡されるように設置される。かんざし桁11は、軌道1の直下で当該軌道1に直交する方向に延びるH鋼で構成され、複数のかんざし桁11が軌道1と平行な方向に配列される。このような複数のかんざし桁11を含む仮受け構造13によって軌道1が仮受けされる。そして、仮受けされた軌道1の直下の地盤が掘削されて必要な工事が実行される。
【0014】
本実施形態の鋼板固定方法及び鋼板固定構造は、上記のH鋼杭5の上端面に鋼板7を固定するための鋼板固定方法及び鋼板固定構造である。このようにH鋼杭5の上端面に鋼板7を固定することにより、桁受け梁9を設置するための平滑な面(すなわち、鋼板7の上面)が形成される。そして、この鋼板7の平滑な面上に桁受け梁9が設置されることにより、桁受け梁9から作用する力がH鋼杭5全体に均等に伝達される。
【0015】
上記のようにH鋼杭5に対して鋼板7を固定するための鋼板固定方法及び鋼板固定構造17について
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3(a)は、鋼板固定構造17におけるH鋼杭5と鋼板7とを示す分解斜視図であり、
図3(b)は、鋼板固定構造17の斜視図である。
図4(a)は、
図3に示される鋼板固定構造17のIVa-IVa断面図であり、
図4(a)は、そのIVb-IVb断面図である。各図面では、鋼板固定方法及び鋼板固定構造17の特徴を誇張して図示する場合があるので、各図面で示される構成要素の形状や寸法比は実物と一致しない場合があり、また、各図面同士の間でも構成要素の形状や寸法比が一致しない場合がある。以下では、図に示されるように、H鋼杭5の延在方向をZ方向、H鋼杭5のフランジ21に直交する方向をY方向、H鋼杭5のウエブ23に直交する方向をX方向とする。
【0016】
本実施形態の鋼板固定方法では、H鋼杭5の上端面5aが所定の形状に加工される。具体的には、
図3(a)に示されるように、ウエブ23の上端面に突出部分25が形成される。突出部分25は、X方向にはウエブ23の幅全体に亘って広がり、Y方向にはウエブ23の長さよりもやや短い長さで延在し、ウエブ23の上端面のY方向中央に位置している。上端面5aの中で突出部分25は他の部位よりも上方に突出しており、突出部分25の他の部位からの突出量は、鋼板7の板厚よりも小さい。例えば、上記突出量は、鋼板7の板厚よりも約10mm小さい。このような突出部分25を形成するためには、フランジ21の上端部を含めた突出部分25以外の部分をH鋼杭5の上端部から切除する加工を行ってもよい。
【0017】
また、本実施形態の鋼板固定方法では、次のような鋼板7が製作される。平面視において、鋼板7の外形は、H鋼杭5よりもやや小さい長方形をなしている。具体的には、鋼板7のX方向長さはH鋼杭5とほぼ同じであり、鋼板7のY方向長さはH鋼杭5よりもフランジ21の厚さ分だけ短い。長方形の板状の鋼板7は、厳密には直方体をなすので鉛直な4つの側周面7p,7q,7r,7sを有している。また、鋼板7の中央には当該鋼板7を板厚方向に貫通する貫通穴31が形成されている。貫通穴31は、H鋼杭5の突出部分25に対応する位置及び形状で形成され平面視でY方向に長い矩形を呈している。貫通穴31のX方向及びY方向の寸法は突出部分25よりも僅かに(例えば1mm程度)大きい。
【0018】
例えば、H鋼杭5は、X方向幅405mm、Y方向幅414mm、フランジ厚さ28mm、ウエブ厚さ18mmのものである。例えば、突出部分25は、Y方向長さ324mm、高さ25mmのものである。例えば、鋼板7は、X方向幅405mm、Y方向幅386m、板厚35mmのものである。上記のようにH鋼杭5及び鋼板7のサイズの一例を挙げたが、本発明はこのサイズの例に限定されるものではない。
【0019】
続いて、本実施形態の鋼板固定方法では、
図3(b)、
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、鋼板7がH鋼杭5の上端面5a上に載置され、突出部分25が貫通穴31に挿入される。突出部分25の上端面25aは、鋼板7の上面7aよりも低い位置で貫通穴31内に埋もれるとともに、当該貫通穴31を通じて上面側に露出する。H鋼杭5の上端面5aの他の部分(フランジ21の上端面21a等)は鋼板7の下面に当接する。
【0020】
また、鋼板7のY方向長さがH鋼杭5よりもフランジ21の厚さ分だけ短い、といった寸法の関係性に基づき、鋼板7の2つの側周面7p,7rはそれぞれ、フランジ21の上端面21aの直上の位置からY方向にはみ出さないように位置する。なお、側周面7p,7rは、H鋼杭5のフランジ21の対向方向の幅(Y方向幅)よりも小さい間隔で互いに離れて位置する一対の平行な側周面である。そして、鋼板7の側周面7p,7rは、フランジ上端面21aに沿ってX方向に延びるとともに、フランジ上端面21aに対し当該フランジ上端面21aのY方向中央の位置で直交する。
【0021】
続いて、本実施形態の鋼板固定方法では、鋼板7がH鋼杭5の上端部に対して溶接で固定される。具体的には、貫通穴31に挿入された突出部分25の上端面25aの周縁部と、貫通穴31の内側面31aと、の角部に隅肉溶接が施される。
図3(a),(b)に示されるように、上記角部に沿って矩形環状に溶接ビード35が形成される。前述の通り突出部分25の上端面25aが貫通穴31を通じて上面側に露出しているので、この隅肉溶接は貫通穴31内に上から溶接ツールを差し込むようにして下向きで実行することができる。
【0022】
更に、一方のフランジ21の上端面21aと側周面7pとの角部に隅肉溶接が施され、同様に、他方のフランジ21の上端面21aと側周面7rとの角部に隅肉溶接が施される。
図3(a),(b)に示されるように、上記角部沿ってX方向に延びる直線状の溶接ビード37がそれぞれ形成される。この隅肉溶接も上方から下向きで実行することができる。なお、上記のようなH鋼杭5と鋼板7との溶接は、例えばアーク溶接、ガス溶接等によって行なわれる。
図2(b)においては、溶接ビード35,37の図示が省略されている。
【0023】
以上の鋼板固定方法により、
図3(b)、
図4(a)及び
図4(b)に示される鋼板固定構造17が完成する。完成した鋼板固定構造17では、既設のH鋼杭5の上端面5aにおいて、鋼板7の板厚より小さい突出量で他の部分から上方に突出する突出部分25がH鋼杭5のウエブ23の上端中央部に形成されており、鋼板7には、突出部分25が挿入される貫通穴31が板厚方向に貫通するように形成されており、貫通穴31に挿入された突出部分25の上端面25aの周縁部と、貫通穴31の内側面31aと、の角部に隅肉溶接が施されている。また、鋼板7は、H鋼杭5のフランジ21の対向方向(Y方向)の幅よりも小さい間隔で離れて位置する一対の平行な側周面7p,7rを有しており、側周面7p,7rは、各々のフランジ21の上端面21aに沿って配置される。そして、一方のフランジ21の上端面21aと側周面7pとの角部に隅肉溶接が施され、他方のフランジ21の上端面21aと側周面7rとの角部に隅肉溶接が施されている。
【0024】
以上説明した本実施形態の鋼板固定方法及び鋼板固定構造17によれば、H鋼杭5に対する鋼板7の固定を、前述の通り下向きの溶接によって行なうことができ、上向きの溶接作業を回避することができる。従って、下向きの溶接により施工性が向上し、溶接品質の向上が図られる。仮に、H鋼杭5に対する鋼板7の固定を上向きの溶接で行なうとすれば、
図2(a)に示される掘削空間Jにおいて作業者が鋼板7の下方に入って溶接作業を行なう必要がある。そうすると、作業スペースを確保するために掘削空間Jをより深い位置まで広げる必要があり、掘削量が増加する。本実施形態のような鉄道周辺の工事は、多くの場合、夜間に短時間で実行する必要があるところ、H鋼杭5への鋼板7の下向きの溶接が可能になることで、掘削量の低減や施工性の向上により、作業時間の短縮を図ることができる。
【0025】
H鋼杭5に対する鋼板7の固定を鋼板7の上方から作業する手法としては、ボルト止めを利用することも考えられる。しかしながらこの場合、鋼板7の上面7aにボルトの頭を突出させないように、ボルトの頭を収める座ぐり部を上面7aに形成すること等が必要になる。これに対し、本実施形態の鋼板固定方法及び鋼板固定構造17では、H鋼杭5と鋼板7との溶接に関わる突出部分25が、鋼板7の上面7aから上方の突出せずに貫通穴31内に埋もれるので、鋼板7の上面7aの平滑性が容易に確保される。また、ボルト止めに比較して施工の手間も小さい。
【0026】
〔参考形態〕
H鋼杭5に対する鋼板の固定を下向きの溶接によって行なう構造として、
図5(a),(b)に示される鋼板固定構造51も考えられる。以下の説明において、前述の実施形態における構成要素と同一又は同等の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。この参考形態の鋼板固定構造51では、H鋼杭5の上端面5aは平坦に形成される。上端面5aに溶接される鋼板として、同じ大きさの長方形をなす2枚の鋼板57が準備される。鋼板57のY方向長さはH鋼杭5よりもフランジ21の厚さ分だけ短い。鋼板57のX方向長さはフランジ21のX方向長さの半分よりもやや短い。
【0027】
鋼板57は、4つの側周面57p,57q,57r,57sを有している。一方の鋼板57がH鋼杭5の上端面5a上に載置されたときには、側周面57pは一方のフランジ上端面21aに沿って位置し、側周面57rは他方のフランジ上端面21aに沿って位置し、側周面57qはウエブ上端面23aに沿って位置する。そして、側周面57pと一方のフランジ上端面21aとが直交する角部、側周面57rと他方のフランジ上端面21aとが直交する角部、及び側周面57qとウエブ上端面23aとが直交する角部に対してそれぞれ隅肉溶接が施される。この隅肉溶接は、鋼板57の上方から下向きで行なうことができる。
【0028】
他方の鋼板57も、上記同様にして、上記鋼板57と対称の配置でH鋼杭5の上端面5a上に溶接固定される。
図5(a)の破線Wは溶接箇所を示している。実際には破線Wに沿って溶接ビードが形成されるが、
図5(a),(b)においては溶接ビードの図示が省略されている。なお、2枚の鋼板57同士の間にはウエブ上端面23a上においてウエブ23の厚さよりもやや狭い間隙58が形成される。従って、他方の鋼板57の側周面57sとウエブ上端面23aとが直交する角部との溶接についても、上記の間隙58から溶接ツールを挿入することで下向きの溶接が可能である。
【0029】
このように、当該参考形態の鋼板固定構造51によっても、H鋼杭5に対する鋼板57,57の固定を、下向きの溶接によって行なうことができる。但し、鋼板固定構造51によれば、2つの鋼板の上面57a,57a同士の高さ及び傾斜がずれる場合があり、上面57a,57aの平滑性の確保が容易ではない。この観点から、前述の実施形態の鋼板固定構造17(
図2)は、鋼板7の上面7aの平滑性が確保し易く、鋼板固定構造51に比べてより優れていると言える。
【0030】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0031】
例えば、実施形態では、貫通穴31に挿入された突出部分25の上端面25aの周縁部と、貫通穴31の内側面31aと、の角部に隅肉溶接(以下「第1溶接」という)が施され、更に、各フランジ21の上端面21aと側周面7p,7rとの角部に隅肉溶接(以下「第2溶接」という)が施されている。しかし、第1溶接と第2溶接とが両方とも実行されることは必須ではなく、第1溶接と第2溶接のうち一方が省略されてもよい。例えば、第1溶接が実行された上で、第2溶接の代わりの他の手法で各フランジ21と鋼板7とが接合されてもよい。
【符号の説明】
【0032】
5…H鋼杭、5a…上端面、7…鋼板、7a…上面(平滑な面)、7p,7r…側周面、17…鋼板固定構造、21…フランジ、21a…フランジ上端面、23…ウエブ、25…突出部分、25a…上端面、31…貫通穴、31a…内側面。